「非正規職 '0'を期待したが……帰ってきたのは解雇」(韓国日報・朝鮮語)
「正社員への転換を要求したこともないのに、なぜ私たちには解雇だけが残ったんですか?」

韓国医学研究院で契約職研究員として働いている博士K氏は最近、夜も眠れない。先月、研究の切り替え対象非正規職93人の面接でKさんはじめとして72人が脱落したからである。脱落者の中にはなんと14年間働いた博士研究員もいた。Kさんは「機関長が重要事業として推進している人工知能(AI)漢方医の関連研究だけが正社員転換された」と批判した。脱落者の集団異議申し立てに対して2次転換審査が行われる予定だが、何人が救済されるかは未知数だ。結局、正規職に転換されなければ、解雇の手順に従うことになる公算が大きい。去る6月契約研究員がほとんど5ヶ月(7〜11月)建ての契約を締結したからだ。契約書には「(11月末まで)の切り替えがされていない場合、労働契約は当然終了する」との束縛条項も盛り込まれている。研究者はすべて非正規職「ゼロ」となる自分が投票した政府を信じたが、実際には非正規職すら追い出される寸前である。

事実、面接を通過して正規職に転換するこれらの果実も大きくない。厳密に言えば、正規職ではなく、「技術研究職」との職群に分類され、雇用が安定するというだけである。給与及び手当が正規職化されることもない。Kさんは「政府の正規職を求めたことも、多くのことを望んだこともない」とし「政府が先に話をして信じたが、最終的には職場で追い出される危機」と吐露した。 (中略)

ムン・ジェイン大統領の「1号政策」である公共部門の非正規職の正規職転換があちこちで破綻を来している。機関別の特性が考慮されていない画一的な政策によって、正常な非正規職が生計の手段を失うという事態になっているのだ。 (中略)

政府は昨年7月に「公共部門の非正規職ゼロ」の旗を掲げ「1年で9ヶ月以上、今後2年以上続く業務に従事する非正規職は正規職に転換せよ」とのガイドラインを発表した。以降、6月末までに目標値(17万5000人)の76%に達する非正規職13万3,000人余りが転換された。以前の政府に比べて切り替え規模が大きく、「常時及び持続業務は正規職」という原則を樹立した点は高く評価されている。

しかし、数字と現実の乖離は大きい。まず、正規職に転換されなかった非正規職が大量解雇の危機に追いやられている。特に研究職は状況がよりひどい。 (中略)

正規職転換に伴う人件費の負担は一定の固定額が必要となりますが、受託請負収入は毎年流動的である。しかし、政府は人件費支援をしようとはしなかった。機関の立場では積極的に正社員への転換を図るのが難しい。
(引用ここまで・太字引用者)

 仁川空港の契約社員を皮切りに、ムン・ジェインは「公的機関から契約社員を一掃する」との宣言をしたのですよ。
 大統領就任が去年の5月10日。仁川国際空港への視察が12日。
 政策としての正社員転換を重要視していることが分かるスケジュールですね。
 ムン・ジェインが主導する社会としての規範となるべく、公企業からは契約社員がいなくなり、すべてが正社員に転換されるという動きが生まれたのです。

 まあ、その対策として仁川国際空港公社は一気に契約社員を雇い止めにしようとしたわけですが。
 後日、大きく報道されたので撤回してますけどね。
 けっきょく、どこもかしこも似たような「対策」を取らざるを得なかったという記事。

 なんせ政府からは「非正規職を正規職にせよ」と号令をかけるだけ。人件費支援はなにもなし。
 最低賃金上昇時にはまだ中小企業に対して3兆ウォンの補助金を出して対策しようとはしていたのですが、公企業へはなにもせずにただ号令だけ。
 であれば雇用側は対策として人数を絞るしかないですね。
 記事では「機関長(公企業の社長・会長のこと)の推すプロジェクト以外の研究員はすべて雇い止めされた」とありますが。
 まあ、それは現場の判断というヤツでしょう。

 しかも、正社員転換があるのは公企業だけで、その下請けは関係ない。
 たとえ実質的な子会社といえるような関係であっても。
 ソウルメトロのスクリーンドア修理担当の会社がソウルメトロ本体の天下り先として動いていて、正社員は元ソウルメトロ社員ばかり。
 実際の作業員は契約社員だけで、危険な作業をさせられて1年にひとりのペースで死亡事故が起きている……なんてことがありました。
 この場合も分社化した修理担当の会社はなにも変わらない。

 こんなの逆に雇い止めされたほうから呪いの声が挙がるだけですわ……。
 韓国の大統領ってのも楽な職業ですよね。「正社員転換せよ」っていえばそれだけで済むのですから。

週刊東洋経済 2018年3/24号 [雑誌]
週刊東洋経済編集部
東洋経済新報社
2018/3/19