2011年09月21日
骨粗鬆症による脊椎骨折
【強い腰・背部痛で高齢者の生活をおびやかす】
〇好発年齢:50歳〜
〇特徴的な症状:特に誘因もないのに、突然激しい腰背部痛が起こる。背中が丸くなった、身長が縮んだ。
〇こんな人に多い:閉経後の女性、特に小柄でやせた人・ステロイド薬を長く服用している・ささいなことで骨折した経験がある。
どんな病気?
「もろくなった椎骨がつぶれるように骨折する」
骨は、骨を構成する組織の破壊(吸収)と形成という新陳代謝を絶えず行っています。「骨粗鬆症」は、この新陳代謝のバランスが崩れて、破壊される骨のほうが形成される骨より多くなってしまうために起こる病気です。
骨量が減って骨の組織が粗くスカスカになり、骨折しやすくなるのです。
骨粗鬆症自体には自覚できる症状はほとんどなく、検診で見つかる以外は、ほとんど骨折などが起きたことで発見されます。
骨折が起こりやすい部位は、背骨、脚の付け根(大腿骨頚部)、手首の骨です。骨粗鬆症による骨折は、ちょっとした転倒や打撲などで容易に起こることがありますが、背骨では、押しつぶされることによる圧迫骨折や骨折に伴う変形が徐々に進むのが特徴です。
背骨は椎骨が積み重なって構成されていますが、もろくなった骨がその重みに耐えかねて圧迫骨折でつぶれたり、骨折に伴って椎体が変形してしまうのです。
そのため、患者さんは思い当たる原因がないのにがんこな腰痛や背部痛に悩まされ、生活に支障をきたしているケースが多いのです。
また、発見や治療が遅れると症状が悪化して日常の動作が不自由になったり、寝たきりを招いたりすることから、深刻な問題となっています。
症状の特徴
骨粗鬆症が原因で起こる脊椎骨折では、多くは突然、腰や背中の痛みに襲われます。しりもちをついたり、転倒するなどのきっかけがあれば、本人も気づきやすいのですが、思い当たる原因がないいまま、急激な痛みが起こることもよくあります。
<急性期の症状>
あるとき突然、背中や腰に強い痛みが起こります。前かがみになったり、動作をするときに特に痛みが強くなります。朝、起床時に。背中や腰が痛む のも特徴です。また、寝返りが打てなくなったり。あお向けに寝ることができなくなったりします。こうした症状が2〜3か月間続きます。
<慢性期の症状>
つぶれた骨が固まると、通常、痛みは治まりますが、背骨の変形が進み、圧迫骨折が重なると、背中が後方に弯曲して丸くなったり、背が低くなることもあります。
中には、急性期を過ぎても腰痛や背部痛が続いたり、しびれや感覚鈍麻(かんかくどんま)、麻痺などの神経症状が現れることもあります。これを「遅発性神経麻痺」(ちはつせいしんけいまひ)といいます。骨がつぶれたり変形して、脊髄や馬尾・神経根を圧迫するためです。特に椎体の後ろ側がつぶれると、脊髄や馬尾・神経根を圧迫しやすくなります。
また、つぶれた骨の内部の血管が圧迫さえ、血流不足に陥った骨が壊死して「阻血性椎体圧潰」(そけつせいついたいあっかい)がおこった場合も、激しい痛みが続いたり、遅発性神経麻痺が起こることがあります。
検査と診断
問診で痛みやしびれなどが起こったきっかけの有無、いつから症状が続いているかなどを確認します。特に、中高年の女性で閉経している人、小柄できゃしゃな人、ステロイド薬を長く服用している人は骨粗鬆症による骨折の可能性が高いので、先に病院でレントゲン検査やMRI検査を受けることを勧めることになります。
骨折などの外傷はカイロプラクティック療法の適応外ですので、病院等で治療を行って頂きますが骨粗鬆症における骨折の再発などを防ぐための食事療法、運動療法、日常生活の注意点などのアドバイスは次のようになります。
<食事療法>
骨の形成に欠かせない栄養素は、カルシウム、ビタミンD、マグネシウムです。 カルシウムは、成人で1日600〜700mgが必要とされていますが、骨粗鬆症の人はより積極的にとることが必要です。カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、野菜に多く含まれています。
ビタミンDは肝臓や腎臓でで活性化され、「活性型ビタミンD」となって、腸管でのカルシウムの吸収を高めます。
魚介類やきのこ類に多く含まれるほか、適度な日光浴によって体内で合成されます。
マグネシウムは、カルシウムとの相互作用で骨の強化や骨折予防に役立つと考えられています。マグネシウムは海藻類やナッツ・豆類に多く含まれています。
そのほか、カルシウムの吸収を妨げる「リン」や「ナトリウム」(塩分)の取りすぎにも注意が必要です。「リン」は加工食品やスナック菓子、炭酸飲料などに多く含まれています。
<運動療法>
骨を形成し、強さを維持するには、適度な運動で骨に刺激を加えることも必要です。 激しい運動をする必要はないので、ウオーキングや水泳など、自分が無理なく続けられるものがよいでしょう。骨が弱くなっているので強い負荷をかけたりせず、また、転倒などに注意してください。
<日常生活>
骨粗鬆症によって骨がもろくなっていると、特別な衝撃がなくても骨折を起こすことがあります。ましてや、転倒などの事故で大きな衝撃が加わることは、骨折の危険性を高めることになります。
したがって、身の回りから転倒事故を招く要因をなるべく排除することが大事です。
足をひっかけやすい電気製品のコードを部屋に横切らせたり、床に物を置かないようにし、階段には滑り止め、風呂場には手すりを付けるなど、工夫してください。