2011年09月28日
リウマチ性脊椎炎
関節リウマチの患者さんは手指をはじめ、多くの関節に障害起こります。それが脊椎で起こるのが「リウマチ性脊椎炎」です。ときに重篤な事態を招くこともあるため、首の異常や危険な兆候には注意が必要です。
〇好発年齢:35歳〜
〇特徴的な症状:首や後頭部が痛む、首が回らなくなる。
〇こんな人に多い:関節リウマチの進行した人・罹患期間の長い人、(関節リウマチは女性に多い)
どんな病気?<関節リウマチが進行して脊椎に波及する>
関節リウマチは「自己免疫疾患」の一つで、患者さんの多くは女性です。自己免疫疾患とは、免疫機能の異常により、自分の体の組織を敵とみなして攻撃してしまうために起こる病気です。関節リウマチでは関節が攻撃対象となります。
関節リウマチでは関節の「滑膜」(かつまく)が攻撃を受けて炎症を起こし、関節が徐々に破壊されていきます。滑膜は、関節を包んでいる関節包(かんせつほう)の内側にある膜で、関節液を生産し、関節のなめらかな動きを助けています。
炎症は手指の関節から始まり、進行するに従って全身の関節に及びます。この炎症が脊椎に起こったものを「リウマチ性脊椎炎」といいます。リウマチ性脊椎炎は、関節リウマチの進行した患者さんに起こりやすく、約半数に発生していることがわかっています。
また、脊椎の中でも半数以上が上部頚椎に起こります。特に「環軸関節」(かんじくかんせつ)にこの病態が最も強く現れます。環軸関節は第一頚椎(環椎)と第二頚椎(軸椎)から成る一番上の関節で、頭部を支える重要な部位です。
炎症によって環軸関節を取り巻く関節包がゆるんだり、周辺の骨が破壊されたりつぶれることがあります。特に問題と成るのは、環椎を支える軸椎の突起(軸椎歯突起)が細くなったり折れたりすると、環椎が前方あるいは後方へずれて亜脱臼してしまうことです。
そのほか、炎症が進んで滑膜が増殖すると腫れて大きくなり、脊髄を圧迫することもあります。
症状の特徴
関節リウマチになると関節に腫れと痛みが現れますが、頚椎が障害された場合の症状は、首から後頭部にかけての鈍い痛みや運動制限などです。最初のうちは疲れた時だけ現れますが、進行すると常に痛みが起こるようになります。首を前後に曲げたり、回すときに特に痛みが強くなり、しだいに動かしにくくなってきます。
頚椎の亜脱臼や骨破壊で骨がずれたり、滑膜が増殖すると、脊髄への圧迫による症状が出ることも少なくありません。手足のしびれやこわばり、歩行障害などです。文字が書けない、箸が持てないなど、手指の細かい動作ができなくなることもあります。
さらに、上位頚椎に炎症が起こった場合は、位置が脳に近いことから、下位脳神経や延髄に影響が及ぶことがあります。下位脳神経には顔面神経や舌下(ぜっか)神経、舌咽(ぜついん)神経などが集中しているため、めまいや舌がもつれるなどの下位脳神経症状が現れます。
特に注意をようするのが延髄圧迫症状です。延髄は、呼吸や心拍など、生命維持に不可欠な機能を維持する役割を担っています。そのため延髄麻痺が起こると、突然死の危険があります。呼吸が苦しい、心臓がドキドキするというような症状が出たときは、緊急手術が必要となります。
ほかに、ずれた頚椎によって椎骨脳底動脈が圧迫されて血流が阻害されると「椎骨脳底動脈不全」を起こすこともあります。ひどいめまいや立ちくらみなどの症状が出たときは、椎骨脳底動脈不全が疑われます。
検査と治療
このように長期間関節リウマチの治療を受けている患者さんで、首や後頭部の痛みや運動制限のある方は定期的に頚部レントゲン検査を受けられることをお勧めします。この場合、通常の正面、側面の画像に加えて首を前屈・後屈させての撮影(最大屈曲・最大伸展)や正面から口を開けた状態での撮影(開口環軸)を行うことによりで環椎、軸椎の状態がよくわかります。
またレントゲン検査で亜脱臼や歯突起の異常などが見られた場合は、MRI検査で神経、脊髄、延髄への圧迫具合などを調べます。
症状が首や後頭部の痛みだけの場合は保存療法で様子をみますが、リウマチ性脊椎炎の進行はリウマチ自体の悪化が深く関係しており、リウマチの症状が鎮静化してくると、頚椎に起こった病変も進行が止まることが明らかになっていますので、日常生活で首に衝撃を与えないよう注意してリウマチ治療を行っていくことが大切になってきます。
〇好発年齢:35歳〜
〇特徴的な症状:首や後頭部が痛む、首が回らなくなる。
〇こんな人に多い:関節リウマチの進行した人・罹患期間の長い人、(関節リウマチは女性に多い)
どんな病気?<関節リウマチが進行して脊椎に波及する>
関節リウマチは「自己免疫疾患」の一つで、患者さんの多くは女性です。自己免疫疾患とは、免疫機能の異常により、自分の体の組織を敵とみなして攻撃してしまうために起こる病気です。関節リウマチでは関節が攻撃対象となります。
関節リウマチでは関節の「滑膜」(かつまく)が攻撃を受けて炎症を起こし、関節が徐々に破壊されていきます。滑膜は、関節を包んでいる関節包(かんせつほう)の内側にある膜で、関節液を生産し、関節のなめらかな動きを助けています。
炎症は手指の関節から始まり、進行するに従って全身の関節に及びます。この炎症が脊椎に起こったものを「リウマチ性脊椎炎」といいます。リウマチ性脊椎炎は、関節リウマチの進行した患者さんに起こりやすく、約半数に発生していることがわかっています。
また、脊椎の中でも半数以上が上部頚椎に起こります。特に「環軸関節」(かんじくかんせつ)にこの病態が最も強く現れます。環軸関節は第一頚椎(環椎)と第二頚椎(軸椎)から成る一番上の関節で、頭部を支える重要な部位です。
炎症によって環軸関節を取り巻く関節包がゆるんだり、周辺の骨が破壊されたりつぶれることがあります。特に問題と成るのは、環椎を支える軸椎の突起(軸椎歯突起)が細くなったり折れたりすると、環椎が前方あるいは後方へずれて亜脱臼してしまうことです。
そのほか、炎症が進んで滑膜が増殖すると腫れて大きくなり、脊髄を圧迫することもあります。
症状の特徴
関節リウマチになると関節に腫れと痛みが現れますが、頚椎が障害された場合の症状は、首から後頭部にかけての鈍い痛みや運動制限などです。最初のうちは疲れた時だけ現れますが、進行すると常に痛みが起こるようになります。首を前後に曲げたり、回すときに特に痛みが強くなり、しだいに動かしにくくなってきます。
頚椎の亜脱臼や骨破壊で骨がずれたり、滑膜が増殖すると、脊髄への圧迫による症状が出ることも少なくありません。手足のしびれやこわばり、歩行障害などです。文字が書けない、箸が持てないなど、手指の細かい動作ができなくなることもあります。
さらに、上位頚椎に炎症が起こった場合は、位置が脳に近いことから、下位脳神経や延髄に影響が及ぶことがあります。下位脳神経には顔面神経や舌下(ぜっか)神経、舌咽(ぜついん)神経などが集中しているため、めまいや舌がもつれるなどの下位脳神経症状が現れます。
特に注意をようするのが延髄圧迫症状です。延髄は、呼吸や心拍など、生命維持に不可欠な機能を維持する役割を担っています。そのため延髄麻痺が起こると、突然死の危険があります。呼吸が苦しい、心臓がドキドキするというような症状が出たときは、緊急手術が必要となります。
ほかに、ずれた頚椎によって椎骨脳底動脈が圧迫されて血流が阻害されると「椎骨脳底動脈不全」を起こすこともあります。ひどいめまいや立ちくらみなどの症状が出たときは、椎骨脳底動脈不全が疑われます。
検査と治療
このように長期間関節リウマチの治療を受けている患者さんで、首や後頭部の痛みや運動制限のある方は定期的に頚部レントゲン検査を受けられることをお勧めします。この場合、通常の正面、側面の画像に加えて首を前屈・後屈させての撮影(最大屈曲・最大伸展)や正面から口を開けた状態での撮影(開口環軸)を行うことによりで環椎、軸椎の状態がよくわかります。
またレントゲン検査で亜脱臼や歯突起の異常などが見られた場合は、MRI検査で神経、脊髄、延髄への圧迫具合などを調べます。
症状が首や後頭部の痛みだけの場合は保存療法で様子をみますが、リウマチ性脊椎炎の進行はリウマチ自体の悪化が深く関係しており、リウマチの症状が鎮静化してくると、頚椎に起こった病変も進行が止まることが明らかになっていますので、日常生活で首に衝撃を与えないよう注意してリウマチ治療を行っていくことが大切になってきます。