上京ものがたり
西原理恵子の『
上京ものがたり』がやっと単行本化されたので購入。待ってました。
ずいぶん前、何かの青年誌に連載されてるのを、コンビニでたまたま立ち読みしてて見付けたこの作品。西原氏の作品は昔から好きだったんだけど、この連載の事は全然知らなかった。西原氏の、上京してからしばらくの様子を4コマ漫画風絵本(1巻完結 全53話)みたいに描いてある。
作品中では、「絵で食べていける様になりたい」という夢だけを抱きしめて上京した彼女の極貧生活 が面白悲しく語られている。水商売でのバイトの話や、欲しい洋服一枚買えない生活の話や、仕事もしない男の腕を寂しさ故に掴んでしまう話。
たまたま立ち読みしたのは、その中の第16話。
『その日は マルイで買った新しい服でおでかけ』
『使えないお金だけど 洋服が一着買えるお金をサイフに入れてのブラブラはすごく楽しい』
『たくさんの美術書がある本屋にゆく。絵の本は高くて買えないので ここで見るのが楽しみ』
『その時私は なんで買えないのかなと思った』
『私が本当に欲しいのはこの本なのに なんで新しい服着てるんだろう。
私が本当に欲しいのはこの本なのに なんでうす汚い部屋で何もしない男とくらしているんだろう。
私はかっこ悪い。
ああ 私はとてもかっこ悪い。
きれいな絵の本をめくりながら 私はずっとそう思い続けた』
たった5コマの、例の西原風のヘタな絵で描かれた漫画なのに、最後の一コマを読んだ途端、頭の中に小さな棘みたいなものが刺さるのを感じた。そこがコンビニなのも忘れて、少しだけ泣きそうな気分になった。そこがコンビニなのも忘れて、何十回もそのたった5コマの漫画を読み返した。
著作権法に触れるかな? ごめんなさい西原先生。
でもどうしても書きたかった。
Posted by rakuten_nouten at 05:43
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楽脳さま、おひさです
私はまだ「上京物語」見てないのですが、Amazonの書評を見ると賛否両論ですね(おどろいたことに)。
賛成派は簡単な話で成功物語を一緒に喜んで読むということなのですが、否定派は、「結局、大成功したからあとで苦労が報われたということじゃないか。成功しないで苦しみっぱなしの人はどうするんじゃい」ということみたいです。
でも、苦労したあと、成功とまではいかなくてもまずまずの生活レベルになった、というのではまた誰も感動しませんよね。
数字で言うと、0からスタートしてマイナス5まで落ちた人が、0になるのでは感動は今一。プラス5だと感動。プラス10まで成功するとねたみということでしょうか。マイナス10くらいまで落ちて、シャブ、ウリ、借金の3重苦まで落ち込めばプラス10まで認めてもらえるのかな?
女性の書評が手厳しいのをみて、驚愕です。「女はこわいな」って。
>葉一郎センセ
どもです。お久しぶりです。
そうなんですか。書評は賛否両論ですか。
「苦しみっぱなしの人はどうするんじゃない」つっても、ハッキリ言えば「知ったこっちゃない」という事にしかならないと思うんですが(w
確かに「勝者の弁」なのかもしれませんが、勝者の中に存在する”負けの時代”を垣間見る事は、今”負けの時代”の真っ最中の人の励みにもなると思うんだけどなぁ。
商品として価値があるのも「今は勝っている人の、激しい負けの時代の話」か「今も負けている人の、昔からの負けっ放しの話」であって、「今はそこそこだけど昔は負けてました」じゃ読む気にもなれないし。
『上京物語』の中にこんな話もありました。
ある日、そこそこ売れ始めてきた西原氏が、依頼されていた原稿を持って出版社を訪れます。するとそこで、女の子がワンワンと声を上げて泣いています。
「どうしたの?」と西原氏が訪ねると、その新人漫画家の女の子は答えました。
「やっと連載が決まったのに、癌で入院中のお父さんがそれを見るのを楽しみにしているのに、7回連載の約束なのに5回で打ち切られちゃったんです。もう全部作品は出来上がってるのに」
西原氏は同情して言いました。
「ひどいね」
そして心の中でこう思いました。
「でも悪いのはあんただよ。あんたがつまんないから悪いんだよ。この悔しいの、今度は上手に描いてごらんよ」
こういう西原先生らしい作風、好きなんだけどなぁ。