2008年05月25日
[各地のラーメン店特集��] 釧路のラーメン店紹介
北海道第4のご当地ラーメンとして名を上げた釧路ラーメン。これまでこのシリーズで紹介してきた地域は、それぞれその地域の店に確固たる傾向のあるラーメンはありませんでしたが、釧路ラーメンは完全に「ご当地ラーメン」と言い切れるほどの明確な特徴があります。釧路のラーメン店は、そのほとんどが地元の製麺会社の細〜極細の縮れ麺を使用しており、スープは鰹だしを効かせたあっさり味です。その辺りは「釧路ラーメン」と検索すれば普通に出てくるのでこれ以上は特に触れません。釧路ラーメンの概要については調べれば分かりますが、食べ手が一番知りたいであろう「釧路で旨いラーメン屋はどこ？」という質問に答えるに適したメディアは以前よりなかなかありませんでした。ならば自分で調べてやろう、ってことで私は以前、集中的に釧路ラーメンを食べ歩いたことがあります（数えてみるとこれまでに89杯実食）。そこで釧路ラーメンのおすすめ店を、各店それぞれ一般的な釧路ラーメンと対比しながら列挙していこうと思います。
『秀航園（しゅうこうえん）』 釧路町桂木5丁目41992年創業、平日でも行列ができることもある釧路ラーメン界最大の人気店。私が釧路出身者・在住者約10人に釧路ラーメンのおすすめ店を聞いたところ、最も多く挙がったのがこの店（その他複数回答があったのは『まるひら』『海皇』『夏堀』『やはた』）。焼肉屋のような店名ですが、れっきとしたラーメン店です。以前は釧路市武佐の住宅地のド真ん中にあり、そのような場所にあるにも関わらず開店前から行列ができ、周囲の道路が客の車で埋め尽くされる、という驚異の繁盛店でした。私の中では札幌の『まるともラーメン』と並ぶ、北海道2大驚愕行列店です（？）。現在地に移転後は混雑（混乱）がいくぶん緩和された感がありますが、それでも客が止むことのない超人気店です。今の店舗も「ポスフール」の北東側の目立たない場所にあります。スープは釧路らしくあっさり仕上げですが、複雑な味がします。麺は釧路のそれそのもの。チューシューはとろとろに煮た仕上げで、これは釧路ではさほど見かけません。牡蠣ラーメン、赤鬼ラーメン等の多彩なメニューも人気の要因です。
『まるひら』 釧路市浦見8丁目1
1959年創業、釧路ラーメンを語る上で絶対外せない釧路の重鎮。午前9時30分の開店前後から各地より車がやってきます。今年訪問したときは平日の午後3時に入店したのですが、それでいて行列ができていました。しかも次から次へと客がやってくる。平日の午後3時に行列ができる店なんて、北海道中見ても一体何軒あるでしょうか。釧路の老舗は残念ながらその多くが出汁の弱いあっさり味ですが、ここは非常にしっかりとした出汁。匂いからして感じる厚みが違います。あっさり透明スープだから短時間の煮込みで仕上げているんだろう、なんて最初思っていたら、実は24時間煮込んでいるらしい。他の釧路の老舗にないコク（と若干の酸味）はそれによるものか。生細縮れ麺も非常に美味でスープとも好相性。秀航園とは「細麺あっさり」という点では同じですが、味の組み立ては全く違います。店内外の雰囲気もまるで違い、とにかくこの2軒は同じ釧路の有名店ながら好対照で、比較すると面白いです。
『夏堀』 釧路市益浦4丁目23釧路の超繁盛店といえば、前述2店とこの店の計3店が真っ先に思いつきます。駅からバスで行くと30分もかかり（釧路駅ターミナルから「53晴海線」乗車、益浦4丁目下車）、しかも店舗周辺は住宅以外なにもないような閑静な場所（写真）。そのような場所にあるにも関わらず、店の外まで待ち客が並ぶことも珍しくありません。複雑な味わいのスープもさることながら、あまり語られませんが麺もかなり旨い。極細縮れで腰がしっかりとあり、なおかつ添加物っぽい味もない。札幌・旭川・函館のどこにおいても全く見られないタイプの極上麺です。私がラーメン屋をやることになったら、この麺屋（道東製麺）から麺を取り寄せてみたいな〜なんて思っています。麺の茹で時間は10秒ほど、初めて見たときはあまりの速さにギョッとしてしまいました。注文してからあっという間に出てきます。オバちゃんたちの接客もなんともアットホームでいい感じです。
『河むら』 釧路市末広5丁目2
各地のラーメンテーマパークや物産展に出店する釧路ラーメンの広告塔。それらで食べたこともある方も、是非この本店で食べてみてください。「河むらの本店は旨い」というのは複数のラーメニストから聞きました。オーソドックスな釧路スタイルの店では間違いなく上位。ちなみにここは一般的な釧路の店と違い、化学調味料の味はあまり感じません。
『海皇（ハイファン）』 釧路市愛国東2丁目7
道東全域に数店舗展開する豚骨ラーメン店。いわゆる釧路ラーメンではありませんが、釧路の極細あっさり味は物足りないという人を中心に熱烈なファンがいます。釧路の霧をイメージしたという霧色ラーメンは見た目も鮮やか。一時期札幌にもありましたが撤退しました。
『魚一（うおっち）』 釧路市幸町13丁目 釧路丹頂市場内
釧路ラーメンの評判店はどこも概ね駅から大きく離れた場所にありますが、釧路駅から徒歩圏内でのおすすめ店といえば『河むら』とここ。魚醤を手づくりしてタレに使っている唯一無二のラーメン店。本には「クセのない魚醤」とありましたが、私が食べた感じではクセはあったような・・・。しかし旨いことには変わりません。ちなみに隣りの和商市場の中にも『邦紀』という無添加自家製麺のラーメン店があります。両市場とも食事や買い物で駐車無料です。
『麺道 昇憲』 釧路町曙1丁目1釧路市の隣りの釧路町（それにしても紛らわしいなぁ・・・）に新規開業。釧路風のあっさりスープもありますが、メインは豚骨スープのよう。私は豚骨醤油を食しました。スープの色合いはなんか中途半端であまり旨そうに思えなかったですが、これが食べてみると旨い。見た目以上にコクがしっかりあります。鶏の成分も浮いてどことなく家系っぽさもあり。札幌の小林製麺ですが、札幌でもあまり見かけないタイプのモチモチ麺。チャーシューメチャ多っ！しかも旨い（私には若干クドいですが）。これだけボリュームがあれば釧路で730円でも高くは感じません。良い店です。
『かしわ家』 釧路市昭和中央4丁目3
釧路の一般のラーメン屋の多くは、弱い出汁を化学調味料でまとめたチト薄っぺらい味という印象がありますが、ここは無化調できっちり出汁をとっている注目店です。欲を言えば首都圏の無化調あっさりの実力店からすると、ちょっと出汁が弱く感じます。狙いは間違えていないと思うので、コクが増せば一流店の仲間入りも果たせるでしょう。
『柳苑』 釧路市住之江町11
看板に「くしろらーめん」を謳う店。そのとおり釧路正統派スタイル。派手さはないもののしみじみ旨いラーメンです。この店も住宅街の真ん中にあります。
『万豊』 釧路市鳥取大通3丁目4
昨年末に開業の新店。釧路にしては珍しく、ラーメン作りへのこだわりを前面に打ち出し表記している店。調味料に頼ることのないコクのあるあっさりスープは、さすが言うだけのことはあるなと感心しました。ラーメンを深く突き詰めた感のある多彩なメニュー、1回行っただけでは真価は測れないでしょう。再訪してみます。
『豪壱』 釧路市芦野2丁目4
以前は市内文苑の非常にわかりづらい場所にありましたが、数年前に芦野に移転しました。今も表通りではなく分かりづらい場所にあり、しかも暖簾もない。狙ってるのか？ 7種類ある坦々麺を一押ししていますが（未食）、味噌や塩も釧路にしてはコクのある練られたスープで旨いです。塩は濁り気味の仕上げで「どちらかというとあっさり系」ですが、どうも魚だしという感じはあまりせず、釧路スタンダードとは一味違った旨さがあります。丼の両端をはみ出る横長チャーシューも名物。
『むかし屋』 釧路町光和6丁目78
名前の通り釧路流あっさり味ですが、しっかりと出汁が出ています。ここのご主人は若く見えますが、前に釧路市内の別のラーメン店の厨房で見かけたことがあり、ラーメン歴は長そうです。
『めーらん 虎吉』 釧路市春採7丁目30以前は市内愛国にありました。釧路にしては珍しくつけ麺を充実させています。基本のラーメンは焦がしねぎが浮いた豚鶏魚介味で、ラーメンを研究している人が作っているという印象。しかし現在の全国標準から見ると一流半という感想になってしまうかな。和風味のメニューも試してみたいです。
『喜多の味らーめん 春採店』 釧路市春採7丁目 マックスバリュ敷地内
ショッピングセンターの一角にある店、というとあまりいいイメージはないですが、味は本格派です。幾多の素材をダブルスープ製法で仕上げた「あっさり深い」スープ。麺は店内の製麺室で作られる釧路風無添加麺。注目店です。
『火の車』 釧路町桂木3丁目1
釧路では少数派の白濁スープを売りとする店。塩ラーメンが一押しのようですが、度々新メニューが登場して飽きさせません。こく醤油も旨かったなぁ。さらに店主は最近、市内星が浦に『ばかあたり』という新店を開業しました。ばかあたりは旭川の『正月ヤ』を思い出させる、ちょっとひっこんだ場所にあるスタイリッシュな店舗で、豚の頭でとったまるで釧路っぽくない味のラーメンで話題を呼んでいます。
『三栄軒』 釧路市新栄町7古い民家の一隅にひっそりと暖簾を垂れる、ノスタルジックに浸れるラーメン店（写真参照）。釧路ラーメン界が遺した財産とでも表現したくなる。ラーメン以外にも「味のある」隠れ名店です。
『やはた』 白糠郡白糠町東1条南1丁目
元々の釧路市と、旧音別地区の釧路市に挟まれた白糠町。白糠といえばやはた（矢幡）。この店も一食の価値大ありの老舗有名店です。円熟味あふれる澄んだスープと60年の歴史がある自家製麺のコラボレーションは、磨きぬかれた「名刀」という印象です。とにかく絶対必食の一店。
それにしても釧路ラーメンって本当に際立った特徴がありますね。たとえば旭川のラーメンはさすがにハイレベルですが、しかし札幌にもハイレベルな旭川ラーメンはたくさんありますね。函館ラーメンを名乗る店は札幌には少ないですが、単に塩ラーメンであれば札幌にもハイレベルな味はたくさんある。しかし釧路ラーメンは、札幌で似たラーメンを食べるのは難しい。有名店の『やはた』『夏堀』『まるひら』に近似した味は札幌では思い当たらない。札幌の人間が他の4大ラーメンを食べるとしたら、札幌人にとって食べ歩いて一番面白いのは釧路ラーメンかもしれませんね。
なお釧路には「釧路ラーメン麺遊会」という、ラーメン店とラーメンファン共同による愛好会があります。麺遊会のホームページも是非参考にしてみてください。
