長谷川千波人生の幅と深さは自分で決める/長谷川千波

男性ばかりモーレツ営業会社でトップセールスとなり、長く営業所長を務めた長谷川千波さん。しかし、もとはリストラ寸前の赤字社員だったという。長谷川さんの心を変え、運命を変えた「知命と立命」の足跡と、体当たり営業から掴んだその極意。

(一部抜粋はじめ)
・「口下手・人見知り・社交的でない」人でもコツを掴めば売れるように変わっていきます。
・もともと、私自身が口下手、人見知り、人嫌いの性格で、全然成績をあげられないリストラ寸前の赤字社員だったんですね(笑)。だから気持ちが分かるんでする。
・小手先では通用しないですから、「他社より安い」「特典がある」「割引する」と言って釣るのではなく、「この商品が欲しい」と心を動かしてもらうにはどうしたらよいか。そこを真剣に考えたことが私の営業の原点です。
・すべてのヒントはお客様がくれているんですね。「お母さん、一朗君は勉強は好きですか?」「何言ってんのぉ、好きなら苦労してないし(笑)」「ですよねー(笑)」と、こうやって笑い合えた方とはいい結果になることが多いなと。逆に「それを答えたから何?」みたいに冷たく言い放たれる時はアポイントを取るのも難しいから、爽やかに電話を切ろうと。「勉強が好きですか」というキーワードが出てきたのも、お客様の反応を見てのことでした。
・拒絶される時は非常に手厳しい断り方をされます。だからマインドを強くしなければなりません。マインドを強くするというのは、素のままの自分で勝負しないということです。
・よく「営業向き」とか「持って生まれた営業センス」とかいいますが、そんなものはないんです。
・吉本興業で横山やすしさんのマネージャーをされていた大谷由里子さんから教えていただいた話ですが、素はおもしろくないけれど懸命に漫才の台本をつくり込んだり、アドリブ用の台本をつくって覚えたり、ビデオを撮って見直して、「ここは削る」「ここは膨らます」と、つくり込んでいく人は生き残っていくそうです。
・先入観をもたないこと。「この人、怖そう」とか、あるいは「この家は三十万円の教材は買わないだろう」と自分で決めないこと。
・結果を気にしすぎず、いまやるべきことに集中する。
・「達成できるかどうか」を議論の俎上にのせてはいけません。「いつまでにどの方法で達成するか」に集中して検討するわけです。
・営業という仕事は、数ある職業の中でも「お客様の心がかわる瞬間」にライブで立ち会える仕事で、私はそこにやりがいを感じます。
(一部抜粋おわり)

〔所感〕
 私も基本「営業」です。長谷川さんの話で、目からウロコだったのは、私的には、営業には、向き、不向きがあると思っていて、自分はエンジニアよりも、営業向きだなぁと、なんとなく思っていました。が・・・、プロの営業は違う。
 『マインドを強くする。素のままの自分で勝負しない』
 自分の説明が、相手に理解されないことが続くき、かなり凹んだことがあります。昔、大阪出身の方と一緒に営業をした時に、「南部さん、営業は回ってなんぼ。興味がない人はない。それに対して、いちいち凹まない。縁がないだけ。ちょっとでも興味のある人に出会えばいいだけ」と言われたことがありました。
 思えば、人間は単純。自分に置き換えてみてもそうですが、興味がないものをガーガー言われるほど苦痛で不快なことはありません。アプローチとして、入口論で必要なこと。自分が提案しようとすることに、相手が少しでも興味があるかを確認すること。この、お客様との「合意」なしに、商品やサービスを説明し、畳み込もうとしても、相手は引くだけ。失礼ですが、先日お会いした保険の外交員の方が、そのタイプでした。これだと、自分の一連の説明をしたことに、自分だけが満足し、実はお客は思いっきり引いているということに気が付かないタイプ。これではお互いが不幸です。
 何回かお客様とのやりとりしていくと、お客様の興味の有無を確認できる手法に気がづきます。その手法でまず、興味の有無を確認し、あれば、少しずつ説明をしていき、その中でも興味の確認をしながら、話を進めていく。一方的に話だけを聞かされる方は、飽き飽きします。さりげない会話のキャッチボールがあると、営業側も、お客様側も、自分の興味の位置、深さをお互い確認しながら、営業の話を進めていくことができます。
 吉本興業の話も、納得するものがありました。人の笑を取る。これは、優れた「技術」です。私も、仕事のプレゼンや、人前で話すことはある程度経験してきていますが、その中で、笑いを挿入することが苦手でした(苦笑)。CoCo壱番屋創業者の宗次徳二の講演を二回聞いたことがあります。笑いをふんだんに挿入し、和やかな雰囲気を作りながら、さりげなくポイントを伝えていきます。かなり「笑い」のタイミングが計算されています。
 営業も、準備がとても大切だということです。自分なりの営業資料を作り込むことは当然、お客様を前にして営業することを想定し、営業トークのシミュレーションをすることが大切です。それも、一本ではなく、相手の反応を想定し、数種類のパターンのストーリーの練習。振り替えれば、同じパターンが全くないことに気が付きます。当たり前です。お客様の性格、ポジション、考えが千差万別だからです。今でも、「ありゃ〜、余計なことまでしゃべっちまった」とか「ここ、もうちょっと相手の希望を引き出すんだった」とかいう、反省は尽きません(笑)。
 『「達成できるかどうか」を議論の俎上にのせてはいけません。「いつまでにどの方法で達成するか」に集中して検討するわけです。』
 これは、ベースの考えとして、とても勉強になりました。しょぼい中小企業の場合、目標をさだめたら、「達成できるかどうか」なんて、議論する余地はなく、達成しないと存続できない訳で、とにかく「やる」わけです。だったら、具体的に、「いつ」までに「どの」方法で、必ず「達成する」かを考え行動すること。「そのとーりだー」という感じでした。
 『営業は、「お客様の心がかわる瞬間」にライブで立ち会える仕事』
 これも、「いいこといってますね〜」といった感じでした。私、外見がイマイチなので、若い頃、異性と付き合うために、とっても努力しました(笑)。努力が報われ、付き合うに至った時の喜び。これが、今の営業の「お客様の心が変わる瞬間」の喜びに通ずるものがあります(笑)。
 アルプス電気の新入社員研修の時、故片岡会長の講話で、「男は、女性に興味があり、モノにできるくらいでないと、ダメだ」と話されたことを思い出します。これ、正に営業の極意だと、この言葉だけ、「オレは大丈夫!」と、インパクトを持って覚えています。
 「営業」は、特に公的な資格はありませんが、奥の深い「技術」であり、これは、日々の経験と努力をした者にしか得られないもので、無限大に成長する技術であるということを、再認識しました。

●長谷川千秋 詳細はこちら