研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

2014年10月

参考書・文献・読書録インデックス(2014.10.26版)その1:マネジメント関連

今まで内容の紹介をさせていただいた参考書、文献のリストその1です。
このリストから多少詳しいまとめに行けるようにしています。
概ね著者(グループ)ごとにまとめ、特に重要だと思う文献にはコメントをつけています。文献リストその2(科学に近い内容)はこちら。

まとめページその1収録文献
丹羽清、「技術経営論」、2006
 コメント:技術経営の全体感をつかむならこの本がおすすめです。
丹羽清、「イノベーション実践論」、2010
丹羽清(編)、「技術経営の実践的研究」、2013
後藤晃、「イノベーションと日本経済」、2000
Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K.
、「イノベーションの経営学」、2001
 コメント:技術経営の主要トピックスを網羅。現在は新版(第4版)あり。
Christensen, C.M.
、「イノベーションのジレンマ」、1997
 コメント:技術経営を考えるなら必読。
Christensen, C.M, Raynor, M.E.
、「イノベーションへの解」、2003
 コメント:「イノベーションのジレンマ」続編。これも重要な指摘が多いです。
Christensen, C.M, Anthony, S.D., Roth, E.A.
、「明日は誰のものか」、2004
Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J.
、「イノベーションへの解実践編」、2008
 コメント:クリステンセン著ではありませんが関係者の著書。破壊的イノベーション実践の手引として有用。
Wessel, M., Christensen, C.M.
、「破壊的イノベーションの時代を生き抜く 『拡張可能な中核能力』を見極めよ」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.32.、楠木建「クリステンセンが再発見したイノベーションの本質 イノベーションは技術進歩ではない」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.48.Mounz, M.、「破壊的イノベーター:キバ・システムズ アマゾンも認める新興企業」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.78.Downes, L., Nunes, P.F.、「破壊的イノベーションを越えるビッグバン型破壊 常識を越えたスピードで市場に浸透する」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.90.Gilbert, C., Eyring, M., Foster, R.N.、「相反する2つの変革を同時に進める法 既存事業のテコ入れと将来の糧づくり」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.110.Adner, R., Snow, D.C.、「陳腐化した技術を延命させる戦略 『前向きな退却』を選ぶ」、Diamond Harvard Business Review, June 2013, p.124.ブログ記事へ
Brown, B., Anthony, S.D.
、「P&Gニュー・グロース・ファクトリー イノベーションの成功率を高めるシステム」、Diamond Harvard Business Review2011ブログ記事へ
Dyer, J.H., Gregersen, H.B., Christensen, C.M.
、「イノベーターのDNA」、Diamond Harvard Business ReviewApr. 2010p.36.ブログ記事へ
Dyer, J., Gregersen, H., Christensen, C. M.
、「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル」、2011.ブログ記事へ
Clayton M. Christensen, James Allworth, Karen Dillon、「イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」、2012ブログ記事へ
Johnson, M.W.
、「ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ」、2010ブログ記事へ
入山章栄、「世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア」、2012ブログ記事へ
Freek Vermeulen
、「ヤバい経営学 世界にビジネスで行われている不都合な真実」、2010ブログ記事

まとめページその2収録文献
Collins, J.C., Porras, J.I.
、山岡洋一訳、「ビジョナリーカンパニー」、1994
Collins, J.
、「ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則」、2001
Collins, J.
、「ビジョナリーカンパニー③衰退の五段階」、2009ブログ記事へ
Collins, J., Hansen, M. T.
、「ビジョナリーカンパニー④自分の意志で偉大になる」、2011.ブログ記事へ
 コメント:ビジョナリーカンパニーシリーズでは②と④が重要と思います。
Nonaka, I., Takeuchi, H.
、「知識創造企業」、1995
 コメント:知識創造理論の基本。ただし、その後の発展もフォローが必要と思います。
野中郁次郎、竹内弘高、「『実践知』を身につけよ 賢慮のリーダー」、Diamond Harvard Business Review2011ブログ記事へ
野中郁次郎、遠山亮子、平田透、「流れを経営する――持続的イノベーション企業の動態理論」、2010.ブログ記事へ
野中郁次郎、紺野登、「知識創造経営のプリンシプル 賢慮資本主義の実践論」、2012.ブログ記事へ
 コメント:知識創造理論が体系的にまとめられ、知識創造理論の全体像を把握するのに最適。
野中郁次郎、勝見明、「イノベーションの知恵」、2010ブログ記事へ
野中郁次郎、徳岡晃一郎編著、「ビジネスモデルイノベーション 知を価値に転換する賢慮の戦略論」、2012.ブログ記事へ
紺野登+目的工学研究所著、「利益や売り上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか ドラッカー、松下幸之助、稲森和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則」、2013ブログ記事へ
池田信夫、「イノベーションとは何か」、東洋経済新報社、2011.ブログ記事へ
Berkun, S.、「イノベーションの神話」、2007ブログ記事へ
Rogers, E.M.
、「イノベーションの普及」、2003ブログ記事へ
 コメント:イノベーションを実用化する上で認識すべき普及学の基本。
Kim, W.C., Mauborgne, R.
、「ブルー・オーシャン戦略」、2005
Moore, G.A.
、「ライフサイクルイノベーション」、2005
Moore, G.A.
、「エスケープ・ベロシティ キャズムを埋める成長戦略」、2011.ブログ記事へ
Chesbrough, H.、「Open Innovation」、2003
伊丹敬之、東京理科大学MOT研究会編著、「技術経営の常識のウソ」、2010ブログ記事へ
Davila, T., Epstein, M.J., Shelton, R.
、「イノベーションマネジメント」、2006ブログ記事へ
Govindarajan, V., Trimble, C.
、「イノベーションを実行する 挑戦的アイデアを実現するマネジメント」、2010.ブログ記事へ
Immelt, J.R., Govindarajan, V., Trimble, C.
、「GEリバース・イノベーション戦略」、Diamond Harvard Business Review, Jan.2010, p.123, (2010).ブログ記事へ
Govindarajan, V., Trimble, C.
、「リバース・イノベーション 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき」、2012.ブログ記事へ
 コメント:現在進行形の新イノベーション手法として重要と思われます。
Navi Radjou, Jaideep Prabhu, Simone Ahuja
、「イノベーションは新興国に学べ! カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力」、2012ブログ記事へ
Washburn, N.T., Hunsaker, B.T.
、「新興国市場発のアイデアを橋渡しする 破壊的イノベーターの条件」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 5月号、p.116.ブログ記事へ
Lafley, A.G., Martin, R.L., Rivkin, J.W., Siggelkow, N.、「独創的な戦略を科学的に策定する あらゆる選択肢から検証する7つのステップ」、Diamond Harvard Business Review, 2012.ブログ記事へ
A.G. Lafley, Roger L. Martin
、「P&G式『勝つために戦う』戦略」、2013ブログ記事へ
「競争優位は持続するか」(Rita Gunther McGrath「一時的競争優位こそ新たな常識 事業運営の手法を変える8つのポイント」、Todd Zenger「戦略は価値観に従う 成功する企業セオリーが持つ3つの”sight”」、佐藤克宏「ケイパビリティこそ競争優位の源泉である 戦略の賞味期限が短くなった時代」、Michael C. RyallVCM:価値獲得モデルで戦略を考える 競争優位はエコシステムで決まる」、森本博行「GEの競争優位はなぜ持続するのか 戦略論の系譜から読み解く」、Nicholas Kachaner, George Stalk, Alain Bloch「世界の同族企業からしたたかさを学ぶ」)Diamond Harvard Business Review, November 2013, p.32-118.ブログ記事へ
Carlson, C.R., Wilmot, W.W.
、「イノベーション5つの原則 世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論」、2006ブログ記事へ
Ron Adner
、「ワイドレンズ イノベーションを成功に導くエコシステム戦略」、2012ブログ記事へ
Mullins, J., Komisar, R.
、「プランB 破壊的イノベーションの戦略」、2009.ブログ記事へ
Thomke, S., Reinertsen, D.、「製品開発をめぐる6つの誤解 製造プロセスでの効率性は通用しない」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 8月号、p.76.ブログ記事へ
Oded Shenkar
、「コピーキャット 模倣者こそがイノベーションを起こす」、2010ブログ記事へ
三品和広+三品ゼミ、「リ・インベンション 概念のブレークスルーをどう生み出すか」、2013ブログ記事へ
Regina E. Dugan, Kaigham J. Gabriel
、「DARPAの全貌:世界的技術はいかに生まれたか アメリカ国防総省国防高等研究計画局のイノベーション」、Diamond Harvard Business Review, July 2014, p.88.ブログ記事へ

まとめページその3収録文献
堀井秀之、「社会技術論 問題解決のデザイン」、2012.ブログ記事へ
東京大学i.school編、「東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた」、2010ブログ記事へ
Osterwalder, A., Pigneur
Y.、「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書 ビジョナリー、イノベーターと挑戦者のためのハンドブック」、2010ブログ記事へ
Esslinger, H.
、「デザインイノベーション デザイン戦略の次の一手」、2009ブログ記事へ
Leonard-Barton, D.
、「知識の源泉」、1995
 コメント:研究をする「人」の問題についての重要な指摘が多いです。
Leonard, D., Swap, W.
、「『経験知』を伝える技術」、2005
 コメント:「知識の源泉」とあわせて重要。
Polanyi, M.
、「暗黙知の次元」、1966
Rasmusson, J.
、「アジャイルサムライ――達人開発者への道」、2010.
Schwaber, K.
、「スクラム入門 アジャイルプロジェクトマネジメント」、2004.
勝見明、「
石ころをダイヤに変える『キュレーション』の力」、2011ブログ記事へ
野村恭彦、「フューチャーセンターをつくろう 対話をイノベーションにつなげる仕組み」、2012.ブログ記事へ
Scott D. Anthony
、「スタートアップ4.0 再び大企業の時代へ」、2013Steve Blank、「リーン・スタートアップ:大企業での活かし方 GEも活用する事業開発の新たな手法」、2013James D. Thompson, Ian C. MacMillan、「BOP市場で社会起業を成功させる方法 想定外のリスクにどう対応するか」、2013ブログ記事へ
Eric Ries
、「リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」、2011ブログ記事へ
三崎秀央、「研究開発従事者のマネジメント」、2004
 コメント:基本的な説明も多く、研究者を考える上で参考になります。
開本浩矢、「研究開発の組織行動」、2006
 コメント:基本的な説明も多く、研究者を考える上で参考になります。
福谷正信、「研究開発技術者の人事管理」、2007
八木洋介、金井壽宏、「戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ」、2012.ブログ記事へ
Kelly, T., Littman, J.
、「イノベーションの達人!」、2005ブログ記事へ
McCall, Jr. M.W.
、「ハイ・フライヤー」、1998
David A. Garvin
、「グーグルは組織をデータで変える コミュニケーション軽視の風土を改善する」、Diamond Harvard Business Review, May 2014, p.45.ブログ記事へ
Dixon, N.M.
、「ナレッジ・マナジメント5つの方法」、2000
Rosenzweig, P.
、「なぜビジネス書は間違うのか」、2007ブログ記事へ
Levy, P.F.
、「模範的チームはなぜ失敗したか」、Diamond Harvard Business Review, Feb.2010, p.154, (2010).ブログ記事へ
Heath, C., Heath, D.
、「アイデアのちから」、2007.ブログ記事へ
Heath, C., Heath, D.
、「スイッチ! 『変われない』を変える方法」、2010.ブログ記事へ
Gardner, H.K.
、「メンバーのプレッシャーを克服させる法 大事な時に限って、萎縮してしまう」、Diamond Harvard Business Review, 2012年9月号、p.84ブログ記事へ
Schein, E.H.
、「人を助けるとはどういうことか 本当の協力関係をつくる7つの原則」、2009ブログ記事へ
森時彦著、「ファシリテーター養成講座 人と組織を動かす力が身につく!」、2007ブログ記事へ
金井壽宏、「危機の時代の[やる気]学」、2009ブログ記事へ
 コメント:モチベーション理論の説明が参考になります。
Robert Kegan, Lisa Laskow Lahey
、「なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践」、2009ブログ記事へ
Ben Waber
、「職場の人間科学 ビッグデータで考える『理想の働き方』」、2013ブログ記事へ
Kevin Werbach, Dan Hunter
、「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」、2012ブログ記事へ
金井壽宏、楠見孝編、「実践知 エキスパートの知性」、2012.ブログ記事へ
中原淳、「経営学習論 人材育成を科学する」、2012ブログ記事へ
上木貴博、「エスノグラフィー 人類学に学ぶ現場主義」、日経ビジネス、2010.12.6号、p.78.
橋本紀子、「『エスノグラフィ』という手法」、RANDOM誌、vol.53p.1(2007).
安宅和人「ビッグデータvs.行動観察データ:どちらが顧客インサイトを得られるのか 価値提供システムで考える6つの使い分け」2014Christian Madsbjerg, Mikkel B. Rasmussen「エスノグラフィーが顧客の真の姿を描き出す デジタル・データで説明できない顧客の行動原理」2014、松波晴人「行動観察をイノベーションへつなげる5つのステップ 常識を乗り越え、みずから変化を生み出す法」2014、宮澤正憲「IDEO、スタンフォード大学d-schoolでにわかに注目される デザイン思考でマーケティングは変わるか」2014Itamar Simonson, Emanuel Rosen「マーケターはオンライン・レビューを武器にせよ 消費者を動かす3つの要素」2014ブログ記事へ
Bruch, H. Menges, J.I.
、「社員を追い詰める『加速の罠』」、Diamond Harvard Business Review, Dec. 2010, p.76.ブログ記事へ
Perlow, L.A., Porter, J.L.
、「プ
ロフェッショナルこそ計画的に休まなければならない」、Diamond Harvard Business Review, Mar. 2010, p.102.
白石久喜、石原直子編、「事業創造人材の創造」、リクルートワークス研究所、2011.6.1.
高橋克徳、河合太介、永田稔、渡部幹、「不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか」、2008ブログ記事
沼上幹、「やらせメール ご無体な命令が思考を止める」、朝日新聞、2011.7.15.
McGrath, R.G.
、「マイクロソフト、3Mが実践する『知的失敗』の戦略」、Diamond Harvard Business Review20117月号、p.24.ブログ記事へ
大竹文雄、「競争と公平感-市場経済の本当のメリット」、2010ブログ記事へ
Joni, S.A., Beyer, D.
、「あえて戦うべき時、協調や譲歩は本当のチームワークではない」、Diamond Harvard Business ReviewMar. 2010, p.40.
Sutton
R.I.、「社内外のじゃま者と戦う 部下を守る『盾』となれるか」、Diamond Harvard Business Review, 2011, 2月号、p.86.ブログ記事へ
小林三郎、「ホンダイノベーション魂 第16回 自律、信頼、平等」、日経ものづくり、2011年7月号、p.103.
Atul Gawande、「アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法」、2009ブログ記事へ
Jpseph Jaworski
、「源泉 知を創造するリーダーシップ」、英治出版、2012ブログ記事へ
Adam Grant
、「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」、2012ブログ記事へ



参考書・文献・読書録インデックス(2014.10.26版)その2:科学関連

今まで内容の紹介をさせていただいた参考書、文献のリストその2です。
このリストから多少詳しいまとめに行けるようにしています。
概ね著者(グループ)ごとにまとめ、特に重要だと思う文献にはコメントをつけています。文献リストその1(マネジメントに近い内容)はこちら。

まとめページその4収録文献
Roberts R.M.
、「セレンディピティー」、1989
 コメント:技術系以外の方にもセレンディピティーの概念は知ってほしい。
Shapiro, G.
、「創造的発見と偶然」、1986
根岸英一、「発見の条件」、有機合成化学協会誌、vol.54No.1p.1(1996).ブログ記事へ
朝日新聞大阪本社科学医療グループ著、「iPS細胞とはなにか 万能細胞研究の現在」、2011
Moss, F.
、「MITメディアラボ 魔法のイノベーション・パワー」、2011.ブログ記事へ
Hand, E., “People power”, Nature, vol.466, No.7307, 2010.8.5, p.685.
Goodnight, J.
、「クリエイティビティを引き出す」、Diamond Harvard Business ReviewSep., 2006, p.3.
鬼塚俊宏、先読み!人気のビジネス洋書、「卓越した知識・技術を持つ米国版「オタリーマン」を企業で活かす『ギークを指導すること~テクノロジーをもたらす従業員を管理・指導する方法~』 Leading Geeks : How to Manage and Lead People Who Deliver Technology――ポール・グレン著」、DIAMOND online2011.6.10ブログ記事
DIAMOND
ハーバードビジネスレビュー編集部編訳、「いかに『問題社員』を管理するか」、2005
内田賢、「研究者と年齢的限界」、組織行動研究 (Keio studies on organizational behavior and human performance). No.26 (1996. 3) ,p.67- 75.
文部科学省「科学技術要覧平成22年版」田嶋清一、「自分と向き合う心理学」、2007
Peterson, C.
、「実践入門 ポジティブ・サイコロジー 『よい生き方』を科学的に考える方法」、2006ブログ記事へ
Achor, S.
、「PQ ポジティブ思考の知能指数 幸せな気持ちになると、何事もうまくいく」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 5月号、p.58.
Spreitzer, G., Porath, C.
、「社員のパフォーマンスを高める 幸福のマネジメント」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 5月号、p.46.
Gilbert, D.
、「些細な出来事の積み重ねが幸福感を左右する 幸福の心理学」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 5月号、p.34.
Kay, J.、「想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか」、2010.ブログ記事へ
Michael Nielsen
、「オープンサイエンス革命」、2012ブログ記事へ
Chris Anderson
、「MAKERS〔メイカーズ〕21世紀の産業革命が始まる」、2012ブログ記事へ
Henry Petroski
、「エンジニアリングの真髄 なぜ科学だけでは地球規模の危機を解決できないのか」、2010ブログ記事へ

まとめページその5収録文献
Carson, S.
、「天才と変人 解き放たれた知性」、2011Simonton, D.K.、「創造性の起源」、2012Snyder, A.W., Ellwood, S., Chi, R.P.、「既成概念をオフ サヴァンに学ぶ独創のヒント」、2012、日経サイエンス  20136月号 特集:天才脳の秘密→ブログ記事へ
小田亮、「ヒトは環境を壊す動物である」、2004ブログ記事へ
小田亮、「利他学」、2011.ブログ記事へ
Dunbar, R.
、「友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学」、2010.ブログ記事へ
長谷川英祐、「働かないアリに意義がある」、メディアファクトリー、2010.ブログ記事
Benkler, Y.
、「生物学、心理学、神経科学の知見が教える 利己的でない遺伝子」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 2月号、p.8.
Sargut, G., McGrath,
「ビジネスリーダーの新しい経営学 [入門]複雑系のマネジメント」、Diamond Harvard Business Review, 2012, 1月号、p.118.ログ記事へ
Johnson, N.
、「複雑で単純な世界 不確実なできごとを複雑系で予測する」、2007.ブログ記事
Albert-László Barabási、「バースト! 人間行動を支配するパターン」、2010ブログ記事へ
Albert-László Barabási
、「新ネットワーク思考 ~世界のしくみを読み解く~」、2002
Melanie Mitchell
、「ガイドツアー 複雑系の世界 サンタフェ研究所講義ノートから」、2009
Watts, D.J.
、「偶然の科学」、2011ブログ記事へ
Itzhak Gilboa、「意思決定理論入門」、2011ブログ記事へ
Elliott Sober
、「科学と証拠 統計の哲学入門」、2008ブログ記事へ
Mauboussin, M.J.
、「まさか!? 自信がある人ほど陥る意思決定の8つの罠」、2009.ブログ記事へ
Kahneman, D.
、「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 上、下」、2011ブログ記事へ
Aariely, D.
、「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」、2012.ブログ記事
Page S.E.
、「『多様な意見』はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき」、2007ブログ記事へ
西垣通、「集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ」、2013.ブログ記事へ
Christakis, N.A., Fowler, J.H.
、「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」、2009ブログ記事へ
McAfee, A., Brynjolfsson, E.
、「ビッグデータで経営はどう変わるか 測定できれば、マネジメントできる」、松岡正剛、「情報は物語をほしがっている ビッグデータ時代の編集工学」、McInerney, P., Goff, J.、「ビッグデータが日本企業に迫るもの 意思決定が競争優位に直結する」、Davenport, T.H., Patil, D.J.、「データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない いま最も必要とされているプロフェッショナル」、樋口知之(聞き手:編集部)、「データ解析の神髄とは インタビュー統計学の第一人者が語る」、Barton, D., Court, D.、「ビッグデータ活用スキルをいかに育むか 高度だが実用性の高いモデルを構築する」、Diamond Harvard Business Review, Feb. 2013ブログ記事へ
高橋昌一郎、「理性の限界」、2008
高橋昌一郎、「知性の限界」、2010ブログ記事へ(上記文献とまとめて)
高橋昌一郎、「感性の限界」、2012ブログ記事へ
 コメント:科学哲学入門ならこの限界3部作がおすすめ。
森田邦久、「理系人に役立つ科学哲学」、2010ブログ記事へ
今道友信、「エコエティカ 生圏倫理学入門」、1990.ブログ記事へ
Brown, J.R.
、「なぜ科学を語ってすれ違うのか ソーカル事件を超えて」、2001ブログ記事へ
Arthur, W.B.
、「テクノロジーとイノベーション 進化/生成の理論」、2009.ブログ記事へ
須藤靖、伊勢田哲治、「科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す」、2013ブログ記事
菊池誠、松永和紀、伊勢田哲治、平川秀幸著、飯田泰之+SYNODOS編、「もうダマされないための『科学』講義」、2011ブログ記事へ
Singh, S., Ernst, E.
、「代替医療のトリック」、2008.
菊池聡、「超常現象をなぜ信じるのか」、1998
平川秀幸、「科学は誰のものか 社会の側から問い直す」、2010
新井紀子、「コンピュータが仕事を奪う」、2010
平川克美、「移行期的混乱-経済成長神話の終わり」、2010
Erik Brynjolfsson, Andrew McAfee
、「機械との競争」、2011ブログ記事へ
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン、吉成真由美(インタビュー・編)、「知の逆転」、2012ブログ記事へ
小飼弾、「『中卒』でもわかる科学入門――“+-×÷”で科学のウソは見ぬける!」、2013ブログ記事へ
内田麻理香、「科学との正しい付き合い方 疑うことから始めよう」、2010ブログ記事へ
竹内薫、「理系バカと文系バカ」、2009ブログ記事へ
竹内薫、「科学嫌いが日本を滅ぼす 『ネイチャー』『サイエンス』に何を学ぶか」、2011.ブログ記事へ
坂村健、「不完全な時代――科学と感情の間で」、2011ブログ記事へ
福岡伸一、「動的平衡」、2009.
福岡伸一、「生物と無生物のあいだ」、講談社、2007.



ノート改訂版・補遺3:研究マネジメントにおいて気をつけるべきこと(問題点、弊害・・・)

マネジメントはよい結果を生むものばかりではありません。思わぬ副作用により失敗することもありますし、一旦は成功したものの、それが持続できなかったり、環境の変化によってうまくいかなくなったりすることもあります。マネジメントをうまく進める方法を学び、考えることはもちろん重要ですが、実は失敗事例からも学ぶべきことは多いのではないでしょうか。今回は、研究マネジメントにおいて気をつけるべき、様々な問題点の指摘を取り上げてまとめておきたいと思います。(ポイントのみをまとめていますので、詳細はリンク先の本ブログ記事をご参照ください)

イノベーション戦略
持続的競争優位の構築において業務遂行の流儀を変えられない固定観念
(7つの危険な罠)(McGrath
1)先手必勝の罠(「ほとんどの業界では、先発優位は長続きしない」)
2)優勢の罠(現時点で優勢な「すでに確立された製品・サービスについては、それを改善するための投資が必要だとは考えない」)
3)品質追求の罠(「活用フェーズに該当するビジネスは、多くの場合、顧客が買いたいと考えるレベルを上回る品質を提供することに固執している」)
4)リソース囲い込みの罠(「新たなベンチャー事業にリソースを移そうというインセンティブが働かない」)
5)空白地帯の罠(「チャンスが到来しても、それが組織体制にフィットしなかった場合、組織を再編しようとせずに見送るだけ」)
6)帝国化の罠(「多くの企業では、マネジメントする資産や従業員が多ければ多いほど優れたリーダーだという図式が成立する・・・部下の囲い込みや官僚主義が助長され、現状維持への圧力が非常に強くなる」
7)散発的イノベーションの罠(組織的に新たな優位性を次々に生み出す仕組みを持たない・・・結果、イノベーションが個人主導で行われる散発的なプロセスとなる)
・イノベーションへの集中の弊害イノベーションの負の側面:ラバーメイドの衰退の例)
ラバーメイドはイノベーションによる成長を目指し、1日あたり1つの新製品発売を行ない、1年から1年半に一分野のペースで新しい製品分野に進出することを目標にしていたといいます。そしてそれを実行した結果、3年間で1000点近い新製品で窒息状態となり、原料コストの上昇による打撃も受けた結果、野心的な成長目標に追いまくられて、コスト管理や納期管理といった基本的な部分で失敗が目立つようになったといいます。Collinsはこうした例から「イノベーションは成長の原動力になるものの、イノベーションに熱狂していると、成長が速すぎて戦術面の卓越性を維持できなくなり、簡単に衰退の段階を下る」と結論づけています。
・コンピテンシー・トラップ「世界の経営学者はいま何を考えているのか」より)
「企業組織は本質的に知の深化に傾斜しがちで、知の探索をなおざりにしやすい。事業が成功している企業ほどこの傾向が強く、これをコンピテンシー・トラップという」「イノベーションの停滞を避けるために、企業は組織として知の探索と深化のバランスを保ち、コンピテンシー・トラップを避ける戦略・体制・ルール作りを進めることが重要である。」
製品開発をめぐる6つの誤解Thomke, Reinertsen
誤解1、リソースの稼働率を上げれば成果が上がる(→余裕が必要)
誤解2、バッチ・サイズを大きくすると費用対効果が向上する(→リーン生産ではバッチサイズを下げる)
誤解3、我々のプランには問題はない このままやり通そう(→プランは絶えず手直しすべき)
誤解4、プロジェクトは早く始めれば完了も早い(→早く始めても注力できなければ完了は遅れる)
誤解5、製品の機能を増やした方が顧客は喜ぶ(→顧客にとっての価値を考える)
誤解6、一発でうまくいけばより成果が上がる(→一度の失敗も許されない状況はよくない)
・イノベーション・エコシステムに伴うリスクAdner「ワイドレンズ」より)
企業とエンドユーザーとの間には、多くのパートナーが存在する。コーイノベーション・リスクとは、自身のイノベーションの商業的成功が他のイノベーションの商業化に依存するリスク。成功がパートナーに依存してしまい、その結果、協力、協働に伴って、遅延や妥協が発生しやすくなる。アダプションチェーン・リスクとは、パートナーがまずイノベーションを受け入れなければ、顧客が最終提供価値を評価することすらできないリスクで、価値提供がエンドユーザーにたけではなく、パートナーが自分たちにとっても有益だと考えるかどうかが問題となる。
・先進国企業の戦略の問題点Radjou「ジュガードイノベーション」より)
体系化されたイノベーションの問題点として、あまりに多くの資金と資源を必要とすること、柔軟性に欠けること(「シックス・シグマのような、安定した予測可能なプロセスを中心にする改革プログラムは、企業が求める急激な変化を実現できない」、3Mでシックス・シグマの導入によって3Mのイノベーション能力が損なわれた事例もある)、排他的でエリート主義(「ソーシャルメディアの力で強く結びつき合う世界では、金銭で買える知的財産だけが新たなアイデアの源ではない」)を挙げています。また、欧米企業が柔軟に動けない理由として、自己満足(成功体験、硬直した考え方や古い行動から抜け出せない)、二元的な思考(すべてが予測可能で白か黒かに分けられると考えてしまうが、灰色が増えつつある)、リスク回避(既存製品との共食いを恐れる)、意欲のない社員(従業員の柔軟な発想が正当に評価されず、安全な選択をすることで、集団思考に陥り、変化を求めなくなる)、厳格で時間がかかる生産・開発プロセス(市場調査や、企画開発に時間をかけすぎる)を挙げています。

成功は失敗の元?
・偉大な企業が衰退する5つの段階Collins「ビジョナリーカンパニー③」より
第1段階、成功から生まれる傲慢:成功により現実の厳しさから隔離され、真の成功要因を見失い、成功を当然視する。成功した理由が通用しなくなる条件を理解しなくなったり、運が良かっただけで成功したという可能性を認識せず、自分たちの長所と能力を過大評価する傲慢に陥る。
第2段階、規律なき拡大路線:当初に偉大さをもたらしてきた規律ある創造性から逸脱し、偉大な実績をあげられない分野に規律なき形で進出するか、卓越性を維持しながら達成できる以上のペースでの成長を目指す。
第3段階、リスクと問題の否認:内部では警戒信号が積み重なってくるが、外見的には業績が十分に力強いため、悪いデータを小さく見せ、良いデータを強調し、曖昧なデータを良く解釈する、ということが起きる。
第4段階、一発逆転策の追求:問題点と失敗が表面化し、衰退が明らかとなり、一発逆転狙いの救済策にすがろうとする。カリスマ的指導者、大胆だが実績のない戦略、抜本的な改革、大ヒット狙いの新製品、ゲームを変える買収などに頼る。しかし、こうした策による効果は一旦業績を好転させても長続きしない。
第5段階、屈服と凡庸な企業への転落か消滅:後退を繰り返し、巨費を投じた再建策が失敗に終わったことで、財務力が衰え、士気が低下し衰退、消滅、身売りなどに至る。
コア・リジディティLeonard-Bartonによる)
コア・ケイパビリティがコア・リジディティに変質すると、次のような現象が見られるようになる。
暗黙のうちに未来は現在と同じようなものであると仮定されてしまう。
問題解決において、慣れ親しんだ過去のアプローチや発想に従ってしまう。
従業員は何も考えずに過去に執着するように訓練される(革新的な雰囲気を壊す)。
新しいツールと方法論を軽視する。
多くのルールに拘束される。
現在おこなっていることをもっとよくすることに主眼がおかれる。
実験が限定的になる。
新技術の評価にバイアスがかかる(新技術の悪い面が強調される、など)。
顧客の声に耳を傾けすぎる。
脱線した経営幹部のパターンMcCallによる)
すべての「強み」は「弱み」になりうる:たとえ周囲の状況が変わったとしても、昔役立った「強み」を捨てることは難しく、成功に導いた「強み」が問題になる。
表面に現れていなかった弱みが、最終的に問題になる:以前は問題とならなかった、あるいは、「強み」や業績に隠れていた「弱み」や欠点は、新たな状況では重要な問題となる。
次々に成功を重ねると傲慢になる:自分は絶対であり、他の人の助けを必要としないという誤った信念が生まれる。
「不運」が生じたとき、つまり、物事が悪い方向に動いたとき、どのような行動をとるかが決定要因になる:「不運」を「私の失敗ではない」と解釈することで、「不運」の原因として自分が関与しているという事実を隠してしまうことがある。

具体的なマネジメントの方法に関する問題
・成果主義の問題点
成果主義重視と仕事の高度化は組織のタコツボ化をもたらし(他人がやっていることがわからない、興味を持つ余裕がない)、個人の力は高まったが個人間のつながりを弱める結果となった。(高橋克徳ら、「不機嫌な職場」より
「成果主義を背景に、個人が個人の業績だけを追求する風潮が生まれた結果(仕事の私事化)、職場の個人が他のメンバーの発達支援を担うという、いわゆる組織市民行動を担おうとしなくなった、・・・職場としての成果を出さなければならないために、個人の成長につながるような業務経験の付与に偏りが生じ、成長機会が阻害された」。(「経営学習論」(中原淳著)より
加速の罠
Bruch
Mengesは、スピードや仕事の負荷を上げることによる社員の消耗について、「加速の罠」と呼び、会社業績の悪化につながるものとしています。過度に加速している企業の3つのパターンとしては、多すぎる仕事を抱えて社員に過度な負荷がかかる(時間も資源も不十分)、多業務負荷(仕事の種類が多すぎる→仕事の焦点が絞れなくなる)、常に変化を求める習慣(恒常的負荷がかかることで一息つける希望がなくなり手抜きするようになる)、を挙げています。
・イノベーションチームを結成するときのよくある7つの間違いGovindarajanら「イノベーションを実行する」より)
第1の罠、インサイダー重視のバイアス:プライド、なじみ、気楽さ、便利さ、報酬規定、社内の人間にチャンスを与えたいという思いなどから内部の人間をチームに入れたくなるが、スキル不足のリスク、組織の記憶(古いやり方、慣れ親しんだやり方、習慣やバイアス、行動パターン、思考パターンなど)に妨げられて失敗するリスクがある。
第2の罠、役割や責任について、それまでの規定を援用する→新しい肩書、過去の知識を一掃する業務分担、専用スペースなどが効果的。
第3の罠、パフォーマンス・エンジン(既存事業の安定的な収益を生み出す仕組み)のパワーセンターの支配を再強化する→力を持っている部署の影響力を変化させるために、外に見える形式的な手段などを用いるとよい。
第4の罠、それまでどおりの数値目標で業績評価を行う:「パフォーマンス・エンジンではとても意義のある数値目標でも、専任チームにも同じように意義があるという場合はごく少ない」。
第5の罠、異なる社風の創造に失敗する:「イノベーション・リーダーは新たな価値観を表現する新しいストーリーを創造し、広めたほうがいい。」「専任チームは自分たちだけにイノベーションの気風があると主張してはいけない。」
第6の罠、できあがったプロセスを使う:「専任チームがパフォーマンス・エンジンをコピーすべきだという状況はありえない。」
第7の罠、同質化圧力に負ける:「あらゆる手段で効率を最大化しようとするサポート機能のリーダーがいると、専任チームは組織の記憶を克服することがほぼ不可能になるだろう。」
プレッシャーがチームに与える悪影響Gardnerによる「成果プレッシャーのパラドックス(performance pressure paradox)」
1)仕事の完了を急ぐうちに、チームは重要な情報を締め出す方向でコンセンサスを形成する:リスクの少ないオプションを選び、プロジェクトをつつがなく進めようとする。
2)皆が無意識のうちに権威に寄り添う
3)専門的知識に基づくユニークな意見よりも共通の知識を重んじる

ここに挙げた考察は、もちろん、あらゆる場合に成り立つことではないかもしれません。しかし、実際に起きた失敗や起こり得る失敗の可能性を知っておくことは決して無駄なことではないでしょう。何らかの成功を勝ち得たとされる方法はとかく注目を集めやすく、失敗を避ける方法は目立たないことが多いですが、実務家にとってはその両方をしっかり認識して行動することが実際には求められているのではないでしょうか。


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「ゲーミフィケーション集中講義」(ワーバック、ハンター著)より

ゲームは楽しいものです。遊びですから楽しいのは当たり前かもしれませんが、なぜ楽しいのでしょうか。楽しい理由がわかれば、それを仕事に応用すれば仕事も楽しくなるのでしょうか。最近、ゲームの持つ魅力や作用をビジネスに活かそうとする「ゲーミフィケーション」という考え方が注目されているようですので、今回は、ワーバック、ハンター著、「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」[文献1]に基づいて、その考え方をまとめてみたいと思います。

ゲーミフィケーションとは
・著者らによる定義:「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」[p.51
・非ゲーム的文脈で用いるとは:「通常はゲームの世界の中で行われる要素を取り出して、現実の世界で効果的に用いること[p.58]」。
・ゲーム要素:ゲームのルール、ポイントシステム、リーダーボードなどのゲームを構成する小さな部分。
・ゲームデザイン技術:「どのゲーム要素をどの部分にどんな形で付与[p.56]」するか。「知識を蓄積し、良いゲームデザインのテクニックをきちんと評価しない限り、失敗する確率ははるかに大きくなる[p.57]」
・ゲーミフィケーションが有効な非ゲーム的文脈:内部ゲーミフィケーション(企業が組織内部で・・・生産性の向上、イノベーションの促進、仲間意識の強化、あるいは従業員の業績向上に取り組む)、外部ゲーミフィケーション(「企業が顧客との関係を改善するための方法となり、さらなる関与、製品との一体感、より強いロイヤルティを生み出し、最終的には売上増加につながる[p.44]」)、行動変容ゲーミフィケーション(「人々に新しい有益な習慣を身につけさせる[p.46]」、企業の便益とは限らない)。「継続的な行動変容にはモチベーションが核心となり、ゲームは最強のモチベーション促進ツールのひとつ[p.49]」。
・ゲーミフィケーションを検討してみたほうがよい理由:関与(エンゲージメント、「顧客や従業員に本質的で意味のある関与をさせる強力なツールセットとなり得る。関与は、それ自体にビジネス上の価値がある。消費者が関与するようになれば、取引につながっていく。また、研究によれば、アメリカの労働者の約70%が自分の仕事に十分に取り組んでいないという[p.61-62]」)、実験(「新しいやり方をあれこれ試しては、より良い解決策を見つけようとする[p.63]」)、結果(「ゲーム要素をビジネスプロセスに導入することでかなり良好な結果が出ており、単なる変わった取り組みではないことを多数の企業が認めている[p.66]」)。

ゲームシンキング:ゲームデザイナーの考え方
・ゲームシンキング:「楽しさが人々にモチベーションを与えるということは、驚きでも何でもない[p.70]」。「ゲームシンキングとは、かき集められる資源をすべて使って魅力的な経験を創り出し、人々に望ましい行動をとるようなモチベーションを持たせることを意味する。[p.78]」
・「ゲームがすべて楽しいわけでも、楽しいことがすべてゲームというわけでもない。・・・ゲームの基本的な特徴を定義するのは不可能に近い[p.72]」。
・ゲームの重要な側面:自発的なものであること、選択をするプレーヤーが必要なこと(プレーヤーは自分がコントロールしているという感覚を持つ、自律性)[p.73]。「ゲーム経験がワクワクするのは、ひとつには、・・・プレーヤーが自律性を持っていると感じるからなのだ[p.83]」。「カスタマイズできるオプションを増やすことで、顧客に権限があるという感覚を持たせている[p.82]」。
・ゲームが得意とすること:「問題解決を促す、初心者から専門家や熟練者まで興味が持てるようにする、プレーヤーにコントロールの感覚を持たせる、参加者それぞれが個人的な経験をする、独創的な考え方に報いる、革新的な実験を阻む失敗への恐怖を減らす、多様な興味やスキルセットを支援する、自信を持たせる、楽観的な態度、など[p.78]」。
・自社のビジネスに適しているかを見るポイント[p.83-93]:モチベーション(どの部分で行動を促せば価値を引き出せるか)、意味のある選択肢(プレーヤーに自律性を持たせる、プレーヤーにいくつかの選択の自由を与える選択肢と、その意思決定から生じる顕著な成果を指す。報酬は設けても選択肢は与えない、といった仕組みであれば、ほとんどのプレーヤーは権限がないことを感じ取り、すぐに退屈してしまうだろう。[p.88])、構造(一定のアルゴリズムで望ましい行動をモデル化できるか、アクティビティを測定し対応するためのアルゴリズムが欠かせない)、対立の可能性(既存の仕組みとの対立を避けられるか)。
・「理想的なゲーミフィケーションとは、モチベーションにつながるような興味深い課題を与え、ルールを簡単にコード化できり、なおかつ既存の報酬精度を補強するようなプロセスである[p.91]」

モチベーションとの関連
・自己決定理論(エドワード・デシ、リチャード・ライアン):「人は内発的な積極性を持ち、成長への強い内発的欲求を持っているが、それらは外部環境によって支える必要があり、そうしないと内発的動機づけは阻害される、と考える。・・・人は外的な強化策に反応するだけだと仮定するのではなく、自己決定理論では、人間が生まれつき持っている成長と幸福への欲求(ニーズ)を開花させる必要性に注目する。[p.105]」
・「自己決定理論が示唆しているのは、こうしたニーズがコンピテンス、関連性、自律性の3つに分かれることだ。『コンピテンス』もしくは熟達(マスタリー)は、・・・外部環境にうまく対処することを意味する。『関連性』は、・・・社会的なつながりや普遍的な願望だ。より高い目的である『変化を起こす』ことへの欲求として表れることもある。・・・『自律性』は、自分の人生を司っていると感じたい、有意義で自分の価値観に合ったことをしたいという、生まれながらのニーズである。・・・こうした人間の生まれつきのニーズがひとつ以上ある活動は、内発的動機付けとなる傾向がある。[p.105-106]」
・「自己決定理論の教訓をまさに具現しているのが、ゲームである。なぜ人々は遊ぶのだろうか。・・・誰も強制しているわけではない。『数独』のような単純なゲームでさえ、自律性(どのパズルを解くか、どんな方法で解くかは完全に自分次第である)、コンピテンス(解けた!)、関連性(解けたことを友達に話せる)という内発的ニーズに効果がある。同じようにゲーミフィケーションは、強力な結果を生み出すために、3つの内発的動機づけを用いる。レベルやポイントを貯める行為はすべて、コンピテンスや熟達の目印になる。プレーヤーは進歩するにつれて選択肢や経験の幅が広がり、自律性あるいは行為主体性(エージェンシー)への欲求が膨らんでいく。[p.108-109]」
・注意点:「外発的動機づけは内発的動機づけを締め出す(crowd out)傾向がある・・・心理学者はこれを『クラウディングアウト』と呼んでいる。興味深い活動に対して、具体的で、予測可能な、条件付きの外因性の報酬があると、内発的動機づけは消え失せてしまう[p.112]」。「ある人にお金を払って何かをやってもらうことは、それが本質的に楽しくない、価値がない、重要ではないことを意味している・・・。人々はやがて報酬を当然のものと思い始める。予想できる報酬はある種の埋没便益となり、受け取っても喜びは徐々に小さくなる。・・・安易に内発的な基準でモチベーションが湧くかもしれないアクティビティに、外発的動機づけを付与してはいけない、ということだ[p.114]」。「外発的動機づけがすべて悪いわけではない。・・・外発的報酬システムは、内発的ではない形でアクティビティに関与させるうえで効果があるということだ[p.116-118]」。
・「ゲーミフィケーションを使った仕組みにおけるフィードバックは、効果的なモチベーションの要となり得る。・・・常に自分の業績をチェックすることができる・・・自分がどのように評価されているかも把握できる。・・・成功する仕組みを構築する際には、素早く頻繁なフィードバックが必要だが、それだけでは十分ではない。」「予期しない情報のフィードバックは、自律性と自分で決めて行う内発的動機づけを高める。・・・条件付きの報酬が人のやる気を殺ぐのとは違って、予想外のバッジやトロフィーをもらうと、ユーザーは前向きな気持ちになる。」「ユーザーは自分の成績を知りたがる。・・・自分が目標に向かって前進しているというフィードバックを与えると、プレーヤーにとって励みとなり、やり遂げるのに必要な他のステップを行うモチベーションになり得る。」「ユーザーは与えられた基準に沿って自分の行動を変える。」[p.119-122
・「顧客や従業員をはじめとする他者からもっと搾取するための隠れたツールとして、ゲーミフィケーションを捉えてはならない。[p.126]」

ゲーム要素、ツールキット
・「ゲーミフィケーションに関連するゲーム要素は、ダイナミクス(原動力、仕組みの包括的側面、制約や物語など[p.145-146])、メカニクス(プレーヤーの行動を前進させ、ゲームに関与させる基本的プロセス、チャレンジや競争など[p.146-148])、コンポーネント(具体的構成要素、リーダーボード、レベル、ポイントなど[p.146-150])の3つのカテゴリーに分けられ、この順に抽象度が下がっていく。[p.144]」
・ポイント(P)、バッジ(B)、リーダーボード(L):「PBLはゲーミフィケーションではとても一般的なので、PBLがゲーミフィケーションであるかのように説明されることも多い」が、「実際には違う」。[p.132
・ポイントの使い方:1)スコア記録、2)勝敗がある場合、勝った状態を表す、3)外的報酬との結びつけ、4)フィードバック提供、5)進捗を対外的に示す、6)デザイナーへのデータ提供[p.133-136
・バッジ:「バッジは、ポイントをより大きな塊にしたもの」。「様々な種類のバッジがあれば、・・・ひとつのポイントシステムでは対応できない形でユーザーの興味に訴求することが可能になる。」[p.137-141
・リーダーボード:「リーダーボードは、・・・ユーザーに自分が進歩していることを知らせる。・・・適切な状況であれば、リーダーボードは強力な動機づけとなり得る。・・・その一方で、リーダーボードはモチベーションをことごとく殺いでしまう恐れがある。・・・ビジネス環境でリーダーボードだけを導入すると、業績の強化よりも後退につながることが多いとする調査結果もいくつかある。」[p.141-142

ゲームをデザインする6つのステップ
1、ビジネス目標を定義する:ゲーミフィケーションを使う理由
2、対象とする行動を具体的に考える:プレーヤーに何をやってもらいたいか、それをどう測定するか
3、プレーヤーを細かく設定する:「ユーザーは皆が皆、同じでない」。「ゲームやゲーミフィケーションの仕組みは、通常プレーヤーに様々な選択肢を提供するので、ひとつのセグメントだけに絞らなくてもよい」。[p.164-166
4、アクティビティサイクルを作る:エンゲージメントループ(プレーヤーが何をするか、なぜそれをするのか、それに応じた仕組みづくりでは何をすべきか)、進捗ステップ(プレーヤーが進んでいく道のり)を考える。進捗ステップでは、「初めのステップは非常にシンプルかつ誘導的にしておき、プレーヤーをゲームに招き入れる」(オンボーディング)。一休みとチャレンジを組み合わせることで、熟達しているという満足感と、達成感をもたらす。[p.171-172
5、楽しさを忘れない!:「誰もが同じ種類の楽しさを求めている、あるいは、参加者の好みは変わらないなどと思い込んではいけない。」、「その仕組みが楽しいかどうかを見分ける最善の方法は、厳格なデザインプロセスを通じて開発、試験、改良していくことである。」[p.175-178
6、適切なツールを活用する

失敗やリスクを避ける
・ポインティフィケーションの罠:「どのようなビジネスプロセスでもゲーミフィケーションになり、ただポイントを加えるだけで改善され、ユーザーはポイント集めが好きだからモチベーションを持つ、という浅薄な前提に基づいている場合に[p.190]」ゲーミフィケーションの可能性が台なしになる。「報酬そのものがモチベーションの根本になっている限り、外発的動機づけだ。・・・報酬を本質的に楽しい経験に置き換える方法を常に探したほうがよい。[p.191]」
・法的リスク:プライバシー、知的財産権、仮想資産の財産権、懸賞とギャンブル規制、不正行為、広告規制、労働者保護、報酬を伴う投稿、仮想通貨規制、搾取の仕組みとなる危険性(エクスプロイテーション)、ユーザーによる予期せぬ行動、などに注意が必要。

ゲーミフィケーションの将来
・「よく考え抜かれたデザインを用いる限り、ゲーミフィケーションは効果があり、現代のビジネスパーソンのツールキットのひとつと見なされるようになるだろう。・・・少なくとも、ゲーミフィケーションによって、ビジネスはもっと楽しいものになる。」[p.228-229
―――

楽しく仕事をしたいと思うなら、「楽しい活動」の本質を理解してその要素を仕事に適用してはどうか、というのが著者らのゲーミフィケーションの考え方の根本だと思います。楽しい活動自体は太古の昔から人間が行ってきたはずですが、最近こうした視点が注目されているのは、外発的動機づけだけでは期待どおりの成果が得られにくくなり、より強力な動機づけとして内発的な(楽しい)方法が求められている事情と、コンピューターを用いたゲームの流行により、多種多様な楽しさが提案され、設計されて試されるようになってきたという技術的な背景があるように思います。モチベーションについては別稿でも簡単なまとめを試みましたが、従来は、「遊び」をするモチベーションについてはあまり考察されていなかったかもしれません。しかし、ゲームをすることによって人間の脳内で「喜びに関係する脳内物質ドーパミンが活性化される[p.61]」ということが起きているなら、仕事に関する動機づけでも似たようなメカニズムが作用していることも考えられます。ゲームの魅力の分析によってモチベーションについての理解が深まるのではないか、と思います。

加えて、ゲーミフィケーションは、内発的動機づけを可能にする具体的な手法についての示唆を与えてくれる点も興味深いと思います。もちろん、監訳者も述べているように「『ゲーミフィケーション』はまだ始まったばかりであり、理論体系はこれから補強されていくだろう」[p.11]という状況ですので、汎用的な手法の確立にはまだ時間が必要でしょうが、現在までの知見だけでも、例えばやみくもにポイントシステムを導入するといった手法の危うさが示唆されるなど、実践的にも意味のある考え方だと思います。

研究開発では、内発的動機づけが重要であり、自律性を重視したマネジメントが求められていると言われます。この点で、ゲーミフィケーション手法は、研究開発に向いた手法と言えるかもしれません。実際、本ブログでも取り上げた「シチズンサイエンス」では、ゲームの手法が取り入れられ、効果を挙げていることを考えると、研究マネジメントにとってゲーミフィケーションの考え方は無視できないと思います。そもそも、研究という仕事は、本来的にゲームと似たような楽しさを内包している仕事なのではないでしょうか。研究開発において、外発的動機づけが重要なのか、それともゲーミフィケーションが示唆するような内発的動機づけが重要なのか、という点は議論があるところでしょうが、「楽しさ」という視点も含めたモチベーションの理解によって、研究開発マネジメントについての理解も深まるでしょう。企業における研究開発業務にゲーミフィケーションが適用できるかどうかは、今後の検討課題だと思います。しかし、本来的に楽しい要素を含む研究開発に、成果主義のような管理を持ちこむことが望ましいことなのか、目的志向や計画重視、細かな指示により自律性を損なうようなことをしていないかは、ゲーミフィケーションの考え方を参考にふり返ってみる必要があるように思います。研究者に「あなたの研究の楽しいところはどこですか?」と聞いたらどんな答えが返ってくるでしょうか。


文献1:Kevin Werbach, Dan Hunter, 2012、ケビン・ワーバック、ダン・ハンター著、三ツ橋新監訳、渡部典子訳、「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」、阪急コミュニケーションズ、2013.
原著表題:For the Win: How Game Thinking Can Revolutionize Your Business

参考リンク<2015.3.8追加>




科学とエンジニアリング(「エンジニアリングの真髄」(ペトロスキー著)より

企業における研究開発を成功させるためには、いわゆる科学も、エンジニアリングも必要です。多くの企業研究者はそう考えていると思うのですが、立場の異なる人も同じように考えてくれるとは限りません。今回は、科学とエンジニアリングをどう捉えるか、どのように使っていくべきか、といった問題について、ペドロスキー著「エンジニアリングの真髄 なぜ科学だけでは地球規模の危機を解決できないのか」[文献1]に基づいて考えてみたいと思います。

科学とエンジニアリングの違い
・「科学は『知る』が仕事、エンジニアリングは『やる』が仕事だ。・・・しかし、科学とエンジニアリング、あるいは科学者とエンジニアは、つねに簡単に区別がつくわけではない。両者の目的や手法にはかなり重なる部分があるからだ。[p.28]
・「いわゆる科学的手法とエンジニアリング的手法とはよく似かよっていて、区別するのはとても難しい。しかし、エンジニアと科学者がほとんど無意識に、エンジニアリング分野と科学分野を行ったり来たりできることを考えれば、これはそう驚くようなことではないだろう。[p.85]
・「エンジニアリングと科学の分野を自由に行き来し、それによって有益な結果を引き出す科学者やエンジニアの能力は、地球にとって必要欠くべからざる能力だ。[p.96]

科学とエンジニアリングに対する周囲の認識
・「なぜ、わが国の新聞や一般的な用法では、科学とエンジニアリングが混同され(そしてしばしば後者が除外され)ているのだろうか。[p.31]
・「『職業ごとの相対的な社会的地位を評価してもらったところ、エンジニアリングの順位は中間ぐらいで、医学、看護、科学、教育よりずっと低かった』という。[p.44]
・「科学者がエンジニアより上と思われているのは、・・・科学の研究対象が高尚なのに対して、エンジニアリングの成果が泥くさいということに関連しているようだ[p.46]」。
・科学者のなかにも『私たちのやっている科学には、どんな条件のもとでもいかなる実用性もないと思い、それを誇りにしていた。断固としてそう主張できればできるほど、ますますすぐれているような気がした』という考えをもつ人もいる。[p.46]
・「現代のエンジニア像がくっきりと見えないのは、ひとつには科学者に近すぎるせいだ。・・・というわけで、そしてまたおそらくひとりひとり個別に見るのが面倒なためもあって、無頓着なジャーナリストや一般の人々は、エンジニアをすべてひっくるめて『科学者』というくくりのなかに放り込んでしまうことが多い。[p.58]

科学とエンジニアリングの位置づけ
・「問題を科学的に解明し、それをエンジニアリング的に解決することが必要[p.63]」。
・「最先端のエンジニアリングの成果が科学の進歩に不可欠なのは、高エネルギー物理学にかぎったことではない。[p.66]
・(例えば、工学的構造物の構造の選択の際に)「選択規準として科学的分析が役に立つことはあるだろう。しかし両者の違いを見極め、どちらを選ぶか決めるのはエンジニアだ。エンジニアが物理学的(および経済的)問題を考慮して選ぶのであって、物理学が選ぶのではない。」[p.67-68]
・「蒸気機関、動力飛行機、ロケットなどその他さまざまな事例は、技術のほうが科学に先行していたことを示す明白な証拠になっている。要するに、基礎研究は古くから、技術開発をヒントに、またそれを動機として行なわれてきたのであり、両者は不可分の関係にある。そしてしばしば、技術のほうが科学を先導してきたのだ。[p.148]」
・1945年7月にトルーマン大統領にヴァニーヴァー・ブッシュが提出した報告書において、「病気を克服するため、新しい製品や産業や職業を生み出すため、また国防に役立つ新兵器開発を可能にするためには、自由な基礎研究を通じた科学の進歩が不可欠であると主張されていた。『基礎研究は科学の資本である』とブッシュは書いている。彼の考える研究開発のモデルは明らかに直線的で、基礎研究の次に応用研究、そのあとに技術開発が来るというものだった。・・・しかし・・・科学技術の歴史からすればブッシュのモデルは妥当とは言えない。[p.146]」
・「開発重視の計画が科学的な障害にぶつかった場合、資金配分の比重はいつでも変えられる。しかし、明確な目標のない基礎研究に予算を先に注ぎ込んでしまったら、目の前にある問題の解決には無関係な、役に立たない知識がもたらされるだけで終わる危険もある。科学者が基礎的な知識を求めて基礎研究をするのは、もちろんまちがったことではまったくない。しかし、いま目の前に具体的な問題があって、それを解決するために資金を割り当てられているなら、それはその資金を使うのにふさわしい道と言えるだろうか。現実的な火急の問題を解決したければ、R&Dの開発の側に努力を集中するべきなのだ。[p.163-164]」
・アーサー・C・クラークの「予言の法則」:1、著名だが年配の科学者が可能だと言うなら、それはほぼ確実に正しい。しかし不可能だと言うなら、それは間違いである確率がかなり高い。2、可能と不可能の境界線を発見するには、その境界を少し越えて不可能の領域に足を踏み入れてみるしかない。3、じゅうぶんに発達した技術は魔法と区別がつかない。[p.68]
・「技術史研究者のトーマス・ヒューズによれば、『アインシュタインは、特許や発明に対して、一時のきまぐれではすまない大きな関心を抱いていた』[p.87]」。(実際冷蔵技術の特許を共同出願している[p.91])(注:本書では、アインシュタインは特許事務所に勤務したと書かれていますが、ウィキペディア[文献2]によれば特許庁(局)勤務となっています。)

エンジニアリングの特徴
・「どんな発明や設計にも、行く手に能動的・受動的な障害が生じる可能性はある。[p.97]
・「ある設計にひそむ問題点を予想し、それによって設計を修正するのはエンジニアリングの本質である。残念ながら、危険の徴候が軽視されたり、潜在的な問題が『そんなことは正しく使っていれば起こらない』などと言って片づけられたりすることもある。エンジニアや建築家なら、そのような希望的観測はつつしむものだ。[p.124]
・「制約を満たすために、機械やシステムを設計するのがエンジニアリングというものだ。・・・さまざまな代替案を考慮し、目標により近づけるほうを選択する。制約条件どうしが両立しないこともしばしばだ。・・・こういうときはどこかで妥協するしかない。[p.204]」
・「エンジニアリングは、たんに既存の知識を創造的に応用して、かつて存在しなかったものを生み出すというだけではない。たとえ既存の知識が存在しなくても、つねに前に進みつづけるのがエンジニアリングの本質なのだ。[p.228]」
・「科学的予測には、100パーセント確実はありえない。[p.241]」
・「将来の事象については、それがいつどこで起こり、どんな影響が生じるか、絶対確実に予想できるほどのデータがそろうことはまずない。しかし『確実性』がなくても、適切な決断が下せる見込みを大きく高めることはできるものだ[p.255]」(ギャリック)
・「エンジニアはなんでもよりよくしようとするが、なにものも完全無欠にすることはできない。それが、エンジニアリングの産物に特有の根本的な欠陥であり、そしてこの欠陥こそが変化をうながす原動力であり、どんな業績も完全な到達点ではなく、通過点になってしまう原因なのだ。・・・今日の技術でまだ足りない部分を特定できれば、なにが未来の標準になるかかなりの確信をもって予測できるのだ。と言っても、未来がどんな形をとるか正確にわかるというわけではない。ここで思い出すのは、エンジニアリングは数学とは異なり、解はひとつとは言えないということだ。[p.263-264]」
・「工学的システムは、かならずしもよいほうへ進化していくとはかぎらない。[p.279]」
・「派手な新技術だけでなく、地道な保守、検査、現実性チェックにも投資して、みずからの長期的な健康に気を配ることが必要だ。建てたあとはろくに手入れもせず放っておいてよいような、工学的構築物など存在しない。[p.280]」

目指すべき方向
・「目標は科学やエンジニアリングそれじたいではなく、この地球とその住人を守ることである。全員が、ひとつの文化となるべく努力しなくてはならない。そして互いを無視したり、見下したり、軽んじたりせずに話し合わなくてはならない。[p.240]」
・「互いの尊敬すべき能力を理解しあうことで、協力はいっそう容易になるはずだ。[p.298]」
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科学と技術(エンジニアリング)の関係についての著者の主張のポイントは、科学と技術の協力が必要ということになると思います。すなわち、基礎研究→応用研究→開発研究、といういわゆるリニアモデル(直線的モデル)はあるべき姿とは言えない、というわけです。リニアモデルについてはその有効性が主張されることは少なくなってきていると思いますが、研究作業を細分化して分担させようとする立場からは理解しやすいためか、いまだにそのような考え方をする人もいるように思います。著者の主張の意味をよく認識しておく必要があるでしょう。

また、著者は、一般の認識として、科学はエンジニアリングよりも価値の高いもの、優れたものと認識される傾向があることも指摘しています。この傾向は、日本よりも欧米で根強い考え方のようにも思われますが、エンジニアリングの場合、どうしても金儲け重視と受け取られる傾向があることもそうした認識の一因になっているように思われます。科学者やエンジニアにもそうした考えを持つ人がいると思いますので、それが科学とエンジニアリングの共同作業の障害にならないように、科学者やエンジニアのモチベーションも考慮したマネジメントが求められるように思います。

なお、本書ではエンジニアリングの重要性が主張されていますが、著者は「知る」ための科学が不要だとは言っていません。知るための科学から得られる知識は、仮にそれが何らかの目的に直結しないものであっても新たなアイデアの源としての価値は大きいものです。加えて、知的好奇心を満たすという人間本来の活動も大切にすべきだと思います。エンジニアとして、私は「使えるものは何でも使うべき」だと思っていますので、すぐには使えなくても知識の資産を増やすことにはそれ自身価値があると思っています。要は、基礎研究、応用研究、エンジニアリングなどにどう資源を配分するかが重要なポイントになるということでしょう。そうした資源配分、さらには科学者やエンジニアへの動機づけ、協力体制構築、得られた知識の有効活用をよりよくマネジメントするために、科学とエンジニアリングの本質を理解することは重要なのだろうと思います。


文献1:Henry Petroski, 2010、ヘンリー・ペトロスキー著、安原和見訳、「エンジニアリングの真髄 なぜ科学だけでは地球規模の危機を解決できないのか」、筑摩書房、2014.
原著表題:The Essential Engineer, Why Science Alone Will Not Solve Our Global Problems
文献2:ウィキペディア「アルベルト・アインシュタイン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3

参考リンク<2015.4.5追加>



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