研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

2017年06月

研究開発実践のマネジメント第17回-テーマを選ぶ:研究開発マネジメントの実践と基礎知識2.1.5(「ノート」全面改訂)

はじめに第1回
1、研究開発とはどのようなものか:研究開発マネジメント実践の観点から認識しておくべきこと第2回第3回第4回第5回第7回
2、研究開発実践のマネジメント
2.1
、取り組む課題を決める(研究テーマの設定)
どこに不確実性があるかの見極め第8回第9回
2.1.1
、課題実現の不確実性に関わる研究テーマの設定)第10回第11回
2.1.2
、ニーズの不確実性に関わるテーマの設定第12回第13回
2.1.3
、市場で収益をあげる方法の不確実性に関わるテーマの設定第14回第15回
2.1.4
、やりたいことに基づくテーマ設定第16回

2.1.5
、テーマを選ぶ
テーマ設定に関するこれまでの議論では、テーマを出す段階に焦点を当てました。しかし、思いついた研究テーマをそのまま実施することは稀です。多くの場合、思いついたテーマの中から、実施の必要性の高いものを選んで実行することになるでしょう。今回は、この「テーマ選択」をどのように行えばよいかを考えてみたいと思います。

本シリーズでは、研究は不確実なものであることを大前提として研究マネジメントのあり方を考えています。不確実な状況のなかで研究を成功させるには、それぞれの研究をうまく進めることも大切ですが、ある程度失敗を覚悟して多くのアイデアを試すアプローチも重要です。思いついたテーマのうちどれぐらいを試行してみるべきなのか、そのなかから成功に至るのはどのぐらいかは取り組む課題の性質に大きく依存しますが、例えばノーベル化学賞を受賞された根岸教授は、「望ましくは20~30のアイデアを考えたところで最良案と思われるものをいくつか検討すればよいものにぶつかる確率も高くなる。[文献1]」と述べています。改善研究や、既存品を改良した新製品開発では成功の確率は高いでしょうが、画期的なイノベーションを狙うならば、実行に移す研究テーマの数の少なくとも数倍のアイデアは考えてみる必要があるでしょう。そして、試行したうちの数分の1から数十分の1のみが成功に至るというところではないかと思います。このような低成功率のプロセスをうまく進めるには、なるべく見込みがありそうで、なテーマをどう選び、どう失敗に備えるかが重要になるはずです。

テーマ選定の進め方
テーマ選定にあたりまず考えるべきなのは、そのテーマの必要性、重要性でしょう。必要もなく、重要でもないテーマは、少なくとも企業の研究開発としては優先度が高いとは思われません(本稿第16回「やりたいことに基づくテーマ設定」で述べたように、無駄であるとは思いませんが)。従って以下では、なにがしかの必要性、重要性、研究者の興味が存在しているとした場合にどのようにテーマを選ぶべきかについて考えてみたいと思います。

アイデアがどのぐらい練られているかを検討する

一口にアイデアといっても、単なる思い付きから、ある程度実現性を検討したものまで様々です。単なる思い付きを研究テーマにしてしまうと、研究の実行段階に入ってから様々な想定外の事態が発生して、研究の方向性すら揺らいでしまうこともあります。従って、アイデアを選定するにあたっては、ある程度、実現性を想定しておく必要があるでしょう。この段階で役に立つ考え方としては、DARPA(アメリカ国防総省国防高等研究計画局)で用いられているという、ハイルマイヤー(Heilmeier)の基準と呼ばれる以下の評価基準があります[文献2]。DARPAの研究審議では、マネジャーはこれらの質問にしっかり回答できることが求められるといいます。
・何を達成しようとしているのか?専門用語を一切利用せずに当該プロジェクトの目的を説明せよ
・今日どのような方法で実践されているのか、また現在の実践の限界は何か?
・当該アプローチの何が新しいのか、どうしてそれが成功すると思うのか?
・誰のためになるか?
・成功した場合、どういった変化を期待できるのか?
・リスクとリターンは何か?
・どの位のコストがかかるか?
・どれほどの期間が必要か?
・成功に向けた進展を確認するための中間及び最終の評価方法は何か?
もちろん、この基準を厳格に適用しすぎると可能性のあるアイデアの芽を摘むことにもなりかねませんので、どこまで回答を求めるかには注意が必要です。しかし、上記の問いに関して、あまりに曖昧な点や一貫していない点、希望的観測が多すぎる場合には、研究を実行に移すのは時期尚早である可能性が高いと考えられます。研究提案者(や実行マネジャー)は、上記の項目についてある程度の見通しを持てる程度までには研究のストーリーを練り上げておくことが好ましいといえるのではないでしょうか。

研究ポートフォリオを検討する
研究の持つ不確実性への対処法として、本稿第5回では、ポートフォリオの考え方をご紹介しました。もちろん、不確実性が非常に低い場合や、研究が失敗したらそれで終わりで問題ない場合には、ポートフォリオを考える必要がないこともあるでしょうが、不確実性のある研究を行うことで何らかの利益を得ようとするならば、ポートフォリオを考慮した研究テーマの選定は避けて通ることはできないと思われます。しかし、どのような性質のテーマを、どのような割合で組み合わせてポートフォリオを作るべきかについては、まだ定まった考え方がないようです。そこでここでは、研究や事業のポートフォリオに関する考え方のなかから研究テーマ選定に役立つと思われるものをご紹介しておきたいと思います。

まず、何を基準にポートフォリオのバランスを考えるかを見てみましょう。
McGrathは、自社のビジネスチャンスのポートフォリオ分析のやり方として、「市場の不確実性」と、「さまざまなプロジェクトで用いられる能力や技術の不確実性」に基づいて分析することを提案しています。中核事業では市場の不確実性も技術の不確実性も比較的低い。2つの不確実性が中程度の場合は、通常イノベーション・プロセスの規模拡大の段階。市場の不確実性がそれほどでもなく、技術の不確実性が高い場合(ポジショニング・オプション)は「需要があることはわかっていても、それを満たすために必要な技術や能力の組み合わせはわからない」。市場の不確実性が高く、技術の不確実性が低い場合(スカウティング・オプション)は、「使い途が明確な能力や技術をもっていて、それを新たなアリーナへ拡大しようとしている状況」。どちらの不確実性も高い場合(足がかり)とは「需要が生じ、やがてはそれに対応できるところまで技術が進歩すると考えられるが、その時期はまだまだ先という状況」[文献3、p.142-145]であって、これらの現状分析に基づいて目指す姿を達成するためのポートフォリオを考えようというものです。
・伊丹、宮永は、テーマを見る3つの視角として、1)成果(利益、技術蓄積と波及効果も含む)、2)動機(誰にとって意味があるのか、事業上の必要性、科学や社会への貢献、研究者が知的に突き詰めたいことも含む、研究活動へのやる気を維持する)、3)成功確率(現有技術からのジャンプの距離)をあげています。[文献4、p.96-97
・原田は、要素技術は、「組織能力構築という観点からすると、①技術優位へのインパクト、②競争優位へのインパクト、の2つの軸で分類することが有益だ。[文献5、p.65]」としています。ここで、「コア技術とは、技術優位、競争優位へのインパクトがともに大きい要素技術を指す。[文献5、p.66]」「コア技術以外の要素技術開発に予算を割り当てることが、大企業の場合、制度的に困難なのである。その結果、コア技術への投資のみが正当化され、コア以外の要素技術は硬直化することになる。・・・このことを回避するためには、あらかじめ研究開発における資源配分の枠を設定する必要がある。当然ながらコアへの資源配分は最も大きくなる。けれども、補完技術や周辺技術、場合によっては未利用技術への投資にも戦略的に一定の枠を確保しなければならない。そうでなければ、コア事業が立ち行かなくなったときに、次世代のコアの種がまったく育っていないという状況になってしまう[文献5、p.82-83]」と述べています。
Mooreは、成長度と重要度で管理することを提案しています。これは、イノベーションが生まれ(成長度が高いが重要度は低い)、成長し(成長度、重要度とも高い)、成熟し(重要度は高いが成長度は低い)、衰退していく(重要度、成長度とも低い)過程に対応したものです[文献6、p.53-55]。さらに、バグハイらの考え方として、投資回収が期待される期間に応じて、成長のオプション(将来の高成長ビジネスオプション)、高成長ビジネス(今日の収益成長と明日のキャッシュフローを生み出す)、現在のビジネス(今日のキャッシュフローを生み出す)、という3つのホライゾンのモデルを紹介しています。[文献6、p.58-60]
・岡部、新井本、渡辺は、ポートフォリオ管理の指標として、次の事例を紹介しています:目的・狙い(新領域か既存領域技術向上か)、連携範囲(外部~社内)、リスク(成果がでる確実さ)、提案者(研究所方針、研究員、依頼対応)、タイミング(先行~他者後追い)、期間、プロセス(調査・企画、仮説検証、技術蓄積)、貢献範囲(グローバル~社内)、ビジネス規模(金額規模)、新奇性(世界新規~後追い)、貢献タイミング(研究完了後すぐ効果が出る~効果が出る時期はわからない)、資産化(複数事業、特定事業、予定なし)[文献7、p.42]

次の課題は、どの分類にどの程度の資源を配分するか、ですが、これはポートフォリオの区分のしかたや業界やその企業の状況に依存するところが多いと考えられますので、あまり定量的な議論はなされていないようです。ただし、おおざっぱな目安を提案している考え方がいくつかありますので、ご紹介しておきます。
Anthonyらは破壊的イノベーションと持続的イノベーションの資源配分について「一般に、地位を確立している企業であれば、イノベーション資源の少なくとも80パーセントを持続的な改良に配分することを推奨する[文献8、p.376]」と述べています。
・丹羽は、経験から設定した値として、「既存事業のイノベーションに8割、新規事業のイノベーションに2割[文献9、p.66]」という配分を提案しています。
・岡部、新井本、渡辺は、「事業に貢献したテーマの比率が4分の1程度のときに、研究テーマ群の挑戦度合いと事業貢献度合いのバランスが取れている[文献7、p.40]」という事例を紹介しています。(筆者の推測ですが、ここでは、資源配分比率ではなく、テーマの数の比率が問題にされているのではないかと思います。不確実性の高いテーマは1件あたりの投入資源は少なくなる傾向になりますので、事業に貢献したテーマに対する投入資源はもっと多いのではないかと推測します。)

ポートフォリオの管理のしかたは、個別の状況により様々でよいと思いますが、少なくとも、何らかのポートフォリオ管理は行なうべきでしょう。特に、既存事業の改善と新規事業への挑戦、不確実性の度合い、収益貢献への期待度、成果が得られるまでの時間のバランスが指標として重要なように思います。今後、研究の不確実性はますます高まっていくのではないか、という気がしますので、試行錯誤から学習するアプローチと、多くのテーマのポートフォリオ管理はますます重要になっていくのではないでしょうか。


文献1:根岸英一、「発見の条件」、有機合成化学協会誌、vol.54No.1p.1(1996).ブログ紹介記事
文献2:「米国DARPAの研究開発マネジメントのポイント」→ブログ紹介記事
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/sangyougijutsu/kenkyu_hyoka/pdf/002_03_00.pdf
文献3:Rita Gunther McGrath2013、リタ・マグレイス著、鬼澤忍訳、「競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける」、日本経済新聞出版社、2013. ブログ紹介記事
文献4:伊丹敬之、宮永博史、「技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か」、日本経済新聞出版社、2014. ブログ紹介記事
文献5:原田勉著、「イノベーション戦略の論理 確率の経営とは何か」、中央公論新社、2014. ブログ紹介記事
文献6:Geoffrey A. Moore2011、ジェフリー・ムーア著、栗原潔訳、「エスケープ・ベロシティ キャズムを埋める成長戦略」、翔泳社、2011. ブログ紹介記事
文献7:岡部仁志、新井本昌宏、渡辺智宏著、「製造業R&Dマネジメントの鉄則 成功・失敗事例で見極める成否の分かれ目!」、日刊工業新聞社、2015. ブログ紹介記事
文献8:Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V.,Altman, E.J., 2008、スコット・アンソニー、マーク・ジョンソン、ジョセフ・シンフィールド、エリザベス・アルトマン著、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.
文献9:丹羽清、「イノベーション実践論」、東京大学出版会、2010

科学の話題・目次(2017.6.18版)

「科学の話題」というカテゴリーでは、社会や企業活動、研究開発と関係のありそうな科学の話題について書いています。この目次では記事表題とリンクをリストにしていますので、要約入りの目次は「その1」「その2」に分割した別ページをご参照ください。本ブログ記事目次・参考文献リスト・索引の最新版はこちら

その1・・・要約入りはこちら
科学研究の動向
「GEグローバル・イノベーション・バロメーター」世界調査2012より2012.2.5)、参考リンク
「GEグローバル・イノベーション・バロメーター」世界調査2011より
2011.2.6)、参考リンクは上と同じ
論文から見た各国の科学力比較
2011.1.16)、参考リンク

科学と社会
科学と倫理(今道友信著「エコエティカ」より)2013.1.27)、参考リンク
「もうダマされないための『科学』講義」-科学でダマし、ダマされる状況について考える
2012.1.22)、参考リンク
科学技術と社会の関わり、これからのイノベーション
2011.7.18)、参考リンク
技術で仕事はどう変わる?
2011.8.21)、参考リンク
「機械との競争」(ブリニョルフソン、マカフィー著)感想
2013.11.24)、参考リンク
「ザ・セカンド・マシンエイジ」(ブリニョルフソン、マカフィー著)より
2016.4.10)、参考リンク
理系と文系、とイノベーション
2011.5.1)、参考リンク
「科学嫌いが日本を滅ぼす」(竹内薫著)感想
2012.10.21)、参考リンク
「エコ企業」雑感 (ニューズウィーク日本版、2011.2.9号、エコ企業100より)
2011.2.27)、参考リンク
「不完全な時代――科学と感情の間で」感想
2012.3.4)、参考リンク
「科学との正しい付き合い方」感想 (科学者とそれ以外の人との付き合い方?について)
2010.11.21)、参考リンク
科学的な考え方をシンプルに理解する(小飼弾著「『中卒』でもわかる科学入門」感想)
2014.5.18)、参考リンク
動的平衡
2010.10.31)、参考リンク
「知の逆転」にみる科学の課題
2014.7.21)、参考リンク
科学とエンジニアリング(「エンジニアリングの真髄」(ペトロスキー著)より
2014.10.5)、参考リンク
「<科学ブーム>の構造」(五島綾子著)から学ぶこと
2014.12.7)、参考リンク
誤解を生む原因は何か(垂水雄二著「科学はなぜ誤解されるのか」より)
2015.4.19)、参考リンク
「人と『機械』をつなぐデザイン」(佐倉統編)より
2015.6.14)、参考リンク
「オートメーション・バカ」(ニコラス・カー著)より(2015.9.6)
参考リンク
「技術大国幻想の終わり」(畑村洋太郎著)より
2015.9.27)、参考リンク
「科学の困ったウラ事情」(有田正規著)より
2016.11.6)、参考リンク

研究開発事例
2010年のベスト50発明(「Time」2010.11.22号)2010.12.5)、参考リンク
1年後のTime誌「2010年のベスト50発明」
2011.12.25)、参考リンクは上と同じ
3年後のTime誌「2010年のベスト50発明」
2013.12.23)、参考リンクは上と同じ
6年後のTime誌「2010年のベスト50発明」
2016.12.25)、参考リンクは上と同じ
「偉大なる失敗」(リヴィオ著)より(2015.7.12)
参考リンク

研究マネジメント事例
祝ノーベル賞:『発見の条件』by根岸英一教授2010.10.11)、参考リンク
iPS細胞研究に見る研究の進め方雑感
2011.12.11)、参考リンク
MITメディアラボの研究マネジメント考
2012.12.31)、参考リンク

研究開発の方法
シチズンサイエンス考2012.7.1)、参考リンク
ロボットに研究ができるなら
2011.4.3)、参考リンク
ビッグデータ考
2013.5.6)、参考リンク
「オープンサイエンス革命」(ニールセン著)より
2013.10.27)、参考リンク
これからのモノづくり(アンダーソン著「MAKERS」より)
2014.3.9)、参考リンク
イノベーションを生む環境(ジョンソン著「イノベーションのアイデアを生み出す七つの法則」より)
2016.2.28)、参考リンク


その2・・・要約入りはこちら
科学哲学関連
「理性の限界」「知性の限界」2011.9.19)、参考リンク
「感性の限界」(高橋昌一郎著)より
2012.11.11)、参考リンクは上と同じ
科学哲学の使い方(「理系人に役立つ科学哲学」感想)
2011.10.10)、参考リンク
「なぜ科学を語ってすれ違うのか」に学ぶ
2011.11.6)、参考リンク
「テクノロジーとイノベーション」感想
2012.4.1)、参考リンク
「科学を語るとはどういうことか」(須藤靖、伊勢田哲治著)感想
2014.4.13)、参考リンク

判断、予測、行動経済学、複雑系周辺
いかに判断、予測するか(ダンカン・ワッツ著「偶然の科学」より)2012.7.29)、参考リンク
科学的判断の受け入れ(「代替医療のトリック」感想)
2012.9.23)、参考リンク
多様性の意義(スコット・ペイジ著「『多様な意見』はなぜ正しいのか」より)
2013.2.24)、参考リンク
複雑系の可能性(ニール・ジョンソン著「複雑で単純な世界」より)
2012.6.10)、参考リンク
ネットワークの力(クリスタキス、ファウラー著「つながり」より)
2013.3.31)、参考リンク
「ファスト&スロー」(カーネマン著)より
2013.7.7)、参考リンク
「ずる 嘘とごまかしの行動経済学」(ダン・アリエリー著)より
2013.8.11)、参考リンク
「集合知とは何か」(西垣通著)より
2013.9.23)、参考リンク
ベキ乗則の可能性(バラバシ著「バースト」より)
2014.2.2)、参考リンク
「意思決定理論入門」(ギルボア著)より
2014.6.15)、参考リンク
よりよい意思決定プロセス(「決定力!」チップ&ダン・ハース著より)
2016.5.22)、参考リンク
データから言えること(ソーバー著「科学と証拠」より)
2014.8.24)、参考リンク
ありえなさを理解する(ハンド著「『偶然』の統計学」より)
2017.4.23)、参考リンク
「誤解学」(西成活裕著)感想
2014.11.9)、参考リンク
「無意識のわな」(日経サイエンス2014年5月号特集)とマネジメント
2014.12.28)、参考リンク
「バグる脳」(ブオノマーノ著)-思考、判断のバイアスと誤りを理解する
2015.1.25)、参考リンク
無意識の作用(ムロディナウ著「しらずしらず」より)
2015.3.22)、参考リンク
「教養としての認知科学」(鈴木宏明著)より(2016.8.14)
参考リンク
クリティカルシンキングの活用(伊勢田哲治+戸田山和久+調麻佐志+村上祐子編「科学技術をよく考える」より)
2015.5.17)、参考リンク
「影響力の正体」(チャルディーニ著より)
2015.11.23)、参考リンク
失敗に学ぶ(サイド著「失敗の科学」より)
2017.6.11)、参考リンク
データを使う前に(ファング著「ナンバーセンス」より)
2015.12.20)、参考リンク
「0ベース思考」(レヴィット、ダブナー著)より
2016.1.24)、参考リンク
心配と研究開発(島崎敢著「心配学」より)
2017.1.29)、参考リンク
不確実性と成功(ヨハンソン著「成功は“ランダム”にやってくる!」より)
2016.7.10)、参考リンク
不確実性とリスクの扱い方(サンスティーン著「恐怖の法則」より)
2016.9.25)、参考リンク
「リスク」(フィッシュホフ、カドバニー著)より
2017.3.12)、参考リンク
関連記事
意思決定の罠(モーブッサン著「まさか!?」より)
2012.10.28)、
参考リンク
複雑系経営(?)の効果2012.5.6)、参考リンク

ヒトの行動、社会、進化
「ヒトは環境を壊す動物である」感想2010.12.26)、参考リンク
「利他学」(小田亮著)より
2012.12.2)、参考リンク
進化心理学からの示唆(「友達の数は何人?」ロビン・ダンバー著)より
2012.8.26)、参考リンク
「働かないアリに意義がある」感想
2012.4.22)、参考リンク
利他性と協力
2012.5.13)、参考リンク
天才の創造性の源泉とその活用
2013.6.2)、参考リンク
協力とフリーライダーと罰(大槻久著「協力と罰の生物学」より)
2015.2.22)、参考リンク
「競争の科学」(ブロンソン、メリーマン著)より
2015.8.9)、参考リンク
脳科学の使い方(ミチオ・カク著「フューチャー・オブ・マインド」より)
2015.10.25)、参考リンク

失敗に学ぶ(サイド著「失敗の科学」より)

研究開発には未知への挑戦という側面があります。従って、失敗を避けることは不可能ですが、最終的には失敗を避けられなければ成功はできません。では、失敗を避けるにはどうしたらよいのでしょう。また、失敗からうまく学ぶことの重要性もよく指摘されます。どうすれば失敗からうまく学べるのでしょうか。

マシュー・サイド著、「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」[文献1]では、失敗から学ぶことの重要性とともに、失敗から学ぶことの難しさ、それを克服してうまく学ぶための方法が議論されています。研究と失敗は切っても切れない間柄ですので、今回はこの本のなかから興味深く感じた点をまとめておきたいと思います。

第1章、失敗のマネジメント
・「人類は過去2000年余りの間に目覚ましい発展を遂げた。・・・企業やスポーツチームのみならず、科学、技術、経済がさまざまな進化を遂げ、人々の生活があらゆる面で変わった。本書はその過程を覗きながら、人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズム、あるいは創造力を発揮して革命を起こすメカニズムを明らかにしていく。・・・我々が進化を遂げて成功するカギは、『失敗とどう向き合うか』にある。[p.17]」
・「失敗と成功には、切っても切れない関係がある。まずはその関係を理解するために、・・・医療業界と航空業界を比較してみよう。両者の組織文化や心理的背景には大きな違いがある。中でも根本的に異なるのが、失敗に対するアプローチだ。航空業界のアプローチは傑出している。航空機にはすべて、ほぼ破砕不可能な『ブラックボックス』がふたつ装備されている。・・・事故があれば、このブラックボックスが回収され、データ分析によって原因が究明される。そして、二度と同じ失敗が起こらないよう速やかに対策がとられる。この仕組みによって、航空業界はいまや圧倒的な安全記録を達成している。・・・しかし、医療業界では状況が大きく異なる。1999年、米国医学研究所・・・の調査によれば、アメリカでは毎年4万4000~9万8000人が、回避可能な医療過誤によって死亡しているという。[p.17-20]」
・「最も大きな相違点は、失敗後の対応の違いにある。医療業界には『言い逃れ』の文化が根付いている。ミスは『偶発的な事故』『不測の事態』と捉えられ、医師は『最善を尽くしました』と一言言っておしまいだ。しかし航空業界の対応は劇的に異なる。失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶことこそが業界の文化なのだ。彼らは、失敗を『データの山』ととらえる。・・・パイロットはニアミスを起こすと報告書を提出するが、10日以内に提出すれば処罰されない決まりになっている。[p.40-42]」
・「『クローズド・ループ』とは、失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。逆に『オープン・ループ』では、失敗は適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる。[p.26]」
・「問題は当事者の熱意やモチベーションにはない。改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。[p.46-47]」
・「失敗から学ぶためには、目の前に見えていないデータも含めたすべてのデータを考慮に入れなければいけない。・・・失敗から学ぶのはいつも簡単というわけではない。・・・注意深く考える力と、物事の奥底にある真実を見ぬいてやろうという意志が不可欠だ。[p.55]」
・「『科学の歴史は、人類のあらゆる思想の歴史と同様、失敗(中略)の歴史である』とポパーは言う。『・・・科学は失敗から学ぶ学問だと言えるのであり、その賢明な行動によって進歩がもたらされるのである。』[p.61]」
・「診断力や判断力を高めたいときに大事なのは、熱意やモチベーションだけではない。・・・間違いを教えてくれるフィードバックがなければ、訓練や経験を何年積んでも何も向上しない。[p.69]」
・「失敗から学ぶにはふたつの要素が不可欠だ・・・1つ目はシステム。失敗は、いわば理想(したいことや起こってほしいこと)と現実(実際に起こったこと)とのギャップだ。最先端の組織は常にこのギャップを埋める努力をしているが、そのためには学習チャンスを最大限に活かすシステム作りが欠かせない。2つ目に不可欠な要素はスタッフだ。そんなにすばらしいシステムを導入しても、中で働くスタッフからの情報提供がなければ何も始まらない。[p.75]」
・「ジェームズ・リーズンは言う。『・・・医療業界は本質的にミスを招きやすい構造になっている。しかし医療スタッフは失敗を不名誉なものと決め、エラーマネジメント(ミスの防止・発見・処理)の訓練をほとんど、あるいは一切受けていない。』[p.82]」

第2章、人はウソを隠すのではなく信じ込む
・「第2章では、『なぜ人が失敗から学ぶことは困難なのか』に注目したい。[p.91]」
・「多くの場合、人は自分の信念と相反する事実を突き付けられると、自分の過ちを認めるよりも、事実の解釈を変えてしまう。次から次へと都合のいい言い訳をして、自分を正当化してしまうのだ。ときには事実を完全に無視してしまうことすらある。なぜ、こんなことが起こるのか? カギとなるのは『認知的不協和』だ。これはフェスティンガーが提唱した概念で、自分の信念と事実とが矛盾している状態、あるいはその矛盾によって生じる深い間やストレス状態を指す。[p.102-103]」「事実さえ受け入れなければ、さまざまな矛盾が解消され、自分は頭がいい、筋の通った人間だと信じ続けることができる。[p.104]」
・厳しい加入儀式を経た場合、ミスが自尊心を脅かす場合に、より事実を認めにくくなる。[p.106
・「明晰な頭脳を誇る高名な学者ほど、失敗によって失うものが大きい。だから世界的に影響力のある人々(本来なら、社会に新たな学びを提供するべき人々)が、必死になって自己正当化に走ってしまう。[p.124]」「認知的不協和の影響で目の前が見えず、最も失敗から学ぶことができていないのは、最も失うものが多いトップの人間なのだ。[p.126]」
・「確証バイアス・・・の罠から抜け出すためには、科学的マインドセットが欠かせない。肝心なのは、自分の仮説に溺れず、健全な反証を行うことだ。我々はつい、自分が『わかっている(と思う)こと』の検証ばかりに時間をかけてしまう。しかし本当は、『まだわかっていないこと』を見出す作業の方が重要だ。哲学者カール・ポパーもこう言った。『批判的なものの見方を忘れると、自分が見つけたいものしか見つからない。自分がほしいものだけを探し、それを見つけて確証だととらえ、持論を脅かすものからは目をそむける。このやり方なら、誤った仮説にも(中略)都合のいい証拠をなんなく集めることができる。』[p.130-131]」
・「記憶は我々が思っているほど信頼できるものではない。・・・記憶は脳全体に分散するシステムで、あらゆる種類のバイアスの下にある。つまり、それだけ様々な影響を受けやすい。まったく別々の経験の一部を集めて、ひとつの出来事につなげてしまうことすらある。いわば記憶の『編集』をしているのだ。・・・我々は自分が『実際に見たこと』より『知っていること』に記憶を一致させる傾向がある。[p.144-145]」

第3章、「単純化の罠」から脱出せよ
・「失敗からうまく学んでいる組織は、どこも例外なく、ある特定のプロセスを実践している。・・・試行錯誤の力だ。[p.151]」
・「実は、『正しいかどうか試してみる』を実行に移すには大きな障壁がある。実は我々は知らないうちに、世の中を過度に単純化していることが多い。・・・現実の複雑さを過小評価する人間の心理的傾向については、いまや盛んに研究が進んでいる。『講釈の誤り』はその大きな要因のひとつだ。・・・これはいわゆる後講釈、つまり『物事が起こってから、後付けで因果関係やストーリーを組み立てること』を指す。[p.161]」
・「もし我々が勝手な理屈で『世の中は単純だ』と思い込んでいれば、試行錯誤の必要は感じない。その結果、ボトムアップ式を怠りトップダウン式で物事を判断してしまう。自分の直感やすでに持っている知識だけを信じ、問題を直視せず、都合のいい後講釈で自己満足に陥り、その事実に気づかない。本当なら自分のアイデアや仮説をテストし、欠点を見つめ、学んでいかなければならないのに、その機会を失ってしまうのだ。[p.164]」
・「完璧主義の罠に陥る要因はふたつの誤解にある。1つ目は、ベッドルームでひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解。この誤解にとらわれると、決して自分の仮説を実社会でテストしようとしなくなる。ボトムアップよりトップダウンの方式に重点を置くと生まれやすい問題だ。2つ目は、失敗への恐怖。・・・人は自分の失敗を見つけると、隠したり、はじめからなかったことにしたりする。・・・失敗への恐怖から閉ざされた空間の中で行動を繰り返し、決して外に出て行こうとしない。[p.168-169]」
・「早期の失敗を奨励する『フェイルファスト』手法、ソフトウェア開発における反復学習的な『スクラム』手法など、リーン・スタートアップのようないわゆる『失敗型』のアプローチは各所で見られるようになってきた。もちろん状況に応じた使い分けは必要だが、どのアプローチも試行錯誤から大きな恩恵を受けていて、実に効率的なものが多い。『失敗型』のアプローチでとくに注目すべきは、成果そのものよりも、トップダウン方式を重視した従来の価値観に風穴を開けたことだ。『失敗型』アプローチをとるには、物事を素直に受け入れる気持ちと、根気強さが欠かせない。[p.176]」
・「ランダム化比較試験(RCT)は・・・検証精度を高め、灰色の問題に白黒をつけてくれる。[p.192]」
・「まじめくさったデータより、大げさで派手な物語のほうがはるかに人を惹きつけるのだ。[p.202]」

第4章、難問はまず切り刻め
・マージナルゲインとは、大きなゴールを小さく分解して、一つひとつ改善して積み重ねるアプローチ[p.213
・大きな問題でRCTが難しくても、「小さなプログラムに分けて検証すれば明確な裏付けがとれる。[p.217]」
・「検証したデータをもとに、判断力と創造力を動員して、最高の解決策を探っていく。下した決断は、最適化ループの次の段階ですぐに検証する。このようなフィードバックのメカニズムがなければ、創造力はただの雑音でしかない。成功は、創造と検証の複雑な相互作用によってもたらされるのだ。[p.226]」

第5章、「犯人探し」バイアスとの闘い
・「非難は、失敗や好ましくない出来事に対する人間のごく一般的な反応と言える。何か間違いが起こると、人はその経緯よりも、『誰の責任か』を追及することに気をとられる傾向がある。・・・非難は、人間の脳に潜む先入観によって物事を過度に単純化してしまう行為だ。・・・非難は我々の学習能力を妨げるばかりでなく、ときには深刻な結果をもたらす。[p.243]」「自分の失敗を隠す『内因』が認知的不協和だとしたら、『外因』とも言えるのが、非難というプレッシャーだ。非難の衝動は、組織内に強力な負のエネルギーを生む。何かミスが起こったときに、『担当者の不注意だ!』『怠慢だ』と真っ先に非難が始まる環境では、誰でも失敗を隠したくなる。しかし、もし、『失敗は学習のチャンス』ととらえる組織文化が根付いていれば、非難よりもまず、何が起こったのかを詳しく調査しようという意志が働くだろう。[p.243-244]」
・「複雑な世界から物事を学ぶには、その複雑さと向き合わなければならない。何でも単純に考えてすぐに誰かを非難するのはやめよう。肝心なのは、問題を深く探って、本当に何が起こったのかを突き止めることだ。[p.244]」
・「ビジネス、政治、航空、医療の分野のミスは、単に注意を怠ったせいではなく、複雑な原因から生まれることが多い。その場合、罰則を強化したところでミスそのものは減らない。ミスの報告を減らしてしまうだけだ。不当に非難すればするほど、あるいは思い罰則を科せば科すほど、ミスは深く埋もれていく。すると失敗から学ぶ機会がなくなって、同じミスが繰り返し起こる。その結果、さらに非難が強まり、隠蔽体質は強化される。[p.254]」
・「適切な形での責任の追及は、ミスの報告を妨げはしない。つまり、管理者が非難に走らず、時間をかけて本当に何が起こったのかを丁寧に調べる姿勢を見せていれば、部下は責任追及を恐れずに済む。プロとして堂々と事情を説明し、意見を言うことができる。[p.256]」
・「実は、我々の脳には一番単純で一番直感的な結論を出す傾向がある。この傾向には、『根本的な帰属の誤り』という堅苦しい名前がついている。簡単に説明するとすれば『人の行動の原因を性格的な要因に求め、状況的な要因を軽視する傾向』だ。[p.258]」
・「公正な文化では、失敗から学ぶことが奨励される。失敗の報告を促す開放的な組織文化を構築するには、まず早計な非難をやめることだ。[p.261]」
・「非難したり訴えたり裁判にかけたりすれば、相手は責任感を強く持つようになると思い込んだままでいいのか、ということだ。今のところそれで説明責任が強化されたという証拠はひとつも出ていない。[p.267]」

第6章、究極の成果をもたらすマインドセット
・「『固定型マインドセット』の傾向がある人は、知性や才能はほぼ固定的な性質だととらえている。つまり『自分の知性や才能は生まれ持ったもので、ほぼ変えることはできない』と強く信じている。一方『成長型マインドセット』の傾向がある人は、知性も才能も努力によって伸びると考える。・・・固定型マインドセットの被験者は、間違いに着目していなかった。むしろ無視していたと言っていいだろう。一方で成長型マインドセットの被験者は、間違いにしっかり注意を向けていた。まるで、失敗に興味津々といったように。・・・失敗から学べる人と学べない人の違いは、突き詰めて言えば、失敗の受け止め方の違いだ。成長型マインドセットの人は、失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとしてごく自然に受け止めている。一方、固定型マインドセットの人は、生まれつき才能や知性に恵まれた人が成功すると考えているために、失敗を『自分に才能がない証拠』と受け止める。[p.292-293]」
・「固定型マインドセットの企業で働く社員は、ミスや非難を非常に恐れており、社内ではミスが報告されないことのほうが多いと感じていた。また、次のような項目に同意する傾向が見られた。『この会社では、ほかの社員を出し抜く行為や、作業の手抜きが頻繁に行なわれている』『この会社では、しばしば情報が隠蔽されている』。一方、成長型マインドセットの企業では誠実で協力的な組織文化が浸透しており、ミスに対する反応もはるかに健全だった。また次のような項目に同意する傾向が見られた。『この会社ではリスクを冒すことを純粋に奨励していて、失敗しても非難されない』『この会社にとって失敗は学習の機会であり、それがいずれ付加価値となるととらえている』『この会社では革新的に考えることが奨励され、創造力が歓迎される』[p.296]」「我々の可能性を解き放つ手助けをしてくれるのは、成長型マインドセットだ。成長型マインドセットで物事を考えれば、失敗から学べる。失敗から学べれば、進化がもたらされる。[p.305
・「起業失敗に対する恐怖心が最も高かったのは、日本人[p.304]」

終章、失敗と人類の進化
・「計画経済が不毛なのは、失敗を許容する力が欠けているからだ。[p.318]」
・「失敗から学ぶ力を具体的に発揮する方法を考えていこう。まず何よりも重要なのは、失敗に対する考え方に革命を起こすことだ。・・・子どもたちの心に、失敗は恥ずかしいものでもけがらわしいものでもなく、学習の支えになるものだと刻みつけなければならない。互いの挑戦を称え合おう。実験や検証をする者、根気強くやり遂げようとする者、勇敢に批判を受け止めようとする者、自分の仮説を過信せず真実を見つけ出そうとする者を、我々は称賛するべきだ。『正解』を出した者だけを褒めていたら、完璧ばかりを求めていたら、『一度も失敗せずに成功を手に入れることができる』という間違った認識を植え付けかねない。[p.319-320]」
・「有意義なフィードバックなしに改善は望めない。間違いを警告してくれる『信号』をシステムの中に取り入れることが肝心だ。・・・失敗の力を活かすには、コストを最小限に抑えることも重要だ。・・・パイロット・スキームはあくまで仮説を『検証』するためのものであり、都合のいい『裏づけ』をとるためのものではない・・・。RCTも強力なツールのひとつだ。[p.323-324]」
・「近年注目を浴びている『失敗ありき』のツールがもうひとつある。著名な心理学者ゲイリー・クラインが提唱した『事前検死(pre-mortem)』だ。プロジェクトが終わったあとではなく、実施前に行う検証を指す。あらかじめプロジェクトが失敗した状態を想定し、『なぜうまくいかなかったのか?』をチームで事前検証していくのだ。・・・チームのメンバーは、プロジェクトに対して否定的だと受け止められることを恐れず、懸念事項をオープンに話し合うことができる。この事前検死は、『失敗するかもしれない』と考えるのとはまったく異なる。チームのメンバーは『プロジェクトは失敗した』『目標は達成できなかった』と伝えられ、いわば『すでに死んでいる』状態から始まって、検死(検証)を行う。このように失敗という抽象的な概念を具体化すると、問題に対する意識の持ち方が変わる。[p.325-326]」
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研究に失敗はつきものであり、失敗から学ぶことは重要なことはわかっていても、失敗を認め、うまく学ぶことは難しいものです。本書では、なぜ難しいのか、どうしたらよいのかが多くの事例とともに解説されていて、実務家にとっても参考になる点が多いと感じました。本書では、失敗をうまく活かせている例として航空業界が、活かせていない例として医療、行政司法が取り上げられていますが、研究開発はどちらに近いでしょうか。加入儀式は厳しいことが多いでしょうし、権威を重視する人にとっては失敗への恐れは大きいかもしれません。さらに研究にはある種の思い入れも必要ですので、認知的不協和によって、事実を認められず失敗からうまく学べなくなる可能性もあると思います。一度始めたプロジェクトを止める決断がしにくいのもそのせいかもしれません。本来なら失敗を有効に活用しなければならない研究者が、そうした思考の罠に陥りやすいとするなら、それを防ぐためのフィードバック、検証のシステムづくりは研究をうまく進めるためには必須のことのように思われます。

本書のポイントを一言で言うなら、成功するには失敗すべし、となるかもしれません。一見自己矛盾のようですが、もう少し詳しく言うなら、将来の成功のために、現在や過去の失敗、これからも起こるであろう失敗から学ぼう、ということになるのだと思います。研究マネジメントには様々な側面がありますが、その基本にはうまく失敗すること、があると言えるのかもしれません。


文献1:Matthew Syed, 2015、マシュー・サイド著、有枝春訳、「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016.
原著表題:Black Box Thinking

 
参考リンク

研究開発プロセスの改善(岡部仁志、新井本昌宏、渡辺智宏著「製造業R&Dマネジメントの鉄則」より)

研究開発の業務には様々な種類、パターンがあります。世の中を変えるようなイノベーションを目指すものもあれば、顧客の要望に応えて既存の製品を改良した新製品を世に送り出そうとする場合もあるでしょう。また、新しいことへの挑戦自体がその企業の中核的業務になっていて、研究開発の進め方がすでにある程度パターン化されている場合もあれば、その企業の従来の研究開発のやり方に当てはまらない進め方が求められる場合もあるでしょう。その中で、新製品開発を各企業がどのように進めているのか、どんな問題があって、どのように改善していけばよいかは、実はあまり深く議論されていないと思います。企業の個別事情が強く影響するため汎用性がないとか、そもそもそうした研究開発プロセスは秘密にしておきたい、公開することに意義がない、という場合もあり情報が入手しにくいことがその原因のように思われますが、既存の業務プロセスの改善はつねに必要であることを考えると、こうした研究開発業務自体およびその改善手法をより深く知ることは価値が大きいと思われます。

今回は、そのようなあまり表に出ることのない、企業において定常的に行なわれている研究開発プロセスの進め方、改善のしかたを失敗事例と成功事例に基づいて議論した、岡部仁志、新井本昌宏、渡辺智宏著、「製造業R&Dマネジメントの鉄則 成功・失敗事例で見極める成否の分かれ目!」[文献1]の中から、重要と感じた点をご紹介したいと思います。

PROLOGUE
、R&D部門を取り巻く環境
・「私たちは、主に日本の製造業のコンサルティングを行なっています。最近、日本企業の世界進出に伴い、品質の問題を抱える企業が増えてきていることを実感しています。[p.8]」
・「どうもここ最近、開発リードタイム短縮に伴い、新製品開発や新要素開発と並行して、設計を行ない、短期間で評価を行ない製品化し、市場へ投入しているケースをよく耳にする・・・。結果は、どうでしょう?売り上げ拡大に繋がっているでしょうか?売上は上がったとしても、その分、Fコスト(失敗コスト:Failure Cost)が嵩んでいるのではないでしょうか?[p.13]」
・「品質問題にコストがかかるぐらいなら、フロントローディングの考えで、開発コストに十分な予算をとり、開発にしっかり取り組んでもらいたいものです。そして、最も重要なことは、この開発への投資を“無駄な投資”という意識を持つ社員の意識を変えていくことです。・・・しっかりと開発を行なった上で、設計、生産に移行していくという考えを持っていただきたいものです。・・・昨今、品質問題を抱える日本の製造業において、本書が、上流工程であるR&D領域の業務改革の一助となれば幸いです。[p.14]」

CHAPTER
1、R&Dマネジメントのフレームワーク
・著者らは、R&Dマネジメントの改革は、開発設計戦略、開発設計プラットフォーム、開発設計業務推進能力を三位一体で進める必要がある、としています。
・「開発設計戦略とは、経営や事業の目標と方針に基づき、開発設計機能全体の目標を設定し、目標達成のための方針を定めることです。[p.17]」
・「開発設計プラットフォームは、開発設計機能全体の目標を方針に基づいて達成するための仕組み[p.17]」
・「開発設計業務推進能力は、・・・開発設計業務の特性に適合したプロジェクト・マネジメント方法・・・技術力を強化すべき部門の特性に適合した組織の運営方法です。[p.18-19]」

CHAPTER2
、開発設計戦略

製品・サービス戦略:「経営目標を達成するためにどのような製品・サービスを創出していくかの計画[p.18]」
2-1
、儲けを考えないR&Dは事業も現場も衰退させる!論理的・段階的に新事業開発を推進せよ!:「成功事例は、事業性の検討・評価のプロセスとゲートを構築・運用することで、事業性が向上・・・この当たり前の取り組みをなかなか実践できていない企業が多く存在します[p.30]」。実践に向けたポイントは、「新商品の企画・開発部門と事業性の評価部門を分け、評価部門が権限を持つ仕組みを作る[p.31]」(評価者がNoと言いにくい雰囲気を避ける、「全体の1~2割程度のテーマは事業部門の考えで推進できるようにする」)。「商品企画段階のマーケティングは、技術者と営業担当者の両方で専属チームを作り、推進する[p.32]」(技術や品質の観点ばかりに重点をおかない)。「業界のビジネスプレイヤーの構造を把握した上で、市場調査対象を重点化する[p.32]」。「商品企画段階から市場調査のためのソース確保や人脈創りを行なうのでは間に合わないため、普段から様々な業界の関係者と広く付き合う[p.34]」(事業部は忙しいので本社部門がその役割を担う必要性がある)。
2-2
、個別テーマの事業性評価だけでは挑戦は難しい!ハイリターンを得るには、複数テーマのバランスを見よ!:「研究テーマ選定のポイントは、複数の研究テーマを俯瞰し、リスクとリターンのバランスを取ることです。いわゆるポートフォリオの考え方で、ローリスクなテーマで確実に一定の成果を獲得しつつ、ハイリスク・ハイリターンな研究テーマにチャレンジし、ある程度の失敗を覚悟の上、一部のテーマで成功を獲得するという考え方[p.35]」「各プロジェクト、各個人の成功の積み上げが企業全体の成果を最大化する、という目標管理制度の考え方における施策は、工夫をしないと相反してしまうこともある[p.35]」
プラットフォーム戦略:投資戦略
2-3
、現状分析から始めると、「改善」レベルで終わる!「改革」の実現には、中計とR&D改革を紐付けよ!:例えば、中計、中計に対して事業部が達成すべき収益目標、事業部が達成すべき収益目標に対して開発部が達成すべき目標・方針、開発部の目標を達成するために取り組むべきR&D改革課題、改革課題解決のための実行計画、をまとめた「開発マスタープラン」を策定する[p.48]。「開発マスタープランを立案すると、本当に取り組むべきR&D改革課題も明確になります。[p.59]」
組織・人材戦略:「戦略の実行に適した組織をつくり、有能な人材を採用・育成していくために、中長期的な計画を立案し、実行する[p.18]」
2-4
、無闇なフロントローディングは失敗する!プロセス改革の成功には、組織体制も改革せよ!:「開発初期段階での検討を充実させ、開発終盤で発生している問題を防止する・・・フロントローディング型の開発スタイル[p.63]」実現の例。「不必要な業務や案件はやめる、必要なところへ人やカネを投入する、といったリソースマネジメントを行なわなければ改革は進みません。もし組織改革が行なわれないのであれば、それはマネジメント層が改革を現場のメンバーだけに丸投げしている状態であると言って差し支えないでしょう。プロセス改革と組織改革、言い換えると現場とマネジメント層が一体となった取り組みが必要です。[p.65-66]」
2-5
、抽象的な理想論での組織設計が現場を混乱させる!改革定着には、目指す姿を徹底的に具体化せよ!:「組織設計のポイントをまとめると、目指す姿を、業務内容・工数などの手段を用いて具体化するとともに、これを段階的にプロセス、組織、その他の整合を取りながら進化させていくプランをつくる――ということになります。[p.75]」

CHAPTER
3、開発設計プラットフォーム
業務プロセス:「開発設計業務の標準的な仕事の進め方[p.18]」「R&D機能の各業務プロセスや、各業務に対する部署の役割・権限の整備[p.159]」
3-1
、闇雲な見える化が改善コストを増大させる!改善効果を得るには、無意味な業務フローを作成するな!:「業務プロセスを整備していく上でのポイントは、『事務作業の手順だけではなく、QCDに直結する創造的な作業手順の可視化にも取り組んでいく』ことです。例えば、手配や承認のような付帯的な作業手順を可視化するだけでなく、開発設計の本質的な作業である技術的・設計的な課題抽出や解決の流れも可視化していくのです。[p.159]」
3-2
、商品だけを企画しても儲けは出ない!「損して得取る」売り方を考えよ!:「開発設計プロセスは各社、独自に様々な改善を進めているケースが多い一方、まだ不十分だと言えるのが商品企画プロセスです。特に複数事業を運営している企業の場合、各事業部門が収益責任を負っているため、全社最適を考慮した商品・サービスを企画するプロセスの構築・運用が十分できている企業はかなり少ない状況です。・・・『当該部門が被る損は、将来何の特になるのか?』『損得のバランスをどう見極め、管理するか?』といったことを全社の視点で明確化し、それに応じて各事業の役割・責任も定義していくこと、そして商品を企画するだけでなく、どのようにプロモーションを市場にかけていくかを検討していくことなどが重要になります。[p.159-160]」
3-3
、経営層の無関心がR&Dグローバル連携の壁となる!専門性の高いR&Dに対しても、経営層は方針を明示せよ!:「『R&D領域は聖域(特殊な世界でよく分からない)』という印象を持つ企業も存在しており、そのような企業は往々にして、経営層がR&D機能のグローバル展開を部門に任せ、全社としての明確な方針を打ち出さない(打ち出せない)ケースがあります。技術を基軸として商品を世界展開していく上で、現場の意見は聞くにしても、経営層が自ら方針を打ち出し、推進をリードしていくことが重要になります。[p.160]」
製品モジュール:「複数の製品で使用する共通モジュール・共通部品、流用するモジュール・部品などの製品資産[p.18]」「適切なモジュール・部品構成の整備に関する取り組み[p.160]」
3-4
、演繹的で大がかりなモジュール化は頓挫する!機能的・段階的にモジュール化を進めよ!:「モジュール化の取り組みで気をつけるべきは、『理想だけを追わない』ことです。・・・数年先がなかなか見通せず、製品ライフサイクルが短いような業界であれば、標準モデル開発に入るまでに道のりが長く、様々な関係部門との調整が多く発生するような全体最適の取り組みだけではなく、あえて部分最適のモジュール化を帰納的に進めていく検討をしていくことも重要です。[p.160]」
ナレッジ/技術資産:「過去の開発で蓄積さえた技術理論や実験データ、開発標準、技術資料、図面など技術資産の整備に関する取り組み[p.161]」
3-5
、事象を羅列した技術蓄積は無意味である!まずは、科学と技術の違いを知ることから始めよ!:「様々な企業で行なわれている技術の共有化・蓄積活動では、とりあえず技術者が持つ知見を抽出・羅列していき、それをグループ化してまとめていくようなアプローチがよく見受けられます。・・・技術を抽出したのはいいものの、それをどうやって活用するか不明確で、結局、将来の製品開発に生かされないといった問題も発生しがちです。そこで、どうやって技術を蓄積するかを検討する前に、まず『技術とは何か?』『なぜ技術の蓄積が必要なのか?』『蓄積した技術を誰がどのタイミングでどのように活用するのか?』といった定義や目的など根本に立ち戻って検討していくことが重要です。[p.161]」
3-6
、品質問題は発生してからの対応では遅い!安定した技術の採用により品質管理ポイントを絞り込め!:「設計諸元と製品使用の関係が把握できているか」「技術方式を選定する際、安定性を重視し、品質管理ポイントを絞り込めている」ことが重要。[p.146
ツール/設備:「ITシステムや試作や評価の設備のこと[p.18]」
3-7
PLMシステムありきの業務改革は失敗する!まずは本質的な課題を見出すアセスメントから始めよ!:「R&D部門が活用するITの1つに『PLMシステム』と呼ばれるITツール群があります。これは、BOMや図面、ドキュメントなど技術情報を管理するシステムに加え、設計・解析や評価ツール、プロジェクト管理ツールなど、R&Dの様々な業務を支援するITツールが該当します。[p.148]」「まずはR&D部門全体を俯瞰して幅広く問題・課題を抽出し、その上でPLMシステムによって解決できる部分はどこかを見出していくことが重要です。[p.161]」

CHAPTER
4、開発設計業務推進能力
プロジェクト・マネジメント:「開発プラットフォームを有効活用しての円滑なプロジェクト推進に必要なマネジメントの実践[p.216]」
4-1
、精神論・根性論だけのプロジェクトは失敗する!合理的なプロジェクト計画の立案・運用も意識せよ!:「プロジェクトチームがまとまらなければ目標達成が難しいことは言うまでもなく、プロジェクト関係者への配慮や、徹底したコミュニケーションを図っていくことが重要であると同時に、合理的な計画の立案・運用のテクニックが欠かせないものとなります。[p.216]」「プロジェクト計画の立案・運用の4つのポイント:(1)目標/成り行き計画のギャップ対策を盛り込んだプロジェクト計画の立案、(2)リスク・課題の抽出/解決の早期化、(3)前向きな空気を作る進捗管理、(4)スケジューリングからプランニングへの工数シフト[p.173]」「プロジェクトで発生するリスクや課題、その解決方針・手順をタスクにブレークダウンする部分を『プランニング』、抽出したタスクを時間軸に沿って実行するスケジュール表を作成する部分を『スケジューリング』と切り分けた場合、・・・今までスケジューリングにかけていた工数を、プランニングや関係者への働きかけ、またプロジェクトのビジョンや意義の訴求、連帯感の醸成などにシフトさせていくことが重要です。[p.176]」
4-2
、視野の狭い研究は、袋小路にはまる!研究計画の立案・運用では全体像を俯瞰せよ!:「マネジメントの仕方を『課題解決型』と『仮説検証型』の2つに分けることができます。課題解決型は、予測の努力を行うことで『やってみなければ分からないこと』を減らそうとする方向性です。・・・これに対して、仮説検証型は『やってみなければわからない』を前提とし、できるだけ最短コースで目的に辿り着こうとする方向性です。・・・仮説検証型マネジメントのポイントは以下の通りです。[1]・・・仮説を網羅的に抽出する、[2]・・・どこまで検証したら撤退するか、あるいはGo/Stop判断をするかの判断基準を決める、[3]・・・検証方針は、定期的(四半期から半期程度ごと)に仮説検証状況を俯瞰して決定する、[4]・・・ネガティブな検証結果が出た場合の対応は、仮説検証スピードを落とさない方向で検討する、[5]・・・リソースの投入は、複数の研究テーマ全てが成功するわけではないことを念頭に、各研究テーマの仮説検証状況を踏まえて決定する。このようなポイントを踏まえない『単なる試行錯誤』では、仮説検証のスピードは上がりません。[p.184]」
技術組織運営:「R&D機能に所属する各部署の運営や、プロジェクトへ投入するメンバーに対する教育などの実践[p.217]」
4-3
、わずらわしさで改善を進めると効果は出ない!工数に着目して改善せよ!:「組織運営を行っていく上では、『その組織に属する技術者がどのような仕事にどの程度の工数を使っているのか』を把握し、『将来的に、どの仕事にどの程度の工数を使っていけるようにすべきか』を明確化し、それに向けて日常業務を推進させていくことが基本的かつ重要なポイントです。そのためには、どうしても業務工数管理が必要になりますが、一方で、そのための技術者の工数計測は忙しい開発現場への負担となる懸念もあり、管理の目的設定やそれを踏まえた最低限の計測にとどめるなどの工夫が必要です。[p.217]」
4-4
、事業部門を邪魔するスタッフ部門に存在価値はない!スタッフは組織の“参謀”たる役割と行動を認識せよ!:「スタッフ部門にとって顧客はライン部門であり、ライン部門の事業成果を最大化するための支援が自分たちの役割だ、ということを明確に定義することが大切です。[p.200]」
4-5
、責任追及の「なぜなぜ分析」は悪影響しかない!効果を出すためには、ノウハウを蓄積せよ!:「『なぜなぜ分析』は、・・・事実確認が必要なため、事情聴取的な雰囲気になりやすく、質問を受けているメンバーは自分の至らなさを責められているように感じやすい・・・。・・・ケアをしないと場の雰囲気が非常に悪くなりやすい手法です。[p.212-213]」「よく『なぜなぜ分析』にはセンスが必要と言われますが、『センス』という言葉はノウハウが形式知化できていない際に用いられることが多いものです。[p.214]」「ぶれない枠組みを明確にし、その上で実践による試行錯誤を通じて自社に適したノウハウを形式知化し、蓄積していくこと。――これが、開発設計部門の教育におけるポイントとなるのではないでしょうか。開発設計者は簡単なルールよりも、多少複雑でも理屈が通り、納得できるルールを求めるものです。[p.215]」
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本書は、研究開発部門の業務変革に焦点を当てたものですが、成功事例、失敗事例から導かれる示唆は、単に業務変革にとどまらず、より広い研究開発の状況において参考になる内容を含んでいると思われます。また、それぞれの事例では、様々な具体的手法も解説されていますので、実際に業務変革を行う立場の方にとって参考になる点も多いと思います。もちろん、本書に記載された手法だけで十分というわけにはいかないでしょうし、実践におけるわかりやすい指針のようなものにまでまとまっているわけではないと思いますが、研究開発の多様性を考えるとそこまで望むのは無理なのかもしれません。著者らは、本書の「はじめに」で、「全体をまとめる鉄則をひとつ申し上げると、『マネジメント対象を大局的に捉え、各要素の最適なバランスを保つ努力をし続けよ!』ということになります[p.2]」と述べていますが、これに個別事例と教訓を組み合わせて、各自の課題に合わせて手法を自ら創造することが実務家には求められているのだと思います。


文献1:岡部仁志、新井本昌宏、渡辺智宏著、「製造業R&Dマネジメントの鉄則 成功・失敗事例で見極める成否の分かれ目!」、日刊工業新聞社、2015.

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