イノベーションはやり方さえ工夫すれば誰にでもできるものなのか。それともイノベーターと呼ばれる特異な才能を持った個人の働きが重要なのか。この問題は研究のマネジメントを考える上で非常に重要な論点ですが、残念ながらその答えを出すことは簡単ではなさそうです。ただし、天才的な人物が大きな役割を果たしたイノベーションがあることは確かだと思いますし、特に科学的な業績にあっては、個人の寄与が重要な意味を持つ例も多いのではないかと思います。では、そういう天才的なイノベーターから何が学べるのでしょうか。

そのヒントを求めて今回は、大きなイノベーションを数多く達成したとされる8名のイノベーターの分析に基づいてどういう条件がイノベーションに重要だったかを議論した、メリッサ・A・シリング著「世界を動かすイノベーターの条件」[文献1]の内容をご紹介したいと思います。著者は、分析結果の考察のみならず我々にもできることの提案もしてくれていますので、以下、その内容を見ていきましょう。

序文、人に素晴らしいイノベーションを生み出させるものは何なのか?
・著者は、「何が先駆的なイノベーターを生み出すのかを見つけるためには、例外的なイノベーターだけの少数のサンプルを対象に、複数ケーススタディと呼ばれる手法を使って研究を進めるべきであることに気づいた。[p.13]」とし、「イノベーションの生産性と影響力に関して統計的に外れ値にあるごく少数の人々」と「私たち一般人」とを比較し、「共通点と差異を見つけ」る研究を進めています。
・研究の対象となったイノベーターは、「『複数の』イノベーションと広く結びついた人々[p.16]」である、「マリー・キュリー、トマス・エジソン、アルバート・アインシュタイン、ベンジャミン・フランクリン、スティーブ・ジョブズ、ディーン・ケーメン、イーロン・マスク、ニコラ・テスラ[p.17]」です。そして、「画期的イノベーションを次々と生み出す例外的な人々には大変強い共通性があり、それが彼らを似通わせると同時に、型にはまらない風変わりな存在にしている。こうした人々を研究し、創造性とイノベーションに関する既存の調査と併せ見ると、優れたイノベーションをいくつも生み出すように導くある種の個性のメカニズムを理解しやすくなる。[p.21]」と述べています。

第1章、孤立意識A Sense of “Separateness”
・「画期的なイノベーションを次々と生み出した人の多くに共通して見られるものに、自分は世人とは違っており、人とは切り離された存在だという『孤立意識』がある。それが表面にでると、社交への無関心、ルールや規範の拒絶、家族と疎遠になることなどが見られる。・・・その良い例がアルバート・アインシュタインで、彼は孤立意識を行動に現しただけでなく、それについて書き残し、孤立意識が創造的な思想家の能力にどれほど影響を及ぼしたかを様々な機会に回想している。アインシュタインが人類に温かい愛情を注いだことはよく知られているが、直接の人づきあいでは冷淡で、無関心な態度をとることが少なくなかった。[p.25]」
・「イノベーターに見られる孤立意識は引っ込み思案から来るものではなく、むしろ周囲の社会に帰属していないか、あるいはその一部ではないと感じていることを反映している。[p.41]」
・「先駆的イノベーターの自由な思考を発達させるうえで、孤立がスケールの大きい並外れたアイデアを生み出す助けとなる。何にも帰属しなければ、集団内に合意を促し、協力を奨励する規範の圧力を和らげられる。・・・孤立することによって社会通念に影響される度合いは少なくなるし、集団が共有する考え方に自分のアイデアを汚染されることもなくなる。・・・常識を無視し、因襲に逆らう姿勢は、その人の個性の重要な要素になる。こうした力学が画期的なイノベーションを次々と生み出した人々の人生に明瞭に見てとれる。[p.43-44]」
・「孤独な時間は孤立意識を生む原因でもあるし、結果でもある。・・・孤独な時間は創造性には有益で、関心を抱いたものについて思索し追求する時間を提供してくれる。[p.49]」
・「孤立が創造に有益であることは、心理学者が行ったブレインストーミングの研究によって裏付けられる。この発想法は半世紀ほど前に、考案者のアレックス・オズボーンが『想像力を伸ばす方法』で、「平均的な人でもひとりで考えるより集団で考えるほうが、アイデアを2倍多く発想できる」と唱えて以来、ビジネススクールで広く取り入れられてきた。・・・ところがのちに実験室で行われた研究ではオズボーンの見解と逆の結果が出た。集団でアイデアを考えたほうが、ひとりで考えたときより生まれるアイデアが少なく、しかも斬新さに欠けるというのである。[p.52]」「研究結果をまとめると、ブレインストーミングがグループの創造性を低下させるのは、人のアイデアを聞いているあいだに自分のアイデアを忘れてしまったり、斬新なアイデアが浮かんでも人にどう評価されるか心配で発表するのをためらったりするからであることがわかる。[p.54]」
・「グループで話し合った最善のアイデアを決める方法をとると、平均的なアイデアと比べて独創性が低くて実現性が高いものを選ぶ[p.55]」。
・「イノベーターの孤立意識はまた、規則を無視したり、習慣に反発したりする傾向を生む。[p.56]」「先駆的なイノベーターがもつ非同調性は、ときに自分にはルールが適用されないという態度に現れることがある。スティーブ・ジョブズの非同調性は特に悪名高い。[p.57]」
・「孤立にはプラス面とマイナス面がある。[p.60]」「孤立はイノベーターが独創的なアイデアを生み出すことを可能にするが、そのアイデアを実行するには強い結束力をもつ人的ネットワークをもっているほうが有利になる。[p.61]」
・「孤立のプラス面とマイナス面を理解すると、個人や家族、組織の内部に創造性を育てるための多くのヒントが得られる。そのうちで最も単純な方法が、孤独な時間を持つことだ。[p.67]」「ふたつ目のヒントは、・・・型破りな性格に寛大であると、驚くほどの相乗効果が生まれる点である。[p.68]」「3つ目は、ソーシャルスキルを教えて強化するやり方についでだ。・・・ソーシャルスキルを身につけると、様々な局面で楽に生きていけるし、喜びも増す。だがそれを重視するあまり、独立した思考の習慣や規範に逆らう意思を失わないように注意しなければならない。[p.69]」「突飛さを受け入れることで、私たちは生まれつき創造性に恵まれた人々を開花させられるかもしれない。そればかりか、私たちが独創性を受け入れることを学べば、創造性に富む人々が援助やリソースを入手しやすくなるだろう。[p.70]」

第2章、並外れた自信Extreme Confidence
・「ディーン・ケーメンとスティーブ・ジョブズは、自分の論理的思考力判と断力に絶対の自信をもっており、一般人を束縛する『ルール』を平然と無視した。この自信があってこそ、壮大な考えをめぐらし、並の人間には不可能に思えるプロジェクトに取り組むことが可能になる。心理学用語では、自身の問題解決と目標達成の能力に対する信頼を『自己効力感』と呼ぶ。抜きん出た自己効力感をもつ者だけが、普通の人間が挑むものより大規模で複雑な問題を追求できる。[p.73]」
・「論理的思考と判断力に高い自己効力感をもつ人は、・・・ほかの者が自分の論理的思考に追随しようがしまいが気にしない。[p.89]」「自己効力感はまた、アイデアと行動を結びつける役割を果たす。人は概して、自分に達成できると思える仕事に取り組む傾向にあるためだ。[p.90]」
・「高い自己効力感を生み出すおもな要因には、成功体験(問題を解決したり仕事を達成した自分の体験)、間接経験(問題解決や仕事の達成に成功した他人のやり方を参考にすること)、言葉による説得(問題解決や仕事の達成は可能だと言われること)の3つがある。言うまでもなく、なかでも一番強力なのは成功体験である。[p.93]」「間接経験にも自己効力感を高める効果があることが証明されている。ほかの人間の業績を目にすることで、・・・『彼らにできるのなら、自分にもできる』という意識を植えつけられる。[p.97]」「研究の結果を見ると、言葉による説得は子供の自己効力感を増すには効果的だが、大人に対しては顕著な効果は見られないという。[p.99-100]」
・「ただし、自分ひとりで乗り越えられる可能性のある障害に立ち向かっているときに、『救援』を行うことは避けなければならない。[p.100]」

第3章、創造的な心The Creative Mind
・「イノベーターは普通の人よりも賢いのか? イノベーターは変わり者なのか? 私の研究では、少なくとも並外れて画期的なイノベーションを次々と生み出す人に関しては、ひとつ目の疑問の答えが『イエス』、ふたつ目は『おそらく』ということになる。[p.103]」
・「研究の多くが、創造性はランダムな連想の過程のひとつであることを示しているが、のちの研究では・・・創造性を知性に直接的に結びつける説明がなされている。創造性を、『連想でつながる長い道筋』と捉えたのだ。認知洞察をネットワークプロセスとしてモデル化する私の研究では、心の中のネットワークを使って連想の長い道筋をたどりがちな人、あるいはたどるのが巧みな人は、アイデアや事実のあいだにほかの人間には思いもつかない奇妙なつながりを発見する力をもつことが示された。[p.127]」「マティアス・ベネデク教授とアリョーシャ・ノイバウアー教授の研究では、創造性が非常に高い人も普通は創造性の低い人と同じ連想の道筋をたどるのだが、連想のスピードが速いために常識的な連想を短時間に終わらせ、ほかの者より早く非常識な連想に到達することがわかった。・・・創造性の極めて高い人の連想スピードは、並外れた作業記憶と実行制御によるものだという。言い換えれば、たくさんのことを同時に頭の中に置いておき、それを巧みに処理することで、多くの連想の道筋をすばやく探査することができるのだ。[p.128]」
・「知性については未知の部分がまだ多いが、その重要な構成要素が記憶であることはわかっている。記憶は一般的に、作業記憶と長期記憶という相互依存の関係にあるふたつに分類される。作業記憶は情報を一時的に保存し、すぐに取り出して使える状態にするもので、どんな情報を保存し、それをどう処理し、どう作用させるかをコントロールする実行機能を備えている。・・・人は長期記憶に膨大な量の情報を保存しているが、一度に選択できる(考えられる)情報の量は作業記憶によって制限される。[p.129]」「並外れた長期記憶は、作業記憶の能力と効率性を向上させ、並外れた作業記憶は普通より長期記憶に速くアクセスできる。・・・先駆的イノベーターの多くは並外れた記憶力の持ち主であったことが記録に残っている。[p.130]」
・「人間の性格に関する研究分野には、神経症的傾向、調和性、外向性、誠実性、経験への開放性の5つの要素で構成される『ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性』なる有名な分類法がある。・・・ビッグ・ファイブの中で創造性ともっとも関わりが深いのは、経験への開放性である。経験への開放性は、個人のもつ美的感受性(芸術や文学の鑑識眼など)や、感情への配慮、多様性志向、知的好奇心を反映している。・・・経験への開放性のスコアが高い人は、どちらかといえば知的好奇心が高く、風変わりなアイデアに興味をもち、新しいことに喜んで挑戦する。一般的に、開放性の高い人は平均的な人よりも複雑で曖昧なものに寛容だ。・・・経験への開放性が拡散的思考や創造力と関連があることは、多くの研究で証明されている。[p.131-132]」
・「ドーパミンやグルタミン酸塩と拡散的思考との関連についての科学的根拠は数多く存在する。ドーパミンは、自覚している意識とは関係なく、不必要と判断した刺激を無意識にブロックする潜在抑制を低下させる効果があるとされる。心理学者の研究によれば、高い創造性をもつ人は概して潜在抑制が低く、そのため普通なら無視するような刺激にも反応する傾向があるという。[p.134]」「ゆるやかに増加するドーパミンが潜在抑制を低下させ、作業記憶を強化し、通常考えられない連想を行う助けになっているのだ。[p.139]」

第4章、高遠な目標A Higher Purpose
・「本書で取り上げるイノベーターはひとり残らず(トマス・エジソンだけは注目すべき例外だが)、高遠な理想主義を追求し、高い目標への邁進する気質をもっており、彼らの行動はそうした目的意識が具体化したものである。[p.141]」
・「一番重要なのは、理想主義のもつ内発的動機づけの力だろう。[p.160]」「理想主義はまた、長期的な目標に集中し、ほかの気になる欲求に気を取られないようにする役目も果たす。[p.162]」「理想主義には、もうひとつ力強い効果がある。それは、自己防衛の役割を果たしてくれる点だ。[p.168]」
・「理想主義は大きな充実感をもたらす反面、相当の犠牲を強いることもある。・・・本書で取り上げた先駆的イノベーターの多くは、寝る間も惜しんで働いており、友人や家族との時間をほとんどもっていない。[p.175]」「理想主義がいい面ばかりとは限らない。イノベーターの多くも、理想に夢中になるあまり苦労の多い人生を送り、周囲の人々にも迷惑をかけている。それに理想主義には、こうしたイノベーターの例には現れない別のリスクもある。高邁な理想のためと称し、一般的には卑劣で邪悪だと思われる行為に走ってしまう危険である。[p.177]」

第5章、仕事に駆り立てられてDriven to Work
・「理想主義的な目標に突き動かされてはいなかったエジソンも、何かに突き動かされていたのは間違いない。なにしろ、周囲の人間が理解しがたいほどのハードワークで知られていたからだ。[p.179-180]」
・「成功への野望は・・・すべてのイノベーターを動かす原動力になった。この『達成欲求』は、高い基準を設けてそれを満たすことや、難しい仕事の成就に常時強い関心を抱くことに関連する性格特定である。[p.202]」「達成欲求に関する研究は、内的見返りと外的見返りの役割を合わせて考察する。達成欲求の強い人は技術を習得したり、活動に秀でたり、仕事を完成させることで大きな内的見返りを経験する。その一方で、称賛や尊敬といった外的見返りにもとても敏感で、極端な負けず嫌いの傾向を示すこともある。[p.204]」
・「先駆的イノベーターの仕事への意欲は、理想を実現すること、高い目標に取り組むこと、業績を積み上げること、承認と称賛を得ることなどの『結果』と密接に関連していた。だが、先駆的イノベーターの多くがハードワークに駆り立てられる動機の中には、そうした結果とは関係ないものもある。そのひとつが、仕事自体から得られる喜びだ。・・・心理学者ミハイ・チクセントミハイはこれを『フロー』という概念で的確に示した。フローとは、『人がある活動に没頭して、ほかのことはどうでもよくなる状態であり、それをするためならどんな犠牲を払ってもいいと思わせるほど楽しい体験』と定義される[p.206]」

第6章、時代がもたらす機会と障壁Opportunities and Challenges of an Era
・「『ちょういどいいタイミングで、ちょうどいい場所に居合わせること』の役割は重要だが、それだけでは一部の人が画期的なイノベーションを次々と起こした理由の説明としては不十分である。・・・時代がもたらす機会は、ほとんどすべての画期的なイノベーションに影響を与えているが、画期的なイノベーションを次々と生み出す人々を説明するには十分ではない。この種のイノベーターには特別な性質や原動力があり、時代のもたらした機会をほかの者がしないような方法で利用できるのは、そうした性質や原動力が促進剤となっているからである。[p.237-238]」

第7章、リソースへのアクセスAccess to Resources
・「様々なイノベーターの生涯をひもといてみると、資本よりもそれ以外のリソースが大きな役割を果たしていることがわかる。とりわけ重要なのが、技術と知性に関わるものである。[p.241]」「興味深いことに、知的・技術的リソースはどのイノベーターにとっても重要ではあるものの、本書で紹介しているイノベーターの大半は、意外なほど専門とする領域の正規教育を受けていない。[p.276]」「だからといって、教育や訓練がイノベーションの役に立たないと考えてはいけない。イノベーターの人生において教育が果たした役割を子細に調べてみると、彼らが積極的に学問を摂取していることがわかる。ただし、自分のタイミング、自分のやり方で学問を追求しているのだ。[p.277]」

第8章、内にある可能性を育てるNurturing the Potential That Lies Within
・「画期的なイノベーションを次々と生み出す人々の人生は、決して万人向きではない。世界を良い方向へ変えるのに役立つ要素の多くは私たちには真似のできないものであり、たとえ真似られたとしても彼らが送ったような人生を送ろうとは思わないだろう。だが、イノベーションを生み出すうえで、そうした要素がどう役に立ったのかを理解すれば貴重な教訓になるはずだ。・・・つまり、先駆的イノベーターがなぜ特別なのかを理解すれば、私たちの内にあるイノベーションの可能性を育む方法がおのずとわかってくるのだ。私たちにもできることはたくさんある。[p.282]」
・「規範やパラダイムを疑問視する」:「孤立意識がイノベーションを促進するメカニズムを理解できれば、私たちがイノベーションを育んでいくための有益なヒントになるだろう。組織のリーダーには、創造的な思考を促し、まったく新たな解決策を生み出すためにできることがたくさんある。役割に柔軟性を与え、自主性を重んじ、型破りな意見を容認すれば、創造的な人材を集めることも、既存の従業員の創造的側面を育てることもできる。[p.283]」「従来の考え方に疑問をもつことを従業員に奨励したいのであれば、全員の合意がなければ先へ進めないといった慣行や規範は廃止したほうがいい。[p.284-285]」「早い段階でいずれかの案に決めてしまうと、長期的には最善とは言えない解決策に多大な資源をつぎ込むことになりかねない。[p.286]」
・「ひとりになる時間をつくる」:「従業員に画期的なアイデアを望む経営者は、従業員が突飛なアイデアについてじっくり考え、連想をたどって未知の領域に踏み込めるように、ひとりになれる時間を与えるべきだ。[p.287]」「確かにチームワークは重要だ。とはいえ、一人ひとりができる限りチームに貢献できりうようにするには(その目的が、創造的な解決策を見いだすことにある場合は特に)、グループでの討議の前にひとりで考える時間が欠かせない。[p.288]」「複数のアイデアが存在する場合、あまり早い段階で競争させると、一部のアイデアは発展させる間もないまま抹殺されてしまうことがある。[p.289]」
・「自己効力感を高める」:「早い段階での成功体験をさせるには、失敗したときの代償を低めに抑え、大胆だが賢明な失敗を称賛するなどして、何でも思い切ってやってみようと思わせることが大切だ。[p.291]」
・「壮大な夢を描く」:「理想主義にはイノベーションを生む強い力がある。そのため組織は、メンバー一人ひとりが有意義と思えるような壮大な目標を掲げるべきだ。[p.291-292]」
・「フローを見つける」:「チクセントミハイは言う。・・・会社の目標の範囲内で、従業員に望みの仕事をする機会を与えます。それだけで彼らには仕事への意欲が生まれ、会社の利益になるのです。[p.293]」
・「知的・技術的リソースにアクセスできる機会を増やす」:「誰もがほかの人のもつ知的資源に容易にアクセスできるようにする必要がある。[p.297]」「イノベーションには部外者の存在が重要である。・・・専門家でない人を科学に従事させることで生まれるチャンスもある。そのチャンスを無駄にしてはいけない。[p.298]」
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本書のような少数の特異なイノベーターの分析では、得られた洞察がどの程度汎用性のあるものか、とか、分析対象のイノベーターの選定が妥当なのか(ひょっとしたら、自説に合うような事例が優先して選ばれているのではないか、という懐疑的な見方も含む)というような批判的な議論は避けて通ることはできないと思います。しかし、このような分析ならではの貴重な示唆もあるように感じられましたし、少なくとも、多くの実務家にとっては考える材料として非常に参考になる指摘も含まれているように思いました。さしあたり、すぐにでも実務に生かせる考え方としては、特異な才能を持つ人をどううまく生かすかという視点と、普通の人々の創造性をどうしたら伸ばせるのか、という視点があると思います。どう実務に生かしていくか、著者の考え方をそれぞれの状況に応じて適用する手法の工夫が我々に求められていることなのかもしれません。


文献1:Melissa A. Schilling2018、メリッサ・A・シリング著、染田屋茂訳、「世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?」、日経BP社、2018.
原著表題:Quirky: The Remarkable Story of the Traits, Foibles, and Genius of Breakthrough Innovators Who Changed the World