2年に一度発表される経営思想家のランキングThinkers50が今年も発表されました。以下に2019年のランキング[文献1]をご紹介します(本ブログでの過去ランキング紹介記事はこちら→2011年のリスト2013年のリスト2015年のリスト2017年のリスト)。

以前のブログ記事同様、ベスト50のリストに簡単な紹介と、独断でイノベーションに関する貢献が大きいと考えられる思想家に、◎(極めて重要)、○(重要)をつけてみました。紹介は、Thinkers50のランキングページの解説を参考に、本ブログで紹介した記事のリンクなどをまとめています。

なお、今年は、2017年2位の
Don Tapscott3位のClayton Christensen、5位のMichael Porter、6位のMarshall Goldsmith、21位のVijay GovindarajanHall of Fame入りしたためランキングから外れています。

Thinkers502019年ランキング(カッコ内は順に、2017年、2015年、2013年、2011年の順位です)
1、W. Chan Kim & Renée Mauborgne(4、3、2、2):○、「ブルーオーシャン戦略」の提唱者。本ブログでは2015年のDHBR誌特集「ブルー・オーシャン戦略のすべて」をとりあげた中で、インタビューと、論文「ブルー・オーシャン・リーダーシップ:戦略から組織へ 確実に組織が変わる4つのステップ」を紹介、さらに、2017年刊行の「
BLUE OCEAN SHIFT」を紹介しています。
2、Roger Martin(1、7、3、6):○、本ブログでは、A.G.Lafleyとの共著「Playing to WinP&G式『勝つために戦う』戦略(2013)」、DHBR誌論文「独創的な戦略を科学的に策定する あらゆる選択肢から検証する7つのステップ」2012)、「IDEO流実行する組織のつくり方 新しい考えを組織に浸透させる『導入デザイン』」(2015)、HBR誌論文「Management Is Much More Than a Science」(2017)を紹介しました。
3、Amy Edmondson(13、16、15、35):2019 Breakthrough Idea Award受賞。心理的安全の第一人者。近著は、The Fearless Organization2018)。本ブログでは「Teamingチームが機能するとはどういうことか)」(2012)、HBR誌記事「Cross-Silo Leadership」(2019)を紹介しました。
4、Alexander Osterwalder and Yves Pigneur(7、15、-、-):◎、「ビジネスモデル・ジェネレーション」でBusiness Model Canvasというツールを紹介。本ブログでは「バリュー・プロポジション・デザイン」も紹介しました。
5、Rita McGrath(10、9、6、19):○、2019 Strategy Award候補。本ブログでは著書「競争優位の終焉 市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける(2013)DHBR誌論文マイクロソフト、3Mが実践する『知的失敗』の戦略」(2011)、ビジネスリーダーの新しい経営学 [入門]複雑系のマネジメント」(2012)、一時的競争優位こそ新たな常識 事業運営の手法を変える8つのポイント」(2013)をご紹介しました。
6、Daniel Pink(11、10、13、29):2019 Talent Award候補。「ハイ・コンセプト」「モチベーション3.0」で有名。モチベーションの科学を追究。近著は「When: Scientific Secrets of Perfect Timing」(2018)。
7、Richard D’Aveni(9、11、17、21):2019 Breakthrough Idea Award候補。ハイパーコンペティションで有名。3Dプリンターの社会や経済への影響も研究。近著は「Pan-Industrial Revolution(2018)
8、Erik Brynjolfsson & Andrew McAfee(12、26、-、-):○、デジタル技術の経済や社会への影響を研究。著書「機械との競争」(2011)、「ザ・セカンド・マシンエイジ」(2014)、DHBR誌論文「ビッグデータで経営はどう変わるか 測定できれば、マネジメントできる」(2013)は本ブログでも紹介しました。
9、Scott Anthony(34、-、-、-):◎、「The First Mile」(2014)著者。DHBR誌論文「スタートアップ4.0 再び大企業の時代へ」(2013)、「イノベーション体制をたった90日で構築する」(2015、共著)も本ブログで紹介しました。近著に「Dual Transformation」(2017)。
10、Adam Grant(8、25、-、-):著書の「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」(2012)、「ORIGINALS 誰もが『人と違うこと』ができる時代」(2016)を本ブログで紹介しました。
11、Simon Sinek(18、-、-、-):リーダーシップ、人々をインスパイアする企業、人が能力を発揮できる環境などに焦点をあてている。
12、Eric Ries(16、12、-、-):◎、2019 Idea into Practice Award候補。彼が提唱するリーン・スタートアップ手法は、多くの人々、組織で活用されている。本ブログでは(「リーン・スタートアップ」、2011)、スタートアップ・ウェイ」(2017を紹介しました。
13、Lynda Gratton(29、31、14、12):心理学者。組織変革、競争的な職場から協力的な職場への変化を追究。
14、Whitney Johnson(30、49、-、-):◎、2019 Leadership Award候補。Christensenと共同で、Disruptive Innovation Fundを設立。
15、Zhang Ruimin(26、38、-、-):起業家。中国の伝統的文化と近代的な西欧の経営思想を統合。ハイアールCEO
16、Hal Gregersen(24、46、-、-):◎、2019 Leadership Award候補。「イノベーションのDNA」共著者。HBR誌論文「Better Brainstorming」(2018)を紹介しました。世の中を変えるCatalytic Questionについて検討。
17、Liz Wiseman(35、43、48、-):2019 Leadership Award受賞。リーダーシップを通じた才能開発を提案。集合知の活用も。
18、Herminia Ibarra(20、8、9、28):リーダーシップとキャリア開発が専門。戦略的ネットワーク、協力の重要性も指摘。
19、Pankaj Ghemawat(17、19、11、27):専門はグローバリゼーション。DHL Global Connectedness Indexで各国のグローバル化の状態を分析。著書に「World 3.0」(2011)。
20、Martin Lindstrom(36、18、-、-):ブランドのエキスパート。顧客心理も研究、脳科学の知見を適用した「buyology」を提唱。
21、Francesca Gino(49、-、-、-):○、2019 Talent Award受賞。判断、意思決定、交渉、倫理、動機、生産性、創造性等を研究。イノベーションにおける現状否定の重要性も。
22、Linda Hill(15、6、8、16):○、リーダーシップが専門。DHBR論文「グーグルを成功に導いた『集合天才』のリーダーシップ」(2015)、HBR論文「The Board’s New Innovation Imperative」(2017)は本ブログでも紹介しました。
23、Steve Blank(14,20、-、-):◎、リーン・スタートアップの基礎を築いた起業家。DHBR誌の論文「リーン・スタートアップ:大企業での活かし方 GEも活用する事業開発の新たな手法」(2013)は本ブログで紹介しました。
24、Subir Chowdhury(27、39、40、50):2019 Ideas into Practice Award候補。品質のエキスパート。シックスシグマの著書あり。
25、Anil Gupta & Haiyan WangGupta & Wang28、Gupta47、44、-):2019 Strategy Award候補。グローバル戦略、特に新興市場としての中国とインドについて研究。
26、Morten Hansen(41,34、28、-):○、2019 Talent Award候補。Collinsとの共著「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」(2011)を本ブログで紹介しました。近著は「Great at Work: How Top Performers Work Less and Achieve More」(2018)。
27、Nilofer Merchant(22、48、-、-):○、組織内に隠された才能、アイデア、イノベーションを活用する方法を説明した「onlyness」という考え方を提示。
28、Ming Zeng(-、-、-、-):2019 Strategy Award候補。近著「Smart Business」(2018)では、中国Alibabaで著者が関わり実践した戦略を解説。
29、Michael D Watkins(-、-、-、-):キャリアの移行とその加速についての専門家。
30、Rachel Botsman(46、-、-、-):2019 Digital Thinking Award候補。信頼関係と協力、技術の関わりについて検討。近著は「Who Can You Trust」(2017)。
31、Gary Hamel(32、30、19、15):プラハラードとの共著「コア・コンピタンス経営」で有名。
32、Erin Meyer(39、-、-、-):異文化におけるマネジメントが専門。「Culture Map (2014)」著者。
33、Susan David(40、-、-、-):心理学者。日々の生活における感情の重要性と、心理的スキルの重要性を指摘。
34、Seth Godin(33、23、-、17):マーケティングのエキスパート。パーミッションマーケティングで有名。
35、Amy Cuddy(43、50、-、-):社会心理学者。近著は「Presence: Bringing Your Boldest Self to Your Biggest Challenges (2015)」。
36、Marshall Van Alstyne & Geoff Parker(-、-、-、-):2019 Digital Thinking Award受賞。近著「Platform Revolution」(2017)で多面的な市場において生産者と消費者を結びつけるる技術を検討。
37、Gianpiero Petriglieri(47、-、-、-):ノマドワーク時代のリーダーシップと学習を研究。
38、Marcus Buckingham(-、-、18、8):人の持つ強みの重要性を追究。
39、Frederic Laloux(-、-、-、-):近著「Reinventing Organizations」(2014)では幻滅を与える組織から啓発を与える組織への転換を議論。
40、Gary P. Pisano(-、-、-、-):◎、2019 Innovation Award候補。新著は「Creative construction」(2019)。本ブログではHBR誌論文「The Hard Truth About Innovative Cultures」(2019)を紹介しました。
41、Jim Collins(31、28、12、4):○、「ビジョナリーカンパニー」シリーズの著者。「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」は本ブログでも紹介しました。
42、Sheena Iyengar(-、-、-、48):人が行う選択について研究。最近ではオーセンティシティも検討。
43、Stew Friedman(38、29、27、45):トータルリーダーシップの考え方を提唱。彼のfour-way win戦略は、仕事、家庭、コミュニティ、自分自身についてよりよい結果を達成しようとするもの。
44、Sydney Finkelstein(23、41、43、-):リーダーシップ、戦略、コーポレートガバナンスが専門。「スーパーボス」の考え方を提示。よいリーダーはよい教育者であることを示した。
45、Julian Birkinshaw(45、42、39、-):○、イノベーション、企業、大企業の再生が専門。
46、David Burkus(48、-、-、-):伝統的なベストプラクティスは、今や再考すべきと主張。新刊の「Friend of a Friend」(2018)では、ネットワークを広げる人の行動について検討。
47、Heidi Grant(50、-、-、-):2019 Leadership Award候補。脳科学も活用して才能を生かす戦略を検討。
48、Dorie Clark(-、-、-、-):2019 Talent Award候補。パーソナルブランディングで有名。近著は「Entrepreneurial You」(2017)。
49、Michael Jacobides(-、-、-、-):2019 Strategy Award候補。ビジネスエコシステム、デジタルプラットフォーム、協力、パートナーシップが専門。
50、Tiffani Bova(-、-、-、-):2019 Breakthrough Idea Award候補。顧客体験、デジタルによる変革、ビジネスモデルイノベーション、労働の未来を追究。近著は「Growth IQ」(2018)。

Innovation Award
の受賞者と候補者リストは以下のとおりです。
受賞者:Vijay Govindarajan(前回21位、今回Hall of Fame入り)
候補者:
Simone Ahuja:「Jugaad Innovation」(2012)共著者。「Disrupt-It-Yourself」(2019)著者。
Safi Bahcall:「Loonshots」(2019)著者。本ブログでHBR論文「The Innovation Equation」(2019)を紹介。
Jeff Dyer, Nathan Furr, Curtis Lefrandt:「Innovation Capital」(2019)著者。
Kaihan Krippendorff:「Driving Innovation from Within」(2019)著者。
Gary Pisano:今回40位。
Alf Rehn:「Innovation for the Fatigued」(2019)著者。
Howard Yu:「Leap」(2018)著者。

今回はクリステンセンら5人がHall of Fame入りで抜けましたが、その割には初登場の人が少なかった印象です。従来の考え方を覆すような変動が起きていない、ということかもしれません。ただ、全体的に、イノベーションを検討対象にしている(イノベーションをメインにしていなくても)思想家が増えているという気はします。マネジメントのどのような側面を検討するにしても、イノベーションに無頓着でいるわけにはいかない、ということなのかもしれません。


文献1:「The Thinkers50webページ(ランキング)
https://thinkers50.com/t50-ranking/