研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

セレンディピティー

ノート6改訂版:研究部門が実施したいと考えるテーマ

1、研究開発テーマ設定とテーマ設定における注意点
1.1
研究活動における基本的な注意点
→ノート1~3
1.2
、研究テーマの設定
①企業収益に結び付くテーマ(事業的に成功が期待されるテーマ)→ノート4
②研究部門に求められるテーマ(企業が研究部門に求める活動と、それに付随する研究テーマ)→ノート5

③研究部門が実施したいと考えるテーマ(研究部門が主体的に提案するテーマ)
研究部門が行なう業務や研究テーマには、研究部門が主体的に考え、実行するものもあります。これは実質的には、企業組織において研究を担当する部門が、与えられた業務分担の範囲で、ある程度自主的に実施すべき内容を考え、実行するテーマということになります。②で説明した「研究部門に求められるテーマ」では、他部署の要求に応えることである程度研究の意義が認められやすいわけですが、「研究部門が実施したいと考えるテーマ」では、研究の内容やその意義自体も自らが判断しなければならない点が大きな違いです。何をアイデアの源として、どう研究テーマの形にしていくかを考えることから始めなければならないわけで、ここでは研究部隊で行なうテーマの発案を中心に、その時にどういう点に注意すべきかを考えたいと思います。

研究部門が発案するテーマは、一般に「ボトムアップ」のテーマと呼ばれることが多いと思います。これに対し、②で説明したテーマや課題は「トップダウン」、ということになります。トップダウン、ボトムアップのどちらが望ましいかという議論に関しては、不確定要素や不確実性の存在のため研究開発の計画は完全にトップダウンだけでは決められないことに特別の注意が必要[文献1、p.177]との指摘があります。また、形式知(形式的・論理的言語によって伝達できる知識)と暗黙知[文献5](特定状況における個人的な知識で、形式化したり他人に伝えたりするのが難しい知識)[文献6、p.88]の相互作用が組織的知識創造にとっと重要であるとの立場から、トップダウンモデルは形式知を扱うのに向いているが組織の第一線での暗黙知の成長を無視しており、ボトムアップモデルは暗黙知の処理が得意であるが暗黙知を組織全体に広めて共有することを難しくしており[文献6、p.187]、組織的知識創造のための最良の環境として「ミドル・アップダウン・マネジメント」が提案されています[文献6、p.238]。いずれにせよ、「ボトムアップ」テーマの重要性は広く認識されているものの、研究部門が持つ知的資源や能力をうまく活かすことが課題、ということになるようです。

研究テーマのアイデアの源に関しては、
「サイエンス・プッシュ」「テクノロジー・プッシュ」vs.「マーケット・プル」「デマンド・プル」
「シーズ志向」vs「ニーズ志向」
という区分がなされることがあります。

イノベーションがどのような過程で発生するかについて、過去(1950年代)においては、基礎的研究がイノベーションを生むという「サイエンス・プッシュ」の考え方が重要視されていたようです。これに対し、近年では科学技術と市場の間の双方向コミュニケーションの重要性が認識されて、上記のような「サイエンス・プッシュ」と「マーケット・プル」の2つの逆向きの流れを組み合わせる「カップリングモデル」を考慮すべきだと言われています[文献1p.119-121]。さらに、Tiddらは、テクノロジー・プッシュ型か、さもなくばニーズ・プル(必要は発明の母)型かのどちらかといったアプローチの限界は明らかであり、現実には、イノベーションとは何かと何かを結びつけ調和させていくプロセスであって、相互作用こそが最も重要な要素である[文献2p.54]と指摘しています。また、Rogersは「知覚されたニーズがイノベーション過程を始動させたり、イノベーションの知識がそれに対するニーズを創出したりする」[文献3p.410]と述べており、同様の見解は他にもみられます[文献4p.149]

このように、イノベーションにとってはいわゆるシーズとニーズの双方が必要ということは広く認識されていることのようですが、にもかかわらずシーズ志向の研究というものは企業内では評判が悪いように思われます。この原因としては、シーズ志向の研究は、古典的な企業経営の手法すなわち、企業内外の環境分析に基づいて戦略的に目標を設定し、それを効率的に実行するという考え方になじみにくいことがまずあげられるでしょう。それに加え、開発(あるいは導入)された技術と、製品や実機に使えるような技術との間のギャップ(レディネス・ギャップ)を誰がどのように埋めるかがはっきりしないために「研究所で生み出された技術は、市場よりもサイエンスに近いものとして評判が悪い」[文献7p.232]と判断されてしまうこともあると思われます。

これに対し、ニーズ志向の考え方は、その研究がうまくいけば収益が上がるはずだ、という期待から、テーマ設定において重視される場合があります。しかし、真のニーズを理解することはそう容易ではない、として、ニーズ志向の考え方に否定的な見解を持つ人もいるようです。例えば、顧客にヒヤリングして得たニーズは、実現できた方がよいという程度の顧客の希望であることも多く、また、何らかのイノベーションが実現した後になって初めて、顧客がそうしたニーズがあったことに気づく場合もあると言われます。破壊的イノベーションの理論では、真のニーズとは、「片づけるべき用事」[例えば文献4、p.119]に基づくものとされ、その真のニーズを見出す方法として行動観察などのエスノグラフィー的な手法が着目されています。ニーズというと、顧客や、顧客と接する他部署から与えられるものと考えがちですが、好ましくは、研究部隊がニーズの把握段階から関与すべきものなのかもしれません。結局のところ、ニーズ志向、シーズ志向という考え方については、二者択一ではなく、両者を重視したテーマ設定が求められるようになってきているということのようです。

ただ、シーズを創造し、磨くことは多くの場合研究部門に求められる、研究部門ならではの業務です。特に技術的シーズに関しては、専門的な知識や訓練が必要とされることが多いため、研究部門以外の部署では取り扱いが困難な場合もあるでしょう。従って、シーズに基づく研究テーマが求められる場合には、研究部門がその検討を行なうことが最も合理的ということになります。研究部門にとっても、技術シーズは身近に存在するため、シーズを発展させるプロセスに技術者が関与する余地が大きく、成果も得やすいというメリットもあって、取り組みやすいものです。さらに、シーズ技術がそれ自身で(ニーズがなくても)成長し、さらに新たなシーズを生み出す可能性がある点も重要でしょう。

シーズ技術のもつこのような特性は、セレンディピティーにも繋がるものと考えられます。セレンディピティーとは、偶然に幸運な予想外の発見をする能力を指し、Robertsは、以下の2種類に分類しています。[文献1、p.198] [文献8、p.ix]
・擬セレンディピティー(pseudoserendipity):追い求めていたことを、偶然に発見できること
・真のセレンディピティー(true serendipity):思ってもみなかったことを、偶然に発見できること
このうち、真のセレンディピティーは「予想外」の結果に基づくものであるため、オリジナルなものとなることが多く、差異化のためには特に重要と考えられます(擬セレンディピティーであっても発見に偶然を必要とするものは同様です)。セレンディピティーに恵まれれば、それは競合他社が容易に達成できる成果ではなく、技術的に優位に立つための重要な足がかりになるはずです。ただ、真のセレンディピティーは、目的志向を強く意識した研究においては目的外の結果や単なる異常値として見逃されてしまうこともありうるので、注意が必要です。

このように、いわゆるシーズ志向のテーマは、ニーズとの組み合わせでイノベーションを達成するための重要な要素となると考えられますが、シーズとしては、現有の技術を単に深めるだけではなく、外部の技術、埋もれた技術、失敗の結果に終わった技術なども加える必要があるでしょう。そして、真のニーズを理解した上で、シーズとニーズをうまく組み合わせて、より可能性の高い研究テーマを、研究部門が実施したいと考えるテーマとして実施していく努力をすべきなのだと考えます。

考察:実践的な研究テーマの分類について
このノートでは、基礎研究、応用研究といった研究の分類についての議論は行なっていません(「」参照)。それは、こうした研究の分類は実践的にあまり役に立たないように思われるためですが、ノート4~6において、3つの側面から研究テーマの性格の違いについて議論しました。研究というものは、その内容や位置づけなどが異なっていれば、その効果的な進め方や注意点は当然違って然るべきと考えられますが、もし、テーマをうまく分類することによって、そうした好ましい進め方に関する理解が深まるならば、そうした分類には意味があるのではないかと考えています。

ノート4~6で試みた3つの視点によるテーマの分類は、それぞれが排他的なものではなく、同時に2種類の特徴を持つテーマや時間の経過とともにその分類が変わっていくテーマも想定しているものです。ただ、この分類は、誰がその研究テーマを主体的に判断するかが異なっていること、それによって、研究部門の役割と注意点が変わってくることが、特徴としてあげられると思います。具体的には以下に示すとおりです。
①企業収益に結び付くテーマ(事業的に成功が期待されるテーマ):判断主体は経営層。最終的に経営に寄与することを目指すため、全社的なテーマとなる可能性があり、研究部門の役割は、全社的なテーマ推進の中で分担する役割をこなすことになる。経営層への専門的助言も役割のひとつ。
②研究部門に求められるテーマ(企業が研究部門に求める活動と、それに付随する研究テーマ):判断主体は研究部門以外の部署。研究部門の役割は、まず外部からの期待に応えること。その上で、よりよいものを生み出せれば望ましい。
③研究部門が実施したいと考えるテーマ(研究部門が主体的に提案するテーマ):判断主体は研究部門。研究部門の役割は、イノベーションの種を生み、育てること。シーズであろうとニーズであろうと、あらゆる情報を集めて組み合わせて種を生む研究部門の能力が問われる。

もちろん、こうした視点は、現状では私のアイデアにすぎませんが、企業における研究部門の役割を考えると、このように分類することは、それぞれのテーマの効果的な遂行方法を考える手がかりになるのではないかと思っています。


文献1:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.
文献2:Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.
文献3:Rogers, E.M., 2003、三藤利雄訳、「イノベーションの普及」、翔泳社、2007.
文献4:Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J., 2008、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.
文献5:Polanyi, M., 1966、高橋勇夫訳「暗黙知の次元」、筑摩書房、2003.
文献6:Nonaka, I., Takeuchi, H., 1995、梅本勝博訳、「知識創造企業」、東洋経済新報社、1996.
文献7:Leonard-Barton, D., 1995、阿部孝太郎、田畑暁生訳、「知識の源泉」、ダイヤモンド社、2001.
文献8:Roberts R.M., 1989、安藤喬志訳、「セレンディピティー」、化学同人、1993.

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ノート5改訂版:研究部門に求められるテーマ

1、研究開発テーマ設定とテーマ設定における注意点
1.1
研究活動における基本的な注意点→ノート1~3

1.2
、研究テーマの設定
①企業収益に結び付くテーマ(事業的に成功が期待されるテーマ)→ノート4

②研究部門に求められるテーマ(企業が研究部門に求める活動と、それに付随する研究テーマ)
企業は研究部門にどのような役割を求めているのでしょうか。企業活動に貢献する研究を目指すならば、まずは企業が研究部門に期待している仕事を果たすことを考える必要があるでしょう。その中には、いわゆる研究活動すなわち、イノベーションにおける技術的要素の追究も含まれますが、実際には、イノベーションには直接結びつかない様々な仕事も研究部門には求められます。具体的には、生産現場の業務とは異質だが、ある程度の専門性を必要とする仕事が研究部門に任せられることが多く、こうした活動は研究者のマンパワーの中で無視できない比率を占めることがあります。研究活動への資源配分を考える上でも、このような活動を含めた、研究部門に求められている業務を整理しておきたいと思います。

研究部門に求められていることは業種や分野、さらには企業内における業務分担の考え方によって異なりますが、大きく分けると、頭を使うことと体を使うことに分けられます。さらに、取り組む課題によって、未知のこと(新規なこと、創造)と、既知のこと(応用など)とに分けられるでしょう。この視点に立って、業務を分類してみたものを下図に示します。

研究分類scan500


一般的な研究開発とはイメージが異なる業務も含まれていると思いますが、現実にはこのような業務を要求されることは例外的なことではありません。いずれも技術に関する情報を扱う仕事であり、こうした業務が必要とされているならば、技術にかかわるどこかの部署が担当する必要があるわけです。

一般には、研究の役割としては図の右側、新規なことへの挑戦が注目されます。しかし、左側も無視することはできません。既存のことを知っておくことは、新たな創造のための基盤となるとともに、既存の事業を有する企業にとってはその技術的基盤を確保する意味でも重要と考えられます。Anthonyらは「安定した中核事業の存在がイノベーションの前提条件」と述べています[文献1、p.29]。彼らは主に収益面で中核事業が安定することの重要性を強調していますが、中核事業を支える技術の面でも安定が損なわれてしまってはイノベーションの成功はおぼつかないでしょう。例えば、既存技術分野での過度な人員削減により、育成指導の弱体化や、業界、社会動向の監視不足が生じたり、人員削減のための機械化や設備の高度化により製造技術がブラックボックス化し、さらにはトラブル(非定常)経験が不足するなど、既存事業の技術基盤の弱体化を招く要因は存在します。イノベーションに注力しようとして、経営資源を既存分野から新規分野に振り向けようとしたとしても、既存分野に問題が発生すればその問題への対応は誰かがやらなければなりません。結局そうした対応に研究部隊のマンパワーを割かれてしまう可能性があることには十分な注意が必要でしょう。

なお、これら研究部隊に求められる様々な業務の一部を外部との連携で処理しようとする考え方もあります。外部の知識の有効活用を狙ったオープンイノベーション[文献2]、他社に対する優位性を生み出さない業務のアウトソーシングにより優位性を生む分野に社内資源を再配分すべきとする考え方[文献3]もこうした考え方に含まれると思われます。しかし、図の左側の業務であっても研究者、技術者を育成するという側面があるため、その部分まで外部との連携やアウトソーシングに頼ってよいかどうかには議論の余地があるでしょう。例えば、「エリクソン(Ericsson[1996])は、仕事に限らず熟達化における高いレベルの知識やスキルの獲得のために、およそ10年にわたる練習や経験が必要であるとして『10年ルール』を提起している[文献4、p.34]」とのことです。一般の企業では、10年間、教育のためだけに時間を費やすことは不可能でしょうから、既知のことに関わる業務を行ないながら経験を積むことは有効な育成の方法と言えるのではないでしょうか。また、左側あるいは下側の業務には新たなアイデアを生み、その可能性を正しく評価するための基盤としての重要性もあると思われます。ノート2で少し触れた(ノート6でより詳しく触れます)「セレンディピティー」についてRobertsはパスツールの言葉を引用し、「観察の場では、幸運は待ち受ける心構え次第である」と言っていますが[文献5、p.viii]、「観察の場」は上述の図の下の部分に、「心構え」は既存知識の充実という意味で図の左側の部分に相当すると考えられます。このような既存知識を含む社内の技術力の充実の必要性は、丹羽によるChesbroughのオープンイノベーションへの批判においても述べられていて、「結局のところ、強い知識と技術やマネジメント力も兼ね備わった企業が、外部の知識や技術を効果的に活用することができる」[文献6、p.79]としています。Mooreの主張するアウトソーシングによる資源の創出[文献3]は、経験を積んだ人材を競争力の発揮に活用する、という意味ならば有益と思われますが、技術力の蓄積を損なうようなアウトソーシングでは意味がないように思われます。

また、図の左側の業務は、一般にその業務の必要性がわかりやすい(例えば、どこかからの問い合わせに対応するとか、顧客からのクレームに対応するとか)ことに加えて、計画しやすく成果が目に見える形で出やすいため(つまり不確実性が低い)、ともするとそうした業務を優先してしまいがちになる場合があることにも注意が必要と思われます。新規なことへの挑戦を重視するならば、図の右側の業務への動機づけ、評価とのバランスも重視しておくべきでしょう。

要するに、研究部隊に求められる仕事の内容を理解し、そうした業務への資源配分のバランスをとることが重要、ということに帰着してしまうわけですが、現実的には、それぞれのプロジェクトや、その企業の置かれた状況に応じて臨機応変に、しかし片寄り過ぎないように資源配分を調整することはそう容易なことではないと思われます。それぞれの企業のマネジメント力が問われるといってもよいかもしれません。

もうひとつ、表に示した分類には現れない研究の役割として「宣伝」が挙げられます。ノーベル賞を受賞した田中耕一氏が、彼の所属する島津製作所の企業イメージアップに大きく貢献したことは比較的記憶に新しいところですが、そこまでの業績ではなくとも研究成果の社会へのアピールがうまくできれば宣伝効果は十分に期待できるのではないでしょうか。Tiddらはアライアンスのマネジメントにおいて、「ある技術、もしくはその技術のソースが企業に与える信用度は、企業の技術取得方法に影響を与える重要な要素」と述べています[文献7、p.272]。「宣伝」という側面での研究活動の寄与はもう少し認識されてもよいのではないかと思われます。

以上、企業が研究部門に求めている課題として、イノベーションへの直接の寄与だけではなく、それ以外の役割もよく認識しておく必要があることを述べました。こうした業務の位置づけや進むべき方向性を明確にし、必要な業務全体を考慮したテーマ設定、業務分担、資源配分を行なうことはトップマネジメントの課題であるのと同時に、第一線の研究マネジャーにとっても重要なことと思われます。

考察:イノベーションと既存事業とのバランス

要するに、研究開発だからといって、新しいこと、未知のことばかりに気をとられすぎてはいけない、ということだと思います。これは、上述したような、企業が研究部隊に求めている役割からも明らかだと思うのですが、最近では、Govindarajanらにより、既存事業を「パフォーマンスエンジン」ととらえ、イノベーションと既存事業とのバランスを重視したイノベーションの進め方が提案されています[文献8]。ここで「パフォーマンスエンジン」とは、「成長して成熟していく企業は毎四半期に安定した利益を上げるというプレッシャーによってかたちづくられ、型にはめられる[文献8、p.30]」組織であって、これが既存事業において利益を生み出す原動力になっていると考えられるものです。パフォーマンスエンジン(既存事業)だけでは画期的なイノベーションは不可能だが、イノベーションとパフォーマンスエンジンとのバランスをとることにより、イノベーションを成功に導ける、というのがGovindarajanらの主張ですが、既存事業を運営する組織は、パフォーマンスエンジンに貢献するように形作られるということは忘れてはならないと思います。つまり、企業が研究部門に求めていることの一部は、既存事業に貢献するようにできている、ということで、イノベーションのためにそうした業務をどう扱うか、既存事業の一部としての活動と新規事業のためのイノベーション活動のバランスをどうとるかをよく考えなければならない、ということになるでしょう。本稿でとりあげた研究部門への様々な要求は、既存事業への貢献に主眼をおいたものか、あるいは新規事業のために必要な業務なのか、その比率は様々に異なると思います。とすれば、それらをひとまとめにして資源配分を考えるのではなく、研究部隊に対する様々な要求のそれぞれについて、何を重視するかを判断し、場合によっては、研究部隊を分割することも含めて考えなければならないのだと思います。そのためにも、研究部隊に要求される日々の業務について、まずはその意味と位置づけを研究員、研究マネジャーがしっかりと認識することが、イノベーションと既存事業のバランスをとるために役立つのではないかと思います。


文献1:Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J., 2008、スコット・アンソニー、マーク・ジョンソン、ジョセフ・シンフィールド、エリザベス・アルトマン著、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.
文献2:Chesbrough, H., 2003、ヘンリー・チェスブロウ著、大前恵一朗訳、「Open Innovation」、産業能率大学出版部、2004.
文献3:Moore, G.A., 2005、ジェフリー・ムーア著、栗原潔訳、「ライフサイクルイノベーション」、翔泳社、2006.
文献4:金井壽宏、楠見孝編、「実践知 エキスパートの知性」、有斐閣、2012.
文献5:Roberts R.M., 1989、R・M・ロバーツ安藤喬志訳、「セレンディピティー」、化学同人、1993.
文献6:丹羽清、「イノベーション実践論」、東京大学出版会、2010.
文献7:Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、ジョー・ティッド、ジョン・ベサント、キース・パビット著、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.
文献8:Govindarajan, V., Trimble, C.、ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル著、吉田利子訳、「イノベーションを実行する 挑戦的アイデアを実現するマネジメント」、NTT出版、2012.

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ノート3改訂版:研究と競争相手

1、研究開発テーマ設定とテーマ設定における注意点

1.1研究活動における基本的な注意点

1)研究の必要性ノート1

2)研究の不確実性ノート2

3)研究と競争相手

研究を考える上で重要な基本的事項の3点目として、研究における競争相手の存在を挙げておきたいと思います。

企業活動においては他社との競争が日常的に発生しますので、本来は競争相手の動向に応じて自らの戦略を立てるべきであるはずです。しかし、研究開発を行なっているとつい競争相手への注意が疎かになることがあります。もちろんその結果として何ら問題が発生しなければかまわないわけですが、実際には不利益を生む場合もあります。

現代科学技術の特徴として丹羽は技術の普遍性を挙げています[文献1、p.11]。ここでいう普遍性とは、産業革命後、技術知識の体系化と公開化が進んだことにより、技術が広く世界中で高度に発展し普及するようになった[文献2、第3章(文献1、p.12]ことにより、技術が時間や空間の制約を超えて、世界万民に等しく開かれた状態となっていることを指しており、技術が普遍的であるということは、世界中の大学や企業研究所などで同じような技術の研究や開発が実施されている可能性が高いことを意味している[文献1p.12]、とされています。世界中で、というのはややおおげさなような気もしますが、少なくとも業界の先端に近い研究機関では、あちこちで同じような課題に取り組んでいることは実際によくあることで、似たような研究が似たような時期に独立に発表されるという例は、現代に限らず多く存在します。最近は世界全体の技術力の向上とともにコミュニケーションの発達もあって、このような競争状態はさらに起きやすくなっているのではないでしょうか。今回は、こうした状況下でイノベーションを進めるにあたってどのようなことに注意する必要があるかについて考えてみたいと思います。

例えば、何かのアイデアを思いついたとします。先行文献、特許を調べても同じアイデアは存在していないようです。この時、以下の3つの可能性が考えられるでしょう。

①今までにそのアイデアを思いついた人はいない(全く新規なアイデアである)

②今まさに他の研究グループで同じアイデアの研究が行なわれているが、まだ発表されていない。

③過去に同じアイデアを誰かが試してみたが、何らかの理由で発表されていない。

①の場合、非常に好ましいわけですが、残念ながら②と③でない、と断言することができないのが普通です。というのは、イノベーションが未知のことへの挑戦である以上、情報は十分には得られないのが普通だからです。(もちろん、①であったとしても、ノート2で述べたようにそれが好ましい結果につながるかどうかは不確実です。)

問題なのは②と③の場合で、②の場合には当然のことながら競争相手の動向に注意が必要になります(そのかわり、競争相手も狙っている、ということは①の場合よりも技術の成功確率は高いと考えられるかもしれません)。③の場合は、なぜ発表されていないかを考えてみる必要があります。可能性は2通り、誰かがそのアイデアを有効に活用しているがそれを秘密にしている場合と、試してみたがうまくいかなくてあきらめた場合となります。これらは至極当たり前のことなのですが、注意しなければならないのは、自分が思いついたアイデアについては、えてして①と思い込みがちなことで、その結果、開発に手をつけてから②か③であることがわかって開発戦略の見直しを迫られるということがあります。こうした見込み違いを完全に防止することは困難でしょうが、上記のような可能性があることを心がけておけば、的確な対応はしやすくなるものと思われます。

このような他社との「競争」の状態を理解するためには、ポーターの枠組みを利用するのが一般的な手法でしょう。競争を駆動する5つの力として、1、サプライヤーとの関係、2、買い手との関係、3、新規参入者、4、代替製品、5、既存企業間の競争状況を考え、それらに基づく機会と脅威を考慮して戦略を構築する[文献3、(文献4、p.93]という考え方は重要なものではありますが、こうした分析を実行しようとすると、各々の力に関する情報が必要となります。しかし、イノベーションを扱う場合、それ自身が不確定、流動的であったり、情報が公表されていない場合があるため、ポーターの枠組みが十分に利用できないこともあると思われます。イノベーションにおける競争を考える場合には、戦略構築のための外部の情報が少ない状況での判断が求められるわけです。

ただし、確かな情報はなくとも、競争相手の動向はある程度は推定できます。具体的には以下の2つのポイントを考えてみればよいと思われます。

・あるアイデアに必要な技術要素、資源が他社、あるいは過去において入手可能か

・あるアイデアを実現しようとするニーズが他社、あるいは過去において存在するか(したか)

もし、上記の両方ともがYesならば、他社も現在または過去に同じアイデアについて研究している可能性があると考えた方がよいでしょう。資源があり、ニーズがあるのに何もしていないということは考えにくいです。言い換えれば、他社(過去)にない要素技術、資源を用いているもの、他社(過去)にはないニーズに基づいたアイデアは自分たちのオリジナル(つまり上記の①)である可能性が比較的高い、と言えるのではないでしょうか。上記の2つのポイントの答えももちろん推定の域を出ないわけですが、他社におけるアイデア実行の有無そのものを推定するよりは易しいと思います。

このような競争相手の動向は、予測しにくいという意味でノート2で述べたイノベーションの不確実性の一部と考えることもできます。しかし、心がけてさえいれば、競争相手に伴う不確実性は、物や現象に伴う不確実性よりも予想しやすいのではないでしょうか。

以上のような競争相手の存在可能性について注意を払い、その動向を予測していれば、他社に出し抜かれる可能性について備えることができるし、他社と同じ失敗を繰り返すことによる痛手を軽いものにできると思われます。イノベーション実現という未来予測を当てる確率を高めるために、競争相手の存在を考えておくことは、重要なチェックポイントのひとつになると考えられます。

考察:競争を避けるには

上記の議論では、競争相手(実際に競争状態にあるかどうかに関わらず、同じようなことを考えているライバルも含めて)の存在を忘れないようにすること、その動向を予測することの重要性を述べました。しかし、競争を避けることができればより戦略的には有利です。

競争を避けようとする考え方としては「ブルー・オーシャン戦略」[文献5]が挙げられます。ブルー・オーシャン戦略は必ずしも研究開発を対象にしたものではありませんが、1)市場の境界を引き直す、2)細かい数字は忘れ、森を見る、3)新たな需要を掘り起こす、4)正しい順序で戦略を考える、5)組織面のハードルを乗り越える、6)実行を見すえて戦略を立てる、という6つの原則[文献5、p.43]により、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする[文献5、p.31]ことを目指しています。もちろん、研究においてもこの概念は役に立つとは思いますが、この戦略も上記のポーターの枠組みと同様、情報が少ない場合には効果が活用しにくいと思われます。さらにこうした戦略の発想では競争相手の未知の考え方というものが反映されにくいという問題点もあるでしょう。

そこで、競争を避ける方法、競争の少ないアイデアを得る方法を考えてみました。次のような方法であれば可能性がありそうに思いますが、いかがでしょうか。

・上記の、競争相手の動向を推定する方法を活用する:想定される競争相手が保有していないと考えられる技術要素、資源、競争相手が気づきにくいと考えられるニーズに基づくアイデアを採用する。

・非対称的モチベーション[文献6、p.42](不均等の意欲[文献7、p.114,501])を活用する:Christensenらによる破壊的イノベーションの理論において、不均等の意欲とは、「ある企業が、別の企業にはその気のないことをするときの状態[文献7、p.501]」とされています。破壊的イノベーションは、既存企業にとって魅力のない市場、気づかない市場に新興企業が参入することによって起こる場合がありますが、この時、既存企業は新市場に参入する意欲がないことによって、新興企業にとっては競争のない市場が生まれます。

・セレンディピティーを活用する:偶然が、自らと競争相手に同じタイミングで訪れる可能性は低いでしょう。従って、偶然によるセレンディピティーを活かすことができれば、競争相手との差別化が可能です。もちろん、偶然をコントロールすることはできませんが、偶然によるチャンスを生かす能力を磨くことによって、競争相手が保有しない技術要素を身につけられる可能性があります。

研究が本来的に持つ不確実性と、競争相手の存在を考えると、論理的な思考に基づいて立てた戦略が必ずしも有効であるとは限りません。もちろん、論理的な分析と思考が有効な場合もあり、そうした思考が状況の理解を深め、専門性を高めることにつながり、また新たなアイデアのヒントになることを考えると無駄とはいえませんが、自分が考えることは、たいてい競争相手も同じように考えているとすれば、論理的思考だけで競争相手より優位に立つことは難しいかもしれません。イノベーションの成功のためには、単に狙った技術を実現するだけではなく、競争相手より優れた価値を提供することが必要なことを考えると、まずは、競争相手の存在を認識し、その競争相手がどう動くかを予想し、それに対応した戦略を立てることが必要なように思われます。



文献1:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.

文献2:Drucker, P.F., 1961、上田惇生編訳、「テクノロジストの条件」、ダイヤモンド社、2005.

文献3:Porter, M.E., 1980、土岐坤、中辻萬治、服部照夫訳、「(新訂)競争の戦略」、ダイヤモンド社、1995.

文献4:Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、ジョー・ティッド、ジョン・ベサント、キース・パビット著、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.

文献5:Kim, W.C., Mauborgne, R., 2005W・チャン・キム、レネ・モボルニュ著、有賀裕子訳、「ブルー・オーシャン戦略」、ランダムハウス講談社、2005.

文献6:Christensen, C.M, Raynor, M.E, 2003、クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著、桜井祐子訳、「イノベーションへの解」、翔泳社、2003.

文献7:Christensen, C.M, Anthony, S.D., Roth, E.A., 2004、クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス著、宮本喜一訳、「明日は誰のものか」、ランダムハウス講談社、2005.

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ノート2改訂版:研究の不確実性をどう考えるか

1、研究開発テーマ設定とテーマ設定における注意点

1.1研究活動における基本的な注意点

1)研究の必要性ノート1

2)研究の不確実性:すべての研究が克服しなければならない課題

研究を考える上で認識しておくべき基本的事項の2点目として、研究の不確実性を挙げたいと思います。

そもそも、人間がある目的を達成しようとして行動する場合、何らかの未来予測に基づいて行動することがほとんどでしょう。その予測の裏付けとなるのは、単なる勘のこともあるでしょうし、過去の経験や、他人の意見、多くの経験を体系化したり原理から導かれたりした理論のこともあるでしょうが、どんな場合も何らかの根拠に基づいて行為の結果を予測し、その予測に基づいて行動しているはずです。

このような行動とその結果の問題を扱うのに、意思決定理論では、次のような分類がなされるそうです。[文献1、p.17(文献2、p.255]

・確定性:ある行動について必ずある一定の結果が生じることが分かっている場合

・不確定性:ある行動について起こりうる結果が1つでない場合で、さらに2つのケースに分かれる。

 ①リスク:起こりうる結果の確率が分かっている場合。

 ②不確実性:起こりうる結果の確率が分からない場合。

このリスクと不確実性の区別はフランク・ナイトがその重要性を強調している考え方で、「リスクにおいては母集団における事象の分布が(事前確率の計算あるいは過去の経験で)わかっているのに対して、不確実性の場合にはわからない・・・。その理由は一般的には、扱う状況が高度にユニークであるため、母集団がわからないからである」とのことです[文献3、p.233(文献4、p.107)]。

企業活動について考えてみると、例えば工場での定常的な製品生産などは通常上記の確定性の場合に該当するでしょう。また、事故などの非定常な場合でも、過去の実績や情報、理論の蓄積があればその確率はある程度予測できますので上記のリスクの場合に該当する場合が多いと考えられます。これに対し、「イノベーションとは、従来とは違う新しく価値ある事業やサービスを起こすこと」(ノート1Druckerによる)ですから、イノベーションはユニークで、過去の情報や理論が十分であるとは限りません。従って、イノベーションを目指す研究開発活動は上記の「不確実性」の分野で扱うべき課題となるでしょう。

そうなると、研究開発を考える際には、まず、研究開発が「不確実」なもの、つまり期待どおりの結果が得られる確率がわからないものである、ということを認識することが重要ということになります。もちろん、不確実だからと言って目標や計画、管理の意味がないというわけではありません。マネジメントのやり方によって成功の確率は上がるはずです。しかし、どうやってもうまく行かない可能性もあることを理解し、その時にどのような「次の手」を打てるかを考えておくことが必要になるといってよいでしょう。

このような不確実性のマネジメントを考える場合、不確実性をもたらす要因を次の2種類に分けることが有効なように思います。すなわち、

1)期待している内容、目標についての不確実性

2)目標達成のために採用した手段に伴う不確実性

の2種類です。

例で考えてみましょう。「4、5、6と並んだ数字の後には何がくると期待されるか?」という問いに対して、最も素直には「7」と予想できると思います。しかし、この「4、5、6」が、普通のサイコロを振ってたまたま出た目の順番であった場合、「7」はありえません。サイコロなら「7」が出ないことに疑問の余地はありませんが、サイコロの仕組みや構造を知らない場合、すなわち起こりうる結果の確率がわからない(上述の「不確実性」に該当)場合には「7」を期待してしまうかもしれません。もし「7」を出したいなら、サイコロを振る回数を増やしたり、振り方や重さを変えたりする手段ではダメで、例えば普通のサイコロではなく12面体のサイコロを持ってくるというような手段が必要となります。あるいは、普通の6面体サイコロしか手段として使えない状況であれば、「7」を期待してはいけないわけで、目標を変更する必要があることになります。

意思決定においては、期待通りの結果が得られるかどうかを知ることができればよいので1)と2)をひとくくりにした確率を議論すれば問題はないかもしれません。しかし、イノベーションのように、起こりうる結果の確率がわからない「不確実」な課題に取り組み、なんとかして期待通りの結果を得たいという場合には、目標設定に基づく問題(「7」を期待してよいかという問題)と、手段や方法に基づく問題(「7」を出すにはどうしたらよいかと言う問題)に分けて考えた方がよいのではないかと思われます。例えば、研究開発を進めていて期待通りの成果が得られない場合、やり方が悪い(ということは、やり方を変えればうまくいく可能性がある)のか、そもそも目標が悪い(どういうやり方をしても不可能(原理的に成功確率がゼロだったり、与えられた資源の中での成功確率がゼロ))のかを理解できれば、それぞれの問題に応じた対応が可能になるのではないでしょうか。

往々にして、ある目標の実現を目指した研究開発においては、手段や方法の検討に主眼がおかれがちです。手段や方法の検討というのは、サイコロを何回も振ってみることに似て、目に見える努力が要求され、努力をしているのだという報告もできます。また、お金や人といった資源を投入することによって試行の回数やパターンを増やすことができます。しかし、そもそもの目標設定が誤っていると、こうした努力は実を結びません。科学は多くの夢の実現に寄与してきましたが、錬金術、永久機関、タイムマシンなど、実現できないことが証明された夢もまた存在します。さらに近年では、複雑系における現象のように、本質的に予測が不可能(あるいは限定的)だったり、現象を要素に還元して理解しえない場合もあることが明らかになっています(本ブログ「複雑系経営(?)の効果」「複雑系の可能性」)。自分たちが狙っているイノベーションの目標が、このような達成不可能な目標や制御不可能な目標になってしまっているかもしれないことには常に注意が必要でしょう。

もう一つ、目標設定の問題と手段や方法の問題を分けることによってわかりやすくなることがあります。それは、研究によって予想外の結果が得られた場合です。予想外ということは、期待通りの結果を得ようとする立場から見ると失敗になってしまうわけですが、セレンディピティーと呼ばれる能力(偶然に幸運な予想外の発見をする能力[文献5、p.198])によってなされた発見が科学技術における大きな進歩をもたらした例は数多くあります[文献5] [文献6]。このような予想外の結果も成果として生かしたいなら、当初の目標設定を見直す必要がでてきます。当初の目標に縛られて大きなチャンスを失わないためにも、目標自体の不確実性を認識し、目標を変更することで成功を掴むアプローチも考えてみることが必要でしょう。不確実な研究開発においては、このような目標見直しの余地を持つことは、メカニズムの解明や手段の改良で成功確率を高めようと努力することに劣らず重要なことと考えられます。

具体的な不確実性のマネジメントとしてはどのような方法が考えられるでしょうか。Christensenらは「将来を予見することが難しく、何が正しい戦略かはっきりしないような状況では創発的プロセス主導で戦略を策定することが望ましい」[文献7、p.260]と述べています。創発的戦略についてはノート12で議論しますが、ChristensenAnthonyらは、「不確実性が極めて高い環境におけるイノベーターは『創発的戦略』に従うべきことを示唆している。正しい戦略を知っているかのように意図的に行動するのではなく、正しい戦略が市場から『わき出る』、つまり創発するようなアプローチを採用すべきということだ。」[文献8、p.236]と述べています。

一瞬先は闇、ではないですが、そもそも100%の確率で未来を予測することは不可能なはずです。行動そのものが何らかの未来予測に基づいて行なわれる以上、企業活動においても期待通りの成果が得られる確率は0100%まで、いろいろな場合が存在することになります。もちろん、一見単純そうに見える事務的作業や工場の操業などはほとんど100%に近い確率で予測が当たるでしょう。これに対して、研究開発は、予測に適用できる理論や情報が限られているため、予測が当たる確率が低くなります。しかし、どちらの場合も程度の差こそあれ予測が100%当たることはありえません。そんな不確実なことは行なうべきではない、という考え方もあるとは思いますが、そういう不確実な場合こそ技術の重要性は増すのではないでしょうか。Rogersは「技術とは、こうあって欲しいと思う成果の達成に関わる因果関係に不確実性が内在するとき、これを減じる手段的な活動のための綿密な計画のことである」と述べています[文献9、p.17]。イノベーションという新しいことへの挑戦には不確実性が存在するため、成功の確率は事前には予測できず、場合によっては全くうまくいかなかったり当初の狙いとは異なる有益な結果が得られたりする場合があります。そのことへの注意をおろそかにすると、成果が得られない目標に向かって延々と無駄な努力を重ねる、という事態にもなりかねません。研究開発、イノベーションを考える上でこのような不確実性の影響は常に念頭におく必要があるでしょう。

考察:不確実性の高い研究の計画、管理について

様々な業務において、目標を立て、計画的に目標達成に向けた努力を行ない、進捗を管理するというマネジメント方法は有効な場合が多いでしょう。しかし、不確実性を考慮すると、そうした業務の進め方が好ましいのかどうかという疑問が湧いてきてしまいます。考えてみれば、そもそも明確な目標を設定して、その達成を管理する、というマネジメントは、不確実性の低い業務に対して有効な方法だったと言えるのではないでしょうか。研究開発においても、技術の導入や、最適化、技術改良(漸進的、インクリメンタル、持続的イノベーション)など、比較的不確実性が低い課題については目標を定め計画を立ててマネジメントする方法が効果的と考えられます。しかし、その方法を不確実性の高いイノベーションに適用して効果があがるかどうかは慎重な見極めが必要でしょう。少なくとも、細かな計画や管理は向かないのではないかと考えられますし、実際、発見を支援するマネジメントとしてはゆるやかな管理が効果的であるという報告があります[文献10、p.52](本ブログ「技術経営の実践的研究」(丹羽清編)より)。

今後は、研究課題の複雑化に伴い、不確実性の高い課題のマネジメントがますます求められるようになるでしょう。一方、不確実性の低い課題にも同時に対応することが求められるかもしれません。そのような場合には例えば、研究における目標や計画の設定にあたって、まず不確実性の程度を予測し、それに応じて、不確実性が高い課題であれば、大まかな目標と、柔軟に変更可能な計画を立て、不確実性が低い課題に対しては通常のプロジェクト管理のような計画を立てる方法が考えられるでしょう。ただし、その不確実性の予測を行ない、大まかな計画の進捗を管理し、必要に応じて軌道修正するという作業を誰がどのように行なうのか、という点が大きな問題になります。ひょっとすると意思決定のための組織構造のあり方自体も問われるようになるかもしれません。今までのように、管理者が目標を設定し、下からあがってくるデータを管理者、経営者が判断する、という方法が最適なのかどうかは考え直してみる必要があるように思われます。個人的には不確実性のマネジメントは、多様性(様々な考え方による評価と協力、知的相互作用)、自律性(現象に最も精通している人の判断を尊重して任せる)、リスク分散(最初から過大な投資をしない、協力による負荷軽減)、柔軟性(臨機応変の戦略変更)といった点が鍵になると思っていますので、このような観点を考慮して、研究開発マネジメント自体も創造的に行なっていくことが求められていくのではないでしょうか。



文献1:宮川公男、「意思決定の経済学」丸善、1968.

文献2:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.

文献3:Knight, F.H., 1921, “Risk, Uncertainty, and Profit”.

文献4:池田信夫、「イノベーションとは何か」、東洋経済新報社、2011.

文献5:Roberts R.M., 1989、R・M・ロバーツ著、安藤喬志訳、「セレンディピティー」、化学同人、1993.

文献6:Shapiro, G., 1986、G・シャピロ著、新関暢一訳、「創造的発見と偶然」、東京化学同人、1993.

文献7:Christensen, C.M, Raynor, M.E, 2003、クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著、桜井祐子訳、「イノベーションへの解」、翔泳社、2003.

文献8:Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J., 2008、スコット・アンソニー、マーク・ジョンソン、ジョセフ・シンフィールド、エリザベス・アルトマン著、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.

文献9:Rogers, E.M., 2003、エベレット・ロジャーズ著、三藤利雄訳、「イノベーションの普及」、翔泳社、2007.

文献10:丹羽清編、石黒周、板谷和彦、白肌邦生、清野武寿、手塚貞治著、「技術経営の実践的研究 イノベーション実現への突破口」、東京大学出版会、2013.

参考リンク

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試行錯誤のプロ

研究開発は未知のことへの挑戦です。従って、思ったとおりにことが運ぶとは限りません。そんな時、試行錯誤が必要になることがあります。

試行錯誤とは、一般には、試みてみて、その結果に応じて対応を変化させ、最終的に目的達成を目指すプロセスであると理解されていると思います。研究の世界では、試行錯誤というと、行き当たりばったりとか、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、というようなあまり好意的でない印象を持たれることもありますが、実用的には成果を挙げる場合が多いことも事実でしょう。特に、最近ではロールプレイングゲームなどで試行錯誤に慣れ親しんだ世代が増えてきていることもあってか、手法として抵抗感が少なくなってきているようにも感じます。もちろん、正解があるかどうかもわからない研究の問題解決に試行錯誤を使うことと、ゲームのように設計者が決めた正解を試行錯誤を通じて見出していくこととは意味が異なりますが、今回は研究開発における試行錯誤について考えてみたいと思います。

試行錯誤の意義

試行錯誤というと、間違ってもいいからとにかく試行してみて対応する、という印象を持たれることが多いように思います。しかし、試行そのものは研究の本質です(試行しなくてもうまくいくとわかっていることは研究の対象にはなりません)。そして、その結果、うまくいくこともあればいかないこともある、というのも研究の本質でしょう。とすると、

1、試行を計画する

2、試行する

3、結果を得てフィードバックする

というステップは、最初に「間違ってもいいから、」と思っていてもいなくても同じことになるのではないでしょうか。事前に入念な計画をたてて試行しても失敗することもあるわけで、どう試行するかは、与えられた課題と試行の容易さ、効果に応じて決められるべきものでしょう。とすると、試行の計画自体が合理的であれば、周到な計画だろうと試行錯誤アプローチだろうと上記1~3の実態に違いはなく、試行錯誤(試行とフィードバックを組み合わせるアプローチ)こそが研究活動の実態であると言ってもよいように思います。以下、試行(錯誤)に関わる各段階について考えてみたいと思います。

1、試行計画段階:試行による問題解決に適した課題と条件の決定、注意

研究の本質に試行が深く関わっているとしても、試行主体の問題解決に適した課題とそうでない課題があるでしょう。基本的には、理論や経験による予測がしにくい課題は、試行で解決することが合理的ということになるでしょうが、無限に広い範囲の条件で試行を行なうことは困難ですから、試行の計画の段階で、なるべく条件を絞り込むことが必要になります。具体的には、ある条件を一定にコントロールしたり、ある条件は無視したり、あるいは現実の状態をモデル化して重要と思われる項目についてだけ試行することなどが必要で、こうしたことができる場合に試行が有効と言えると思います。もちろん、事前の予測が困難な場合には、計画自体も試行の結果を見ながら決定することも有効でしょう。ただし、特に人の意思が関わる問題については、試行することが状況に変化をもたらし、目標自体やあるべき解決策が変わってしまうこともあり得ますので、注意が必要です。

2、試行の段階

試行段階では、求める結果が確実に得られるような実験を設計する必要があります。試行によって得られるデータ自体がお粗末では、そこから導かれる結果も使えないものになってしまいますので、どんな方法でどんなデータをとるか、実験のテクニックも重要です。実験室での実験、現場試験、シミュレーション、データ採取方法などを、得られるデータの信頼性も考慮して決める必要があり、研究部隊の実力が試されることになると思われます。

3、結果とフィードバック

まず、試行した結果から何を学びとるか、ということが重要です。具体的には以下の点に注意する必要があるでしょう。

・試行の結果を正しく評価する:得られた結果には間違いがないのか、いつもそうなるのかも含めて、期待どおりの(あるいは予想外の)結果が得られたかどうかをまず判断する必要があります。場合によっては、統計的、確率論的な議論が必要になるでしょう。

・試行したことと結果の因果関係を検討する:確率的な事象、複雑系の関与する事象の場合、試行結果が何回か同じになっても、その次もまた同じ結果になる保証はありません。因果関係を検討し、そのメカニズム、すなわち、なぜそうなるのかが推定できれば、試行したことが結果を生んだことについてのサポートになります。

・結果を参考に次の試行条件を決める。仮説を修正する、新たな仮説を提案する。

・目的外の結果も重視する:試行錯誤は目的とする課題の解決のために行なうものであったとしても、試行の結果、それ以外の答えや、発展のヒントが得られることがあります。思ってもみなかった発見(真のセレンディピティ)が得られる場合もありますし、試行の結果から導かれる仮説を利用すると、当初考えていなかったアイデアに気付く場合があります。これらも試行から学べることといってよいでしょう。

試行錯誤を行ないやすい研究環境

このように、試行錯誤、試行することは研究開発において重要な役割を担いますが、試行錯誤を行ないやすい研究環境というものもあるでしょう。試行錯誤を促進するためには、次のポイントが重要と考えます。

・試行を問題解決のアプローチのひとつとして評価し、価値を認めること:理論的検討も重要ですが、試行の価値を認め、選択肢として考慮し、試行が効率的な場合には、積極的に試行することを促す。

・失敗を容認すること:試行に伴う失敗は責めない。

・試行しやすい環境をつくる:試行のための精神的障害を小さくする。

・試行のアイデアをいくつか用意する:ひとつ失敗しても次の手がある状態にする。

・過去の成功体験に縛られないようにする:試行の方法は、過去に成功した方法ばかりではない。

また、試行の結果から多くを学ぶためには次の点が重要でしょう。

・結果を記録し、将来の試行に生かす:目的とする結果の実現だけを目指す場合、うまくいかない結果は捨てられてしまいやすいものです。再度の失敗を避けるためにも、また、新たなアイデアを得るためにも記録は有意義です。

・計画の管理に余裕をもたせる(計画変更や逸脱を許容する):余裕がないと、目的外の結果が捨てられてしまいがちです。

試行に基づくアプローチは、コスト負担が大きくなる場合もあり、必ずしも容易な方法ではありません。しかし、試行を行ない、そこから有意義な結論やアイデアを引き出すことには研究部隊の力が反映されます。具体的には、試行をうまく計画して効果的に行ない、目的達成の役に立つデータをうまくとり、その結果を正しく評価しうまく活用することが求められる時、それが試行錯誤のプロとしての研究部隊の出番なのではないでしょうか。


 

知的な失敗

不確実な対象を扱う研究開発(ノート2)では、「失敗」すなわち行動の結果が期待(予想)どおりにならないことがつきものです。今回は、マグレイス氏による論文「『知的失敗』の戦略」[文献1]に基づいて、「失敗」について考えてみたいと思います。

原著論文の題名は「Failing by Design」すなわち、「計画的に(by design)失敗する」、というような意味合いでしょうか。ちなみに、著者は「発見志向計画法」の提唱者であり、Christensenも取り上げている「創発的戦略」[文献2, p.277]についての研究も行なっている方です。著者はこの論文で、「不確実性の高い環境では、失敗は避けられないし、うまく管理すれば非常に役立つこともある」と述べ、「失敗から目をそらすのに代わる策は『知的な失敗(intelligent failure)』(Sitkinによる造語(1992))を設計することとしています。まずは論文のポイントをまとめてみます。

著者は、失敗は次のような点で役に立つと述べています。

・たくさん試せば成功する確率は上がる(当然、失敗も増えるはずですが、要は数多くの失敗をしないと成功できないということでしょう)。

・何が有効でないかを学べる(試行錯誤の結果として)。

・失敗により注目を集め対応の必要性をアピールできる結果、資源配分を受けやすくなる。

・不適格なリーダーの退任のきっかけになる。

・失敗経験により直観を磨きスキルを高めることができる。

やや皮肉っぽい項目もありますが、失敗が避けられないものだとすれば、失敗を気にして目をそらすだけでなく、できるだけうまく失敗し、失敗を利用するということも重要ということでしょう。

著者はそのために必要なこととして、以下に示す「失敗を生かすための7つの原則」を提示しています。

1、プロジェクトの開始前に成功と失敗を定義する。

プロジェクトに関わる人たちの間で、何をもって成功(失敗)とするか、何を期待(目的)とするかについての共通理解を持つことが必要。

2、前提を知識に変える。

先が読めない課題に取り組んでいる場合、最初に置いた前提(仮定-原著ではassumption)はほぼ確実に間違っていることを認識する必要があり、試行することが、よりよい前提を導き出す唯一の方法。

成功の基準となるものが、単なる期待なのか、ある前提のもとでの予想なのか、できるはずと思いこんでしまったことなのかははっきりさせておかないと、失敗から正しく教訓を学ぶことはできないでしょうし、チーム内での秩序が乱れることもある、ということのようです。

3、迅速であれ、失敗は早々にせよ。

早い段階や小さい段階での失敗には、試行の候補を絞り込む、退却が容易であるというメリットがある。失敗は人々のやる気を削いでしまうが、別のもっとおもしろみのあるプロジェクトに移るのであればポジティブに受け入れられる。

プロジェクトの要素のすべてを早い段階でチェックすること、プロトタイピングなども重要かもしれません。

4、被害を食い止め、損失を抑える

失敗がもたらす被害を小さく抑えるように試行を設計すべき。プロジェクトを中止する「撤退のステップ」を整備しておくことは有効。

5、不確定要素を制限する。

現在備わっている能力から遠く離れた分野では、試行から学ぶことは難しい。近い分野での試行の失敗からは学べることも多いし、成功の確率も高くなるはず。

6、知的な失敗を称える文化を育む。

失敗に終わっても罰しない環境をつくる。うまくいかないかもしれないことに取り組む意欲を大切にする(リスクをいとわない文化をつくる)。工場で効果を発揮するシックス・シグマなどの活動は研究所には向かないかもしれない。リーダーは失敗やそこから学んだことについて、進んで話をすべき。

7、学んだことを書きとめ、共有する。

どのような前提(仮説)が基になっているか、何が起こったのか、それは前提に対して何を意味しているのか、次回は何を行なうべきかを特定し、その教訓を共有することが重要。

以上が概要です。失敗を容認しなければならないこと、失敗した時の痛手は小さくなるようにすべきこと、失敗から学ぶ必要があることについて異論のある方はあまりいないと思いますが、上記の指摘は興味深い点があるものの個別の議論になっているようにも思われます。そこで、失敗への対応について私見もまじえて整理してみたいと思います。

失敗は研究開発にとって不可避のものであることは間違いないと言ってよいでしょう。ただし、研究活動を含む行動には、情報を得るための行動と、期待を実現させようとするための行動の2種類があることは認識しておく必要があります。前者は情報を得ることが目的ですから、期待通りの結果が得られなくても情報さえ得られれば成功ですが、後者は、期待通りにならなければ失敗ということになります。どんな場合でも行動をすれば何らかの情報が得られると考えると、問題になりやすいのは後者でしょう。となると、失敗しやすい行動において、期待することを実現させたい場合には、以下の2通りの対応が考えられると思います。

・失敗を少なくする(成功確率を上げる)

・失敗による損失を少なくする(あるいは、多くを学ぶようにする)

失敗を少なくするためには、予測の精度を上げるための情報を集めることが必要でしょう。その情報には当然、実際に行動して失敗することから得られる情報も含まれます。著者が指摘する、失敗を称えリスクテークを奨励する(上記6)、失敗から学んだことを伝える(上記7)は、行動を通じて情報を集め、生かすための方策と考えられます。また、失敗を未然に防ぐ(成功確率を上げる)ために、行動の目的が不明確であったり不統一なために起こる失敗を防止すること(上記1)や、不確定要素を制限する(上記5)という提案もなされています。

失敗による損失を少なくすることについては、著者らは、早い段階での失敗(上記3)と、被害を小さくすること(上記4)を提案しています。これは、言い換えれば小さい投資で早く結果がでるように行動(試行)をあらかじめ設計しておくことを奨励していると理解できるでしょう。さらに、プロジェクトからの撤退のステップを用意して撤退をしやすくしておくこと、多くのプロジェクトを用意して別のもっと面白いプロジェクトへの乗り換えを提案していることは重要ではないかと思います。要は、資源の投入を小さくし、失敗による損失を小さくすれば、相対的に失敗から得られるものの価値は高まるということです。

失敗から多くを学ぶことについて著者は、失敗から正しい教訓を導くために前提(仮定)を明確にしておくこと(上記2)、学びやすい分野に取り組むこと(上記5)を挙げています。エジソンは「私は失敗したことがない。うまくいかない10000通りの方法を見つけただけだ。」と言ったとされますが、うまくいかない方法を知識にするためにはただやみくもな試行をするだけではダメで、どういう前提でどういう仮定に基づいて試行(実行)したかをはじめとして、うまくいかない条件や原因を明確にして記録(記憶)しなければならない、ということも言っているように思います。著者が指摘する「前提を明確にする」ということは、正しい教訓を導き出す方法として重要ということなのではないでしょうか。実際に期待どおりのことが起こらなかった場合、その現実からつい目を背けたくなるものですが、その失敗を生かすためには前提や仮定のどれが違っていたのかを明確にする必要があるでしょう。そのためにはチェックすべき前提や仮定を最初から明確にしておくことは結果の迅速な判断、対処のために有効であると考えられます。こうした前提を整理しておけば、学ぶべきところの少ない単純ミスも早期に見分けられるかもしれません。ただし、最初の前提や仮定以外の因子が原因で失敗することも往々にしてありますので、最初に考えていた項目に囚われすぎてしまうことは問題だと思います。

なお、失敗から学ぶというと、次に同じような失敗をしないために失敗の原因を明確にし、教訓を得て将来に生かすという考え方がまず思い浮かぶのではないでしょうか。つまり

期待:Aという行動→Bという結果

失敗:Aという行動→Bという結果にならない

という失敗に対して、行動の中身や前提、考え方を見直してBという結果が得られるように行動を修正する、ということが行なわれると思います。しかし、実際には

失敗′:Aという行動→Cという結果

となる場合もあります。これも失敗には違いありませんが、こうした結果からは、単なる同じ失敗を繰り返さないための教訓以上のことが学べる場合があります。セレンディピティーによって失敗から新たな発見をする場合や、顧客の反応に学んで新たなマーケットを創造する場合(新市場型破壊的イノベーションなど)も、この種の失敗から学ぶことができる場合であって、こうした可能性も忘れてはいけないと思います。

いずれにしても、先が読めず変化が激しい世界では新たなことへの挑戦は必須です。この論文でも述べられていますが、まず失敗のリスクをとり、新しいことに挑戦することが必要です。Merckでは失敗した取り組みから早期に手を引いた研究者にストックオプションで報償する制度があるそうですし[文献3p.266,文献4]、「大失敗賞」という表彰を行なっている会社もあるそうです[文献5]。失敗に寛容であるためには、失敗というものの性質、失敗のもたらす影響、失敗から学べることについての理解が不可欠であるわけですが、失敗から得られるものの価値を高いものにすることで失敗に寛容なチャレンジングな環境が実現できるかもしれません。容易なことではないかもしれませんが、リスクをとることを促し、その結果として発生する失敗のマネジメントをうまく行なうことが、イノベーションの能力を高める上で重要なポイントのひとつなのではないかと思います。



文献1:リタ・ギュンター・マグレイス著、スコフィールド素子訳、「マイクロソフト、3Mが実践する『知的失敗』の戦略」、Diamond Harvard Business Review20117月号、p.24.

要約のみ:http://www.dhbr.net/magazine/article/201107_s02.html<2013.1.13リンク切れ>

原著は、Rita Gunther McGrath, “Failing by Design”, Harvard Business Review, Apr. 2011.

最初の部分のみ(登録すれば全文閲覧可):http://hbr.org/2011/04/failing-by-design/ar/1

文献2Christensen, C.M, Raynor, M.E, 2003、クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著、桜井祐子訳、「イノベーションへの解」、翔泳社、2003.

文献3Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J., 2008、スコット・アンソニー、マーク・ジョンソン、ジョセフ・シンフィールド、エリザベス・アルトマン著、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.

文献4Arlene Weintraub, “Is Merck's Medicine Working?”, Businessweek, 2007.7.30.

http://www.businessweek.com/magazine/content/07_31/b4044063.htm

文献5:茂木俊輔、「太陽パーツ-大失敗賞 『前向きな大失敗に金一封』社員を明るくする表彰制度」、FoleAug.2010p.28.

https://www.forum-m.jp/ssldocs/members/fole/pdf/2010/1008/fole1008_7.pdf




参考リンク<2012.7.8追加>
 


 

「イノベーションの神話」(Scott Berkun著)のまとめと感想

イノベーションの神話」(Scott Berkun著、村上雅章訳)[文献1]の感想を書いておきたいと思います。この本ではイノベーションにまつわる10の神話が取り上げられ、その正体が暴かれ神秘性が取り除かれていきますが、その目的は「イノベーションがどのように生み出されるかを明確にすることで、あなたの住んでいる世界への理解を深め、あなた自身がイノベーションを起こそうとする際の過ちを避ける」[文献1p.xvi]ことであると著者は記しています。

 

その内容に加えて、私にとって興味深かったのは、この本に関するネット上での評判が大きく分かれている点でした。絶賛するものもあれば、当たり前のことしか書かれていないという評価もあり、今回はなぜこのような違いが現れるのかも含めて本書の内容について考えてみたいと思います。まずは、内容を簡単に(研究マネジメントに役立ちそうなところはやや詳しく)まとめます。本書では、多くの事例に基づいて説明がなされていますので、ご興味のある方はぜひ本書をご参照ください。

 

1章 ひらめきの神話The myth of epiphany

「素晴らしいアイデアというものは、真のイノベーションというプロセスのごく一部」「(ひらめきは)コントロールすることなどできない」「素晴らしいアイデアを見つけ出すには努力が必要ですが、そのアイデアをうまく利用して世の中を良くするためにはさらに大きな努力が必要」[文献115-17]としています。要するにひらめきやアイデアだけでイノベーションが実現できるわけではない、ということです。

 

2章 神話:私たちはイノベーションの歴史を理解しているWe understand the history of innovation

イノベーションが起きて技術や世の中が変化していくのは、そうなる必然があったと考えるのは誤りと言っています。「ドミナントデザイン(支配的なデザイン)というものは、必ずしもあらかじめ決定されていたから出現するというわけではなく、ある特定のタイミングにおける技術とマーケットとの間の相互作用の結果として出現する(アッターバック)」「私たちにとって最善の策だったということにもならない」「イノベーションを追求し、勝利を得たものは、その当時において最もポジティブな関心を引くことができたというだけのこと」[文献133-34]

 

3章 神話:イノベーションを生み出す方法が存在するThere is a method for innovation

イノベーションを生み出すシナリオのようなものが存在するわけではないことが述べられています。「新しいことを行なう際にリスクをゼロにする方法などない」ので、「投資が報われる保証はない」[文献1p.42]わけです。しかし、過去の多くの成功と失敗の経験を見れば以下のようないくつかのヒントは得られるとも述べています。

イノベーションの種になりうるもの1)特定の進路に向かって努力する、2)進路を変えながら努力する、3)好奇心、4)富と財産(金銭的欲求が原動力になる)、5)必要性、6)組み合わせ

イノベーションのためには次のような難関を克服する必要がある1)アイデアの発見、2)解決策の探究(アイデアの実現)、3)スポンサーと資金の調達、4)大量生産、5)潜在顧客へのアプローチ、6)競争相手の打倒、7)タイミング、8)足下を明るくしておくこと(成功までの資源を確保するということ)

イノベーション成功に至る道を見つけるためには1)自らを知る(私たちは、自分たちが思っているほど論理的ではない)、2)集中的に、しかし一歩下がって確認する(よりよい道を見つけられるように前提を見直す意志も持つ)、3)規模を大きくしていく(最初から大きすぎる目標を狙わない)、4)幸運と先駆者の功績を認める[文献1p.44-57]

 

4章 神話:人は新しいアイデアを好むPeople love new ideas

「たいていの場合、人々はあなたのアイデアに対して、あなたほどには興味を抱かない」「革新的なアイデアは、それがもたらすメリットのせいで却下されることなど滅多になく、人々がそれをどう感じるのかということによって却下される」[文献1p.66-70]。さらにイノベーションの採用に関して、ロジャーズによるイノベーション普及速度を決定する5因子について解説しています(これについてはノート13で詳しく述べましたのでそちらをご参照ください)。

 

5章 神話:たった一人の発案者The lone inventor

「偉大なるイノベーション、そしてビジネスは、複数のクリエイターが一つの目的に向かって力を合わせることによって生み出されている」[文献1p.88]。発案者を一人にしておいた方がわかりやすいため、このような誤解が生まれるとしています。

 

6章 神話:優れたアイデアは見つけづらいGood ideas are hard to find

多くの場合、アイデアが必要とされる時に時間をかけて探さない(つまり探し方が悪い)ことがアイデアが見つからない理由だとしています。「アイデアというものは育まれることで成長していくものであり、製造されるものではない」「口に出されたそばから否定されることがなければ、必ず見つけやすくなるはず」「優れたアイデアを得る最善の方法は、多くのアイデアを得ることだ(ライナス・ポーリング)」[文献1p.97-99]

 

7章 神話:上司はイノベーションについてあなたより詳しいYour boss knows more about innovation than you

「訓練や経験というものは、すでにあるものを守る上で有効となりますが、イノベーションに対する逆風になる」「(決定権を持つからといって)権威者が優れた決断を下せるだけの知識や経験を持ち合わせていることにはならない」[文献1p.110-111]

マネジャーが乗り越えるべき5つの難関1)アイデアの寿命(マネジャーは生まれたばかりのアイデアを育むために時間と予算を投資し、メンバーに精神的な余裕を与え、アイデアの展開や仕上げ、新たなアイデアへの再生をサポートする必要がある)、2)環境(才能ある人々が最高の仕事を行える場所を作り出す)、3)保護(援護射撃する、攻撃からイノベーションを守る盾になる、無理強いにならないように後押しする)、4)実行(アイデアを世の中にもたらすには多くの作業が必要でありその作業こそが難関、理想と現実のバランスをとる)、5)説得(成功と失敗を分けるものはほとんどの場合粘り強さである、関係者の説得はイノベーションのあらゆる局面を活性化する)[文献1p.115-123]

 

8章 神話:最も優れたアイデアが勝ち残るThe best ideas win

「イノベーションは、専門家の観点からみた優秀さと、さまざまな副次的なファクターが絡み合って生み出される採用の容易さというものの間にあるスイートスポットで生み出される」[文献1p.143]

副次的なファクター1)文化(既存の価値観との整合性)、2)ドミナントデザイン(ドミナントデザインが浸透すると他の方法へ移行するコストが上がる)、3)遺産と伝統(人はある信条に馴染んでしまうと、その信条が優れているかのように思いがち)、4)政治:誰が利益を得るのか?、5)経済(導入コストとメリットのバランス)、6)良いもの:この主観的な概念(イノベーターは大衆が必要としていないものを生み出してしまうこともある)、7)短期的思考と長期的思考(アイデアの良さはその影響が及ぶ期間をどのくらい先まで考慮するかで変わる)[文献1p.132-135]

 

9章 神話:解決策こそが重要であるProblems and solutions

「問題は解決することよりも発見することの方が重要」[文献1p.146]。解決すべき問題、解決可能な問題の適切な選択も重要。「セレンディピティーは花形であるものの、チャンスに遭遇した時に何を行うのかが重要なのであって、チャンスとの遭遇自体が重要なわけではない」[文献1p.156]

 

10章 神話:イノベーションは常に良いものをもたらすInnovation is always good

「イノベーションの意味と影響を見極めるということは、イノベーション自体を生み出すという作業よりもずっと複雑」「すべてのイノベーションには良い面と悪い面の双方が存在している」「最善のイノベーション哲学は、変化と伝統の双方を受け入れ、絶対的な判断が存在するという落とし穴に落ちないようにすること」[文献1p.161-171]

 

以上が否定されてしまった「神話」ということになります。はっきり言って、ある程度の経験を持つ研究者であれば、著者がこの10の神話を否定していることについて異論のある人はほとんどいないでしょう。従って、「当たり前のことしか書かれていない」という感想を持たれる方がいるのも非常によくわかります。しかし、言われてそうだと同意することと、これらのことを「重要なこと」として認識していることは異なりますし、個人によって重要だと思うポイントも違うでしょうから、このような形にまとめることやまとまったものを読むことの意義は大きいのではないでしょうか。また、上に挙げたような指摘は、イノベーションマネジメントを考える際の枠組みとしても利用可能でしょう。

 

しかし、この神話を真実だと思っている人がいるもの確かではないでしょうか。本書の中でも触れられていますが、こうした神話を肯定してしまえば物事がわかりやすくなる、という面もあるでしょうし、必ずしも厳密に書かれていない科学読み物や偉人伝ではこうした神話の普及を助長するような書き方をしているものもあると思います。そうした知識がベースになっている方(例えば、研究開発の実務経験の少ない若手の研究者や技術者、いわゆる事務系の仕事をされている方々も該当するかもしれません)にとっては本書の指摘は新鮮に感じられるだろうと思いますし、そうした人にとってこそ、神話の秘密を暴いてみせることは必要なのだと思います。

 

まさにこの点こそ、著者が本書を書こうとした理由ではないでしょうか。この本の評判がよいということはすなわち、この神話を信じている人が多いということの裏付けかもしれません。研究開発を行なう上ではいろいろな方との協働が必要になります。もし、研究開発やイノベーションについて、現実とは異なる考え方がはびこっているとしたら、それは意志疎通、相互理解の妨げになるでしょう。イノベーションをうまく進めるために協働している仲間のなかに、イノベーションの実態に対する誤解を持っている人がいるかもしれないこと、こんな風に誤解されている可能性があることは、研究者も十分に認識しておいて損にはならないと思います。

 

私の経験で恐縮ですが、人事部門の人と雑談していた時に、「『実験』という言葉は何か、遊んでいるような語感があるね」と言われて驚いたことがあります。研究者にとっては「本当の実験というものは、未知の変数が少なくとも一つあり、実験によってその変数がどう変動するのかということを観察するために行うもの」[文献1p.41]なわけで、しかも企業の研究者は必要があって実験をしているのが当然なのですが、そうは思われていない可能性もあるわけです。知らない人にとっては、実験というのは夏休みの自由研究の延長であったり、高校の化学の先生が教室で、あるいはでんじろう先生がテレビで見せてくれるようなスペクタクルであって、ことによると昭和のコメディーで白衣を着た科学者風の人が薬品を混ぜて爆発させて煤だらけの顔になる、といったようなイメージなのかもしれないと思いました。そんな細かなことまで考えると、イノベーションの実態とイメージ(神話)の乖離は本書の内容以上に大きいものなのかもしれません。本書の内容が研究者にとっては当たり前のようなことであっても、この神話を信じている方が多い限り、この本の存在意義は大きいということでもあるでしょう。研究開発の成功物語はもちろん重要ではありますが、イノベーションの本質と実態を明らかにし、誤解を解くことも、それを知っているものの努めかもしれません。

 

 

文献1Scott Berkun2007、村上雅章訳、「イノベーションの神話」、オライリー・ジャパン、2007.

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%A5%9E%E8%A9%B1-Scott-Berkun/dp/4873113458

 

(参考)

・この本の原著はScott Berkun、「The Myths of Innovation」、O’Reilly2007.です。なお、2010年にペーパーバック化された時に、以下の4章が追加されています(ネットで目次を見ただけなので内容まで確認できていなくて申し訳ないですが、適当に訳してみました)。

 11章 Epilogue: Beyond hype and history(エピローグ:でっちあげと歴史を超えて)

 12章 Creative thinking hacks(創造的思考のための小技)

 13章 How to pitch an idea(アイデアの伝え方)

 14章 How to stay motivated(モチベーションを維持する方法)

・著者は元Microsoftの技術者で、現在は執筆、講演などの活動をされている方だそうです。

著者webページはこちら↓。ブログやエッセイなど盛りだくさんです。

http://www.scottberkun.com/

 

参考リンク<2011.8.14追加>
著者ビデオ、講演メモなど。
 

 

 

研究者の年齢限界?

研究者の能力は35歳~40歳ぐらいがピークである、という話はよく耳にします。今回はそのような研究者、技術者の年齢的限界について考えてみたいと思います。

 

福谷[文献1p.76-80]によれば、1953年に発表されたレーマンの研究以来、30代後半~40代前半が科学者の業績のピークであるとする調査結果が国内外で多く報告されているようです。これに対して興味深いのが、198890年に実施された日本生産性本部による研究開発技術者に対するアンケート結果で、そこでは、日本の技術者の約60%30代後半~40代前半を第一線で活躍できる年齢限界と考えているのに対し、アメリカ、ドイツ、イギリスではいずれの国でも約70%の技術者が限界は年齢に無関係(つまり個人差)と考えているということです。

 

同様の調査結果は、慶應義塾大学産業研究所の調査(199798年)でも報告されていて、イギリス、韓国、インドでは、6177%が限界年齢はない、と考えているのに対し、日本と台湾では、5154%が限界年齢がある、としています。さらに、具体的に能力の年齢限界を意識する理由を日本で調査した結果では、約70%が「管理的業務多忙」を挙げ、約55%が「研究開発活動以外の多忙」を挙げているのに対し、体力的衰え、集中力や創造性、チャレンジ精神の低下、技術革新についていけなくなることを挙げている割合がそれぞれ1536%と相対的に低くなっているそうです[文献1p.82-84]。福谷はこの結果を基に日本で特徴的な研究者の年齢限界意識について、日本における年功的な人事処遇制度からくるものではないかと推測しています[文献1p.80-81]。つまり、研究者の年齢限界意識が生まれるのは加齢による能力低下によってではなく、研究の第一線から遠ざかるような人事制度によって成果を挙げる機会が奪われていることによるというわけです。

 

しかし、加齢により身体、精神的能力が低下することは事実ですので、それが研究開発能力にどの程度影響するかも調べてみたいところです。そこで、ひとつの試みとして、重要な科学的発見がその科学者が何歳の時になされたのかを、「セレンディピティー」という本[文献2]に書かれた事例について調べてみました。その結果を以下にまとめます。

 

パーキン(合成染料):18

ニュートン(万有引力の法則):25

ウェーラー(尿素合成):28

ノーベル(ダイナマイト):34

ケクレ(ベンゼンの構造):39

ジェンナー(種痘法):40

パパニコロー(癌検診法):40

プリーストリー(酸素発見):41

フレミング(ペニシリン):47

レントゲン(X線):50

ガルバニ(神経電流):55

ボルタ(電池):55

ペダーセン(クラウンエーテル):56

 

ただし、発見したタイミングは不明確なことも多いようですし、文献2で取り上げられている事例は化学分野が多く、「セレンディピティー」による発見には「運」の要素もありますので、サンプルが偏っている可能性はあります。しかし、少なくとも40代前半を過ぎた年齢の研究者であっても重要な発見をする能力がなくなっているわけではない、ということは言えるのではないでしょうか。ちなみに、ペダーセンは1904年生まれ、ボルタは1745年生まれですので、時代による差もなさそうです。

 

もしこのように研究成果と研究者の年齢が関係しないとすると、どうして30代後半~40代前半が研究者の能力のピークだと言われるようになったのか(そういうデータが得られたのか)は検証しなければならないでしょう。今回はそこまで調べられなかったので申し訳ないのですが(今後何かわかったら改めて書いてみたいと思います)、推測をお許しいただくとするなら、おそらく、身体的能力(体力など)を必要とする研究開発課題に取り組む場合には、おそらく年齢的限界があり、それよりも経験や偶然を生かす課題に取り組んでいる場合には、年齢は関係ないということではないかと思っています。これからの時代、少なくとも先進国では体力でイノベーションを成功させるようなチャンスは減ってくるのではないかと思っていますので、これからはますます研究者の年齢限界は問題にならなくなってくると思えるのですが、いかがでしょうか。

 

そうだとすると、老若問わず、研究者の能力をいかに引き出すか、というマネジメントの要素がより重要になってくると思います。研究者の年齢限界に関して、マネジメント上どういう点に注意すべきかについて内田は次のようにまとめています[文献3の記載を要約]

・「年齢的限界という考え方は強調すべきではないだろう。『40歳になると限界が来る』という考え方が広く流布し、自己成就的予言として本当に研究者をその気にさせてしまっては問題である。」

・「限界はいずれ来るかもしれないが、それは加齢にともなう身体機能の低下が原因と言うよりは、業務上の要因が大きい。外部的要因がまず解決されるべきものであろう。」

・「応用や開発では雑務を阻害要因として回答している割合が多いが、企業の研究開発部門全体の問題と言えよう。」

・「ステータスの高い専門職-高度専門職の確立が最も望ましい。日本企業が以前、高齢化対策の一環として導入し失敗した処遇的専門職の道を歩まなければ、真の専門職制度が確立できると考えられる。」

 

内田は高度専門職の重要さを指摘していますが、私は、そうした専門職だけではなく、ノート5で指摘したような様々な職務にもベテランの技術者、研究者を生かす道があるのではないかと思います。さらに、研究業務に関連する業務、例えば研究開発成果の実用化やマーケティングなどの分野でも過去の経験を生かせる可能性があるのではないでしょうか。確かに、ある程度の年齢になると全く新たな業務を習得することは容易ではなくなるでしょうが、経験を生かすことのできる業務であれば能力を発揮できるのではないかと思います。もちろん、いわゆる「老害」は避けなければなりませんし、従業員の若返りはもちろん重要なことではありますが、研究者年齢限界説が人員削減の名目になっているのだとすれば、大きな損失なのではないかと思います。そうではなくても、日本企業をリストラされた技術者が中国や韓国に渡り、日本の優位を脅かすようになっているとも聞きます[例えば文献4]。研究者、技術者の年齢、経験、能力、本人の意欲に応じた人材活用、配置の新たな枠組みが求められているのではないでしょうか。

 

研究者の年齢限界については、私も個人差によると思います。私自身の経験でも、最高の研究成果が得られたのは50歳前後でしたし、外国では70代でも活発な研究をしている大学教授がいます(今年ノーベル賞を受賞された根岸教授も75歳でまだ第一線の研究をされているそうですし)。クラウンエーテルの発見によって1987年にノーベル賞を受賞したペダーセン(発見した年齢は60代という説もあります)は次のように述べています。「年寄りだってアイデアを思いついたのなら、やらせておくべきだよ」[文献2p.344]。そんなマネジメントも考える必要があるのかもしれません。

 

 

文献1:福谷正信、「研究開発技術者の人事管理」、中央経済社、2007.

文献2Roberts R.M., 1989R.M.ロバーツ著、安藤喬志訳、「セレンディピティー」、化学同人、1993.

文献3:内田賢、「研究者と年齢的限界」、組織行動研究 (Keio studies on organizational behavior and human performance). No.26 (1996. 3) ,p.67- 75.

http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00338172-00000026-0067

文献4:NHK「追跡!AtoZ」取材班、「技術立国・ニッポンに赤信号? リストラされた日本人技術者が作る『高品質のメイド・イン・チャイナ』」、Diamond Online

http://diamond.jp/articles/-/10139


<2012.4.27追記>ノーベル賞受賞業績をあげた年齢についての調査解析結果がすでにあることを知りました。コメント1をご参照ください。

参考リンク

祝ノーベル賞:『発見の条件』by根岸英一教授

2010年のノーベル化学賞を共同受賞されたアメリカパーデュー大学の根岸英一特別教授が1996年に発表された、『発見の条件』と題した記事を見つけました[文献1]。この記事は学会誌の巻頭言として書かれたものですが、研究マネジメントを考える上で興味深い内容が含まれていると思いましたので、ご紹介させていただこうと思います。

 

この記事では、「発見の条件」、すなわち、どうやったら「発見」ができるかについて、ご自身の経験をもとに以下の10項目の要因が述べられています。

1、serendipityつまり運

2、新しく奇想天外ながらも正しい仮説

3、夢と目標

4、新分野、新天地のsystematic exploration:運を呼ぶ手がかりになる。残されたフロンティアの系統的探索が効果的。

5、正しい価値判断

6、やってみるというアクション:理論、仮説、実験、解釈を必要に応じて繰り返す行動力は誰にでもあるものではないらしいが、誰でも努力によって強化することはできるはず。

7、豊富な知識

8、豊富なアイデア:望ましくは20~30のアイデアを考えたところで最良案と思われるものをいくつか検討すればよいものにぶつかる確率も高くなる。アナロジーでもよいが、アナロジーは遠ければ遠いほどよい。

9、Needs思考:発想の出発点として重要。

10、optimism:オン・オフであっても試みつづけることが成功につながることがある。「こだわり」と呼んでもよい。

そして、最後に「上記10項目中いくつかは神頼み的なものもあり、天性に由来するものもあるだろう。しかし大部分のものは意志と努力があれば誰にでもできそうである。」と述べ、若者への激励で記事をしめくくっています。

 

巻頭言ということもあって、ごく簡単にしか触れられていない項目もありますが、興味深い指摘が含まれているのではないでしょうか。もちろん、ここで述べられているのは、基礎的な研究における「発見」についてですので、これがそのまま企業における研究開発に適用できるわけではないでしょう。しかし、たとえこれらの要因が根岸教授の研究分野と研究環境において経験的に導かれたものであったとしても、「発見」を可能にするための要因を整理した考え方として示唆に富んでいるのではないでしょうか。そこで、もう少し深く、研究マネジメントにおける上記要因の意義について考えてみたいと思います。

 

1のセレンディピティー、運については、根岸教授が発見の条件のトップにもってこられたことから考えても特に重要な要因であると考えてよいと思います(セレンディピティーについてはノート2ノート6でも触れました)。しかし、運まかせ、ということではありません。2~10の項目で、どうしたらその運に巡り合えるか、ということについてのヒントが語られています。

 

具体的に見てみましょう。2では「新しく奇想天外ながらも正しい仮説」と述べられています。もちろん、正しいかどうかは事前に知ることができませんので、正確には「新しく奇想天外ながらも、後で正しかったことがわかる仮説」が発見の条件と言えると思います。つまり、「新しく、できれば奇想天外な」仮説を持つことと、その仮説が「正しかった」と証明する努力の両方が必要と考えればよいと思います。

 

そうした仮説を得るためには、3、4、7、8、9が重要となるでしょう。どんな分野に狙いをつけるべきかについては3、4、9で述べられており、夢と目標を持ち(3)、誰もやっていない分野に挑戦してみるべきであること(4)、発想の出発点としてニーズを考えてみること(9)が述べられています。ここで興味深いのは、「夢と目標」と言っている点で、私は、夢と目標の両方が必要、という風に受け取りました。企業で与えられる業務目標に夢があるのかどうか、ちょっと気になります。4については、他人がやっていないことが基本になるわけですが、もちろんそれが成功するかどうかはわかりません。しかし、他人の動向を分析し(ノート3で少し触れました)、勇気をもって実行すれば、すでに他人がやったことや、他人がやるかもしれないことを追うよりは「発見」の可能性は高くなるでしょう。つづいて、実行するアイデアを決定する段階での注意点が7、8に述べられています。すなわち、豊富な知識(7)をベースとして数多くのアイデアを考え(8)、さらに再度豊富な知識を用いてその中から有望なものを抽出すべき(8)ということです。成功の確率が低ければ多くのアイデアを持つ必要があることは言うまでもないことのように思いますが、ともすると自分のアイデアにおぼれ、その成功確率を高く見積もってしまうことがあるのではないでしょうか。20~30のアイデアのうちからいくつか試してみる、という考え方は、絞り込むことで成功の確率を上げているだけではなく、思いついたアイデアをすぐに試すことよりも、試す前によく考え、アイデアを多面的に見ることも奨励しているのではないでしょうか。その対極にあるアプローチが、少ないアイデアを頼りにそれを成功させるべく計画を立てたり戦略を練ったりする方法であるとすれば、そうしたやり方とは一線を画すものと言ってよいでしょう。CollinsPorrasの言う「大量のものを試して、うまくいったものを残す」[文献2p.235-283]というアプローチと同じように思われます。なお、アイデアを考える段階ではアナロジーでもよいとしているのも興味深い指摘です。最初から独創的なアイデアだけを狙う必要はなく、はじめは他のアイデアと似たようなものでも、それを独創的な方向に発展させていけばよい、ということでしょう。

 

アイデア段階から進んで研究の実行段階で重要になるのは、5、6、10と考えられます。正しい価値判断(5)については、得られた実験結果を、それが予想通りのものであっても予想外のものであっても正しく評価する、ということの重要性を指摘したものと思われます。もちろん正しい評価には豊富な知識(7)が必要なことは言うまでもないですが、希望的観測に惑わされて判断を誤ってはいけないということも含んでいるように思います。やってみるというアクション(6)については、それが必要なことは言うまでもないことですが、実行が容易ではないこと、フィードバックの重要性についても触れられています。実行には研究者本人の努力も必要でしょうが、周りのサポートや環境の整備も必要と認識すべきなのかもしれません。10では、希望とこだわりを持って挑みつづけることの重要性が述べられていますが、オン・オフという表現が出てくるのが興味深いところです。これは、しばらくやってみて(オン)うまくいかなければ、一旦中止(オフ)するものの、また再開する、というアプローチのようで、単にずっとつづけて研究する、というのではなく、担当者を変え、おそらく手法も変えて挑みつづけることが成功につながることがある、ということのように思われます。トライする人が異なれば違った発想が可能でしょうし、前回の失敗から時間を置けば状況が変わって成功への道が開ける可能性もあると思います。単に過去に失敗したからといって再挑戦に否定的になりすぎてはいけないという点、自戒しなければいけないと思いました。

 

以上、非常に興味深い指摘を含んでいるのではないでしょうか。一般に、研究者がご自分の経験をもとに研究論、マネジメント論を述べられる場合、その経験がどういう分野でどういう狙いをもった研究から導かれたもので、それがどの程度効果を発揮したのかがはっきりわからず、その研究分野以外の人には評価が難しい場合が多いように思います。その意見にどの程度汎用性があるのか、その意見はその方の場合だけに言えることではないのか、といったことがわかりづらいものですが、この記事の場合は、根岸教授のご研究がどんなものかや、その成果のレベルはすでに報道などで明らかになっていますので、こうした意見から何を学べるのかも明確にしやすいように思います。大学と企業の違いを超えて学べる部分があると思いますがいかがでしょうか。

 

 

文献1:根岸英一、「発見の条件」、有機合成化学協会誌、vol.54No.1p.1(1996).

文献2Collins, J.C., Porras, J.I., 1994、ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス著、山岡洋一訳、「ビジョナリーカンパニー」、日経BP出版センター、1995.


参考リンク<2011.8.14追加>
文献1へのリンク、2011年元旦にNHKで放映された「発見の10項目」図へのリンク、Purdue大学根岸教授ページなど。<2011.12.4現在、文献へのリンクはなくなってしまいました。>

 

ノート6:研究部門が実施したいテーマ

ノート4,5につづき、企業活動の役に立つテーマ設定の第3のタイプ、研究部門が実施したいと考えるテーマについて検討してみます。

 

③研究部門が実施したいと考えるテーマ

前節までに述べたテーマを研究部門の側からみると、①企業の収益源となるテーマは成果が期待できるので実施する価値がある、②の企業が研究部門に求めているテーマは企業の要求に応えることに実施する価値があると考えられます。しかし、それ以外に、成果の期待が不明確で、かつ求められてもいないが、研究部門として実施したいテーマというものもありうるのではないでしょうか。

 

研究テーマの性格については、まず、テーマのアイデアが何に基づいているかに関して、

「サイエンス・プッシュ」「テクノロジー・プッシュ」vs.「マーケット・プル」「デマンド・プル」

「シーズ志向」vs「ニーズ志向」

という区分がなされることが多いようです。さらに、そのテーマが組織のどの階層から発生するかについて、

「ボトムアップ」vs「トップダウン」

という区分もあります。研究部門が実施したいと考えるテーマはそれぞれ前者の性格を強く持ったものであるということができるでしょう。

 

イノベーションがどのような過程で発生するかについて、過去(1950年代)においては、基礎的研究がイノベーションを生む「サイエンス・プッシュ」が重要と考えられていたようです。これに対し、近年では科学技術と市場の双方向のコミュニケーションの重要性が認識されて、上記のような「サイエンス・プッシュ」と「マーケット・プル」の2つの逆向きの流れを組み合わせる「カップリングモデル」を考慮すべきだと言われています[文献1p.119-121]。さらに、Tiddらは、テクノロジー・プッシュ型か、さもなくばニーズ・プル(必要は発明の母)型かのどちらかといったアプローチの限界は明らかであり、現実には、イノベーションとは何かと何かを結びつけ調和させていくプロセスであって、相互作用こそが最も重要な要素である[文献2p.54]と指摘しています。また、Rogersは「知覚されたニーズがイノベーション過程を始動させたり、イノベーションの知識がそれに対するニーズを創出したりする」[文献3p.410]と述べており、同様の見解は他にもみられます[文献4p.149]

 

トップダウンかボトムアップかという議論に関しては、不確定要素や不確実性の存在のため研究開発の計画は完全にトップダウンだけでは決められないことに特別の注意が必要[文献1p.177]との指摘があります。また、形式知(形式的・論理的言語によって伝達できる知識)と暗黙知[文献5](特定状況における個人的な知識で、形式化したり他人に伝えたりするのが難しい知識)[文献6p.88]の相互作用が組織的知識創造にとっと重要であるとの立場から、トップダウンモデルは形式知を扱うのに向いているが組織の第一線での暗黙知の成長を無視しており、ボトムアップモデルは暗黙知の処理が得意であるが暗黙知を組織全体に広めて共有することを難しくしていると述べ[文献6p.187]、組織的知識創造のための最良の環境として「ミドル・アップダウン・マネジメント」が提案されています[文献6p.238]

 

このように、イノベーションにとってはいわゆるシーズとニーズの双方が必要ということは広く認識されていることのようですが、にもかかわらずシーズ志向の研究というものは企業内では評判が悪いように思われます。この原因としては、シーズ志向の研究は、企業内外の環境分析に基づいて戦略的に目標を設定し、それを効率的に実行するという古典的な企業経営の手法になじみにくいことがまずあげられるでしょう。それに加え、開発(あるいは導入)された技術と、製品や実機に使えるような技術との間のギャップ(レディネス・ギャップ)を誰がどのように埋めるかがはっきりしないために「研究所で生み出された技術は、市場よりもサイエンスに近いものとして評判が悪い」[文献7p.232]と判断されてしまうこともあると思われます。シーズ志向の研究を行なう際には、このような周囲の捉え方も考慮しておく必要があるでしょう。

 

しかし、技術者の立場からするとシーズ志向にはニーズ志向に比べて好ましい点があります。それは、ニーズ志向の研究を行なう場合に、「こういうニーズがあるから売れるはずだ」という予測をしたとしても、そのニーズ予測自体は技術者にとってはどうしようもない場合があるのに対し、シーズは実体のある技術として身近に存在するため、シーズをどう発展させるかというプロセスに技術者が関与する余地が大きく、やりやすいという点です。さらに、シーズ技術はそれ自身で(ニーズがなくても)成長し、さらに新たなシーズを生み出す可能性がある点も重要でしょう。

 

シーズ技術のもつこのような特性は、セレンディピティーにも繋がるものと考えられます。セレンディピティーとは、偶然に幸運な予想外の発見をする能力を指し、Robertsは、以下の2種類に分類しています。[文献1p.198] [文献8p.ix]

・擬セレンディピティー(pseudoserendipity):追い求めていたことを、偶然に発見できること

・真のセレンディピティー(true serendipity):思ってもみなかったことを、偶然に発見できること

このうち、真のセレンディピティーは「予想外」の結果に基づくものであるため、オリジナルであることが多く、差異化のためには特に重要でしょう(擬セレンディピティーであっても発見に偶然を必要とするものは同様です)。セレンディピティーに恵まれれば、それは競合他社が容易に達成できる成果ではなく、技術的に優位に立つための重要な足がかりになるはずです。ただ、真のセレンディピティーは、目的志向を強く意識した研究においては目的外の結果や単なる異常値として見逃されてしまうこともありうるので、シーズ志向の研究の方がこうした発見をしやすくなるということも言えるでしょう。

 

以上、ここで述べたような、研究部門が実施したいと考えるいわゆるシーズ志向のテーマは、それだけではビジネスにはならないものの、必要であるとの認識に立つべきだと思われます。このとき、技術シーズとしては自身が保有している技術の他に、外部の技術、埋もれた技術、失敗の結果に終わった技術なども加えて考えてもよいでしょう。こうしたテーマを行なう場合には、ニーズとの組み合わせを意識し、さらに、見えないニーズの具体化に利用できないか、シーズそのものをさらに発展させることができないか、といった点を念頭におくことが、よい成果を得るために必要なことと考えられます。

 

文献1:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.

文献2Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.

文献3Rogers, E.M., 2003、三藤利雄訳、「イノベーションの普及」、翔泳社、2007.

文献4Anthony, S.D., Johnson, M.W., Sinfield, J.V., Altman, E.J., 2008、栗原潔訳、「イノベーションへの解実践編」、翔泳社、2008.

文献5Polanyi, M., 1966、高橋勇夫訳「暗黙知の次元」、筑摩書房、2003.

文献6Nonaka, I., Takeuchi, H., 1995、梅本勝博訳、「知識創造企業」、東洋経済新報社、1996.

文献7Leonard-Barton, D., 1995、阿部孝太郎、田畑暁生訳、「知識の源泉」、ダイヤモンド社、2001.

文献8Roberts R.M., 1989、安藤喬志訳、「セレンディピティー」、化学同人、1993.


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