研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

デザイン思考

イノベーション・ファシリテーターの手法に学ぶ(野村恭彦著「イノベーション・ファシリテーター」より)

イノベーションの実現には協力が有効であるということが最近よく言われるようになりました。確かに、イノベーション課題の認識、アイデア出し、実行段階などの段階で、多くの人の知恵と活動をうまく使うことができればイノベーションの成功確率が高まるだろうことは疑う余地のないことのように思います。しかし、実際には協力の実現には様々な困難があると指摘する人もいますし、経験的にも、協力から期待したような成果が得られないことはままあるように思います。そうした困難さの原因のひとつとして、どういう場合に協力が必要とされ、協力をうまく進めるためにはどうしたらよいのか、といった方法論が未確立であることが挙げられるのではないかと思いますがいかがでしょうか。

野村恭彦著、「イノベーション・ファシリテーター」[文献1]では、協働してイノベーションを起こすための方法論が示されています。著者は、「1人では解決が難しかった社会的な課題に、対話の手法を通じて誰もが取り組める世の中にすることが、わたしたちの使命です[p.17]」と述べ、社会的な課題に焦点を当て、協働の具体的な手法を提案していますが、その方法論は社会的課題のみならず、様々な課題への適用の可能性も示唆しているように思います。今回は、その内容のポイントを本書の構成に沿ってまとめたいと思います。

第1部、イノベーション・ファシリテーターの思想
第1章、フューチャーセッションを開く前に

・「『ファシリテーション』は、“人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること”であると、日本ファシリテーション協会が定義しています。[p.24]」「一般的に、『ファシリテーター』といえば、会議の進行役のイメージを持つ人が多いと思います。・・・一方、『イノベーション・ファシリテーター』は会議の進行役としてのファシリテーターとは異なるスタンスを持っています。[p.25]」
・「『イノベーション・ファシリテーター』とは、“新しいアイデアやプロダクトを新しい方法で世の中に提供して、社会に変革を起こそうとする人々を支援し、うまくことが運ぶよう舵取りする人[p.24]」。「イノベーション・ファシリテーターの目的は、会議で合意形成をつくることではありません。達成したい社会的な課題に対して、”課題の当事者およびその関係者“=”ステークホルダー“たちの関係に変容を生み出していくことが目的なのです。[p.25]」
・フューチャーセッションとは:「未来に向けた問いかけがあり、それに呼応して集まった多様な参加者が、対話を通じて相互理解と信頼関係を築き、新たな関係性と新たなアイデアを同時に生み出し、協調してアクションを起こしていく場。・・・フューチャーセッションは社会的な課題の達成のために開かれますが、そのはじまりにはいつも、社会問題に直面している当事者の想いがあります。・・・互いに異なる背景を持ったステークホルダーが対話を深めていくと、ステークホルダー同士に関係の変容が起こります。社会的な課題の解決に向けて、それぞれがどのように取り組んでいるかを理解し、協働する方法を模索しはじめるのです。フューチャーセッションの興味深い点は、イノベーション・ファシリテーターが上手に場の流れを進めるところではありません。当事者の想いに引き寄せられたステークホルダーたちが、互いの違いを理解し合いながら、目的の達成に向けて、その関係を変容させていくところにあります。・・・お互いの立場の違いから生まれた葛藤を乗り越え、ステークホルダーの関係に変容が起きると、それまで気がつかなかった新しい視点からのアイデアやプロジェクトが生まれ、協働関係が育まれます。それがイノベーションの引き金になるのです。[p.26-30]」
・「フューチャーセッションは、常に社会的な課題に直面する当事者の想いからはじまります。・・・当事者に出会ったイノベーション・ファシリテーターは、最初に当事者の想いに耳を傾けて、その想いの本質を引き出します。社会的な課題に対して、当事者がどのような想いを抱いていて、どうしてそのように感じるようになったのか、どんな社会になることを望んでいるのかなど、納得がいくまで当事者の想いを深堀りします。[p.30]」
・「単に、『自社の製品が売れて会社が儲かればいい』という想いなら、多くの人の共感を得ることはできません。・・・人々の共感を呼ぶことのできる価値観は、シェアードバリューと呼ばれています。[p.32]」
・「フューチャーセッションは、社会的な課題の解決を目指す活動です。自分ひとりでは、その社会的な課題を前にどうすることもできないから、ステークホルダーを集めて、フューチャーセッションを開くのです。つまり、次のような場合は、あえてフューチャーセッションを開く必要はありません。・課題に対する答えがすでに見つかっているとき、・課題に対する有効な取り組みがすでにあるとき[p.34]」
・「フューチャーセッションは、社会的な課題の達成に向けて、何度も重ねる探究のプロセスです。・・・社会的な課題は、そう簡単に解決できません。[p.36]」

第2章、問いを立てる
・「イノベーション・ファシリテーターは、当事者から本質的な想いを引き出します。そして引き出された本質的な想いを問いに変換するのです。・・・それは、想いをそのまま投げかけても、その当事者と同じ属性の人にしか届かないからです。・・・同一属性にあるステークホルダーが対話をすると、境遇が似ているだけに気持の共有はできるかもしれませんが、イノベーションは起こりにくいのです。想いを問いに変換すると、同じ属性のステークホルダーしか集まらないリスクを回避することができるようになるのです。[p.38]」
・「当事者の想いを傾聴し、想いの奥にある本質にたどり着いたら、問題解決に必要なステークホルダーを集めるステップに入ります。まずは、ステークホルダーの中から、コアメンバーの目星をつけて、その人たちのための小さなセッションを開きます。そのセッションで、コアメンバーになってもらいたい人たちの想いを引き出すのです。その後、企画と運営に加わってもらうとよいでしょう。・・・コアメンバーが話し合うことによって、問いは何度も磨かれていきます。[p.52-54]」
・「イノベーション・ファシリテーターが、自身の想いから、フューチャーセッションを開くことをわたしはあまりおすすめしていません。その理由は、イノベーション・ファシリテーターが想いを持った当事者である場合、想いが強すぎて、フューチャーセッションに対して冷静な立場を守りにくくなってしまうためです。・・・イノベーション・ファシリテーターの中立的な立ち位置は、そのセッションの参加者の多様性を担保するうえできわめて重要です。・・・自分自身の強い想いからフューチャーセッションを開いてしまうと、周囲に傲慢な印象を与えかねません。[p.54-55]」
・「気をつけたいのは、問いにはテーマを引き寄せる問いと、引き剥がす問いがあるということです。・・・引き寄せなくてはならないテーマとは、エネルギーの問題やグローバルな課題など、いままであまり自分ゴトとして考えたことがないものです。・・・身近な問題に焦点を当てるのです。・・・一方、あまりにも身近になりすぎているテーマの場合は、逆に自分ゴトから引き剥がす問いが必要です。・・・引き剥がす問いを用意して、発想の枠を取り外す必要があります。[p.56-57]」
・「企業に勤める人が、自社のためにフューチャーセッションを開こうとしても、なかなかうまくいきません。
・・・『フューチャーセッションという新しい手法を取り入れて会社にイノベーションを起こしましょう』という提案は、・・・『いままでのやり方を変えませんか』・・・と言っているようなものなのです。いままでのやり方でやってきた上司としては、気持ちよく受け入れられないのは当然です。[p.58]」「フューチャーセッションは特にどのような経営課題に向いているのでしょうか。それは、『新規商品・サービスの開発』と『次世代リーダーの育成』です。・・・企業がフューチャーセッションを開く場合は、ビジネスの根底にある企業の想いについて、きちんと掘り下げて問いをつくる必要があります。その企業が持つビジョンに注目して、誰もが共感できるパブリックな問いをつくり上げていく必要があるのです。[p.60-61]」

第3章、ゴールを見つめる
・「イノベーション・ファシリテーターであるみなさんには、ぜひ3段階ほどのゴールイメージを持っていただきたいのです。・・・最初のゴールはコアメンバーを集めることです。・・・2つ目のゴールは、大勢のステークホルダーを招いておこなうフューチャーセッションの開催です。・・・ステークホルダー同士の関係性に変容が起きること。これが2つ目のゴールとなります。3つ目はプロジェクト全体のゴールです。セクターを越えた関係性が生まれると、従来の関係性からは生まれてこなかったアイデアやプロジェクトが、ステークホルダーによって実行に移される必要があります。彼らを支援し、モチベーションに働きかけることで、社会的な課題の解決に向けて全体を後押しする。これがイノベーション・ファシリテーターにとっての3つ目のゴールとなります。[p.75-78]」
・「フューチャーセッションの本質的なゴールは、画期的な新商品のアイデアが出てくることではありません。もちろん、それも大切なのですが、本質的には、社会で活動しているそれぞれの人をつないでいくことで社会の仕組みそのものを変えていくことがゴールになります。[p.82]」

第4章、信頼関係を生み出す
・「ここからは、フューチャーセッション当日、イノベーション・ファシリテーターがどのような姿勢で臨むべきか・・・想いに共感し合って、対話をして、信頼関係を深めて、関係性をつくり変える。これがステークホルダーを集めたフューチャーセッションのゴールなのです。[p.83-86]」

第5章、参加者一人ひとりを主人公にする
・「フューチャーセッションには、さまざまな対話の手法を盛り込みます。これらの手法は、参加者にいままでとは違う課題の構造について、追体験をうながすために取り入れられるのです。[p.102]」
・「社会的な課題に想いが沸き上がってきて、話をしたいテーマが浮かび上がってきて、話したい人たちとのグループをつくる。フューチャーセッションで大切にしているのはこれらすべてを自分の意志で決めてもらうことなのです。[p.109]」

第6章、集まった人たちならではの意見をつくる
・「社会的な動物である人間は、指示に従って行動するよりも、意味自体を生み出そうとして行動するほうが高い満足度が得られます。・・・そうであれば、アイデア出しをする前に、『なぜこの問いを考えるのか』という想いの共有が必要です。また、『この問いについてどう考えるか』という参加者同士の意見の交換も外すことができません。フューチャーセッションから出てくるアイデアやプロジェクト自体は、これまでに見たことのないようなものでなくてもかまいません。平凡でも地味でもいいのです。大切なのは、その日、そこに集まった多様なステークホルダーが、アイデアを出す意味をちゃんと理解したうえで、つくりあげたかということなのです。飛んだアイデアよりも、みんなが自分ゴトで『大切だ』と思えるアイデアを出すようにしましょう。[p.115]」

第7章、デザイン思考と未来思考
・「フューチャーセッションでは、場のなかで生まれた新たなアイデアやプロジェクトを必ずプロトタイピング(試作)します。・・・大切なのは、アイデアやプロジェクトを可視化してみんなで客観的に眺められるようにすることです。このように、つくりながら考えるデザイナーの仕事のやり方をビジネス全般に適用した方法がデザイン思考です。[p.134]」
・「未来思考とは、物事を考える視点を未来に置いて、そこから現在を振り返ることによって、いま起こしたいアクションを決める思考方法のことを言います。・・・現在、もしくは過去のさまざまなデータから、『こんな世の中になるのではないか?』と未来を予測することをフォアキャスティングと言います。フォアキャスティングで未来を考えると、それはあくまで現在の諸要因から可能性の高い未来を浮かびあがらせるだけなので、そこに多様性はなく、社会的な目的の達成に向かう要素も見つけられません。創造力を働かせることのできる領域も小さくなります。これに対して、物事を考える視点を未来に置いて、そこから現在を振り返ることをバックキャスティングと言います。バックキャスティングでは、いきなり未来に視点を置いて、理想とする未来の姿を想い描きます。・・・未来のことですからなにが正解で、なにが不正解かはわかりません。だからこそ自由に想い描くことが可能であり、想像するとワクワクしてくるのです。[p.137-138]」
・「フューチャーセッションでは未来思考とデザイン思考を組み合わせて使います。・・・もちろん、未来思考とデザイン思考で考えた未来が簡単に手に入るわけではありません。でもそこにはフォアキャスティングでは浮かび上がってこない、素晴らしいけれど『何もしなければ実現しない未来』が広がっているのです。・・・社会的な課題に対して、イノベーションを起こしていくためにはこのワクワクするという気持ちがなによりも大切なのです。[p.140-141]」

第8章、関係性のつなぎ直しで課題解決
・「具体的なプランやアイデアではなくステークホルダーの関係性のつなぎ直しをゴールにする理由は、たとえよいアイデアがあっても、ステークホルダーの関係性ができていなければ実行されないからです。[p.143]」
・「関係者がお互いを理解することで関係性を改善すれば、より根源的な問題が解決されていく。こういった場面は会社のなかでもくらしのなかでも以外なほど多いものなのです。[p.145]」

第2部、フューチャーセッションの実践
第3部、不安、疑問に応えるQ&A

・セッション開催の準備から開催後のフォローまでのノウハウ、Q&Aがまとめられています。
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野村恭彦氏の著作は以前に「フューチャーセンターをつくろう 対話をイノベーションにつなげる仕組み」をご紹介しました。本書はそれを発展させたものと言えると思います。前著に比較して、対話を通じて変化を作るための思想、考え方のポイントがより詳細に解説されており、さらに実践のための各論では社会変革のためのイノベーションを起こすことに焦点をあてたノウハウがまとめられている点が本書の特徴だと思います。おそらく前著出版後に著者が蓄積したノウハウや洞察、より洗練された思想が述べられているといってよいだろうと思います。

本稿では、具体的な手法の部分は大幅に割愛し、考え方について主にまとめましたが、私が特に重要だと感じたのは以下の点です。
・協働することの意味:著者は、複雑な社会的課題の解決に焦点をあてて、そういう課題を解決するためのイノベーションこそ協力して行うべきであるとしています。しかし、対象は社会的課題である必要はないように思います。要するに、協働が効果を発揮するタイプのイノベーションがあり、それはすなわち、多くのステークホルダーが関わる難しい課題を解決するためのイノベーションということなのではないでしょうか。例えば、協働のしくみとしてオープンイノベーションがよく取り上げられますが、本当に協働が効果をあげるような対象に適用しているのかどうか。なぜ協働すべきなのかをしっかりと見極める必要があるということかもしれません。
・ステークホルダーの行動を促す仕組み:協働が必要なイノベーションの場合、それぞれのステークホルダーが確実に行動してくれなければ、全体としてイノベーションは実現できません。著者は、対話によって自発的にステークホルダーの考え方の変容を導き、それが行動の変容につながる、という手法を提案していますが、この考え方に従えば、協働と行動の変容を促す仕組みは表裏一体のものではないかと思います。協働をしたいと口で言ったとしても、行動の変容を促す仕組みがなければ協働はうまくいかないのではないか、協働したいなら、その計画とセットで行動を変容させる仕組みも用意しておかなければならない、ということなのではないかという気がしました。オープンイノベーションの例でいえば、単なるニーズとシーズのマッチングだけではなく、ステークホルダーの行動変容を促す仕組みをもっと重視すべきなのかもしれません。

おそらく、本書で提案されている手法はこれからも進化していくでしょう。現時点ではその成果はあまり目立ってはいないように思いますが、協働をうまく進めるメカニズムの理解によって、多くの優れたアイデアが生まれ、実行段階での失敗も減って、イノベーションの成功確率は高まるのではないかと思います。今後の発展に注目していきたいと思います。


文献1: 野村恭彦著、「イノベーション・ファシリテーター INNOVATION FACILITATOR 3カ月で社会を変えるための思想と実践」、プレジデント社、2015.

参考リンク



イノベーションのスタート段階とアイデア(ウルフェン著「スタート・イノベーション!」より)

イノベーションはどのように始めるのがよいのでしょうか。多くの場合、「これをやってみよう」というアイデアがまず必要になるでしょう。顧客や市場のニーズ、トレンドからアイデアが出てくることもあるでしょうし、すでにシーズ技術があってそれを何らかの形でビジネスに生かせるのではないか、というアイデアもあるでしょう。また、「とにかく何か新しいことを始めたい」という社内的必要性があって、アイデアを一から考える場合もあるかもしれません。

このような「アイデア」は、イノベーションの課題を選定するアイデアということになると思いますが、これは、何らかの問題を解決するための知恵や工夫という意味の「アイデア」とは少し異なる気がします。問題解決のためのアイデアの場合、そのアイデアの良し悪しは、問題解決に寄与するかという点で評価ができるのですが、問題も明確になっていないような場合や解決すべき問題の特定から始めなければいけない場合、アイデア出しやアイデア評価はどのようにすればよいのでしょうか。イノベーションを成功させる、ということが課題だとすれば、成功するようなアイデアというのはどのようにしたら出せるのでしょうか。

ウルフェン著、「スタート・イノベーション!」[文献1]では、イノベーションをどのように始めたらよいか、特に新たなビジネスを起こすためのアイデアをどうやって出し、成長させていけばよいのかについての著者の提案する手法が解説されています。著者は「イノベーションプロジェクトの80パーセントは途中で頓挫してしまう。多くがプロジェクトの序盤でつまずいてしまうのだ。本書『START INNOVATION!(スタート・イノベーション!)』は、アイデア創出のインスピレーション(ひらめき)を得るための実用ツールを提供し、プロジェクトの効果的なスタートの切り方を教えることを目的としている[p.6]」と述べていますが、インタビュー[資料2]では、「保守的な会社でイノベーションを起こす必要があり、内部のサポートも得られないなら本書が役に立つ」というようなことも述べていますので、その内容は多分に既存企業(スタートアップ企業ではなく)におけるイノベーションを念頭においているようです。そうした視点での手法は少し珍しいですし、イノベーションの方法全般においても役立つ指摘も含まれていると思いますので、以下にその内容の要点をまとめてみたいと思います。

1章、イノベーションを起こした偉大な探検家Famous Explorers Innovate

著者は、「この本では、イノベーションの起こし方を『探検の道筋』に見立てて解説するという、独自の方法を採用している[p.6]」とし、コロンブスの新大陸発見、マゼランの世界一周、アムンセンの南極探検、ヒラリーのエベレスト登頂、アームストロングの月面着陸の事例から、次の教訓が得られるとしています。
・イノベーションの10の教訓[p.47]:1情熱、2危機感、3目的、4チームワーク、5計画、6準備、7専念、8粘り強さ、9新技術、10共感。

2章、探検の出発前にInnovate the Expedition Way
・「探検に乗りだすべきでない21のシチュエーション[p.51]」:各項目は割愛しますが、イノベーションを始める段階の注意点を次のようにまとめています。「まずは視野を広げ、これまでの意見や、習慣や、やり方に疑問を持つことが大切だ。」「アイデアをひらめくのはひとりでもできるが、組織の中でのイノベーションは、ひとりでは起こせない」「スタートすべき適切なタイミングを待とう。いちどスタートしてしまえば、もう後戻りはきかないのだから。」
・「イノベーションをふいにする6つのパターン[p.52-53]」:1、必要ないのに始める、2、最初にイノベーターを選ぶ、3、あなたのアイデアを出発点にする(批判的な意見が出るのは「アイデアがあなたのものであって、彼らのものではないから」)、4、ひとつのアイデアに掛けてしまう、5、ブレーンストーミングから始めてしまう(ブレーンストーミングがうまくいかないのは古いものを捨てられないから)、6、顧客を無視して初めてしまう。
・「イノベーションのスタートで起こる10の問題[p.62-63]」:1、方向性の欠如、2、アイデアの固定化、3、常識への固執、4、仕切り屋の存在(参加者のあいだに力関係があるとよくない)、5、負のスパイラル(ネガティブ発言で黙ってしまう)、6、付せんはたまった、じゃあ次は?(どう活用したらいいかわからない)、7、アイデアのあいまいさ、8、上層部による封殺、9、開発チームによる改変(開発チームに受け渡された後)、10、生産ラインからの抵抗
・「アイデア創出の5つのジレンマ[p.64-65]」:1、いつ(「財政と文化の両面で、社内にイノベーションの機運が高まらない限り成功しない」、2、誰が(内部か外部か)、3、何を(革新的か発展的か)、4、どの基準を採用すべきか(クリアすべき明確な基準は?)、5、どうやって(自由に行くか理詰めでいくか)
・本書で提案するイノベーションメソッド「FORTH」の概要[p.69]:STEP1「全速前進でスタート」(専念すべき目標をはっきりさせる)、STEP2「観察と学び」(顧客の不満を発見し、理解する)、STEP3「アイデアを出す」(ブレーンストーミングでアイデアを出し、評価し、具体的コンセプトへ昇華させる)、STEP4「アイデアをテストする」(コンセプトを想定顧客がテストする)、STEP5「帰還」(上層部にいちばん有望なコンセプトを新ミニ・ビジネスケースとして提示する)。(なお、「FORTH」という名前は、STEP1~5(3章~7章)の頭文字をつなげたものです)

3章、全速前進でスタートFull Steam Ahead
・アクティビティー[p.83-84]:1、方針設定ワークショップ、2、中核メンバーによる事前ミーティング(最初から最後までかかわる中核メンバーと、通常上層部の人間が務める大枠メンバーからなる)、3、Kick-Offワークショップ
・「たった1つのアイデアからイノベーションをスタートさせるのは厳禁![p.90]」:「夢のようなアイデアではなく、ビジネスとしての目標を達成できるアイデアを持たなければならない」「チームみんなでアイデアを出そう。そうすれば、全員の心に『これは自分のアイデアだ』という愛着が生まれる。」「代替案はあるだろうか?」
・「すべてはタイミング次第![p.92]」:「上層部が本物のイノベーションにゴーサインを出すのは、リスクの低いコンセプトの成長が軒並み止まったときだけである」
・「使命をはっきりさせるには、上層部もターゲット顧客層を絞り、クリアすべき基準を具体的に設定しなければならない[p.96]」

4章、観察と学びObserve & Learn
・アクティビティー[p.105]:4、最終確認ワークショップ、5、トレンドとテクノロジーの調査、6、顧客の不満を見つけ出す、7、イノベーションの実例を調査する、8、観察と学びワークショップ(特に参考になる実例と、特に狙っていくべき顧客の不満を選定する)
・「不況の今、企業はオペレーショナル・エクセレンスの意味をコストカットにすり替えがちだ。コストを減らせば確かに利益は上がるが、それは一時的なことで、長期的には、コストカットだけでは事業は生き残れない。・・・オペレーショナル・エクセレンスではトレンドを逆転させることはできない。[p.108]」
・「デザイン・シンキングの5つのポイント[p.110-111]」:1、共感(デザイン・シンキングの達人は、他人が気づかないことに気づき、その情報をイノベーションのヒントにする)、2、統合的な思考(分析だけに頼らず、複雑な問題をさまざまな面から捉える)、3、楽観主義、4、試したがり(微調整だけではイノベーションは起こせないとわかっている)、5、コラボレーション(ひとりのクリエイティブな天才がひとりでイノベーションを起こすやり方は、過去のものになりつつある・・・一流のデザイン・シンカーの多くは、多分野の人間と協力するだけでなく、自らがさまざまなことに造詣が深い)
・「オープンイノベーションの文化を支える10の要素[p.114-115]」:1、顧客やパートナーとの関係構築がうまい人間、2、スマートな人材がすべて社内で揃う『わけがない』という認識、3、失敗は学習機会だという認識、4、社内教育(アイデアやテクノロジーをビジネスへ転換する方法)、5、『うちの発案じゃない』症候群の撲滅、6、内外の研究開発のバランス、7、リスクを避けるのではなく、取ろうとする意志、8、トラブルに対する覚悟(オープン・イノベーションほぼ必ず知的財産所有権の問題を引き起こす)、9、オープンなコミュニケーション(信頼に基づいた関係をつくり出し、秘密主義と知的財産の問題の克服に努めよう)、10、必ずしも、第一人者になる必要はないという心の余裕
・「顧客の不満の見つけ方[p.126-127]」:顧客層を特定する(イニシエーター、インフルエンサー、ディサイダー、バイヤー、ユーザー、使い方による分類)、顧客の不満をあぶり出す(個人インタビュー、フォーカスグループ)、不満を言葉で表現する。「何よりも大切なのは、あなたがイノベーションを起こしたい分野に、今どんな製品やサービスがあるかを知り、一般市場であればどう使われているか、B2B市場であれば生産工程でどんな役割を果たしているかを理解することだ。」

5章、アイデアを出すRaise Ideas
・アクティビティー[p.137]:9、新製品ブレーンストーミング(ブレーンストーミングで、500~750個の新しいアイデアを出し、それを30~40の異なる方向性にまとめ、12の方向性を選び新コンセプトをつくる)、10、コンセプト改善ワークショップ(1回目)。
・心理学者の科学的なデータによると「プレーンストーミングをするよりも、個々に取り組んだほうが、人はたくさんのアイデアを出せる[p.144]」。そこで、「FORTHではプレーンストーミングの手法に微調整を加えている。・・・チームのメンバーはまず、完璧に静かな環境で、アイデアを出す時間を与えられる。一斉にしゃべるのではなく、まずは付せんにアイデアを書きつけるのだ。それからメンバーは順番に、書いたアイデアをテンポよく読み上げる。[p.144-145]」

6章、アイデアをテストするTest Ideas
・アクティビティー[p.161]:11、コンセプトテスト(コンセプトの魅力度をターゲット顧客がテストする)、12コンセプト改善ワークショップ(コンセプトを改善し3~5個の有望なコンセプトを選ぶ)
・チェックのポイント[p.170]:1、顧客:顧客に気にいられるか?、2、ビジネスモデル:利益は出せるか?、3、技術:製品化は可能か?
・「顧客からのダメ出しこそが、アイデアをふるいにかける最高の手段なのだ。[p.170]」
・コンセプト検証のための実用チェックリスト[p.172]:1、顧客の不満と関係があるか?、2、顧客の不満の解決策になっているか?、3、コンセプトの特徴は顧客にとってわかりやすいか?、4、顧客にとって試してみやすいか?、5、新コンセプトへ切り替える際、顧客に何かリスクはないか?、6、売上・利益目標をクリアできる見込みはあるか?、7、その際、自社の現行製品、サービスの売上と利益を食いはしないか?、8、ブランドの立ち位置にフィットしているか?、9、自分たちで作れるか(パートナーの助けは必要か)?、10.大規模な投資をせずに作れるか?

7章、帰還Homecoming
・アクティビティー[p.183]:13、4回の新ミニ・ビジネスケース・ワークショップ(プレゼンのための資料としてビジネスケースを作る。ビジネスケースとは、イニシアティブや投資などの概要を商業面・技術面・財政面から明確にまとめた企画書を言う。)、14、最終プレゼンテーション(これまでのプロセスにさほど深く関わってこなかった上層部の人間を、新コンセプトのとりこにする)、15、コンセプト受け渡しワークショップ(次のステップである開発ステージへの受け渡し)
・「本当に大切なのは、無数に出たアイデアをどうまとめるかだ。・・・正しいアイデアを『選ぶ』ほうに少なくとも3分の2の時間をかけ、アイデアを『出す』ほうは3分の1にとどめる。[p.188]」

8章、その後の展開Get It Done
・「イノベーションプロセスにおいては、『あいまいな初期段階(ファジーフロントエンド。イノベーションのスタート段階ははっきり構造化するのが難しいことから、こう呼ばれている)』と『やっかいな後半段階(スティッキーバックエンド)』とのあいだには、大きな隔たりがあると言われている。[p.204]」
・「アイデアの具現化に役立つ便利な3Cp.204-205]」:Connect(つながり)→「FORTHでは、チームに中核メンバーだけでなく、大枠メンバーが加わる。そして大枠メンバーには必ず意志決定者、つまり会社のビジネス面を象徴する人物を選ぶ。・・・アイデア創出以後のステージでも上層部の人間が引き続きチームに加わるようにすれば、プロジェクトが生き残る確率はぐんと上がるはずだ。」、Customer(顧客)→「イノベーションでいちばん難しいのは、組織での生き残りだ。・・・顧客の声という『世論』を背景に、社内でのプロジェクトの優先順位を高め、より多くのリソースを勝ち取るのだ。」、Creativity(クリエイティビティー)→「フレキシビリティーとクリエイティビティーはプロセス全体を通して失ってはならない。・・・フロントエンドで使ったアイデア創出テクニックを、バックエンドでも活用していこう。」

9章、イノベーションのツールキット
ワークショップやブレーンストーミングなどで使えるツールの紹介
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本書で提案されているFORTHプロセスは、実現性の高そうなアイデアを上層部に承認させて、イノベーションのスタートを切る段階で終わっています。その後の実行段階にも様々な障害があることは多くの人が指摘しており、実行段階をうまく進めていく方法も様々に提案されていますが、著者の考え方は、まずはスタート段階をうまくくぐりぬける必要があるということ、そしてそのためにスタート段階で十分な検討と準備を行えば、実行段階での成功確率もあがるのではないか、ということのように思います。確かに、既存事業を運営している企業では、よさそうなアイデアを思いついたにもかかわらず、社内でその開発承認が得られず、みすみすチャンスを逃してしまうことがあります。今までのイノベーションの手法では、その段階へのうまい対処法はあまり提案されていなかったと思いますので、本書の手法は実務家にとって(特に、企業内で研究開発をしている人にとって)有用な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。もちろん、この手法を用いて、社内承認を得てもその後がうまく進むとは限りません。懸念点をあげるとすれば、社内受けのよいアイデアが市場で受け入れられるとは限らないこと、上層部を大枠メンバーとして参加させて社内承認を通りやすくしたことで、実行段階での方針転換が難しくなる可能性が出てきたり、上層部の思い入れが強くなりすぎて現実に基づく正しい判断が行なわれなくなる可能性などが容易に想像できます。実務家としては、それぞれの状況に合わせて本書の手法の良いところをうまく使っていくことが必要なのだろうと思います。


文献1:Gijs van Wulfen, 2013、ハイス・ファン・ウルフェン著、高崎拓哉訳、「スタート・イノベーション! ビジネスイノベーションをはじめるための実践ビジュアルガイド&思考ツールキット START INNOVATION! with this visual toolkit.」、ビー・エヌ・エヌ新社、2015.
原著表題:The Innovation Expedition: a visual toolkit to start innovation
資料2:ビー・エヌ・エヌ新社webページより、「『START INNOVATION!』 著者ファン・ウルフェン氏来日記念イベント レポート」、2015.7.23
http://www.bnn.co.jp/articles/7707/

参考リンク


創造力に対する自信(トム&デイヴィッド・ケリー著「クリエイティブマインドセット」より)

イノベーションにはどのような創造性が求められるのでしょうか。創造性を引き出すにはどうすればよいのでしょうか。創造性の発揮の問題や「デザイン思考」について、近年注目を集めることが多い会社にIDEOがあります。今回は、そのIDEOを創設し率いてきたトム・ケリー、デイヴィッド・ケリー著、「クリエイティブマインドセット 創造力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」[文献1]に述べられている、創造性についての考え方をまとめてみたいと思います。ちなみに、原著の表題は、「Creative Confidence: Unleashing The Creative Potential Within Us All」(「直訳すると『創造力に対する自信:誰もが内に秘める潜在的な創造力を解き放つ』」[p.357、訳者あとがき]です。本書では、創造力を高め発揮するためのスキルも紹介されていますが、主題は、Creative Confidenceすなわち「創造力に対する自信」といえるでしょう。以下、本書の構成に沿って、興味深く感じた点をご紹介します。

序章、人間はみんなクリエイティブだ!
・「『クリエイティブである』というのは・・・一生変わらない性質だと思っているかもしれない。クリエイティブな遺伝子を持って生まれたか、そうでないかのどちらかなのだ、と。私たち兄弟は、・・・このような誤解を『創造性のウソ』と考えるようになった。このウソを信じている人は、あまりにも多い。だがそれは大きな間違いだ。[p.16]」
・「基本的に、創造力に対する自信とは、『自分には周囲の世界を変える力がある』という信念を指している。・・・自分の創造力を信じることこそ、イノベーションの『核心』をなすものなのだ。[p.17-18]」
・「私たちは、ちょっとした練習や励ましだけで、人々の創造力、好奇心、勇気がいとも簡単に目覚めることに驚いた。・・・私たちの経験からいえば、誰もがクリエイティブ系だ。一定期間、私たちの方法論に従ってもらえれば、誰でも最終的には驚くような成果を挙げられる。画期的なアイデアや提案を思いついたり、仲間とクリエイティブに協力し、本当に画期的なモノを生み出したりできるのだ。そして、自分自身、思っていたよりもずっとクリエイティブだったことに気づき、びっくりする。この最初の成功によって、自己イメージが変わり、もっと何かをやってみたくなるのだ。私たちが気づいたのは、創造性を一から生み出す必要はない、という点だ。人々がすでに持っているもの――世界にふたつとないアイデアを創造したり発展させたりする能力――を再発見する手助けをするだけでいいのだ。しかし、アイデアを実行に移す勇気を奮い起さないかぎり、創造性の真の価値は発揮されない。つまり、新しいアイデアを思いつく能力と、アイデアを実行に移す勇気――このふたつの組み合わせこそが、創造力に対する自信の特徴と言えるのだ。[p.21-22]」
・「デザイン思考とは、イノベーションを日常的に行なうための方法論のひとつだ。[p.20]」

第1章、デザイン思考で生まれ変わる
・イノベーションの3つの要因:1、技術的要因(技術的な実現性、「画期的な技術だけでは十分とはいえない」。2、経済的実現性(ビジネス要因、「技術は機能するだけでなく、経済的に実現可能な方法で生産・販売できなければならない」。3、人的要因(人間のニーズを深く理解すること)。「技術、ビジネス、人間という3つの要因の交わる点を見つけることが重要」[p.37-39
・「人的要因は必ずしも残りのふたつより重要というわけではない。しかし、技術的要因は世界じゅうの科学や工学のカリキュラムで詳しく教えられているし、ビジネス的要因は世界じゅうの企業が全力を注いでいる。とすれば、人的要因にこそ、イノベーションの最大のチャンスが潜んでいるかもしれない。だからこそ、私たちは常に人的要因を出発点にするのだ。・・・人間中心の考え方は、イノベーション・プロセスの基本だ。人々に深く共感することで、観察を強力なインスピレーション源にすることができる。[p.39]」
・「私たちが思うに、成功するイノベーションは、技術的要因とビジネス的要因のバランスを取るとともに、人間中心のデザインによる調査の要素を何かしら取り入れている。顧客の真のニーズや欲求を考慮しながら、技術的実現性、経済的実現性、人間にとっての有用性の交わる点を模索することこそ、IDEOやdスクールで『デザイン思考』と呼ばれている方法論の一部であり、創造性やイノベーションを生み出す私たちのプロセスなのだ。[p.40]」
・デザイン主導のイノベーションアプローチの概要:1、着想(inspiration、人間中心のイノベーションを促すうえで、何よりも頼りになるのは共感だ。生身の人間のニーズ、欲求、動機を理解すれば、斬新なアイデアを思いつくきっかけになる)。2、統合(synthesis、統合の段階では、スイート・スポットを探る。調査で明らかになった内容を、実行可能なフレームワークや原則へと変換する。問題の枠組みをとらえ直し(リフレーミング)、どこに力を注ぐかを決めるのだ)。3、アイデア創造と実験(ideation, experimentation、無数のアイデアを出し、多岐にわたる選択肢を次々と検討していく。中でも特に有望なアイデアは、迅速な試作(ラピッド・プロトタイピング)を繰り返し行なう段階へと進める。この段階では、アイデアをすばやくラフな形で表現する。この経験による学習のループは、既存のコンセプトを発展させ、新しいコンセプトを生み出すのに役立つ。エンド・ユーザーなどのフィードバックに基づき、適応、改良、方向転換を繰り返しながら、人間を第一に考える魅力的で有効な解決策を練り上げていく)。4、実現(implementation、デザインに磨きをかけ、市場に出るまでのロード・マップを準備する。どの業界でも学習してフィードバックを得るために新しい製品、サービス、事業をリリースする企業がますます増えつつある。市場の中でしばやく改良を繰り返し、商品やサービスに一層磨きをかけていく)。[p.41-45
・「デザイン思考では、直観的に物事をとらえ、パターンを認識し、機能的なだけでなく感情的にも意義のあるアイデアを組み立てる、人間の天性の能力をもちいる。・・・もちろん、感覚、直感、インスピレーションだけに基づいて、キャリアを築いたり組織を運営したりしなさいと言うつもりはない。ただ、論理や分析に頼り過ぎるのは、同じくらい危険なこともある。容易には分析できない問題や、確かな基準やデータが十分にない問題を抱えている場合、デザイン思考の共感やプロトタイピングを使うことで、前に進む足がかりになるかもしれない。画期的なイノベーションや創造の飛躍が必要な場合は、問題を深く掘り下げ、新しい洞察をみつけるのにデザイン思考の方法論が役立つだろう。[p.46]」
・「しなやかマインドセットの持ち主は、人間の真の潜在能力は未知(しかも不可知)であり、何年も努力、苦労、練習を積めば、予測も付かないようなことを成し遂げられると信じているという。・・・こちこちマインドセットの持ち主は、意識的または無意識のうちに、人間の生まれ持つ知能と才能の量は決まっていると心から信じている。創造力に対する自信を獲得するための旅に招待されると、こちこちマインドセットの持ち主は、自分の能力の限界がほかの人にバレるのを恐れて、安全な場所にとどまろうとするのだ。[p.53-54]」「まずはしなやかマインドセットを身に付けよう。自分には未知の潜在能力がある、今まで達成できなかったこともきっと達成できると、心から信じるのだ。[p.58]」

第2章、恐怖を克服する
・「失敗に対する恐怖は、あらゆるスキルを学んだり、リスクを冒したり、新しい課題に挑戦したりする妨げになる。創造力に対する自信を手に入れるには、失敗に対する恐怖を克服する必要がある。[p.73]」
・「失敗に対する最初の恐怖を克服し、創造力に対する自信を手に入れたとしても、引き続き自己の向上に励むことは必要だ。筋肉と同じで、創造力は鍛えれば鍛えるほど成長し、強くなっていく。そして、創造力を使いつづけることで、好調な状態をキープできるのだ。・・・ここで重要になってくるのが、経験と直感だ。[p.78-79]」
・「自分や周囲の人々にときどき間違いを犯す余裕を与えれば、もっといいアイデアをもっと早く思いつけるようになる。[p.80]」
・「失敗から教訓を学ぶには、失敗に責任を持つ必要がある。何がまずかったのか、次はどこをもっとうまくやるべきなのかを突き止めなければならない。・・・間違いを認めることは、前に進むためにも大事だ。そうすることで初めて、隠蔽、正当化、罪悪感という心の落とし穴を避けられる。[p.82]」
・「創造性を手に入れるには、人と比べるのをやめるのがひとつの方法」、「私たちは、・・・人は不安を抱えているとベストの力を発揮できないことに気づいた。同僚や上司に尊敬されていないと感じると、自己アピールで自分を良く見せようとするのだ。仕事に集中して自分の作るモノに満足する代わりに、他人にどう思われているかばかり気にするようになる。[p.91]」、「自分をさらけ出す能力、周囲の人々を信頼する能力こそ、創造的思考や建設的な行動を妨げている数々のハードルを乗り越えるきっかけになる[p.92]」。
・「創造性を発揮するのに、何千人にひとりの才能や技術など必要ない。大事なのは、自分が持っている才能と技術で何かができると信じることだ。[p.100]」

第3章、創造性の火花を散らせ!
・「クリエイティブな力は、繰り返し育てていかなければならないものだ。[p.111]」
・クリエイティブな力を伸ばすために日頃から心がけたい方法:1、クリエイティブになると決意する。2、旅行者のように考える(新しい視点で見てみる)。3、リラックスした注意を払う(ひらめきは、精神がリラックスしているときに訪れやすい)。4、エンド・ユーザーに共感する。5、現場に行って観察する(「共感とは、自分の先入観を疑い、自分が正しいと思うことをいったん脇にのけ、本当に正しいことを学ぶこと」)。6、「なぜ」で始まる質問をする。7、問題の枠組みをとらえ直す(例えば、明白な解決策から離れる、焦点や視点を変える、真の問題を突き止める、抵抗や心理的な否定を避ける方法を探す、逆を考える)。8、心を許せる仲間のネットワークを築く(他者のアイデアを土台にするには謙虚さが必要)。[p.111-153

第4章、計画するより行動しよう
・「多くの場合、クリエイティブになるための第一歩とは、傍観者でいるのをやめて、アイデアを行動に移すことなのだ。ほんの少しの創造力に対する自信があれば、世界じゅうで前向きな行動を起こせる。[p.169]」
・「すぐに“最高”の成果を出すのは難しい。だからこそ、すばやく改良を続けていくべきなのだ。・・・すばらしいものを作りたければ、まず作りはじめなければならない。創造プロセスの初期の段階では、完璧主義が邪魔になることもある。[p.176]」
・「プロジェクトで目標に向かって前進するベストの方法は・・・私たちの経験からいえば、プロトタイプ、つまり早い段階で実際に動くモデルを作ることだ。・・・プロトタイプを作る理由は、ずばり実験できることにある。[p.185]」

第5章、義務なんか忘れてしまえ
・「人生を単なる義務から真の情熱へと変えたいなら、まずは現状が唯一の選択肢ではないと認めることだ。生き方や働き方は変えられる。[p.236-237]」

第6章、みんなでクリエイティブになる
・「私たちひとりひとりが持つ潜在的な創造力を解き放てば、世界に良い影響を与えられるのは確かだが、テーマによっては、集団の力が必要なこともある。・・・チームで日常的にイノベーションを起こしたいなら、クリエイティブな文化を根付かせなければならない。[p.242]」
・企業が創造力に対する自信を獲得していく5段階:第1段階「純粋な否定」(「経営幹部や従業員が『われわれはクリエイティブではない』と口を揃える」)、第2段階「内心の拒絶」(「経営幹部のひとりが新しいイノベーションの方法論を熱心に勧め、応援する。ほかのマネジャーたちは口々に賛成するが、本気では実践しようとはしない。・・・『内心の拒絶』の段階を乗りこえるには、現場の従業員が創造力に対する自信の原則を自ら体験しなければならない。」)、第3段階「信頼」(「権力や影響力を持つ立場の人物が消費者を第一に考えるデザイン思考の価値を認め、プロジェクトを実現するための資源やサポートを与える」)、第4段階「自信の探究」(「組織が本格的にイノベーションに取り組み、企業目標を実現するためにクリエイティブな資源を活かす最善の方法を模索する」)、第5段階「総合的な認識と統合」(「チームは目の前の課題にクリエイティブなツールを日常的に活かすようになる。一言でいえば、組織レベルの創造力に対する自信だ」)。[p.248-251
・「多様な考えの持ち主を集めるという方法は、複雑で多次元的な課題に直面しているときに特に役立つ。[p.259]」、「どんな組織でも、分野の枠を超えたグループを築くことで、企業構造や企業階層の壁を乗り越え、新しいアイデアの画期的な融合を生み出すことができる。[p.261]」
・イノベーション・チームを育てる原則:1、お互いの強みを知る。2、多様性を活かす(異なる見方同士に生まれる緊張関係こそ、多様なチームを創造性の宝庫にする)。3、プライベートをさらけ出す(私生活を仕事と切り離すと、創造的思考に支障が出る)。4、「仕事上の関係」の「関係」の部分を重視する。5、チームの体験を構築する(どのように助け合うか、どのような原則に従うか、何を達成したいか)。6、楽しむ!(一緒に時間を過ごし、お互いをよく知ることを優先する)。[p.262-264
・「賢くクリエイティブなチームを築き、非凡な成果を成し遂げてもらいたいなら、平凡で冴えないスペースで働かせてはいけない。[p.269]」
・「考え方や行動を変えるには、まず言葉遣いを変えるのが有効[p.173]」。
・「消耗型リーダーとは、厳しい管理体制を敷き、チームの創造力を十分に活かしきれないリーダー。一方、増幅型リーダーとは、やりがいのある目標を定め、従業員に自分もできると思っていなかったような劇的な成果を生み出させるリーダー[p.277]」。増幅型リーダーになるコツ:有能な人材を引き寄せる“磁石”になる。やりがいのある挑戦や課題を見つけ、人々の思考を精一杯に働かせる。さまざまな意見を表明し、検討できるような活発な討論を奨励する。成果に対する当事者意識をチーム・メンバーに持たせ、彼らの成功に投資する。[p.278-279
・「創造力を秘めた人材であふれるこの世界では、名案を導き出すのはトップの人々だけだと決めつけるのは危険だ。・・・21世紀のもっとも革新的な企業は、従来の指揮統制型の組織から、コラボレーションやチームワークを重視する参加型のアプローチへと、変わってきた。こういう会社は、社内の全頭脳を結集させ、どこからでも最良のアイデアや洞察を集める。第一線で業務を行なう人々の声に積極的に耳を傾ける。アイデアが組織の上へと浸透していくよう、チーム・メンバー全員に対してイノベーション精神を植えつけるのだ。[p.287]」
・「組織の創造力に対する自信を育むには、まずイノベーション文化を築くことだ。分野の枠を超えたチームの力を活かし、他者のアイデアを土台にするようみんなに促し、組織全員の能力を増幅させるリーダーになろう。[p.288]」

第7章、チャレンジ
・「内に秘めた創造力を解き放つのは、ほかの色々な物事と何ら変わらない。そう、練習すればするほど上達していくのだ。[p.290]」
・練習に役立つツール:意識的に思考の幅を広げ、クリエイティブに考える(マインドマップ)、創造力のアウトプットを増やす(名案がひらめいたらその場で記録する)、アイデア創造セッションをジャンプ・スタート、人間の行動を観察して学ぶ(共感マップ)、建設的なフィードバックを促し、受け入れる、グループの雰囲気を盛り上げる、上下関係をなくして、アイデアの流れを活発化する、顧客、従業員、エンド・ユーザーに共感する(カスタマー・ジャーニー・マップ)、取り組む問題を定義する(夢と不満セッション)、グループにイノベーション思考を理解してもらう、ためのツールを紹介。[p.292-332

第8章、その先へ
・「自分自身の創造力に対する自信を手に入れるには、いちどに一歩ずつ、行動するのがいちばんだ。つまり小さな成功を積み重ねていくことが大切なのだ。[p.335]」
・「いったん創造力に対する自信を受け入れれば、努力、練習、継続的な学習を通じて、あなたも人生やキャリアを作り直すことができるのだ。[p.349]」
―――

本書のポイントは、デザイン思考の考え方の紹介と、すべての人が持つという創造力を開花させ、「創造力に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)」を身に付け、活用しようと述べている点でしょう。デザイン思考、特に人間中心のアプローチは、純粋に技術的な開発課題にはあまり向いていない手法かもしれませんが、どんな課題に取り組むにせよ、第1章で述べられている、技術、ビジネス、人間の要素の交わる点を探す、という考え方は重要だと思いますし、その中の人間の要素を検討する際にデザイン思考は特に有効であることは認識しておくべきだと思います。

もう一点の、創造力に対する自信を身に付け、活用する、という点については、研究マネジメントの観点からも重要だと思います。多様性を活かし、試行から学び、協働する、という近年のイノベーションの進め方においては、多くの人々の創造力を活かすことは従来にも増して重要になってくると思われます。本書のアプローチは、研究組織運営のあり方を考える上でも非常に参考になると感じました。


文献1:Tom Kelley, David Kelley, 2013、トム・ケリー、デイヴィッド・ケリー著、千葉敏生訳、「クリエイティブマインドセット 創造力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」、日経BP社、2014.
原著表題:Creative Confidence: Unleashing The Creative Potential Within Us All

参考リンク



「行動観察×ビッグデータ」(ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2014年8月号特集)より

イノベーションを成功させるためには、人の行動や意思について深く知ることが役立つという認識は近年広まりつつあるといえるでしょう。行動観察やエスノグラフィー、ビッグデータの活用などの手法が提案され、さらには問題解決の手法としてのデザイン思考なども注目されています。ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2014年8月号特集「行動観察×ビッグデータ」[文献1]には、こうした考え方に関する論文が掲載されていますので、今回はそのなかから重要と思われる点をまとめたいと思います。

「ビッグデータvs.行動観察データ:どちらが顧客インサイトを得られるのか 価値提供システムで考える6つの使い分け」、安宅和人、p.26
・ビッグデータの特徴(3V):量(volume)が膨大、多様性(variety)が高い、スピード(velocity)が速い。
・ビッグデータと行動観察の違い:行動観察では、サンプル数は限られていても、ユーザーのニーズにまつわる情報、利用文脈、ユーザーの意識、ユーザーの属性が入手できる。ビッグデータは全数を解析することで、頻度の少ないテール部分の情報も得られる。ビッグデータはリアルタイムの情報が得られる。このような違いがあるため、この2つの手法で得られるデータを同列で扱うこと、これらは代替可能な互換データであるとする議論には意味がない。
・ビッグデータと行動観察の使い分け:市場構造とニーズの見極めには行動観察がかなり優位。ポジショニングやサービス・スペックの設計には、行動観察(ユーザビリティ・テスト)で大筋の方向やオプションの広がりを固め、ビッグデータで微調整することを繰り返すのが王道。顧客ごとへのマーケティングにはビッグデータは不可欠(ただし顧客の属性推定が難しいことには注意が必要)。ニーズ発生場面での打ち手の提供は、ビッグデータでは容易だが行動観察では不可能。取り組みの効果検証の場合、意識の変容を知るには行動観察、利用行動の変容を知るにはビックデータが適している。長期的なトレンドの大局観を得るには行動観察、見えてきたパターンの延長による近未来予測はビッグデータが適している。
・注意点:「データ・ドリブンなアプローチは、ビッグデータであろうと行動観察であろうと、どちらも現実の後追いであり、突発的な変化、不連続な変化、見えていないパターンには対応できない」。「単なるデータの素朴な解析では、イノベーションの知恵、すなわちインサイトを得られることはほとんどない」。「元のデータが歪んでいては、意味合い以前に解析する価値がなくなってしまう。ビッグデータであろうと、行動観察データであろうと、サンプルの質はきわめて重要だ。」

「エスノグラフィーが顧客の真の姿を描き出す デジタル・データで説明できない顧客の行動原理」、クリスチャン・マズビャーグ、ミケル・B・ラスムッセン著、倉田幸信訳、p.40、(原題”An Anthropologist Walks into a Bar...”, Christian Madsbjerg, Mikkel B. Rasmussen, HBR March 2014
・「いまや、多くの企業がビッグデータとアナリティクスのおかげて強力になった顧客調査に頼るようになっている。たしかにこの手法を使えば、自社市場の一部の側面については驚くほど詳細に見えてくる。しかしその像は完璧にはほど遠く、誤解の元になることも多いのだ。・・・定量データをどれほど積み上げても、その顧客が『なぜ』クリックしたのか、『なぜ』購入したのかは明らかにできない。」、「大半のマーケターは、自分たちの組織文化と経営陣の偏見、そして(最近は特に)大量だが不完全なデータの洪水を基にした、顧客の行動に関する推論にしがみついている。」
・「顧客の行動とは、外からは見えないその人の精神世界と、その人を取り巻く社会・文化・物質世界との間に生まれる複雑な相互作用である。従来型のビジネス・ツールではとらえ切れなかったインサイトを求めて、そこを深堀りするのだ。我々が『センス・メイキング』(意味付け)と呼ぶ、この非線形プロセスによって、顧客の行動を解き明かす動機――それもとらえにくく、顧客本人さえ意識していないことの多い動機を明らかにできる。また、この非線形プロセスは、製品開発や組織文化、さらには企業戦略さえも変えてしまうようなインサイトをもたらす可能性を秘めている。・・・『センス・メイキング』や人文科学のツールがその実力を最大限に発揮して企業の役に立つのは、その企業がよく知らない社会や文化のなかで、前例のない問題、すなわち『大いなる未知』に取り組む場合である。」
・「センス・メイキング」の5段階のプロセス:
1)問題をとらえなおす:「問題を人の体験として見る」。「企業が自分たちの視点で自社の市場、製品、および顧客を見ることを止め、それらを顧客の視点から見ることが要求される。」
2)データを集める:「『センス・メイキング』のプロセスで実践するデータ収集は、それまでの前提に一石を投じるという明確な意図を持って行うため、従来の分析・調査手法とは根本的にやり方が異なる。仮説に基づく調査をしたり、大人数、もしくは周到にシナリオを練ったフォーカス・グループへの調査を行う代わりに、研究者は調査対象の日々の暮らしに参加するのである。この調査は仮説を持たずに行うことが決定的に重要だ。大量の情報を集め、情報の種類や量には制限を設けない。そして、何を見つけることになるのか、いっさいの予断を持たずに行う。このように先入観を持たないデータ収集方法によってのみ、顧客の本当の体験を察知することができるのである。」
3)パターンを探す:「分析がなければデータの集合体は何も語らない、ただの記録にすぎない。」「ただ見るだけでは、内部の層に埋もれている真相を見抜くことはできない。観察によってパターンが浮かびあがることで、その真相が見えてくるのである。」
4)カギとなるインサイトを生み出す:例えば今までの信念を疑うなどによりインサイトを生み出す。
5)事業にインパクトをもたらす:「最終ステップで必要となるのは企業幹部にとってお馴染みのこと、すなわちイノベーション戦略の構築である。」
・「『センス・メイキング』は、従来のツールでは得られない答えを明らかにし、企業幹部が自社ビジネスの本当の姿を創造的に考えることを可能にする」

「行動観察をイノベーションへつなげる5つのステップ 常識を乗り越え、みずから変化を生み出す法」、松波晴人、p.56
・「変化の激しいビジネス環境において、これまでと同じ枠組みのなかでの最適化はすでになされてきており、・・・そのようななか必要とされているのが、従来のフレーム(枠組み)を再定義し、ビジネスのゲームを変えるイノベーションである。・・・これまでの物事のとらえ方を変えて、・・・新たな仮説を生むことを、リフレームと呼ぶ。行動観察では、まず“場”に足を運び、“場”において起こっている事実をていねいに集める。・・・リフレームは、これらの“場”にある事実の背景にある『なぜ』を理解できた時に生まれる。行動観察は、新たな仮説を見出すことで、変化に適応するとともに、みずから変化を生み出す方法論でもある。では新しい仮説とは何か。それは、『お客様が気づいておらず』『自社もまた気づいていない』インサイト(洞察)やソリューションのことである。」
・行動観察の5つのステップ:
ステップ0:一般人。「『日常生活における一般的な行動観察』と『スペシャリストによる行動観察』とでは、多くの違いがある。」「この時に用いられるのは、『みずからの勘と経験による思考』で・・・妥当性が保証されない。」このような「しろうと理論は整合性が低いが、その理論を考えた本人はその理論に合致する証拠だけを集めるので、いったん形成されるとなかなか放棄されない」(ファーンハムによる)。
ステップ1:気づき。「まず重要なのは、観察者がみずから“場”に足を運ぶこと」。「自分のしろうと理論をいったん横に置いて観察することが重要」。このステップでは、「深いインサイトを踏まえているわけではないので、得られるソリューションは『ジャスト・アイデア』のレベルに留まることが多い。」
ステップ2:知見に基づく解釈。「アカデミックな知見に基づいて解釈を試みる。」「知見に基づいていればソリューションの妥当性は向上する。」この段階では「ソリューションは従来の価値のフレームのなかでカイゼンを行う、という範囲に留まる。」

ステップ3:リフレームされたインサイト。「得られたさまざまな事実を総合的に解釈することで、これまでと異なるリフレームされたインサイトを得ようとする。リフレームとは『それまで常識とされてきた枠組みを、新しい視点・発想で前向きにつくり直す』という意味」。「イノベーションを起こすためには、リフレームされたインサイトか、リフレームされたソリューション、もしくはその両方が必要である。」「インサイトもソリューションも妥当性が高くなければ実際には機能せず、価値を生むことができない。」「インサイトが事実やアカデミックな知見に照らし合わせて、『あの事実も、この事実も説明できる』となった場合、妥当性が得られたと考えることができる。」
ステップ4:ソリューション提案。「リフレームされたインサイトに基づいてソリューションを考える。」「このプロセスにおいて、再びリフレームが起こる場合がある。」
ステップ5:ソリューション実現。ソリューションの受け手にとっては、「目の前に提示されたものが『イノベーション』なのか『役に立たない奇妙なアイデア』なのか判断ができない」、「どれだけ意外な結果を提示しても、『それは前から分かっていることだろう』という反応がおこるという課題もある。「その分野で長い経験を持つ人々は、新しい価値を理解することが困難であるとともに、それまでの自分の考え方のフレームをひっくり返されることを好まないから」。
・「行動観察から得られた答えは妥当性の高い推論であり、100%の正解は存在しない・・・。つまり『本当に大丈夫かどうか』は、やり方次第で変わってくるし、アクションを取らないとわからない」。
・「行動観察をビジネスに応用するために、今後は、『行動観察を実施する人材の育成方法の確立』が必要になってくる。行動観察を通じて新たな価値を生み出せる人材になるためには、『正解のないところに答えを創っていく』ことができなければならない。」

「IDEO、スタンフォード大学d-schoolでにわかに注目される デザイン思考でマーケティングは変わるか 」、宮澤正憲、p.72
・「デザイン思考という概念は、現状では明らかな誤認も含め多様に解釈されており、まだ統一した理解になっていないことがうかがえる。」
・「ゼロベースでモノを考え、枠を超えて新たな概念を提示するのは、通常の枠内思考に慣れた人だと、そこからすぐに抜け出すことは容易ではない。そこで注目されたのが、ゼロから新しいことを生み出すことを得意とするデザイナーの思考だ。」「このデザイナーの基本的な思考プロセスをある程度形式知化して、非デザイナーも扱えるようにしたものが、デザイン思考なのである。」「しかし、デザイン思考の成り立ちには、本来的には形式知化にふさわしくない概念を、理解促進のために形式知化したという根本的な矛盾を内包している。」
・デザイン思考の一般的なプロセス:スタンフォード大学d.schoolIDEO、イリノイ工科大学、慶応大SDMなどがデザイン思考のプロセスを提示しているが、オブザベーション(観察)、シンセシス(統合)、プロトタイピング(試作)という流れは概ね共通。

1)インプット(オブザベーション):「人間をつぶさに観察し、対象に入り込み、新たな発見を得たり、言語化できない無意識をあぶり出したりすることを目的とする。代表的な手法は行動観察、特にエスノグラフィーが主流となっている。」
2)コンセプト(シンセシス):1)で出てきたさまざまな分析やインサイトをつなぎ合わせ、新たな概念やストーリーを再構成する」。「複数の多様な視点を大切にするため、一人での作業というよりは、チームによる共創型ワークショップ形式で行われるのが一般的」。
3)アウトプット(プロトタイピング):「頭だけで考えずたえず手を動かし、視覚化し、形にしてみることが大切」。「試行錯誤を繰り返しつつ、うまくいかなければコンセプト・アイデアに戻り修正をしていく。プロトタイピングの目的は・・・アイデアを磨き、新しいアイデアを生み出すことにある」。
・重要なポイント:人間中心思考(単なる顧客視点ではない)、チームによる共創(多様性が新たな発見やアイデアを生むという考え方)、非線形プロセス(すべてのプロセスは、行ったり来たりできる柔軟性を持つことが求められる、予定調和でなく想定外の反復プロセスを踏むことが重要)、思考の振れ幅(収束と発散、分析と統合、左脳と右脳、抽象と具象、言語と非言語など、思考を自由に振らせながらクリエイティブな発想を高めていく)。
・「詳細なプロセスはあるべき論を追究しすぎると、本来デザイン思考が抜け出そうとしていた、元の固定化した概念に戻ってしまう懸念がある。・・・多くの人が、順序立てたステップを踏みすぎることの危険性をたびたび指摘している。」

「マーケターはオンライン・レビューを武器にせよ 消費者を動かす3つの要素」、イタマール・シモンソン、エマニュエル・ローゼン著、編集部訳、p.86、(原題”What Marketers Misunderstand About Online Reviews”, Itamar Simonson, Emanuel Rosen, HBR January-February 2014
・顧客の購買決定に影響する3つの要素:
過去の思考、信条、経験(Prior preferences, beliefs, and experiences:P)
マーケターからの情報(Information from marketers:M)
他の人々や情報サービスからのインプット(Input from other people and from information services:O)
・近年、オンラインレビューなどのOの重要性が増している。「企業としては、消費者が製品購入について意思決定する際、どの程度Oに依存しているかを問わなければならない。」
感想:上記の3つの要素が購買決定にどのように影響するかのモデルは様々に考えられると思いますが、どの要素が顧客の購買意思決定に影響を考えるかのヒントとして使いやすい考え方だと思われます。
―――

行動観察やエスノグラフィーの可能性については、以前にもとりあげましたが、要は、一つの手法としてその手法が有効に使える分野に活用していくべきものと思われます。ビッグデータやデザイン思考も含めて、こうした手法がどういう場合に有効で、その活用にあたってはどのようなことに注意すべきか、という点がかなり明らかになってきたようで、実務家にも使いやすくなってきているのではないかと思います。

本特集では、行動観察とビッグデータの比較がひとつのポイントですが、大雑把には、ビッグデータはある程度限られた項目について多くのサンプルからの情報が得られるのに対し、行動観察では少数のサンプルについて深いデータが得られることが特徴なのではないかと思います。その意味では、どちらも「多量の」データである、とも言えるわけで、こうした多量のデータからインサイトをどのように得るかが、解析者の腕の見せ所になるのでしょう。本特集では行動観察の具体的な進め方が解説されていますが、私見を追加させていただくなら、観察者が観察対象と同じ時に同じ場所にいる、ということも重要なことなのではないかと思います。観察者は対象を観察しながら、多少なりともインサイトに思いを巡らす、そういう時間が確保されていることも行動観察からよいインサイトが得られる一つの要素なのではないか、という気がしました。

考えてみれば、日ごろの研究開発でも、現場における観察は重要です。もちろん、通常の技術者はモノを対象としてその挙動を観察していますが、そこからどんなインサイト(技術的な本質)を得るかは、その技術者の能力に依存します。ある人は、小さな気づきから大きなセレンディピティに至りますが、同じチャンスに遭遇しながら、気づきが得られなかったり、インサイトの構築に至らなかったりして、セレンディピティに手が届かない場合もあります。よりよいインサイトを得るためには、先入観にこだわらずにデータを見て発想を広げる思考と、単なる思い付きでないインサイトに至れるだけの専門性が求められるのではないでしょうか。モノを扱う場合にも、本特集に述べられたよいインサイトを得るための方法は役に立つように思われます。データを取る、扱う専門家と、科学や人間の心理や行動に関する専門家の両方の要素が必要なのだとすれば、イノベーションに関わる多くの人がそうしたデータとインサイトの重要性を認識するとともに、必要に応じて様々な分野の専門家が協力することも考えてもよいのではないか、と思いました。


文献1:「行動観察×ビッグデータ」(各論文の表題、著者は上記記事をご参照ください)、Diamond Harvard Business Review, August 2014, p.24-92.

参考リンク<2015.2.8追加>




目的工学とは

「目的工学」という考え方が提唱されています。その背景には、企業経営や社会において「目的」という概念をもっと重視すべきだという考え方があるようです。この考え方はイノベーションにも深く関わるようですので、今回は、紺野登著、「利益や売り上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか」[文献1]に基づいて、本書で説明される目的工学(Purpose Engineering)の考え方について考察してみたいと思います。

著者は、「はじめに――『目的工学研究所設立趣意書』に代えて」において、「21世紀は『目的(パーパス)の時代』になる。[p.1]」と予言しています。そして、「目的工学研究所の信じるところ」として、よい目的は、知識社会、知識経済を動かす触媒である、共通善に向けて進化・深化する、失望や諦めを希望に変えることができる。目的工学は、そのための方法論である、目的群と手段の調整、試行錯誤によって最大の効果を生み出す、現状打破や改革を起こす手段である、究極の目的である『幸福』に貢献することを目的とする、と述べています。[p.7-8

本書では、第1章~第7章で、「目的」の重要性と関連する要素が事例に基づいて考察され、最後の第8章が目的工学の具体的な実践の方法を述べた総括編となっています。以下、その要点をまとめます。

第1章、利益や売り上げは「ビジネスの目的」ではありません

・「目的と目標は別物。・・・目標は目的ではなく、むしろ目的を実現するための手段であり、マイルストーン[p.25-26]」。「目的は大目的と小目的の2階建てになっています・・・小目的は、一般的に大目的を実現するうえでクリアすべきものであり、多くの場合、複数存在します[p.39]」。「売上げや利益、株主価値といった財務業績にかまけている企業より、顧客やコミュニティを第一に考えて行動している企業のほうが持続可能性が高いと報告する研究は少なくありません[p.39]」。
・「人間には、だれにでも『だれかの役に立ちたい』『社会に貢献したい』という欲求が存在する[p.33]」。
・「われわれ目的工学研究所の結論はこうです。よい目的が、よい会社、よい組織、よい事業、よりリーダー、よい人間関係をつくる。その結果、よりよい未来が生まれてくる[p.43]」。

第2章、イノベーションは「よい目的」から生まれてくる
・「共通善としての目的を追求することで、利益も生みだされる・・・顧客にとっての社会的価値を実現すること以上の高みを目指すものであり、資本主義の次なるあり方を示唆しています[p.53]」。
・「現実世界の戦略は、不測の事態、事業環境の変化、社内外の事情など、さまざまな出来事が錯綜するなか、試行錯誤を通じて、再発見・再検討・再創造(これを『創発』といいます)されるもの・・・このミンツバーグの考え方は、戦略プランニングに対して『戦略クラフティング』と呼ばれています。実は、よい目的づくりも、よい戦略同様、クラフティングを通じて練り上げられていきます。[p.59-60]」
・最近の途上国でのイノベーションでは、共通善に基づき、クラフティングのアプローチによって実現された例がある。
・「失われた10年、いや20年は、何も政治家や政府の無策だけが原因ではありません。企業本来の目的をないがしろにして、計画と統制によって人々を利潤の極大化に駆り立てたことも、あらためて冷静に省みるべき原因です。その第一歩が『企業の目的』『ビジネスの目的』を問い直すことなのです[p.87]」。

第3章、コラボレーション、コラボレーション、コラボレーション
・「マイケル・シュレーグ氏によれば、人間同士のコミュニケーションから生まれてくる創造性こそ、コラボレーションに期待されていることにほかならないそうです。これこそ、分業とコラボレーションの決定的な違いです[p.90]」。「現在のように、既存の秩序が緩み、新たな秩序とせめぎ合う転換期においては、・・・常識やアンシャン・レジームにとらわれない視点や発想が新たな道を拓きます。その際、重要になるのが、組織の枠や業種を超えてさまざまな人たちが集まる、学際的な異分野コラボレーションです。集合知やオープン・イノベーションが注目されていますが、つまるところ、一人の天才的ひらめきよりも、大人数で知恵や意見を持ち寄ったほうが、よりユニークで、よりインパクトの大きいアイデアやイノベーションを、より短い時間に生み出せるという認識です[p.91]」。
・「コラボレーションには、創造性やイノベーションが期待されているわけですが、その前提条件となるのが、さまざまな『目的群を調整する』ことです。すなわち、それぞれ中身や方向性の異なる目的の持ち主たちを、より上位の目的によって包み込み、大目的へと向かわせるのです[p.99]」。

第4章、「コトづくり」をデザインする
・最近は、「ある目的を実現するために、あるべきコトを構想し、これをビジネスモデルに具体化し、ここにふさわしいモノ(手段)・・・を探したり、時にはすでにある資産を再活用すること」が求められている。「既存の資産や外部の知を、新しい視点やビジネスモデルで組み替えていくこと。これもイノベーションと言えるのです。[p.130-131]」
・「異分野コラボレーションを実現し、イノベーションの確率を高めるには、・・・『デザイン思考』が欠かせません。・・・頭のなかで処理される思考プロセスにとどまらず、さまざまな人や場所、モノとの相互作用など、身体的で実践的なプロセスを通じて、ダイナミックに知を形成するというものです。[p.144]」

第5章、さまざまな人材をつなげる組織
・「真のコラボレーションを実現し、それによって、これまでとは一味違うアイデアやユニークなイノベーションを生み出すには、各人が拠って立つ専門領域やシステム、コミュニティにおいて、自分と他者を分かつ『境界線』を越えて行動したり、新たな関係性を見出したりする必要があります。このような行動や行為を後押しする仕掛け、言い換えれば、相互作用やイノベーションを創発させる媒介のことを、『バウンダリー・オブジェクト』と言います。・・・場所(環境や空間)を変えることは、必然的に境界線を越えることになるわけですから、バウンダリー・オブジェクトの一種といえます。」[p.164-165
・「日本では、長らくイノベーションとはまれに起きるような技術革新だととらえられてきました。しかし近年それは従来とは異なる新たなアイデアややり方であり、ビジネスモデルを含んだ、持続的な価値の創出として理解され始めています[p.174]」。

第6章、「アポロ計画」に目的工学を学ぶ
・「売上げや利益などの数値目標が、職種や価値観が異なる人たちを一つに束ねる求心力になりえないことは、だれもがうすうす気づいているはずです。そして、実際そうです。そのためには、こうした経済的利益を超えた、高次元の目的が必要になります。[p.203]」

・「大目的がいかに社会的あるいは利他的なものであっても、メンバーや関係者の小目的はたいていバラバラです。そして、このように異なる目的群の調整が成功のカギを握っている以上、こうしたオーケストレーションのスキルと能力が不可欠です。ところが、ひとたび走り始めると、肝心の目的は脇に置かれ、予算やスケジュールの管理や経済的成功にかまけてしまうという例が少なくありません[p.205-206]」。

第7章、目的第一のマネジメント
・「トリニトロンと新幹線、そしてアポロ計画――。これらのプロジェクトをなぜ再評価するのか、その理由は、現在のように、何が正解かがはっきりせず、ブレークスルーを起こさない限り、先に進めない状況において、どのようにチームをまとめ上げ、どのようにプロジェクトを成功に導くのか、そのためのヒントが多数隠されていることです。・・・『部分の総和以上の力』を生み出す・・・マネジメントやリーダーシップの手本なのです。そして、人々の力を最大限引き出し、組織力として発揮させるには、それぞれの目的をオーケストレーションすることが欠かせません。[p.227]」

第8章、目的工学はこうして実践する[総括編]
・目的工学の2つの側面:1)目的に基づく経営、2)目的のマネジメント[p.232-238
・目的工学の基本哲学:アリストテレスの目的論。世界が運動し変化する4つの原因は、1)質科因(素材となるもの)、2)形相因(あり方を定めるもの、たとえば基本的デザインやビジネスモデル)、3)作用因(現実に作用するもの、たとえば技術やツール)、4)目的因(存在理由、たとえば究極の顧客価値や目的)。

・目的の種類とレベル:大目的(最終的には共通善の追求につながる)、駆動目標(中目的)(プロジェクトを駆動させる具体的な概念やスローガン、ミッション)、小目的(参加者の思いが結びつけられる技術上の目的、個人的な目的など)、タスク目標(個別具体的な達成目標)[p.242-248
・目的群の調整:大目的(共通善に向けて調整、小目的を調整する不動の軸になる、末端のだれかの発見から生まれることもある、リソースを限定しないことが重要)、駆動目標(中目標)(人々を奮い立たせる深みとメッセージ性が求められる)、小目的(個々人の思いや背景に根差した目的、より大きな目標に引き上げる)、タスク目標(技術に目的を与えるのは人間なので、技術を一人歩きさせてはいけない)[p.248-255
・実践的三段論法:実践的推論とは、目的と目的を実現する手段に基づいて、この行為を行なうべきであると考えて、目的と手段の関係を追求していく。手段を出発点として目的を選択する方法もある。[p.255-263
・プロジェクトマネジメント:①利他的あるいは社会的な問題意識で、究極的には共通善を目指したビジョンや大目的につながる主観に基づいてプロジェクトを立ち上げる、②自由度の高い(自律的な)チームの結成、③大目的を掲げるプロジェクト・オーナー、手段(技術)を担うプロジェクト・マネジャー、駆動目標や小目的を調整する現場のプロジェクト・リーダー、進捗を評価しその結果をフィードバックするアセッサーが必要、④当事者間で物語(ナラティブ)を共有する、⑤調整のための「場」を意識する(様々なレベルの目的を調整する場を活用する、⑥デザイン思考(大目的を追求しながら、みんなが達成できる駆動目標(中目標)を決め、それを軸にして場をつくり、リソースを集め、状況に応じて柔軟にプロジェクトを運営していく)[p.263-271
・仮説→総合→分析のプロセスを繰り返しながらデザイン思考でプロジェクトをクラフティングする。最初に計画を決定して実行するPDCAとは異なる。プロジェクト・オーナーによるおおまかな方向づけ→プロジェクト・マネジャーやリーダーによる全体の調整→アセッサーによる進捗の評価というプロセスと言い換えられる。[p.271
・よい目的のつくりかた:これまでになかった状態を創造する、卓越した理想状態にする、美徳に関する目的を考える[p.282]。
・場のつくりかた:場とは、「共有された動的な文脈、あるいは意味空間」。経験共有、対話、体系構築、実践と身体知化が行なわれる。フューチャーセンター(企業、政府や自治体などが、未来に関わる戦略や政策の実践を目的に据え、当事者やステークホルダーが議論や対話を通じて、新しいアイデアや解決策を発見・共有し、相互協力の下に実践する場)に期待できる。[p.283-291
・オープンな関係性づくり:個人と社会、企業と社会などのよりオープンな関係性、必要な能力や有形・無形の資産、さまざまなパートナーが有機的に結び付いたビジネス生態系(エコシステム)をデザインする。[p.292
・成果の評価:目的と手段の関係は状況に応じて変化するというダイナミックな前提に基づき、プロジェクトの要所要所でフィードバックを行い、改善や向上、メンバーの成長を促すツールとして形成的評価(進行中に行う評価)を活用する。[p.296
・リーダーに求められる能力:世のなかや関係者の多様な小目的群を調整し、大目的に根差しながら中目的に向けて実践するための知力――。とりわけ不確実で複雑な環境にわれわれが置かれた時、仮説を立て、社会と関わりながら行動を起こしていく、最初の実践的ステップに挑戦する意志力――。世界と真摯に向き合う態度が不可欠であり、トライアル・アンド・エラーの行動力が重要になる。[p.302
―――

このような目的工学の考え方は、企業戦略が壁に突き当たり、新しいイノベーションが求められている日本の状況では極めて魅力的な考え方のように思われます。特に、事業環境の不確実性が高まっていること、個人の価値観が多様化するなか、コラボレーションが求められていることが背景のポイントなのでしょう。不確実性に対しては、ポーターの競争戦略論のような計画重視の取り組みではなく、ミンツバーグのような試行錯誤を許容した戦略クラフティングが必要であり、コラボレーション実現のためには、共通善に基づくよい目的(個々人の多様な目的を調整できる)が必要である、ということと理解しました。

ただ、そうした考え方がどこまで正しく、どこまで期待してよいのかは、本書からははっきりわかりませんでした。特に技術者は、ある考え方に接した時に、「本当にそうか?」「なぜそうなるのか?」と考える人が多いと思います。成功事例の分析から、本書でいう目的工学的な傾向が導かれ、それがアリストテレスやドラッカーの哲学に合致するものだったとしても、それが「都合のよいところだけをつなぎ合わせたものではないのか?」「成功した後からそれが良かったとわかるような後知恵的な考え方ではないのか?」といった疑問を感じてしまいます。例えば、よい目的に基づいて始めたプロジェクトなのに失敗に終わった例はないのか、よい目的に基づいていないのに成功した例はないのか、目的自体よりも目的の実現方法の巧拙の方が重要なのではないか、といった疑問がすぐに思い浮かぶでしょう。ソビエトの共産主義や、日本の大東亜共栄圏の発想も、その時代においてはよい目的であったのではないか(そうでなければ、あれだけ多くの人を動かす力はなかったと思います)、新幹線がよい目的を持ったプロジェクトだったとしても、移動時間を短縮する意味では同じような意義があったコンコルドはどこが悪かったと考えるべきなのか、興味がある点です。

現実問題として、企業には利益や売り上げを第一に考える人はまだ多くいます。また、試行錯誤を嫌う計画重視の人々もいます。アリストテレスやドラッカーよりも自らの経験や、英雄伝が好きな人もいますし、人間は経済合理性のみに従って行動すると信じている人もいます。こうした懐疑的な人々をいかに動かせるか、それが現在の目的工学の課題のひとつのように思います。本書の目的工学の考え方でも行動のための作業仮説の意義は大きいと思いますが、さらなる発展のためには多くの人に受け入れられるようにすることも必要ではないかと思います。

肝心の大目的の設定のしかたについても、共通善や社会的意義の重要性はわかりますが、実際には、「できそうだ」という見込みを発案者が感じることも必要だと思います。本書に述べられた実践方法の各論はなかなか示唆に富むものではありますが、まだ体系的な方法にはなっていないように思います。今後、真に有効な手法を確立していく必要もあるでしょう。もちろんこれは、著者が「今回の出版は、試論として目的工学の可能性を世に問うものです[p.308]」と述べていることに対して、過剰な要求だとは思いますが、これからの社会や企業経営を変える可能性が感じられる目的工学への期待を込めて、より説得力を持った思想に仕上げ、効果的な手法をクラフティングしていっていただければと思います。実務家としても目的工学の発展に寄与できるかもしれないことは考えておいてよいかもしれません。

文献1:紺野登+目的工学研究所著、「利益や売り上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか ドラッカー、松下幸之助、稲森和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則」、ダイヤモンド社、2013.

参考リンク<2014.2.23追加>



フューチャーセンターとは

近年の社会問題など、複雑な問題の解決やイノベーション実現の方法としてフューチャーセンターが注目されているようです。今回は、フューチャーセンターとは何か、その考え方からどんな示唆が得られるかについて、野村恭彦著「フューチャーセンターをつくろう」[文献1]に基づいて考えてみたいと思います。ちなみに、著者は、「本書は、フューチャーセンターの思想と、『場の主宰者としてのあり方』を理解し、その具体化のための『対話とイノベーションの方法論』を体得・実践していただくことを目的に書きました[p.14]」としていますので、マネジメントに役立ちそうな実践的方法論も併せてまとめてみます。

フューチャーセンターとは

・「フューチャーセンターという名前を最初に使ったのは、スウェーデンのレイフ・エドビンソン教授[p.18]」。エドビンソン教授は、「未来の知的資本を生み出す場」として「フューチャーセンター」を考え、今では、欧州を中心に40以上のフューチャーセンターが立ち上がっている[p.21]とのことです。ただ、世界各地のフューチャーセンターが主にパブリックセクターで広まったのに対し、日本では、企業を中心に拡がっている点、注目されているのだそうです[p.25]。

・より具体的には、「組織を超えて、多様なステークホルダーが集まり、未来志向で対話し、関係性をつくる。そこから創発されたアイデアに従い、協調的アクションを起こしていく。そのための「つねに開かれた場」が、フューチャーセンター[p.157]」。

・「フューチャーセンターは、『対話のための専用空間』でもあり、『人と人とのつながり』でもあり、『企業や社会の変革装置』でもあります。フューチャーセンターで行われる活動は、私たちが『人として』社会や市場経済と向き合い、協力し合って変化を起こしていくための、本質的な対話と協調です[p.11]」

・「知的資本経営では、『現在の収益は過去の知的資本が生み出したもの』と考えます。当然、長期的な成長を行うためには、『未来の知的資本を生み出す活動』が必要になります[p.19]」。「知的資本は、人的資本・構造的資本・関係性資本の三つからなるといわれています。未来の人的資本は、『人の成長』であり、未来の構造的資本は、『ビジネスモデルなどのアイデアの創出』、そして未来の関係性資本は、『新しい人と人とのつながり』を生み出すことになります。[p.22]」

・「フューチャーセンターは、未来の不確実性に立ち向かうための装置にほかならない[p.22]」

・企業がフューチャーセンターに取り組む理由

レベル1:企業の中に対話の文化を育みたい

レベル2:組織横断でスピーディに問題解決できるようにしたい

レベル3:社外ステークホルダーとともにイノベーションを起こしたい

「興味深いことに、どのレベルの問題意識から入っても、結局同じようにレベル1から順にレベル3まで辿っていくことになります。[p.34]」

・「イノベーションを起こすのは、容易ではありません。新たな価値の発見のみならず、それを提供できるように、社内変革も同時に実行しなければなりません。社会的価値の理想像を掲げ続けることで、社内の意識が変わります。これこそ、イノベーションをねらったプロジェクトを成功に導くための必要条件なのです。[p.49]」「フューチャーセンターは、『創造的(クリエイティブ)』な発想でセクターの壁を超え、『対話(ダイアログ)』によってセクター間の新たなつながりを生み出します。そのつながりのなかで、企業と社会起業家が手を取り合って、一緒に社会と市場を変革し、新たな産業を生み出していくのです。[p.51]」

フューチャーセンターでどうやってイノベーションを達成するか

・フューチャーセンターの6つの原則[p.60-66]

1)思いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる:情熱のない問いは、何の変化も起こさない。社会的な共通善が必要。問いの質を高めるためには、つねに社会全体のことを考えて行動する。

2)新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵が一つの場に集まる

3)集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す:できるだけ少ない人数に分かれて「傾聴」することで確実に関係性が深まる。参加者全員が相互に話を聴くことで、全員のポジティブなパワーを引き出すことができる。

4)そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される:時には「実際にやってみること」が、思いもよらないグッド・アイデアを生み出してくれる。

5)あらゆるものをプロトタイピング(試作)する:仮説の段階でそのコンセプトの完成度を高めるよりも、とにかく目に見えるかたちに表現してみる。絵でも、コラージュでも、システム図でも、物語でも、何でもかまわない。

6)質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする:アクションプランは「やらねばならないこと」であることが多く、往々にして、「なぜそれをやらねばならないのか」が共有されていない。質の高い対話が生みだすものは「一緒にやりたいこと」。お互いの状況を深く理解していれば、効果的なアクションをとることも難しくない。

フューチャーセンターの構成

・「フューチャーセンターには、ファシリテーター、方法論、空間、ホスピタリティの4つの要素が必要です。[p.160]」「ファシリテーターとしてのスキルを磨くには、通常の会議のファシリテーション、個人や組織の想いを引き出すコーチングなどの手法が役立ちます。[p.160-161]」、「フューチャーセンターを実現するうえでの切り札であり、またフューチャーセンターのユニークさでもあるのが、空間とホスピタリティです。創造的な空間、参加者をあたたかく迎える演出は、『いつもと違う対話とアクション』へと人を向かわせるパワーを持っています。[p.162]」

・フューチャーセンターの方法論[p.78-79]:

1)対話:相互理解・信頼の関係性を構築する、異質から気づきを得る、内省や志向を深める。たとえば、ワールドカフェ、OST、AI、フィッシュボウルなど。

2)未来思考:複数の未来シナリオを想定する、未来からバックキャストする。たとえば、未来スキャニング、シナリオプランニング、フューチャーサーチなど。

3)デザイン思考:体験から学ぶ、作りながら学ぶ、形にしてみることで改善し続ける。たとえば、ユーザー観察、ブレインストーミング、経験プロトタイピングなど。

・フューチャーセンター・ディレクター:「フューチャーセンター・ディレクターは、フューチャーセンターのミッション、扱う問題の領域を決めます[p.67]」。「フューチャーセンター・ディレクターは、強い『想い』を持っていなければなりませんし、また他人の『想い』を引き出し、『パワフルな問い』を立てられる人でなければなりません。・・・必要な特性をあげるならば、情熱、好奇心、共感力、それらを統合した人間的魅力でしょう[p.68]」。「あらゆるフューチャーセンター・ディレクターが、ファシリテーター、方法論、空間とホスピタリティのすべてに目を配り、調和された場づくりを指揮します[p.163]」

フューチャーセンター・セッションの実行

・フューチャーセンター・セッションとは、論理的分析だけでは解決できない複雑に絡み合った問題に対して、『対話』と『未来思考』と『デザイン思考』の力でブレークスルーする場[p.80]」

・フューチャーセンター・セッション設計の5ステップ[p.82]:

1)視野を広げてテーマを設定:従来の常識から離れる、過去、未来にスケールを広げて課題設定する。社会的なテーマに広げて課題設定する。

2)多様性を確保して人集め:ステークホルダー(専門家、生活者)に注目、専門性の違う人を選ぶ、横断的(企業、部門、チーム横断)に人を選ぶ。

3)非日常を演出:日常を持ちこまない、非日常の経験を演出する(目を見開かせる、思いがけないこと、くつろげる雰囲気、面白み・遊び)。

4)主体性を引き出す運営:テーマへの深い共感を得る、参加者が相互に認め合う雰囲気をつくる、一つの答えを出すことにこだわらない。

5)参加者全員の深い気づき:実行への期待を高める、議事録で感情を含めた物語を伝える、過去の対話に立ち戻れる仕掛けを用意する。

・「自らの視野と経験の拡大により、まったく異なる立場から発想できるようになります。異なる立場の人と共感し、異なる立場の人の行動を変えることで、イノベーションが生み出されます。[p.159]」

ファシリテーターに求められる能力

・「フューチャーセンター・セッションの成功のカギを握るのはファシリテーター[p.88]」

・求められる7つの仕掛け[p.90-92]:1)セッションに招待するゲストに「なぜあなたに来てほしいか」を事前に伝える、2)この人の情熱はすごい、この人の考え方に触れたいと思えるような、あこがれの人を招く、3)どんな参加者に対しても深い愛と傾聴で対応する、4)板書によるリ―タシップ、5)付箋を使って参加者の主体性を引き出す、6)セッション終盤に内容を整理して示す、7)セッション終了後、結果を整理してフィードバックし、参加者の貢献とセッションで得られた洞察の大きさを讃える。

・テンションのコントロール:「テンションはネガティブになると『緊張感』となり、ポジティブになると『張り』になります。」『緊張感』を下げ、『張り』を高めることに注意。[p.92-95]

フューチャーセンター設計ガイドライン

・設計ガイドラインは、フューチャーセンターの6原則に対応した、原則実現のためのノウハウやアイデアの方向性。[p.104-114]

1)信頼感:「テーマを提起する人が、この問題を語るにふさわしい人だと参加者の誰もが思えれば、セッションに対する信頼感は高まります。・・・もう一つの要素は、ファシリテーターの示す情熱です。ファシリテーター自身が『この場に集まった人たちには、この問題を解決する力がある』と信じ、そして『必ず創発を起こす』という強い意図を持っていることが、場に大きな影響を与えます。ファシリテーターの示す『場への信頼』が、参加者にとてつもなく大きな信頼感を与える」

2)多様性:「『多様であることをパワーに変えていく力』が必要」、「空間もファシリテーションも、『インクルーシブ(除外されてきた人々を包含する)』にデザインされている必要」がある。「『違いから学ぶ』ことを体感することも大事」、「階層を感じさせないこと、さらには階層間での学び合いを積極的に促すことが必要」

3)関係性:「関係性を大切にしていることを表現するためには、『お迎えの仕方』が大切」「問題解決より先に、人間関係を大切に」

4)全体性(共通体験、アクティブな学習):「そこに来た人たちが、お互いの間に壁を感じることなく、全体で一つの場をつくれるようデザインされるべき」、「少人数での対話の機会をつくることによって、逆に全体性が感じられる」

5)可視性(プロトタイピング):「一つの正しい答えを論理的に導くのではなく、たくさんの仮説を形にしていきます。」「現れたアイデア一つひとつをしっかりとつかみ取ることが大切」

6)安心感(質の高い会話):「自己との対話をしっかりと行うためには、安心な場が必要」、「他人が自分を攻めたり、揚げ足をとったりしない場なのだという安心感をしっかりと確認することに、大きな価値がある」

高質な「対話の場」(よい場)の条件[p.117-131]

・美しい場所、意味のある場所、外部に開かれている、おもてなし(ホスピタリティ)で参加者の期待感を高める、参加者全員を『唯一の特徴を持った人』として『主役』になってもらい、適切な『出番』を持ってもらう。

フューチャーセンターによる変革

・アクションにつながる要因[p.140-141]:1)課題提起者が本気であること、2)実行力を持った参加者がいること、3)ファシリテーターが強い意志を持って関わること

・日本企業のイノベーションプロセスの提案[p.144-145]:「未来シナリオは、日本企業に合ったやりかたです。なぜなら、シナリオプランニングは複数のシナリオを提示して、それらに備えるかたちでアクションを決める方法論なので、意思決定者にとっては、説明責任が果たせて安全だからです。」「つまり、日本企業のイノベーション・プロセスは、次のように考えればよいのです。まずデザイン思考のプロセスで洞察を得て、そこからたくさんのアイデアを出していきます。続いてそのアイデアをベースに、未来思考で複数のシナリオを作成して、全員のコンセンサスを得る。そしてさらに、対話の方法論によって意思決定者、協力者、顧客などを巻き込み、一緒にコンセプトをつくり上げていきます。合議制の日本型組織でも、これら3つの方法論を組み合わせれば、イノベーション・プロセスを回していくことができるでしょう。」

・「ビジョンや戦略で人を動かすのは難しいことですが、新しい人とのつながりは、一瞬にして人の行動を変えるのです。[p.156]」

―――

以上が、私が重要だと感じた点ですが、本書では必ずしも体系的にまとまった形で書かれているわけではないように思われました。おそらく、著者が「ぜひ一回、実際にご自分で開催してみてください。あるいは、他の人が主催するフューチャーセンター・セッションに参加してみてください[p.86]」と言っているように、体験してみることが必要なのかもしれません。また、フューチャーセンター活動はその歴史も浅いため、上記の方法で本当にうまくいくのかどうかが実績で証明されているわけでもなく、どんな場合に効果があるのかが明確になっているわけでもありません。しかし、現在の経営に行き詰まりを感じているのであれば、フューチャーセンターの不確実性を懸念して何もしないことよりも、可能性に賭けてみるという発想も必要ではないでしょうか。本書の考え方は確立された絶対的なものとしてではなく、一つのアプローチとしてまず使ってみることが重要なのだろうと思います。

加えて、マネジメント面での有意義な示唆も含んでいるように思います。特に、フューチャーセンターの考え方と、野中郁次郎氏らによる知識創造理論の関係が興味深く感じられました。フューチャーセンターには、「場」の創造、賢慮型リーダーシップ、共通善、組織的な知識創造、多様性の重視など、野中氏の理論でも重視される概念が活用されています。野中氏の理論は、使う立場からするとわかりにくい面がありますが、それに対して、本書に述べられたフューチャーセンターの考え方は、知識創造理論の一面を具体的に実践しやすい形に再創造しているとも考えられるように思います。

また、他者との協働によりイノベーションを達成する手法は、オープンイノベーションとも関連すると言えるでしょう。ただし、単に仕事の一部を他者に担当してもらう、というような相互補完的なオープンイノベーションでは、フューチャーセンターのような深いレベルでの協働はできないように思われます。オープンイノベーションの真価を発揮させるためには、単なる分業ではなく、フューチャーセンターの特徴である対話や信頼、主体性などを重視した協働を行う必要があるのかもしれません。

なお、本書では、フューチャーセンターの役割として、社会的な問題の解決が主眼となっているように思われます。企業にとっても、そうした社会的問題の解決に貢献することは意義深いことではありますが、企業の第一線の研究者、研究マネジャーにとっては、やや縁遠いようにも思われます。ただし、フューチャーセンターで用いられる手法は、企業内における研究マネジメントでも活用可能ですので、対話、多様性、信頼、主体的行動の促進、デザイン思考など、フューチャーセンターの考え方を支える基本思想の有効活用を心がけることは重要でしょう。

今後、フューチャーセンターの活動が活発になってくれば、様々な問題点も顕在化してくるかもしれません。実際には、本書に示されたフューチャーセンターの姿もひとつのプロトタイプとして考え、様々な場面でその方法論を進化、発展させていくことが必要になるのだと思います。しかしその過程では、当初想定していなかったようなフューチャーセンターの優れた点が創発してこないとも限りません。イノベーションに関わる一つの重要な動きとして今後も注目していきたいと思います。



文献1:野村恭彦、「フューチャーセンターをつくろう 対話をイノベーションにつなげる仕組み」、プレジデント社、2012.

(参考)野村恭彦、「フューチャーセンターをつくる!」、PRESIDENT Online2011.12.29-2012.4.19、全17回:本書のかなりの部分の内容が読めます。

http://president.jp/subcategory/%E3%83%95%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%EF%BC%81


参考リンク<2013.8.18追加> 





 


 

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