研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

死の谷

「技術を武器にする経営」(伊丹敬之、宮永博史著)より

経営学に、技術経営(MOTManagement of Technology)という分野があります。MOTが扱う中心的課題がイノベーションや、技術者、技術組織のマメジメントであることは容易に想像できますが、MOTによる具体的なマネジメントの方法論となると、体系的に確立されているとは言い難いのが現状でしょう。

今回取り上げる、伊丹敬之、宮永博史著、「技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か」[文献1]も、そうしたMOTを解説した本ですが、その目的は、技術経営とは何かを解説しながら、ノベーションを興すための経営のあり方を考えること[p.i,6]とされています。著者の考え方によるMOTのポイントがまとめられ、実務家にとっても示唆に富む指摘が多く述べられていると感じましたので、その内容をまとめておきたいと思います。

技術経営とは
・「技術経営は、技術を武器にする経営である。単に技術開発の方法論ではないし、技術ベースのマーケティングだけでもない。それらを含んだ、技術というものを経営のど真ん中に置き、それを武器に企業の発展のシナリオを考える、そんな経営である。[p.i]」
・「さまざまなイノベーションを興せるような経営の中心に技術経営がある。[p.i-ii]」
・「技術は、顧客の望むものを提供するための手段である。その平明な事実に立ち返り、技術を武器としてイノベーションを興すための経営のあり方を考える。それが、本書で解説しようとする技術経営(MOT)の最も簡単な定義である。[p.6]」
第1章、イノベーションを経営する
・「イノベーションが興されていくプロセスを経営するのが技術経営である、というのがこの章の、そして本書全体のメッセージである[p.8]」。
・「イノベーションとして結実するまでには、実は時間が長くかかる。そのプロセスは、次の3つのステップが段階を追って積み重なっていることが多い。1)筋のいい技術を育てる、2)市場への出口を作る、3)社会を動かす[p.10-11]」
・「魔の川とは、1つの研究開発プロジェクトが基礎的な研究(Research)から出発して、製品化を目指す開発(Development)段階へと進めるかどうかの関門のことである。・・・死の谷とは、開発段階へと進んだプロジェクトが、事業化段階へ進めるかどうかの関門である。・・・ダーウィンの海とは、事業化されて市場に出された製品やサービスが、他企業との競争や真の顧客の受容という荒波にもまれる関門を指す。[p.15-16]」
第2章、3つのレベルのMOTと現場の学習活動
・「プロジェクトリーダーのMOTは、1つの研究開発プロジェクトのマネジメントである。・・・外に向けてのマネジメント、内に向けてのマネジメント、上に向けてのマネジメント、3つのマネジメントが必要だろう。・・・研究所長のMOTを一言でいえば、他人であるプロジェクトリーダーにいかに研究プロジェクトをマネジメントしてもらうか、である。・・・CTOの仕事は、・・・第一は、企業全体の社内力学の中での、技術開発の位置づけの確保と資源の有効活用への布石である。・・・第二の仕事は、企業全体の技術開発の計画と管理の仕組みをどのように作るか、である。[p.28-33]」
・「どのレベルのMOTにせよ、変わらない本質が一つある。・・・それは『他人にいかに適切な学習活動をやってもらうか』がMOTの本質だ、ということである[p.35]」。「学習活動の本質は、それが自然からの学習であれ、顧客からの学習であれ、すべて『自学』なのである。・・・そこに、イノベーションプロセスのマネジメント、MOTのむつかしさの本質がある。学習活動とは、人が最終的には一人で行うもので、その自学のプロセスは誰にも『命令』できない。ふつうの仕事よりもはるかに、自由裁量の余地が大きい。成果も外からは測れないし、見えにくい。だからこそ、ロードマップ、ステージゲートなどと外的に定型化し、観察可能なかたちにするような経営の手法が、究極的には大きな意味を持ちにくいのである。[p.37]」
第3章、研究開発で技術を育てる
・「イノベーションの第一段階は『筋のいい技術』を育てることである[p.41]」。「研究と開発の違いをきちんと理解し、両者を使い分けることで技術が育つ[p.43]」。
第4章、日々の仕事の仕方で、技術が育つ
・「技術蓄積がきちんと行われるためには、・・・自分でする仕事と他人に任せる仕事の線引きが肝となる。自分でその仕事をすれば、自分がその仕事から生まれる学習をすることになる。他人に任せれば、他人が学習する。そして、その学習の成果が技術蓄積なのである。[p.60]」
・「ついつい、目に見える短期的な利益に引っ張られて、長期的なメリットに目をふさぎ、結果として自社の技術蓄積を削ぐような決定がなされがちなのが現実である。そこにアウトソーシングの危険がある。[p.63]」
第5章、技術の筋のよさを見きわめる
・筋のいい技術の条件:1)科学の原理に照らして、原理的深さを持つこと、2)社会のニーズの流れに照らして、人間の本質的ニーズに迫っていること、3)自社の戦略に合致し、事業として展開のポテンシャルが大きいこと、4)技術を担う人材が存在すること[p.69-70
第6章、技術の大きな流れを俯瞰する
・「リーダーは自分なりの『技術の俯瞰図』を持つとよいというのが、本書の基本的なメッセージである。」盛り込むべき視点は、1)科学の本質的動向を把握する、2)産業の技術進歩の大きな地図を描く(既存技術の進歩も忘れずに)、3)社会のニーズの大きなうねりを察知する、4)自社の発展方向のビジョンを構想する。[p.80-81
第7章、テーマ選択はポートフォリオ思考で
・テーマを見る3つの視角:1)成果(利益)、2)動機(誰にとって意味があるのか)、3)成功確率(現有技術からのジャンプの距離)[p.96-97
・「技術の目利きとは、決して純粋な技術蓄積が豊富にある人、という意味だけではない。その開発しようとしている技術の持つ社会的な意義、その技術を開発しようとしている人たちの人間模様、そうしたことも総合的に考えることのできる人が、真の技術の目利きなのである。それを別な言葉で表現すれが、3つの変数の見積もりを適切にできる人、ということになるのである。その適切さを担保するベースは、科学的知識の深さと人間心理の読みの深さの両方にある、と考えるべきであろう。[p.104]」
第8章、コンセプト創造からすべてが始まる
・いいコンセプトが持つべき条件:1)聞いて驚き、使って驚くという伝染効果があること、2)驚くだけの技術と仕組みの裏打ちがあること、3)許容範囲内の価格設定であること[p.110
・コンセプト創造の3つの条件:1)ニーズとシーズの相関構想力、2)簡潔な言葉で表現する言語表現能力、3)コンセプトを実現する技術力[p.113-115
第9章、製品開発は顧客との行ったり来たり
・製品開発の「プロセスはコンセプト創造から製品開発への一方通行ではない。顧客との間で『行ったり来たり』を繰り返すことによって、コンセプトそのものを磨いていかなければならない。[p.121]」
・「顧客から学び、顧客の立場に立って考えて、そこから学ぶ、それが市場への出口を作る際の基本スタンスである。・・・顧客に具体的な問いかけをし、その答えから学習するしかない。・・・問いかけには必ず、具体的な『モノ』が必要である。[p.122](著者らはその『モノ』を『伝達の連絡船』と表現していますが、プロトタイプと理解してよいと思います。)
第10章、技術を利益に変えるビジネスモデル
・ダーウィンの海で成功裏に生き残る条件:1)競合他社との差別化(製品そのものの魅力だけではなく、アフターサービスなどさまざまな工夫をする必要があることが多い)、2)利益をあげる工夫、3)上記条件を長期的に維持していけるような能力[p.136
・「その鍵を、ビジネスモデルの設計と実行が握っているというのが、この章の主張である。[p.137]」

・ビジネスモデル=ビジネスシステム+収益モデル
第11章、新事業への初動を工夫する
・初動段階で起こりやすいこと:1)開発成果を事業側が受け取りたがらない(新製品や新技術のリスク、既存事業との間のカニバリゼーション(共食い))、2)初期トラブル[p.151-152
・初動への工夫:1)追加的資源投入の余裕、2)問題を素早く技術陣が感知するための工夫[p.153
・共存のむつかしさ:カネ、情報、感情[p.158
第12章、最初のイノベーションの後が勝負
・イノベーションを継続するのがむつかしい理由:1)油断(最初の成功で一息ついてしまう)、2)誤解(技術のブレークスルーはあくまでも第一歩に過ぎないことを忘れてしまう)、3)硬直化する
第13章、技術外交に知的財産を使う
・「企業の利益をそれぞれに考えたうえで、どの顧客・競争相手・取引相手には友好の手を差し伸べるか。[p.180]」
・「知的財産は技術外交の有力な手段であることを忘れてはならない。この財産の使用を誰には認め、誰には認めないか、という判断は、結局は同盟関係形成の判断になるからである。[p.185]」
II部、技術者はどこで間違いやすいか
・「『間違い』の共通キーワードは、『視野の狭さ』である。[p.228]」
・技術者が陥りがちな思いこみ:1)技術がよければ売れるという思い込み、2)自社技術だけが進歩するという思い込み、3)社内では新技術、世間では二番煎じ[p.192-198
・構想なき繁忙に陥る要因:1)目の前の問題だけを解決しようとする(例:人海戦術に頼る)、2)意味のある問いを発することができない(正しい問題の設定ができない)、3)上位概念を構築できない[p.203-213
・技術の世界に引きこもる(タコツボ化)
エピローグ:技術者が技術経営者に変身するとき
MOTの本質:「イノベーションが生まれるまでの長い過程では、組織の内外でさまざまな人間社会の力学が生まれるため、その力学のマネジメントが技術経営の本質の一つである」、「技術を育て、市場への出口を作り、社会を動かしていくために、組織で働く人々による学習活動をマネジメントするのが、技術経営の本質の一つである」[p.229
・イノベーションを経営するために必要な2つのジャンプ:1)「自然の『理』の理解に加えて、人間社会の『情と理』の理解[p.229]」、2)他人の学習プロセスを導くのに必要な教育者の視点(「技術者・研究者の本質の一つである『他人を疑う』ことから、教育者の本質の一つである『他人を信じる』ことへ[p.235]」の視点の転換)
―――

以上の著者らの考え方は、私の考えと近い点も多く、全体として非常に納得しやすく感じました。なかでも特に重要と感じたのは、MOTにおける「学習」の意義についての指摘です。技術開発のプロセスは未知のことへの挑戦ですので、当初の計画どおりに物事が進まないことがほとんどです。そうした環境においては、周囲の情報から本質を学ぶこととともに、自ら実験、試行を行い、その結果からうまく学び、当初の計画を修正していくことが重要であるという指摘は多くなされています(例えば、創発的戦略(ノート12)イノベーションを実行する戦略策定の科学的アプローチ)。本書では、そうしたイノベーションを進める上での「学習」のみならず、学習した成果を技術蓄積として将来に活かすことまでを考慮している点、「学習」の意義を再認識させられました。「学習」を個人が行うもの、と捉えるならば、技術蓄積における個人の意義も必然的に大きくなると考えられます。とすると、人材の流動化の度合いが比較的低い日本企業こそ、技術蓄積の有効活用がしやすい環境にあるのではないか、技術蓄積を活かすことこそ、日本企業の独自性を発揮しやすいマネジメントなのではないか、とも感じました。また、研究テーマをポートフォリオとして考える視点も、研究という不確実な課題に対する有効なアプローチとして重要だと思います。さらに「技術外交」という考え方も興味深く感じました。オープンイノベーションや、イノベーション・エコシステムによる社外との協働や分業を考える場合に、学習による技術蓄積と技術外交の視点はよく認識しておく必要があると思われます。

一方、各論の部分では、従来の考え方と異なる点も見られます。例えば、既存事業部門の協力を得るために「新製品や新技術の技術的ポテンシャルを高めるのが、最大の説得材料であろう[p.152]」としている点は、上級役員の関与を重要視する「イノベーションを実行する」の考え方とは異なるアプローチと思われます。また、まずよいコンセプトを考えるアプローチも創発的戦略とは相容れない場合もあるように思いました。もちろん、本書の手法はあらゆるイノベーションに適用可能というわけではないと思いますので、各論の部分については、本書の考え方を参考にして、個々のイノベーションの特質に合わせて調整していくべきものなのでしょう。

もうひとつ、技術経営を行う人として技術者を主に考えていると思われる点が興味深く感じました。第II部、技術者はどこで間違いやすいか、での指摘は、技術者にとって非常に重要な内容を含んでいると思います。専門分野を極めれば満足、という技術者を目指すのであればいざ知らず、少なくとも企業内で経営に貢献する成果を挙げたいと願う技術者であれば、自分自身および技術者集団の欠点をよく認識しておく必要があるでしょう。しかし、MOTは技術者だけのものではないはずです。MOTを知らない人に、適任のCTOが選べるでしょうか。技術者がMOTを学ぶだけでなく、せめて本書の基本的な考え方だけでもすべてのマネジャーが身につけ、活用していただければ、今よりもイノベーションがうまくいきやすくなるのではないか、と思います。


文献1:伊丹敬之、宮永博史、「技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か」、日本経済新聞出版社、2014.
参考リンク:伊丹敬之、宮永博史、「技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か」、日経BizGate2014/5/9-6/17
http://bizgate.nikkei.co.jp/series/007299/index.html

参考リンク<2015.2.8追加>


魔の川、死の谷、ダーウィンの海を越える

研究開発の前に立ちはだかるといわれる次の3種類の壁についての私の理解を以前にご紹介しました。
魔の川:アイデア・基礎研究から実用化を目指した研究までの間の壁

死の谷:実用化研究から製品化までの間の壁

ダーウィンの海:製品が市場による淘汰を受けて生き残る際の壁

すべての研究開発がこの3つの壁を越えていく必要がある、というわけではありません。しかし、研究開発を実用化する上での困難なポイントをうまく説明する考え方として私は気にいっています。この背景には、研究の実用化が「基礎研究」→「応用(開発)研究」→「設計・製造」→「販売」といういわゆるリニアモデルに従って進む、という考え方がありますが、リニアモデルのような単純なモデルに従って研究が進む場合はほとんどないことが現在では広く認識されています(いまだにこういう考え方をする方がいるのは事実ですが)。ただ、実際には、研究開発をはじめとする新しいことへの挑戦が、多くの場合、「アイデア」→「アイデアが機能することの確認」→「機能を商品にするための工夫(製品化)」→「商品を安定的に提供(製造)する」→「販売・安定供給・品質保証・市場競争」といったプロセス、もっと単純には「アイデア」→「検証」→「実用化」→「競争」というプロセスを経て成果に結び付く場合が多いことも事実のように思います。要するにこの過程では、研究の実用化はひとつの工程が完了して次の工程に移る、という動きをするのではなく、いろいろな工程を行ったり来たりしながら製品に使われる技術やノウハウが完成に近づいていく、ということがポイントなのだろうと思います。製品化や製造の段階で、基礎に立ちかえる必要がでてくる場合もあるでしょうし、製造の研究や、供給や販売の段階でもその中でアイデア→確認→実用化というプロセスが要求されるということもあるでしょう。またプロセスの一部が省略されることもあるかもしれません。このように、ミクロなリニアモデルが変形しつつ複雑にからみあったものが研究開発プロセスではないかと思っています。

先に述べた「魔の川」はおよそ基礎研究から機能の確認の段階に、「死の谷」は、製品化、製造研究の段階に、「ダーウィンの海」は市場における競争の段階に相当すると考えられますが、実際には、これを順番にクリアしていくというよりも、こうした障害は研究開発のあらゆる場面で姿を現してくるということになるのではないでしょうか。そこで、以下では、それぞれの障害をのりこえるために何が重要かについて考えてみたいと思います。

「魔の川」を越えるためには、アイデアが思ったとおりに機能することを確認することが必要です。テストの結果によってはアイデアの見直しも求められる場合もあるでしょうから、アイデア自体を発想し、磨き上げることもこの段階に含めてもよいと思われます。すると、この段階で必要なことは、

・アイデアを出すこと

・よりよいアイデアを試験のために選抜すること

・アイデアが機能することをなるべく確実に、簡単に、速やかに確認すること

が重要になるでしょう。この段階を担当する研究者に求められることは、発想力、科学力(選抜の精度を上げる)、実験技術(確認技術)ということになると思われます。

「死の谷」を越えるためには、消費者にとって魅力的で品質の安定した製品が、現実的な価格で製造できることが必要でしょう。魔の川を越えてきたアイデアに対し、他の要素技術や既存の技術、あらたなアイデア(それ自体、別の魔の川を越える必要があるかもしれません)などを組み合わせて「製品」と言えるものに形作る必要があるでしょう。そうするとこの段階で必要なのは、

・組み合わせること

・改良すること

・少なくともプロトタイプの段階まで形にすること

・試作品の問題点を予知すること

・場合によってはあきらめる、やりなおす決断をすること(研究のリスクを低減するため)

ということになると思われます。もちろん科学的知識と能力は重要ですが、深い知識に加えて広い知識、こだわることと妥協することのバランス、製作技術(製品を作る技術)、製品の社会への影響を予測する能力、そして決断する力が求められるように思います。

「ダーウィンの海」では市場による淘汰が重要な因子になります。従って、ここで必要なことは競争に勝つことと言えるでしょう。

・類似製品に比べた優位性、消費者に対する魅力を獲得すること

・既存製品にとってかわること

・競争の少ない世界に進出すること

・競争のない世界、収益性の高いシステムを構築すること

が必要になると考えられます。要するにここでは、技術以外の部門をも結集する能力、ビジネスモデルを構築する能力、社会(消費者)の反応を正しくつかむ能力が重要になると考えられます。もちろんこの段階でも改良、決断の能力は重要ですが、技術以外の面まで判断の領域を広げる必要がある点が重要と思われます。

このように考えると、大雑把には、「魔の川」には科学技術力が、「死の谷」にはものづくり力、組み合わせ力が、「ダーウィンの海」にはビジネスモデルが大きな影響を与えると考えられると思います。もちろん、それぞれの段階でもアイデア→確認→実用化という小さなプロセスがあり、研究のフェーズも行ったり来たりしますので、上記の要因だけ、ということはないはずですが、ごく単純化すれば以上のような考え方になるのではないかと思います。少なくとも、例えば、いくら科学技術力に自信があるからといって、ダーウィンの海を越えるのに科学力だけに頼るわけにはいかないだろうこと、同様にものづくり力だけですべての障害をクリアできると思うことには危険が伴うように思います。さらに、オープンイノベーションによって、社外の能力を有効活用しようと思えば、どの障害を越えるためにどのような能力を持つ社外の資源を活用すればよいかの指針も得ることができるのではないか、とも思います。

今回の考察は私自身の考えの整理が若干不十分なまま書かせていただきました。研究のフェーズによってマネジメントすべき能力がどう変わるかについて考えることがありましたので、それを整理しておきたいという気持ちもあり、あえて書き残させていただいたものです。今後、さらに追加することや、考えが変わってしまうこともあるかもしれませんが、現在進行形の思いつきとして読んでいただければ幸いです。


参考リンク<2012.8.5追加>

1年後のTime誌「2010年のベスト50発明」

今年もTime誌の2011年ベスト50発明(2011.11.28号)が発表されました。その内容も興味のあるところですが、詳細に紹介して下さっている方がいらっしゃいますので[文献1]、ここでは少し視点を変えて、去年のベスト50発明が今どうなっているかを調べてみました。

調べたといっても、Googleの検索で何か新しい展開があったかどうかを確認してみただけですので、細かい点で漏れや抜けがあるのはご勘弁いただかざるを得ないですが、発明というものはどうやって育って、あるいは消えていくのかについてのヒントが得られるかもしれない、と思って試みてみました。結果としては、去年から情報が増えていないもの、ビジネスとして立ち上げる努力がされているもの、軌道にのっているように見えるものなどいろいろでした。以下に各発明についての調査結果を列挙しますが、Time誌記載順ではなく、その発明が現時点でどの段階にあるか(独断ですが)に基づいて区分してみます(No.は去年のTime誌記載の順位です)。なお、ここで「新情報なし」とは、Time誌の記事以降、目立った記事がないもの、その他のコメントを入れているものは、2011年に何らかの活動の情報があったものです。

アイデア・基礎研究段階の発明(技術未完成または市場性不明確)

No.1NeoNurture Incubator(古い車の部品を使って作った新生児保育器):新情報なし。

No.3First Synthetic Cell(初の人工合成細胞):新情報なし。

No.12Lab-Grown Lungs(実験室でラットの肺を幹細胞から再生):肺のラットへの移植を行ない、機能したものの血栓や出血の問題が発生。

No.13The Deceitful Robot(状況に応じて嘘がつけるロボット):新情報なし。

No.14Sarcasm Detection(皮肉を読み取れるソフトウェア):新情報なし。

No.15BioCouture(バクテリアがつくるセルロース繊維生地):研究継続中。Webサイトあり。

No.18The Straddling Bus(道路を走る車を跨いで走る立体バス):新情報なし。

No.373-D Bioprinter3Dプリンターで細胞を組み立てて臓器を作る):開発中。Webページあり。

No.40-41Body Powered Devices (身体の動きからのエネルギー回収):ピエゾ素子によるエネルギー回収技術開発中。Webページあり。

No.42Body Powered Devices (地下鉄からのエネルギー回収):新情報なし。

No.45The Malaria-Proof Mosquito(遺伝子操作で生み出したマラリアを媒介しない蚊):新情報なし。No.46The Mosquito Laser(蚊を選択的に攻撃するレーザー):新情報なし。

基礎技術は確立され、製品化・実用化を目指す段階の発明(少なくとも使える試作品があり、用途も想像できるもの)

No.2The (Almost) Waterless Washing Machine(ほとんど水を使わない洗濯機-ナイロンビーズで洗濯):開発継続中(実用化トライアル)。

No.4The X-51A WaveRider(超音速軍用機):開発中、2011.6月の試験は失敗。

No.7Lifeguard Robot(水難救助ロボット):新情報なし。

No.9The English-Teaching Robot(ロボット英語教師):新情報なし。

No.16Faster-Growing Salmon(遺伝子工学によって生まれた成長速度2倍の鮭):研究継続中。Webページあり。

No.17Road-Embedded Rechargers(道路に埋め込まれ、電磁誘導で電気自動車に給電するシステム):実用化試験中。

No.19Edison2(超軽量自動車):開発継続中。Webページあり。

No.20Antro Electric Car(軽量小型電気自動車、太陽電池、人力チャージつき):開発継続中。Webページあり。

No.24Amtrak’s Beef-Powered Train(列車燃料として牛脂からとったバイオディーゼル油を利用):1年間の実使用試験成功。

No.28Super Super Soaker(水の噴流で爆弾を処理する装置):新情報なし

No.29Martin Jetpack(一人用の飛行装置):高度5000ft(約1500mまでの飛行試験成功、開発中。

No.31Google’s Driverless Car(無人運転自動車):開発中。

No.32Deep Green Underwater Kite(水中に設置し海流で発電する凧のような装置):開発中。Webページあり。

No.36STS-111 Instant Infrastructure(無人飛行船):Argus Oneと改名、開発中。

No.38Spray-On Fabric(スプレーで布地、衣服を作る):開発中。Webページあり。

No.39Iron Man Suit(人のパワーを増強するロボットスーツ):新情報なし。

No.43Less Dangerous Explosives(安定性の高い爆発物-軍事目的):新情報なし、メーカーwebページあり。

No.44Terrafugia Transition(空飛ぶ自動車):米国政府が発売承認、2012年発売か?

No.47Power Aware Cord(電流が多く流れるほど明るく光るコード):新情報なし。Webページあり。

製品化・実用化済みの発明

No.5Responsible Homeowner Reward Program(住宅ローン返済を滞らせなければ返済額を割り引くシステム):実施継続中。Webページあり。

No.6Sony Alpha A55 Camera(半透過ミラーを使ったカメラ):販売中、上位機種α65、α77も発表。

No.10Square(スマートフォンでクレジットカード決済ができるアタッチメント):使われ始めている模様。

No.11Bloom Box(燃料電池):いくつかの企業に導入されているようです。

No.21Electric-Car Charging Stations(電気自動車充電設備):Timeで取り上げられたのはCoulomb Technology社ですがそれ以外にも多数あり。

No.22Sugru(接着性加工性耐久性に優れた粘土):市販されています。Webページあり。

No.25eLegs Exoskeleton(身障者用の歩行補助装置):実用化済み。Webページあり。

No.26Woolfiller(セーターの虫食い穴を補修する材料):実用化済み。Webページあり。

No.30Better 3-D Glasses(3D眼鏡改良版):市販中。

No.33Looxcie(耳につけるビデオカメラ):市販中、改良品もあり。

No.34iPad(有名なので説明省略!):販売中。

No.35Flipboard(情報を整理して見せてくれるiPadアプリ):iPhone版も発表。好評らしいです。

No.48X-Flex Blast Protection(爆風を防げる壁紙):販売中。Webページあり。

No.49EyeWriter(目の動きで文字入力ができる装置):実用化済み。ロボット操縦ができる改良品もあり。Webページあり。

No.50Kickstarter(ネットで資金調達できる仕組み):稼働中。Webページあり。

製品化前提でない発明

No.8The Plastic-Fur Coat(値札止め用のプラスチックピンを多量に刺したコート)

No.23The Plastic-Bottle BoatPETボトル船で太平洋横断)

No.27The Seed Cathedral(上海万博での英国パビリオン、種の入った樹脂ファイバーで飾られている)

1年という期間は研究開発の成果を論ずるには短すぎる期間と言えるでしょう。しかし、このように研究のフェーズに分けてみると、1年でどのような動きがあったかの傾向が見えるように思います。まず、アイデア・基礎研究段階の発明については、「新情報なし」のものが多い傾向にあります。もちろんこの中には、研究開発継続中で、単に新たな成果が得られるのに時間がかかっているものや、実用化を想定して結果を伏せているものもあると思われます。しかし、いくつかは研究が壁にぶつかったり、すでに開発を中止しているものもあるでしょう。この段階の発明は、不確実性が高く、短期間での評価も難しいことが言えると思います。次のフェーズ、すなわち製品化・実用化を目指す段階の発明については、「新情報なし」が1/3程度に減ります。このうち、軍事目的の3件については、意図的に発表されていない可能性もあるかもしれません。この段階の発明でも消えてしまったものもあるでしょうが、多くは開発をがんばって続けている印象です。次の製品化・実用化済みの発明については、すべてに新情報がありました。この段階の発明が消えてしまうとすれば、一旦市場に出た後、市場に受け入れられない場合、ということになるでしょうから、その結果が明らかになるためには1年という期間は短すぎると言えるでしょう。ただし、評判が高く、大きく伸びているものと、あまり発展していないものの差が出始めている印象は受けました。

研究開発の前に立ちはだかる壁については、以下のように言われることがあります(厳密な用語ではありませんが、私は次のように理解しています)。

魔の川:アイデア・基礎研究から実用化を目指した研究までの間の壁

死の谷:実用化研究から製品化までの間の壁

ダーウィンの海:製品が市場による淘汰を受けて生き残る際の壁

この考え方を1年後のTime誌ベスト50発明にあてはめると、いずれの壁も1年で越えられるものではなく、ドロップアウトの確率は、魔の川ではかなり高いということが言えそうな気がします。死の谷、ダーウィンの海でのドロップアウトの確率は魔の川よりは低いようですが、これは、単にあきらめる判断が1年ではできない、ということかもしれません。もちろん、Time誌のベスト50の選定自体、サンプルとして定量的な議論に耐えうるものではありませんが、研究におけるタイムスケールと不確実性のイメージを与える材料にはなりうるような気がします。5年後ぐらいに再調査したらどうなっているか、多少興味のあるところです。



文献1hiranoxxさんのブログ記事、「TIME誌が選んだ今年の発明品ベスト50 @2011」(その1~4)

http://ameblo.jp/hiranoxx/entry-11089069670.html

http://ameblo.jp/hiranoxx/entry-11089307539.html

http://ameblo.jp/hiranoxx/entry-11090865878.html

http://ameblo.jp/hiranoxx/entry-11090890548.html

参考リンク


 

事業創造人材とは

企業においてイノベーションをなしとげ、新しい事業を立ち上げる人々は、どんな人たちなのでしょうか。最近ネットで取り上げられているリクルートワークス研究所レポート「事業創造人材の創造」の内容について考えてみたいと思います[文献1-5]

このレポートでは、「事業創造人材」すなわち「その企業でこれまでになかったやり方で、新しい事業を立ち上げるか、海外への進出を主導した人物」を調査して見出された特徴がまとめられています。既存企業の中で新規事業を創造した人物が調査対象ですので、ベンチャー起業家は対象となっていません。また、この調査では、新規事業を「顧客・市場の変化を手掛かりに、新しく社会が求めている『価値』が何であるのかを定義しなおし、それを提供し続けるために、どのようなデリバリーの仕組みを構築するか(すなわちマネタイズの方法)を新しく考えだすこと」と定義しており、新たな技術開発や発明は必須のものとはしていません。つまり、いわゆるイノベーションの事業化の段階に特化した調査と言えるでしょう。調査は15 人の事業創造経験者に対して行なわれ、インタビューと、事業に関する資料、対象者の発言や著作をもとにして、事業創造人材の特性を明らかにすることを試みています。イノベーションの実用化のためには事業化段階の努力も重要ですし、新技術が大きな役割を担わないイノベーションも存在しますので、いわゆる研究者が対象ではなくてもこうした調査の意義は大きいと思います。

早速、調査結果を見てみましょう。まず、著者らは、事業創造には、世の中や社会をどのように変えるかを明らかにする「Social Story」を語る「青臭い」部分と、どうやってその製品やサービスから利益を得るのかを明らかにする「Business Story」を語る「腹黒い」部分を併せ持つことが必要と述べています。著者らはこれを「青黒い」人材と称しています。

そして事業創造人材の特徴は次の5つの思考特性と、6つの行動特性で説明できるとしています。

思考特性(思想レベル)

1、より良い社会への信念:変えたい、変えるべき。よりよい社会のため、より顧客のため。どうなっているべきか。

2、経験に裏打ちされた自負:誰よりも経験豊か、考えている。正しい「有能感」。

思考特性(行動規範レベル)

3、強烈なゴール志向:なんとしても事業を成立させたい。必要なものと不要なものを冷静に判断し獲得または排除のために行動する。納得したらこだわることなく方向転換。

4、高速前進志向:大小の到達目標をセットし周囲と自分自身がいまやるべきことを明瞭にする。リスクを承知の上でまずは歩みを進める。

5、粘り強さ:批判、反対、圧力、妨害に屈しない。成功するまで行動しつづける。

行動特性(思想レベル)

1、常識の枠を超える:既存の前提に縛られず方法を考える。通例の制約から進んで逸脱する。別の側面から再定義し新たな機会を想定する。

行動特性(行動規範レベル)

2、手に入れる:必要な人を説得し、納得させ、味方にする。上長の役割や機能をうまく活用する。自分の能力の不足する部分で他者の能力活用に躊躇がない。既存事業で培われた組織能力を使って成長スピードを上げる。事業成長のために周囲の人間を育てる。

3、捨てる:目的合理的でない行動は切り捨てる。大局に関係ないことはメンツやプライドにこだわらず譲る。不要な雑音を無視しぶれない。

4、決める:要件を早く決め他者の迷いを払拭し行動スピードを上げる。自分が行なうこと、他者に任せることを明確に区別し守る。

5、宣言する:すべての要素が明らかになる前に何を選ぶか意思決定する。自分にできないこと、やらないことを周囲に知らせておく。アイデアやプランを早い段階でオープンにして育てる。

6、やめない:途中であきらめずに続けていれば失敗ではないと考える。途中に失敗があることは織り込み済みでいちいちへこたれない。

そして、このような行動特性のうち、「常識の枠を超える」「手に入れる」「捨てる」「決める」の4 要素については経験によって獲得し強化されることが明らかになったとしています。加えて、パーソナリティーの観点から事業創造人材には以下の特徴があることも指摘しています。

・際立った学習能力:ありふれた経験からでも優れた行動を学べる。

 →これは、業務の本質を身につけ「自負」といえるレベルまで高める能力と言えるかもしれません。

・跳ねっ返りな性格:信念につながる。つぶされない条件にもなる。

著者らは、このような性格を持っていることが前提となるため事業創造人材の意図的な育成は困難であり、事業創造人材に育ちうる人材を見つけておくことと、その跳ねっ返りの強さをつぶさないようにすることが人事上のポイントと述べています。

なお、これらの特徴を持つ人は、すぐれたリーダーというわけではないとも指摘しています。リーダーに必要とされる要素のうち、目標達成に強い関心を持ち、よい組織づくりや部下のマネジメント、メンテナンスには関心を示さない場合もみられるという点は注意が必要でしょう。著者らは、こうした事業創造人材の特徴を持った人は組織の数パーセントでかまわないとしていますが、要するに企業における事業創造の機会に十分なだけの数がいればよく、組織のマネジメントや立ち上げた事業を継続的にうまく運営していくためには必ずしもこうした人材でなくともよい、ということと考えられます。

調査結果は以上のような内容ですが、ここで挙げられた事業創造ができる人材の特徴は、だいたい経験的に納得できるようなものだと思います。いわゆる「やり手」といわれる人に対して多くの人が抱いている印象と近いのではないでしょうか。しかし、単なる「やり手」を超えて、事業創造を可能にする人材の場合には、自分個人の成果を求めることよりも、「青臭い」、社会のためを考える視点が必要とされる、ということと思われます。

ただ、この調査分析自体には、著者も認めるとおり[文献5]、いくつかの注意点があります。まず、サンプル数が少ないこと、業種に偏りがあること(今回調査は、電機メーカー、ネット関連、商社、広告のみ[文献4])の点で安易な一般化はできない可能性があります。また、今回は「事業創造」に成功した人の特性を調べていますので、逆に、このような特性を持った人であれば事業創造に成功できる、とは言えないことにも注意が必要でしょう(このような特性を持っているのに事業創造に失敗した人がいる可能性が検証されていない)。また、すべての人がここで挙げられたすべての特徴を備えているということもないと思われます(レポートでは、少なくとも過半数で認められた特性を抽出しているとのことです[文献4])。さらに、こうした特性の相対的な重要度についても残念ながらはっきりしません。仕事の種類や環境によってはマイナス面が現れてしまうような特性もあるのではないかと思われます。これらの問題点については、今後の研究に期待したいと思いますが、挙げられた特性はひとつの仮説として示唆に富んだものと言えると思いました。

もうひとつ興味深いと思われるのが、Dyerらによる「イノベーターのDNA[文献6]との比較です。Dyerらは25人の著名なイノベーターをはじめ3500人のイノベーティブな企業を立ち上げた、あるいは新製品を開発した人々の調査にもとづいて、彼らに特有な5つの能力として「関連づける力」「質問力」「観察力」「実験力」「人脈力」を挙げています。この調査対象は技術者よりであると思われる点で、白石、石原のレポートとは異なりますが、簡単に比較しておきたいと思います。興味深いのは、調査の目的は似ていると思われるのに、表面的な共通点が少ないことです。視点が違う、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、Dyerによる5つの能力のうち、白石、石原のレポートで指摘されているのは、「質問力」として挙げられた「常識にあらがう質問」が「常識の枠を超える」に近いこと、「人脈力」が「手に入れる」に近いこと、「実験力」が「高速前進志向」ぐらいでしょうか。ただし、Dyerらは、5つの能力の説明で、イノベーターは現状を変えたいと強く願っている、リスク・テイキングをする、変化よりも安定を好む現状維持バイアスを回避する、と述べていますので、「より良い社会への信念」「高速前進志向」「捨てる」とは近い要素が含まれているのかもしれません。また、Dyerらが「きわめてイノベーティブな企業の経営陣は創造的な仕事を部下たちに任せたりしない。みずからやる。」としている点も類似の要素と言えるかもしれません。ただ、大きく違うのは、白石、石原のレポートで「腹黒い」とされるような点がDyerらの指摘にないことです。白石、石原のレポートでは結果的に成功したとは言っても、批判や圧力に屈しない、ルールや社内秩序を無視する、独断専行、使えない資源の切り捨て、うまく立ち回って意志を通す、など、目的のためには手段を選ばないともとれるような「腹黒い」行動の例も挙げられているように思います。「青臭い」部分はDyerでも白石・石原でも指摘されていますので、ひょっとすると、アメリカでは日本に比べて「腹黒く」なくても事業創造がやりやすい環境にある、ということかもしれません(あるいは、「腹黒い」ことは指摘するまでもない当たり前のことかもしれません)。ひょっとすると、日本ではチャレンジすること自体のハードルが高いため、「腹黒く」ないとそのハードルが越えにくいと考えることもできるのではないかとも思います。もし、そうだとすれば、チャレンジしやすい環境さえ整えれば、「腹黒い」特性は必要ない可能性もあるかもしれません。

研究開発から事業を興す場合には「モノ」の要素が入ってきますので、ここで挙げられたような「ヒト」の要素が強くかかわる事業創造とは状況が異なる場合があると思われます。研究開発の世界でもこうした事業創造人材は求められているのかもしれませんが、専門性の育成には長期的な視点が必要ですので、よい組織づくりや部下のマネジメント、メンテナンスといった観点も必要になるでしょう。従って、「青黒い」人材が技術的イノベーションでも力を発揮できるかどうかはわかりませんが、研究と事業化の間に横たわる死の谷やダーウィンの海を越えるためには、このような事業創造人材の手助けが必要になる場合はあると思います。研究の事業化の際には、研究者でなくともこうした「青黒い」人材に業務を任せるべきなのか、研究者の中にもおそらくいるであろう「青黒い」人材を探すべきなのか、それとも、イノベーションを後押しするようなシステムを作ることによって「青黒い」人材に頼らずとも事業化ができるようにすべきなのか、という点も考えてみる価値があるでしょう。また、事業創造人材の特徴は、事業化をどのように進めるべきかの指針やハウツーにもなるかもしれません。研究を研究で終わらせないためにどうしたらよいかの示唆も含んだレポートだったと思います。


文献1:白石久喜、石原直子編、「事業創造人材の創造」、リクルートワークス研究所、2011.6.1.

http://www.works-i.com/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=883&item_no=1&page_id=17&block_id=302

文献2:石原直子、「企業内イノベーションを起こす人々『事業創造人材』が持つ11特性とは」、DIAMOND Online2011.9.29.

http://diamond.jp/articles/-/14198

文献3:白石久喜、「事業創造人材=『青黒い人』を組織はいかにして創造するか」、DIAMOND Online2011.10.13.

http://diamond.jp/articles/-/14392

文献4:石原直子、白石久喜、「企業内事業創造人材の特性と成長(前編)―15 人の企業内事業創造者への定性的調査による―」、Works Review Vol.6, p.22、リクルートワークス研究所、2011.5.30.

http://www.works-i.com/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=854&item_no=1&page_id=17&block_id=302

文献5:白石久喜、石原直子、「企業内事業創造人材の特性と成長(後編)―15 人の企業内事業創造者への定性的調査による―」、Works Review Vol.6, p.34、リクルートワークス研究所、2011.5.30.

http://www.works-i.com/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=855&item_no=1&page_id=17&block_id=302

文献6:ジェフリー・H・ダイアー、ハル・B・グレガーセン、クレイトン・M・クリステンセン著、関美和訳、「イノベーターのDNA」、Diamond Harvard Business ReviewApr. 2010p.36.

文献1,4,5のリンクが変わっています。以下の参考リンクをご参照ください。<2014.8.3>
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