研究開発マネジメントノート

研究開発とそのマネジメントについてのいろいろ

Porter

Thinkers50 -経営思想家ベスト50(2015年)

2年に一度発表される経営思想家のランキングThinkers50については本ブログでも2011年のリスト2013年のリストを紹介しましたが、2015年の結果が発表されました[文献1]。順位の決め方は前回同様、アイデアの妥当性、研究の厳密さ、アイデアのプレゼンテーション、アイデアの普及、国際的展望、アイデアの独創性、アイデアのインパクト、アイデアの実用性、ビジネスセンス、影響力を評価項目とし、webサイトでの投票と、Stuart CrainerDes Dearloveをリーダーとするアドバイザーチームの意見によってランキング化しているとのことです。

ベスト50のリストは以下のとおりです。以前のブログ記事同様、独断ですが、イノベーションに関する貢献が大きいと考えられる思想家に、◎(極めて重要)、○(重要)をつけてみました。なお、以下のコメントは、主にThinkers50webページの紹介に基づいていますが、それ以外の情報を加えているところもあります。

Thinkers502015年の結果(カッコ内は2013年順位、2011年の順位)
1、Michael Porter(7、5):5つの力のフレームワークで有名ですが、その後提唱したshared valueの概念は資本主義の再評価につながると期待されているそうです。
2、Clayton Christensen(1、1):◎、「破壊的イノベーション」理論の提唱者。2012年刊の「イノベーション・オブ・ライフ」は、本ブログでも紹介しました。
3、W. Chan Kim & Renée Mauborgne(2、2):○、「ブルーオーシャン戦略」の提唱者。現在はINSEAD Blue Ocean Strategy Instituteを展開。2015 Breakthrough Idea Award候補。
4、Don Tapscott4、9):○、デジタルネイティブ、ウィキノミクスで有名。ビジネスや社会への技術の影響に関する権威。新著「Blockchain Revolution」は2016年刊行予定。2015 Digital Thinking Award候補。
5、Marshall Goldsmith(10、7):エグゼクティブコーチ。360度フィードバック、MOJOで有名。近著はベストセラーの「Triggers:
Creating Behavior That Lasts--Becoming the Person You Want to Be」。
6、Linda Hill(8、16):○、ハーバードビジネススクール教授。専門はリーダーシップ。近著は「Collective Genius」。HBR掲載の同名論文(集合天才)は本ブログでも紹介しました。Innovation Award受賞。
7、Roger Martin(3、6):○、インテグレーティブシンキングで有名。A.G.Lafleyとの共著「Playing to WinP&G式『勝つために戦う』戦略(2013)」は本ブログで紹介しました。2015 Social Enterprise Award受賞(Sally Osbergと共同)。
8、Herminia Ibarra(9、28):INSEAD教授。リーダーシップを研究。近書は「Act Like a Leader, Think Like a Leader (2015)」。2015 Leadership Award候補。
9、Rita McGrath(6、19):○、「仮説のマネジメント」「仮説指向計画法(Discovery-Driven Planning)」で有名。2015 Strategy Award候補。近著は「The End of Competitive Advantage (2013)」。
10、Daniel Pink(13、29):「ハイ・コンセプト」「モチベーション3.0」で有名。近著は「To Sell is Human(人を動かす、新たな3原則)(2012)」。
11、Richard D’Aveni(17、21):戦略論が専門。Dartmouth大学教授。ハイパーコンペティションやコモディティ化などを検討。2015 Strategy Award候補。近著は「Strategic Capitalism (2012)」。
12、Eric Ries(-、-):◎、シリコンバレーの起業家でもある。リーン・スタートアップで有名。本ブログでも著書(「リーン・スタートアップ」、邦訳2012)を紹介しました。
13、Vijay Govindarajan(5、3):◎、本ブログでも、「リバースイノベーション」、「イノベーションを実行する」、「はじめる戦略」を取り上げています。2015 Innovation Award候補者。
14、Richard Florida(25、-):○、「The Rise of the Creative Class」著者。トロント大学Martin Prosterity Instituteディレクター。
15、Alexander Osterwalder and Yves Pigneur(-、-):◎、2015 Strategy Award受賞。「ビジネスモデル・ジェネレーション」でBusiness Model Canvasというツールを紹介。この本および近著の「バリュー・プロポジション・デザイン」を本ブログで紹介しました。
16、Amy Edmondson(15、35):ハーバードビジネススクール教授。チームワークを研究。近著の「Teamingチームが機能するとはどういうことか)」(2012)は本ブログで取り上げました。
17、Jeffrey Pfeffer(24、22):スタンフォード大学教授。権力の研究、事実に基づく経営、resource dependence theoryなどで有名。
18、Martin Lindstrom(-、-):ブランドのエキスパート。新著は「Small Data2016)」。
19、Pankaj Ghemawat(11、27):専門はグローバリゼーション。Stern school (New York)IESEビジネススクール(スペイン)教授。2015 Strategy Award候補。
20、Steve Blank(-、-):◎、リーン・スタートアップの基礎を築き、UCバークレー校で教え始めた起業家。共著に「The Startup Owner’s Manual (2012)」がある。
21、Teresa Amabile(22、18):○、ハーバードビジネススクール教授。創造性、モチベーションなどを研究。
22、Daniel Goleman(36、39):心の知能指数EQ(原著ではEIEmotional Intelligence)で有名。近著は「Focus: Hidden Driver of Excellence (2013)」。
23、Seth Godin(-、17):マーケティングのエキスパート。パーミッションマーケティングで有名。近著は「The Icarus Deception: How High Will You Fly? (2012)
24、Henry Chesbrough(37、38):◎、「オープンイノベーション」提唱。UCバークレー校外部教授。
25、Adam Grant(-、-):ペンシルバニア大(Wharton)教授。「GIVE & TAKE2013)」著者。
26、Erik Brynjolfsson & Andrew McAfee(-、-):MIT教授と研究員。デジタル技術の経済や社会への影響を研究。「機械競争」は本ブログでも紹介しました。
27、David Ulrich(30、23):人事、人材育成戦略が専門。2015 Breakthrough Idea Award候補。
28、Jim Collins(12、4):○、「ビジョナリーカンパニー」シリーズの著者。「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」は本ブログでも紹介しました。
29、Stewart Friedman(27、45):リーダーシップ、work/lifeの統合などの専門家。2015 Talent Award受賞。新著は「Leading the Life You Want: Skills for Integration Work and Life (2014)」。
30、Gary Hamel(19、15):プラハラードとの共著「コア・コンピタンス経営」で有名。
31、Lynda Gratton(14、12):ロンドンビジネススクール教授。近著は「Shift2011)」。
32、Sylvia Ann Hewlett(16、11): Center for Work-Life Policy(非営利シンクタンク)代表。
33、Fons Trompenaars(41、42):異文化間グローバル人材戦略を研究。
34、Morten Hansen(28、-):○、J.Collinsとの共著「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」を本ブログで紹介しました。
35、Tammy Erickson(29、33):職場における世代ギャップ、協力、イノベーションが専門。
36、Jennifer Aaker(-、-):社会心理学者。意思決定、ネットワークを通じたアイデアの移転を研究。
37、John Kotter(32、34):変革のマネジメント、リーダーシップ論で有名。近著は「Accelerate: Building Strategic Agility for a Faster-Moving World (2014)」。
38、Zhang Ruimin(-、-):HaierグループCEO2015 Ideas-Practice Award受賞。
39、Subir Chowdhury(40、50):シックスシグマの著書あり。ASI Consulting GroupCEOChairman
40、Nirmalya Kumar(20、26):タタグループのDirector of strategy。近著は「Brand Breakout (2013)
41、Sydney Finkelstein(43、-):リーダーシップ、戦略が専門。有能な経営者の失敗分析で有名。
42、Julian Birkinshaw(39、-):ロンドンビジネススクール教授。近著は「Becoming a Better Boss」。
43、Liz Wiseman(48、-):リーダーシップ研究のWiseman Group代表。2015 Leadership Award候補。
44、Doug Ready(49、-):International Consortium for Executive Development Research創立者。2015 Talent Award候補。
45、Umair Haque(35、49):コンサルタント。2015 Digital Thinking Award候補。
46、Hal Gregersen(-、-):◎、「イノベーションのDNA」共著者。2015 Leadership Award候補。
47、Anil Gupta(44、-):メリーランド大学教授。China India Instituteのアドバイザー。
48、Nilofer Merchant(-、-):○、近著は「11 Rules for Creating Value in the #SocialEra (2012)」。2015 Digital Thinking Award候補。スタンフォード大(Santa Clara)で教えている。
49、Whitney Johnson(-、-):Springboard Fund設立者兼Managing Director。「Disrupt Yourself (R): Putting the Power of Disruptive Innovation to Work」が2015年刊行予定。2015 Talent Award候補。
50、Amy Cuddy(-、-):社会心理学者。近著は「Presence: Bringing Your Boldest Self to Your Biggest Challenges (2015)」。2015 Leadership Award候補。

Lifetime Achievement Award
Henry Mintzberg氏に授与されています。また、今回新たにHall of Fameメンバーになったのは、Edger H Schein, Edward E. Lawler III, Andrew Kakabadse, Rosabeth Moss Kanter, Richard Rumelt, Ram Charanの各氏となっています(これらの諸氏はランキングには載りません)。
また、Distinguished Achievement Award受賞者のうち、上記ランキングに含まれていない方々は以下の通り。
Rader Thinker Award: Erin Meyer
(「Culture Map (2014)」著者)
Breakthrough Idea Award: Rachel Botsman
Collaborative Consumption

今回のランキングで注目すべきことは、イノベーションの方法論を議論した人々が高く評価されていることでしょう。リーン・スタートアップのBlankRies、ビジネスモデルキャンバスのOsterwalderPigneurはいずれもランキング初登場ですが、かなり高位にランキングされています。イノベーションに適した仕事の進め方が明らかになってきているということかもしれません。

ちなみに、Innovation Awardの受賞者と候補者リストは以下のとおりです。今回ランキング入りしたOsterwalderPigneur2013Innovation Award候補者に入っていましたので、要注目かもしれません。
受賞者:
Linda Hill(上記参照)
候補者:
Scott Anthony:「The First Mile」著者。
Alexa Clay & Kyra Maya Phillips:「Misfit Economy (2015)」著者。
Rowan Gibson:「Four Lenses of Innovation (2015)」著者。
Vijay Govindarajan(上記参照)
Gary Pisano:「Producing Prosperity (2012)」著者。
Alf Rehn:「Trendspotting (2013)」共著者。
Juan Pablo Vazquez SampereIEビジネススクール教授。


文献1:「The Thinkers50webページ
http://www.thinkers50.com/



持続的競争優位をもたらす戦略とは(ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2013年11月号より)

技術面における持続的な競争優位を確保することは、研究開発の目的のひとつとしてよく挙げられますが、ただ漫然と研究をしているだけではその目的は達成できないでしょう。企業の戦略に沿った研究を行うことや、研究活動自体を戦略的に進めることが必要とされるはずだ、ということは容易に想像がつきます。

しかし、どんな戦略に従うべきか、その戦略はどう立案すればよいのかについては必ずしも明らかではなく、特に、環境変化の激しい現代の経営環境の下では、持続的な競争優位という考え方も見直されているようです(例えば、本ブログ「『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄著)より」でも少しご紹介しました)。そこで今回は、最近の競争優位に対する考え方について、ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー201311月号の特集記事[文献1]に基づいて考えてみたいと思います。

「一時的競争優位こそ新たな常識 事業運営の手法を変える8つのポイント」、リタ・ギュンター・マグレイス著、辻仁子訳、p.32、(原題”Transient Advantage”, Rita Gunther McGrath, HBR June 2013
・「本当に持続する優位性を築ける企業は稀である。競合他社や消費者の動向はあまりにも予測が難しく、業界も刻々と変化しているためだ」。「実際には、戦略はいまでも役に立つ。・・・ただし、昔ながらの戦法に固執していてはだめだ。・・・先頭を走り続けるためには、常に新しい戦略的取り組みを打ち出すことで、多くの『一時的な競争優位』を同時並行的に確立し活用していく必要がある」。「どこで競争し、どのように勝利を目指し、いかに古い優位性を捨てて次の優位性へ移るのかが極めて重要になる」、「現状維持の戦略はもう通用しない」
・競争優位のライフサイクルは、開始、成長、活用、再構成、撤退の各段階からなる。競争優位の寿命が短い場合は、「ライフサイクルの初期と終末期のプロセスをより深く理解する必要がある」。
・7つの危険な罠(業務遂行の流儀を変えられない固定観念):1)先手必勝の罠(「ほとんどの業界では、先発優位は長続きしない」)、2)優勢の罠(現時点で優勢な「すでに確立された製品・サービスについては、それを改善するための投資が必要だとは考えない」)、3)品質追求の罠(「活用フェーズに該当するビジネスは、多くの場合、顧客が買いたいと考えるレベルを上回る品質を提供することに固執している」)、4)リソース囲い込みの罠(「新たなベンチャー事業にリソースを移そうというインセンティブが働かない」)、5)空白地帯の罠(「チャンスが到来しても、それが組織体制にフィットしなかった場合、組織を再編しようとせずに見送るだけ」)、6)帝国化の罠(「多くの企業では、マネジメントする資産や従業員が多ければ多いほど優れたリーダーだという図式が成立する・・・部下の囲い込みや官僚主義が助長され、現状維持への圧力が非常に強くなる」、7)散発的イノベーションの罠(組織的に新たな優位性を次々に生み出す仕組みを持たない・・・結果、イノベーションが個人主導で行われる散発的なプロセスとなる)
・一時的優位の戦略:1)業界ではなく競技場(市場)で考える(「業界レベルで分析しても全体像は見えてこない・・・顧客の『解決すべき課題』(jobs to be done)にその場で対応することを重視する」)、2)大きなテーマを設定して、実験を促す(「大きなテーマ・・・の範囲内で、さまざまなアプローチやビジネスモデルを組織内で自由に試させる」)、3)起業家精神の成長を促すような評価基準を採用する(例えば、正味現在価値(NPV)の代わりに、リアルオプション(将来本格的に関わる権利を得るための小規模な投資)の論理を使う)、4)エクスペリエンスとソリューションに焦点を当てる(「一時的優位の活用スキルが高い企業は、顧客の立場に立って、顧客が求めている結果を慮れる」)、5)強固な関係性とネットワークを構築する(「顧客との強固な関係を築くことが優位性の豊かな源泉になる」)、6)非情な業務再編を避け、健全な撤退策を学ぶ(「いかに混乱を最小にしつつ最大のメリットが得られる方法で撤退するか」)、7)初期段階のイノベーションに組織的に対応する(「最終的に優位性は消滅するという前提に立てば、次々と新たな優位性を生み出すプロセスを持たないのは賢明ではない」)、8)実験し、反復し、学習する(「新たな発見があるたびに針路変更したり重要度を変えたりするつもりでなければならない」)。

「戦略は価値観に従う 成功する企業セオリーが持つ3つの”sight”、トッド・ゼンガー著、倉田幸信訳、p.46、(原題”What Is the Theory of Your Firm?”, Todd Zenger, HBR June 2013
・「企業セオリーは価値創造をもたらす戦略行動の発生源なのである。企業セオリーは、地図なき領域へと踏み出す際に必要となるビジョンを提供し、不確かなものとならざるをえない戦略的実験の選別についてもガイド役となってくれる。」
・「自社のセオリーがどのくらい優れているかを判別するチェック項目:1)フォアサイト(フォアサイトが示唆するのは、予想される世界の将来像において、どのような資産買収や投資や戦略行動が価値をうみだすことになるか)、2)インサイト(組織の既存の資産と活動に対する深い理解に基づき、その企業だけに通用するもの)、3)クロスサイト(その企業だけが構築し、推進できる相互関係)。

「ケイパビリティこそ競争優位の源泉である 戦略の賞味期限が短くなった時代」、佐藤克宏著、p.60
・「企業が競合他社に対して持続可能な競争優位を実現していくためには、戦略それ自体も重要だが、事業環境の変化に合わせて機敏かつ柔軟に戦略をつくり変え、その戦略を確実に実行していく能力こそが重要となる。・・・ケイパビリティとは、競合他社に対する圧倒的な差別化による持続可能な競争優位を実現するために、企業それぞれが分野を特定して組織として構築するスキル」、「いわゆるスキルだけでなく、それを支える効果的な社内プロセスおよび各種ツールなども含まれる」。「スキルは、・・・暗黙知として構築してきたものである。それらを組織の形式知として定式化し、組織の各部門・各階層にわたる『共通言語』として定着させることによりケイパビリティとなる」。
・マッキンゼーにおけるケイパビリティの構築を成功させるための方法:1」自社の現状理解に基づく、独自のケイパビリティ構築プログラムの設計、2)実験的な導入によるプログラムの改良、3)改良されたプログラムの大規模な本格展開、4)展開の継続とプログラムの自己進化。

VCM:価値獲得モデルで戦略を考える 競争優位はエコシステムで決まる」、マイケル・D・リアル著、辻仁子訳、p.82、(原題”The New Dynamics of Competition”, Michael C. Ryall, HBR June 2013
・従来の戦略の考え方とは異なる新たな戦略のモデルとして提案されているVCMvalue capture model)とは、「立場の違い(企業、サプライヤー、顧客)にかかわらず、1つの業界に属するプレーヤーに働く競争要因はたった1つ」と考え、「その競争要因の強さは、あるプレーヤーが現在の当事者グループとともに生み出している価値と、別の当事者と組むことで生み出せるかもしれない価値との張力で決まる。実際に生み出した価値に対し、生み出せるかもしれない価値が大きければ大きいほど競争要因は強くなる。そして競争要因の相対的な強さに基づいて、各プレーヤーが獲得できる価値の大きさが決定する」、と考える。まだ完成された理論ではないが、戦略の影響の定量化が可能で、意思決定にも利用できると期待されている。

感想:VCMについてはこの論文だけではよくわからないところが多い、という印象です。現段階ではVCMの成果から何かを学べるというものではなさそうですが、経営戦略のモデル化がはたして有効なのか、今後の発展には注目が必要かもしれません。

GEの競争優位はなぜ持続するのか 戦略論の系譜から読み解く」、森本博行著、p.96
・「競争優位が持続できずに一過性で終わる多くの場合は、意思決定や経営劣化の問題に起因するが、組織として戦略を一貫性のある価値観の体系へ再編成し、意識的に構築した柔軟性によって創発された新たな形で導入できなければ、競争優位を持続させることはできない。有効な戦略策定プロセスのドライバーとなるのが基本理念である。」「GEは持続可能な競争優位を時代の変化に合わせて強化してきたのである。このシンプルで確かな基本理念こそ、持続可能な競争優位の源泉である」。
・「日本企業は総じて従来の競争優位を質的に転換強化させることができていない。その理由の第一は、日本企業におけるコンセンサス・マネジメントが経営劣化を招いていることにある。・・・組織内調整、株主価値を過剰に意識した数値分析過多の戦略計画の策定などによって事業部門も本社部門も柔軟性を失い、創発戦略で本来発揮すべき時間や精力を削がれている。」

「世界の同族企業からしたたかさを学ぶ」、ニコラス・カシャナー、ジョージ・ストーク、アラン・ブロック著、編集部訳、p.112、(原題”What You Can Learn From Family business”, Nicholas Kachaner, George Stalk, Alain Bloch, HBR Nov. 2012
・「好景気の時は、同族企業は株主構成が分散している非同族企業に比べ、業績がよくないことがわかった。しかし、不況になると、同族企業はそうでない企業よりもはるかに業績がよい。」「同族企業は業績よりも再起力(resilience)を重視する」「同族企業の経営者は、10年ないし20年先を見て投資することが多い。それは次世代に利するためにいま何ができるかを重んじるからだ。また、プラス面よりもマイナス面に何とか対処しようとする傾向がある。たいていのCEOが好業績を挙げて名を成したいと考えるのとは対照的である」
・同族企業には、好況時も不況時も質素倹約、設備投資のハードルが高い、負債がほとんどない、買収をあまりしない、多角化しているケースが多い、グローバル化が進んでいる、人材の定着率が高い、といった特徴がある。
・「『経営者はオーナーのように考えよ』といわれるようになってから久しい。同族企業の行動原則は、そうした思考をどのようにして実際の戦略に転じればよいかを教えてくれる」
―――

競争優位の戦略といえば、ポーターの枠組みが有名ですが、こうした論文を読むと、もはやその考え方だけでは不十分と思われます。実務的には、ポーターの枠組みはわかりやすく有効なものだと思いますが、おそらくその有効性は、その枠組みで有利な戦略を構築できるということから、戦略を考える上での基本(いわばチェックリストのようなもの)という位置づけに変わってきているのではないかと思います。時代が変われば、経営環境も変わる、従って、戦略も変えていかなければならない、ということが認識されつつあるということなのでしょう。従来の戦略の考え方に「時間」という要因を加えること、環境との相互作用や、不確実性への対処も戦略に求められるようになってきたということかもしれません。研究開発の進め方も「研究戦略」であるなら、研究戦略の枠組みとはどのようなものか、考えていく必要があるように思います。

文献1:「競争優位は持続するか」(各論文の表題、著者は上記記事をご参照ください)、Diamond Harvard Business Review, November 2013, p.32-118.


Thinkers50 -経営思想家ベスト50(2013年)

Thinkers50は、2年に一度発表される存命中の経営思想家のランキングです。本ブログでも2011リストを紹介しましたが、先日2013年の調査結果が発表されました[文献1]。評価項目は、アイデアの妥当性、研究の厳密さ、アイデアのプレゼンテーション、アイデアの普及、国際的展望、アイデアの独創性、アイデアのインパクト、アイデアの実用性、ビジネスセンス、影響力で、前回同様webサイトでの投票と、Stuart CrainerDes Dearloveをリーダーとするアドバイザーチームの意見によって順位が決定されています。

学問的な観点からの経営学者の評価ではありませんが、実務家から見た評価や最新の考え方の動向を知る上で参考になるのではないかと思います。前のブログ記事同様、独断ですが、イノベーションに関する貢献が大きいと考えられる思想家に、◎(極めて重要)、○(重要)をつけてみました。以下のコメントは、主にThinkers50webページの紹介に基づいていますが、若干追記させていただいたところがあります。ベスト50のリストは以下のとおりです。

Thinkers502013年の結果(カッコ内は2011年の順位)
1、Clayton Christensen(1):◎、「破壊的イノベーション」理論の提唱者。2011年につづく連続第1位。2012年刊の「イノベーション・オブ・ライフ」は、Thinkers50 Best Book Award候補。
2、W. Chan Kim & Renée Mauborgne(2):○、「ブルーオーシャン戦略」の提唱者。現在はINSEAD Blue Ocean Strategy Instituteをマレーシア、南ア等に展開。Thinkers50 Global Solutions Award候補者。
3、Roger Martin(6):○、インテグレーティブシンキングで有名。A.G.Lafleyとの共著「Playing to Win(邦訳、P&G式『勝つために戦う』戦略)(2013)」がThinkers50 Book Award受賞。
4、Don Tapscott(9):○、デジタルネイティブ、ウィキノミクスで有名。ビジネスや社会への技術の影響、イノベーション、メディア、国際化などに関する権威の一人。Thinkers50 Global Solutions Award受賞。

5、Vijay Govindarajan(3):◎、近著「リバースイノベーション」については本ブログでも取り上げました。Thinkers50 Innovation Award候補者。
6、Rita McGrath(19):○、「仮説のマネジメント」「仮説指向計画法(Discovery-Driven Planning)」で有名。Strategy Award受賞。近著「The End of Competitive Advantage (2013)」がBook Award候補。
7、Michael Porter(5):5つの力のフレームワークで有名。2005年のThinkers50トップ。最近では、shared valueの概念を提唱、企業は株主だけでなく社会にとっての価値創造も行なうべきと主張。
8、Linda Hill(16):○、ハーバードビジネススクール教授。Thinkers50 Leadership Award候補者。管理職、リーダーシップを研究。近著は「Collective Genius: The Art and Practice of Leading Innovation」。
9、Herminia Ibarra(28):「キャリア・チェンジ」で有名。Thinkers50 Leadership Award受賞。
10、Marshall Goldsmith(7):エグゼクティブコーチ、360度フィードバック、MOJOで有名。
11、Pankaj Ghemawat(27):Global Connectedness Indexにより、Global Solutions Award候補者に選出。
12、Jim Collins(4):○、「ビジョナリーカンパニー」シリーズの著者。最新の著作「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」がBook Award候補。
13、Daniel Pink(29):「ハイ・コンセプト」「モチベーション3.0」で有名。新著「To Sell is Human(人を動かす、新たな3原則)(2012)」がBook Award候補。
14、Lynda Gratton(12):ロンドンビジネススクール教授。新著は新しい働き方を提示した2011年発表の「The Shift(ワーク・シフト)」。Global Solutions Award候補者。
15、Amy Edmondson(35):チームワークを研究。新著は「Teaming」(2012)。Leadership Award候補者。ハーバードビジネススクール教授。
16、Sylvia Ann Hewlett(11): Center for Work-Life Policy(非営利シンクタンク)代表。新著は「Forget a Mentor, Find a Sponsor」(2013)。
17、Richard D’Aveni(21):戦略論が専門。ハイパーコンペティションやコモディティ化などを検討。Strategy Awardの候補者。新著「Strategic Capitalism (2012)」がBook Award候補。
18、Marcus Buckingham(8):自分の強みを発揮する、という考え方で有名。新著は「Stand Out」。
19、Gary Hamel(15):プラハラードとの共著「コア・コンピタンス経営」で有名。
20、Nirmalya Kumar(26):ロンドンビジネススクール教授(マーケティング)から最近タタグループへ。
21、Nitin Nohria(13):ハーバードビジネススクール学部長。リーダーシップの研究者。
22、Teresa Amabile(18):○、ハーバードビジネススクール教授。創造性、モチベーションなどを研究。
23、Richard Rumelt(20):経営戦略論、多角化戦略、RBVResource Based View)で有名。Strategy Award候補者。新著は「良い戦略、悪い戦略」(2012年)。
24、Jeffrey Pfeffer(22):「権力」「事実に基づく経営」などが有名。
25、Richard Florida(-):○、「The Rise of the Creative Class」著者。トロント大学。
26、A.G. Lafley(-):○、P&GCEOを2010年に引退、R.Martinとの共著「Playing to Win(邦訳、P&G式『勝つために戦う』戦略」がThinkers50 Book Award受賞。2013年5月にP&Gに復帰。
27、Stewart Friedman(45):リーダーシップ、work/lifeの統合などの専門家。Leadership Award候補者。新著は「Baby Bust: New Choices for Men and Women in Work and Family (2013)」。
28、Morten Hansen(-):○、J.Collinsとの共著「Great by Choiceビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる)」がBook Award候補。UCBerkeleyおよびINSEAD教授。ボストンコンサルティング出身。
29、Tammy Erickson(33):職場における世代ギャップ、世代交代、労働力変化を研究。
30、David Ulrich(23):人事、人材育成戦略が専門。新著は「The Why of Work (2011)」。
31、Liu Chuanzhi(-):LENOVOの創業者。Leadership Award候補者。
32、John Kotter(34):変革のマネジメント、リーダーシップ論で有名。
33、Chip Heath & Dan Heath(-):本ブログでも「アイデアのちから」「スイッチ!」を取り上げました。
34、Sheryl Sandberg(-):FacebookCOO。「Lean In」でBook Award候補。
35、Umair Haque(49):コンサルタント。「The New Capitalist Manifesto (2011)」の著者。
36、Daniel Goleman(39):心の知能指数EQ(原著ではEIEmotional Intelligence)で有名。
37、Henry Chesbrough(38):◎、「オープンイノベーション」提唱。Innovation Awardの候補者。
38、Rosabeth Moss Kanter(25):企業変革、リーダーシップ、responsible capitalismなどを研究。
39、Julian Birkinshaw(-):ロンドンビジネススクール教授。HamelManagement Innovation Lab設立。
40、Subir Chowdhury(50):The Economics of Qualityの考え方でBreakthrough Idea Award候補。
41、Fons Trompenaars(42):異文化間グローバル人材戦略を研究。
42、Chris Zook(-):Bain & Coパートナー。新著「Repeatability (2012)」などで単純化の重要性を指摘。
43、Sydney Finkelstein(-):なぜ有能な経営者が失敗するかなどを研究。
44、Anil Gupta(-):H.Wangとの共著「Getting China and India Right」でGlobal Solutions Award候補。
45、Andrew Kakabadse(44):企業トップ層、取締役会、ガバナンス等を研究。Leadership Award候補。
46、Rakesh Khurana(41):リーダーシップ、CEO、カリスマなどを研究。
47、Celia De Anca(-):イスラム圏を含むグローバル化を研究。Global Solutions Award候補。
48、Liz Wiseman(-):Oracleの前役員。近著は「Multipliers」など。Leadership Award候補。
49、Doug Ready(-):International Consortium for Executive development Research創立者。
50、Wang Shi(-):中国の世界最大の住宅デベロッパーVanke(万科)創設者。

なお、野中郁次郎氏が、Lifetime Achievement Awardを受賞されました。また、今回から、Hall of Fameが設けられ、そこに選出されるとリストには載らなくなりました。今回発表されたHall of Fameメンバーは、Chris ArgyrisWarren BennisHoward GardnerCharles HandyRobert Kaplan and David NortonPhilip KotlerHenry Mintzberg、野中郁次郎、大前研一、Tom Petersです。Hall of Fameメンバー以外で、前回リストに選出されながら、今回選に漏れた人々の中には、Malcolm GladwellSeth GodinAdrian SlywotzkyStephen Coveyなどが含まれています。今回は実証的、実践的な思想家が高く評価されたということかもしれません。

今回の傾向として、前回よりもさらにイノベーションの重要性が評価されている印象を受けました。上位ランクの思想家にイノベーションを研究対象にしている人が多く選ばれたことは、その表れのように思われます。また、新興国を含めたグローバル化が注目されていることも今回の特徴でしょう。新興国への注目は前回リストでも見られましたが、今回は、中国の思想家が2人リスト入りしています。どちらも思想家というより、経営者としての実践面での評価が大きかったと思われますが、経営思想のグローバル化が今後も進んでいくことを示唆しているのかもしれません。これに対して、日本の思想家がHall of Fameの2名しかリストアップされていない、というのはやや寂しく感じられます。もちろん、思想が注目されることと、実践面で成功することは同一ではないとは思いますが、日本での成果を世界につなげていくことも期待したいところです。

なお、Innovation Awardの受賞者と候補者リストは以下のとおりです。上記の50名のリストには入っていない人もいますが、研究開発を考える上で要注目だと思います。
受賞者:
Navi Radjouthe Centre for India & Global Businessの前所長、Jaideep PrabhuSimone Ahujaとの共著「Jugaad Innovation: Think Frugal, Be Flexible, Generate Breakthrough Growth (2012)」、Prasad Kaipaとの共著「From Smart to Wise (2013)」が注目されています。
候補者:
Ron Adner:「The Wide Lens: A New Strategy for Innovation (2012)」著者。
Henry Chesbrough(上記参照)
Vijay Govindarajan(上記参照)
Hal GregersenChristensenとの共著「Innovator’s DNA: Mastering the Five Skills of Disruptive Innovators (2011)」著者。
Matt Kingdon:「The Science of Serendipity: How to Unlock the Promise of Innovation in Large Organizations (2012)」著者。
Kai-Fu Lee:北京のベンチャーキャピタリスト。「Making a World of Difference (2011)」著者。
Alexander Osterwalder & Yves Pigneur:「Business Model Generation: A Handbook for Visionaries, Gamechangers and Challengers (2010)」著者。


文献1:「The Thinkers50webページ
http://www.thinkers50.com/




ノート3改訂版:研究と競争相手

1、研究開発テーマ設定とテーマ設定における注意点

1.1研究活動における基本的な注意点

1)研究の必要性ノート1

2)研究の不確実性ノート2

3)研究と競争相手

研究を考える上で重要な基本的事項の3点目として、研究における競争相手の存在を挙げておきたいと思います。

企業活動においては他社との競争が日常的に発生しますので、本来は競争相手の動向に応じて自らの戦略を立てるべきであるはずです。しかし、研究開発を行なっているとつい競争相手への注意が疎かになることがあります。もちろんその結果として何ら問題が発生しなければかまわないわけですが、実際には不利益を生む場合もあります。

現代科学技術の特徴として丹羽は技術の普遍性を挙げています[文献1、p.11]。ここでいう普遍性とは、産業革命後、技術知識の体系化と公開化が進んだことにより、技術が広く世界中で高度に発展し普及するようになった[文献2、第3章(文献1、p.12]ことにより、技術が時間や空間の制約を超えて、世界万民に等しく開かれた状態となっていることを指しており、技術が普遍的であるということは、世界中の大学や企業研究所などで同じような技術の研究や開発が実施されている可能性が高いことを意味している[文献1p.12]、とされています。世界中で、というのはややおおげさなような気もしますが、少なくとも業界の先端に近い研究機関では、あちこちで同じような課題に取り組んでいることは実際によくあることで、似たような研究が似たような時期に独立に発表されるという例は、現代に限らず多く存在します。最近は世界全体の技術力の向上とともにコミュニケーションの発達もあって、このような競争状態はさらに起きやすくなっているのではないでしょうか。今回は、こうした状況下でイノベーションを進めるにあたってどのようなことに注意する必要があるかについて考えてみたいと思います。

例えば、何かのアイデアを思いついたとします。先行文献、特許を調べても同じアイデアは存在していないようです。この時、以下の3つの可能性が考えられるでしょう。

①今までにそのアイデアを思いついた人はいない(全く新規なアイデアである)

②今まさに他の研究グループで同じアイデアの研究が行なわれているが、まだ発表されていない。

③過去に同じアイデアを誰かが試してみたが、何らかの理由で発表されていない。

①の場合、非常に好ましいわけですが、残念ながら②と③でない、と断言することができないのが普通です。というのは、イノベーションが未知のことへの挑戦である以上、情報は十分には得られないのが普通だからです。(もちろん、①であったとしても、ノート2で述べたようにそれが好ましい結果につながるかどうかは不確実です。)

問題なのは②と③の場合で、②の場合には当然のことながら競争相手の動向に注意が必要になります(そのかわり、競争相手も狙っている、ということは①の場合よりも技術の成功確率は高いと考えられるかもしれません)。③の場合は、なぜ発表されていないかを考えてみる必要があります。可能性は2通り、誰かがそのアイデアを有効に活用しているがそれを秘密にしている場合と、試してみたがうまくいかなくてあきらめた場合となります。これらは至極当たり前のことなのですが、注意しなければならないのは、自分が思いついたアイデアについては、えてして①と思い込みがちなことで、その結果、開発に手をつけてから②か③であることがわかって開発戦略の見直しを迫られるということがあります。こうした見込み違いを完全に防止することは困難でしょうが、上記のような可能性があることを心がけておけば、的確な対応はしやすくなるものと思われます。

このような他社との「競争」の状態を理解するためには、ポーターの枠組みを利用するのが一般的な手法でしょう。競争を駆動する5つの力として、1、サプライヤーとの関係、2、買い手との関係、3、新規参入者、4、代替製品、5、既存企業間の競争状況を考え、それらに基づく機会と脅威を考慮して戦略を構築する[文献3、(文献4、p.93]という考え方は重要なものではありますが、こうした分析を実行しようとすると、各々の力に関する情報が必要となります。しかし、イノベーションを扱う場合、それ自身が不確定、流動的であったり、情報が公表されていない場合があるため、ポーターの枠組みが十分に利用できないこともあると思われます。イノベーションにおける競争を考える場合には、戦略構築のための外部の情報が少ない状況での判断が求められるわけです。

ただし、確かな情報はなくとも、競争相手の動向はある程度は推定できます。具体的には以下の2つのポイントを考えてみればよいと思われます。

・あるアイデアに必要な技術要素、資源が他社、あるいは過去において入手可能か

・あるアイデアを実現しようとするニーズが他社、あるいは過去において存在するか(したか)

もし、上記の両方ともがYesならば、他社も現在または過去に同じアイデアについて研究している可能性があると考えた方がよいでしょう。資源があり、ニーズがあるのに何もしていないということは考えにくいです。言い換えれば、他社(過去)にない要素技術、資源を用いているもの、他社(過去)にはないニーズに基づいたアイデアは自分たちのオリジナル(つまり上記の①)である可能性が比較的高い、と言えるのではないでしょうか。上記の2つのポイントの答えももちろん推定の域を出ないわけですが、他社におけるアイデア実行の有無そのものを推定するよりは易しいと思います。

このような競争相手の動向は、予測しにくいという意味でノート2で述べたイノベーションの不確実性の一部と考えることもできます。しかし、心がけてさえいれば、競争相手に伴う不確実性は、物や現象に伴う不確実性よりも予想しやすいのではないでしょうか。

以上のような競争相手の存在可能性について注意を払い、その動向を予測していれば、他社に出し抜かれる可能性について備えることができるし、他社と同じ失敗を繰り返すことによる痛手を軽いものにできると思われます。イノベーション実現という未来予測を当てる確率を高めるために、競争相手の存在を考えておくことは、重要なチェックポイントのひとつになると考えられます。

考察:競争を避けるには

上記の議論では、競争相手(実際に競争状態にあるかどうかに関わらず、同じようなことを考えているライバルも含めて)の存在を忘れないようにすること、その動向を予測することの重要性を述べました。しかし、競争を避けることができればより戦略的には有利です。

競争を避けようとする考え方としては「ブルー・オーシャン戦略」[文献5]が挙げられます。ブルー・オーシャン戦略は必ずしも研究開発を対象にしたものではありませんが、1)市場の境界を引き直す、2)細かい数字は忘れ、森を見る、3)新たな需要を掘り起こす、4)正しい順序で戦略を考える、5)組織面のハードルを乗り越える、6)実行を見すえて戦略を立てる、という6つの原則[文献5、p.43]により、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする[文献5、p.31]ことを目指しています。もちろん、研究においてもこの概念は役に立つとは思いますが、この戦略も上記のポーターの枠組みと同様、情報が少ない場合には効果が活用しにくいと思われます。さらにこうした戦略の発想では競争相手の未知の考え方というものが反映されにくいという問題点もあるでしょう。

そこで、競争を避ける方法、競争の少ないアイデアを得る方法を考えてみました。次のような方法であれば可能性がありそうに思いますが、いかがでしょうか。

・上記の、競争相手の動向を推定する方法を活用する:想定される競争相手が保有していないと考えられる技術要素、資源、競争相手が気づきにくいと考えられるニーズに基づくアイデアを採用する。

・非対称的モチベーション[文献6、p.42](不均等の意欲[文献7、p.114,501])を活用する:Christensenらによる破壊的イノベーションの理論において、不均等の意欲とは、「ある企業が、別の企業にはその気のないことをするときの状態[文献7、p.501]」とされています。破壊的イノベーションは、既存企業にとって魅力のない市場、気づかない市場に新興企業が参入することによって起こる場合がありますが、この時、既存企業は新市場に参入する意欲がないことによって、新興企業にとっては競争のない市場が生まれます。

・セレンディピティーを活用する:偶然が、自らと競争相手に同じタイミングで訪れる可能性は低いでしょう。従って、偶然によるセレンディピティーを活かすことができれば、競争相手との差別化が可能です。もちろん、偶然をコントロールすることはできませんが、偶然によるチャンスを生かす能力を磨くことによって、競争相手が保有しない技術要素を身につけられる可能性があります。

研究が本来的に持つ不確実性と、競争相手の存在を考えると、論理的な思考に基づいて立てた戦略が必ずしも有効であるとは限りません。もちろん、論理的な分析と思考が有効な場合もあり、そうした思考が状況の理解を深め、専門性を高めることにつながり、また新たなアイデアのヒントになることを考えると無駄とはいえませんが、自分が考えることは、たいてい競争相手も同じように考えているとすれば、論理的思考だけで競争相手より優位に立つことは難しいかもしれません。イノベーションの成功のためには、単に狙った技術を実現するだけではなく、競争相手より優れた価値を提供することが必要なことを考えると、まずは、競争相手の存在を認識し、その競争相手がどう動くかを予想し、それに対応した戦略を立てることが必要なように思われます。



文献1:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.

文献2:Drucker, P.F., 1961、上田惇生編訳、「テクノロジストの条件」、ダイヤモンド社、2005.

文献3:Porter, M.E., 1980、土岐坤、中辻萬治、服部照夫訳、「(新訂)競争の戦略」、ダイヤモンド社、1995.

文献4:Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、ジョー・ティッド、ジョン・ベサント、キース・パビット著、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.

文献5:Kim, W.C., Mauborgne, R., 2005W・チャン・キム、レネ・モボルニュ著、有賀裕子訳、「ブルー・オーシャン戦略」、ランダムハウス講談社、2005.

文献6:Christensen, C.M, Raynor, M.E, 2003、クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著、桜井祐子訳、「イノベーションへの解」、翔泳社、2003.

文献7:Christensen, C.M, Anthony, S.D., Roth, E.A., 2004、クレイトン・M・クリステンセン、スコット・D・アンソニー、エリック・A・ロス著、宮本喜一訳、「明日は誰のものか」、ランダムハウス講談社、2005.

参考リンク

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Thinkers50 -経営思想家ベスト50(2011年)

2011年のThinkers50リストが発表されました[文献1]Thinkers50は、2年に一度発表される経営思想家のランキングです。これは、webサイトでの投票と、Stuart CrainerDes Dearloveをリーダーとするアドバイザーチームの意見によって決定されるもので、アイデアの独創性、アイデアの実用性、プレゼンテーションスタイル、著作物、支持の強さ、ビジネスセンス、国際的展望、研究の厳密さ、アイデアのインパクト、教祖的な力に基づいて評価されるとされています。

単なる人気投票、流行を反映しただけのランキングと見ることもできるかもしれませんが、経営思想の最新の動向を知る上で参考になるのではないかと思いますので、以下にそのリストをまとめます。なお、独断ですが、イノベーションに関する貢献が大きいと考えられる思想家には◎(極めて重要)、○(重要)をつけてみました。独断のコメントもつけていますが、私の勉強不足で知らない点も多く、そういう方のコメントはThinkers50webページの紹介を参考にさせていただいいています。

Thinkers502011年の結果)

1、Clayton Christensen:◎、言わずと知れた「破壊的イノベーション」理論の提唱者。Thinkers50 Innovation Award受賞。

2、W. Chan Kim & Renée Mauborgne:○、「ブルーオーシャン戦略」の提唱者。Thinkers50 Strategy Award受賞。

3、Vijay Govindarajan:◎、GEとともに「リバースイノベーション」の考え方を発表。Thinkers50 Breakthrough Idea Award受賞。

4、Jim Collins:○、「ビジョナリーカンパニー」シリーズの著者。最新の著作では、不安定な環境で生き残れる会社を分析しているらしいです。

5、Michael Porter:5つの力のフレームワークで有名。Strategy Awardの最終選考候補者。2005年のThinkers50トップ。

6、Roger Martin:インテグレーティブシンキングで有名。Book AwardBreakthrough Idea Awardの最終選考候補者。最近ではデザインシンキングを提唱しているらしいです。

7、Marshall Goldsmith:エグゼクティブコーチ、360度フィードバック、MOJOで有名。Thinkers50 Leadership Award受賞。

8、Marcus Buckingham:自分の強みを発揮する、という考え方で有名。Leadership Awardの最終選考候補者。

9、Don Tapscott:○、デジタルネイティブ、ウィキノミクスで有名。Book AwardGlobal Village Awardの最終選考候補者。オープンイノベーションとの関連も。

10、Malcolm Gladwell:「The Tipping Point(急に売れはじめる~)」「Blink(第1感~)」「Outliers(天才~)」で有名なライター。

11、Sylvia Ann Hewlett:女性の能力活用や、才能を生かすマネジメントの専門家。Center for Work-Life Policy(非営利シンクタンク)代表。

12、Lynda Gratton:ロンドンビジネススクール教授。競争から協働に変わっていく、という主張。

13、Nitin Nohria:ハーバードビジネススクール学部長。リーダーシップの研究者。

14、Robert Kaplan & David Norton:「バランスト・スコアカード」の開発者。

15、Gary Hamel:プラハラードとの共著「コア・コンピタンス経営」で有名。

16、Linda Hill:ハーバードビジネススクール教授。管理職のあり方などを研究。

17、Seth Godin:「パーミッションマーケティング」「バイラルマーケティング」などで有名。

18、Teresa Amabile:○、ハーバードビジネススクール教授。創造性、モチベーションなどを研究。Breakthrough Idea AwardInnovation Awardの最終選考候補者。

19、Rita McGrath:○、コロンビア大学教授。「仮説のマネジメント」「仮説指向計画法(Discovery-Driven Planning)」で有名。Strategy Awardの最終選考候補者。

20、Richard Rumelt:経営戦略論、多角化戦略、RBVResource Based View)で有名。Strategy AwardBook Awardの最終選考候補者。

21、Richard D’Aveni:競争戦略が専門。最近では「脱コモディティ」など。Strategy Awardの最終選考候補者。

22、Jeffrey Pfeffer:「権力」「事実に基づく経営」などが有名。Leadership Awardの最終選考候補者。

23、David Ulrich:人材戦略が専門。GEWorkoutなどにも関わっていたそうです。

24、Tom Peters:「エクセレント・カンパニー」で有名。

25、Rosabeth Moss Kanter:ハーバードビジネススクール教授。企業変革、リーダーシップなどを研究。

26、Nirmalya Kumar:マーケティング、最近ではインドの経済発展を研究。Thinkers50 Global Village Award受賞。

27、Pankaj Ghemawat:「セミ・グローバリゼーション」(世界はフラットではなくローカル性も重要)を主張。Thinkers50 Book Award受賞。

28、Herminia Ibarra:「キャリア・チェンジ」で有名。Leadership Awardの最終選考候補者。

29、Daniel Pink:「ハイ・コンセプト」「モチベーション3.0」で有名。

30、Henry Mintzberg:「マネージャーの仕事」「組織の構造」などで有名。Strategy Awardの最終選考候補者。

31、Costas Markides:○、企業のイノベーションを研究、最近では社会問題への適用なども。Strategy Awardの最終選考候補者。

32、Thomas Friedman:コラムニスト。「フラット化する世界」が有名。

33、Tammy Erickson:職場における世代ギャップを研究。

34、John Kotter:変革のマネジメント、リーダーシップ論で有名。

35、Amy Edmondson:「チーム」の機能、「チーム」での仕事について研究。

36、Kjell Nordström & Jonas Ridderstråle:「ファンキービジネス」で有名。

37、Howard Gardner:「多重知能理論(Multiple Intelligences)」で有名。

38、Henry Chesbrough:◎、「オープンイノベーション」提唱。Innovation Awardの最終選考候補者。

39、Daniel Goleman:心の知能指数EQ(原著ではEIEmotional Intelligence)で有名。

40、Vineet Nayar:インドHCLテクノロジーCEO。従業員第一主義で成功。Book Awardの最終選考候補者。

41、Rakesh Khurana:リーダーシップ、CEO、カリスマなどを研究。

42、Fons Trompenaars:異文化経営論を研究。Global Village Awardの最終選考候補者。

43、Ken Robinson:創造性、教育論などを研究。

44、Andrew Kakabadse:企業トップ層、取締役会、ガバナンスなどを研究。

45、Stewart Friedman:リーダーシップ、work/lifeの統合などの専門家。

46、Adrian Slywotzky:「ザ・プロフィット」で有名。ビジネスモデルイノベーションなども。

47、Stephen Covey:「7つの習慣」で有名。

48、Sheena Iyengar:「決断」に関する研究で有名。

49、Umair Haque:新たな資本主義を研究。Breakthrough Idea AwardFuture Thinker Awardの最終選考候補者。

50、Subir Chowdhury:シックスシグマの入門書を出しています。

ベスト50のリストは以上です。どんな考え方の持ち主、どんな本を書いた人が支持されているのかはそれなりに面白いと思いますし、勉強にもなりました。ただ、ここで強調しておきたいのは、前回2009ランキングとの比較です。ちなみに、2009年ランキングでは、1位がプラハラード、2位がグラッドウェル(今回10位)、3位がポール・クルーグマン、4位がスティーブ・ジョブズ、5位がキム&モボルニュ(今回2位)でした。それと比較すると、今回はイノベーションに関連した研究者が上位に来ているのが特徴と言えるのではないでしょうか。今回1位のクリステンセンは前回28位、2位のキム&モボルニュは前回も5位でしたが、今回3位のゴビンダラジャンは前回24位、今回4位のコリンズは前回17位です。また、AmabileMcGrathChesbroughは前回はランクインしていません。つまり、イノベーションがマネジメントの重要課題として世の中の注目を集めるようになってきたのではないか、ということが今回のランキングから言えるのではないかと思います。

もうひとつ、インドの重要性が高まっているように思われる点が気になりました。インドに関係しているからという理由だけで「思想」の面で重要ということにはならないと思いますが、少なくともこのアンケートの投票者がインドに着目していること、また、中国や韓国にも着目していることが感じられるような気がします。今回は「イノベーション」が特徴になっていると思いましたが、次回は「新興国」がポイントになるのかもしれません。

こうした経営思想について、最先端の流行を追うことの自体の意味はそれほど大きくないかもしれません。ただ、リストの中に日本であまり大きくとりあげられていない思想家がいることなど(1位のクリステンセン自体、技術に関わる人以外では重要性の認識が低いように感じられますが)、世界の考え方のトレンドのようなものは知っておく必要はあるように思います。

なお、参考までに上記リストに含まれていない受賞者、最終ノミネート者も付記しておきます。将来注目を集めるようになるかもしれません。

Lucy P MarcusMarcus Venture Consulting CEOThinkers50 Future Thinker Award受賞。

・伊藤穣一:MITメディアラボ所長。Innovation Awardの最終選考候補者。

Linda Scott:オックスフォード大学教授。Breakthrough Idea Awardの最終選考候補者。

Ranjay Gulati:ハーバードビジネススクール教授。Future Thinker Awardの最終選考候補者。

Chip and Dan Heath:コラムニスト。Future Thinker Awardの最終選考候補者。

Sung-Joo KimSUNGJOO Group CEOFuture Thinker Awardの最終選考候補者。

Dong MingzhuGree Electric Appliancesプレジデント。Future Thinker Awardの最終選考候補者。

Haiyan WangThe China India Institute パートナー。Global Village Awardの最終選考候補者。


文献1:「The Thinkers50webページ

http://www.thinkers50.com/home

参考リンク

 

ノート3:研究と競争相手

ノート1,2にひきつづき、研究活動において基本的に留意すべき事項について考えます。

 

3)競争相手の存在

研究を行なう場合に認識しておくべき基本的事項の3点目として、競争相手の存在について考えてみたいと思います。

 

現代科学技術の特徴として丹羽は技術の普遍性を挙げています[文献1p.11]。ここでいう普遍性とは、産業革命後、技術知識の体系化と公開化が進んだことにより、技術が広く世界中で高度に発展し普及するようになった[文献2、第3章(文献1p.12]ことにより、技術が時間や空間の制約を超えて、世界万民に等しく開かれた状態となっていることを指しており、技術が普遍的であるということは、世界中の大学や企業研究所などで同じような技術の研究や開発が実施されている可能性が高いことを意味している[文献1p.12]、とされています。世界中で、というのはややおおげさなような気もしますが、少なくとも業界の先端に近い研究機関では、あちこちで同じような課題に取り組んでいることは実際によくあることで、似たような研究が似たような時期に独立に発表されるという例は、現代に限らず多く存在します。最近は世界全体の技術力の向上とともにコミュニケーションの発達もあって、このような競争状態はさらに起きやすくなっているのではないでしょうか。今回は、こうした状況下でイノベーションを進めるにあたってどのようなことに注意する必要があるかについて考えてみたいと思います。

 

例えば、何かのアイデアを思いついたとします。先行文献、特許を調べても同じアイデアは存在していないようです。この時、以下の3つの可能性が考えられるでしょう。

①今までにそのアイデアを思いついた人はいない(全く新規なアイデアである)

②今まさに他の研究グループで同じアイデアの研究が行なわれているが、まだ発表されていない。

③過去に同じアイデアを誰かが試してみたが、何らかの理由で発表されていない。

 

①の場合、非常に好ましいわけですが、残念ながら②と③でない、と断言することができないのが普通です。というのは、イノベーションが未知のことへの挑戦である以上、情報は十分には得られないのが普通だからです。(もちろん、①であったとしても、ノート2で述べたようにそれが好ましい結果につながるかどうかは不確実です。最悪の場合、誰かが思いついたが、試してみる以前にダメだとわかって実行をあきらめたのかもしれません。)

 

問題なのは②と③の場合で、②の場合には当然のことながら競争相手の動向に注意が必要になります(そのかわり、競争相手も狙っている、ということは①の場合よりも技術自体の成功の確率は高いと考えられるかもしれません)。③の場合は、なぜ発表されていないかを考えてみる必要があります。可能性は2通り、誰かがそのアイデアを有効に活用しているがそれを秘密にしている場合と、試してみたがうまくいかなくてあきらめた場合となります。これらは至極当たり前のことなのですが、注意しなければならないのは、自分が思いついたアイデアについては、えてして①と思い込みがちなことで、その結果、開発に手をつけてから②か③であることがわかって開発戦略の見直しを迫られるということがあります。こうした見込み違いを完全に防止することは困難でしょうが、上記のような可能性があることを心がけておけば、的確な対応はしやすくなるものと思われます。

 

このような他社との「競争」の状態を理解するためには、ポーターの枠組みを利用するのが一般的な手法でしょう。競争を駆動する5つの力として、1、サプライヤーとの関係、2、買い手との関係、3、新規参入者、4、代替製品、5、既存企業間の競争状況を考え、それらに基づく機会と脅威を考慮して戦略を構築する[文献3、(文献4p.93]という考え方は重要なものではありますが、こうした分析を実行しようとすると、各々の力に関する情報が必要となります。しかし、イノベーションを扱う場合、それ自身が不確定、流動的であったり、情報が公表されていない場合があるため、ポーターの枠組みが十分に利用できないこともあると思われます。イノベーションにおいて競争相手の存在を考えるということは、戦略構築のための外部の情報が少ない状況で判断をしなければならない、ということを意味することになるでしょう。

 

ただし、確かな情報はないかもしれませんが、競争相手の動向はある程度は推定できます。具体的には以下の2つのポイントを考えてみればよいと思われます。

・あるアイデアに必要な技術要素、資源が他社、あるいは過去において入手可能か

・あるアイデアを実現しようとするニーズが他社、あるいは過去において存在するか(したか)

 

もし、上記の両方ともがYesならば、他社も今か過去に同じアイデアについて研究している可能性があると考えた方がよいでしょう。資源があり、ニーズがあるのに何もしていないということは考えにくいです。言い換えれば、他社(過去)にない要素技術、資源を用いているもの、他社(過去)にはないニーズに基づいたアイデアは自分たちのオリジナル(つまり上記の①)である可能性が比較的高い、と言えるのではないでしょうか。上記の2つのポイントの答えももちろん推定の域を出ないわけですが、他社におけるアイデア実行の有無そのものを推定するよりは易しいと思います。

 

このような競争相手の動向は、予測しにくいという意味でノート2で述べたイノベーションの不確実性の一部と考えることもできます。しかし、物や現象に伴う不確実性よりも、競争相手に伴う不確実性は予想しやすいと思われます。

 

以上のような競争相手の存在の可能性について注意を払っていれば、他社に出し抜かれる可能性について備えることができるし、他社と同じ失敗を繰り返すことによる痛手を軽いものにできると思われます。イノベーション実現という未来予測を当てる確率を高めるために、競争相手の存在を考えておくことは、重要なチェックポイントのひとつになると考えられます。

 

文献1:丹羽清、「技術経営論」、東京大学出版会、2006.

文献2Drucker, P.F., 1961、上田惇生編訳、「テクノロジストの条件」、ダイヤモンド社、2005.

文献3Porter, M.E., 1980、土岐坤、中辻萬治、服部照夫訳、「(新訂)競争の戦略」、ダイヤモンド社、1995.

文献4Tidd, J., Bessant, J., Pavitt, K., 2001、後藤晃、鈴木潤監訳、「イノベーションの経営学」、NTT出版、2004.


参考リンク

改訂版ノート3(2013.6.16)へのリンク
 

 

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