すえのぶけいこ「リミット・1巻」2010年F1シンガポールGP

2010年06月03日

リミット感想2

リミット(2) (講談社コミックスフレンド B)リミット(2) (講談社コミックスフレンド B)
著者:すえのぶ けいこ
販売元:講談社
発売日:2010-06-11
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果たして「リミット」のテーマは何なのか。
そのプロットは単純である。

みんな死んだ―。
見ないふりも、うわべの笑顔も、
ここでは何の価値もない。

突然のバス事故。生き残ったのは女子ばかり、わずか5人。
鎌を手にして絶対的権力を握った盛重は、
クラスで虐げられてきた日々の復讐を図る。
そして「恐怖」が事態をますます悪化させていく―。
(「リミット(2)」アマゾン内容説明より)


キャッチーなイジメという要素を捨て、枷を脱ぎ捨てた非常にシンプルなテーマ。「社会」である。

 少し思い出して欲しい。「ライフ」はイジメというプロットを隠れ蓑に、2人だけの確固たる価値共同体を作る話であった。価値共同体は社会とも言い換えることができる。「ライフ」の大団円の中で見過ごされていたが、実は主人公アユムは反体制的行動を徹底しているように見えながら、実は新たな、より理想的な社会を築きあげようとする微かな流れが存在していた。だがその流れは非常に弱弱しく、それがラストの「光になりたい」という象徴的な台詞へと繋がっていくのだ。
 この2人の確固たる社会というテーマは圧倒的な実在感をもって描き出されていたがために、「ライフ」を超えたすえのぶけいこ自身のテーマなのであろうと私は考えていた。だからこそ理想は理想のままにといった様な夢見がちなエンディングとなったのだろうと。
(余談だが、この素晴しいハッピーエンディングはライフのファンであった中高生には不評であったらしい。すえのぶけいこの願い空しく、主要な読者は彼女の漫画の苛烈な描写のみに歓喜していたに過ぎないというのか...)

「リミット」は、5人の登場人物が恐怖と権力によって縛られた共同体に「属して」展開していく物語である。これまでの作品のように独立して二人だけの世界、夢見がちな理想卿へ抜け出すことはできないことが冒頭から明示されている。ここまで示されては想像せざるを得ない。恐らく「リミット」は理想の社会を作る話なのだ。一巻の段階で、既に階級争いという寓話的な要素が前面に押し出され、この物語が象徴的エピソードのみで構成される荒削りな作品であることが暗示されている。それは仕方ないだろう。それほどまでに進歩的なテーマなのだ。
6月11日に発売される2巻に激越に期待する。



rar_dc2006 at 22:53│ 書籍(なんでもアリ) 
すえのぶけいこ「リミット・1巻」2010年F1シンガポールGP