model by Shoko
冬の日は早く落ちる
冬の日は早く落ちる
とは言うもののまだまだ昼間
宵までは持て余すほど時間があり
空には雲がびっしり敷き詰められてるが
外は明るい
休日の中心市街地は
色とりどりの人でごった返している
チェックインは先に一人で済ませた
フロントから部屋までの間
他の宿泊客に出くわすことは一切無い
チェックインが流石に早すぎたのか
廊下にはまだ部屋の掃除に勤しむ
年配のハウスキーパーの姿
部屋に入り思い出したかのように
携帯を取り出すと画面が明るく輝いている
到着しました
という文字が浮かび上がっている
駅まではホテルから歩いても
5分もかからない
15分もせず部屋は二人になっていた
建物からは閑散とした空気が変わらず漂う
束の間の手持ち無沙汰に襲われた僕は
翔子さん(仮名)が脱いだコートをささっと預かり
ハンガーにかける
それでもまだ手持ち無沙汰なのには変わりはない
張り詰めていたモノを
打ち破るように意を決し声を発した
では脱いで下さい
とつとめて感情をいれずに
翔子さんは
ハイ
とだけ言葉を発しコクリと頷くと
ペットボトルのお茶を
ゴクゴクと飲み込んだ
一緒にナニカも
飲み込んだかのように思えた
僕との約束の通り
翔子さんは窓の際に立った
僕はベッドに体をやり
これからの行為を収めるため
レンズを翔子さんへと向け
そのレンズ越しにただただ
翔子さんが動きだすのを待っていた
まずは身につけたアクセサリーを外す
両耳のイアリングそしてネックレス
次は何を外して
どこから服を脱いでゆくのだろうか
そんな妄想を描きながら
目の前でそれが現実のものとなってゆく
不思議な状況がそこにはある
翔子さんはそんな僕の想いなど知らず
一枚また一枚と服を脱いでゆく
いや
一枚
また
一枚
さらに
一枚
と
たっぷりと時間をかけて
いや時間がかかりながらも
服を脱ぎ捨てている
そんな翔子さんの行動を逃さないように
パシャリ、、、
パシャリ、、、
と
メトロノームのように
一定の拍子で刻まれる
無機質な音を部屋に脈打たせる
この部屋から発せられる音は
カメラの音と
脱ぐときに擦れる服と服、服と肌の音
あとは外から侵入してくる街のざわめきだけ
ただそれさえ鬱陶しくすら感じる
時間から考えても
ホテルにいる客はそう多くはない
そう多くはないと確信はしているけれど
もしかしたら窓際で脱ぐ君は
誰かの視線に止まるかもしれない
そう例えば斜め右にある部屋
最初から微かにカーテンは開かれている
今この時にでも名前も知らない
見ず知らずの宿泊客がそのカーテンを
あけ放ちそこにあると思いもしない
女性の体を一瞥するかもしれない
先ほどまで廊下にいた掃除の女性が
そのカーテンを直そうとして
見てしまうかもしれない
そういえばホテルの正面近くには
商業施設がその先には
マンションが見える
そこからもこちらは丸見えかもしれない
同じことは翔子さんも考えていたのかと思う
次の服を脱ぐまでに必ず間があり
窓の先をチラチラと見つめ
体は落ち着くことなく
ふとももには力がこめられ
揺れくねらしていた
脱いでる途中わずかに窓をあけた
にぎわう町の声と
部屋に満ちた熱気を
下げるかのように
冷たい冬の風たちが入り込んだ
声や風にさえ見られている感覚を覚える
ホテルの一室窓際部屋の隅っこで
恥ずかしさ耐え
絶え間なく体を捻らせながら
やめることもできるのに
そうすることもなく
好きなように
今まで着ていたものを
脱ぎ続ける翔子さんの姿がそこにはある
続く
続く