October 10, 2017

7SEEDS 外伝 中編 種子の行く先

【注意】この記事は 7SEEDS 外伝 のネタバレ記事です。【注意】

以下のあらすじは、7SEEDS 外伝 前編 New Teamからの続きです。

2017年9月28日発売 2017年フラワーズ11月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

※今回も60ページという長編です。
登場人物も、場面転換も多いので長文になっています。ご了承ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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夕方の5時の鐘が鳴る。村へ戻る合図の鐘だ。
花はその音を聞きながら村への道を歩いていた。
雨がポツポツと降っている。ここのところ、夕方はいつもそうだ。

「よお」
花の前に、涼が現れた。
「涼…、何…?なんの用…?」
花は答えながら身構える。逃げられる道を確保、すぐ動ける体勢を意識する。

「別にお前の顔なんか見たくなかったが、話があってきた。安居を、許してやってくれないか」
涼はいつもの通りの平然とした顔で、花に言った。
絶句する花の様子にお構いなしに、涼は言葉を続けた。
「おまえが許すと言えば、みんなも受け入れるだろ。おまえたちも、安居の力をうまく使ったほうがいい。もったいないだろ?」
「涼…」
花は苦い表情で言葉を返す。
「あたしは、あんたにも殺されそうになったんだけど」
「オレのことは関係ない。安居だけ許してやれ」
「命令?」
「あいかわらずうるさいな。…謝れというなら、そうする。悪かった」
涼はいつもどおりの表情のまま、謝罪の言葉を口にした。
「そんな、心にもないのがまるだしの顔で言われても腹が立つ。…帰って」
「まぁ、そうだろうな」

近くにいたまつりが、涼と花の会話に気づいて近づこうとしていた。

涼は、ナイフを取り出し、刃を出しながら言った。
「おまえが折れてくれれば…、と思ったんだが。じゃあ、消えてもらうほうが早いか…」
涼はナイフの刃を花に向けながら言った。
「おまえが、いなくなればいい」

涼がナイフを振り下ろす。
花が叫び声を上げながらナイフを避ける。
「やめろぉ!」
「いい加減、死ねよ」

涼のナイフが花に近づき、花は必死で涼の腕を押さえる。
そこに飛びこんできたのは、安居だった。
「涼!何をしてる!」
安居は、涼と花の間に割って入り、涼のナイフを弾き飛ばした。

「バカか!涼!やめろ!いいか、こんなことはもう!絶対に、オレは絶対に!許さないからな!」
涼はしらっとした顔で、弾き飛ばされたナイフを拾いながら言った。
「おまえのためにと思ったんじゃねえか…」
涼はナイフを拾うと、その場を立ち去った。
まつりは物陰から一部始終を見ていたが、あまりの光景に出ていくこともできず、真っ青な顔で立ち去る涼の背中を見ていた。

安居は、その場にうずくまる花に向き直り、言った。
「大丈夫か?ケガはないか?」
花は立ち上がり、無言のまま安居と距離を取った。

しばらくの沈黙の後、安居が口を開いた。

「…ずっと、おまえに謝りたいと思っていた。…おまえに、ひどいことをした。力づくで屈服させようとした。どう言えば…、何をすれば…謝れるのかわからないけど…」
安居は、花に向かって深く頭を下げた。
「本当に…すまなかった…」

花は驚きの表情で安居を見た。言葉が出てこない。
安居はずっと花の前で頭を下げ続けている。

花はゆっくりと口を開いた。
「…嵐が…、地下で助けてもらった、って。…その前から…何度も何度も命を救われた、って。いつもまわりを見て備えろって教わった、って。だから最後にダイを失わずにすんだ、って。
…それは、ありがとう…」

安居はおどろいた。花からお礼を言われるなど思ってもみなかったからだ。
安居はゆっくりと顔を上げた。

花は言葉を続けた。

「あなたたちの事情はいろいろ聞いたし、父がしたこともよくわかった。あたしの態度もダメだったと思う。もっとちゃんと、落ち着いて話し合えばよかった。…だから…、殺したいほど憎いとか、謝って欲しいとか、もう、思ってない」

安居は花の目を見た。
「ただ…、ただね…」
安居と花の視線が合う。
安居は、花の表情が歪んだのに気づいた。
苦いものを噛みしめているような、おぞましいものに怯えているような表情。

花は安居から視線を外して言った。
「…怖いんだよ。涼のナイフより、あなたを見るほうが怖い。あなたを見ると、首筋がゾッとして身体が固まる。今も足が震えてる。冷や汗が止まらない」
花は安居に視線を戻した。花の表情の上に、怒りが加わった。

「あの時、自分がどんな顔してたか、どんな力で押さえつけたか、わからないでしょう。…それは、あたしの中で、ずっと消えないと思う。だから、謝らなくていい。何かしようとか、思わなくていい。ただ…、近寄らないで」

花の話し声は、村へ帰ろうとしている桃太とちさの耳に届いた。
花の声に異常を感じたちさたちは、その場に現れた。
桃太は、安居を見てビクッ!と怯えたが、花に駆け寄り安居から守るように花に飛びついた。
尋常ではない桃太と花の様子を見て、ちさは悟った。

「花さん!それ、安居って人?!」
ちさはとっさに、手近な木の枝を武器に、安居の前に立ちふさがった。

「行って!花さん!あなたも、下がりなさい!」
「ちさちゃん、大丈夫だよ。…安居は、謝ってる」
「自分が楽になるために謝る人もいますから」
ちさは木の枝をなぎなたのように構えたまま言った。

花は安居に言った。
「安居…、桃太もそうだよ。あなたを見ると、ビクッとする。それは、そうそう消えない。…だからもう、近寄らないで」

安居は静かに答えた。
「わかった。…桃太…、すまなかった…」


安居は花たちに背中を向け、歩き出した。
安居は呆然としていた。
そして少しずつ、自分に向けられた感情について、理解した。

花の嫌悪感に満ちた顔。
ちさという、初対面の人間から向けられた、ケダモノを見るような目。
桃太の怯えた背中。
安居の耳の中で、花の「怖いんだよ」が響いていた。
安居は、打ちひしがれた。


安居が立ち去り、花の身体から緊張が去った。花はその場にへたりこんだ。
「花さん、大丈夫ですか!」
「ありがとうちさちゃん。…かっこいい」
ちさと桃太が花の身体を支える。熱い。
「…熱がありますね。戻って休みましょう」

ちさと桃太が花を支えて村へ向かって歩き出す。
途中で、まつりに出会った。
「手を貸してまつりさん。…まつりさん?」
まつりもへたり込んでいた。さっき見た涼の行動が、あまりにもショックだった。


安居と涼が村のそばへ現れたこと、涼が花を襲って殺そうとしたこと、花が倒れたこと、これらのニュースはたちまち村全体へ知れ渡り、動揺と怒りが駆け巡った。

「花!」
嵐が花の眠っているテントに走りこむ。
「花!…花…ごめん…ごめん…」
嵐は横になっている花を守るように、覆いかぶさりながら謝った。
「なんで、嵐が謝るの…」
「わからないけど…ごめん…」
「嵐…冷たいね。海は冷えるもんね」
「花を冷やすのにちょうどいい」
花は、嵐に抱きしめられて安心し、また眠りに落ちた。

ナツは思いがけない出来事に動揺して泣いた。

…なんで簡単に考えてたんだろう。自分も女なのに。
…ほんとはいい人だよ、とか。謝れば仲良くできるかも、とか。
…花さん、ごめんなさい…。

ハルは怒りのあまり寝込んでしまった。
「追い出せよ!野放しにしとくからだろ!ああ、オレも気分悪い。頭痛い!」
村に満ち溢れる怒りの声を聞きながら、まつりは頭を抱えていた。
ナツはそんなまつりを気遣った。
まつりは気丈に、ナツに返事をした。
「大丈夫だよ。ただ、なんか…ちょっと…自分が思っているより、ダメージ大きかったみたい…」


日が落ちてしばらくして、花は目が覚めた。
心の動揺が落ち着いたせいだろうか、熱もたいしたことがなさそうだ。
花の傍らでは嵐が眠っている。花は嵐を起こさないように、そっとテントを出た。

花は、気づいたのだ。
ナイフをむけた涼の目。涼の行動の意味。

花はまつりを探した。たいまつを手に、歩き回る。
まつりは、ナツと一緒にいた。

「まつりちゃん…ナッちゃんも…」
まつりは泣いていた。
「花さん…大丈夫?ごめんなさい…」
「ごめんなさい…」
まつりもナツも、顔を伏せたまま。花の顔をまともに見られない。
花は戸惑いながら話を続けた。
「なんでかみんな、あたしに謝る…。あのね、まつりちゃん。涼のことだけど」
「うん」
「久しぶりに会ったけど、相変わらずだったよ」
「うん」
まつりは返事をしてはいたが、顔を手で覆ったままだ。
「相変わらず、目だけ冷静で、キレたフリをする」
「フリ…?」
まつりが顔を上げた。
「怒って、銃やナイフをふりかざす、フリ。目的は別のところにある。たいてい…安居のため。多分、今思うと…だけど、涼は安居に、あたしを助けさせたかったんだと思う」

まつりとナツは、驚いて花の顔を見た。
花たち3人の背後へ、いつのまにか虹子が近づいていて会話に加わった。
「涼はそれ、いつも、バレてないつもりでいる」
「虹子さん!…まぁ、涼はホントに殺しにかかってる時があるから、厄介だけど…」
「涼くんは、こっそり優しいよ…」
いつのまにか、小瑠璃もそばに来ていて言葉を加えた。

小瑠璃は、自分が風車小屋から川に流された時の話をした。
その時は安居に助けられたのかと思っていたけれど、後からじっくり考えてみたら状況的に自分を助けたのは涼だとわかった、と。
「…でも、なんにも言わないんだよね」
「口ベタなのよ」
虹子も小瑠璃の言葉に同意した。

まつりは立ち上がった。
「火、貸して!」
まつりは松明を持ち、走り出した。その後をナツが追う。

まつりは必死で涼のもとへ走った。
涼は、ひとりで座っていた。
「涼くん!…涼くん、涼くん!」
「来るな。仲間はずれにされるぞ」

まつりは松明を適当な場所に置き、背後から涼に抱きついた。

「涼くん…涼くんは!やり方が、間違ってる!」
まつりは涙声だ。
涼は抱きつかれたまま答えた。
「…手っ取り早いと思ったんだが」
「間違ってる!誰にもいいことない。バカだと思う。けっこう、バカ!」
「おい」
涼は背後のまつりを振り返った。
まつりは振り返った涼の顔をつかんで、キスをした。
「…でも、愛おしい…」
涼は、まつりに顔を抱かれたまま、まつりの顔を見つめ返した。
まつりは泣きながら必死で涼に言った。
「あのね、口ベタなら、あたしが通訳するから。ちゃんと、ほんとの気持ち、みんなに…」
「誰が口下手だ」
涼は体全体をまつりに向け、まつりの頭に手を回す。
涼は、まつりに言葉を返すかわりに、濃厚なキスを返した。
まつりはされるがまま、涼に体を預けた。

「おい、涼!」
安居が涼に話しかけようとして、涼の濃厚なラブシーンを目撃し、動揺する。
「わぁっ!ごめん!」
安居はとっさに、涼とまつりに背中を向けた。
「花と、話せたか?」
涼はまつりから体を離し、平然と安居の背中に向かって話しかけた。
「ああ、おまえのおかげでな。色々はっきりしたよ。…それはいい。おまえが問題児だってことを忘れてたよ。2度とあんなことさせない。見張ってるからな!」

安居は言うだけ言って、その場を離れた。
まつりはつぶやいた。
「…安居くんて、鈍いのかな…」
「昔からな」
涼が応じた。
「鈍いくせに神経過敏で、判断力も行動力もあるのに、うっかりする。面倒見がいい分、寂しがりだ」
「…涼くん、詳しいね…」


花は、灯りも持たずにまつりを追いかけたナツをフォローすべく、カンテラを持って村を離れ、そしてナツに追いついた。
ナツは、まつりと涼の姿が遠く見える場所から、2人を見守っていた。
詳しい様子は見えないながらも、まつりと涼が仲良く寄り添っている姿を見て、ナツはホッとしていた。
そんなナツは1人ではなかった。すぐ近くに、カンテラを手にした新巻がいたのだ。
花は驚いた。
「ナッちゃん、灯りを…。新巻さん?!」
「大丈夫ですか?」
新巻は花を気遣った。
「はい」
「…殴りこみに来たんですが…、ナツさんに聞いたら、どうやら少し事情が違うらしい。どうしてほしいですか?花さん」
花は答えた。
「何もしないでください。あと、あたしと話を」


花はナツにカンテラを持たせ、新巻と一緒に村へ戻りながら話をした。
「花さんと、ゆっくり話してなかったですね…」
「あたし、新巻さんに、いっぱい、いっぱい、いっぱい、ありがとうって言いたかったです」

新巻は、花に、嵐に「花をダシにするな」と言われた話をした。
嵐の言葉に、心の底からビックリしたこと。
「花さんを守りたい」と思った気持ちは真実だった、でもどこかで、それを自分の目的のための理由にしていたのかもしれない、と気づいたこと。

「目的、ってなんですか…?」
花は、新巻の答えがうすうすわかっていながらも、尋ねた。
新巻は花の予想通りの答えを返してきた。
「多分…吹雪たちのところへ行くこと」
新巻は笑顔で言葉を続けた。
「今は、そう思ってないですよ。色々、わかったから。自分が幸せだったこと、まだ何もしてないってこと、自分のことが全然わかってないってことも、生きたい、ってことも…。だから、花さんには申し訳なくて…ほんと、すみません」
「新巻さん」
花も笑顔を向けた。
「守ってもらいましたよ、もう、とっくに。何度も何度も。命も、気持ちも、守ってもらいました。新巻さんは、人を幸せにできる人です」

そして新巻は、自分の次の目標について花に話した。
自分を知ること、そのために訓練をすること。
心が動くことがあったら、目をそらさない、決め付けないで、そのことについてちゃんと考えること。
花は、新巻の話を聞いて、嵐の言葉を思い出した。

「やっぱり新巻さん、バーサーカーですね」
花は、次の戦いへ挑もうとするバーサーカーへエールの気持ちを込めて、拳を突き出した。
新巻は、バーサーカーの意味がわからないながらも、花とよくそうしていたように、拳で応える。

そこへ嵐が飛び込んできた。
「病人が抜け出して何してるの!まったく…油断もスキもない!」
嵐は冗談ぽくも本気を滲ませながら、花を新巻から引き剥がした。


ナツはまつりと一緒に村へ帰るつもりで、遠くからまつりと涼を見守りながら待っていた。
そこへ蝉丸が現れ、ナツに話しかけた。
「…まつりは、腹くくったみてーだな。…ナツ、お前はどーよ?おまえって、実は安居に気があんの?」
「そ、そういうんじゃないんです…」
ナツは否定した。
「ただ…安居くんは、あたしのことをすごくダメだと思ってるから、少し悲しくなるんです…」
「ダメダメだからしょーがねーだろ?」
「そう、それです!蝉丸さんに言われても、あんまり悲しくないんですよ」
「ほう」
蝉丸はニヤリと笑いながら、ドヤ顔でナツに尋ねた。
「なぜに?ラブかな?」
「蝉丸さんもダメダメだから」
ナツの答えを聞いて、蝉丸は口をヘの字にしてナツの頭をグシャグシャにした。

蝉丸はナツの隣に腰を下ろしてつぶやいた。
「…難しいわな。…どっちの味方すりゃいいの…」
「それは、花さんですよ…」



新居作りは順調に進んでいた。
必然的に力仕事が多くなり、刈田の活躍場面が増える。
花と朔也の地上探索チームは、謎の黒いドロドロの物体を見つけ、村に持ち帰る。
蘭と虹子は、それが天然のアスファルトだと指摘した。
アスファルトの用途は広い。
防水材、絶縁材…それに、船の水漏れにも、新居の屋根にも使える。
村の作業に、アスファルトの掘り出し作業も追加された。


まつりの美容室が営業を開始した。
まずは茜と秋ヲがガラリとイメチェンする。
茜は今までよりもすっきり短いショートヘア、秋ヲは今まで長髪と髭で人相がよくわからないくらいだったが、まつりの手によってバッサリさっぱりと変えられ、シャープな雰囲気のビジネスマン風に仕上げられた。

「あら、男前に戻られましたね」
ちさが秋ヲを見て微笑んだ。
「なかなか、ウデがいい」
秋ヲもまんざらでもない表情で応えた。
「ふふ、タダでしてもらえるのも今のうちですよ。そのうち、お金の概念が出てくると思います」
「なるほど。…金儲けのことばっかり、考えてた時もあったな…」
「祖父はあなたを、政治家にしたかったんですよ」
秋ヲとちさのコンビも、なかなか息があってきた。



安居は、遠くから村を見ていた。
みんなが働いている。みんなで力を合わせて村を作っている。
安居は、思った。

…リーダーとして、みんなを率いて、とか。
…使命が…とか。
…そんなことより、オレは…きっと…。
…みんなで工夫して、考えて、働いて、作って。
…みんなで一緒に。
…あそこに、いたかった。
…自分で、失くした。

安居の視界が涙でぼやけた。



雨の量が増えてきた。
時間帯によっては、雨というよりも滝のような土砂降りになる。
佐渡は陥没した地面のおかげで島全体が二重構造になっているから、雨をしのぐ場所はたくさんある。しかし、水位が上がれば居られる場所も狭まってくる。
最初に新居の候補地にしていた場所も、水で埋まりそうになってきた。

「あそこまで水が来るとは。あゆさんが言った通りね」
蘭の言葉に、あゆが答えた。
「だって、あのあたり一帯の植物の種が、どれもこれも水に浮く仕様になってたから。彼らは、この大雨を待っていたのよ」

あゆの指摘通り、種子たちは水に乗って流れ出した。
しかも、ほのかに光っている。
あゆは言った。
「鳥や魚に食べられるためでしょ?それも、遠くへ行く手段だわ」

「ねぇ!ここからだとよく見えるよ!」
小瑠璃の案内で、みんなは少し高いところに登って、流れていく種子の集団を見守った。
山肌が、ほのかに光る種子に包まれながらゆらゆらと動いている。
綺麗だった。
みんな、種子たちを見ながらしみじみと感慨にふけった。

「…親と離れて、生きていけってことね」
「新天地にはいいことがある、そう信じて送り出す…」
「あたしたちと一緒だね…」

牡丹がつぶやいた。
「みんなの親御さんも、そう思って送り出したはずよ」

牡丹の言葉でしみじみするナツや蝉丸をよそに、嵐は冷めた表情で言った。
「そうかな…オレの親父も、そんなこと思ったのかな…」
「おまえの、パパ?聞いたことなかったな」
反応した蝉丸に、嵐は淡々と答えた。
嵐の父親は、家族のことに無関心な人だった。基本、家にいなくて、いたらいたで状況もわからず説教して、母が体壊して亡くなった時もほったらかし。母が亡くなる前から酒ばかり飲んでどうしようもないヤツだった、と。

「それ…聞いてたからじゃね?」
蝉丸が言った。
「世界が滅ぶんで、息子を氷づけにして国に渡す、でも誰にも言っちゃダメ…。おかしくなるヤツは、なるだろ」

花はハッとした。
「今思うと…嵐…、そうかも…」
嵐は、最後の夜の父親の背中を思い出した。
相変わらず飲んだくれて、酔ったまま、顔も向けずに父親は背中ごしにこう言った。
…『嵐…がんばれ…』

蝉丸は嵐に言った。
「そう、思っとけ」



水位の上昇は、あゆや虹子たちの予想を超えてきた。
新巻が犬たちの様子から、危険が迫っていることを察知する。
村は避難を開始した。村の備品、食料の在庫、個人の持ち物をまとめて移動を開始する。 刈田は「向こう側」の様子に気づいた。
火が動いている。安居と涼が、何かしている。

安居は、水の動きを読み、このままでは建設途中の村の新居まで水没することを察知していたのだ。
「あの岩山を崩そう。たまった水を、一気に海まで流せる。ありったけの火薬を、ぶちこむぞ」
安居は涼に手伝わせながら、岩山の爆破を試みる。
「くそっ…銃の弾丸が全部なくなった」
「だからそういうのはもう、いらないんだよ」
「外国行ったら、いるかもしれないだろ」
涼は、文句を言いながらも、安居と一緒に作業を続けた。

「何か、手伝えるか」
刈田が現れ、安居と涼に声をかけてきた。

「いつも焚き木をどうも。…あんたらに関わる気はないけど、これはオレたちのためなんだろ?新居を水に沈めたくないんで、協力させろ。人手もある」
刈田の後ろに、秋ヲや蘭、虹子たちもいた。

安居はすぐに指示を出した。

「印のところに、穴を掘ってくれ。大きさはどうでもいい、深さはできるだけ深く」
安居の指示にしたがって、みんながいっせいに作業に取り掛かる。
「火薬をつめる。水に濡らすな」
「火をつけたらあの丘へすぐ逃げろ。合図で一斉点火」

虹子がぼそりとつぶやいた。
「…なつかしい、この命令口調」

安居が叫んだ。
「3、2、1、点火!…走れ!丘の上に、駆け上がれ!」

爆発が始まる。岩山が砕け始める。
安居は、崩れていく岩山を見ながら、わかったような気がした。
これから、自分が何をすべきなのかを。
次号へ続く。
■あらすじINDEX
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