ネタバレ

February 10, 2015

7SEEDS 山の章15 地下の星座

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章14 残照からの続きです。

2015年1月28日発売 2015年フラワーズ3月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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虹子は1人、歩いていた。
巨大なミミズトカゲを避けてから、気づけばずっと坂を下っている。
いつのまにか、ゴトンゴトンという音が聞こえてきていた。

…ずっと、下へ下へと降りる道があるばかり…か。
…さっきから、何かずっと規則正しい音がしてるな。
…地下に、トンネルやら施設やらを作る時、一番問題になるのが、水だ。
…ひっきりなしににじみ出てくる地下水を、ひっきりなしに排水しなければならない。
…排水ができなくなれば、施設は水没する。

虹子は壁に手をついた。手がじわりと濡れる。
足元に排水溝がある。

…ここは、まだちゃんと排水ができてるんだな。この際、見てみよう。
…よく、これまで保ったよ。

地下への道を下り続けて、虹子は見つけた。
巨大な空間。
規則正しい音は、ここから聞こえていたのだ。

ゴトンゴトン。巨大な歯車のようなものがあちこちで動いている。
けれど空間が暗くて歯車の数も全体の構造もよく見えない。
水車だろうか?

…揚水?排水?発電?
…ポンプで汲み上げつつ、水車と併用、ってとこか。
…いくつか、止まってるぽい水車があるけど。

ゴトンゴトン、という規則正しい音の中に、時折ギギギとかゴギッというイヤな音が混じっている。

…これが、もし、全部止まったら。

空間を満たす音は、少しずつ破壊的な音に変わり始めている。
ゴゴゴ…ギギギ…ゴギッ…ギガガガ…。



源五郎は、メンバー全員への呼びかけを始めた。

「僕は、夏のチームの源五郎です。全員に呼びかけています。聞こえますか?
今、この佐渡島と鍵島で、みんなが迷っている状態です。
僕の声が聞こえたら、近くにお掃除ロボットがいるはずです。
小型の機械で、地面を這っています。
その機械で、相互に通信が可能です。探してください」

源五郎は呼びかけの中で、注意事項を繰り返した。
危険な生物、巨大なミミズトカゲやアリやクモがいること。
水のそばや湿度の高いところでは大丈夫だが、幻覚を見るので必ずマスクをすること。
お掃除ロボについていけば、通路に出られること。

「繰り返します。お掃除ロボットを探してください。ロボットの名前を知らせてください。
これは幻聴ではありません。
声が出せない場合はモールスでもいいです。何らかの合図を。
現在、全チームのメンバーが終結しているようです。みんな、無事で必ず会いましょう」

暗闇の中のハルと小瑠璃は、源五郎が全メンバーに話しかける声を聞いた。
お掃除ロボは遠くで小さく光っている。
その光は、当然のことながら視界を照らすには全然足りず、ハルと小瑠璃は、お互いの顔も足元すらも見えない。

「ハル、あたしたちもあのロボットのとこまで行こう。名前を聞かなきゃ」
「でも、足元が悪そうだ。…ちょっと、待って」

ハルは空間の音の反響から足場を耳で視た。
地面がところどころ割れていて、飛び石状態になっているとわかる。
お掃除ロボへの道は平坦ではない。足を踏み外せば、最悪、死ぬかもしれない。

「小瑠璃、オレを信用できる?…命が、かかっても」
「うん」
一瞬の躊躇もなく、小瑠璃は即答した。
「…そんな…簡単に」
「簡単なことだよ。大好きな人たちは、信じられる人たちだよ。命がかかった時も同じ。 今、ハルの顔は見えないけど、大好きだよ。…で、どうしたらいい?」

ハル、小瑠璃、そして犬のバツは、移動を開始した。
暗闇でも目が利くバツがまず先導。
バツの鳴き声を聞いて、ハルが小瑠璃に移動位置を指示。
そしてハルは小瑠璃の声に導かれて移動するという3ステップで、2人と1匹は移動を開始した。

角又は、ハルと小瑠璃のやりとりを聞き、あゆに話を振った。

「…信じるのはカンタンやて、あゆ。同じところで育っても違うもんやのう…」
「角又さん、ムダ口が多いわ。…バカな人を信じると巻き添え食って死ぬの。わたしはそのことも知ってるだけよ」

あゆは監視室内の書類をいろいろ見ている。
角又はモニターをチェックしつつ、機械類を見つつ、源五郎と情報交換をする。
源五郎は、お掃除ロボが鍵島にあることは当然として、なぜ佐渡島側にもいるのか、という疑問を口にした。


そうこうしているうち、地下で迷っていたメンバーが、源五郎の呼びかけに応え始めた。

「源五郎、蘭よ。ロボットの名前はアンドロメダ」
「お蘭さん、無事でよかった。刈田です」
「朔也デース!なかなか面白いトコデスネ」
「源五郎くん、聞こえる?」

源五郎が、目の前のモニターに映るロボットの名前を見ながら、メンバーの無事と位置を確認し、現状を把握し始めた。

現状はこうなっていた。
【鍵島サイド】
オリオン=秋ヲ・茜・桃太・鷭
アンドロメダ=蘭・牡丹・ちまき
ペガスス=蛍  蛍はアリの巣を抜けて、やっと建物の通路らしきところにたどり着いた
エリダヌス=ハル・小瑠璃・犬のバツ
ヘラクレス=刈田
ジェミニ=朔也
ケフェウス(コントロールルーム)=源五郎

【佐渡島サイド】
サブ調整室=ひばり
守衛室(?)多数の監視映像モニターが見られる部屋=角又・あゆ
アルゴ=藤子・ちさ
ペルセウス=ナツ・蝉丸
ロボなしで通風孔を移動中=新巻・花

鍵島サイドから佐渡島サイドへ移動中 ケンタウルス=嵐

嵐の名前を聞いて、茜が反応した。

「嵐?嵐くんって…花さんの?」

ハルが、その後に続く質問の答えを先取りした。
「みんなに報告。花は生きてるよ」
「新巻さんと一緒に、ここに来てます。すこぶる元気そうですよ」
源五郎が付け加えた。

花の無事を知ったメンバーの心の中に、じわりと感動が広がる。
そして、声だけの初対面のメンバーはお互いにあいさつを始めた。
藤子はすかさず、鷭ちゃんに直接声をかけて自己紹介した。

小瑠璃はハルに囁いた。
「…ロボットの名前が、全部、星座の名前だね」

源五郎がモニターとロボットの名前を見ながら、誘導を始めようとしたが、モニターの見取り図だけでは位置関係が把握しきれないことをつぶやいた。
平面図ばかりで高低差がわからない。

「…しかし、この図だと高低がわからないんです。近いように見えて、遠いのかも」
「モニターに画像が出てるのか?スクロールできねぇべ?」
秋ヲが、源五郎のつぶやきに反応する。

「スクロール?」
「画面に手を当てて…、あ、手袋は取れよ?で、窓を開けるみたいに横に…」
「うわあっ!」

源五郎は、初めてスクロールというものを知った。

「違う画像が出た!」
「そうそう、いろいろさわってみ?」

源五郎は、手を動かしていろいろスクロールを試してみた。
いろんな見取り図が出てきた。これなら、高低差も、フロアごとの位置関係もわかる。

源五郎はてきぱきと誘導を始めた。

「茜さんたち、僕より少し上にいます。西の階段を下りてください。研究室が並んでいるエリアに出ます。合流しましょう」
「お蘭さん、刈田くん、朔也くんは、深いところにいます。とにかく上へ」
「ハルたちは施設から離れてて深い。まず南へ向かって、上に」

小瑠璃が磁石を取り出して南を確認しようとしている横で、ハルは、ひっかかっていたことを嵐に質問した。

「嵐、花が死んだって聞かされてた、…って言ってたよな。それ、誰に聞いた?」
「安居と、涼に」
「ええっ?!会ったの?!」
「うん。…それで、ウチのチームと一緒に行動してた。ついさっきまで、安居と一緒にいたんだ」
「げえ…あいつらも来てんのかよ…。嵐、花と安居を、会わすなよ。…てか、いろいろあってさ」
「わかってる。ありがとうハル」

ハルの背後から、明るい声が聞こえてきた。
「あー!ほらほら、こっち!こっちだって!」
ハルは振り返った。
「ほら!やっぱ、人がいたじゃーん!」
ハルと小瑠璃は突然現れた人物を見つめて、目を丸くした。
その人物は少し下がって、物陰から人を引っ張り出してきた。

「涼くん涼くん、ほらほら!あたしのカンって、結構いいでしょ?ねー?!」
「小瑠璃…ハルもか…」

ハルは涼の顔を見て身構えた。無意識のうちに小瑠璃をかばって一歩前へ出る。
まつりは、小瑠璃の名前を聞いて、ハルとは別の意味で身構えた。

…こ、こるりちゃん!
…虹子さんが言ってた、涼くんの好みの女の子?
…たしかに、くりくり。で、ちんまりしてて、かわいい!
…でも、ここはひとつ、ヨメとして器の大きさを見せねば!

まつりは大きな声であいさつした。

「初めましてー!夏のBの、まつりでーす!
ちょっと臭いけどゴメン!まだ臭いよね?ミミズのフンにつかっちゃってさー!」

涼は傍らでまつりにツッコミを入れた。

「オレを嗅ぐな!」
「あたしと涼くんは、2世を誓った仲でーす!…みんなで、お茶しようよ!」
「おい、休んでばっかじゃねーか!」
「初対面なんだから、まずお茶よ!」
「離せ、オレは急ぐ」

ハルは涼とまつりのやりとりを見ていて、思わずつぶやいた。

「…涼…前と音が違う…ワーグナーがモーツァルトになったような…」
「なんの話だ?…まぁ、阿呆とつきあうのも面白いってことが、わかる程度には阿呆になった」

まつりがすかさずツッコミを入れる。
「阿呆って、あたしのこと?」
「おまえとか蝉丸とかおまえとか蝉丸だよ!」
小瑠璃とハルにくっついているお掃除ロボ、エリダヌスからもツッコミが入る。
「誰が阿呆だよ、聞こえてんぞ、涼!」
蝉丸の声だ。
蝉丸の声に重なってナツもまつりに声をかける。遠く隔てた場所で、ナツとまつりは当座の無事を喜び合った。

涼はハルに「安居を見なかったか?」と尋ねた。
ハルは「見てないし、見たくもない」とにべもなく答えた。

「佐渡へ続く水路を先に行ったよ。今、追いかけてる」
「嵐か」
涼が、お掃除ロボから聞こえる嵐の声に答えた。
「百舌…要さんにも会ったよ。ぶつかったんで引き離しはしたけど。涼、オレはあんたからも話を聞きたい」

涼が、源五郎に、佐渡への行き方を尋ねる。
源五郎が涼へ、佐渡への行き方を説明している最中に、それは起こった。

足元が沈み込むような縦揺れ。地響き。

源五郎が角又に呼びかける。
「角又さん、そっちも揺れましたか?」
「揺れたわい。…忘れてたけど、佐渡は半分沈んでんやったな。
…こっちは…大佐渡のほうは、大丈夫なんか?」

お掃除ロボを通じて、メンバー各人の所在がわかりつつある中、まだ、お掃除ロボと遭遇していないメンバーもいた。
流星とくるみ、安居、虹子、百舌。



流星とくるみは、大きな川のような水の流れのそばで、火を炊いて座っていた。
流星は、お掃除ロボのかすかな音に気づいて、くるみに言った。

「…さっきから、なんか聞こえるよな。あの上のほうの、穴のあたりから。…オレちょっと登ってみてくるわ」

心配するくるみを背後に、流星は「大丈夫大丈夫」と言いながら、音のする穴に手をかけて、よじ登り、中を覗き込んだ。

穴の中には、大量のアリがいた。
幸い、流星には気づいていない。
流星は注意深く中を覗き込む。
かなり奥のほうに、何か、円盤状の機械が見えた。音はそこから聞こえている。
はっきりと聞き取れないが、人の話し声のようだ。

流星はくるみの元に戻った。
そして、焚き火から松明を作りながら、言った。

「くるみ、ちょっと行ってくる。
なんか、でっかりアリがいて…でもその奥に、なんか、メカが見えるんだ。
音はそいつが出してる。それ、取ってくるよ。
なんとなく人の声に聞こえるんだ。ここから出るヒントがあるかも。
くるみをこんなとこに置いとけない。大丈夫、命にかえても、守るから」

くるみは、流星をまっすぐ見た。
そして、立ち去ろうとする流星の背中に向けて声をかけ、引き止める。
流星は、振り返ってくるみに笑顔を向けた。

「大丈夫だよ。絶対取ってくる、って。オレの運動神経、信じて!」
「行かないで!」

くるみの激しい声に、流星は驚いた。
くるみは、言葉を続けた。

「今…行こうとするのは、わたしと向き合うより、命を懸けるほうが楽だからでしょ?」
「え…?」

流星は固まった。

くるみは話を続けた。
自分の父もそうだった。仕事が忙しくて、いつも家にいない。
家族で話し合いたいことがあっても、母と祖母が揉めても、祖母が入院したり介護が必要になっても、いつも忙しいからと言って帰ってこない。
確かに、本当に仕事が忙しかったんだろう。
けれど、父にとってはそれ以上に、家族と向き合って問題解決のためのドロ沼に飛び込むよりも、仕事のほうが気が楽だったからだ。
家族のイヤな部分を見たり、苦しむ姿を見たりするのが、つらくてわずらわしいから。
そしてそれを本人は気づいていない。本当に忙しいからだと思い込んでいる。

「あなたも、そう!」

くるみは、いつのまにか泣いていた。

「今、やることができて、嬉しいと思ってる。ホッとしたでしょ?
わたしと子供に真剣に向き合うより、命を懸けてるほうが楽だから!
逃げてるの、それ。
怖いから。わたしのことが心配だから。どうしていいかわからないから。
…わたしも、怖いよ。でも、ちゃんと産みたい。だから、逃げないで。
かっこよく助けようとか思わないでいい。頼もしくオレに任せろとか言わなくていい。
一緒に、怖がって!!」
流星は身動きができなかった。

流星は、泣きながら訴えるくるみの姿を見つめた。
どっしりと、出産への覚悟を決めて、落ち着いているように見えていた、くるみ。
そのくるみが、自分の目の前で、出産の不安を泣きながら訴えている。
怖くてたまらないと言っている。
面倒がらずに、自分と向き合って欲しい、と訴えている。
言葉が突き刺さる。

流星は、くるみの言葉に返事ができないまま、棒立ちになっていた。
くるみは、なおも言葉を続けた。

「…でも、あなたは、だからこそ命を懸けるんだよ、とか思う?じゃあもう、何もかも、通じない!」

流星の脳裏に、高校時代のあの子の言葉が再び響く。

“流星くんは、ちゃんと関わるのが、イヤなだけなんだよ”

流星の目から涙がこぼれた。体も震えていた。

「ごめ…オレ…ダメで…」

流星は、やっとの思いで言葉を口に乗せる。
「…ダメなんだ…わかってる…オレ…本当に…ダメで…」

くるみは流星に向かって叫んだ。
「ダメだからイヤだなんて言ってない!ダメでいいから、寄り添ってって言ってるの! わたしと子供をちゃんと見て!かっこつけないで!」

流星は、くるみの前にへたり込んだ。情けない顔で、ボロボロ泣いた。
くるみもボロボロ泣いていた。
2人は焚き火の前で泣き続けた。



新巻と花は、通風孔の中を這って前進していた。
移動しながら、花は、新巻が意識を失っていた間の出来事をザッと話す。
お掃除ロボについてのいきさつ。お掃除ロボを通じて嵐と話ができたこと。
お掃除ロボのアルゴは、今は、藤子とちさの元にいること。
狭い通風孔の中を進みながら、でも、花に不安はなかった。
新巻と一緒にいる、そして、嵐も、すぐそばにいる。

そんなやりとりをしている中、新巻と花は、通風孔の出口にたどり着いた。
外は明るい。
新巻は「クモが出ませんように…」とつぶやきながら、通風孔の出口にはまっている鉄格子のようなものを蹴った。
鉄格子は勢いよく外れ、下へ落ちていった。



蝉丸は、突然の大きな物音に驚いて、振り向いた。
自分のすぐ近くに、大きな鉄格子のようなものが転がり落ちてきていたのだ。
危ねえ、どこから落ちてきた?とばかりにカッとして上を見た蝉丸の視界に、人の姿が。
通風孔から、新巻と花。下の部屋に、蝉丸とナツ。
4人は、出会った。



虹子も、お掃除ロボと遭遇した。そして源五郎に、地下の状況を告げた。
「…地下は、大変なことになってる。このままだと、この島も、佐渡も、沈むかもね」
次号へ続く。


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