ネタバレ

May 10, 2015

7SEEDS 山の章18 方舟

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章17 対峙からの続きです。

2015年4月28日発売 2015年フラワーズ6月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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花は、突然隔壁によって閉ざされてしまった新巻へと呼びかけていた。
「新巻さん!新巻さん大丈夫ですか?」

扉の向こうからは何の反応もない。どうやらこちらの声も届いていないようだ。
そうこうしているうちに、隔壁の向こうから、水が漏れてきた。

…この隔壁の向こうは、水であふれてるんだ!

花は動揺した。しかし、新巻は大丈夫だ、と花は自分に言い聞かせた。

…幻覚を見て意識のなかったさっきとは、違う。
…新巻さんは自分で対処できる人だ。きっと大丈夫だ。
…嵐も。
…ロボットがいなくなったら連絡が取れない。今、どうなってるの?
…2人とも、無事でいてください…。

花が想いをめぐらす中、蝉丸はロボットから伝わる音声を聞いている。

「おい!花!これ聞けよ!なんかビデオが見つかったみてーよ?」

蝉丸の声が聞こえないのか、ナツは花に、嵐はきっと大丈夫、と戸惑いながらも慰める。
「ありがとうナツさん。大丈夫だ、って信じるよ」
「は…はいっ!」
「聞けよ!女ども!」

蝉丸が女2人を促し、花とナツと蝉丸、そしてお掃除ロボでつながっているほかのメンバーも、情報の共有を始めた。



コントロールルームで秋ヲがみつけた「ラストメッセージ」の中に映っている2人の青年は、村上と柴田と名乗り、状況説明を始めた。

鍵島の人間は、ほとんどクモのエサになったかどこかに閉じこもっているかになってしまい、実質、誰もいない状態になってしまったこと。
そこで2人は、自分たちもいつどうなるかわからないし、禁止されていた佐渡側へ行ってみることにした、と語り始める。

そして、それ以降は、佐渡側へ行った時の記録映像と施設の監視カメラの映像を中心に、随時コメントが挟まれる形で映像が展開した。

村上と柴田は、大量に作ったお掃除ロボと一緒に、佐渡へ渡った。
佐渡へは、地下水を利用した水路を使って、丸いたらいのような形のボートで渡ることができた。 映像を見られない蝉丸たちは気づいていなかったが、蝉丸、ナツ、蛍が移動する時に使ったあのボートだ。

映像の中で、鍵島と佐渡の位置関係も図式化して語られた。

映像左端に鍵島。映像右端に佐渡。
佐渡は、上部に大佐渡、下部に小佐渡。
小佐渡は沈んでしまったので、それに伴って大佐渡も小佐渡も閉鎖されている。

佐渡と鍵島は直線距離にして約40キロ。
佐渡と鍵島との中間地点に、発電所と送水所がある。
そしてそれぞれが、何本もの電線や水路でつながっている構図になっていた。

村上・柴田は、とりあえず発電所に行ってみた。

「このへんにもお掃除ロボット放しとこうか」
「だな。もともとお掃除ロボット用の充電器があるから、どこでも行けるだろ」

発電所は何ら変わりなく稼動しているように見えた。
電気もつくし水道も使える。
けれど誰もいない…、と2人が思った時に、人の声がした。女性の声だ。

「それ、取ってくれへん?ドライバー」
「…どうぞ」

何らかの設備のメンテナンスをしていたらしい女性が、何かの設備の中から出てきた。
年齢は30代くらいだろうか、髪の長さは顎あたり、ゆるい癖っ毛、ちょっとのソバカスと眼鏡が愛嬌のある表情を引き立てている、親しみやすい雰囲気の女性だった。

「やっぱねぇ、あちこちゆがんできてるんやわ、小佐渡が沈んだせいで。
この施設は天然ガスが尽きない限り半永久的に動く…ってきいたんやけど、地殻変動があっちゃ、ね。
…どうもー。まだ、人がいてたんやね」
「まだ、人がいたんですね」

村上・柴田と女性は、ほぼ同時に、他に人がいたことへの驚きの声をあげた。

女性は村上と柴田を部屋に案内し、コーヒーを勧めた。
「僕ら、鍵島の技術者です」
「鍵島はどうなってんの?…最近っていうかもうずっと何の連絡もないし、誰も来えへんし、こっちから様子見に行った人は戻って来えへんし。
…結局、わたし1人になってしもたわ」
「…それが…みんな幻覚にやられて」

村上と柴田は、鍵島の様子を話した。
鍵島には、大型のアリやクモが現れるようになったこと。
クモは人間に幻覚を見せ、卵のエサにすること。
そして鍵島の大多数の人間は、その幻覚にやられてクモのエサになってしまったこと。

女性は、自分はそうした昆虫も幻覚も見ていない、と答えた。

それから、男2人はなんとか佐渡へ行く方法がないかと女性に尋ねた。
女性は、小佐渡は沈んでしまったけれど、大佐渡へは途中までなら行けると答え、2人を案内した。

女性の先導で、村上と柴田は幅広い水路の脇道を壁に沿って奥へと進んでいった。
水路脇は薄暗かった。女性の手元のライトと、壁に一定間隔で点灯しているライトのみが頼りだ。

「小佐渡は沈んでしもたから、電気も水も通信ケーブルも、何もかも切れてるけど、大佐渡は今も電気と水が行ってる。…けど、何の連絡もないし、人はいてへんのやろ」
「居住区やシェルターは、小佐渡側にありましたもんね」
「方舟も…な」
「方舟かぁ。よくみんな佐渡のことをそう言う…」

男の声を遮って女性が行く手を照らした。
「あそこや」

水路と、水路脇の通路全体を覆うように、大きな半円形の隔壁があった。
「あの隔壁は、佐渡側の指示がないと開けられへん」

3人は近づく。
半円形の隔壁の一部に、ほんの少しの隙間があった。
「…ゆがんできてるな」
女性が応えた。
「ああ、2年前にはなかった、隙間ができてる。沈んだ小佐渡に引っぱられてんねん。切り離す間ぁがなかったんやろな。このまま引っぱられ続けたら、いつか大佐渡の施設も崩れて水没する」

男2人は、この隙間を通って向こう側へ行けないものかと画策する。
「この隙間、通れませんかねぇ」
「ムリだ」
「ロボットなら」
「ムリだろ」
「分けたら?」
「なるほど」

男2人はお掃除ロボを、円盤部分とその上に乗っているドーム型部分を分割した。
それを隙間の向こう側に送り、隙間の向こう側へ腕を伸ばして、再度合体させた。

「それはお掃除ロボット?」
女性が2人の作業を覗き込んだ。
「カメラつきです。こいつをいくつか送り込めば、佐渡の様子が見られるかも」


それから数日、3人はお掃除ロボが送ってくる映像を観察した。
施設内は、無事に見えた。

「意外と無事だな。一見、何の被害もなさそうなところもある」
「そうでもないで」
男2人の楽観視を、女性が否定した。
「全体を支えている要の大柱群が、わずかに傾いてる。…これからどんどん傾いていくんやろな」

ふと、柴田がお掃除ボロの映像を覗き込んだ。
「ここは…どこだろう?」
暗い空間の中に、大きな球型のカプセルのようなものが設置されていた。
球型のカプセルの中央にはハシゴがあり、さらにその奥へ入って行ける構成になっているようだが、画面が暗くて中には何があるのか見えない。

「ペルセウスのカメラだ。ペルは今…どこ?」
柴田の声に応えて、村上がお掃除ロボの位置を確認する。

「えっ…?そんなバカな!ペルは小佐渡側にいる?!しかも、何もないはずの最深部だよ」

女性の顔色が変わった。
「ちょっと見せて。…方舟…無事だったんだ…」
「方舟?…それは、佐渡全体の比喩でしょ?」
村上と柴田が女性にツッコミを入れる。
人間をはじめ、あらゆる動物の受精卵や精子・卵子・植物の種子が保存されているジーン・バンク。
大佐渡のほうには、もしまだ生きてたら生体もいるはず。
それを総称しての、比喩だろう、と。

「そう…はじめは、それだけでええと、考えられてた。けど、考えてみ?
受精卵があっても母体がなけりゃ、人間にはなれへんやろ?」

「そりゃ…そうですよね。…まだ、培養液の中で人間を育てる技術はないですもんね」
「うん、だからね。…人を残さんとあかんやろ?」

村上と柴田の顔色も変わった。女性の次の言葉を待った。

「その奥には、人が入った冷凍カプセルが並んでる」
「ええっ?!」
「そんなの聞いてない!」

女性は独り言のように遠くを見ながら言葉を続けた。
「しかも、カプセルが間に合ってない。数が足りへん。ほやから…大人1人入るところに、子供やったら3人つめこめる…っちゅうことで、つまり…そこには、子供が105人、眠ってる」

画面の中の男2人、そして、お掃除ロボで情報を共有している全員の間に、戦慄が走った。
この戦慄の中にいない人間は。流星とくるみ。百舌。涼。嵐・安居・新巻。
それ以外の人間は、衝撃の事実の前に固まった。

村上と柴田は、それは鍵島の所長は知っていたのか、と女性に質問する。
女性は、あの所長は、資金集めのために顔が売れていて弁が立つ学者だから、お飾りとして据えられていただけで、計画の根幹については知らされていないと答えた。
方舟計画は極秘プロジェクト。
そもそも、子供を冷凍するというのは、人道的に問題があるだろうし、どこからその子供を集めるのかという反対も起きるだろうし、逆にウチの子を入れてくれというゴリ押しもあるだろう。

「方舟は、小佐渡と一緒に沈んだと思ってた。今の今まで。
方舟計画の関係者は佐渡にしかいてへんかった。鍵島の人には扱えん。
そもそもあの冷凍装置は不完全で、戻す機能がついてへん。…間に合わんかった。
とにかく冷凍した。いつか誰かが、戻してくれることを期待してな。
子供たちは眠ってる。もう、死んでるかもわからん。永久に眠ったままかもわからんな」

柴田が女性におそるおそる尋ねた。
「あなたは…何なんですか…?」

「わたしは、そのプロジェクトのリーダーだった教授の助手で、角又…角又理可子。
ちなみに、わたしの子供も入ってる。…ゴリ押ししたんでね」

角又。その名前を聞いて別の衝撃が走った。
あゆは、同じ部屋にいる角又の顔を見つめた。
角又は、食い入るようにモニター画面を見つめていた。

画像は、村上と柴田の2人だけ、最初と同じ部屋の映像へと戻った。

「映像はここまでです。僕らは今、理可子さんと一緒にいます。
人恋しいなんて思ったことのない人生なのに、今、人がいることがうれしいです。

僕らは、何とかして佐渡に行けないか、壁や扉を壊そうとしています。
ただ、そのことで、クモやアリを通してしまうかもしれないけど。

今、これを見ている人。佐渡がまだあれば、聞いてください。
その地下には、子供たちが眠っています。そのままだと、いつかすべてが崩れ、埋もれてしまう。
どうか、方舟を助けてください。

お願いしたいのは、まず、方舟を小佐渡から救い出すことです。
同時に、大佐渡を引っ張っている小佐渡そのものを、切り離すことです。
僕らもそれを目指しますが、到達できるかどうかは、わかりません。
更に、同時に、いくつかのポイントの隔壁を閉めて、水が入らないようにします。
その手順は、別フォルダに記しています。
どうか、お願いします。そして、気をつけて、未来の人。長寿と繁栄を」



秋ヲの声がお掃除ロボで拡散された。
「…終了だ。…ホントかね、これ」
蛍が、秋ヲのそばで言った。
「この2人…クモの巣の中にいた気がする…。結局、つかまってしまったのかな…」

「なんだよそれ!ガキを大量に残してどーしろっての?!誰が面倒見るの?」と蝉丸。
「でも…よかったですね」とナツ。
「よかった?!ホラーじゃねえか!」と蝉丸。
「だって…もう…あたしたちしかいないのかと思ったら…まだ、いっぱい人がいるんですね。…よかったです…」とナツ。
「そっか…よかったのか…よかったんだね…」と花。
「でも、今の話じゃ解凍できないみたいじゃない?」と藤子。
「こういうものが、どこかにあるとは思っていたけど…」と源五郎。

花は、腕組みを始めてブツブツ考え始めた。

「…確かに大佐渡は大陥没を起こしてる。まだ小佐渡に引っ張られてるんだとしたら、あの豊かな森も動物たちも、いつかは海に沈むってことか。
…今、佐渡にいるわたしたちには、それを止めることができる、ってことか…」

花のつぶやきに対して、秋ヲが冷静なツッコミを入れた。

「放っておく、って手もある。ここは危険すぎる、とりあえず逃げることだけ考えて、佐渡がどうなろうと知ったこっちゃねぇ、放っておく、っていう手だ。…どう思う?」
「いや…できるなら、助けたい」と花。
「あんたはそう言いそうだな、花。他には?」
「助けようよ」
声を上げたのは小瑠璃だった。
「あたしたち夏のAは…一般人を助けて導け、って言われて来た。
他のチームの人たちは逃げたらいい。でも、あたしたちは、そのためにここに来た、そう思う」
小瑠璃の言葉に、あゆ、源五郎、鷭が同意する。

「秋ヲ、放っとけばいいなんて、思ってないでしょ?」
「お蘭か。さて、他の意見は?反対する者は?
…別に、多数決じゃない、逃げる班とに、分かれてもいい」

「チクショー!イヤとか、言いにくいだろ?!ここまで足つっこんでんだし」と蝉丸。
「あたしは涼くんを捜すから、他は、まかす!」とまつり。
「OK。じゃあ、できるだけ力を合わせて、かつ、自己責任で、佐渡と子供たちを助けるとするか」

秋ヲがまとめた。方針は、決まった。

各自が動き始めた。
虹子は、地下の川に流れ込んでいるはずの地下水が、なぜ外へ流れ出ていかないのかを考え、状況を観察した。

「源五郎くん、多分、水車が崩れて、地下河川の入り口を塞いでいる。そのせいで水が流れて行かない。…取り除けないか、やってみる」
「気をつけて」

かたわらでその会話を聞いていた茜が、手伝いを申し出た。
「あたし、手伝いに行こか。…水の中で作業するんやったら、あたしが一番動けると思うわ」
準備を始めた茜に、源五郎が同行を申し出た。

「秋ヲさん、ここの指揮をお願いできますか?…本来あなたは、そういう人なんでしょ? 虹子さんのところまでのルートを出してください。覚えますから」



秋ヲは、パソコンの中に格納されているフォルダを次々に調べ始めた。
「さて…方舟を助けて、小佐渡を切り離す…やり方…どうせ手動だろうな…」

秋ヲが、佐渡側のサブ調整室にいる、ひばりに声をかけた。
「おい、ひばりさんとやら、そっちの大佐渡の南西のはしっこに、誰かいないか?」
「ロボットがいるけど…え…えーと、ループス?ボリューム大で、呼んでみる。
誰かー!誰かいませんかー!ループスの近くにー!」



着替えを終え、気まずく黙りこくって座っていた男3人。安居、嵐、新巻。
安居が反応した。

「…何か聞こえないか?」
「近くに、ロボットがいるのかも」
「ロボットってなんだ?」

「ねえみんな!涼くん見かけたら止めて!ピストル持って、百舌さん追っかけて行っちゃったの!」
「誰あんた、割り込まないでよ!」

女2人の大声がどこからかはっきりと聞こえた。
安居は言った。

「いろいろと問題が起こっているらしい。嵐、新巻、イヤだろうが、協力しろ」
次号へ続く。

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