ネタバレ

May 10, 2016

7SEEDS 空の章2 託すもの

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章1 底冷えからの続きです。

2016年4月28日発売 2016年フラワーズ6月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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角又は叫んだ。
「花!矢で送る!」

花はお掃除ロボからその声を聞いた瞬間、体が反射的に動いた。水路に浮かぶボートから陸へ、つまり角又とつながっているはずの通路へとよじ登った。

「や?や?で、おくる?」
戸惑う蝉丸の声に花は短く答えた。
「角又は弓の有段者!…1つ、ロボットください、投げて!」
「じゃあ、ボクのジェミニを」
花は、朔也が投げたお掃除ロボジェミニを受け取り、走った。通路の先の隔壁が下りはじめていて、もう一刻の猶予もない。
花はお掃除ロボを抱え、隔壁の隙間にスライディングの要領で滑り込んだ。

重い音を立てて隔壁が下りきった。
花は隔壁を見上げる。そこに、角又の矢が刺さっていた。
手を伸ばして届く位置よりも少し上のほうだ。

「フジツボみたいなのが隔壁にいっぱいついてる。…登れるかな…」

花は壁をよじ登り、無事に角又の矢についていたアイテムを手に入れた。
花は壁から飛び降り、お掃除ロボに向かった。

「角又…受け取った!カギは受け取ったよ、角又!」
「届いたか…」
角又の手元の弓は、砕け散っていた。しかし、クモの糸で作った弦は無事だった。

「すごい長距離弾だ。壁がなかったら余裕だったよ」
花の体は震えていた。
閉じてしまった隔壁の向こう側では、蝉丸が「どうやってこっち戻んのよ?」と騒いでいる。
蝉丸の声はお掃除ロボから伝わっているのだが、しかし花はとりあえずそれは無視して、角又との会話を続けた。

「角又…子供がいるって?方舟に?…びっくりした」
「オレもびっくりしたわ。さっきわかったとこやねん」
「それはやっぱり…あの…リカコさん…」
「そや。嫁にしょうと思てた人。そのつもりやった」
「角又姓を名乗ったってことは、リカコさんもそのつもりだったんだね」
「やな。普段は絶対、別姓にしたいて言うてたんやけどな」
「気持ちはちょっとわかる…気がする。角又へのメッセージにもなるしね。角又がこっち来るの、知ってたんだ?」
「やっぱりそう思うか?…オレも、そうやと思うわ」
「いつも飄々としてたけど…大事な人を残してきてたんだね」
「みんなそうやろ。…あんたみたいになんでも顔に出せへんわ」
「すみません」
「…今、そこにあんたがいてることに感謝する。あんたやったら…方舟を、なんとか助けてくれるか?花?」

花の体の震えが遠ざかる。

「角又…子供に会いたい?」
「全然ピンと来ぇへんけどな。…彼女の形見みたいな気ィがする」
「うん、わかった。…なんとかする」

花の体の震えは、止まった。

「て…、あんたが言うのもわかってるんや」

角又は言葉を続けた。

「すまん、自分は大丈夫か?方舟を何とか救出できても、あんたが死んだら、わしの寝覚めは悪いんやで?わしのせいやと思えるやんか」
「それは違う、角又。このカギはあたしたちの生命線でもあるんだよ。あちこち閉まってしまったし、水は増えてくる。方舟に避難するしかないかもしれない。方舟で外に脱出もできるみたいだから。…カギを届けてもらって助かった。ありがとう、角又」
「…あんた、ほんまアホやな。…気ィつけや」
「あたし結構不死身なんで、大丈夫だよ」

花と角又の会話を、お掃除ロボでつながっている全員が共有していた。
藤子が会話に加わる。
「まぁ…ワニを手づかみしたり、虫に道案内させる女だからね。…なんにもできなくて歯がゆい。…がんばれ」
「うん、ありがとう」

藤子の言葉で、花は周囲の虫の動きを見てみた。
隔壁のまわりに、フナムシのような虫が大量にワラワラと湧いてきている。
隔壁の上のほうに、何か、くぼみがあるように見えた。
花は、とりあえずそのくぼみを目指して、壁を登ってみることに決めた。
花はお掃除ロボをリュックに詰めながら、角又に言った。

「角又、早くそこから動いて。水が来るかもしれない」
「あゆたちのところに戻るわ」
「上に出るルートはあるの?」
「来た道を戻れるんやったら行ける。とにかく、気ィつけ!」
「うん、上で、会おうね!」

花は明るい声で言った。

隔壁の反対側では、蝉丸が花の言葉に動揺しまくっていた。
「登る?この壁を?…いや、花よ、登ったってこっち側には来れねぇだろ?」
「まぁ花さんはこういう人なんで。…っていうか、ボクらも大変ですヨ?閉じ込められた上、水位がどんどん上がってます」

蝉丸の言葉に朔也がツッコミを入れる。
会話に参加こそしていないものの、ナツもショックを受けていた。

…花さんは、こんな状態で、人から「頼む」って言われた。
…安居くんにも、あたしたちを守れ、って。
…できる人は、動ける人は、いつでも更に頼られて、任されて、それに「わかった」って答えて困難に立ち向かう。
…初めからできない人には、誰も頼まない。
…じっとして、待ってるだけ。何もできない人は。
…何か、できたらいいのに。あたしも、誰かのために、信用されて、任されたい…。

距離的に遠くて、花を直接助けられないメンバーも、それぞれ知恵を絞り始めた。
最初に声を出したのはちさだった。
「あの…秋ヲさん。稲架秋ヲさん?…春のチームの、ちさと言います。鯛網ちさ」
「鯛網老の孫娘?!あんたの話、聞いたことあるべ、へぇ…来てたのか!!」
「祖父がお世話になりまして。…花さんたちは、隔壁で遮断されているようです。その隔壁を開ける方法はないですか?」
「あー、電気が止まったんで、パソが動かねぇ」
秋ヲは暗闇の中で答えた。
「紙は?」
「紙?」
「…何か、書き残されたものはないですか?」
「あーいや、ここにいた連中は、方舟のことをたいして知らなかったはずだしな…」
「花さんたちがいるのは天然の洞窟みたいです。何か記録がないですか?別の洞窟に抜けられるとか、通風口があるとか、下水道につながってるとか」

ちさの言葉に、鷭、蛍、桃太郎が反応し、動き出した。

秋ヲは、書類関係に関しては絶対的な記憶力を持つ朔也に声をかけた。
「朔也、おまえ、なんか見たか?」
「見てナイ。鍵島と大佐渡関連しか見なかったモン。急いでたし全部見たわけじゃないヨ。方舟に関してはなさげだったし」
「おい、ひばりさんそっちは?…おい?おい!…連絡がつかなくなってるな。…わかった調べてみる」
「お願いします」

その頃、ひばりはたった1人で暗闇の中で文句を言っていた。
「電気が止まったから、なんにも見えない聞こえない。ロボットいないし。ひとりはイヤー!こわいのよ!誰か早く電気戻して!」



しばらくして、あゆと小瑠璃・ハルが予備電源を戻すために合流することができた。
あゆはてきぱきと小瑠璃に予備電源を戻すための作業の説明をし、小瑠璃はそれを把握した。
作業自体はそれほど難しいものではなかった。

「2箇所でスイッチ入れるみたい。二手に分かれましょう」
「OK」
「どちらも10分以内で着けるはず。15分後に、同時にスイッチをONにしましょう」
「OK!じゃ、ハル、行こう」

ハルは小瑠璃の後を追いながら「15分後?時計、持ってたっけ?」と尋ねる。
小瑠璃は当然のように「脈ではかる」と答えた。
小瑠璃は移動しながら、ハルに、1分間の自分の脈拍を把握し、それを時計代わりにする方法や自分の体の各部位の長さを把握しておいてものさし代わりに使う方法を話した。

「そういう訓練、してきたんだ…」
「うん」
「電気にも詳しい?」
「ダメ、それは勉強しなかった。…ハルは、詳しい?」
「全然ダメ」



新巻は、角又と花の会話を聞きながら、花の笑顔が見えるような気がしていた。

…「大丈夫!…上で、会おうね」
…花さんはきっとあの笑顔で笑った。
…花さんが死んだと思ったあの時。
…花さんが地下の洞窟へ下りていく時に見せてくれたあの笑顔。
…「水を見つけてくるよ!」と言った時のあの笑顔。
…あの笑顔の花さんを送り出して後悔した。
…花さんの「大丈夫」は、大丈夫じゃない。絶対に助ける。もう二度と、後悔しない。

「方舟の近くまで行きます!ここでじっとなんてしてられない」
新巻が叫んだ。
「朔也くん、方舟までの道、わかりますか?」
「えー、ボク、冷静なフリしてますけど、追い詰められてそれどころじゃないんですケド。…とりあえず、東へ東へと向かってください」

ろうそくの灯りを元に、大量の書類やメモ書きを調べている鷭・蛍・桃太郎。
蛍が気になるメモを見つけた。

  サジッタ 行方不明
  ペルと一緒?S28・E13・B2 そのあとナシ
  充電切れ?
  リカコさん話 サイドホールにはまった?何?チェック

「サジッタ…?ロボットの1つかな?サイドホール…?」
蛍はつぶやいた。



しばらくして、あゆと小瑠璃・ハルの作業が実り、電気が復旧した。
通信が途絶えていたひばりとの連絡回線も復活し、秋ヲを中心に蛍の見つけたメモ、サイドホールについての情報収集を開始した。

ハルは、予備電源の設備から聞こえる異音を聞きつけ、警告した。

「花、何かするなら急いで!…音がヘンだ、多分、長くもたないと思う」



花は、閉ざされた隔壁上部によじ登り、そこにあったくぼみに到達した。
花はそのくぼみ部分に入ってみた。天然の洞窟部分だ。
花はそのくぼみがどこかにつながってないかと体を奥に入れたが、くぼみはただのくぼみであって、どこにもつながっていなかった。
しかし、周囲に無数の小さな穴が開いていた。虫が移動のために開けた通路らしい。
花は周囲の穴を観察した。すると、穴の1つが、隔壁の向こう側につながっていた。下のほうに小さく、蝉丸たちのいるボートが見えた。

花は、その穴を掘り広げるべく奮闘を始めたが、予想していたよりも岩盤は固く、穴を全然広げることができない。

水音が聞こえて、花は振り向いた。
水面がかなり上がってきている。すぐ、そこまで。

そんな状況の中、お掃除ロボからの声が届いた。
「サイドホールって、これみたい」
ひばりの声だ。

「排水用の穴ね。小佐渡にはいくつかあったみたい。S28…とかの座標は天然の洞窟部分で、サイドホールD、だって」

花は、蝉丸たちが見える穴とは別の穴を覗き込んだ。そこに、何かがあった。
「秋ヲ!ひばりちゃん!そのサイドホール、かも。方舟に続く通路の横に広い空間がある。何か…機械っぽいものも見えます。でも、ここからそこへ行くのはムリ!」

新巻が答えた。
「そこへ行ってみます!なんとかして隔壁を上げるか、水を止める!待ってて花さん!」
嵐も花に声をかけた。
「花…1メートル先を見て。できないことを、できると思わないで。見極めて」

花は、蝉丸たちが見える穴を必死で掘り広げた。しかし、どう考えても自分の体が通るような大きさを作ることは無理そうだと悟った。

…体はムリだ。でも。
…カギだけなら、ここを通る。

「ナッちゃん蝉丸さん、朔也くん」
花は声を出した。
「花!どうよ?」
「…誰か、泳ぎが得意な人はいますか?…できたら、潜れる人」
「あー、まぁ、オレ?」
蝉丸がいつもの調子で軽く答えた。長崎で水没した平和祈念像を見たことを自慢げに話し、お掃除ロボごしに嵐と安居にツッコミを入れられた。

「蝉丸はバタバタしてただけだろ?ヘタだったぞ」
「目に浮かぶようだ」

花は話を続けた。
「あたしの手、見えますか?」
蝉丸たちは隔壁上部に、花の手がひらひらしていることに気づいた。
「そこでつながってるのか!よかったー、降りられるか?」
「岩が硬すぎて、穴を広げられない。時間がかかりすぎる。だから…、ここからカギを落とします。それを持って、方舟に続くドアを開けてください」

蝉丸たちは固まった。
「え…?ちょっと、待って…」

蝉丸たちのボートは、今、かなり上がった水面のところに浮かんでいる。
方舟の近くの通路は、頭がぶつかるほど天井が低かった。
つまり、花の依頼を正確にイメージすると、ボートからかなり低い部分にある、水没した通路を潜って潜り抜け、方舟のドア前に行き鍵を差し込む、ということになる。
しかも、方舟のドア前付近もかなり水没しているはずだ。狭い通路を無事に潜り抜けたとしても、カギ開け作業は水中で行い、息継ぎをするためにはかなり浮上しなければならないということになる。

「えっ?あの狭いとこ潜ってくの?」
「長崎で潜った、って…」
「嵐がな!オレは水につかっただけ!…ナツ、お前、まさかよ、そんなナリして素潜りが得意とか?」
「25メートルプールは、なんとか泳げるんですけど…」
「朔也っち?」
「まさか」

動揺しまくる蝉丸の言葉に、嵐と安居が危険だからやめておけ、と警告する。

「潜るのは泳ぐのとはまた違う。やめとけ、危ない」
嵐の言葉に、花は答えた。
「嵐…でも、このままここにいても、水に埋まる」
「花さん!」
新巻も会話に参加した。
「でも、花さんはそっちに行けないんでしょう?花さんも水に埋もれるんじゃ…」
「あたしは…なんとかする…とりあえずこの穴を広げる…でも、ナッちゃんたちは、可能性がある…」

花は悔しかった。角又から託されたカギ。自分で方舟を開けに行きたかった。
でも、行けない。水も迫ってきている。最悪の事態さえ、頭をよぎる。

「ごめん…ナッちゃん…自分で行けない…ごめん…情けないけど…お願い、できますか?」

花は涙ぐんでいたが、声だけは必死で平静を装った。

…泣くな。角又が聞いている。

「方舟のドアのところの天井は、このへんより低かった。だから…そこに空気があるうちに…」

花の言葉に、新巻と安居が反対する。

「やめとけ、おまえらにはムリだ。じっとして待ってろ」
「こっちで何かできないか探します。待っててください」

ナツは思った。

…なんで、花さんが謝るの…?花さんの義務じゃないのに…。
…信頼されて、任されたい。でもそれは…怖い…。

蝉丸は考えていた。

…オトコ蝉丸、カッコのつけどころ…。
…ナツにやらせるわけいかねーじゃん。コイツ、やります、とか言い出しかねねえし。
…オトコはつらいぜ…。

蝉丸は口を開いた。
「よっしゃ、花!カギを渡せ!」
「受け取って!」

カギは、花の手から蝉丸へと託された。
蝉丸の笑顔はひきつっていた。

…オレ、ちびる。ちびる時。ちびりそう。ちびった。
…まぁ、水の中なら、ごまかせるわい。

次号へ続く。
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