ネタバレ

June 10, 2015

7SEEDS 山の章19 3人

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章18 方舟からの続きです。

2015年5月28日発売 2015年フラワーズ7月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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安居の頭はフル回転していた。

…船の時のように、オタオタしない。
…ちゃんと、周りを見て考えるんだ。
…水が押し寄せ、あちこちの隔壁が閉まった。オレたちは水のある側に取り残された。
…とにかく逃げようと上に上ったが、行き止まりだ。
…だが、遠くから声が聞こえる。嵐が、ロボットがいるかも、と言っている。
…何かはわからんが、まずはそれを見つけるのが先決だ。

安居、嵐、新巻の3人は、縦長の四角い空間の壁に沿って設けられている、ベランダ状の空中回廊のような場所の行き止まりにいた。

声が聞こえるのは、斜め上のほう。安居たちの立っている壁とは別の側面だ。
(安居たちがいる場所が英文字のLの横棒だとしたら、声が聞こえるのは縦棒の上のほう)
斜め上45度くらいのほうに、別のルートとつながっているであろう、同じようなベランダ状の空中回廊が横に伸びていた。
しかし、飛び移れるような近さではない。直線距離にして3メートルくらいだろうか。

安居はつぶやいた。
「…あそこに、飛び移るしかないな」

「え…?」
「いや、いくらなんでも、ムリだろう」
嵐と新巻が安居のつぶやきを即座に否定する。

「もう1つ、足場があれば行ける」

あっけにとられる嵐と新巻をよそに、安居は自分のリュックを探り、ハンマーとハーケン(クライミングのロープを固定するための棒)を取り出した。

「ちょっと乗り出すんで、足を押さえててくれ」
嵐と新巻は一瞬、戸惑ってお互いの顔を見合わせた。しかし、2人で協力して安居の足を押さえることにした。
安居は、回廊の手すりを一段だけ上がり、上半身をできるだけ乗り出した。
そして、ハーケンを釘のようにハンマーで叩いて、コンクリートの壁に打ち付けた。

「どうするんだ、あれに?」
「ロープでもかけるのか?」
「ロープはない」
嵐と新巻の疑問に、安居は答えた。
「あれは、足場だ」

安居は自分のリュックを背負って準備した。
「犬、来るなら来い」
ダイは安居の肩に乗った。

安居は手すりを飛び越え、ハーケンを足場に、斜め上の回廊に飛び移った。
かなりギリギリだった。手すりに掴まれなかったら落ちていたかもしれない。

「ある種の三角飛びだな、来い。…落ちても助けにはいかないからな」

嵐は下を見た。
少しずつ増水しているとはいえ、水はまだはるか下だ。
この高さから落ちたらただではすまない。

「…じゃあ、行きますか」
嵐は新巻に声をかけた。
「うん。…先どうぞ、気をつけて」

嵐は飛んだ。やはり、手すりギリギリだった。
嵐は安居に引き上げられた。
「あ…ありがとう…」

安居は嵐に構ってはいなかった。安居の目はハーケンに注がれていた。
ハーケンがグラついている。ハーケンをうちつけたコンクリートが劣化していたのだ。

「新巻!急げ!」

安居は叫んだ。新巻は飛んだ。

新巻は手すりを掴んだ。しかしその手すりもグラつき、土台から剥がれ落ちた。
手すりもろとも新巻が落下しかかったところで、安居と嵐の手が新巻を捕まえる。
安居と嵐は、2人で新巻を引き上げた。

無事に新巻を引き上げきったところで、嵐は気づいた。
安居はいつのまにか、自分の体に命綱をつけていたのだ。

「…いつのまに…」
「最低限の備えはする。当たり前だろ」

新巻は、うつむいたまま独り言のようにつぶやいた。
「…ありがとう」
「礼はいちいち言わなくていい。オレも言わない」

3人がこんなやりとりをしているうち、足場にしていたハーケンはコンクリートとともに剥がれ落ちていった。

「見た目より脆いな。数十年…いや、もっと経ってるかもしれないから、当然か。…行くぞ」

安居は歩き出した。
その後を嵐と新巻が続く。

嵐は安居の背中を見ながら思った。

…助けられてばっかりだ。
…十六夜さんを殺し、花を襲ったヤツに…。
…対策を考えてもらって、指示に従って。
…でも、それが一番正しいと思えてしまう。
…悔しい。
…自分で考えろよ。1人だったらどうするんだよ。
…足りない。決定的に、力がオレにはない。
…悔しいな…花…。

新巻は安居の背中に向かって声を投げた。

「西のシェルターも、こうだったよ。必要に迫られて入って、いろいろなものを見た。
やっぱり、崩れてくるその中を必死で出たんだ。
…そしたらあんたらに会った。十六夜さんが撃たれた。
今、状況は同じだ。あんたがやっと外に出た時、いきなり殺されたら納得できるか?!」
「ムダ口たたいてないで、足元気をつけろ」
安居は新巻の言葉を聞き流した。

新巻は思った。

…なぜ、こいつに従ってるんだ。
…決して、信用できない。
…嵐くんに、何かするかもしれない。守らないと。
…花さんのためにも。

しばらく歩いて、また行き止まりになった。隔壁が降りている。
嵐が声を上げた。
「あっちの隔壁が閉まり切ってない!あっちから行けるよ!」
安居と新巻は嵐の言う方向を見た。

閉まり切っていない隔壁から光がもれている。
同じような手すりつきの空中回廊が見える。
けれど。
安居たち3人がいる場所から見れば、その場所は、例えるなら道路1本隔てた向こう側のビルにあるベランダのようなものだった。

高さはほんの少しだけ下。見える距離だけれど、飛び移れるほどの近さはない。
向こう側までだいたい5メートルくらいだろうか。
壁伝いに行くのも、ハーケンで足場を作るのも無理そうだった。

「誰かいないの〜?」「いないみたいよ〜?」
声が聞こえた。
閉まりきっていない隔壁をくぐって、ベランダにお掃除ロボが顔を出した。

「あれは何だ?」
安居が目を丸くした。
「だからあれがお掃除ロボットだよ。あれでみんなと通信できるんだ。絶対、手に入れないと」
嵐が答えた。
「さすがにこの距離は飛べないな…」
安居がつぶやいた。

嵐は安居の横で、必死で頭を働かせていた。

…考えろ。どうしたらいい。
…安居に頼るな。1人なら、どうするんだよ。

安居と嵐の少し後ろにいた新巻が違和感に気づいた。
手元がネバつく。蜘蛛の糸だ!

「危ない!」
新巻は嵐をかばうように飛びのいた。
上から蜘蛛の糸が飛んできた。

ダイは上のほうを見てしきりに吠えている。
「なんだ…?」
「あれ…あれが、クモですか?!」
「そう。天井の高い吹き抜けが好きらしい」
「大きいって…これくらいかと…」
嵐は、大きいクモといってもせいぜいバスケットボールくらいの大きさをイメージしていた。
しかし、嵐の視界に入るクモの大きさは想像を絶していた。
暗くて遠くてよく見えないが、それでもあれが両足を広げれば大柄な人間でさえ楽勝で掴めるだろうということはわかった。
嵐は、花が戦っていたクモがあんなものだと知って戦慄した。

クモは、いったん攻撃をしかけてきたものの、後退して天井から様子を見ていた。

安居は興味深そうに天井を見上げてつぶやいた。

「源五郎が喜びそうだな」
「…喜ぶ?」
「ちょうどいい」
「ちょうどいい?」

新巻は安居のつぶやきにいちいち反応した。
そして、「ちょうどいい」とつぶやいた安居の視線をすばやく警戒した。

「嵐くん、僕のうしろに。…安居、今、僕たちをエサにしようと思わなかったか?」
安居はあっさりと肯定した。
「その通りだ。エサになってくれるか?」
「なんだって?!」

新巻は怒りをにじませて語気を荒くした。
「安居、自分だけ助かるつもりか。お前らしいな。…いったい何人犠牲にしたら気が済むんだ?!」

安居は新巻の言葉に驚いて反論した。
「いや…ちょっと待て。本当に食われろとは言ってない。あいつらの1匹をこっちに引き寄せたい。そのためのおとりだ」
「へえ…」
新巻は、疑いの表情を隠そうともせず安居に冷たい視線を投げる。

安居は怒りと苛立ちを丸出しにして怒鳴った。
「オレは!誰かを犠牲にしようなんて考えたことは、一度もない!!オレは…」
安居は言葉を飲み込んだ。
…オレは、あの教師たちとは違う。貴士さんや要さんとは違う。

重い空気を破ったのは嵐だった。
「プランがあるなら話してくれ。…納得がいったら協力する」


安居の説明を聞いて、嵐がおとり役に決まった。
新巻もおとり役をやろうとしたが
「新巻さんが一番クモに詳しいんだから、動ける状態でいてください」
という嵐の言葉で引き下がったのだ。

「こいつをかぶってろ」
安居が嵐に、さっき脱いだ自分の服をかぶせた。
「糸にからまっても、この服を捨てればいい」

嵐は、安居の服を頭にのせ、小さくうずくまった。
新巻が心配そうに嵐に近づいてアドバイスをした。
「クモの引く力はすごいです。持ち上げられないようにつかまって。
ヤツら、すぐにかみついたりはしませんから。…僕は、火をおこします」

嵐はおとりになりながらあれこれ考えた。

…クモは確か、虫じゃない。…あれは、カニだと思おう。
…いや。違う。
…目をそらすな。ちゃんとクモだと思うんだ。
…花は音でクモを呼んでた。

嵐は手すりを石で叩いて音を出した。
嵐は、新巻が安居へ不信感を持っていることを感じていた。

…新巻さん。安居は、オレたちを見捨てて逃げたりしない。
…あの船でも、ここに来てからも、そうだった。
…安居はそういうヤツだってオレは知ってるんです。
…でも、花にしたことだけは、許せない。

クモが嵐に襲い掛かってきた。
安居が大声で合図する。

「今だ!新巻、嵐を助けろ!」
新巻がたいまつを持って嵐にかけより、安居はクモの背後に回りこむ。
そしてクモの脚にいくつか、ハーケンを打ち込んだ。

安居はクモの体をつたって、反対側の足へぶら下がる。
そして振り子の要領で、向かい側の回廊へと飛び移った。

「行けたぞ!続け!」
新巻が嵐のクモの糸を焼き切り、嵐を助け出す。
そして2人も、同じようにクモの体をつたって次の回廊へ飛び移ることができた。

お掃除ロボが男3人の声を拾った。お掃除ロボが反応する。

「誰かいるの?」
「ひばりちゃん?!オレ、嵐だよ。新巻さんと安居と、3人でいる」
「なんだよその組み合わせ!」
ハルが驚きの声を上げた。

秋ヲがさっそく男3人に指令を出した。
「そのまま、東と下へ動けるか?…ちょっと、見てきて欲しいんだ。メイン・コンコースの大柱群ってやつが、どれだけ傾いてるかを」
次号へ続く。


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