ネタバレ

August 08, 2014

7SEEDS 山の章9 選択

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章8 よりよき日々からの続きです。

2014年7月28日発売 2014年フラワーズ9月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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蛍は、大きなアリ達の巣の中で、黙々と幼虫にエサを運んでいた。
蛍は、アリに襲われてここに連れ込まれてから、いったい、どれくらいの時間が経ったのだろうかと考えた。

…もう何日も経ったのか、それとも実はそんなに時間は経っていない…?
…おなかがすいた。
…水はちょびっとずつ飲んでいるけど、あと少し。
…なんだか、遠くのほうでボソボソと話し声が聞こえる気がする。
…けど、そんなの気のせいだよね。

蛍は、自分が運ばされているアリの幼虫のエサを見つめる。
キノコが原料と思われる、ダンゴ。
自分の顔の大きさに近い。
ふと、ダンゴが動いたように見えた。

「ひゃっ!」

…動いた?!
…違う、気のせいだ。何もかも、気のせい。
…頭がおかしくなっちゃう。誰か、助けて。

アリが蛍をつついてくる。ついてこい、と促しているようだ。
エサを獲りに行くのだろうか。
蛍は仕方なく後に続く。けれど、そろそろ灯りが限界だ。

蛍は、ボソボソ聞こえる話し声が、おじさんの声みたいだ、と思った。

…おじさんなんて、いないもんね。
…わたし、もう終わってるのかも…。

蛍は正気を保とうとするが、声はずっと続いている。




源五郎は、相変わらず例の映像を見続けていた。
映像の中で、フルハシら研究員達が、幻覚の原因を突き止めようと奔走していた。
その中で、設備の一部が穴だらけにされていることがわかる。
研究員の1人、ミクラが育てていたアリが逃げ出し、そこらに穴を開けて巣を拡大し始めていたのだ。

アリ達は次第に巨大化し、さらにアリを捕食するミミズなども大きくなっていることが発見された。
しかし、なぜかアリやミミズは今のところ研究員達を捕食対象にしていないようだった。

「アリは大所帯だ。あの大きさでは大量のエサが要るだろう。地上には出られないはずだし…どう賄っている?」

疑問を口にするフルハシの背後で、研究員の1人が大声でフルハシを呼んだ。
どうやら、アリ達のエサの供給場所を見つけたらしい。
そこには真っ白なフワフワのものが、大量に集まっていた。

「…キノコ、ですかね?」
「キノコを育てるアリもいますからね。…こいつら、そうだったのか」



蛍は、アリに連れられて、煙突状の縦に長い空間に来た。
天井は高くて見えない。
そこには、床を覆い尽くし、壁に沿って折り重なるように大量のキノコがあった。

「わぁ…」

思わず声をあげる蛍の耳に、おじさんの声が聞こえる。

「キノコを育てるアリもいますからね」

…変だ。誰か、説明してくれてる。

その説明はさらに続いた。
キノコから胞子が出る、そして、その胞子が幻覚を見せる、と。

…幻覚…?
…これも、幻聴…?

蛍は、何だかわからないが、この部屋は怖い、と思った。
アリ達も、なぜかピリピリしている。



源五郎が見続けている映像は、新しい展開を迎えていた。

フルハシ達は、マスクを着用していた。
幻覚の頻度が高くなったため、もはやマスクなしでアリ達やキノコの観察が無理な状況であること、そして、幻覚に一度囚われると、そこから回復するのが難しい状態になってきたという現状が語られた。

フルハシ達は、アリのエサを供給していると思われるキノコ畑を、「アリの畑」と名付けた。

アリの畑が発見された3日後、キノコを調べていた研究員ミクラが、行方不明になった。
フルハシ達は手分けをしてミクラを探す。

ミクラは、アリの畑の奥で見つかった。
キノコに取り囲まれ、全身を何やらベトベトするものに包まれていた。
さらに、ミクラのマスクにはヒビが入っていた。

「ミクラくんどうした!何だこれは!」
「所長…。すみません、襲われて、気がついたらここに…」
「襲われた?何に?アリにかね?ミミズトカゲか?」
「いいえ…所長。これは、キノコじゃないんですよ…」



蛍のカンが、危険が迫っていることを告げていた。
震えが、蛍の全身をかけめぐる。

異常な気配の理由がすぐにわかった。蛍は悲鳴を上げた。

蛍をこの部屋に連れてきたアリたちが、次々と何かに絡め取られて、引き上げられていく。
引き上げられるアリ達の先には、巨大なクモがいた。
蛍は、必死で走り出した。

…ここを逃げなきゃ。
…クモがアリに、アリがクモに、気を取られている隙に。



源五郎は、どこかで女の子の悲鳴が聞こえたような気がして振り返った。
しかし、誰もいなかった。
源五郎は、聞こえた悲鳴は映像の中のものだと判断した。
映像の中では、研究員達がドタバタと慌てていた。
天井のほうからクモが出現したからだ。

「クモだ。でかいぞ」
「何匹もいる!」

源五郎は、映像の中の状況に納得していた。

…まぁ、アリの巣に住むクモもいるからね。
…クモは、あらゆる環境に適応する。

映像は、大きなクモの出現に慌てる研究員達を背景に、ミクラとフルハシがアップになった。ミクラがフルハシに、キノコについて調べた結果わかったことを報告する。

キノコのように見えるこれは、ただのキノコではなく、キノコを卵嚢がわりにした、クモの卵であること。
キノコの胞子は何らかの幻覚物質を出していること。
その幻覚物質には、アリを引き寄せるフェロモン的役割もあり、アリはキノコ=クモの卵を育て、それを食べていること。
そしてクモは、自分の卵をアリに育てさせつつ、集まってくるアリを食べていること。

「共に生き、助け合いながら、共に喰い合う…閉じ込められ、生き残った者の、それが選択か」
「我々はそこにどう加わるんだろうね。…その共生に参加するのか…」

ミクラの導きだした結論に呆然としながらも、研究員達はミクラを助けようと試みる。
しかし、ミクラはそれを拒んだ。

「すみません…マスクを外してもらえませんか?」
「とにかくここから出よう。連れていくから…」
「いいんです。このままにしてください。…気持ちいいんで」
「気持ちいい?」
「…家族と一緒なんですよ。あたたかい日差しと、あたたかいご飯と…。他に何がいります?…僕は、虫もクモも大好きなんで」

フルハシはしばらく考え、ミクラの希望通り、ミクラのマスクを外した。
ミクラは幸せそうな表情で眠りについた。

フルハシは研究員を全員集め、状況説明し、皆で今後の対応について話し合った。

幻覚物質もキノコも水に弱い、だからアリの畑に水を入れて潰してしまおうという意見も出た。しかし、大多数の意見によって、アリの畑は残されることとなった。

「いいじゃないですか幻覚。わたしは見たいです」
「各自コントロールすればいいでしょう」
「…ミクラさん…幸せそうでしたね…」
「…幸せに眠っているうちにクモのエサですか…。養分を吸われる土のように…」
「まぁ、どうせこのままここで年を食うだけなんだし。ちょっと変わった安楽死と思えば…ハハハ!」

研究員達は、幻覚と共存する日常生活を選択した。
若手研究員達は、暇にまかせてお掃除ロボットを何台も何台も改造し、改良を加え、さらに新しいものまで作り始めた。

ディスクの枚数はさらに進んで行った。

映像の中のフルハシは、同年代の女性研究員オーノと語り合っていた。
2人ともかなり老けていた。
2人は穏やかに語り合う。 あれから、研究員が少しずつ、眠ることを選択したこと。
残りは自分を含めて、あと数人だけになったこと。
そして、最近見た幻覚のこと。

「…うまいですよね、ヤツら。最も幸せだった頃が幻覚でやって来るんだから」
フルハシとオーノはお茶を飲みながら笑い合っていた。



蛍は必死で走った。
今のところ、クモもアリも蛍を追ってこない。
蛍は何か固いものにつまずいて転んだ。
蛍は、自分がつまずいたものを見た。それが何かわかった。
そして、それがそこいらじゅうにあることも。
キノコの畑の中に埋もれている固いもの。それは、人間の骨だった。
蛍は、悲鳴を上げた。



源五郎の見ているディスクは、ついに最後になった。
もう、映像の中に所長フルハシも、オーノもいない。
若手研究員が2人、淡々と機械いじりをしながら、もう残っているのは若手がほんの数人だけ、ということを語っていた。

「…いつまで、こうやっていられるかなぁ…」

機械いじりをしている若手研究員の表情は、泣き笑いだった。
ディスクは、ここで終わった。

ディスクの終わりとほぼ同じくして、源五郎はまた悲鳴に気づいた。
源五郎は悲鳴の出どころを探す。そして、お掃除ロボットを見つけた。
お掃除ロボットケフェウス、通称ケフェと名乗るお掃除ロボは、悲鳴の音声を伝えながら「通信しますか?」と源五郎に尋ねる。

「あの…誰かいますか?大丈夫ですか?
悲鳴を上げてる人、誰ですか?危険な状態ですか?そこはどこ?
…僕は、夏のAチームの源五郎と言います」

蛍の耳に、源五郎の声が届いた。



ご神体岩の下にある部屋で、ひばりは花を呼び続けていた。

「花さん!どうしたの?通信終わるなら、終わるって言ってよ!」

あゆも怪訝そうにマイクに向かう。

「鷹さん、どうかしたの?何かあった?」
「花さん!花さんってば!」

花にも新巻にも、ひばりとあゆの声は届かない。
2人は幻覚の世界に囚われていた。

しかし、別の場所で、あゆとひばりの声を聞いた者がいたのだ。
それは暗闇の中にいた、ハルと小瑠璃だった。

ハルと小瑠璃が持っていた燃料はとうに尽きていた。
ハルは聴覚だけを頼りに、小瑠璃の手を取って道を探していた。
だから、ハルは最初、聞こえてくるものが幻聴だと判断した。

「…やばい…、また幻聴だ」
「ハル、あたしも聞こえたよ」
「幻聴だよ。…花、って聞こえたもん」
「ハル、あそこ!小さい光が!」

お掃除ロボットのパイロットランプが光っていた。
そこから、声が聞こえていた。

「花さん、返事してよ、もー!切るわよ!」

小瑠璃が光に向かって大声を出した。
「そこに誰かいるんですかーー!聞こえますかーー?」

その声にあゆが反応した。

「あら、この声、小瑠璃ちゃん?」
「わたし、春のチームの新草ひばりだけど、あんた誰?」
「ひばり?!あの、ずっと寝てたひばり?」
「何?2人いるの?声が遠いわね…、ずっと寝てた、っていつの話よ?」
「オレ!春のチームのハル!」
「ハルのハル?へんなの!どうでもいいけど、ねぇ、そのへんに花さんか新巻さん、いる?」

「花、って…」
ハルは思わず大声を出した。

「花、生きてるの?!」
「今は知らないけど、さっきまで生きてたわよ。新巻さんと一緒にいるはず。…いないのね?」

ハルは驚きのあまり涙ぐむ。
「新巻さん…見つけたんだ…花…生きてる…花…生きてるんだ…!」



ハルの驚きの声とひばり達の音声は、さらに別のお掃除ロボがキャッチしていた。

「花…生きてるんだ…!生きてる…!よかった…!」
「だから今はわかんないって。急に返事しなくなったのよ」

お掃除ロボットは、近づいてきた人影にあいさつする。

「僕はお掃除ロボット改良型DH−12です。通称ケンです、ケンタウルスのケン。現在、2方向で通信中。参加しますか?」

お掃除ロボ・ケンの前で、嵐が目を見開いて立ちつくしていた。
次号へ続く。

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