ネタバレ

September 10, 2014

7SEEDS 山の章10 結ぶ

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章9 選択からの続きです。

2014年8月28日発売 2014年フラワーズ10月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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嵐は自分の耳を疑った。
…花が生きてる?
…そう言ったか?

目の前の機械は無機質な声で「通信に参加しますか?」と問いかけている。
嵐は、「はい、お願いします」と答え、機械と対峙した。

機械は平べったい円盤、上には小さなドーム、下にはキャタピラをつけている。
上のドームはセンサーか何かだろうか、マイクではなさそうだ。
嵐は、どこに向かって話したらいいのか戸惑いながら声を出した。

「…あの…もしもし…もしもしは変かな…あの、すみません、お邪魔します。聞こえますか?そちらが誰なのかわかりませんが、今、花、って言いましたか?それは、春のチームの末黒野花のことですか?」

嵐の声は、サブ調整室のひばり・あゆと、暗闇の中のハル・小瑠璃に届いた。
最初に答えたのは、ひばりだった。

「…そうだけど…誰?」
「オレは花の知り合いで、夏Bの青田嵐と言います」
「え?嵐さん?わたし、ひばりだけど」

ハルと小瑠璃、そしてひばりのそばにいるあゆは、黙ってひばりと嵐の会話に耳を傾けた。

嵐はひばりの無事を喜び、今のこの状況の説明を求めた。
ひばりが嵐に状況を説明する。
さっきまで花と通信がつながっていたこと。
それが突然途切れて花の状況がわからなくなったこと。

「…今まで、話してた?花と?…花は、死んだって聞かされてて…」
「ですってね。洞窟の中で川で流されて。でも、生きてたわよ、ぴんぴんしてるわ。死にかけようが、気が強くて超攻撃的に前向きよ」
ひばりの後ろで、あゆが付け加えた。
「あの人はゴキブリ並にたくましいから、大丈夫よ」
「それは…すごい…」

嵐は知らず知らずのうちに、ガッツポーズをしていた。
笑いが出てきた。涙が出てきた。

…こんな世界でもたくましい、って。
…さすがだ、花。
…生きてる。生きててくれた。
…オレも死ななくてよかった。必死で信じてた。歩いてきてよかった。

ハルと小瑠璃も会話に参加した。

「嵐って、花の彼氏の、嵐?」
「はい」
「今は違うかも…とか、思わないんだ?すげ…。生きてたんだ…」
「あの、ここにいるのは、春のチームのハルと、夏の小瑠璃です。2人だけです」

嵐は、さっき自分が耳にしたあの声の主が、ハルという名前だとわかった。
花が生きててよかった、と言ってくれていた、あの声。
嵐は、ハルに話しかけた。

「春のチーム…、花と一緒なんですね。花がお世話になってます。
初めてなんです、花と同じチームで、花を知ってる人に会うのが。
花は、どうしてましたか?どんなふうに暮らしてましたか?」

ハルは、嵐の声を聞きながら小瑠璃にささやいた。

「…優しい声だ。しかも、なんか真面目で控えめっぽい。オレ、もっと番長ボスタイプかと思ってた。だって、あの花とつきあえるってどんだけツワモノよ」
「ハル?」
「…オレさ、花のことちょっと気に入ってたからさ」
「うん、知ってる」

サブ調整室で、ひばりが、ハルの声がぜんぜん聞こえない、さっきから何ナイショ話をしてるのか、と抗議してきた。

ハルは小瑠璃の手を握った。
小瑠璃はハルにしっかりと寄り添う。

「嵐なんてどっかでくたばってればいいって、思ったことあった。…でも、花が死んだと思った時、そんなこと考えてごめん、って…」

ハルは小瑠璃の手のぬくもりを頬に感じながら言った。
「小瑠璃のおかげで、今は…花のために嵐は生きてきたんだ、って思える」

ハルは遠くで光っているお掃除ロボのパイロットランプに向かって大声を出した。

「嵐!花は会いたがってた!
あんたに会うために、頑張って、気を張って、生きてきたと思う。
…早く会えたらいいな。会っちまえ、早く!」
「…ハル…ありがとう…」

少し落ち着いたところで、全員の状況をすりあわせることにした。

ハルたちが最初に入った謎の島は、鍵島という島で、佐渡とつながっているということ。
鍵島に入ったメンバーは、虹子以外全員行方不明になっているということ。
それを知った夏Bのメンバーがみんなを探しに地下へ入ったということ。

嵐が、地下で見た映像について話した。
「所長、って人が話す映像を見たんだ」
ひばりが答える。
「わたしはその佐渡にいるのよ。地下のサブ調整室とかいうとこ」
嵐は、所長が語っていた「オープン・サド・システム」について伝えた。
佐渡島にはあらゆる生物を残すための巨大シェルターがあったこと。そのシェルターを開くために、鍵島には人間が住んでいたこと。

「滅びる前の世界に戻すために…大人たちの悲願だったみたいだ」
「佐渡を守れ、って言われてた…そういうことだったの。でも、佐渡は半分、沈んでたわ」

嵐とひばりの会話を聞きながら、ハルと小瑠璃は、自分たちは佐渡と鍵島の間で迷っているんだろうと見当をつけた。

嵐は、大きいアリに襲われたことを話した。
ひばり・あゆ・ハル・小瑠璃は、アリは見ていない。

ハルと小瑠璃は、幻覚について話した。
そしてその幻覚は水のそばだと起こりにくく、マスクである程度防げることを付け加えた。

「あっ!そうか!」

ハルたちの幻覚情報を聞いて、ひばりが突然声をあげた。

「ナツさんもそれにやられてるのかな?幻覚!花さんが言ってたの。お掃除ロボットでナツさんと話した、って。でも…きっと同じように途切れたんだわ。それで、花さんはナツさんを探しに行ったのよ」
「ナツは…キャンプで待ってるはず…地下に降りたのか?」

嵐は、ナツ達ほかのメンバーについて考えた。
…もし、ナツが地下に降りたのだとしたら。
…牡丹さんたちも戻ってこなかったのかもしれない。
…だからナツは探しに地下へ降りたのか?…ナツならありえる。
…蝉丸は?蛍ちゃんは?
…蝉丸なら、きっとナツと蛍ちゃんを守ってる。

嵐は少し慌てた声を出した。
「とにかく皆さんに会いたいんですけど、どうしたらいいですか?何か現在地のヒントは?」
「わかんないわよわたしにも。あんたたちどこにいるの?」

ひばりと、嵐のやりとりを、あゆは冷ややかな目で見つめ、白けた気分でその場を離れた。

「花さん花さん、って。…誰も鷹さんの心配しないのね」

あゆのつぶやきは、ひばりには聞こえてはいない。
あゆは、部屋の床に出入り口らしきフタがあるのを見つけた。
…あれを開けたら、さらに地下へ行けるのかも。
あゆがその蓋を見つめて考えているところに、突然角又が現れた。

「お!あゆ!いてた!わしも降りてきたわ。新巻さんから犬急便が来てな、なんか、ナツって人と連絡取れたんで、お掃除ロボットを追いかけて花と地下に入るとかなんとか。なんでいきなりロボットやねん」
「その話はもうわかってるわ」

角又の声を聞きつけてひばりが駆け寄る。
「角っち!どうやって来たの?」
「犬たちに一瞬支えてもらって、ほぼ飛び降りたわ」
「えー!バカ!じゃあ戻れないじゃない!」
「そん時はそん時で」

あゆは、角又とひばりのやりとりを無視して、床のフタを持ち上げた。
下へ降りるハシゴがついている。どうやら下にも何か部屋があるようだ。
そして、かすかに明るい。

あゆは言った。
「…わたし、行くわ。つながってるかわからないけど、鷹さんを探しに」
「新巻さん達を追うんやったら、犬たちに案内させて彼らがたどった道を行けばいいやん」
「それじゃ2,3日かかるでしょ。しかもあなたのせいで上に戻れない。あのガケ、素手で登るの大変よ」

ひとりで行こうとするあゆに、角又は強引に同行した。
「あんたをひとりで行かせたら、寝覚め悪いてゆうてるやろ」
「邪魔になったら捨てていくから」
「へいへい」

ひばりは、調整室のマイクに向かって現状を報告した。

「…ということで、角っちとあゆさんも降りて行きましたとさ!なんなのあの2人?できてんじゃないの?どうかなってもわたし知らないからね」
「角っちって、角又さん?角又さんも無事なの?」
ハルが大声を出した。
「藤子さんとちささんもいるわよ。今は別行動だけど」
「ほんとに?!」
「…それからね、嵐さん。蛍ちゃんも近くにいる。さっきからびんびん感じる。…何か、怖い目に遭ってるわ」



その蛍は、クモのエサにされたらしい人々の遺体に囲まれてへたりこみながら、目の前のお掃除ロボットを見つめていた。
目の前の機械は、蛍に向かって「大丈夫ですか、聞こえますか」と音声を伝えてくる。

「…何これ…しゃべってる…」
「それは多分、お掃除ロボットというやつです。僕は夏のチームの源五郎です。あなたは?」
「わ…わたし…夏のBの蛍です」
「夏のB…1人ですか?どこにいるんです?」
「アリの巣です。あたしだけさらわれて連れてこられて、幼虫の世話をしてたんですけど…大きいクモが出てきて…アリたちを襲って…さっきから聞こえてました、説明みたいな会話が…」
「こっちで映像を見てました。それがロボットを介して流れたんだ」
「…あの話の…あの人たち…ここにいます、みんな…。ここにいるんです…」

源五郎と蛍は現状を把握しあった。
蛍は今のところ、クモとアリから逃れられているけれど、どこへ逃げればいいのかわからない。
源五郎も、自分がどう動けばいいのか考えあぐねていた。

そんな折、源五郎の目の前にいたお掃除ロボが動き出した。
後をついていってみると、お掃除ロボは壁についている設備の前で止まった。

「…充電?ってやつ?」
源五郎は蛍に、お掃除ロボについていくように指示した。
どこかで充電するなら、充電器はアリの巣の中ではなく、施設の中にあるはずだ、と。

「マスクを忘れずに、気をつけて!」
「はい!」

しばらくして、源五郎のそばのお掃除ロボは、また動き出した。
源五郎はその後をついて、違う部屋にも足を踏み入れた。
来た時より、設備全体が明るくなっていた。もうカンテラは必要なかった。

いくつかの部屋を通り過ぎるうち、見覚えのあるような部屋についた。
ゴチャゴチャと機械類や工具類が散乱している部屋。
最後のディスクで、若手研究員が2人、お掃除ロボを作っていた部屋のようだった。
あの2人の姿はない。
おそらく、あの2人も最後には眠りに行ったのだろう。

お掃除ロボは、その部屋の中の充電器の前で止まった。
どうやらお掃除ロボは、充電器ならどこのものでも使えるようだ。
充電中を示すパイロットランプが灯る。
ふと気づくと、源五郎は部屋の中に転がっている機械類のあちこちにも、何やら小さな明かりがついていることに気づいた。

「…なんだろう?」

源五郎が触れると、機械類たちが反応した。
タブレット端末のようなものやパソコンのようなものや、大型ディスプレイなどの電源が連動しながら反応を始める。
源五郎は、大型ディスプレイを見つめた。
画面いっぱいに、何らかの図面が広がった。

図面の中には、あちこちに●印があり、●の近くには様々なアルファベットがある。
源五郎は図面を見つめ、その中の1つのアルファベットに気づいた。

●Cepheus

源五郎はお掃除ロボを振り返る。

「えっと…君、ケフェ、って言ったっけ?」
「ケフェウスのケフェです」
お掃除ロボが返事する。

源五郎はわかった。
この図面は、設備の見取り図だ。この●が、ケフェ。その他の●は、他のお掃除ロボだ。

「…つまりこれが現在地?…蛍さん、そのロボットの名前、わかりますか?」
「どっかに書いてあるんですか?」
「自分で名乗るはず。聞いてみて」
蛍は試してみたが、お掃除ロボは反応しなかった。通信で交わされている会話と、自分へ向けられている質問とが区別できないのだろう。

源五郎は見取り図を見つめた。
●の中には、部屋や通路らしい場所から明らかに外れたところにあるものがいくつかある。蛍がアリの巣にいるということは、そばにいるお掃除ロボはそれら外れたところにいるものである可能性が高い。

源五郎は、いくつかの名前を蛍に伝え、蛍は順に前のお掃除ロボに声をかけてみる。
「ペガスス」で、お掃除ロボが反応した。
源五郎は、見取り図の中から ●Pegasus を見つけることができた。

「蛍さん、あなたの位置がわかります。…あ…とはいっても、だからどう行けばいいのか…アリの穴はここに書かれてないもんね…」

源五郎は、ケフェに指令を出してみた。
「ケフェ、すべてのお掃除ロボットを全方向で話せるようにつないでくれ」
「現在、起きてる者にアクセスします」
ケフェが応えた。

しばらくして、源五郎と蛍の元に、ひばり・嵐・ハル・小瑠璃の声が飛び込んできた。

「だからぁ、どうなってるのかわたしにもわかんないわよ。さっきはおばあちゃんがつなげてくれたんだってば」

ひばりの声に蛍が反応した。

「ええっ、ひばりちゃん?!」
「え?蛍ちゃん?」 ひばりの声に重ねるように、嵐が大声を出した。
「蛍ちゃん?!」

「ええええっ、嵐くんですか?ナッちゃんと蝉丸さんに会えましたか?」
「えっ…会ってない。ナツも花も、こうやって話してる間に途切れたらしくて、だからみんな幻覚を見てるんじゃないか、って」

花、の言葉に源五郎が反応する。
「花さん、生きてるんですか?」
源五郎の声に小瑠璃が反応する。
「あれっ、源五郎くん?」
源五郎は、小瑠璃との会話で、暖炉の部屋からみんなが迷い出たことを把握した。

ハルは、嵐と源五郎に双方の情報を伝えた。
嵐は花の彼氏であること。
源五郎は、花を助けるために洞窟の川を潜ってくれた人であること。

「状況はわかりました。もし、花さんたちが幻覚を見てるなら危ないです。最悪、そのままクモのエサにされる可能性があります」

源五郎は映像から得た情報を伝えた。
幻覚から戻れる方法はわからないこと。
けれど、源五郎自身は幻覚を見ている自分に気づけたこと。

「今、すべてのお掃除ロボットをつないでもらいました。全方向に話ができるはずです」
「つまり、花にも、ナツにも、声が届く…?」
「その近くにいればですが。他にも誰か、その声を聞きつけるかもしれない」

嵐はお掃除ロボににじり寄った。
「花、ナツ、蝉丸、聞こえるか?オレだ。嵐だよ。聞こえる?花、オレの声を聞いて」

花は、幻覚にとらわれた状態で、立っていた。
花の足元のお掃除ロボが、嵐の声を伝えている。
次号へ続く。

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