ネタバレ

September 10, 2017

7SEEDS 外伝 前編 New Team

【注意】この記事は 7SEEDS 最終回ネタバレの続き「外伝」です。【注意】

以下のあらすじは、最終回 今日、そして明日(後編)からの続きです。

2017年8月28日発売 2017年フラワーズ10月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

※外伝は60ページという長編です。
登場人物も、場面転換も多いので長文になっています。ご了承ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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暗闇の中、炎が移動している。松明だ。
安居はカンテラを手にその後を追う。

「涼、待て!」
安居の声に、松明を手にした涼は振り返る。が、足は止めない。
歩きながら背後の安居に言う。

「船を貸せって言っても、オレたちには貸さないだろあいつら。…こっそり奪っていくしかない」
安居は涼に追いついて服を掴んだ。

「それは、絶対に、ダメだ」



佐渡で、新しい生活が始まった。
鳥の声で目が覚める。陽射しを浴びて体が起きる。
自然の営みがあちこちで行われている。人間も同じだ。

全員が合流してしばらくは、船で寝起きをした。
しかし少しずつ、陸へ生活拠点を移し始めた。
くるみと、産まれたばかりの新は、まだ船で寝起きしている。

「あっ、花さん、おはようございます」
「おはよう、ナッちゃん、眠れた?」
「はっ…はい…でも、いろんな音がして気になって」
「あー、船とはまた違うもんね。あたしは船のほうがフシギな感じだけど」

花は焚き木置き場に目をやった。
昨晩よりも量が増えてまとまっている。早起きの誰かが、すでに集めてくれたのだろう。
そこへ藤子がやってきた。

「藤子ちゃん!早起きだ」
「逆、あんまり寝なかった。花、あんたこそ嵐くんと夜中に出てったでしょ?よく早起きできるねー」

花は、木の上で嵐と月を見ていたのだと言う。
「夜中に木の上デートとか考えられる?ナッちゃん!…ワイルドめ…危ないだろ…」

藤子は、初対面の時からナツに気さくに話しかけてくれた。
そのおかげで、ナツも藤子とは打ち解けてきている。
ナツは、花と藤子のやりとりを微笑ましく見ていた。

藤子は、夜更かしして水時計を作っていたのだと言う。
「日時計作ろうと思ったんだけどさ、雨が多いから水時計にした。その調整をしてたから、寝不足」
藤子は言った。
別に、時間といっても、世界標準時と違っていていい。ここの全員が標準認識を持てればいいのだ。時間のほかにも、いろいろな共通認識が必要になる。
日付と時間。今日は何日の、今は何時か。地名。ここはどこ。
いろいろなものの名前。動物。植物。それは何。

「全員が同じものを見てないと。何時にどこで待ち合わせとか、どこに集合していつ避難とか。何をどれだけ食べたとかさ。…人数多くなったからね、食い違って事故を起こさないように」
「なるほど…」
「時間ごとに鐘を撞く…みたいな感じで、みんなに知らせられたらいいと思うよ」
「藤子ちゃん、さすが!」

花は藤子にじゃれついた。

ナツは思った。
…花さんの表情が、とてもやわらかくなった。
…そりゃ、地下の危険な場所にいる時と違って当然だけど。
…嵐くんと会って、藤子さん達と一緒で、ホッとしたんだと思う。
…とても、やわらかくて優しい顔をする。あたしが言うのもヘンだけど、かわいい。

ナツは思わずつぶやいた。
「それにしても…木の上でデート…いいなぁ…」
「何ぶつくさ言ってんだ?ひとりごとはヤメロって言ってるだろがよ」

ナツの背後から声をかけてきたのは蝉丸だ。
「あっ、おはようございますー」
「おう、めしの支度すんぞー。…で、木の上がなんだって?」
ナツは、花と嵐が木の上でデートしたという話を、蝉丸に教えた。
「木の上でデート!バカかあいつら…なんもできないだろ…いや、できるのかあいつら!」
蝉丸はナツと食事の支度をしながら、「デート」という言葉にひっかかった。
蝉丸はナツを見ながら考えた。

…デート…、デート、な?
…わかんねぇ。ナツはどうしたら喜ぶタイプ?珍獣なんでわかんねぇ。
…こいつとのデートコースがわかんねぇよ。

ナツは、蝉丸が突然黙り込んで難しい顔をした意味がわかっていなかった。
「…な…なんですか?」
「いや…まぁよ、湯でも沸かすか…」



30人で始まった、佐渡での生活。
合流して最初にしたことは、チーム分けだった。
源五郎が司会役を務める。

「とりあえず、ザッとチームを決めましょう。春とか夏とかじゃなくて、実用的に。
…例えば『海チーム』。
海と海岸の地形を把握して、食べられるもの、使えるものを集めてもらう。勿論リーダーは茜さん」

茜が手を上げた。
「はい。…潮の流れとか満ち干きもわからんとあかんわね。塩も作ろう。…じゃあ、嵐くん、もろてええかな?かなり泳げるんよね?潜りもできる。…海のことも詳しい?」
嵐は答えた。
「海のことは全然。…よろしくお願いします」
「他に泳ぐの得意な人…?」
「はーい!」
茜の呼びかけに反応したのは流星だった。
「流星くん?!」
「あんたそうだっけ?」
口々に驚くみんなに向かって、流星は言った。
「オレはスポーツ万能なの!見せる機会がないだけ!」

次に源五郎が提案したのは、「空チーム」だった。
「空からこの島全体の地形を把握して欲しい。勿論リーダーは小瑠璃さん」
「うん…じゃあね、ちまきちゃん、もらっていい?…一緒に飛んで、絵を描いてもらう。…いい?」
「いいけど…」
ちまきはいつもの調子で淡々と応じた。
激しく反応したのはハルだった。
「ちょ、何?いつの間に仲良くなったの?…そいつ誰だっけ?」
「あたし、くりくりの人好きなんだよ」
「好き?」

海、空の次は地上だ。
「地上のほうの探索チーム。突撃隊長、花さんで。とにかく全体を見て歩いてくれる?」
「はいっ!…つきましては、朔也くん、もらっていい?」
花に指名された朔也の表情がパッと明るくなったが、そこに蘭が疑義を挟んだ。
「花、朔也は体力ないし、運動神経もないけど、いいのこんなので?」
「そうなの?」
「お蘭さん…あんまりデスヨ」
花が朔也を指名したのは、歩いた道を覚えているからだった。
「ナビに。迷わなくてすみそう」
「どうせそんなこったろーと思いましたヨ」

源五郎はどんどん話を進めた。
「そして動物チーム…、あ、いいですか?僕が勝手に進めてますが、別の提案があれば…」
源五郎はちらりと秋ヲの顔を見た。秋ヲは笑みを返した。
「いいぞ、どんどんやってくれ」

源五郎は話を続けた。

「どうも。では『動物チーム』、僕がメインで、新巻さん、一緒にやってくれますか?犬たち込みで。動物の種類と個体数、生態の調査と、主に食料調達です」
新巻は微笑んで答えた。
「わかりました。喜んで」
そこに異議を唱えたのはあゆだった。
「ちょっと!どうしてあなたが鷹さんを取るのよ?鷹さんはわたしと一緒よ!」
「あゆさんは勿論、植物チームのリーダーだよ」
「そうよ」
あゆは、植物チームリーダーに指名されるのは当然だとばかりに頷いた。
そんなあゆにむかって源五郎はニコリとしながらもきっぱりと言った。

「新巻さんは渡せない」
「いいわよ、じゃあ」
あゆは角又をぐいとつかんだ。
「角又さんをこっちにちょうだい」
「角又さんも僕がもらうので」
源五郎はあゆに容赦なく、角又に声をかけた。
「弓が得意なんですよね?よろしくお願いします」
「よっしゃ!」
角又は源五郎の指名に快諾した。

あゆは不満を隠そうともせず、源五郎に言った。
「源五郎くん、意外と強欲ね。わたしのチームには誰がいるのよ?」
「例えば…ハルくんとか。その耳と感覚で、この森を知り尽くしてください」
「ハル?!何か役に立つの?」
「はい、役に立たないよ、ゴメンね」
ハルは皮肉たっぷりにあゆに応えた。
「他に誰か、植物チームに…」

源五郎の呼びかけに、嵐が手を上げた。

「ナツを推薦します。ナツはこの世界に来てからずっと、メモを取っているんです。食べられるもの、食べられないもの、役に立つもの…図にして、名前をつけて」
「へぇ…そうなの…」
あゆは、じろりとナツを見た。
ナツはあゆの視線にひるんだ。その様子を見て蝉丸も名乗りを上げる。
「じゃあオレもそのチームに!」

蝉丸はナツの耳元でささやいた。
「が…がんばれ、ナツ。負けんじゃねーぞ」



あゆを先頭に、植物チームは森の中に入った。

あゆは先頭を歩きながら、振り返りもせずに言った。
「実が成ってる木とか、今まで食べたことがあるものを見たら言って。…当てにはしてないけど」

ナツは思った。
…嵐くんが評価してくれたのは嬉しいけど。これは…。
…初対面の人の中でも、あゆさんて滅茶苦茶怖い。
…まず、美人だからだ。蝉丸さんも言ってた。「愛想のない美女ほどコワイもんはねーな」
…にこりともしてくれない。だから近づきづらい。言葉もきつい。
…この、ハルって人も、しーんとしてる。

ナツは、早くも弱気になっている自分を、情けないと思った。

「どうも。そっちはどう?」
森の中の別の道から、源五郎が顔を出した。新巻と角又も一緒だ。
「静かよ。うるさいよりいいけど」
源五郎は、当面の間動物チームと植物チームは合同で調査することを提案した。
これだけ水があって植物が茂っていると、動物や虫や植物の毒などの危険も大きいというのがその理由だ。

あゆは新巻に視線を向けた。新巻はハルと親しげに話している。
あゆはあてつけるように角又と行動した。

ハルは、新巻に尋ねた。
「あの2人(あゆと角又)、仲いいよね。例の、候補にも入れてたし。気になる?」
「え…」
新巻は否定しようとして、口ごもった。そして肯定した。
「…うん…気になるのかもな…」

ナツは、他のメンバーがハキハキと意見交換しながら行動しているのを見ながら、必死で後を追った。

…みんな、なんだかすごい。会話に入れない。入れなくてもいいけど、でもそれも情けない。
…ついていくしかできないけど、ついていけるだけましになったと思う。



次に作られたのは「水と家のチーム」だ。
「お蘭さんと虹子さんは、水の状況を見て住むところを決めてください」
蘭と虹子は、源五郎に向かって口々に「どっちがリーダー?」「どっち?どっちなの?」と詰め寄ったが、源五郎は「2人で話し合って決めてください」とスルーした。

「居住地が決まってからがメインですが」
源五郎は続けた。
「『畑チーム』今から少しずつ、どう育てるか研究を始めてください。まつりさん、お願いできますか?」
「えっ?…はい」
まつりのそばにいた牡丹が声を上げた。
「わたしがつきあうわ。種はいろいろ、ストックがあるから、試しにあちこちの土で植えてみるわね」

まつりと牡丹に向かって、あゆと藤子が菜種を先に植えるのがいいのではないか、と提案した。
カロテンのせいでいい緑肥になる、成長が早い、油も取れる、土の中のよくない成分も吸い取ってくれるらしい、と。

まつりは元気よく返事した。
「じゃあそれで。まず大豆を増やしたいと思いまーす!トウモロコシもー!」

ナツだけが、気づいていた。
まつりは元気な声を出しているけれど、それは「元気なふり」だ、ということに。

…多分、涼くんのことが気になってるからだ。ここに、一緒にいられないから…。



鷭と藤子は、医療チーム。
出産直後のくるみのケアと、全員の健康状態のケアを担当する。
刈田は、危機管理担当。

生活全般のことや、各種在庫管理、いろいろな情報収集のトップとして、源五郎は秋ヲを指名した。
「秋ヲさん、お願いします」
「オレでいいのかい?」
「あんたがやるしかないでしょ、社長」
蘭がツッコミを入れた。
「お蘭は?」
「わたし、家を建てるのよ」
「じゃあ、ちささんをオレにつけてくれ。…あんたおそらく、じいさんにいろいろ仕込まれてるべ?」
「ちさちゃんは万能の女神だよ」
花が請け負った。
藤子が花の後を追って「婚約者だし…」と言いかけ、ちさに口を塞がれた。

源五郎は桃太、ひばり、蛍らを見て、つぶやいた。
「子供たちにはほんとは勉強して欲しいんだけど…」
「いずれ、学校を開きましょ」
牡丹は微笑んで言った。

役割分担について、桃太と蛍はヤル気を見せていたが、ひばりはいつもの調子で「わたしは働かないわよ」とシラッとしていた。

藤子は、子供たちの姿を見て思いついた。
「蛍ちゃん…だっけ?一番しっかりしてそう。水時計の管理をお願いできる?あと、時報鳴らすのも」
「はいっ!」
蛍は元気よく応えた。



新チームそれぞれの活動が少しずつ軌道に乗りはじめ、蛍の時報がその活動にメリハリをつけるようになった。時報は、船にあった鐘だ。

「えっと…この線まで水が減ったから、今は3時」
蛍が鐘を叩く。
カーン、カーン、カンカーン。最後の音だけリズムを変えてわかりやすくする。

みんなから時報を頼りにされるようになった蛍は、次の目標を見つけた。
「いずれは、モールスも勉強したいです。そしたら鐘で、みんなに合図を送れるから」
「いい子ぶっちゃって」
蛍の言葉に水を差したのは、ひばりだ。
「いっつもそうなんだから。あんたがいい子する分、こっちがダメだと思われるんだから。迷惑なの」
ひばりの言葉に、蛍はしゅんとした。

「ひばりちゃん、それは違うでしょ?」
ひばりに声をかけたのは蘭だ。
「羨ましいならそう言えば?全部、あんたの問題なの。…バカがダダ漏れになってるわよ。みっともない」
「うらやましいとか、ないから!」
「お子様ね。バカは嫌いよ」

蘭とひばりのやりとりを遠巻きに見ながら、蝉丸はナツにつぶやいた。
「…子供相手でも、容赦ねえな…」

蘭にやりこめられたひばりは、嵐に泣きつこうとしたが、花にあっさりと阻まれた。
「あー、ほな、海のチームに来たらええわ」
茜がひばりに声をかけた。
「塩の係、やってくれへん?桃太くんと組んで。あと、浜で火の係」



「まつりちゃん、大丈夫?」
ナツは、まつりに声をかけた。
「あっゴメン…、顔に出てたかぁ…。なんかねー、涼くんたちがここにいたら、頼りになるのになあって…」
「なんでもできる人たちだもんねー」
ナツはまつりの隣に腰を下ろし、言葉を続けた。
「まつりちゃん、顔に出して、いいんだと思う。…会いに、行こっか?」
ナツはまつりに向かって、ニカーッと笑った。


まつりはナツと連れ立って、涼と安居がキャンプしている場所に足を踏み入れた。
涼の姿が目に入った。
そばにいるのは安居…?涼の胸に顔を埋めている?で、涼は…?
安居の服の中に手を入れて…??

「ひ…ひいっ!」
まつりは思わずヘンな声をあげてしまった。
「まつり」
涼がまつりに気づいた。涼の手は安居の服の中に差し入れられたままだ。
安居も涼の胸に頭をもたせかけたまま。

「ちょっと待て…、取れた」
安居の服の中から、虫が出てきた。
「虫…」
まつりは思いっきりホッとした声を出した。

安居が顔をあげてまつり達に声をかけた。
「どうした?…来ていいのか?」

雨が降ってきた。まつりとナツは、涼と安居のキャンプ地に腰を下ろした。
まつりとナツは、安居に尋ねられるがままに、近況を話した。
源五郎の仕切りで、新チームがいろいろできたこと。ナツは植物チームで、あゆがリーダーなこと。

「あゆか…」
安居が反応した。
「あゆは厳しいぞ。できないヤツには特に厳しい。というか相手にしてもらえないかもな」

安居の言葉に、ナツはビビッた。
「ど…どうしたらいいですか?あたし…植物のことなんか全然…」

安居はしばらく考えて、自分達の備蓄の中から3種類の植物を出してきてナツに渡した。
「コレとコレと…こいつ。食っても大丈夫なヤツだ、でも、生ではやめとけ。焼くより湯がけ。おまえが見つけたことにして、あゆに渡せ」
「そんな…」
ナツは恐縮したが、安居は、これはただのとっかかりだ、罪悪感があるならあゆには誰かからもらったと言えばいい、と。

「あゆは厳しいが、まっすぐなヤツだ。うまくつきあえれば強力な味方になる。…オレの名前は出すなよ。嫌われてるからな」

ナツにあれこれと世話をやく安居に向かって、涼はうんざりとした視線を投げた。
安居は涼に「茂と混同しているわけじゃない」と言い訳するが、涼は「どっちだって同じだ」と切り捨て、安居に「それより…おい」と促す。

「ああ…そうだ」
安居は涼の意図を汲んで、切り出した。
「ナツ、まつり…牡丹さんに会いたいんだが…」


ナツとまつりは、安居たちのところへ牡丹を連れて行った。蝉丸もついてきた。
安居は牡丹に「船を貸して欲しい」と申し出た。
アメリカに人がいるらしい、ビンに入った手紙が届いた、という情報を耳にしてから、安居と涼がずっと考えていたことだった。

「外国へ行きたい。涼と。…オレたちは、ここにいないほうがいいだろう。二度と顔を見せない。それがお互い、いいだろ?」
「それは…、実質『船をくれ』って言ってるんじゃないの?…そういう理由なら、貸せない」

牡丹はきっぱりと断り、そのほかの理由も付け加えた。
まだ佐渡が完全に安全かどうかわかっていない、急に全員で逃げなければならなくなるかもしれない、だからみんなの生活が安定するまで待て、と。
牡丹の言葉に、蝉丸がツッコミを入れた。
「花たちは、ここまで筏で来たって言ってるぜ?」
「生まれたばっかりの赤ちゃんを筏に乗せられないでしょ?」
牡丹は蝉丸のツッコミに応え、さらに付け加えた。最近、少し水漏れもしてきているから、大きな海を渡るのは無理かもしれない、とも。

「ほらな」
涼がシラけた声を出した。
「だからブン取ればよかったのに」
「涼!」「涼くん!」
安居とまつりが、同時に涼をにらんだ。

まつりは怖い目で涼をにらみながらも、しっかりと涼の腕にしがみついていた。
ナツたちは気をきかせて、涼とまつりから少し距離を取った。

ナツは、涼とまつりの姿を見て、せつない気分になり、つぶやいた。
「みんなで一緒に…、って、無理なのかな…」
「お前、それ花に言えるのかよ」
蝉丸がナツの言葉に反応しながら、さりげなく安居に尋ねる。
「なぁ…安居よ、十六夜さんを殺したとかって…うっかりとか、事故とかじゃ…?」
「いや」
安居は、蝉丸の目を見ずに答えた。
「全部、みんなの言ってる通りなんだな?」
「そうだ」



日付が決まった。
空には冬の星座が見える。全員が合流した日を、1月1日にした。

動物チームの3人は、狩りがすっかり板についてきた。角又の弓、新巻が犬とともに獲物を追い込み、源五郎が仕留める。
新巻は、動物の仕留め方、さばき方を、源五郎から積極的に学ぼうとする姿勢を見せた。

ナツは、安居から提供された3種類の植物に名前をつけ、あゆに見せた。
「あの…これ…、食べられるヤツなんです…友達が見つけて…。名前つけてみました。バラキャベツ、ホソチマタケ、ポコの葉…」
「へぇ…有難いわ」
あゆは、あっさりと野菜を受け取った。それを見ていたハルが、バラキャベツがたくさん生えている場所を知っている、と反応した。
「じゃあその『バラキャベツ』、あとで採りに行きましょう」
ナツは、あゆが自分のつけた名前をあっさり採用してくれたことに喜んだ。

…がんばろう。人見知り、とか言ってないで。
…安居くんに、ダメな子だから面倒見てやんなきゃ、っていつまでも思われたくない。

ナツは必死であゆの後についていった。時々、あゆに質問される。
ナツは、わからないことにはわからない、と答えつつも、自分のノートの中から参考になりそうな情報をあゆにどんどん提供した。
少しずつ、ナツとあゆとの会話が増えていった。



次第に、生活のパターンが確立してきた。
朝起きて、各自食事の支度や焚き木を集める。チームごとの活動は、夕方5時に終えて集合する。
食事しながらいろいろなことを報告し合い、話し合う。
いつも誰かが、ちょっとお腹を壊したりしている。全員、食べるものをちょっとずつ変えているので、どの食材がいけなかったのかを割り出す。


小瑠璃は暇を見つけては、木を小さい角材にして集めていた。
「小瑠璃」
ハルが小瑠璃に近づく。
「ハル!」
小瑠璃はとっさに削っていた木を隠してしまった。
「え?何か隠した?」
「なんでもないよ…ほら、木」
小瑠璃は木をハルに見せた。
「ふうん…、ちまきさんと、うまくいってるの?」
ハルは、気になっていたことを切り出した。
「うん」
小瑠璃は笑顔で答えた。
「すぐ、飛ぶのに慣れたんだよ。だいぶ島の全体図もできたし。ちまきちゃん、面白いよ。あんまりしゃべらない人だけどねー」
「ふうん…」
ハルは小瑠璃の顔をじっと見つめ、チュッ!とキスをして立ち去った。
小瑠璃はきょとんとハルの背中を見送り、一拍の間を置いてから照れた。


小瑠璃とちまき合作の島全体図は、かなり立派なものになった。
小瑠璃が布を広げて、花と朔也に見せる。
「だいたい…できたんだけど。今、みんながいるのはココね」
「うわー、こんなに穴ボコ?!」
「この穴の下はほぼ見たね」
「ハイ、ココとココに湖デショ?川がこう流れてて、ここは崖で…」
花と朔也からの情報が、空チームの全体図にどんどん付け加えられていく。


花は、地図の作業後、ちまきに話しかけに行った。
「ちまきさん、お疲れ様です…すごい地図ですね」
「…どうも…」
「あたし、ちまきさんに、お礼が言いたかったんです」

花はちまきに言った。
どこかの岩壁に、ちまきの絵を見つけたこと。多分、桜の絵。
その横に夏Bの人達のサインがあった。

「サインだけだったら見逃したかも。…でも、鮮やかな色があって…」
「ああ…最初の、ネコ島かな。もう、あんな派手な色はなくなった」
「あたし…その時すごくへこたれてて…危なくて…」

花は、青紫に体を侵食され、死に場所を探していた、とまでは言わなかったが、率直な気持ちをちまきに言った。
「あの絵を見つけなかったら、多分、死んでたと思います。…あそこで初めて、生きていこうと思えました」
ちまきはボーッと花の顔を見つめた。花は、ちまきに向かって照れながら頭を下げた。
「おかげで、嵐に会えました。…ありがとうございました!」
花は言うだけ言って、ちまきの元から去った。ちまきは花の背中へ向かって声をかけた。
「あの…、画材になりそうなものを見つけたら、取っといて」
「はいっ!」
花は遠くからちまきに向かって、ラジャー!と答えるかのように敬礼を返した。
ちまきは1人になって、ぽつりとつぶやいた。
「そんなつもりじゃ…なかったんだけどな…」


ちまきは作業を追え、ひとり歩いていた。
キンコンカンコンと音がする。ちまきは音に惹かれて歩いて行った。
ハルが、小瑠璃の集めた小さな角材をたくさんぶらさげて、叩いていた。

「音楽は…、わかりやすくていいね…」
突然聴こえた声にハルはびっくりして振り返った。その声がちまきだったことに、ハルは更にびっくりした。

「…何が…?ああ、小瑠璃がお世話に…」
「人に、聴いてもらうためにやるでしょ?音楽…」
「絵も、そうじゃないの?」
ハルはちまきに尋ねた。
「ただ…好きだから描いてただけ。…誰かがそれを見て、何かを感じるとか、考えたこともなかった」
「ふうん…いいね」
ハルはちまきに、肯定的な返事をした。
「オレは、音楽が好きかどうかなんて、考えたこともなかったよ。こっちの世界に来るまでは」
ちまきは相変わらずの独特なタイミングで、ハルに言葉を返した。
「小瑠璃さんとつきあってるの?僕のことは気にしないで」
「しないけど!」
ハルが食い気味に返事する。
こうして、芸術家同士の交流が、ぎこちないながらも始まった。


「水と家チーム」の蘭と虹子は、家を建てる場所の候補地を絞り始めていた。
そこに植物チームが通りかかり、あゆが会話に加わる。
ナツは蘭やあゆたちの会話を聞きながら、わかってきた。

…みんな、自分の意見をはっきり言う。あゆさんも、お蘭さんも、…花さんも。
…怖い人なんじゃなくて、一生懸命なんだ。



安居と涼は、向こう側の様子をそれとなく気にしていた。
「拠点を決めたらしい」
「斜面か…なるほど。面白いな。小瑠璃も飛びやすい」
「畑はどうするのか?棚田にするのか」
「海まで遠くないか?」

安居は、自分なりにつけていた地形メモを見ながらあれこれ考え、思いついた計画を涼に告げた。

「涼。橋を架ける。手伝え。ここと…ここに。あと、ここに階段も…」
「安居…」
「こっそりな」
涼はあきれた表情で安居を見た。
安居は、作業工程や必要な材料についてのあれこれを涼に話した。
「木材がかなりいる。それに、例のクモの糸…クモ1匹飼おう。つがいでもいい」
「あ?!」
「当然、食い物も探す。道も通す。…やることは多いぞ」
「なんだよ…、優等生に戻るのかよ」
涼の言葉を、安居は否定した。
「それはもう、永久に、なれない」

安居は黙々と作業を始めた。
…なんのために未来に来たのか。
…見失った。
…人を殺めた。人を叩き潰そうとした。
…それを悔やんでも、それを詫びても、なかったことにはできない。
…おそらく、赦されもしない。

涼は、そんな安居を見守りながら、安居と一緒に木材作りを始めた。



早朝。
安居がこっそりと、向こう側へ渡る。
焚き木が集まっている場所へ、持ってきた焚き木を足す。
刈田が、安居の姿を目撃した。が、安居の目的がわかり、何も言わずに見逃した。

ナツとまつりは、折を見ては涼と安居を訪ねていた。
安居はその度に、ナツに新しい植物についてのアドバイスを続けた。
ある日、ナツは安居に思い切って、言ってみた。

「あの…。みんなに、話そうと思います。安居くんたちが、助けてくれてることを」

夕暮れ。花たちが作業を終えて集落へ戻る。
そこへ涼が現れた。
次号へ続く。

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