ネタバレ

September 10, 2016

7SEEDS 空の章6 死地

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章5 隙間からの続きです。

2016年8月28日発売 2016年フラワーズ10月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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新巻の伸ばした手は、空をつかんだ。
新巻はその手の先に、北の大地を見たと思った。吹雪、美鶴さん、そして、犬の吹雪と美鶴さんの姿も。
フワッと身体から力が抜け、新巻は目を閉じた。
新巻の名を呼ぶ声、悲鳴、新巻は一瞬我に返ったが、もうその手はどこもつかむことはできなかった。新巻は水の中に落ちた。

嵐は、思った。
…それは許さない。新巻さん、それは許さない。
…ほとんどの灯りが消えた。
…それなのに、なぜ、水面だけが明るいんだ?

「新巻!」
安居でさえ、新巻の名を呼んだ。水の中に落ちた新巻の姿は、見えなくなった。

安居は、すぐそばの嵐を見た。嵐はポケットの中をゴソゴソと探っている。
嵐がポケットの中から出したのは、ゴーグルだった。

「嵐!何をする…!」

嵐は、ゴーグルを装着し、水へと飛び込んだ。
安居は、嵐を止めようと手を伸ばす。ロープが激しくゆれ、ハーケンが1つ弾け飛んだ。

「嵐!」
安居は無我夢中で、自分の体についているロープを外そうとした。
涼は、安居の意図に気づいた。涼は叫んだ。

「安居!待て!やめろ!」
「助けに行く」
「バカか!おまえが行く必要はない」
「涼…」
「危険すぎる、やめろ」
「嵐が…」
「ほっとけ!行くな、安居。…行かないでくれ!」

安居の手の動きが止まった。

「新巻も嵐も、好きで行った。茂の時とは違う。
おまえは、茂をかついであの壁を登るんだろ?こんなところで溺れてる場合かよ?
…嵐はかなり泳げるんだろ?…なんとかなるかもしれねえし…」

涼は、水面を見た。新巻と嵐の姿は見えない。
「発光してる…、なんか、いるのか…」



嵐は水の中で目を見開いていた。
発光している何かと、ゴーグルのおかげで周囲はよく見えた。

…何か、ゲル状の生き物がいる。発光してる。
…おかげでぼんやり明るいし、着水した時のクッションにもなった。
…水中に落ちている瓦礫も、ゲル状の生き物に取りこまれていて、邪魔にならない。

嵐は視界の先に新巻の姿を見つけ、泳いで追いついた。
自分のハーネスについていたカラビナを使って、新巻のハーネスとつなぎ合わせる。

…問題は、この水圧の中、この人を連れて戻れるか…という。
…無理だ。

嵐は新巻とつながったまま、水の流れに身を任せた。



花は、朔也をつれてボートのふちまでやってきた。体はまだ水につかったままだ。
花は、ボートの中のお掃除ロボに顔を近づけて話していたが、雑音が大きくなった。
発電所の爆発音と、それに伴うあちこちの崩落音が雑音の正体なのだが、花は細かい状況がわかっていない。

「まつりさん、まつりさん、聞こえますか?…何か、ひどく雑音が入っているんですけど、そっちは大丈夫ですか?」

花の声に対する反応はない。
花は、傍らの朔也に声をかけた。

「声が聞こえにくくなった。…朔也くん、早く上がって」
朔也は、まだ水を吐きながら咳き込んでいる。咳き込みながら、朔也は言った。
「ゲホッゲホッ、ボク、もう二度と、水になんか入りマセン」
「違う、逆だよ」
花は、朔也を助けてボートに乗り移りながら、言った。
「ここ出て、落ち着いたら練習しよう。また、何があるかわからないから」
朔也は少し考えて、答えた。
「花さんが教えてくれマス?」
「うん。嵐のほうが全然、うまいけどね」


無事にボートに乗り込み、落ち着いたところで、突然朔也が我に返って頭を抱えた。
「イヤー!」
朔也は水に飛び込む前、いつもかぶっている帽子を脱いでボートに置いておいたことを思い出したのだ。
「見ないでー!見ないでー!」

朔也は必死で自分の後頭部を隠した。
花はそんな朔也にさらりと応じた。
「ああそれ、あたしも、なったことあるよ」

花は、ボートを方舟方向へと漕ぎながら、朔也に円形脱毛症になった時の経験を話した。
迷惑な連中に絡まれたこと。嵐が助けてくれたけど、怪我人が出て、嵐は大会に出られなくなりそうになったし、自分たちも処分されそうになったこと。

「こっちは全然、悪くないんだよ?…そしたら突然、出てきた。500円玉くらいの。うしろ頭に、ぬるっと」
朔也も、同意した。
「ソウ!ぬるっとした感触なんですよネ」
「そう、しかも急にできる」
「それ、どうしたんデスカ?」
「うーん、お医者も行ったけど、結局、あんまり気にしないようにしてたらいつのまにか生えてきたよ」
「気にしないほうがイイですかネ」
「アレルギーじゃなくて、ストレス性のなら、ね」
「帽子もかぶらないほうがイイデスカ?」
「通気性悪くなるからね。…でも、気持ちはわかる。あたしも、青紫にやられた時は、誰にも見られたくなかったから」
「…笑われるの、イヤなんです」
「誰も笑わないよ。ここに来てる人たちは」

朔也は、花の言葉を聞いて、帽子をかぶらずに荷物にしまった。

花と朔也は方舟のある空間に着いた。
蝉丸が罵倒で歓迎した。

「おせーよ!おめえら!寒いんだよ!30回くらいカゼひいたわ!」
「ごめん、全然動けなくて…」

蝉丸は、花も朔也もびしょ濡れなことに気づいて笑った。
「みんなびしょぬれかー!ハハハ!まぁ、無事でよかったわい」
「ナッちゃんも、お疲れさまです」

花とナツが笑顔で健闘を讃えあっている脇で、蝉丸が目ざとく朔也の頭を見つけた。

「あー?なんだそれ?なんだコレ?ぎゃはははは!おもしれー!5円ハゲ?10円ハゲ?」
朔也は蝉丸に頭をグリグリされながら花に訴えた。
「花さん!笑われましたヨ!笑われましたヨ!」
花は蝉丸をたしなめようとしたが、蝉丸は笑いながら朔也に言った。

「ははは、気にすんな気にすんな。ネタにしろネタにしろ!笑うヤツはオレがいじめてやる!」
「あんたダヨ!」
「おまえ、見かけで売ってるワケじゃねーんだから、いいじゃん!」
「…まぁ、頭の中に穴が開いてる人よりイイですかね?」
「ははは、その通り…、って、オレ?オレかよー!」

そんな会話でなごんでいる最中、お掃除ロボからハルが割って入った。

「花…、花、いる?」
「ハル?」
「発電所のなんかが爆発した。まだ続いてる」
「爆発?!火は出てるの?煙は?あんたたち大丈夫?」
「わかんない。とりあえず大丈夫。とにかく佐渡側へ渡ってる。あゆさんが出口知ってるらしいから。花も早く外へ出て。…ヤバイと思う」
「わかったありがとう、気をつけてハル!」

「花さん…」
ハルとの会話の後に呼びかけたのは、まつりだった。涙声だ。

「まつりさん?」
「…どうしよう…2人とも…浮かんでこないの…。新巻さんと、嵐くん。
水に落ちて、そのまま…」

涼と安居は、壁移動を終了して、まつりのいる足場へ戻ってきた。
涙声で会話につまるまつりからお掃除ロボをうばって、涼が話し始めた。

「新巻は、おまえを助けるために、足場のないバルブに飛び移って操作して、落ちた。それを助けようと嵐も飛び込んだ。
下は、逆巻く水だ。どうなったかはわからない。溺れたのか流されたのか。
助けには行けない。
…言っとくが、オレは何もしてないぞ、花。おまえのせいだからな。
…オレたちに恨み言なんて言うなよ。もう充分迷惑してるんで…」

涼は、頭を軽くはたかれた。まつりだった。

「涼くん。それは、言うことじゃない。イヤなことばっかり、言ってる…」

花は、うわごとのように「助けに行く…」と繰り返した。
蝉丸が悔しそうに言う。
「行けねえ。こっからじゃ助けに行けねぇよ」



新巻は、夢を見ていた。
吹雪。美鶴さん。犬たち。みんな、笑顔だ。
新巻は駆け寄る。嬉しかった。



嵐は、新巻と共に水に流され、地下水路のようなところに出た。
嵐の意識はしっかりとしていた。水面に浮かび、新巻を抱えて通路によじ登る。
新巻はぐったりしていた。

嵐は必死で新巻の蘇生を試みた。人工呼吸。心臓マッサージ。

「新巻さん!オレは、許さないから!…こんなふうに思いを遂げるなんて。花を助けて死のうなんて。…こんな形で死なれたら、花は一生、立ち直れない!新巻さん!」



ハル・小瑠璃・あゆの3人は、発電所の爆発を逃れ、移動を続けていた。
途中で角又と合流。角又とハルは久しぶりの再会だ。

「角又さん?!」
「ハル、久しぶりやな。…この上行ったら、ワシらが入ってきた道に出て、外に出られるはずや」

角又は、通路脇にある、上のフロアへとつながっているハシゴを示した。
しかし、移動を開始しようとした一行を、小瑠璃が止めた。

「待って。…風が吹いてる。この上は、風下になる。煙が来たら煙突状態になって、煙に巻かれておしまいになる。…風上に行く」

小瑠璃は、下へ向かう通路へと歩き出した。
ハルは、小瑠璃の判断に驚いて言った。
「小瑠璃?!下?…この状況で、下に行くの?…行き止まりとか、水で埋まってたり、隔壁が閉まってたり…」
「わからない、でも」
小瑠璃はきっぱりと言った。
「風が吹いてる」

ハル・あゆ・角又は、小瑠璃に導かれるまま、地下水路のような通路を進んで行った。
突然、ハル・小瑠璃の連れていた犬、バツが吠えながら走り出し、近くの横穴に入って行った。
一行がその後を追うと、別の地下水路のような場所に出た。
そこに数字を数える声が聞こえた。切迫した声だ。

「新巻さん!」
嵐が、数を数えながら新巻の心臓マッサージをしていたのだ。


あゆは、横たわる新巻を見た。
新巻の横顔が、ついさっき見た理可子の遺体に重なる。心臓がひやりと冷たくなる。

「どいて」
あゆは新巻の呼吸を確認した。呼吸はない。
小瑠璃が、荷物から人工呼吸用のポケットマスクを渡す。あゆはマスクを受け取りながら、嵐に言った。

「あなた、続けて。…ちゃんとできるの?」
「水泳部員は、全員習うんです」

嵐は心臓マッサージを続け、あゆはマスクを使って人工呼吸をした。

「ハル、手伝って。体を拭いて温める」
「あっ、うん」

小瑠璃とハルも動いた。

嵐は必死で新巻の名を呼んだ。反応はない。
あゆは、叫んだ。

「しっかりしなさいよ!情けない!」



新巻は、誰かに呼ばれた気がして振り返った。
あゆがいた。野球のユニフォームを着ていた。
「野球をしましょうよ」

新巻は、吹雪と美鶴さんと犬たちを見た。いつのまにか遠く置いて行かれてしまっていた。
「あっ…吹雪…美鶴さん…!」



ゴフッ、と激しく咳き込んで、新巻の呼吸が戻った。
新巻は咳き込みながら、まだ、自分の状態がよくわかっていなかった。
横たわり、呆然としている新巻に向かって、嵐は話しかけた。

「新巻さん…。そんなに、死にたかったんですか…?
あなたは、『生き延びた』とは言わず『死に損なった』と言った。…自分も死ぬべきだったと、思ってるんですか?…ずっと、見てた。あなたが、死にそうで。死にたそうで。
怖くて…あなたを死なせるわけにいかなくて…花が悲しむから…。
オレは、そんなの、許しませんよ…」

「だって…」
新巻の目から涙がこぼれた。
新巻の脳裏には、ついさっきまで一緒にいた、吹雪、美鶴さん、犬たちの姿が焼きついていた。彼らに置いていかれてしまった寂しさが、生々しく蘇る。
…待って。…待って。

「みんな…僕を置いて…行ってしまう…僕だけ置いて…行ってしまう…」

新巻の言葉に、嵐は容赦しなかった。嵐は涙を流しながら、それでも言った。

「だから、今度は置いて行くんですか?あなたは、それでいいんですか?
残された花は、あなたと同じように生き残ったことを苦しむんですか?
…新巻さん…あなたは花を助けてくれた。ありがとう。…でも…、花の気持ちを、あの時、少しでも考えましたか?」

新巻は体を起こし、嵐の顔を見つめた。

「花を助ける、守る、と言いながら…オレにはあなたが、死に場所を見つけて嬉しそうに見えた」
「嵐く…」
「新巻さん…、花をダシに、しないでください!」

新巻は、嵐の言葉を聞いて衝撃を受けた。
衝撃の中で、新巻は思い出した。

…あの日。雨が降ってた。
…美鶴さんは裸で、雨を受けようとした。
…僕は、ただ嬉しかった。
…でも、吹雪は美鶴さんに言った。
…「ダメだ。オレも鷹も見てる。ダメだ」
…そう言って美鶴さんにシャツを着せかけた。
…吹雪は、美鶴さんを大切にしようとした。
…嵐くんも、きっと同じだ。
…大切に、大切に思って…。

新巻の目に、さっきとは違う涙があふれてきた。

…ああ。
…僕は本当に。
…人を愛したことが、ないんだな…。

新巻は嵐を見つめた。
嵐は涙を流しながら、新巻に言った。
「あなたを絶対に、死なせない」

次号へ続く。


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