ネタバレ

June 10, 2016

7SEEDS 空の章3 動く

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章2 託すものからの続きです。

2016年5月28日発売 2016年フラワーズ7月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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蝉丸は必死で目の前の現実と向き合った。

…水は、どんどん増えてくる。このままじっとしててもこの空間はそのうち水で埋まる。
…道は、潜ってった先にある、方舟に続くドアだけ。
…ドアのカギは花のおかげで手に入った。
…あとは、ちょいと度胸だけ。度胸だけ、な!

蝉丸はいつも通りのヘラヘラ笑顔を作ろうとしていた。が、口元がこわばってうまくできない。

「茜です。海女です」

お掃除ロボから声が聞こえた。
蝉丸の耳は「海女(あま)」を認識せず「尼??」と認識していたが、ツッコミを入れる心の余裕はない。

「手ェ水に入れてみて、すぐしびれて感覚なくなるようなら、やめとき」
蝉丸はお掃除ロボの声にしたがって、手を水の中に入れた。

「…そうでもねぇけどな…」
「朔也、そのドアまでの距離は?」
「ドーモ、茜さん。うーんと、3,4メートル潜って、5,6メートル横穴を入ったらドアのある空間」
「流れはある?」
「さあー?水面は静かだぜ」
蝉丸がお掃除ロボに答えた。
「底だけ流れが速いこともあるで。あんたそれより、垂直に潜れるん?」
「う…。岩壁を伝っていったら…多分…行けるんじゃ…」
「とりあえずボートを壁沿いに寄せますネ。最短距離で行けるように」
朔也がボートを動かしながら言った。

嵐が会話に参加してきた。
「蝉丸、前に関東の倉庫シェルターで潜ったよな?あの感じで行けそうか?」
「あー」
蝉丸は思い出した。そうだ、そんなことがあったっけ。
「おまえがロープ張ってくれたヤツな。ありゃ、楽だったわ」

言いながら、蝉丸は心の中で言葉を続けた。
…あの時、嵐、先がどうなってるかわからないのに、潜ってったよな。
…嵐、おまえエラいわ。

茜がアドバイスを続ける。
「ロープある?身体に結んで行って」
「そんなモンねーよ!長いヒモもねーしな!」
「糸は…?」
ナツのおそるおそるの提案に「アホ!すぐ切れんだろ!」と即答する蝉丸。
「毛糸は?」
朔也の提案も「一緒だろ、アホ!」と蝉丸は却下した。

しかし朔也は、蝉丸の言葉を無視して上着を脱いだ。毛糸のセーター。
朔也は着ていたセーターのそでの部分から、毛糸をほつれさせ始めた。

「手編みダカラ、ほどきやすいと思う。結構長さあるから、束ねて三つ編みとかにしたら、ロープ代わりになるカモ?」

「手編み…?」
反応したのは花だった。
「誰の?」
「母の」

朔也は特に表情も変えず、淡々とセーターをほどき続ける。
蝉丸は真面目な表情で朔也に言った。

「…なら、お前、それ、やめとけ」
「別に。母が編んでくれた、って事実はなくならないし。ボウシ、まだあるし。…あと、ボクは絶対、潜らないからネ。そのかわりデス」

蝉丸は大きく深呼吸を1つして、準備体操を始めながら、言った。
「よっしゃ!お前の男気、見たぜ!」

ナツは、蝉丸が潜ると言い出した時から、自分は何もできないのかとずっと考えていた。
蝉丸が、怖い気持ちを押し殺して潜ると言い出したということは、ナツにもわかっていた。

…ほんとは、あたしが行ったほうがいい。蝉丸さんに何かあったら、あたしには助けられないから。
…でも。怖い。
…みんな、みんなできるのに。
…あたしと、何が違うの?

準備体操を終えた蝉丸がナツに言った。
「じゃあナツ、ここにちゅーして」
「えっ?」

ナツは顔をあげて蝉丸を見た。蝉丸は自分の左頬を突き出して、そこを指差していた。
「ここに、ちゅう」
「えっ?」
「なんべんも言わせんなよ!」
蝉丸は大声を出し、ナツはおろおろした。
「だって…なんで…こんな時に…?」
「こんな時だからだろ」

蝉丸は真面目な顔でナツを見つめた。
ナツもまっすぐ蝉丸の顔を見た。
照れるとかそういう感情は湧いていなかった。ナツはひたすら戸惑っていた。

お掃除ロボから安居の声が聞こえる。「バカか、蝉丸、何やってんだ。そんなことより…」

ナツは戸惑いながら、少しずつ蝉丸の頬に顔を近づけた。
…何秒くらい…?
…目をつむるのかな…?違うか…。

ナツは目を見開いたまま、蝉丸の頬まで数センチというところまで顔を近づけた。
その時、蝉丸はサッと顔の向きを変えた。

ナツは目を見開いたまま固まった。
蝉丸の唇が、ナツの唇と重なっていた。ナツはそのまま至近距離で蝉丸の顔を見ていた。
蝉丸は目を閉じていた。
ナツは何がなにやら、よくわからないまま固まっていた。

蝉丸は顔をナツから離し、ナツをまっすぐ見つめて真面目な顔で言った。
「あ、スマン、口がすべった」

ナツは固まったままひっくり返りそうになり、朔也は冷静に「気をつけてくださいヨ」とツッコむ。

蝉丸はナツにニカッと笑いながら言った。
「…とーぜん、ファーストちゅーだよな?」
ナツは固まったまま無言だ。
「…違うのかよ?!」
ナツは、固まった顔のまま、やっと口を開いた。
「…幼稚園の…」
「幼稚園とか猫とか、入れるんじゃねえ!!」

蝉丸は覚悟を決めた。
お掃除ロボの向こうから、安居・嵐・茜が蝉丸へいろいろアドバイスを投げてくる。

「何かうすいシャツがあったら着とき。岩とかでキズだらけになるよってに」
「ナイフは持ってけ」
「とにかくあんまり手足をバタバタさせんと、あと耳抜き」

蝉丸はぶち切れた。
「ああもう!うるせえうるせえ、ゴチャゴチャ言うな!」
安居・嵐、茜は口を閉ざした。

蝉丸は言った。
「涼ちん。何か言って」
「別に。いつも通りにしろ」
「いつも通りって?」
「適当に、気楽に、だ」

涼の背後から安居がそれじゃダメだの何だのと騒がしく言い募り、涼と安居の言い合いが始まる。

「ああもう、うるせえ」
蝉丸は、水の中に飛び込んだ。


固まっていたナツは、我に返った。

…蝉丸さん、今のキスはなんですか。
…イヤだ…。こんなの、イヤだ…。
…まるで、お別れみたいじゃないですか。

ナツと朔也は、蝉丸の身体に結んだ毛糸のロープをつかみながら、蝉丸の帰りを待った。
ロープは順調に伸びて行った。しかし、途中で止まった。

「蝉丸さん!何かあったら、すぐ戻ってください!」
「まだドアにはついてないハズ…ロープ、1メートルごとにコブ作ってマス。どっかにひっかかったのカナ?もしくは、岩に頭ぶつけたとか…?」

蝉丸が水中に入ってから何秒経ったのだろう?
ナツの頭の中を最悪の事態がよぎる。ナツは無我夢中で服を脱ぎ始めた。
心配と恐怖とで、ナツの呼吸が荒くなる。

「ちょっと、あんた!」
お掃除ロボから茜が声をかけた。

「そんなハァハァしたら、あかん!早い呼吸してから大きく息吸うたら、水中で意識が飛ぶことがある。口をすぼめて、ゆっくり息吐いて」
ナツは、言われた通りに口をすぼめた。
「1回息継ぎしてまた潜る時も同じ。ハァハァしたらあかん。海女の息の仕方や」

「朔也!」
蘭がお掃除ロボから朔也をどやしつけた。
「お蘭さん!ボク、ダメ!溺死不可避!!」

朔也と蘭のやりとりの傍らで、すでにナツは水中に足を入れていた。

ナツはロープを伝って泳ぐ。しばらく行くと、蝉丸の姿が見えた。
蝉丸は、横穴からの急流に押されて、それ以上進めないでいたのだ。

ナツは蝉丸のそばにたどり着いた。
蝉丸は、必死の表情で自分のそばに泳ぎ着いてきたナツに驚く。

…うそ!
…よし、もう限界、1回戻る!

蝉丸はナツを伴って、ボート付近へと戻った。

水中から顔を出した蝉丸とナツ。
蝉丸は、ナツに言った。

「カギ、お前に渡す。お前が、カギを開けろ。…行くぞ!」
蝉丸とナツは、ふたたび潜った。

横穴の急流に到達する。蝉丸は、急流の発生している横穴にナイフを刺し、それで身体を支えながら急流の流れている穴の前に自分の体を押し当てた。

…ペアマッチだぜ、ナツ。
…行け、ナツ。オレは、この流れを止めるからよ!

蝉丸は水中でナツに行き先を指差す。
ナツは必死で先へと進んだ。

水中のトンネルを泳ぎ抜け、方舟のドアのある空間へ出た。
ナツはいったん、水面へ顔を出す。水面はもうすぐ天井へと届きそう、かなりギリギリだ。

…ハァハァしない。ハァハァしない。
…急げ。

ナツは必死で潜る。
方舟へ続く部屋のドア。
ほの暗いが、ドアの鍵穴はちゃんと見える。

…急げ。
…流れがあって、うまく動けない。
…急げ。
…カギは、どこに。
…急げ。
…あれだ。カギ、出しにくい。
…急げ。

ナツは必死で、カギをカギ穴に差し入れ、指サックを使って指紋を押し当てた。

そしてナツは水面へと顔を出して、息継ぎをした。

…カギと指紋…これでいいの?
…急げ…。
…でも、水圧でドアが開かなかったら?
…急げ…。
…開いて!



蝉丸は横穴の急流に必死で耐えながら、いろんなことを考えていた。

…行ったか?ナツ。
…わかんねえ、もう離れていいのかどうか…。
…ナイフは、持っとくべきだな。
…ナツ…嬉しかったぜ。
…あんな、ドヘタレだったのによう。
…オレ、ちょっと、カッコよくね?
…なぁ…ナツ…。

蝉丸の呼吸はすでに、限界を超えていた。



朔也は、遠くに水音を聞いた。
水面に流れが出てきた。どうやら、水が引き始めたようだ。

「花さん!水位が、下がってきましたヨ!これで花さんのほうも、水が引くんじゃ…?」



ナツと蝉丸は、激しい水流に巻き込まれながら、開いたドアの中へ吸い込まれて行った。
先に気づいたのはナツだった。
固いコンクリートのような、床の上に転がっていた。蝉丸も転がっている。

「蝉丸さん?…蝉丸さん!蝉丸さん!…イヤだ!」
蝉丸は動かない。
ナツは必死で何とかしようとする。

…心臓マッサージ…?
ナツは必死で蝉丸の身体を押した。

「そこ…胃!おまえ…こういう時は、マウス・ツー・マウスだろーがよ…」

蝉丸は目を開けた。蝉丸とナツの目が合った。2人とも、涙目で、笑い合った。

「ははははは!…死ぬかと、思った。…死んだと、思った…」
「死なないでください!…それが一番、怖かった…」

ナツは泣き出し、蝉丸はナツの肩をしっかりと抱いた。

「一仕事の後は、気持ちいいな。…けど、寒いな…」
「はい…」
「見ろよ、うしろ」
ナツが振り返ると、巨大な空間が広がっていた。その真ん中に、やはり巨大な球体があった。
その球体は、ナツたちがいるフロアから、下へ降りる階段と、長い通路でつながっていた。

「あれが方舟か。105人のガキたちも、寒い思いして眠ってるんだろうな」



花は、ナツと蝉丸が無事に扉を開けてくれたことに感動していた。
しかし。
花のそばには、水音が迫る。水面がすぐそこまで、上がってきていた。

花はお掃除ロボに現状を報告した。

「…こちら側は、水が減りません。増えてくばっかり。…この隔壁には、スキマもないってことですね」

次号へ続く。

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