ネタバレ

January 10, 2016

7SEEDS 山の章26 審判2

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章25 審判からの続きです。

2015年12月28日発売 2016年フラワーズ2月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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百舌は、ただじっと座って、7SEEDSの「子供たち」から投げかけられる言葉を聞いていた。
「あんただけが、過去に生きているんだな」
秋ヲの言葉が耳の奥からじわりと脳に沈んでいく。

…貴士先輩。花が、生きていました。
…安居は、夏Bとなら、うまくやれるのか。しかし、花や秋のチームとはどうだ?
…一触即発の事態になっても、安居は冷静でいられるのか…?

安居と涼は、百舌に背中を向けて、茂を見つめていた。
百舌はその2人の背中を見つめながら、それでも自分の考えをまとめられないでいた。

百舌の思考がループを始める。ループする思考の中に「子供たち」からの言葉が挟まる。
「あんただけが過去につかまって…」「くるみたちになにかあったらどう責任を…」

「百舌さん」
百舌の思考ループを断ち切る糸口を作ったのは、嵐だった。

「安居は、もう銃を持っていません」

百舌は顔をあげた。新巻も、嵐の言葉に思わず振り返った。
「オレとナツを助けてくれようとして、安居は銃を捨てたんです」

嵐の言葉の背後で、お掃除ロボからナツがのろのろと事情説明しようとし、蝉丸に「今その説明はせんでエエ!」とツッコまれる。

嵐は百舌の目をまっすぐ見つめて言った。
「安居は、あなたたちの洗脳からも解かれてます。…もう、大丈夫ですよ」

百舌は嵐の言葉に何も反応できないまま、考える。

…洗脳…?なんだそれは…?
…「あなたのミス」
…そんなことはしてない。
…「それ、百舌さんの失敗だから」

「要さん」
小瑠璃が声を出した。
「安居も涼くんも、本当はすごく優しくて賢いよ。リーダーとして、ちゃんとみんなを守ってやれるはずだった。それをおかしくしたのは先生たちだよ。…わからないの?」
「そうね」
虹子が言葉を続けた。
「要さんがいないほうが、みんな落ち着くと思うけど。いつまでも監視したり管理されたり、バカみたい。こっちは忙しいんだから、死神なんかに構ってられないわ」
虹子のそばでこっそり、蘭が「死神にこだわってたくせに」とツッコミを入れた。

百舌は、相変わらず黙ったままだった。
「百舌さんよ?まだ、納得できねえべ?」
秋ヲが声をかけた。
「あのな、秋ヲだけど、オレたちも阿呆じゃないんだよ。あんたは夏A以外アホだと思ってるみたいだけどな、そうでもないんだぜ?安居にしろ、誰かが暴走したにしろ、オレたちはそれに支配されたりしない」
「無法地帯にはさせない、ってことよ」
蘭もきっぱりと言った。
「百舌さん、安居はバカでも、オレたちを信用してくれないかな?…パンピー(一般人)も、案外、阿呆じゃないんだぜ?」
「要さん」
源五郎が声を出した。
「僕らがあそこで教わったのは、ほんの、カケラみたいなものです。…ここでは毎日、新しいことを一から学んでる。それはとても…大切なことです。僕らはそうやって、これからも学んでいく。…だから…要さん。もう、僕たちを、卒業させてください」
源五郎の言葉に、牡丹が言葉をつなげた。
「寂しいでしょうけど、先生と生徒ってそういうものよ、百舌。転びながら走ってく子供たちを、ぬるーく見守っていてあげなさい」

…「卒業」…?
…寂しい…?

百舌にとっては、まったく思いつきもしなかった単語だった。

「あの…要さん」
鷭が声を出した。
「今、ここで、あんまり大事なことを決めないほうがいいです」
鷭は冷静に、百舌に現状を伝えた。
みんな、空腹で眠くて、幻覚を起こさせるような物質が充満しているような場所をずっと彷徨っていること。
自分の脈拍も普段よりずっと早く、呼吸も浅いこと。
自覚がなかったとしても、この環境は身体にかなりの負担をかけているはずだし、それは精神状態に直結すること。
要が怪我をしているのなら、それは尚更であること。

「…だから、重要な判断を、今ここで、しちゃダメです。外へ出て、1回寝てから、みんなでよく考えることにしましょう。…わかりますか?そうしてくださいね?」

言い聞かせるような鷭の言葉に、百舌は思わず「…年寄り扱い…」とつぶやいた。

…よってたかって。
…審判をくだされたのは…わたしのほう…なのか…?

百舌は頭を抱え込んだ。
しかし、徐々に頭の中の整理がついてきた。自分の次の行動も、決めた。
百舌はリュックの中に手を入れた。嵐が思わず身構える。

「警戒しなくていい、嵐」
百舌はリュックの中から、寝袋などのグッズをいくつかその場にドサリと出した。

「寝袋と、エアマット…短いがロープもある。…あとは、工夫しろ」
茂を連れてここを登りたい、と言った安居への、差し入れのつもりだった。

百舌は立ち上がった。
「安居。…涼。…小瑠璃。…源五郎。…あゆ。…虹子。…鷭」

百舌はかつての生徒たちの名前を呼んだ。
何か、言葉をかけてやらなければ、と無意識に思ってのことだった。
しかし。
何も言葉が出てこない。
百舌は、わかった。

…そうか。
…もう、わたしが何か、言うことは、ないのか。
…最終テストが終わり、彼らを送り出した時にかけた言葉。
…「がんばれよ」
…あれが、最後だったんだな。
…成長していくんだな、みんな。
…そうか。…わたしは、寂しいのか…。

百舌は安居たちに背を向けて、歩き出した。

「百舌さん、どこへ…?」
「くるみを捜す。…それこそが重要だ」
「…きをつけて」
嵐は百舌の後姿を見送った。
涼はちらりと、去っていく百舌の姿を目の端に入れた。
安居は振り向かなかった。


百舌が安居たちのそばを離れたことで、一同の緊張が解けた。
蝉丸がお掃除ロボを通じて安居たちに「命拾いしたな、てめーら!」と声をかける。

「でもさ…」
蝉丸の言葉に、やんわりと水を刺したのは、桃太だった。
「怖かったよ、安居たち。あゆさんも。…僕はすごく…怖かった…」
「そうだね、桃太」
花が、桃太の言葉を肯定する。

ナツは、その言葉を聞いていたたまれなくなった。
「あ…あの…花さん…すみません…あの…あの…」

ナツは頭の中のいろいろをうまく口に出せないでいた。
…安居さんが…花さんのことをレイプしようとした…そんなの全然信じられないけど。
…信じたくないけど、考えたくないけど、そうことがあったんなら。
…花さんにとっては、みんなが安居のことを優しい人ですとかいろいろかばう言葉を聞かされたのは、きっとすごくつらかったはず…。

花は、ナツに答えた。
「ナッちゃんが謝らないでください。気を遣わせてごめん。…アレでしょ?エエとこも見たんで…ってヤツでしょ?」
花は蝉丸にも視線を向けた。蝉丸も「そうなのよー」と応じる。
そして、安居がそんなことをやらかしたアホとは思わなかったと言いつつも「命の恩人でもあるわけよ」と付け加えた。

新巻とハルは、嵐の発言に驚いたという気持ちを正直に言った。
自分の大切な人である花を傷つけた安居、その安居を、花が聞いている場でかばったことを。
嵐は2人に答えた。

「花が聞いてないところでするより、いいと思う。
安居は、のたうちまわるほど苦しんできた…、それを知ってる。百舌さんを止めたかった。これ以上安居を傷つけてほしくなかった。
そして安居にも、これ以上花を、傷つけてほしくない」

嵐は、お掃除ロボを通じて、花に言った。

「花。いつか、ちゃんと、心から安居に謝らせるから。花が会いたくない、って言うなら、会わずにできる方法を考える。…あいつが、どれだけつらい目に遭ってても、その部分だけは、オレは絶対に許さないから」
「…うん…」

花は、嵐の言葉にうなずいた。
うなずきながら、花は思った。

…ありがとう、嵐。
…安居は、謝らないだろうな。
…ごめん、って言われても、あの恐怖や嫌悪は消えない。
…でもそれは、うちの父にされたことが、安居の中で消えないのと同じかもしれない。
…難しいね…。

そんな、嵐と花のやりとりの脇で、ハルは小瑠璃におそるおそる尋ねた。
「小瑠璃…あの…先生をみんなで…撃った、って言った…?」
「うん」
「…死んだの…?」
「多分。あの時は、何も考えられなかった。悪いとも思ってない。…怖いと思う?ハル」

小瑠璃は、いつもと同じ表情で、ハルをまっすぐ見て言った。
ハルはとっさに、小瑠璃の質問に答えられなかった。小瑠璃も、答えを求めなかった。
小瑠璃は、ハンググライダーを抱えなおし「急がなきゃ!」と歩き出した。
ハルも慌てて小瑠璃の後を追い、小瑠璃が抱えるハンググライダーの端を一緒に持った。


百舌が去り、安居たちも次の行動へと移った。
茂を連れて崖を登りたい、安居のその気持ちに変わりはなかった。
しかし今は、やるべきことがある。

「涼。オレは今、作業の途中なんだ。そいつを片付けてから、ここに戻って登る」
「安居、こっちは任せてくれていい、オレと新巻さんで…」
そう言う嵐の言葉を、安居は遮った。
「いや。方舟と、ナツたちのために、行くよ。茂…ちょっと、待っててくれ。涼も、手伝え」

嵐、新巻、そして、安居、涼、まつりが、隔壁を閉じる作業へと向かうことになった。
花、ナツ、蝉丸は、方舟探し。朔也は、花たちに合流すべく、移動を続けた。



角又とあゆは、佐渡と鍵島をつなぐ通路のひとつをひたすら歩いていた。
2人は、お掃除ロボの会話を、廊下のスピーカーから漏れ聞いていた。
静かになった。会話が一区切りしたせいもあるだろうが、スピーカーのないエリアに差し掛かったからでもある。

角又があゆに話しかけた。

「あゆ、あんた、何も言わんかったけど、ええのんか。あの、要とかゆうやつに言いたいことあったんちゃうか?それか、ここが元いた場所やってわかって、よっぽどショックやったんか?」
「ショックなんか受けてないわよ」
あゆは平然と、いつも通りの表情で答えた。
「単に、どうでもいいのよ。要さんに愛着もないし、特に恨みもないし。安居くんのこともどうでもいいし。あの場所が佐渡だったって言われても、それがどうした、って感じだし。…どうでもいいわ」
「…他の連中は思い入れありそうやったのに。あんたの場合、ほんまに本心からそう思てんやろな、って思えるからコワいわ。…あんた無敵やな」
「どういう意味よ。本心よ?…わたしは、鷹さんのほうが気になるわ」
「ああ…」
角又も、あの時の新巻の声を思い出して同意した。

…「よかったな…」「…もう一度会えて、よかったな…」

「えらい、寒い声やったな。こっちも、凍ってまいそうなくらい、冷たい声やったわ」
「鷹さんは、花さんを一番気にかけてると思ってたけど…違うのね」
「あんたもそんくらいはわかるよーになったんか。上達したやん」

あゆは、角又の言葉にムッとした。
…なんでいつもエラそうなのかしら、この人。

「けどな…ほんまに…思えるんやろか…もう一度会えてよかった、って。…ほんまに…?」
「人によるんじゃない?」

あゆは、角又の心の内など興味がなく、角又の思惑など何も察してはいなかった。
角又は、今、発電所に向かっている。
それは、さっきの映像の中にいた「ツノマタリカコ」なる人物について、確かめたいことがあるからだ、と言う。

「あの部屋じゃ、映像はごく小さくしか見えなかったものね。でも、ツノマタリカコ、って…?」
「オレの知り合いは、真野理可子」
「じゃあ、違うんじゃない?わざわざ名前を騙ったりしないでしょ?」
「…あんたは…ほんまに…」
「何よ?」

角又は、自分の疑念について、あゆに説明するのを諦めた。
そして、ふと夏Aが名字を持ってない件について思い至った。

「そういやあんたら夏Aは、名字がなかったんやな?」
「そうよ。…でも、冷凍睡眠に入る前に、実はみんな名字をもらったの。…慣れないから、誰も使ってないけど。日本で多い名前を適当につけたみたいよ。…わたしは、高橋ですって」
「高橋あゆ?!」
角又は素っ頓狂な声を出した。
「ヘンでしょ?」
「いや…名字のほうを適当につける方が、ヘンや」
「無意味よね」
「いや」

名字について何の思い入れもないあゆに、角又は言った。
名字というのは、家の歴史の重要なものであること。
未来へ送られる時に、わざわざ名字をつけたということは、こっちの世界で一から始めて、やがて家族を作り、家系図を書いていけ…という思いが込められていたのではないか、と。

「…あんたの先生たちは、色々間違うたんやろうけど、託した想いは、結構わかる気ぃするわ」
角又はあゆを見てニコッと微笑んだ。
あゆは角又の顔を無表情で見返した。

角又は歩きながら「詩経 国風 周南」を詠んだ。

桃の夭夭(ようよう)たる 灼灼(しゃくしゃく)たる 其の華
之(こ)の子 于(ここ)に帰(とつ)ぐ
其の室家(しつか)に 宜(よろ)しからん

発電所についた。
あゆは、角又の雰囲気がガラリと変わったことを感じ取った。

…足取りが鈍った。…警戒してる?
…こんな緊張してるの初めて見るわ。
…どうして?クモか何かが、出るかも、って?

「角又さん?どうかした?」
「…ちょっと…話しかけんといてくれ」

あゆには、角又の態度の意味がまったくわからなかった。
あゆは、見当違いの疑念を抱いた。

「ねぇ、あなたまさか、破壊工作に来たんじゃないでしょうね?」
「黙っててくれて、言うとるやろ」

角又は、さっきよりも強い口調で言った。
あゆはしかたなく、口をつぐんだ。

角又は、少しずつ、足を進めた。

…もう一度会えて、よかった…て。
…思えるんやろか?ほんまに?思えるんやろか?よかった、って?
…思えるんか?…それを、見つけても…。

次号へ続く。

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