ネタバレ

October 10, 2014

7SEEDS 山の章11 再生

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章10 結ぶからの続きです。

2014年9月28日発売 2014年フラワーズ11月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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嵐は目の前の機械に向かって懸命に語りかけた。

「花、ナツ、蝉丸、きこえるか?きこえたら返事して。
自分で通信を切り上げて自分の意志で動いたのなら、オレの声が届かなくても、そっちのほうがいい。
でも、もし幻覚を見ているなら、それはかなり危険なものらしいから。
クモのエサにされるんだって。クモを見かけたら用心して」

花は幻覚にとらわれたまま立ち尽くしていた。
足元の機械から、嵐の呼びかけが続く。

「花。何を見てるの?今、何を見てる?花、オレはここにいるから。オレはちゃんと生きて、歩いて、ここにいるから。花!」



花は、嵐に呼ばれた気がして振り返った。

「あ…?今、呼んでた?」
「呼んだよ何回も。どうしたの?」

嵐は、花がプレゼントしたマフラーを巻いて、嬉しそうに見せた。
花も、自分の誕生日にマフラーが欲しいとリクエストする。

花は、嵐と話しながら不思議な感覚がした。

…嵐と、何度も誕生日のプレゼントをしあった。
…でも、もらったものはひとつも未来に持っていけなかった。荷物に入れてもらえなかった。
…借りてた本だけ。

「嵐も、そうだったのかな…?」

花のつぶやきを、嵐は軽くあしらう。そんな未来なんてバーチャルな夢だったんだから忘れたほうがいい、と。
そんなことより、駅前にできたパスタのおいしい店に行こう、映画に行こう、それとも水族館?と嵐は次々に楽しそうなデートプランを提案してくる。

…これで、いいんだろうか…。
…こんなだったろうか…。
…なんで、これでいいんだろうか、なんて思うんだろう…?

花は足元を見た。落ちている木の枝を拾う。
木の枝は曲がっていて、ブーメランのように見えた。
花はそれを思いっきり投げてみる。木の枝は街路樹にぶつかって落ちた。

「花、人に当たったらヤバいと思います」
「あっ、…そうだよね」



嵐の呼びかけに続き、ハルも花に必死に呼びかける。
けれど反応はない。

蛍が声をあげた。
「嵐くん、わたしも話させてください」

蛍は、ナツと蝉丸に向かって呼びかけた。

「ナッちゃん、蝉丸さん、蛍です。聞こえてますか?
アリに連れてかれたけど、無事です、今のところは。
ナッちゃん、蝉丸さんと一緒ですか?何か、困ってますか?
…ナッちゃん、わたしが手相を見た時のことを覚えてますか?
ナッちゃんの手には道ができてる。困ったら、手を見てください」



ナツは自分の部屋の中で、愛猫ナッツを膝に抱きながら、自分のてのひらを見た。
ナツは、蛍の手相占いを思い出していた。

蛍は、ナツに言ってくれた。
“夢みる夢子さんだったのに、現実に目を向けて、地に足をつけて努力しようとしてますね”

…あれも、夢だったんだろうか?全部夢だったんだろうか?あたしは、変われないまま?
…違う…。

「…違う…」
ナツのつぶやきを機械がとらえ、ナツの声は、蛍たちに届けられた。

「ナッちゃん?!」
「ナツ!そこにいるのか?いるんだな?!無事か?!返事して!」

蛍と嵐の声が、ナツの耳に届く。
蛍の声が、ナツを導く。

「ナッちゃん、こっちです!手を見て、道を見つけて。ナッちゃんの歩いた道、ちゃんとそこにあるから!」

ナツは自分の両手をそろえて、自分の手の中をじっと見た。
手の中に、何かがあった。

…これは、あたしだ。

てのひらに乗っている小さな小さな自分。
ちょうど今の自分と同じように、膝をかかえて座っている。
でも。歩き出した。転んだ。立ってまた歩き出した。
誰かと出会った。
まつりちゃん。蝉丸さん。嵐くん。…みんな。

気づくとナツのてのひらの上に、夏のBチームのメンバーが勢ぞろいしていた。
ナツに背中を向けて、どんどん先へ歩いていく。

ナツは、自分の部屋を振り返った。

…この部屋が、居心地よく思えたこともあった。
…人はみんな怖くて、1人でいるほうがラクだと思った。
…1人がさびしいなんて思ったりしなかった。
…でも、今はさびしい。

「…さびしい…さびしいよ…」

ナツは、ナッツを胸に抱きしめながら涙をこぼした。
ナツは、なぜ、今自分がさびしいと感じているか、わかった。

…さびしいと思うのは、楽しいと思った時が、あったからだ。
…幸せな時を知ったから、さびしいことも知るんだ。
…あたしは、幸せになったことがある。
…みんなところへ、帰りたい。

ナッツが、にゃあと鳴いてナツから離れた。
いつのまにか、ナツの両親と弟のケイタも、ナツを笑顔で見つめていた。
ナツは、家族に向かって、涙だらけの笑顔で、頭を下げた。

「今まで育ててくれて、ありがとうございました。…行ってきます!」
ナツの家族は、笑顔でナツに手を振った。



ナツは身を起こした。
目の前には、円盤型の機械があった。
機械の足元が光っているおかげで、真っ暗闇ではない。
この機械は見たことがある。

…戻って…来た…?
…どっちが、現実…?

「あ、あの…蛍ちゃん…?」
「ナッちゃん!」
「ナツ!」

嵐と蛍は、ナツが幻覚から覚めたことに喜び、すぐに、マスクをすることやクモがいないかなどの注意を促した。
そしてナツは、自分のすぐそばで眠り込んでいる蝉丸の存在に気づいた。

「蝉丸さん、蝉丸さん、起きて!」
「…うるせ…」



蝉丸は、母親と2人で食卓を囲みながらつぶやいた。
「…外野がうるさくなってきたぜ」
「なんのこと?」

蝉丸は、昔からどうしても母親に聞きたかったことを切り出した。
「…オレいっこ、どうしても聞きたかったことがあるんだわ。
…オレの父親って、誰よ?」

蝉丸の母親は優しく微笑んで言った。

「…昔、会ったことあるんだけどね。小さい頃」
「…やっぱり、あいつかな。いい服着て、なんかオモチャくれた」
「そうよ、あんたが考えてる通り」
「…そうか、それでいいのか。…あいつが父親だって思ってていいんだな」

蝉丸は母に、尋ねた。母は、答えた。
蝉丸の父親を愛していたこと。愛していたから、蝉丸が生まれたこと。

「母ちゃん、オレのこと、大事だった?」
「あったりまえじゃない。何より、大事よ」

蝉丸の母は、蝉丸をぎゅっと抱きしめた。
蝉丸は、思った。

…じゃあ、いいや。
…じゃあ、いいんだ。またな、母ちゃん。
…さよなら。



「…おい、目が覚めたほうが真っ暗って、どーなってんだよ?…もー、さっきからなんかうるせえしよ。なんだこのオモチャ?」

蝉丸が幻覚から覚め、ナツ、嵐、蛍がホッとする。
嵐が蝉丸に、こちら側の声が聞こえていたのか質問し、蝉丸が「聞こえてはいたけれど、TVの中の遠い音声のようで、返事しようとは思わなかった」と答える。

「聞こえてるけど反応できない?じゃあ、花もそうかもしれない」

嵐たちはふたたび、花への呼びかけを始めた。

「花、自分で戻れる。戻れるんだ、花」
「そこは幸せな場所だと思う。会いたい者に会える。違う、って自分で気づくしかない」
「花、オレも会いたい。幻覚じゃなく、…会いたい」

花は、目の前にいる嵐に話しかけた。

「嵐、…あたし、未来の話がしたい」
「…やめようよ、それもう」
「話したい。嵐と」

花は、自分の心の中から、嵐に話したいことがふくらんでくるのを感じた。

…あの世界のこと。あそこで見たもの。食べたもの。出会った人たち。歩いた場所。楽しかったこと。ドキドキしたこと。学んだと思ったこと。間違ってるとわかったこと。 自分自身のこと。傷ついたこと。傷つけられたこと。

「…話したいの。あたしが、ダメダメだったこと。変わろうと思ったこと」
「花…、花はそのままがいい。何も変わらなくていい。そのままの花が好きなんだ」
「…違う…」

花の中で違和感がふくらむ。
…そのままの花が好き、前はそう言われたら、嬉しかったんだと思う。
…でも今は。

目の前の嵐の姿が、少しずつ遠ざかっていくように、花は感じた。
花の足元の機械は、嵐の声を伝えていた。

「花に会って話したいことが、いっぱいたまってるんだ。
こっちに来て、いろんなものを見たよ。それを全部話したいんだ、花。
会わせたい人たちもいる。大事な人が増えたんだ、花。花もそうか?
…会いたいな、花」



「嵐と、話したい…」
花は、涙だらけになりながら、遠ざかっていく嵐に告げた。

「さよなら…。未来で、あなたに会う」



「花!!!」

花は大声に気づいてハッとした。
藤子ちゃんが必死の形相でこっちへ向かって走ってくる。
ちさちゃんも。
「えっ…?」
「後ろ!!」

花は振り返った。巨大なクモが、今まさに、花に襲いかかろうとしていた。
次号へ続く。

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