ネタバレ

January 10, 2015

7SEEDS 山の章14 残照

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章13 追跡からの続きです。

2014年12月28日発売 2015年フラワーズ2月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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花は左腕でクモの網を受け止め、わざとクモの網にかかった。
花の体はクモに引き上げられる。
花を引き上げているクモの足元には、クモの網に全身を覆われた新巻がいた。
新巻の体はハンモックに横たわっているような状態で、全身をクモの網に覆われている。

花は、クモと新巻の体の間に滑り込んだ。

新巻の体に、キノコの卵嚢を埋め込ませることは何としてでも阻止しなければいけないという一心で、花は横たわる新巻の上に覆いかぶさるようにクモを防いだ。
花の左腕はクモの網の中、右手には松明。
身動きが取りにくい。

「新巻さん!目を覚まして!起きて!」

花は左手を使って必死で新巻の顔を叩いたり揺すったりした。
しかし新巻は目覚めない。
クモは花の松明におびえつつも、花たちのそばから離れようとしない。
遠巻きにしながら花たちのそばをうろついている。

地上にいる藤子とちさは、今自分たちに何ができるのかを必死で考えた。

「そうだ、ハルの笛、あたしが借りたままだった」

藤子がリュックからハルのホイッスルを出す。
お掃除ロボを抱えながら藤子が走り出した。

「小瑠璃さん、一緒に頼む!」

藤子のホイッスルと小瑠璃の笛の音が響き、花のそばにいたクモがそれに反応した。
藤子の方向にクモが集まりだす。

お掃除ロボの向こうから嵐が声をかける。
「すみません、何がどうなってるんですか?花は?」
「説明しづらい、とにかく新巻さんを助けようとしてる!」

ちさが新たな松明を持って藤子に続く。
足元に松明を置き、細い棒を持って構えた。
藤子の音に反応して集まってくるクモを、薙刀方式で追い払う。

「花さん!今のうちに新巻さんを戻して!」
「はい!」
花は必死で新巻に呼びかけた。

「新巻さん…藤子ちゃんとちさちゃんが助けようとしてくれてる。…戻ってください。
…新巻さん…どんな夢を見てるのか想像できます…。
きっと、吹雪さんと美鶴さんが生きてて、野球をやってる…。
あたしも見ました。…現実と区別がつかないほどリアルで…。
でも、それはウソです。現実のあなたはここにいて、クモのエサにされようとしてる!」

新巻は花の言葉に反応しない。
幸せな表情を浮かべたまま眠り続けている。

「新巻さん…吹雪さんたちのことだけじゃないんですよね?犬たちが亡くなったのが、つらすぎるんだ。あなたはまったく責めないけど…」

花は一瞬、考えた。
もし、新巻が、このままエサになってもいいから、夢の世界にいたい、と言ったら?
放っておくか?

花は叫んだ。
「イヤだ!イヤです!絶対に助ける!あなたがあたしにそうしてくれたように!」

花は、さっきもたらされた情報を思い出す。
“水のそばだと幻覚を見ない”
花はポケットからボトルを出した。新巻の顔に水をかける。
新巻の反応はない。
花はボトルの水を自分の口に含み、新巻に口移しで飲ませた。
新巻の反応はない。

新たなクモが花たちにせまりつつあった。

地上のちさと藤子は、花たちに迫りつつあるクモの数を見て戦慄していた。
1匹だけではない。2匹、3匹…とにかく、たくさん後に控えている。

藤子は自分の近くにある大きな設備が何なのかわかった。
これは、水車だ。水車を利用した水時計だ。
ちさが薙刀代わりに使った細い棒は、水時計の秒針だ。

藤子は設備の周りを照らして観察する。
水が送られていたらしいパイプを見つけた。

「源五郎くん、水のそばだと幻覚は見ない、って言ったよね?」
「らしいです。湿度が高いだけでも幻覚を見ない、って映像の中では言ってました」
「ここに水を流せたら…」

突然、新しい音声が会話に割って入った。

「ちょっと、さっきから何やってるのあなたたち?!そんな危険な状態でグダグダと。
鷹さんもよ。バカじゃないの?」
「やっと音声がつながったわい」

新たに参加したのはあゆと角又だった。

あゆと角又は、軽く状況を説明した。
守衛室のような部屋にたどり着いたこと。
その部屋には、モニター画面がいくつもあり、そこから部屋の監視カメラ映像やお掃除ロボが送ってくる映像を見ることができること。
そのモニター画面から、新巻と花がクモの網に捕らえられ宙吊りになっている様子や、お掃除ロボを抱える藤子の顔も見えていること。
角又が部屋のパソコンなど機械類を起動させ、やっと音声を送れるようになったこと、など。


あゆは、モニター画面を見ながら新巻に向かって呼びかけた。
「鷹さん、あゆよ。聞こえる?何みっともないことしてるの。がっかりさせないでほしいわね。
だから花さんなんかとじゃなく、わたしと一緒に行けばよかったのよ。
きこえてるの?バカはくたばるしかないのよ?」

あゆの呼びかけをよそに、藤子と角又は水時計に水を引く方法を模索する。
角又が部屋の資料を探し、調整室のひばりが水道の配管図から水の元栓の位置を見つけた。

「えっと…その元栓の部屋の近くに、点がある…なにこれ?パーセウス…?あ、ペルセウス?」

「それは、ボクです。ペルセウスのペルです」

お掃除ロボの1つが反応した。ナツと蝉丸のそばのお掃除ロボだ。
蝉丸が驚いて声を上げる。

「えっ?こいつしゃべるの?」
「そうなんですよ」

ひばりは、コントロールルームからナツと蝉丸に水道の元栓をあけるように指示する。
すでにロウソクをたくさん手に入れていた蝉丸とナツは、水道の元栓を目指して歩き出した。
角又もナツたちに声をかけた。

「2人、死にそうや。早いとこ頼むわ」

花は、万策尽きていた。
花にできることは、松明を落とさないように持っていることと、新巻に声をかけながら新巻を抱きかかえていることだけだった。
クモたちが少しずつ花と新巻を包んだ網を強化していく。



新巻は、幻覚の中で野球をしていた。
バッターボックスには吹雪。スタンドには美鶴さん。

「どうした新巻、早く投げろや!」
「頑張って2人とも!」

新巻の動きがふいに止まる。
どこかで誰かの鼓動が聞こえる。

…誰の…鼓動…?

新巻の目から涙がこぼれる。
新巻は、本当は覚えていた。
犬の吹雪と美鶴さんと、ずっと一緒に旅をしていたことを。
今、目の前に見えている吹雪と美鶴さんの姿は、夢なのだと、わかっていた。

…わかってる…これは、夢だ…。
…戻らないといけない。
…でも。
…ここに、いたい。ここに、いたいんだ。



ひばりと角又の指示で、ナツと蝉丸が水道の元栓のある部屋にたどり着き、角又のパソコンと連携して水が水時計に送られてきた。
水は茶色く濁っていて、水車をまわすほどの威力はない。
けれどクモたちをおびえさせるには十分だった。

花たちのまわりの空気が変わる。

新巻は、急速に消えていく幻覚を涙で見送った。

…僕には、まだやることが残ってるみたいだ…。
…吹雪…美鶴さん…。
…また来るよ。会いに来る。
…必ず会いに来る…。



「えっ?何これ?」
新巻は幻覚から目が覚めた。

「何って、クモの巣につかまってるんですよ!」
「クモ?!」
「もう、遅いです新巻さん!」
「花さん、動ける?」
「全然…右手に松明があります」

新巻の体は、まだ動ける余地が残っていた。
新巻は松明を持っている花の手を取り、足元のクモの網を燃やした。
少し動ける範囲が広がったが、地上に降りるのは難しそうだ。

「花さん、そこに通風口が!行けますか?」

花と新巻は通風口へ入り込んだ。クモの入ってこれない大きさだ。
藤子はお掃除ロボを通じて、嵐に花の状況を報告した。
「嵐くん、花たちは通風口へ入った。クモは入れない大きさだよ」
「よかった…。君たちが危ないのでは?」
「クモたち、怯えて動きません」

元栓から送られてくる水はうまく排水できないらしく、足元に水が貯まっていく。
そのせいかクモは下に下りてこようとはしない。

藤子たちは、床に転がっていた花と新巻の荷物を、クモの網をつかって花に引き上げさせた。
さらに角又と蝉丸に、水を止めさせる。

当面、クモの脅威はおさまった。
藤子、ちさは床から、花と新巻は通風口から、なんとか他のメンバーとの合流を試みることにした。

花と新巻は、無事に荷物を確保し、通風口の中に座り、呼吸を整えた。

「どうも…お世話かけたみたいですね…ずっと聞こえてたのは、花さんの鼓動だったんですね」
「幸せな夢を…見てましたか…?」

新巻は一瞬黙り、すぐに花に笑顔を見せた。

「さあ、何かへんな夢を見てた気もしますが、忘れました。…行きましょう、どこにつながってるかわかりませんが」



守衛室の監視モニターから、花と新巻の姿が消えた。
あゆは、さっきからずっと続くイライラが治まっていなかった。

「…どうして、腹が立ってるのかしら」

あゆの脳裏には、さっきの様子が焼きついていて離れなかった。
捕らえられた新巻、それを助けようとした花、まるで抱き合うようにクモの網の中に捕らえられていた2人。

「あそこにいたのが、わたしだったらよかったのに…」
「かわいい、嫉妬やん。当たり前の反応やろ」
角又が指摘した。

あゆは不思議な気持ちで角又の言葉を聞いていた。

…嫉妬…?
…花さんに、わたしが…?

「心配せいでも、花は彼氏持ちや。ほやからあんたが、新巻さんをしっかり支えたったらええんちゃう?新巻さんには、ちょっときついくらいの女がええと思うで」

もの想いにふけるあゆを放置して、角又は守衛室のいろいろな資料を調べながら、呼びかけた。

「ひばり、それから源五郎くんとかいう人。お互い、情報を共有してみんなの位置をつきとめようや」

次号へ続く。


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