ネタバレ

November 10, 2017

7SEEDS  外伝 名もなき腕

【注意】この記事は 7SEEDS 外伝 のネタバレ記事です。【注意】

【注意】7SEEDS 外伝は 2つの物語があります。

もう1つの物語はこちらです。
■前編 New Team
■中編 種子の行く先
■後編 未来へ
2017年10月28日発売 2017年フラワーズ12月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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Gポイント





公園の野外ステージ。
オレらの出番だ。
軽快な和太鼓でリズムを刻むのは、紅一点のシズル。
そこに、ボノのキーボードが加わる。
そして、マサオ、オレ、有衛(ありえ)キイチがノミとげんのう(かなづち)を持って舞台中央へ。

オレらはバンドではない。主役は丸太だ。
マサオとオレは、リズムに合わせて丸太を削っていく。
メンバー全員が、リズムに合わせて踊ったりポーズを取ったりしながら、短時間で丸太を削って造型する、それがオレらのパフォーマンスだ。

「フィニーッシュ!」
今日の作品、踊るネコの像が完成。
それなりの歓声とそれなりの拍手に送られて、オレらは舞台を降りた。

「客、増えた?」
「違う、この後のアイドル見に来てんの」
「しっかし、そろそろ次の近代展に出す作品にかからないと…」

ぼやきながら舞台裏で帰り支度をするオレらの背後に、男が近づいてきた。

「有衛キイチくんと、愉快な仲間たちによる、ノミノミ・パフォーマーズの皆さん?」
「ハイ。リーダーのキイチですが、何か?」

男の名刺には「政府職員・末黒野貴士」とあった。

男は言った。
「仕事を頼みたい」
「仕事?!イベントですか?」
「前座でもにぎやかしでも、なんでもやりますよー!」
オレも、みんなも、いつものようなイベント出演依頼だと思った。
けれど、男の依頼は想像を超えていた。

「仏像を、彫ってほしい」


オレらは、男に連れられて山奥に行った。
岩壁がむき出しの山。男はそこを指さして言った。
「仏像を、彫ってほしい。岩壁に」
「はぁぁぁ?…ちょっ…ちょっと待って、あの…岩壁?そんな、でかいのを?」
「ここはまだ、小さいほうだ。ここには文殊菩薩を。他に、全国7箇所に、7体の仏像を彫ってほしい」

オレは、焦った。
「いやあの、ここまで来てナンだけど、オレら仏像とか彫ったことなくて。もっと、ちゃんとした仏師の人に頼んだほうが…」
「この仏像に、魂は必要ない。本物でなくていい。形だけが、必要だ」

シズルがあからさまにムッとした。
「あらあら、ずいぶん失礼な…」
オレも、ちょっとイヤな気分になった。
「あのね…オレらも一応、芸術家のはしくれなんですけど…」
オレは、やんわりと不満を表明した。

けれど、男の言葉は容赦なかった。
つまり。
君たちに傑出した才能があれば、とっくに世に出ているはずだ。
しかし、それがないから、中途半端なことをしているのだろう。
けれども、君たちの腕は、早くて正確だ。そこを見込んで仕事を依頼している、と。

男は淡々と条件を提示してきた。

期限は17年。17年のうちに7体の仏像を彫って欲しい。
そのために、住むところや生活費も含めてのあらゆるサポートをする。
仕事のやり方、どの仏像から彫るかの順番なども自由。

マサオが、おそるおそる質問した。
「あ…あのさ…、ギャラは?10万や20万じゃ…」

男は答えた。
「1体につき、1人1000万払う。着手時に半分の500万、1体完成したら残りの500万ずつ、払う。非課税だ」

男は別れ際に「他言無用だ」と念を押した。

男と別れて、オレら4人になった。
まず最初に出た言葉は
「うさんくさーーーー!」
だ。

「なにあれーー?」
「何の犯罪に巻き込まれようとしてんの、オレら?」
「何だろね、仏像?宗教団体のシンボルとか?」
「完成した瞬間、消されるとみた」
「一千万なんて、払うわけねーじゃん!断るよな、キイチ?」

オレは、すぐに答えられなかった。
胡散臭い申し出だったが、痛いところをつかれたからだ。

「…痛いとこ、つかれた」
「魂はいらない、ってヤツな」
「どうせオレらの作るものに、魂なんか入ってませんよ」

メンバーそれぞれ、そこにはひっかかっていた。
が、とくにオレはそこが痛かった。
大学時代、いつも言われていた。
器用で手が早いけれど魂が入っていない。気持ちがこもってない。
「別れたヨメにも言われたわー」
オレのぼやきに、ボノとマサオが笑いながら答えた。
「出来婚して2年で別れたヤツ」
「落ち込むな、落ち込むな!」

オレは、あいつの写真を見た。赤ん坊。オレの息子。
「息子さんに、会いたいの?」
シズルが聞く。
「元ヨメが会わせてくれない。金にもならない作品作って、って愛想つかされて…」

オレは、思った。
「息子に、金、送ってやりたい」

メンバーはあっさり、同意した。
「キイチがやるなら、やるけど?」
「ね?」
「ええーーっ?」
オレは驚いた。

ヤバイだろうと思いながら、仏像を彫り始めた。
岩壁は、すごく硬かった。
政府職員の男、貴士さんは言った。

「当たり前だ、硬いところを選んでるんだ。年月が経っても、地震に揺られても、凍結しても、残ってて欲しいんだ」
貴士さんのそばに、もう1人、男がついてくることがあった。
貴士さんより、若い男。オレらとそれほど年が変わらない感じ、もしかしたら年下かも。

「なんのためか、教えてくださーい」
シズルが大声で聞いた。
貴士さんは、言った。
「目印だよ」

ヤバイだろうと思って始めた仏像彫りだったが、意外に楽しかった。
金もキャッシュで、すぐ払ってもらえたし、必要なものは、すぐに用意してもらえる。
4人で仏像のデザインを考え、作業工程を考え、掘り進む。
オレらのグループ名「ノミノミ・パフォーマーズ」のノミは、道具のノミと「飲み」をかけている。
作業の後、打ち合わせをしながら、みんなで飲むのも楽しかった。

「これ、黙ってても見つかるでしょ?」
「テレビの取材がくるかもー?」

オレは、息子が見るかもしれないと、ちょっとだけ思った。
魂なんか、入ってなくていい。金のためでいい。
息子に送る金のために、頑張ってもいいじゃん?
オレ、父親っぽい?
…全然、芸術してる気がしないけど。

3体めの作業に入った時、マサオが抜けた。
「このまとまった金で、なんか事業始めたい」
マサオは、彼女と結婚したいらしかった。
しかたない。ボノとシズルと、3人で作業を続ける。

ある日、オレにかかってきた電話。
元ヨメの母親からだった。息子をおしつけて、元ヨメが逃げた、と。
息子のために送った金なのに、元ヨメが全部持ち逃げしたのだ。

「息子さん…引き取れば?」
「ムリ」
シズルの質問に、オレは即答した。2歳から会ってない。今、10歳か。
「今さらオレに、会いたくないっしょ」
「怖いんだね?」
「怖い。卑怯でゴメン」
「知ってる。…あんた、顔だけだもんね。あたしたちのことも、どうするの…」
オレは、シズルとだらだらつきあっていた。

シズルの提案もあって、オレは金を元ヨメの母親、あいつにとってのおばあさんに宛てて、送ることにした。
正直、息子に対して愛情があるのかどうか、わからない。
思い出も、ほとんどない。
ただ、一緒に絵を描いた。それだけ。
おまえはもう、覚えちゃいないだろう。
何もしてなくてごめんな。する気もなくてごめんな。
でも。この仕事だけは、ちゃんとやり遂げておまえに金を送るから。
おまえのための、仏像だと思うから。


しばらく時間が経った。
事業をやるといって抜けたマサオから、電話が来た。
「最初に彫った文殊菩薩、たまたま見に来たらさ、その下で、工事やってて」
「なんで、たまたま見に来たのさ?やめたくせに」
「…事業に失敗して、破産した。そして、フラれた。…もう1回、混ぜて」

マサオと再会して、ついでにみんなで文殊菩薩を見に行った。
かなり、大規模な工事をやっていた。
シズルが工事の人に大声で尋ねた。
「すみませーーん。何の工事ですかーー?」
「なんか、シェルターらしいって…」
「おい、黙ってろ」

気になったので、貴士さんに聞いてみた。
貴士さんは、驚くほどあっさりと話してくれた。
あと5年で、人類は滅びること。
オレたちが彫っている仏像は、未来に送られる若者たちの目印になること。
目印の下に、倉庫シェルターを作っていること。

世間の誰も、そんな話をしていない。ネットにもあがってない。
でも。
オレは、貴士さんの話を信じた。

…オレも、滅びるんだろうか。何者にもなれないまま。
…息子も、滅びるんだろうか…。

オレは、仲間と一緒に作業を続けた。
時折、涙がにじんだ。
目印なら、なんの形でもよかっただろう。
仏像にしたのは、せめてもの祈りなんだろう…。


期限ギリギリに、ラストの千手観音を彫り終わった。
「お疲れ。君たちは、どこのシェルターでも入れる。数人なら、家族や友人を追加しても構わない」

貴士さんは、そう言ってくれた。
オレは、ずっと考えていたことを、貴士さんに頼んだ。

「貴士さん。お願いがあります。…オレの息子を、未来に送ってもらえませんか?…あいつ、ハタチになる前に、それが来るんです。あいつ…美大に入ったって…オレの母校なんです…知らないと思うのに…。あいつを…未来に…」
「守宮ちまきくん。候補に入れてある」
貴士さんが、オレの息子の名前を言った。

「君より才能があるらしい」
オレは、それはちょっとイヤだな、とか思った。
「君と一緒に、シェルターに入ることもできるが?」
「いや…それは…、嬉しくないでしょう」
オレは断った。そして頼んだ。涙が出てきた。
「未来へ、送ってやってください。貴士さん…、あいつは、あんまり社交的な性格じゃないそうです。…やって、いけますかね…?」
「ちょうどいいチームが、1つある」
「食べることにも困る世界なんでしょうか?そんな中で、芸術家は、必要とされるんでしょうか?」
貴士さんは、表情も変えずに、きっぱりと言った。
「そういう世界なら、なおさら必要だと、僕は思う。…キイチくん、君が魂込めて彫った仏像を、未来で息子が見るだろう。うちの娘と、会うかもしれないな…」

オレは、仲間と一緒に、同じシェルターに入ることにした。
シェルターの中で、パフォーマンスをやる。
熊本のおばあちゃんも、同じシェルターに入れてもらうことにした。
あいつの話を、たくさん聞きたいから。


…。
…。


遠い未来。
未来へ送られた種子たちが送る日常。
「ちまきさん」
花が呼びかける。
「これ、絵の具になるかな?キレイな青い土。毒とかじゃないよね?」

ちまきの髪型は、父親のキイチととても似ている。けれどそれを、誰も知らない。
ちまき本人でさえも。
みんながちまきの名前を呼ぶ。
ちまきは淡々とそれに応じる。

「ちまきがなんか、女子に人気!」
嫉妬する蝉丸に、牡丹がツッコミを入れた。
「そりゃそうでしょ。物静かで、ソフトで、サラッとして、しゅっとして、涼しげだもんねー」
「うるさくて暑苦しいのはダメなのかよ」
蝉丸が混ぜっ返す。

新が、ちまきに手を伸ばす。くるみが新に聞く。
「新も、絵が描きたいの?」

ちまきは、自分に向かって手を伸ばす新に、優しい視線を向けた。
「僕の一番古い記憶は、父親と絵を描いたことだよ。…2歳から会ってないんで、どうでもいいんだけど」
「三つ子の魂、百までね」
くるみが新を抱きしめながら言った。
「新も、絵と音楽、好きな人になってほしいな…。見届けられるかな…」


時間は流れてゆく。


伝えたいこと。伝わったこと。伝わらなかったこと。伝えなかったこと。
それそれに確かにある。
自然の中の1つの種。
人の、はてしない、はてしない、その行く先。

終わり。

※ラストシーンは、想像がかきたてられるシーンになっています。
文字は「伝えたいこと…」以下の文章だけです。
最後のページは、はてしない未来の1シーンを思わせる風景が描かれています。
ちまきが作ったロボット慰霊碑が苔むして古ぼけている。
どこからか子供たちの笑い声が響いている。
最後の1コマの中央にあるのは、ロボット慰霊碑の奥に見える、方舟…という構成です。

子供たちの姿ははっきりとは描かれておらず、誰の子供なのか、方舟と関係があるのかどうか…は、はっきりと明示されてはいません。


■あらすじINDEX




reading7seeds at 07:00|PermalinkComments(7)