ネタバレ

November 10, 2014

7SEEDS 山の章12 共鳴

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章11 再生からの続きです。

2014年10月28日発売 2014年フラワーズ12月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

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単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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花は、幻覚から覚めた。

けれど、目の前の事態にすぐ反応できなかった。
ついさっきまで、嵐と穏やかな日常を過ごしていた。あのままあの世界で暮らしていくという選択肢もあるとすら思っていた。けれど、そんなものはないと気づいた。

気づいた瞬間、目の前には理解できないものがあった。頭上から何かが迫ってきている。
自分の体よりもはるかに大きいなにか…生き物…クモ?

…何…これ…クモ…なの?…動け、足!

花は叫び声と共に足を動かした。自分に伸びてくるクモの長い脚を避ける。
必死で体をよじりクモから逃げようと試みる。
藤子とちさの姿が視界に入る。花は必死で叫んだ。

「藤子ちゃん!ちさちゃん!ダメ!来ちゃダメだ、逃げて!!」

花は、藤子とちさから走って遠ざかる。クモは天井づたいに花を追う。

藤子とちさはガタガタ震えながら花とクモを視線で追う。
「あれは…あれは、クモなんですか?」
「なんであんなにでかいのよ!」

花は通路の奥へ向かっている。暗そうだ。

「ふ…藤子さん、火があったほうがいいんじゃないですか?」
「あ…そっ…そうだよね…松明を…火を…火をつけなきゃ!」

藤子とちさはガタガタ震えながら、荷物から松明を出し火をつけようと試みる。
手が震えてなかなかうまくいかない。

花は走ったがすぐにクモに追いつかれた。
クモは糸を網状にして花にぶつける。花は全部をよけきれない。
花はクモの網にひっかかり、引きずられる。
花はもがく。わめく。


「花ぁっ!」
花の耳に嵐の声が届く。

…嵐が呼んでる。まだ、嵐の声が聞こえる。
…まだ、夢の続きなのか?これは現実じゃないのか?
…あの嵐は本物じゃない。

「くそっ!」
クモにひきずられながら、花は必死でもがいた。
壁際に這っているパイプを必死でつかんだ。花の体は一時的に止まった。
けれど、クモの力は強い。花はパイプに沿ってじりじり引っ張られる。

「花!今の状態を教えて!何が起こってる?」

花は気づいていなかったが、クモに引きずられている花のすぐ後ろを、お掃除ロボが追ってきていたのだ。
嵐の声はそこから聞こえているのだが、花はそれに気づいていない。
花は、嵐の声を幻聴だと思っている。
けれど、花はもがきながら、嵐の声に答えた。

「クモの糸につかまってる!どこかへ引っ張って行かれる!ねばねばして外せない!」
「落ち着いて、花!」
「いやだ!ひきずられる!外せない!すごい力!」

嵐は声を大にして叫んだ。
「落ち着け!」

花は、嵐の声を幻聴だと否定しながらも、嵐の言葉に耳を傾けた。

嵐の声は続けて、水泳のクイックターンを教えた時のことを話し出した。

花がなかなかできなかったこと。
花はテンパると、目の前10センチしか見えなくなること。
花は目の前の1つの点しか見ない、そこしか集中しないこと。

「花の悪いクセだ。次の動きにつながる体勢を取ってない。ひとつ先を考えない。
だから運動神経はいいのに、スポーツがモノにならない」

花は、嵐にクイックターンを教わった時のことをもがきながら思い出した。
何度注意されても頭をぶつけたりあさっての方向へ行ってしまったこと。
落ち着け、と何度も言われたこと。
花は少しずつクモにひきづられながら、嵐の声に答えた。

「アホってことですか?!」
「アホとは言ってない。とにかく無鉄砲なんだよ。度胸があって瞬発力がある、でも1メートル先すら見てなかったりするから痛い目に遭う」
「確かにね!」
「花の壁登りを見に行った時、やっぱりと思った。ひとつ先を見てない、行ってから考える」
「悪かったわね」
「だから花には向いてると思った。次のルートを考えて一歩ずつ登る、あれはそういうスポーツだろ?一緒に水泳したかったけど、花にはそっちがきっと似合う、無鉄砲もちょっとはおさまるかもって」

花は嵐の言葉に耳を傾けた。必死でしがみついていたパイプが折れた。
花の体がクモへ向かって一気にすべる。花の後を、嵐の声が追ってくる。

「この世界で、何度も登ったり降りたりしただろ?先を考えて動いたはずだ。
絶対に達人になってる。
きっと今は、何メートルも先まで見えるはず。今の花なら、その状況を突破できる!」

源五郎の声が重なった。
「花さん、多少は体の自由がききますか?何か武器になるものはありますか?クモを狩るハチは真正面から飛び込んで、アゴを突き刺します」

花の頭と体はフル回転した。

…逃げることはできなくても。近寄ることはできる。
…クイックターン。

花は、足のバネをつかって壁を蹴る。
体に絡まったクモの糸を逆手に取って、クモに向かって思い切り飛ぶ。
そして花は、手に握ったパイプと自分の足を、クモのアゴ先に思い切り叩き込んだ。

クモはひるみ、花を捕らえていた網を放棄してすごい早さで逃げていった。


松明を持った藤子とちさが到着した。
「…遅かったね」
花は涙だらけの顔で藤子とちさを見て笑った。

藤子とちさは、花を助けながらお掃除ロボを観察し、松明の炎で花の体にまとわりついたクモの糸を焼いた。たんぱく質の焼けるいやなにおいがした。

一段落して、藤子が言った。

「嵐くん?はじめまして。多分あなたが思ってるより、花はとんでもない動きしたからね。見えてなくてよかったかもよ?無鉄砲にもみがきがかかってんのよ」

そして藤子は、お掃除ロボを花に手渡した。

「ゆっくり話しなよ」

花は胸がいっぱいになった。言葉が出てこない。
嵐も何も言わない。沈黙が続く。

沈黙を破って叫んだのはハルだった。

「なんかしゃべれよ!さっきまでバカ話してたのにさ」
「ハル?!」
「わたし、蛍と言います。みなさん、マスクしてくださいね。幻覚に取り込まれるから」
「幻覚…、嵐、あたしのこと、ずっと呼んでくれてた?」
「…うん、どんな幻覚見てたの?オレ、出た?」
「…内緒」

蝉丸が会話に割って入った。
「いちゃいちゃすんじゃねーよチクショー!寒いわ!」

落ち着きを取り戻した花は気づいた。
新巻がいない。

「藤子ちゃん、ちさちゃん、新巻さんに会った?」
「ここに来るまで誰も見てないよ」

花は戦慄した。

…一緒にいた…一緒にいたよね?
…新巻さんも、幻覚を見てる?
…クモはあたしをどこかへ連れて行こうとしてた。
…もしかしたら新巻さんはすでに…?

花は焦りながら藤子とちさに告げる。
幻覚にとらわれる直前まで、新巻とは一緒にいた。
もしかしたらクモに捕まったのかもしれない、と。

嵐は、花の「アラマキ」の言葉に反応した。安居が言っていた「アラマキ」。
『冬の生き残りだ、犬を連れた。花が好きなんだろうよ、いつもべったりだった』

「花、アラマキ、って…」
「嵐も憧れてる人だよ。エース、新巻鷹弘!」

花は、お掃除ロボの向こうにいる源五郎に、クモに関する情報を求めた。

お掃除ロボを通じて、源五郎からクモの情報が共有された。
クモは、おそらく人間を子供のエサにするために、キノコと合体した卵のうを体に寄生させている。
人間の体に消化液を注入して、人間の体の中身だけを栄養として吸い出すこともできる。

花は怖かった。
自分が幻覚を見ていた時間はどれくらいなのだろうか?
あれから時間がどのくらい経ったんだろう?大丈夫だろうか?

花、藤子、ちさは、天井を這うクモの糸を辿ってみることにした。

花はお掃除ロボを持ち上げた。
「これ…持っていけるかな?」
「まぁ、でっかい携帯と思えばね」

源五郎がみんなに伝えた。
「みんな、お掃除ロボの名前を教えてください。位置を見ます」

花はお掃除ロボに向かって言った。
「嵐、そばにいて」
嵐は応えた。
「いるよ」

花たちは、新巻を探すべく、出発した。

新巻はどこともわからない暗い空間の中で、みのむしのような状態でクモの網に包まれて宙にぶらさがっていた。
新巻は、現実の自分の状況も知らずに、幻覚を見続けている。
次号へ続く。


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