ネタバレ

August 10, 2015

7SEEDS 山の章21 ゴール

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章20 観察からの続きです。

2015年7月28日発売 2015年フラワーズ9月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

【震災復興支援クリック募金】
■ハーティン
【本・DVD・ゲームを寄附】
■Books For Japan
【ベルマークを集めて復興支援】
■ベルマーク教育助成財団
【被災企業に寄付+投資】
■被災地応援ファンド
























涼の視線の先には人影があった。
距離にして10メートルくらいか、もっとか。
涼はその人影が「要さん」だと確信していた。
しかし涼の視線は人影を捕らえているのみだ。要さんの本体がどこにいるのかはわからない。

「もう一度会えるとは思ってなかったぜ、要さん。…あんた、時々オレたちを見てたろ?イヤな視線を感じたんだ。捕食動物かと思ったが…同じようなもんか…。
まだ、あの施設にいるつもりなのか?オレたちを監視して管理して、評価するのか?」

涼は、慎重に身を隠しながら声を出した。
すると、返事が聞こえてきた。

「…安居は…もう3人殺してる…。おそらく、卯浪先生と、秋のチームのガイドと、花を…。
…わたしは、殺人鬼を未来へ放ったつもりはない…」

涼は耳をすませて要の言葉を聞いた。
疲れている声だ、と涼は感じた。

…あの人影はおとりだろう。
…声が反響して位置がわかりにくい。どこにいる?

涼は要の声に返事をした。
「卯浪と花を殺ったのはオレだけどな」
「かばうことはない。…安居の精神状態は、かなり危うい。わたしには君らを送った責任がある。
皆にとって安居が脅威になるなら、取り除かないとな…」
「精神状態が危ういのは、あんただろ。自分を疑えよ、要さん」

涼は、さらに言葉を続けた。
アリに食われて血をダラダラ流している時にまともな判断なんかできるわけはない、安居は大丈夫だ、と涼は反論した。

「脅威になるのは、あんたのほうだ。…取り除かないとな」
「おまえと安居は、敵対するライバル同士だと思っていたが…」
「あのな、最も信用できるのは、ライバルってヤツの能力だよ」

涼は闇に身を隠したまま、言葉を続ける。視界の中の人影らしきものは、動かない。
しかし、あいづちをうつ声は聞こえた。涼はさらに言葉を続けた。

「ここで信用できるのは、安居だけだ。…オレはずっと、あいつを見てきた。あいつは…あんたたちやオレみたいに、汚くないんでさ」

涼の耳に、ジャリッ、と地面を踏む音が届いた。続いて、石が転がる音。
涼は音のする方向へ向かって銃を撃った。2発。
人影はない。人影を映していた灯りも消えている。
…暗闇の中に、血のにおい。同時に首筋に冷たい感触。
涼は要に背後を取られ、首筋にナイフをつきつけられていた。

「…涼、弱味にもなることをべらべらと…。らしくないな」
涼はそのままの体勢で答えた。
「安居はあんたのお気に入りだったろ」
「…だから、残念だ。わたしは失敗した…らしい。…責任を取らないと…」
「失敗とか、言うなよ!」

涼は身をよじり、背後に向かって銃を撃った。3発。
「涼」
要の声が、足音が遠ざかっていく。
「水から離れたらマスクをしろよ。…見たくもない幻覚を見るぞ」
「待てよ」
涼は要の声を追おうとして、何かに足を取られ、思い切り転んだ。
簡単なトラップだ。足元にヒモが張ってあったのだ。

「くそ…、こんな初歩的な…。痛っ…くそっ…みっともねぇ…」
涼は膝を派手に擦り剥いてしまっていた。
涼は手持ちのカンテラに灯りをつけ、膝の手当てをしながら、考えた。

…要さんは、安居を殺すつもりか?
…安居は、要さんを返り討ちにできるか…?ムリだ。
…安居に、要さんを会わせるな。先に、オレが、殺すんだ。



花は、秋ヲと朔也の説明を受けて、方舟を探すべく行動を開始した。

「えっと…ペル、ペルセウス」
目の前のお掃除ロボに話しかける。
「はい」
お掃除ロボは、自分の名前に反応した。
「小佐渡側の地下の、方舟に行きたいんだけど、わかる?」

お掃除ロボはしばらく沈黙した後、動き出した。
「おっ」
花、蝉丸、ナツはお掃除ロボの後へ続く。花がお掃除ロボを通じて嵐に話しかけた。
「嵐、じゃあ、方舟を探しに行ってみるね」
「OK、花、ナツ、蝉丸、気をつけて。オレたちは今、縦坑の下の部分に来てる」



嵐、新巻、安居の3人は、縦坑の1つの内部に入っていた。
嵐たち3人がいる場所からは、縦坑の上の部分は見えない。距離がありすぎて様子がわからない。
巨大な筒状のその場所は、内壁に沿う形でらせん状の階段が続いており、ところどころ横穴が開いていてどこかの設備へと繋がっている様子だった。
下の部分には水がたまっているし、内壁も、らせん状階段も、その手すりなども、かなりボロボロだ。
上の部分が崩れて土砂や水などが入ってきた影響だろう。

安居がつぶやいた。
「こいつの海底部分をふさぐ…か。隔壁が閉まるかどうかだな」
新巻が応えた。
「やってみましょう。その価値はある。この上の森は見事です。水没させたくはないですね」
「あと2つも見てみよう。試しに1つ、閉めてみる」

安居は、お掃除ロボから聞こえた銃声らしきものが気になっていたが、それについてはコメントしなかった。
まつりと朔也が「何か音が…」「銃声だったりシテー」と反応したが、安居はその会話には乗らなかった。


安居は、涼のことを考えた。

…涼か?何をしてるんだ?
…要さんに会ったのか。どうした。要さんも銃を持ってるだろう。
…失敗した、と言われたか?
…畜生。
…涼。オレたちは失敗作なんかじゃない。
…オレが導く。子供たちが生きてるなら助け出し、全員を外へ出す。



花、ナツ、蝉丸は、お掃除ロボ・ペルの後ろを歩いていた。
道はゆるやかに下っている。
道、なのか。それとも、元々地下にこういう地形の空洞があったのか。それとも彫ったのか。
一応、道の真ん中らしい部分に、ぽつんぽつんと非常灯のような灯りが埋め込まれているから、人間の手で何らかの設備が付け加えられていることはわかる。
歩いている道らしきものの幅は、普通の道路に例えると2車線か3車線くらいはありそうだが、道幅は均等ではない。
ところどころ、崩れ落ちたようなゆがみがあり、幅が狭くなっているところもある。
道の下の、ずっと下のほうには水があった。
水面は静かだ。たいした流れがないのか、水が溜まっているだけなのか。

しばらく歩くと、道に段差があった。階段のような、生易しい段差ではない。
飛び降りられるかどうか一瞬考えてしまうほどの段差だ。
おそらく、小佐渡側にひっぱられる過程で沈み込んだのだろう。

花は、その段差を飛び降りて無事に着地した。
けれど、ナツにはムリだった。
ナツは、下から花に支えてもらい、上から蝉丸のサポートを受けつつ、そろりそろりとその段差を降りた。

花たち3人は、そんな地形の道らしきところをゆるやかにくだっていったが、ついに段差が段差というよりも崖と呼べるようなレベルの落差になっているところに来てしまった。

花は地面にはいつくばり、下を見た。結構な高さだ。

「あのさぁ、もう、無理じゃねぇ?なんだここ」
花は、蝉丸の言葉にも反応せず考えこんでいた。

…行けるか?あたし1人なら行けるか?
…1人で行って、どうする?
…わからない。間違ってるかもしれない。
…ほんとなら、まず全員で外へ出て、安全を確保してから少人数が万全の装備で降りるべきだ。
…でも、その間にここは水で埋まってしまうかもしれない。そしたら方舟は永久に沈んだまま。
…わからない。どう判断したらいいのか、わからない。
…とにかく2人は戻ったほうが…いや、もう途中の道が水没してる可能性もある。
…あたしはこの世界に来てから、ずっと間違い続けてるのかもしれない。

花の思考はループし始めた。
花は、自分を見つめる蝉丸の視線にも、気づかないでいた。

蝉丸は思いつめたような花の横顔を見て、心の中で嵐に話しかけた。

…嵐よ。なんつーか花って、安居たちと似てるのな。
…ささっと先頭に立って、別に何の責任もないのに、なんか、しょいこむ感じな。
…触れたら切れそうな感じな。

花が口を開いた。
「あの…2人ともここに残って…あたし1人で…」
蝉丸は花の言葉にかぶせて大声で言った。
「ちょっと、休憩しよーぜー。さっきの、じゅーーしぃな実、まだある?」
「あ、あります」
「…なんか…眠たくなってきたわ。もう、くたびれたわい」

蝉丸の言葉をうけて、お掃除ロボから藤子たちが花へ話しかけてきた。
「ねー花。もう、夜の遅い時間だと思うよ」
「えっ…そっか…」


花、ナツ、蝉丸の3人は、その場に腰を下ろして休憩した。
休憩しながら、蝉丸は夏のBチームの隠し芸大会のことを花に話す。

「でよー。嵐のアホは、あやとりとかしくさって」
「あやとり?!」
「芸のねーヤツよ」
「あやとりしてるとこなんか、見たことないなー」

花はひゃははと笑いながらナイフを取り出し木の枝を削る。
蝉丸は花の作業を見て「それ何?」と尋ね、花は当然のように「ブーメラン作る」と答えた。

蝉丸は花に言った。
「…あんたもヘンだな」

蝉丸たちの会話は、お掃除ロボを通じて嵐、新巻、安居や、藤子、ちさ達にも聞こえていた。
何気ない会話の中で空気がほぐれていく。
花は、また知らないうちに肩ひじを張ってガチガチになっていた自分に気づいた。
そして、蝉丸が、そんな自分をやんわりと止めてくれたことにも。

「蝉丸さん、なんか、惚れそうですよ?」
「にゃに?聞いたか嵐!」
「うそうそ」
「ウソかよ!ナツ、ちょっと妬いたか?」
「はっ?」
「妬かねーのかよ!」
「あっゴメン。そこ、ラブ?」

ナツは、蝉丸たちの惚れたはれたの冗談を横で聞きながら、自分も何か会話に参加したいと思っていた。

「あの…」
ナツは、なんとなく思いついたことを口にしてみた。

「あの…佐渡が、ゴールなんでしょうか?」
「ゴール…?」
「今までってずっと、目的地がなくて移動だけしてて。普通の旅だったらゴールがあるのに、って。
佐渡が、ゴールなんでしょうか?旅は、終わるんでしょうか?」

花は、ナツの言葉を聞いて、新しい視界が開けたように感じた。
…そうか。この世界に、ゴールはないんだ。
…ゴールは、自分で決めていいんだ。

「ナツさん、それ、いい…。あたしは佐渡の森に、住みたいと思いました」
花のつぶやきに藤子たちも反応した。
「同感。クモさえ、出なければねー」
「あたしもです」

朔也も会話に参加する。
「ゴール、いいですねぇ!もし佐渡に定住できたら、皆さん、何になりたいですか?
ボクはまず、法整備をしまスー!検事になって目を光らせますんで」
「あたし美容師!」
まつりの声だ。
「カットはうちでよろしく!もちろん、畑もやる!」
蛍もまつりの会話に乗る。
「まつりさん、カットすごくうまいんですー。わたしは、占いかな?」
朔也は、秋ヲは村長とかになるだろうと提案し、秋ヲに「村長は、なんかじいさん臭い」と一蹴された。
藤子はもちろん、鷭に「医者になる」としっかりアピールし、指導をお願いした。

安居は、お掃除ロボから聞こえてくるのんきな会話に顔をしかめてつぶやいた。
「ムダ話を…」
「いえ、大事な話ですよ」
新巻は安居の言葉を否定した。

その新巻のそばで、嵐が新巻に聞く。

「新巻さんは…野球をしますか?」
新巻は目を見開いて嵐を見つめた。
嵐は、念を押すように新巻に言った。
「野球…しましょうね」
新巻は、嵐の顔を黙って見つめたまま、微笑んだ。



ナツは、自分の言葉から思いがけず広がった「将来の夢」の話について考えた。

…何に…なる。
…そんなこと考えたことなかった。
…この世界に来てからは余計に、考えても意味のないことだと思ってた。
…何かになれるんだろうか。あたしでも。これからでも、そんな力が出るんだろうか。

花は、楽しくなってきた。そして、心が決まった。 …ゴールにしよう。ここを、ゴールにする。だから、ここを、守るんだ。 花は口を開いた。
「ナツさん…うーんと、ナッちゃんでいいですか?」
「はっ、はいっ!」
「オレも蝉ちんでいいぜ、言いにくかろう。…ホレてもいいぜ」
「ははは、…じゃあ、ナッちゃんと蝉ちん!がんばって、行きましょうか!」
「えー、行くのかよーウソー」
「行きますよー!」
「…どうやって…」



くるみと流星は、いまだ、お掃除ロボには出会っていなかった。
もちろん、こんな会話がお掃除ロボを介してみんなの間で交わされていることも知らない。

けれど、くるみと流星は、泣きながらお互いの腹の中、胸のうちを吐き出したことで、出産を迎える覚悟を決めることを、改めて確認することができた。
流星は、やっと、今さら、自分が親になるという現実に、実感が湧いてきた。
そして、今の状況でもし陣痛が始まったら、2人で何とかするしかない、という現実をしっかりと受け止めた。

しかし、くるみと流星は「その時」をただじっと、ゆっくりと待つことはできそうもないことに気づいた。
この場所にたどりついてからずっと、地上から流れ落ちていた水。
すぐそばを流れている地下の川。
両方とも、水量が増している。



佐渡も鍵島にも、排水しきれない水がゆっくりと水位を押し上げている。
安居は、お掃除ロボに向かって声をあげた。

「虹子!早く、地下水の流出を止めろ!」
次号へ続く。


■あらすじINDEX
■ブログ更新状況は右サイドの「次の更新は…?」欄でお知らせします!





reading7seeds at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)