ネタバレ

January 10, 2017

7SEEDS 空の章10 本質

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章9 タッグからの続きです。

2016年12月28日発売 2017年フラワーズ2月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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注水開始。
水が方舟の周囲を満たし始めた。
方舟の中にいてもそれがわかる。落ちてくる水の音が重苦しい。
花・ナツ・蝉丸・朔也の4人は、しばらく沈黙した。

水音と連動して、方舟内部のコンソールの一部が反応し、ピッ…ピッ…という音を断続的に出すようになった。
ナツが機械に近づく。外部が見えるモニターと、計器類が作動していた。

「ここに外の風景が映っています。暗いけど…。途中のぶ厚いドアは閉まったみたい。こっちの目盛りは…水の量かな」

目盛りのある計器類は縦長の長方形で、目盛り下部に円が描かれていた。この円部分がどうやら、方舟らしい。まだ目盛りは円部分の下のほうを指していた。
この縦長の目盛りがいっぱいになったら、注水完了ということか。
円部分がすべて水に埋まった後も、かなりの量を注水することになる。目盛りの高さは円部分の5倍程度あった。

蝉丸がため息をついた。
「…時間、かかりそうだな」

花は想った。
…大丈夫だろうか。
…ほんとに浮き上がって天井が開いて、そのまま海上に出られるんだろうか。
…そんな、一か八かなんて、バカなことをしてるんじゃないだろうか。
…考えても、もう、遅い。

花は呼吸を整え、コンソールのマイクに向かった。
「嵐、方舟の周りに注水を始めたよ。…そっちは?」
「煙が少し漂ってきてる…、いや、大丈夫、心配しないで」

嵐の答えの背後にビーッビーッという警報と、途切れ途切れの機械音声が混じっている。
『火災が発生しました。すみやかに地上に避難を…』



嵐の背後で、新巻は防火扉を閉めようと奮闘していた。
「ここを閉めるので…あゆさんたちは先に行ってて…」
「なんでよ?」
あゆがつかつかと新巻に近づき、防火扉に手をかけた。
あゆは新巻と協力して防火扉を閉め、言った。

「2人でやったほうが早いでしょ?どうして先に行け、とか言うのかしら。効率いいのが一番でしょ?バカじゃないの?」

しかしせっかく閉めた防火扉が異音を立てながら再び開き始めた。
新巻があわててドアを押さえる。
「開いてくる…隙間が…何かで押さえられないかな…?」
「これは?…クモの糸」

あゆは荷物から、さっき理可子の部屋から持ってきた毛糸玉状のクモの糸を1つ取り出し、防火扉の取っ手部分を縛りつけ始めた。

「クモの糸?」
「そう、角又さんの彼女が残してくれてたの」
「理可子さんの置き土産や。弓も引けるほど頑丈やで」
驚く新巻に向かって、角又が少し誇らしげに説明する。

防火扉は、クモの糸によってしっかりと閉められた。

「じゃあ、行きましょ」
「どっち?」
「煙が来てるんじゃ、このまま上がるのは危険だよね」

嵐・新巻・あゆ・角又・小瑠璃・ハルの6人は、階段部分で進路に迷った。
上か、下か、それとも別の通路か。

機械音声の避難誘導は途切れながらもずっと続いている。
『すみやかに…地上に避難…近くのエレベーターで…』

嵐が思わずつぶやいた。
「ほんとに…エレベーターで、一気に上がれればいいのに」

角又が反応した。
「エレベーター。一気。…あ!」
角又はお掃除ロボに向かって呼びかける。
「すまん、ひばり…朔也くんでもいいわ。…どっかで、ケーブルカー見えへんかった?」
「ケーブルカー?」
「理可子さんのノートにあってん」

朔也が反応した。
「あー、東の端っこにあったやつカナ?図面に線路が描いてあった」
「へー」
ひばりも反応した。ひばりは部屋にある、施設の全体像を見る。
「これね。えっと…東の端っこの、山じゃなく平地のところから…つまり、下まで一番距離の短いところを掘って作ったみたいよ」

新巻が口を開いた。
「でも…ケーブルカーなんて、動くかどうか…」
「動かんでもええねん」
角又は言った。
「地上まで一直線に線路が通ってるわけやろ?そこを登れたら早いんちゃう?」
「東の端なら、火災から一番遠いかも…」と小瑠璃。
「で?そこまでどうやって?」とあゆ。

「えー?よく、わかんない」
ひばりは答えた。ひばりの答えに、朔也が補足する。
「アノー、この施設は、わりとブロックごとに造られてて、それを横につなぐ道は少ないんですヨ。だから…大柱群の広いコンコース、あそこを突っ切って東の端まで行くのが、いいと思いマス」
「だから、そこまでの道は?」
あゆがいらだちをにじませながら言う。
ひばりと朔也の返事はにべもない。
「だから!説明しにくいのよ」
「皆さんの現在位置がワカリマセン」

「あ…」
状況の突破口を見つけたのは、ハルだった。
「ひばりちゃん?ハルだけど…、なんか、音、出してくれない?こっちだよ、って方向を教えてくれる音。どこか、この近くで鳴らせないかな」
「音?…どういうこと?」
角又が説明した。
「ひばり!目印の音を立ててもろて、それで誘導してもらう…てことや」
「なんの音を、どう出せっていうのよ?ここからできることなんて…」

ひばりは文句を言いながらモニター画面を見る。
いくつかあるモニター画面の1つに、電話マークがついていた。

ひばりはそのマークに触る。 ハルが反応した。
「…どこかで、電話が鳴ってる」
ハル以外の誰にも、そんな音は聞こえていなかった。ひばりが答える。
「鳴らしたのよ!直でつながってない部屋だけど、なんとかしてそこまで行って!」

ハルは慎重に音の位置を探る。
「ここ!ここから聞こえる」
ハルはある部屋の、通風孔のような部分を指差した。
新巻がその部分へ飛びつき、こじ開けて中へ入った。
「僕が行って、安全を確認します。…合図したら続いてください」

しばらくして新巻の合図があり、全員が後に続いた。
そして、ハルたちは電話を見つけた。

「あった!ひばりちゃん、次の目的地の電話を鳴らして!」
新巻と嵐は、通ってきた道を塞いだ。
「ここを塞ごう。できる限り、通ってきた道を塞ぐ」

電話誘導作戦は、有効だった。ハルは次第に、みんなの先頭に立って進み始めた。
「こっち!」
ハルが新しいドアに飛びついた。新巻が声をかける。
「ハル、待って!危ないから。僕が先に行く…」
「大丈夫」
ハルはドアを勢いよく開け、中へ踏み込む。
そこは部屋ではなく、縦に深い空間を横切るための渡り廊下があったようだった。
しかし、通路は途中で崩落していた。
ハルはグラつき、落ちかける。
新巻が飛び、ハルをつかんで次の足場に着地。
角又は自作の小さい弓と矢を使い、クモの糸を設備の一部にうまくひっかけつつ、新巻に糸を渡した。
新巻はクモの糸をうまく使い、ターザンのように空間を移動できるルートを作った。
先頭に立って移動し、ハル達をサポートして先へと進む。



「涼くん…」
安居・涼の後を続くまつりが、思いつめた表情で口を開いた。
「そういうの、ダメだよ。…やめようよ」

涼はチラリと、まつりを振り返った。

まつりは、自分に言い聞かせるように、うつむき加減で言葉を続けた。
「イヤなことばっかり、言ってる。…いくら、キライな人でも、傷つけるのわかってて…言うなんて…」
涼は足を止めて、まつりに言い返した。安居が意外そうに涼を見た。
「もちろん、傷つけるつもりで言ってる。…悪いか」
「こんな…生き死にがわかんない時に…みんな一生懸命な時に…命かかってる時に痛めつけるなんて…」
「より効果的だ」
「涼くん、そういうのってダメだよ」

まつりは必死で言葉を続けた。

「相手だけじゃないんだよ。キライな気持ちをわざわざふくらませて…それ…自分のことも傷つけるから…」
「おい、まつり」

涼は威嚇するような声を出した。まつりは思わず肩をすくめる。

「おまえ、オレに指図するつもりか?」
「そうじゃ…ない…」
「なんだおまえ、えらそうにオレに意見するのかよ?」
「違う…うー、うまく、言えないけど…」

まつりはひるみながらも、食い下がった。

「傷つけて…ざまあみろって思ってるの…横から見たらかっこ悪いよ…。涼くん…頭いいのに、なんでもできるのに、ほんとは優しいのに、人の上に立ってひっぱっていける人なのに…」
まつりは顔をあげて、涼を見て言った。
「そういうの、わかってないの、ダメだと思う」
「おい、ふざけるなよ」
涼は感情を顔に出した。
「おまえの思う通りでないと、気に入らないってわけか?バカにするなよまつり」
「違…」
「もういい。黙れ」

涼はまつりに背中を向けて歩き出し、先にいた安居にイラつきをぶつけた。
「関係ねえ、って顔して見てんじゃねえコラ!」
涼は安居の頭を小突いた。
安居は小突かれながらつぶやいた。
「いや…そんな怒るのも、珍しいなって思って」

まつりは涼の背中を見ながら、顔をぐしゃぐしゃにして泣き出した。

…言わないほうがよかった?
…そりゃ、そうだよね。怒ったよね。
…嫌われた。すごい、怖い顔した。もう、嫌われたよ。

「でも!」
まつりは泣きながら、涼の背中に向かって言った。
「なんでも、はいはい言って、バカでかわいいとか、イヤなんだもん!あたし、昔ずうっと、そうだった!でも今は!ナッちゃんと、ちゃんと話、してるもん。そういう人になりたいもん。…もう、ああいうの、イヤなんだもん。…うえぇぇぇん」

まつりの声は、方舟のナツに届いていた。
ナツも方舟の中でまつりにつられて泣いてしまった。
「まつりちゃん…泣かないで…うううぅ…」
「うぇぇぇぇ」

まつりとナツの泣き声の合唱に、蝉丸が頭を抱えた。
「なんなんだよ、おまえらはよ!」
朔也が蝉丸のそばで言った。
「こういう心理がわからナイから、ボクたち、ダメなんですかネ」
「おまえと一緒にすんなよ!」



新巻・あゆ・角又・嵐・ハル・小瑠璃の6人は、大柱群のコンコースまでたどり着いた。
「風がすごい」
嵐が言った。かなりの強風が空間に吹き荒れ、轟音を立てている。
「さっきはこうじゃなかった」
「排煙しようとしてる」
小瑠璃は、風の動きを読もうとしているかのように、視線をめぐらせた。

ひばりが言った。
「じゃあそこから、東の端まで突っ切って。端についたら、また電話を鳴らすから」
新巻がみんなに声をかける。
「このあたり、地面が穴だらけで、暗いし水がたまってるし、足元気をつけて。僕の歩いた道を歩いてください」

移動しながら、あゆが上を見て言った。
「なに、この穴」
「1つだけ閉めなかった縦坑。…多分、地上まで続いてる」
嵐が答えた。

コンコースを東の端まで渡り切るのは簡単ではなかった。強風に加えてあちこちが崩れかけている。崩れかけた設備の一部が、崖のように行く手を遮っている部分があった。

「うわ…」
一同が足を止める。新巻が助走をつけてジャンプし、その部分をよじ登った。
上の部分から振り返り、あゆへ向かって手を伸ばした。
「大丈夫、行けます。…クモの糸をください」

新巻はてきぱきと、クモの糸をつかって命綱や補助ロープなどをセットし、あゆや小瑠璃たちがよじ登るのをサポートする。そんな様子を見ながら、角又がつぶやいた。

「えらい、元気にならはった」
嵐が角又に答える。
「はい、よかったです」
「嵐くん。…もしかしたら、あんたが思てるんとは、ちょっと違うかもしれへんな」
「え?」

角又は、自分なりの新巻の印象について、嵐に語りだした。
つまり。
新巻は子供の頃から野球をやっていて、すぐにその才能が開花した人だ。
甲子園にも1年の時から出場して、話題のスターになって、その次もその次もずっと甲子園に出場し続けた人だ、と。
角又は言葉を続ける。
「尋常やない努力やったと思う。それを毎日、コツコツこなして、完璧にクリアしてきた」
「そう思います」
「こっちの世界に来て、…それがなくなったんと違うかな?」
「目標が…なくなった…?」
「ああいう人は、ただ生きることは、目標になれへん」
「目標が…必要だった…?」
「目標、ていうか、敵が要る。対戦相手が。…困難な状況をクリアすんのが、喜びなんやで」

嵐の中で新巻のイメージが動いた。
…花を助ける形で、死ねるのが嬉しいのかと思ってた。
…障害に出会うことが、嬉しかった…って?

「花を助けて死ぬことすら、目標…?」
「見てみい。新巻さん、さっきからずっと、楽しそうやろ?…新巻さん!」

角又は、崖の上にいる新巻に向かって、大きな声を出した。

「新巻さん、あんたな!自分で自分のこと、ようわかってへんかもしれへんけどな!…あんたはきっと、守護者(ガーディアン)と違て、狂戦士(バーサーカー)なんや!」

新巻は、きょとんとした表情で答えた。
「何ですか、それ?」
「ゲームとかせえへんのかいな!決めたったのに!」
悔しがる角又の後ろで嵐が声をかけた。
「ゲームとかしないんですよ。…野球づけ」

角又は嵐に言った。
「まぁ、そやから心配せんでもええ。嵐くんも。花も。…あの人はそんな、ヤワと違う。…ちょっと、ペットロスなんや」


崖の上には、すでに小瑠璃とあゆが登り、ハルが登り始めた。
上から小瑠璃がハルを励ますが、ハルはかなりモタモタしている。
新巻が大声でハルに指示を出す。

「ハル、バランスを崩さないで!そこのくぼみに、足をかけて!…大丈夫、絶対、みんなをつれて、ここを出るから!」
「なんなのよ」
あゆがすかさずツッコミを入れる。
「鷹さん、いちいち恩着せがましいのよ。…みんなで協力して、一緒に出ましょ」
新巻はあゆのツッコミに、少し恥ずかしそうな表情を見せた。

みんな、崖を登りきった。

新巻の体には力がみなぎっていた。
新巻の心には、吹雪の言葉が響いていた。

…鷹。野球をすることと、生きることは同じだ。
…いつでも、おまえが戦う場所が、そこが、甲子園だ。



方舟のメンバーは、ただじっと、待つしかできなかった。
コンソールから聞こえてくるほかのメンバーの奮闘を音声で聞きながら、無事を祈ることしかできなかった。

じわじわと水が貯まっていく。
お掃除ロボ・ペルが水没する。虫たちも溺れていく。ナツは感傷的になる。
「ナツよ。あれはロボットだから」
「でも…もう誰も直してくれないんですよ…」
「泣くこたぁねぇ!」
蝉丸は、ナツをいつものようにガシガシ抱えこみつつ、自分も少し涙目になっている。

朔也は花に言った。
「ボクもハグしましょうか?」
「いや、結構」



かなりの時間が経って、ついに、方舟がグラリと動いた。
「浮いた?!」
蝉丸が浮かれた声を出した。
「ひゃっほう!一足お先に、サヨナラだぜ…」
蝉丸の浮かれた声は途中で途切れた。

方舟が思ったよりも上昇していかない。何かにぶつかるような、鈍い音が断続的に聞こえている。

「…天井が…開かない…?」
次号へ続く。

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