ネタバレ

November 10, 2016

7SEEDS 空の章8 方舟

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章6 死地からの続きです。

2016年10月28日発売 2016年フラワーズ12月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

【地震災害支援情報】
■震災復興支援 スターバックスカード←NEW!
■赤十字
【本・DVD・ゲームを寄附】
■Books For Japan
【ベルマークを集めて復興支援】
■ベルマーク教育助成財団
【被災企業に寄付+投資】
■被災地応援ファンド

↓鳥取地震 食べて応援、買って応援、観光して応援、できることで応援しましょう↓
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【ふるさと納税】B-111 鳥取県の日本酒 4銘柄 飲み比べセット
価格:10000円(税込、送料無料) (2016/11/10時点)



Gポイント





花は安堵の涙を流しながら呆然と座っていた。
呆然と座り続ける花の身体とは対照的に、頭の中には様々な想いや憶測や悔恨やいろいろな感情が激しく入り乱れていた。

…嵐も、新巻さんも、無事だった。
…嵐…、新巻さんに人工呼吸をしたと言ってた。そんなことになってた。
…無事に見えても、身体がダメージを受けてる。
…嵐と新巻さんが何を話したかはわからない。でも…。
…新巻さんは、死のうとしたんだろうか。あの時。クモにつかまった時。
…『幸せな夢を見ていましたか』『さあ、忘れました』
…そのはぐらかし方が気になった。いつもの新巻さんじゃなかった。
…でも、突っ込んで聞けなかった。いつも、突っ込んで聞けない。あたしは。
…また、幻覚に戻ろうとしたんだろうか。嵐はそれを止めてくれたんだろうか。

花は、新巻が絶望から救ってくれた時のことを、思い出していた。

…あの時。
…青紫にやられて死のうと思った時。新巻さんは言った。
…『いいか!ゲームセットの声を聞くまでは、試合は終わらないんだからね!』
…そう、言ってくれた新巻さんが。
…ゲームセットの声を聞いたんだろうか。
…そんなにも…犬たちを失ったのが、きっと、つらくて…。

花は、新巻を思って涙した。

…新巻さん。まだ、ゲームセットじゃ、ないです。
…生きて。生きてください。



物想いにふける花をよそに、ずぶぬれだった服を着替えた蝉丸は、ナツを従えてあれこれ行動を開始していた。

「方舟に入るには、どーしたらいいんだっけか?」
「えっと、たしか操作パネルがあるとか…」
「あれかな?」

蝉丸がそれらしいパネルを触った。
壁の中からパネル部分がガコッと飛び出す。蝉丸がパネル表面を触ると、何かが起動しているような音がしたが、エラーメッセージらしき英文が出ただけだった。

「ボクをそこにつないでください」
機械音声が聞こえた。振り返ると、お掃除ロボ、ペルがいた。

「ボクの側面のポケットにコードが入っているので、そのパネルとつなげてください」

蝉丸はおそるおそる、お掃除ロボのコードをパネルの側面部分に接続した。

「しばらくお待ちください。読み込んでいます」

ペルは、しばらくして操作パネルのデータをダウンロードし終え、選択肢を提示した。

「…完了しました。以下から選択してください。

1.方舟の小扉を開ける
2.方舟の大扉を開ける
3.今入ってきた隔壁大扉を閉める
4.発電ドームの扉を開ける
5.注水を開始する            」

「おいおい、大とか小とか、なんだよ?わかんねえだろ?」
ペルの説明に蝉丸がツッコミを入れる。
「あの…」
ナツが蝉丸に、方舟には機材搬入用の大きな扉と、人間の出入り用の小さな扉の2つがあるのではないかと指摘する。
「なるへそ!お前、意外と賢いよな!漢字も知ってるしな!」

蝉丸はナツの頭を抱えて、ナツの頬をグリグリした。
ナツは、いつものようにされるがままになりながらも、つい、ぎこちなくなってしまった。

…なんだか、ものすごく意識してしまう。また、ちゅうされるのかと。
…どうしていいかわからない。
…違う、今は、それどころじゃなくて。

ナツの動揺には気づかないまま、蝉丸はのんきにペルに指令を出した。

「んじゃ、まぁ、1だな。方舟の入り口開けてちょ!ペルちん」
「実行します」

お掃除ロボ・ペルが答え、その答えに連動するようにどこかで機械音がした。

蝉丸たちは、自分たちのいるフロアから、方舟の方向を見た。
蝉丸たちのいるフロアには、下のフロアへ降りる階段があった。下のフロアは港の桟橋のような、水に囲まれた構造になっている。浸水しているのではなく、もともと方舟が海中へと放出される構造だからだろう。

下のフロア正面奥に大きな球体、少し手前の左側に、奥の球体の直径の半分くらいの球体がある。

朔也が、小さい球体を指差して言った。
「こっちの、小さい球体のほうが、発電用ですかネ」
機械音は小さい球体のほうから聞こえている。
「なるへそ」
朔也と蝉丸はならんで球体を見つめた。すると突然、ボンッ!という大きな音がして、断続的に続いていた機械音が止まった。

ペルが事態に反応した。
「発電ドームが停止したので中断しました。…ボクを方舟本体につないでください」
「ハナっからそう言え!じゃあ行くぜペル!オレに続け、ナツ!」
蝉丸はペルを抱えて下のフロアへの階段を下り始めた。
「はっ…はい!足元気をつけてください」

ナツは蝉丸の後を追った。
ナツはさっきから水が気になっていた。時々、ピチャン…と水音がするのだ。
不安はそれだけではない。

…機械が、正しく動かない。当たり前だ。長くほったらかしだったんだから。
…方舟本体だって、大丈夫なんだろうか。

蝉丸とナツは下のフロアに下りた。方舟へ向かう長い桟橋状の通路。
老朽化は感じなかった。下りてきた階段も含めて、しっかりしていた。

「階段とか全然錆びてねーな」
「海水に浸かることを前提にしているから、それなりの素材なんですよ、きっと」
「にゃるほど!」

ナツは、また水音に気づいた。足を止め、水面を見る。何か、いる。
「蝉丸さん…ここって、魚とか、いないですよね?」
「だろ?ずっと閉め切ってたんだからよ」
「じゃあ、あれ…なんだと思います?」

水中に多数の丸いものがあった。
ナツと蝉丸がそれらを見つめていると、丸いものの中から、何やら大きな昆虫の足のようなものが数本、モゾモゾと這い出てこようとしていた。
蝉丸は悲鳴を上げた。

「なんかいる!水の中!なんか!…カニ?カニなら許す!…まさか…クモ?!いやでも水の中だし!キショクわりぃ!」

蝉丸の言葉に、反応があった。お掃除ロボ・ペルから伝わる源五郎の声だ。

「水グモがいるんですか?そこ、海水でしょう?…すごいな、海水にも適応してるのか。さすが、クモだな」
「ええっ?!てか、クモなのか?クモ?」
ナツも源五郎の声に反応した。
「水の中に卵みたいなのがいっぱいあるんです」
「へえ!」

焦る蝉丸とナツをよそに、源五郎は海水に適用した水クモに興味シンシンで、持論を展開した。
おそらく、水クモはエサがなくなって、卵嚢の状態で水中で眠っていたのだろうが、発電や振動や新しい水の注入が刺激となって起きてきたのだろう、と。

「…誰か知らんがおまえ、嬉しそうにしゃべるな!」
「すみません、興味深くて」
「ま、まぁ…水の中のクモなんだから、こっちが水に入らなきゃ大丈夫だよな?」
「いえ、水クモは完全に水中にいるわけではなくて、時々陸に上がらないとダメなんで…」
「それを早く言えーー!」

蝉丸は悲鳴と共に源五郎に抗議した。
水クモが水中から上がってこようとしていたのだ。
「逃げろ!ナツ!逃げろ!」

蝉丸はあわててナツを守った。
そこへかけつけたのは花と朔也。花は来る途中に作っていたブーメランで応戦する。

「ナッちゃん、走って!方舟を開けて、中に入って!ここはなんとかする!朔也くんも!」

蝉丸、ナツ、朔也は桟橋を渡りきり一番奥へ到達する。
方舟への入り口へはハシゴが伸びていた。
方舟は、近くで見ると相当に大きな球体だった。

ペルが反応した。
「小扉の横にあるターミナルに、ボクをつないでください」
「どれだ?これか?」

蝉丸はドア脇の小さなハンドルを動かした。小さなドア状のものが開き、その中に接続口があった。
「つないだ!」
「小扉を開けます」

方舟のドアが開いた。
ドアは横開きではなく、上から下へ向かって開き、ドアがそのまま乗り口になるような構造になっていた。
「開いたあ!入るぞ、ナツ!」
「花さん!花さんも、早く!」

お掃除ロボの音声から、嵐が花に声をかける。
「花!どうした?!どうなってる!」
「嵐!大丈夫!大丈夫だから、行って!…まだまだ…ゲームセットじゃ、ない!」

花の言葉は、お掃除ロボを通じて、新巻にも伝わった。

…まだまだ、ゲームセットじゃ、ない。

朔也、花も、方舟にたどりつき、ドアを閉めようとするが完全には閉まらなかった。
わずかな隙間が開いている。しかしとりあえず、クモは防げた。

ナツ達は、方舟の中をぐるりと見渡した。
部屋中央に、カプセルのための装置らしきものが、太い柱状になって立っている。その柱をぐるりと囲むように、びっしりとカプセルが床と壁側面の一部を取り囲んでいた。
「…なんか…干草みたいなにおいしますネ」
「なんだか息苦しいな…映画だったら、絶対ここになんかいる」
「やめてくださいヨー」

「角又」
花がお掃除ロボに話しかけた。
「聞いてるで」
「カプセルがいっぱい並んでる。中は…よく見えない、でも、子供が入ってるのは見える。誰が誰かはわからない…特に表示はないよ」
「あっ、でも」
ナツが声を出した。
「手首に何か巻いてます。名前が書いてあるのかも」
「じゃあ…解凍したら、息子さん、見つかるね」
「そうか…ありがとな」

蝉丸と朔也が「何年凍ってるんだ?電気代が…」だの「きっと液体窒素みたいな…」だのと話し合っている横で、ナツがしみじみと言った。

「…あたしたちも、こんなふうに凍らされてたんですよね。こうやって、未来に来たんですよね…」
「そうか…そうだね…」
「確かに、ピンと来てなかったけど、オレらもこんなふうだったのか」

そうつぶやきながら周りを見て歩く蝉丸の足元に、何かがぶつかった。
蝉丸は拾い上げてそれを見る。

「…ジャガイモ?」

それは、ひからびてはいるものの、ジャガイモのようだった。

「ええっ?鬼が出るかジャガ出るか、って、ほんとにジャガイモ?すげえ、ほんとに出るんだなジャガイモ!昔の人はうまいこと言ったもんだぜ」

花は、蝉丸が冗談を言っているのか本気なのかわからずに唖然とした。
ナツは蝉丸の大声を恥ずかしがりながら小さい声でツッコミを入れる。
突然、蝉丸が悲鳴を上げた。
ジャガイモのそばに、ミイラ状になった遺体がいくつかあった。

「そりゃ、どっかで死んでんだろーなとは思ってたけどさ、今まで見かけなかったからさ…」
「クモから、避難したのかも。食料持って、閉じこもって」
「ここは頑丈だから小佐渡が沈んでも残ってた。…でも…二度と出られなかった」
「完全に密閉されてたとしたら、窒息かもしれませんね。干草のにおいは、これか…」
「こいつら外に出そう。そうだ、これクモのエサにしてそのスキに」
「エーッ?さわりたいですか?」
「イヤー!」

男子2人が騒いでいる横で、花とナツは遺体に向かって手を合わせた。
それに気づいて、男子2人も静かになり、一緒に手を合わせる。

「避難しながら…子供たちを守ろうとしたんでしょうか」
「うん…きっと…」

ナツたちは、生き延びるために必死でがんばった人々、何かを託して死んでいった人たちに想いをはせながら、手を合わせた。

方舟の中には、操縦席のような設備があった。
ペルが反応した。

「ボクをメインコンソールにつないでください。説明します」

ペルは、方舟の放出行程と操作方法について説明した。

方舟には、操縦席のようなものがあり、方向転換やゆっくりした移動のための機能はついている。
しかし本来は、これらの機能は必要ない。
方舟のいる空間に注水して、方舟の外が水で満たされたら方舟は台座から離れて浮き上がる。
浮き上がると同時に天井の扉が開いてそこに吸い込まれる。
そのままトンネルを上がっていって海中に放出される。

「さらに上がって、海上に出たら、上部ハッチから外へ出てください」

ペルの説明をひととおり聞いて、ナツたちは沈黙した。

…そんなにうまくいくんだろうか。
…もし、1つでも正しく動かなかったら…。

蝉丸がみんなの内心を代表するかのように、口に出した。
「けっこう、バクチだな。…けど、他に、ここを出る手はないんだよな」
「その前に」
朔也が入り口の隙間を指差した。
「まずそこのドアを閉めないと…デスガ」

ペルが反応した。
「ボクを外に出してください。開けた時と同じようにドア横のターミナルにつないでください。それで完全に閉められます」
「あっ、そう、よかった…って、あれ?で、おまえは?外は水でいっぱいになんだろ?」
「ボクは水につかれば停止します。防水ではありません」
「おまえを水の中に捨てて行く、ってことか…」



角又と嵐は、方舟のやりとりをお掃除ロボを通じて移動しながら聞いていた。
「方舟も…めんどくさそうやな。大丈夫やろか?」
「多分。…花の声が、ちょっと前より、元気になってた」
「そやな」

角又はお掃除ロボを抱え、嵐のそばにいた。先導は小瑠璃、ハル。あゆは新巻につきそっている。

小瑠璃が分岐点を前に言った。
「ちょっとこの先見てくる。新巻さんは休んでて」
「小瑠璃、オレも行く」

新巻は腰を下ろした。あゆがそのそばに座る。
角又と嵐は、さりげなく2人のそばから離れた。

あゆは、新巻の横に腰を下ろし、声をかけた。

「しゃきっとしなさいよ。鷹さん」

新巻はあゆを見た。
あゆは、新巻の横に座りながらも、新巻の顔を見ずに前を見たまま、言った。

「わたし、あなたといると、月が怖くないのよ。…いてもらわないと」
「月が見てる、って言ってましたね。…どうして…」
「人を殺すところを見られたから」

あゆは、あの日のことを新巻に話した。
毒のある植物だと知ってて、言わなかった。あれは、そういうテストだから。
知らないほうがダメだった。
もう1人、崖から突き落とした。それは、まぁどうでもいい。

「でも、気持ち悪いの。…ずっと、気持ち悪いのよ」
「責められてる気が…する…?」
「わたしは全然、悪かったと思ってないのに、どうしてかしらね?」
「わかります…なのに、涙が出る」

新巻はあゆの頬に触れ、涙を拭った。
あゆは無表情だった。けれど、その目からは涙がこぼれていた。
あゆも自分で自分の涙を拭った。
「わたしはよくわからないけど」
新巻は優しい声であゆに言った。
「あゆさんも、いろいろ越えてきたんですね」
「越えてないわよ」
あゆは無表情のまま、いつもの淡々とした口調で答えた。
「まだ続いてる。永久に続くんだわ」


突然、館内アナウンスが響き渡った。

「火災が発生しました。西の海底トンネル付近で火災です。防火・防煙扉を閉めます。すみやかに地上に避難してください。強制的に排煙をします。強風に気をつけてください。すみやかに、近くのエレベーターで避難を…」

嵐があきれて言った。
「エレベーターなんて動いてないだろ。…どこにあるんだか」
「昔のままのアナウンスなんやな。…ほな、行こか」

新巻も立ち上がった。
「行きましょう、あゆさん」



方舟の中では、ペルがいろいろな作業の手順の説明を終えていた。

「操作の手順はわかりましたか?…では、ボクを外に出してつないでください」
「今度はあたしががんばる番だ」
花が言った。

「外へ出て、ペルをつなぐ。すぐ戻るから、中のこと、よろしく」
次号へ続く。


■あらすじINDEX
■ブログ更新状況はブログ右サイドの「次の更新は…?」欄でお知らせします!
※ブログ右サイドはスマートフォン等PC以外のデバイスでは表示されないことがあります。





reading7seeds at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)