ネタバレ

July 10, 2016

7SEEDS 空の章4 覚悟

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章3 動くからの続きです。

2016年6月28日発売 2016年フラワーズ8月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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花はお掃除ロボジェミニを抱えて穴の奥へと移動したが、大したスペースはない。
「水が…足元まで来てます。どんどん増えてくる…」
「花。花…落ち着いて。状況をもう一度説明して。時間の猶予はどれくらいありそう?」
お掃除ロボを通じて嵐が花へ呼びかける。
花は必死で落ち着こうと深呼吸しながら、嵐へ、お掃除ロボへ、自分の状況を説明した。

「今あたしは、方舟から1つめの隔壁の上にある、1メートル四方くらいの穴の中にいます。行き止まり…です。水は多分…1時間もしないうちに、天井まで来ると思う。小さい穴がいくつかあるんで、広げようとしてるんですが、岩が硬くて…」

「じゃあやっぱり…なんとかして隔壁を上げるしかない…」
新巻がつぶやいた。

花は説明を続けた。
「反対側の穴からは広い空間が見えます。サイドホールというやつかも。何か…機械ぽいものが見えるけど…暗くてよく見えない。壁の厚さは…1メートル…ない…くらいかな」
「それなら」
安居が言った。
「オレたちがそのサイドホールに行って、おまえと両側から掘れば水を出せるんじゃないか?」
「すごく…硬いんだよ」
花は、安居の提案が有効とは思えなかった。
しかし嵐とまつりが、安居の言葉に続いた。
「花、前に安居と涼が銃の弾丸で岩を砕いたことがあったんだ。そういうこともできるかもしれない」
「そうだよ。涼くんにまかせれば大丈夫だよ」

花は、黙った。
この岩の硬さがその程度で崩れるとは思えなかった。けれど、それは言葉にしなかった。

嵐は、ひばりに頼んで、自分たちの持つお掃除ロボ・ループスと、花のジェミニの位置関係を確認してもらった。ひばりの話によると、ループスとジェミニは方向的には近くにいるが、高さが違う。花のいる場所のほうが低い。
嵐たちは下のフロアへと降りて道を探した。
しかし、そこここに隔壁が下りていて道が閉ざされている。

「ここも隔壁が」
「こっちからは?」
「…閉まってる…」
「そうだよ…そもそも、花さんたちとは壁で隔てられていたんだ」

嵐と新巻の会話に、涼が割って入る。
「いや…でも、まつり、お前、朔也と一緒にいたんだろ?」
「うん」
「…で、おまえはここにいて、朔也は花たちと合流した。…つまり、大回りすれば、道はつながってる、ってことだ」

新巻が涼の言葉を聞いて一層険しい表情になった。

…大回りすれば、道はつながっている。
…だとしても。
…そんな時間は、ない。

嵐も涼の言葉を否定した。
「でも結局、方舟に続く道は、今は何重にも隔壁が閉まってる。花のところまでは行けない」
「とりあえず近くまで行けば、道が見つかるかもしれねえだろ」

新巻は走り出した。
…下へ降りる。隔壁に邪魔されずに。
…このあたりは、裂け目だらけだ。さっきは水がたまってたけど、今は抜けてる。
…下に流れ出る先があるってことか。水が流れる音も聞こえる。

「おいで、バツ」
新巻はひときわ大きな裂け目の中に下りようとする。
「新巻!」
背後から安居が声をかけ、追いかけてきた。
「闇雲に動くなよ。もっと確実なルートを探すんだ」
新巻は冷たい目で安居を振り返りながら言った。
「君たちは、花さんを助ける気なんかないだろう。ほっといてくれ」
「確かにな」
涼がそう答え、まつりが顔色を変えて涼をたしなめる。

「待て!新巻!」
安居は新巻を呼び止めるが、新巻は無視して裂け目をどんどん下りていく。

花はお掃除ロボから、新巻が何か無茶なことをやろうとしていることを感じて声を出した。
「新巻さん?!何をしてるんですか?無茶なことしないでください、お願いします」
「花」
嵐が声をかけた。
「このルートは、ありかもしれない。オレも行く。心配しないで」
「嵐も、無茶しないで!」
花の言葉に、新巻が同調する。
「そうだよ嵐くん。君は生きないといけない。花さんのために。…ここは、僕1人で行く」
「何言ってるんだよ!」
嵐は少しだけ声を荒げた。
「オレは、あなたのカンを信じて、あなたと一緒に花を助けに行く。ふざけたことを言わないように。…行きましょう、時間がない」

涼は新巻と嵐のやりとりを冷ややかに見つめ、安居の声をかけた。
「安居、ほっとけ。オレたちは遠回りで行こう。…まつり、道はわかるな?」
「涼」
安居は、涼を振り返って言った。
「オレは、花はまぁ…どうでもいいが、嵐を置いて行く気はない。要さんが置いてった短いロープしかないが…まぁ、ないよりマシだろ」
「安居…」
呆れたような声でつぶやく涼に、まつりが追い討ちをかけた。
「…そして、涼くんは安居くんを、置いてけないよね?」
「ああ…もう…本当…に、腹立つ」

結局、新巻・嵐を追って、安居・涼・まつりも移動を開始した。

新巻が下りていった裂け目は、さっきまで水で満たされていただけあって、あちこちが濡れていて足場が悪かった。モタモタと移動する新巻に、安居があっという間に追いついて声をかける。

「おい、こいつを身体に巻け。簡易ハーネスだが、カラビナにロープをかけろ。…用心深く確実に動いたほうが、かえって時間がかからないこともあるんだよ」

新巻は素直に、安居の差し出したハーネスを使った。

新巻は思い出した。前にもこんなことがあった。
あの時。花と一緒に、地下に水を探しに行った時。花が水に落ちて渦に巻かれた時。

…イヤな予感がする。あの時と同じだ。
…無謀に壁にへばりついて。間に合わなかった。
…あの時も、水にやられた。
…ダメだ。今度こそ、助けるんだ。花さんを助けるんだ。
…僕は、この人に会うために、生きてきたんだと思った。



花のいる空間を、じわじわと水が満たしていく。
息苦しい。怖い。花の目に涙がにじむ。

…嵐も新巻さんも、無理して助けてくれようとしてる。
…どうしよう。あの2人に、何かあったら。
…言えばいい。来なくて大丈夫だ、って。嵐たちには見えてないんだから。
…もう大丈夫、抜け出せたよ、って言えば。
…。
…言えない。
…言いたい。助けて。助けて、って。
…ダメだ。泣き言を言ったら、もっと無理させる。


嵐は、お掃除ロボを通じて懸命に花に話しかける。
「花、深呼吸して。手を動かして。そこを出ることだけ、考えて。花にはまだ仕事が残ってる。方舟を動かさなきゃ。蝉丸とナツはきっと困ってるから」
朔也も言葉を続ける。
「そうですヨ花さん。花さんいないと、ボクたち路頭に迷うんで、ボク、壁のこっちで待ってますから」
花は涙を拭いて、できるだけ明るい声を出した。
「ありがとう朔也くん。でも、また水が増えたらボートで水路通れなくなるから、今のうちに方舟に行って」
「エー」
「あたしは泳げるんで」
「ソですカ?」
「うん、大丈夫」
「じゃ、ソウシマス」

「花、そこの様子を、もっと話して」
嵐の呼びかけに、花は応えた。
「虫だらけだよ」



新巻を先頭に、嵐たち一行は懸命に花に近づこうとする。
しかし、行き止まりに来た。
新巻は、絶望に目を塞ぐ。
…この道は間違いか。

「下がってろ」
新巻に声をかけたのは、安居だった。
岩の亀裂に弾丸を詰め、ハンマーで叩いて、爆発させる。
広がった亀裂を、新巻・嵐・涼・安居の男4人で割り広げた。そして何やら広い通路のようなところに出ることができた。

「ひばりちゃん、現在地」
「そこ、排水路の1つみたい。サイドホールと同じ階層にいるわよ。南へ行って。つながってるかも」
「ほんとに…?」
「こっちだ!」

新巻が先頭で走り出した。

走りながら、嵐は花に話しかけ続ける。

花は、手持ちの、もうとっくに書けなくなったボールペンの筒の部分を穴に差し込んで、いざとなったらこれで呼吸をしてみる、と嵐に話した。

「竹とかあればいいんだけど」
「忍者みたいに?水とんの術?…ハハ、それはいいな、がんばれ」

安居と涼は、嵐の冷静さを意外な目で見ていた。
「…嵐のほうが冷静だな」
「新巻のほうが焦って騒いでるって、なんなんだ。嵐の立場がないじゃないか」

安居と涼の会話に、お掃除ロボを通じてハルが割って入った。

「嵐は、花に話しかけてパニック起こさせないようにしてるんだよ。わかんないのかよ。…安居、あんたはいつも、相手を追い詰める物言いしてきたんだよ。それじゃ、助かるものも助からなくなっただろうな」
ハルの言葉に、安居が一瞬考え込み、涼が「今、余計なことを考えるな、安居」とたしなめる。

「でも…新巻さんも…心配だな…」
ハルの言葉に、あゆが「鷹さんは大丈夫よ」と返す。
しかし、ハルはあゆの言葉を否定した。

「…本気で言ってんの?あんたもわかんないんだな。
…嵐は、花のことを考えてる。でも、新巻さんは、自分のことを考えてる」



新巻は必死で走っていた。新巻の頭の中は「花を助ける」という想いでいっぱいになっていた。
…花さんを、助ける。
…吹雪が、僕たちに。
…美鶴さんが、僕に、してくれたように。
…僕も、花さんを助けて。…そして。
…そのために、僕は、生き永らえて来たんだから。

また、行き止まり。目の前にドア。
新巻は必死でドアを開けようともがく。

「開かない!カギがかかってる!」
「どいてろ」
涼が新巻の前に出た。銃を使う。

ドアのカギは壊れた。新巻はドアを開く。目の前に大きな空間が開けていた。

空間は激しい水音に包まれていた。
もとは巨大な部屋だったのだろう、3〜4階建てのビルがすっぽり入るくらいの広さがあり、壁には何らかの設備らしき残骸があちこちにあった。
壁の大部分は剥がれ落ち、岩部分が露出しており、そこここにある亀裂から水が流れ落ちている。その水が空間の下部に貯まり、ダムのようになっていた。
しかし部屋の中にどんどん水が貯まり続けているというわけではない。床部分にも大きな亀裂があるのだろう、貯まっている水の中には渦ができていて、そこから水はさらに地下へと吸い込まれている様子が見て取れた。

呆然とする新巻の背後から安居が声をかけた。

「足元に気をつけろ。海水が流れ込んでもろくなってるはずだ。…ボロボロだ。ここは多分、小佐渡側と普通につながっていたんだろうな。向こう側にフツーにドアがあるし。それが沈んで引っ張られ…無理に切り離しが行われ、そして地下も裂けた、…で、どんどん海水が流れ込んで来てる、ってことか。いずれここも海水で埋まるんだろうな」

お掃除ロボから、ひばりが声を出す。
「そこがサイドホールDよ。花さんは50メートル先くらいのはず」
「よかった!」
嵐が明るい声を出した。
「花!どこにいるか合図して!」
「わかった!」

花は、角又の放った矢の先に、目立つようにヒモをしばった。
サイドホールらしき空間が見える穴に、その矢を差し入れ、ヒモが目立つように振った。

「あれか…」
「見えたよ!」

新巻と嵐は、花が振っている合図を発見した。
露出した岩壁の、新巻たちがいる足場からは相当に遠い場所だ。

「足場がまったくないぞ…どうやってあそこまで…」

嵐が近くの機械設備を調べる。「隔壁制御盤」というものを見つけた。
しかし、そこにあるのは「閉」のみ。しかも、「閉」部分はボタンになっているわけではなく、ただの表示板だった。
その近くには「ARK操作盤」というものがあった。「上閉」「上開」「注水」などのコマンドがある。
嵐は考えた。
…ARK?アーク…?方舟…?
…あれは方舟の操作盤なのか…?

「嵐くん」
新巻が嵐に声をかけた。
「あのバルブは、隔壁を開け閉めするものじゃないかな?」

新巻が指差す方向を見ると、崩れずに残っている壁の中央部に、大きな数字が書かれたドアのようなものが並んでおり、そのドアの中央に大きなバルブがあった。

「あの、1番のバルブを開ければ、花さんは方舟側に泳いで出られるんじゃ?」
「かもしれないけど…」
嵐は周囲を観察した。
「足場が全部崩れている。どうやって行ったらいい…?」
「しかも」
安居が口を挟んだ。
「あの壁面はコンクリートで、ボロボロだ。ハーケンも打ち込めないだろうな。そして…落ちたら、水の渦の中だ。…そっちはあきらめろ。バルブが動くかどうかもわからん。花のいる側の壁は硬い岩壁だ。そこを横に進んで、壁を壊す。あそこまで届くロープがないから…」
安居のそばに、涼が来ていて、言葉を足した。
「2人で、マルチピッチだな」
「頼む、涼」


安居は、短いロープを利用しながら、花のいる岩へ向かって横移動を始めた。
ハーケンを壁に打ち込み、ロープをセットし、カラビナを通し、横移動。
移動したら、次は涼。
涼は嵐に言った。
「…時間はかかるかもしれないが、多分これが最良だ」
「安居、オレも行かせてくれ。穴を掘るのに手があったほうがいいだろう?!…新巻さんは?」

新巻は何も答えなかった。
涼がつぶやく。
「ロープが荷重に耐えられるかな?…落ちる時は1人で落ちてくれ」

ゆらゆらと揺れながら、安居・涼・嵐が移動を開始する。
新巻はその3人の姿を見つめる。
花のいる穴ははるか先だ。

新巻は周囲を観察しながら、考える。

…間に合わない。それじゃ、間に合わない。
…僕は、彼らのように壁を行けない。
…水の中も行けない。
…だから、どうする…?
…僕は、ピッチャーだ。
…野球は、攻守ともにあらゆるパターンを想定して、何度も何度も、シミュレーションを繰り返す。
…ゴロを取って、セカンドへ。ダブルプレイ。
…バントをファーストが取る。代わりに走る。1塁でクロスプレイ。
…ありとあらゆる、パターンを考える。
…そして、身体を動かす。

新巻は周囲を観察し、頭の中であらゆるパターンをシミュレーションした。
ボロボロの手すり。壁。でっぱり。バルブ。

新巻の覚悟は決まった。
まっすぐ前を見る。そして振り返る。犬のバツが、新巻を見つめる。

「バツ…。追ってくるな」

新巻は手すりを蹴って飛んだ。
…1塁ベース。
…そこに手をかけて。2塁を蹴って。
…サード。ホームベース!


ダン!という物音のした方向を、嵐たちは見た。
新巻が、バルブにぶら下がっていた。


新巻の呼吸は荒かった。しかし、計算通り、バルブには届いた。
…届いた。
…問題は、動くのかどうか。
…堅い…。動け…!


安居が叫んだ。
「新巻!バカか!…どうやって戻るつもりだ?!」
嵐がつぶやいた。
「新巻さんは…、戻る気なんか、ない」

次号へ続く。
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