ネタバレ

February 10, 2017

7SEEDS 空の章11 蹉跌

以下のあらすじは、7SEEDS 空の章10 本質からの続きです。

2017年1月28日発売 2017年フラワーズ3月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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方舟の中に重い沈黙が満ちる。
ゴン…ゴン…と断続的に聞こえてくる音と振動に、不規則な揺らぎが混じる。

「明らかに…ユラユラして天井にぶつかってますネ」と朔也。
「自動的に開くんじゃねーのかよ!」と蝉丸。

「ぺ…ペルが、言ってました。開かない時は、ここに開閉用スイッチがある、って…」

ナツはコンソールに近づく。開閉用スイッチを見つけた。
「押してみますね」

ナツはボタンを押した。変化はない。
朔也がモニター画面から外の様子を見る。天井の脱出口が開いている様子はなかった。

お掃除ロボから嵐の声が聞こえてきた。

「蝉丸?どうした?…急に聞こえにくくなったけど…外に出たのか?」
「あ…」

嵐の声に答えようとする蝉丸は、後ろから強い力で肩をつかまれた。
花だった。
花は強い視線と首の動きで、蝉丸にストップをかけていた。

「蝉丸?花?」
嵐の呼びかけを無視して、蝉丸は花に声をかけた。

「ちょっ…落ち着いて座ろうぜ」

蝉丸と花は、コンソールに背を向けて床に座った。
ナツは傍らで2人を心配そうに見守る。

「確かにな…外からじゃどうにもできないかもな。みんなも、急いで逃げないといけない。火事になってるらしいしな」
「あきらめるんじゃないんです」
花は言葉を続けた。
「自分たちだけで、なんとか…」

蝉丸は、花の気持ちに理解を示しつつ、花に諭した。
つまり。
花が、嵐に危ないことをさせたくない、という気持ちは、すごくよくわかる。しかし、嵐は、というか男は、好きな女のためにがんばりたいものなのだ、と。

「好きな女のために命張るのって、一番かっこいいじゃん。オトコのコはさー、みんなそれ、やりたいワケよ。あんたが今、嵐のために命張ろうとしてんのと同じでさ。
嵐も、したいんじゃね?」

蝉丸の言葉を聞いて、花はうつむく。
そんな花の頭を、蝉丸は豪快にワシャワシャしながら笑った。
「はっはっはっ!もー、花ちゃんさぁ、あんた、意外と見かけより古風な女なんな!いじらしいわ!」

そんな蝉丸と花のやりとりをよそに、朔也があっさりと、嵐の呼びかけに応えていた。
「エート、天井が開かなくて出られないんですケド。なんとかなりますかネ?」
「朔也――!おま…オレがせっかく、ちょっとイイ話してんのに!タイミング考えろよ」
「エ?そうなんデスカ?」
「えええー?」
「空気読めない、ってよく言われマス」
「開き直るな!読めよ!」

方舟が脱出するための天井が開かない。
その情報は素早くお掃除ロボを通じて共有された。
嵐、新巻、角又、ひばり、朔也があれこれと情報をやりとりする中、嵐の脳裏にひらめいた風景があった。

…開閉スイッチ?
…あれ?まてよ?どっかで見たぞ?どこだった?
…どこ…?…あそこだ!新巻さんが水に落ちた、あの空間。

嵐は、気づいた。
「操作盤があった!ARKの操作盤って書いてた。方舟のことかな?天井を開く操作が、あれでできるんだと思う。今、大柱群のとこに戻ってきてるから、もう一度同じ道を降りてけば行ける。オレが天井を開けるよ!」
「ひゃっほう!」
蝉丸が気勢をあげて花の頭を抱きかかえ「ほらな!」と得意気に微笑んだ。

嵐の次の行動は決まった。
新巻が嵐に、自分も一緒に行く、と告げる。しかし嵐は新巻の申し出を断った。

「ダメです。平気そうに見せてるけど、身体のあちこち痛めてるでしょ?足だってかなり痛いはず」
「大丈夫です。小瑠璃さんのテーピングがうまいから、痛みなんて忘れてたくらい…」
「ダメです」

嵐は、新巻の目をまっすぐ見て言った。

「新巻さん。オレが行きます。花と、ナツと、蝉丸がいる。オレが行くとこです。
新巻さんは、この人たちと一緒に、無事に上まで避難してください」

新巻は、嵐の目を見た。嵐の、迷いのない瞳を見て、新巻は引き下がった。

「…わかった…。1人で、大丈夫ですか?」
「道はわかってるんで、ひとっ走り、行ってきます」
新巻と嵐の会話に、お掃除ロボから安居が割り込んできた。

「おい!嵐!1人でなんて冗談じゃないぞ。…どこかで落ち合って…!」
言いかける安居の背後から、涼が鋭い声を出した。
「安居!」
安居は、黙った。周囲を確認し、涼の顔を見る。
安居は、涼の意図がわかった。そして、自分達にもあまり猶予がないことも。

安居はお掃除ロボから嵐に向かって呼びかけた。
「…すまん…ムリだ。嵐、慎重に行け。知っている道こそ、油断するな」
「大丈夫だよ」
「備えを、怠るな」
「わかってる…安居。友達を、早く上に、連れて行ってあげなよ」
「ああ…、ナツと蝉丸を頼む」

角又は、自分が使っていたお掃除ロボを、あゆはクモの糸玉を嵐に渡した。

「ありがとう。…みんなも、気をつけて」
「嵐くん…」
新巻は嵐に手を差し出し、嵐はしっかりとその手を握った。アイコンタクト。

嵐は走り出しながら言った。
「すぐ戻って、追いかけます!」
角又が手を振った。
「目印つけとくよってに、気ぃつけや!」
「はい!」



安居は、つぶやいた。
「…1人で行かすなんて、最悪だ」
「過保護か」

涼が冷ややかな目で安居を見る。

「でも…嵐の身体能力につきあえるヤツがいない。オレらの他は、新巻くらいだ」
安居の言葉に涼が応える。
「小瑠璃は (身体能力なら他のメンバーの) 上行くだろ?」
「小瑠璃は、何かに備えてる。風を読んでる。風のないところにはいかせられない」

涼と安居の背後で、犬のダイが小さくうなっている。
突然、ダイは何かに気づいたような声で一声吠えると、一直線に走り出した。安居と涼が向かおうとしている反対方向だ。

「ダイ?!」
まつりがダイに声をかけたが、ダイは走り去ってしまった。
「ダイ!」
「ほっとけ」
安居は振り返りもせず言った。
「どうせ、犬を連れてはあの壁を登れない。涼、急ごう。…多分あまり時間がない」
「わかってる」

涼は歩きかけて、気づいた。まつりがいない。



まつりはしょんぼりと、ダイの走って行った方向へと1人、歩いていた。

…そうだったよ。
…涼くんたちは、壁を登って、外へ出るつもりなんだ。
…じゃあ、あたし、ついていけないじゃん。
…涼くんは言ってた。『小瑠璃は、上行くだろ』って。
…やっぱり、小瑠璃ちゃんは、お気に入りなんだ。認めてるんだ。
…あたしの、能なし。

まつりの目に、また涙がにじんでくる。

…嫌われたかもしれないけど、もっとちゃんと、涼くんと話そうと思ったのに。
…そもそも、一緒に行けないじゃん。
…あああ、ごめん、ナッちゃん。ナッちゃんが大変な時に、こんなこと。

そんなこんなを考えながら歩いているまつりの背後から、鋭い声が聞こえた。

「まつり!」
まつりは振り返った。涼だ。銃を構えている。
「動くな」
「りょ…」

まつりが「涼くん」と呼びかけるのと同時に、涼は発砲した。
まつりの背後に向かって、2発。

「何これーーー!エイリアン?…耳が…いたい…」
「みんなが話してる、クモだろうな」

涼の銃によってバラバラに砕けたクモが、まつりの背後に飛び散っていた。

「さっきまでこの辺にはいなかった。痕跡もなかった。…こいつらも、避難を始めてる」

涼はまつりの首ねっこをつかんで、走り出した。
「来い!勝手にウロウロするな!」

まつりはなすがまま、涼に引きづられる。安居と合流。
「安居!」
涼が叫ぶ。安居もクモと応戦していた。

「こいつらが寄ってきてるってことは、上に抜けられるってことだろう。
行くぞ!茂を連れて、外へ出る!」



嵐は、ARK操作盤に向かって走っていた。
同じ道を行くなら、前よりずっと速く動ける。
走ったり飛び降りたり、クモの糸を利用したりしながら、嵐は走った。
走りながらお掃除ロボを通じて方舟に話しかける。

「蝉丸!そっちは大丈夫か?空気はあるのか?」
「今んとこ大丈夫。…多分。…ヘンな揺れだな。引っ張られてる感じ。酔いそう」
揺れの中で、花が思いついた。

「この球体、天地無用とは限らないよね。海に出て、さかさまになるかも」

花は周囲を素早く見回した。

「イスにはベルトがついてる。…蝉ちんとナッちゃんは、ここに座ってもらって。 朔也くん、あたしたちは、身体を固定できるものを探そう」
「オッケー」

蝉丸は、花の指示におとなしく従いながら、花を見つめた。

…花って、やることがあると、とたんに元気。やることがなくなるとヘタレるのな。

蝉丸が嵐に話しかける。

「花ってさー、攻めに強いけど、守りに弱いタイプ?なんか…ナベと、フタ?」
「割れ鍋に綴じ蓋、ですか?」
すかさずナツのツッコミが入る。
「それ!…ナツよ…花、意外と、カワイイよな?」
ナツは蝉丸の発言には答えず、蝉丸の顔をじっと見つめた。
「な…なんだよ…?」
ナツは、「なんだよ?」という蝉丸の問いかけに、自分でも何なのかよくわからなかった。
ただ、黙ったまま蝉丸の顔を見る。
蝉丸は、少し赤面した。
…もしかして、妬いたのか?妬いたのか?ナツーーッ?!

「とりあえず、『天地ムヨー』って、なんのことか教えてくんねぇかな?」
「知らないんですか?!」

嵐は、蝉丸達との会話に和まされながら、先を急ぐ。
そしてやっと、目的の場所にたどり着いた。

さっきよりもかなり、水かさが増していた。
そのうちここは、永久に水に埋まってしまうのだろう。
水の底にいた、ゲル状の生き物はどうなるのだろうか、と嵐は少し感傷的になった。
しかし、しんみりしている余裕はない。

さっき見かけた「ARK操作盤」は、まだ無事だった。
他の設備がすべて暗くなっている中で、その部分だけが点灯している。

ボタンは3つ。「注水」「上開」「上閉」

嵐はお掃除ロボから呼びかけた。
「蝉丸、花、ナツ。押してみる。いいか?」

嵐は祈りをこめてボタンを押した。

…開け。頼む、開け!



方舟の中に、何か大きな機械が動いているような、重い大きな音が響いてきた。
朔也がモニター画面の前から声を出した。
「開いてますヨ。…ホラ、この映像でも」

蝉丸はナツに抱きついて歓声をあげた。
「嵐!サンキュー嵐!今度こそ、この穴グラと、オサラバだぜ!!」
「よかった!じゃあ気をつけて…」

嵐の言葉は宙に浮いた。身体も。
大音響とともに足場が崩れたからだ。
嵐の身体はクモの糸に吊られている。安居に言われた通り、念のためにつないでおいた命綱が働いていた。

…備えておいてよかった…安居。中途半端だけど。

嵐は必死でクモの糸につかまりながら体勢を整える。
背中にくくりつけているお掃除ロボから、蝉丸と花の声が届く。

「嵐?!大丈夫か?…なんか、デカい音がしたけど…」
「大丈夫…、ちょっと、足場が…」
「嵐?」
「大丈夫だよ、花」

嵐は崩落しかかった足場の一部に、なんとかよじ登った。

…ここから、どうする?もう、水に落ちたくない。
…クモの糸を投げて、どこかにひっかけて…。
嵐の頭上に、細かいコンクリートのかけらが降ってくる。
振ってくるかけらが次第に大きくなる。何かの設備の一部らしい機械まで落ちてきた。
身体にぶつかる。痛い!
嵐はクモの糸にすがりながら、必死で次の道を考えた。
崩落の音が大きくなる。

…待ってくれ。まだ!
…まだ、花に会ってない!


方舟の中では、天井部分が完全に開ききったことが確認されていた。

「完全に、開きましたヨ」
「やっとか。…じゃあ、後は、勝手に浮かんでくだけだな」

方舟の中で、蝉丸たちは、その時を待った。



嵐の耳に、犬の声が届いた。ダイだ。必死で吠えている。
「ダイ!? ダイ、こいつをどこかにひっかけてくれ!わかるか?!」
嵐はクモの糸玉を、ダイに向かって投げた。


方舟の中では、蝉丸がつぶやいていた。
「…ダメだ…なんでだ…?浮かんでいかねぇ…」

次号へ続く。
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