ネタバレ

April 10, 2015

7SEEDS 山の章17 対峙

以下のあらすじは、7SEEDS 山の章16 印象からの続きです。

2015年3月28日発売 2015年フラワーズ4月号掲載分で、既刊単行本未収録分となります。
従って、7SEEDSを単行本で読み進めている方にとってはネタバレとなります。

■あらすじINDEXはこちら

単行本で読み進めている人、ネタバレを読みたくない人はこの先読み進めないようご注意ください。

なお、あらすじは、感動的なシーンや印象的なセリフを極力書き込みすぎないように心がけています。本物の感動は単行本または本誌でどうぞ!

【注意!この先ネタバレがあります】

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「そんな…」

嵐の行く手は阻まれた。
館内アナウンスは「流れ込む水の量が警戒レベルを超えたので隔壁を閉める」と告げている。その言葉通り、嵐のいる水路の水かさが増していた。

嵐は独り言を言いながら、とりあえず壁を叩いてみる。
「誰か、開けて」

人の反応はない。けれど、嵐は気づいた。
この扉は閉まり切っていない。下のほうから水が流れ込んでいる。
…ということは、水かさはさらに増す。嵐は決断した。

「花」
嵐はお掃除ロボを通じて声をかけた。
「オレ、ちょっと水に入るんで、こいつは連れていけないと思う。そっちは危険はないか?」
「あたしは大丈夫、今のところは…。蝉丸さんと、ナツさんも無事だよ」

花は“新巻さんが扉の外に…”という言葉は、飲み込んだ。

「よかった…じゃあ、いいや。またあとで、花」

嵐はお掃除ロボから手を離した。お掃除ロボは水の中へ沈んで行った。
そして嵐は荷物をかかえ、水の中に体を横たえた。
そのまま、水の流れに任せて流されて行く。
嵐は、水に流されながら安居のことを考えた。

…水に流される時は、頭をぶつけないように、足を川下へ向ける。
…そういうことを教えてくれたのは安居だったのに。
…この先にいる安居は、どうしてるだろう。



嵐の流されていく水路はどんどん狭くなっていった。
行く手に新しい隔壁らしきものが見えた。隔壁が下がり始めている。

隔壁の傍らに人影が見えた。
安居だった。

安居も、流されてくる嵐に気づいた。
安居はナイフを取り出した。
嵐は安居のナイフを見て身構えた。
しかし、安居は嵐を襲うためにナイフを出したのではなかった。
ナイフを壁に刺し、隔壁が降り切らないように止めるためだったのだ。

「早く、来い!」
安居は叫んだ。嵐は勢いよく扉の中へ飛び込んだ。

嵐の背後で隔壁が勢いよく閉まった。

「あ…ありがとう」
息を切らせながら、嵐はとりあえず安居にお礼を言った。

「…おまえとは、どうしていつも水の中なんだか」
「2人とも泳ぐのが得意だからかも。
得意なことに足をすくわれそうな気が、いつもしてる。…気をつけないと…」
「なるほど。肝に銘じよう」

安居の傍らにいた、犬のダイが吠え出した。
閉まったばかりの隔壁から、水が漏れ出している。
「…ボロい」
「むこうの隔壁も、閉まり切ってなかったよ」
「もたないな。急ごう」



一方、新巻は閉じられてしまった扉を叩いたり大声を出したりしていた。
しかし、扉の向こうからは何も聞こえない。どうやら扉は分厚いようだ。

新巻のいる場所のすぐそばには、幅広い水路がある。
じわじわと水位が上がってきて、いつのまにか新巻の足元を濡らし始めた。

「水が増えてきたな。逃げないと…」

移動しかける新巻の耳に、犬の鳴き声が届いた。
新巻は犬の声のする方向に目をやる。
水路の端、隣の空間とこちらとを隔てる部分に、鉄格子が嵌っている。
その鉄格子ごしに誰かいた。男が2人。そして犬が1匹。
1人は安居だ。
新巻が駆け寄る。犬が必死で新巻へ向かって吠える。

「おまえ…ダイか?!どうしてこんなところに…」

新巻は鉄格子の周囲を見た。鉄格子のはまり込んでいるコンクリートにはヒビが入っている。
新巻は必死でコンクリートを蹴った。
コンクリートは砕け、鉄格子は外れた。
ダイが新巻の胸に飛び込み、安居ともう1人が、入ってきた。



安居は、つぶやいた。
「新巻…」
「新巻?!」
嵐がその名前に反応する。新巻が答える。

「どうも、久しぶり…安居。そして多分…、嵐くん」
新巻は冷たい目で安居を見る。安居は新巻をにらみ返す。
嵐はとっさに
「あの…、新巻…さん、あの時は本当に…すみませんでした」
と言うことしかできなかったが、安居が会話を遮った。
「話は、後だ。水が来る」

3人はとりあえず高いところへと移動を開始した。

嵐が新巻に質問した。

「新巻…さん、花と一緒じゃなかったんですか?」
「うん、さっきまで。あの扉が閉まって…花さんたちはあの向こうにいる。分厚いらしくて、声が届かないんだ」

嵐は新巻が指差す方向を見て胸がいっぱいになった。

…花が、あの向こうに。
…来た。こんなに近くまで。
…来たよ。来た…けど…。

「…花?」
安居が声をあげた。
新巻が冷たい声で応える。
「花さんは無事なんだよ。ここに一緒に来たんだ。残念か?」
「…生きて…たのか…。…そうか…」

嵐には、安居がホッとしたように見えた。

「嵐くん。…君に言うべきか迷うけど…」
新巻が苦い表情で言いよどんでいるのを見て、嵐は察した。
「安居が、花にしたことは聞いてます」
安居は、その話題を避けるかのように、先にたって歩き出した。

「2人ともいい加減にしてくれ、いつまでもうだうだと」
「いつまでも?」
安居の背後から、新巻が肩をつかむ。
「そういうことなんだよ、誰かに対して罪を犯すということは。一生、責められても仕方ないんだ」

新巻は厳しい表情で安居に話してきかせる。
誰かに対して罪を犯すということは、相手が心から赦さない限り、赦されないということ。
誰かを殺してしまうということは、もうその相手から赦されることもできないということ。

「君らも、そうだろう?されたことを忘れないだろう。
いつか、その人たちを赦せると思うか?
それと同じだ。ひとも同じなんだよ。君らはそこらへんが抜けている」

安居は新巻の言葉を聞きながら、嵐の言葉を思い出した。
“花にも、感情がある”
“いつもいつも、自分だけが被害者だと思うな”


「ただ…」
新巻は言葉を続けた。
「銃に対抗してケガさせたのは悪かった…と思う。手は大丈夫か?」
「別に。治った」

安居は新巻の手を振り払い、歩き始めた。
新巻は嵐を振り返り言葉を続ける。

「彼らは夏Bにも何かしたようだ。…死にかけたって?」
「何もしてない!オレはな!」
安居は怒鳴り、支柱のない階段の途中で一箇所に固まるな!と注意しつつ先へ進んだ。

安居は心の中で叫んでいた。
…オレは、悪党じゃない!



3人が上へと上り始めた階段は、四角い空間を取り囲むように、少しずつ上へと伸びている。ビルの5,6階、それ以上だろうか、高さはかなりある。
最上階と思われる場所にたどり着いてはみたものの、そこも隔壁で閉ざされていた。

「行き止まり…だな。とりあえず、着替える」

3人はつかず離れずの距離で腰を下ろした。
新巻は、ぬれたのは足元だけだったので着替えず、犬のダイの相手をしている。
嵐は、着替えながら思った。

…気まずい。
…こんな時、蝉丸がいてくれたらな。

着替え終わった安居が腰を下ろすと、ダイが安居へ近づいていった。
「ダイ、そばにいなさい」
新巻は呼びかけたが、ダイは安居のひざに前足をかけ、寄り添った。

嵐は、新巻に話しかけた。
「新巻さん…、花と、とても深く信頼関係を築いているんですね。
花も…ものすごく、あなたを…」

新巻は、嵐に答えて、自分は、冬のチームのたった1人の生き残りであることを語り始めた。
「みんなに助けられて、生かされて…死に損なって、生き延びました。
15年さまよって、君たちに出会いました。…でも…」

嵐があの時の失礼を必死で詫びた。

「いえ、あの時は僕も怪しすぎたから。…あの、すぐあとなんですよ、花さんに会ったのは。
…僕は…この人に会うために、生きてきたんだと思いました」

嵐は思わず新巻の顔を見た。
新巻は嵐を見ていない。どこか遠くを見るような目。悲しそうにも嬉しそうにも見える表情。

嵐は思った。
…だって、新巻鷹弘だ。
…憧れのスター。エース新巻。かなわない。…けど。

嵐はきっぱりと口を開いた。
「花は、渡しませんから」

新巻は、嵐を見ないまま、遠くを見るような目で、微笑みながら言った。
「そういうんじゃ、ないんですよ…」

嵐は、新巻の言葉の意味を考えた。
…死に…損なった…?
…そういうんじゃ、ない…?
…じゃあ…?



源五郎は、コントロールルームから、お掃除ロボを通じて誘導を続けていた。
最初にコントロールルームへたどり着いたのは、蛍だった。

「源五郎さんですか?!」
「蛍さん?!…そんな小さかったんですか。よくがんばりましたね」
「はい。ありがとうございます」

次に到着したのは、秋ヲ、茜、鷭、桃太郎の4人。
一同は当座の無事を喜びあった。

秋ヲは、さっそく室内の設備に興味を示した。
源五郎は、秋ヲに、この部屋はお掃除ロボ製作者の部屋だったらしいことを告げた。

秋ヲはタッチパネルを操作し、源五郎が気づかなかった場所に格納されているフォルダを、いくつか見つけた。

「こいつが、気になるな」
秋ヲは『 Last Message 』 と書かれたフォルダをタップした。
映像が流れ出す。

そこには、いくつかのお掃除ロボと一緒に、青年が2人、映っていた。
秋ヲは知らなかったが、源五郎が見た記録映像の、最後の2人だ。

青年たちは語りだした。

「もし、これを見る人がいたら、気をつけて。そのままでは、佐渡は沈みます。
どうか、佐渡を、方舟を、守ってください。
…これは、警告であり、お願いです」
次号へ続く。


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