AKMST OMDT🎍KTSM YRSK🐓 2017 年賀状とライブ初め情報

あけましておめでとうございます🎍
今年もよろしくお願い致します。

今年も描いた年賀状を貼っときますね。
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なんやらわけわからん年賀状やね。正月からこんなん送られてきても嬉しくないか。まあよかたい。

また例年のごとくライブ会場の物販に年賀状を置いとくので、ご自由にお持ちくださいませ。
まあ毎度もらってくれる人あんまりいないけども。
てなわけでライブに来て年賀状も是非ゲットしてください!


年明け1発目 2017年ライブ初めは深夜のオールナイトパーティーです。
テクニックランナーのレコ発!下北沢THREEの名物パーティー「Block Party」とのコラボイベント。ヘンテコで濃厚な夜になりそうです。

今年はちょっとライブ少なくなるかも。まあ毎年少ないけども。もっとライブやりたいんだけどねえ。バシバシやりたい。サウンドはもっと鋭くもっと深くもっと磨きをかけていくんで、続けていくんで、これからも、今年も、よろしくお願いします!

あ、ついでにクリスマスのギャンキャワな愛猫まめ太郎の写真をのっけとくね。

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【次回ライブ情報!】

💋1/20(金)
『Block Party×加速するフューチャー。』
TECHNIC RUNNER 1st albumレコ発
@下北沢THREE
OPEN/START 24:00 (〜29:30)
入場無料!

※飲食の持ち込みはご遠慮下さい

《出演》
✴︎TECHNIC RUNNER
✴︎クラーク内藤
✴︎BOOL
✴︎田島ハルコ
✴︎Dual Core Electro(AE35+BAXIM)
✴︎§†§
✴︎チミドロ
✴︎READYMADE REBEL
✴︎BLACK(Y$F)
✴︎ポテト(マルサスクルー)

✉︎メール予約は↓↓↓
readymaderebelmail@gmail.com まで

お待ちしております!


http://readymaderebel.com

さよなら2016年

‪今年はほんと色々あった。転換期だと思う。
やっとアルバム出せた。初の全国流通盤。TSUTAYAにも置いてもらえた。6年以上働いた会社を辞めて転職した。
色んな感情がぐちゃぐちゃになっててずっと続いている。退屈さも。後ろめたさも。何年も前から。若い頃は歳をとればなくなると思ってた。けどこれはなくならないと思う。いつまでも。いつになればなくなるんだろう。‬ただ、ちょっとの興奮をくれるのは音楽だった。束の間の興奮。束の間の夢。世界は今でも愛を歌っている。いつまで歌うんだろう。退屈なんだよ。でも、それでも、いつまでも愛を歌っていてほしい。なんだよ人任せかよ。ちがうのよ。世界人類が平和でありますように、とかそういう類のものよ。ああ薄っぺらいな。なんて薄っぺらいんだろう俺の言葉は。
なんで愛を歌っているんだろう。ポップミュージックは。
俺は何を歌っているんだろう。
出来合いの反抗の先に本当の興奮があると信じて、今までやってきた。のかな。
俺たちはただ働いて。俺たちはただ流されて。
愛してた2016年。でももう愛してなんかいない。
俺は2017年を愛してる。

愛してるぜ2017年。

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『真っ黒い猫と社長の話』(2013)

とある河川敷に、とある猫がいた。そいつは真っ黒い猫で、全く鳴かない黒猫。
鳴くことができないのか、鳴くのを忘れたのか、声を出さない真っ黒の、やせっぽっちの黒猫。

5年前、俺は小さな印刷会社で働いていた。その印刷会社は不況の煽りを受けて倒産した。
自己破産した社長は家族を残して姿消した。愛する家族のために、社長はひとり姿消した。社会の外に投げだされた、小さな印刷会社の社長。命だけを残して、社会の外に投げだされた。

会社が潰れてしばらく俺は、社会の中でぶらぶらしてた。社会の外には出たくない。けど社会の中にもいたくない。
友達がやってるバーで俺はこっそりバイトをしながら、失業手当てを貰ってだらだら毎日を送っていた。こんな毎日にうんざりしながら、この毎日が続けばいいと思っていた。


一段と寒くなった冬のある日、俺は河原をひとりで歩いていた。俺は河原を歩いて橋の下をくぐるのが好きだった。ヘッドホンから流れるミュートビートと、川を流れる銀杏の葉っぱ。河川敷には段ボールハウス。毛布とワンカップと段ボールハウス。そこにひとりの男の姿。帽子をかぶった男の姿。男はあぐらをかいたまま真っ黒い野良猫を抱いていた。
真っ黒い猫も帽子の男もひどく痩せていて、ひどく汚れていた。

俺はその帽子の男が社長だとはっきりわかった。帽子とヒゲで顔が隠れていたが、俺は何故だかその男が社長だと、はっきりとわかった。
俺は社長の横を歩いて通り過ぎた。
俺は度々その河川敷を歩くようになった。社長はいつも真っ黒い猫を抱いていた。

俺も社長も黒猫も、黙ったままで、時間が過ぎた。


ある朝起きて外を見ると真っ白い雪が積もっていた。俺は社長が気になって、河川敷に向かった。するとそこにはいつもの男の姿はなくて、汚れた帽子が落ちていて、そこに真っ黒い猫が座っていて、段ボールハウスは雪で覆われていて、白い雪が降り積もって、そこには音がまるで存在してなかった。

真っ白い雪に震えながら真っ黒い猫が座っていた。汚れた帽子の横で、真っ黒い猫が座っていた。真っ黒い猫は黙りこんだまま、そこをどこうとはしなかった。

鳴くことができないのか、鳴くのを忘れたのか、声を出さない真っ黒の、やせっぽっちの黒猫。


それから俺は毎日河川敷に行った。
毎日毎日 真っ黒い猫は汚れた帽子の横で動かない。俺は毎日真っ黒い猫に缶詰を買ってあげた。けれど真っ黒い猫は全く食べようとしない。
2日目も3日目も、缶詰は他の野良猫に食べられてしまった。次の日も、次の日も。10日後も20日後も、真っ黒い猫は食べようとしない。

ちょうど一ヶ月が過ぎた日に、真っ黒い猫は死んだ。

汚れた帽子の横で真っ黒い猫は死んだ。


それからしばらく経って聞いた話だが、社長の奥さんは会社が倒産して間も無く、病気で死んだのだという。真っ黒い髪で細くて綺麗な奥さんだったと。
その話を聞いて俺はあの真っ黒い猫を思いだした。俺はあの河川敷へ走った。急ぐ必要もないのに、俺は河川敷へ走った。

河川敷に着くと、そこには何もなかった。そこには何もなかった。俺は石ころをひとつ拾って、川に投げた。ぽちゃんと音がした。そして全ての音が消えた。



それから夏になって、俺はいつもの毎日をだらだらと過ごしていた。
ある晩、バーでバイトをしていると、どこからか一匹の猫がお店の中に入り込んできた。

その猫は真っ黒で、とても綺麗な毛並をしていた。

俺はその猫に向かってこう言った
「お前、どっから来たんだい?」

するとその猫は、

するとその真っ黒い猫は


ニャーオ

と鳴いた。


その鳴き声があんまり美しくて、俺は言葉を失った。

その声が綺麗すぎて、俺はその場に泣き崩れた。

『私の旅』【後編】(書きかけの小説)

男が母に電話をしている。私が家にいることを伝えてくれたようだ。今日は12時には家に帰ると言う。私が落ち着かずにそわそわしていると、男が私に聞いてきた。

「君はお母さんのことをどう思ってるの?」

「どう、って。よく、わかんない…です」

「お母さんのことを恨んだりしてないの?」

「そんなことはありません。嫌いではないです。こうやって家まで来たんですから。でも、好きなのかどうか、わかりません」

「君はえらいね」

「べつにえらくありません。なんか、よくわかりません」

「ごめんね。お母さんもうすぐ帰ってくるからね」

私はクラスの友達もいっぱいいるし、付き合ったことはないけど、好きな人もいたし、だけど私には家庭がなかった。家庭というものがよく理解できなかった。

ガチャッ、バタンとドアの音がして、いよいよ私は緊張した。
男が母を迎えに玄関に行った。二人の話し声が聞こえる。ゆっくり足音が近づいてくる。男が部屋に入ってきた。大きな白い服を手に持っているようだ。

「よく、来たね…」

女の声がした。母の声だ。私にはわかった。ああ母の声だ!覚えはないけど覚えている。母の声だ。
けれど目の前で母の声がしたのだが、母の姿はない。あの男が立っているだけだ。

「えっ、お母さんは…?」

よく見ると白い服が人間の形をしてこっちにゆっくり近づいてくる。首がない!
「ひゃあ!」
私は叫んで椅子から転げ落ちてしまった。
手も足もない、顔もない、白い服だけが私の目の前に浮かんでいる。

「ごめんね。覚えてないよね」

母の声がした。その声は泣いているようだった。

「やっぱり。私のこと、わからないよね…」

「お母さんは、お母さんはどこ?」

「お母さんはあなたの目の前にいるのよ」

「いやだ。怖い!」

私は恐怖のあまり部屋を飛び出して玄関まで走った。ドアを開けて外に出た。私は走った。知らない道を走った。足が震えてうまく走れない。心臓がバクバクしている。どうしよう。どうしよう。

辺りは真っ暗で静まりかえっている。とりあえず落ち着こうと思い公園のベンチに座った。足の震えは治まったが、額から変な汗がたらたらと垂れてくる。涼しい風がふくたびに額の汗をひんやり冷やして気持ちがよかった。
私には母が見えなかった。

公園でじっとしていると得体の知れない恐怖が押し寄せてきて、私はいてもたってもいられず町を徘徊した。するとコンビニが見えた。私はコンビニに入った。涼しい。人がいる。見慣れた光景。ほっとした。
自然は私に安らぎを与えるが、時として自然は得体の知れない恐怖を与える。自然は掴むことができない。だから私はそこに3拍子をのっける。すると上手く行く気がしていた。

私は行くあてをなくした。コンビニに閉じ込められたみたいだった。もうあんな恐怖は嫌だ。だけどこのままではどうしようもなかった。
私はまた母の家に行くことにした。

私はまた母の家に戻り、玄関のベルを鳴らした。心臓がバクバクして足が震えた。するとすぐにドアが開いて男が出てきた。私は反射的に後ろへのけぞってしまった。

「大丈夫、安心して。何も怖くないから。中へおいで。落ち着こう」

「お、お、お母さんは?」

「お母さんは君が落ち着くまでは寝室から出てこないって。だから中へおいで」

私はまた部屋の中へ入ると、白い紙がテーブルに置いてあった。それは母が私に書いた手紙だった。男はリンゴジュースをついでくれた。

「美樹恵がね、さっき書いた手紙だよ」

まさか会えるとは思わなかったから、顔を見れて本当に嬉しかったよ。でも怖がらせて本当にごめんなさい。そんなつもりはなかったの。もしかして、と思ったけど。やっぱりあなたには私の顔を見ることはできないのかもしれません。でも私はとても嬉しいです。あなたがお父さんによく似てきたことが。私はあなたが元気でいてくれるならそれが幸せです。
私の顔は見えなくていい。だけどいつかお話したいな。写真だと見えるよね、私の顔。人間だから安心してね。もちろんあなたも人間よ。なにもおかしくない。見えるものが全てだったら、音楽なんて嘘になるでしょ。
もしあなたが会いたいと思ったら、また会いにきてください。私はここにいます。

リンゴジュースは冷んやりして美味しかった。私はよくわからずボロボロ泣いてしまった。
どうやら私は小さい頃から母のことが見えないようだった。

男が私に言った。

「やっぱり似ているよ。君の顔、お母さんにそっくりだ」

たしかに写真では母の顔を見たことがあった。言われてみれば似てるのかもしれないが、友達には父に似ているとよく言われていた。

私は男に言った。

「お母さんと話がしたい」

「わかった。そこに座ってて。ちょっと待ってね」

私は部屋のドアをじっと見ていた。エアコンの音と冷蔵庫の音がどんどん大きくなっていく気がした。3拍子。3拍子。3拍子。3拍子。

男がドアを開けて言った。

「お母さん入るからね。大丈夫。君のお母さんだよ。心配いらない」

すると薄いピンク色のパジャマがゆっくりと部屋に入ってドアの前に立った。

「さっきは驚かせてごめんね。そして来てくれてありがとう。私はあなたの顔を見れて嬉しい。それを伝えたかったの」

「お母さん。お母さん」

「疲れたでしょう。もうこんな時間だからね。寝なきゃ」

「お母さん…」

「私と同じ部屋で寝るのは嫌でしょ。そこに布団もってこうか?テーブルどかすからね。ここに布団しいて、大丈夫かな?」

「なんで、なんでお母さんの顔が見えないの?」

「…なんで、だろうねえ。わからない。病院にも行ったのよ。眼科にも。精神病院にも。でもわからなかった」

「病気なの?」

「いや、病気じゃないよ。病気じゃない。私のことが見えないだけ。それだけ」

「だって普通、見えるでしょ」

「普通は見えるかもね」

「嫌だ…」

「大丈夫。…大丈夫」

母は私の頭をやさしく撫でてくれた。母の手は見えなかったが、とても温かかった。なんだか懐かしい感じがした。私は確かに母を感じた。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


気がつくと私は眠っていたようだ。テーブルの上にまた手紙が置いてあった。男は仕事に出かけたらしい。母は寝室にいると書いてある。ライブハウスの仕事はお昼過ぎてから出かけるようだ。
私は起き上がり布団を畳んでテーブルに座った。もう10時か。でも気持ちのいい朝だ。私の母への恐怖はほとんどなくなっていた。

コンコンとドアを叩く音がした。
「起きたの?」
と母の声がした。
「起きたよ。おはよう」
「おはよう。入ってもいいかな?」
「いいよ」
ドアが開くとまた服だけが浮かんで見えた。わかっていてもちょっとびっくりする。
「やっぱり見えないや」と私は少し笑って言った。

「夏休み?学校は行ってるの?」
「そう夏休み。学校行ってるよ。ちゃんと勉強もやってるし友達もいるよ」
「そう。よかった。お父さんは?」
「お父さんも元気だよ。毎日仕事ばっかり」
「お父さん、なんか言ってた?」
「あのね、お母さんが送ってくれた手紙、お父さんに渡してないんだ」
「えっ?見てないの?」
「ごめんなさい」
「お父さんが元気ならいいんだけど。たいした内容じゃないし」
「なんでお父さんは何も言ってくれなかったの?」
「お父さん、何も言ってなかった?」
「お父さんは何も言ってくれない」
「お父さんはね、あなたのことが嫌いな訳じゃないのよ。それだけはわかって」
「どうしてわかるの?そんなの嘘だ」
「お父さんはね、あなたのことを大事に思ってるのよ。…ごはんつくるからちょっと待ってね。お昼はうちで食べるでしょ?」
「うん。でも」
「夜はどうするの?」
「お金あるから大丈夫」
「まだ帰らないんでしょ。夜ごはんも作っとくからレンジでチンして食べて。この季節だからごはん冷蔵庫に入れとくからね」
「ありがとう」
「お金いるときは言ってね。帰るときはお金渡すから。いつ帰るの?ここにずっといてもいいのよ?」
「いや、帰るよ。学校あるし。学校は嫌いじゃないもん。家よりは…」
「お父さん怖い?」
「怖いっていうか…」
「いつ帰るの?」
「まだわからない」
「今日は帰らないでしょ?」
「うん」

私はなんだかここにずっといたほうが気が楽なんじゃないかと思った。

「あの男の人と結婚してるの?」
「まさか、私は離婚なんてしてないのよ」
「お母さんはお父さんのことが好きなの?」
「そうね。好きよ」
「だったらなんで一緒に暮らさないの?」
「私ね、あなたと一緒には暮らせないんだと思ってた。ごめんね。本当に、…ごめんなさい」
「お母さんのことが見えなかったから?」
「そう。私も怖かった。怖くてたまらなかった。あなたのことが怖い訳じゃないのよ。あなたのことを想うと、私はいないほうがいいと思った」

私はこれまで母がいなくても平気だったし、そんなに母を恨んだこともなかった。

「平気だよ。だから謝ることもないよ」

「ごめんね…」

「でもね、お父さんはなんで何も言ってくれないの?」

「あのね。お父さん、何も言ってないと思うけどね。お父さんね、あなたのことが、見えないのよ」

「えっ?」

「お父さんは、それでとても苦しんでいるのよ」

私は自分のことがとても恐ろしくなった。

「お母さんには見えてるよね?」

「見えるよ。ちゃんと」

「どういうこと?お父さんにはずっと今まで見えてなかったの?」


目に見えるというのはどういうことなんだろう。存在の意味というのは見えるということだけではない。見えないものも確かに存在しているはずだ。全ての光を消してしまえばいい。全ての光を失ってしまったとき、目は意味を持たなくなる。見るという概念そのものが無くなる。光の全く届かない深海にも命はたくさん存在している。



これからは父と母と私の三人で暮らすこともできるんじゃないかと考えたが、




(…書きかけの小説はここで止まっている)

『私の旅』 【前編】(書きかけの小説)

私が最初に旅と呼べるほどの旅をしたのは13歳の夏だった。当時、私の両親は別居しており、私は父親と一緒に暮らしていた。母は北九州の実家で暮らしていた。その頃 私は、両親が別居している理由は仕事のせいだと思っていたのだが、実はそうではなかった。

朝からぐったりする程の暑さの8月のある日、右斜め上からストレートに突き刺す陽の光で玄関の郵便受けが白く飛んでいた。郵便受けには母からの手紙がぐったりした様子で挟まっていた。
それまでの私にとっては母の名前はあまり馴染みがなかったのだが、それが母からの手紙だということに気づくにはそれほど時間は要らなかった。父は既に会社に出かけていた。夏休みのある私だけが家にいたのだった。

私はすぐにその手紙の入った白い封筒を父の机の上に置いた。当時私と父が住んでいたのは木造の平屋建てのボロい家で、その当時にしてみても、こんな貧相な家は他になかったように思う。
父は毎朝電車に乗って東京は新宿にある印刷会社の営業をやっていた。それがどんな仕事なのか私は理解していなかったが、毎晩遅くに帰ってくるので大変苦労しているんだろうというぐらいの理解はあった。

父は怖かった。私にとって父は畏怖する存在であり、身近にいて遠い存在だった。父は家にいてもほとんど喋らず、毎晩テレビのニュースで野球の試合結果を見てはつまらなそうな顔をしていた。
私だって13歳にもなると父に対して畏怖の念より嫌悪の気持ちが強くなっていた。
私は多くのことを知らなかった。学校のみんなと比べて色んなことを知らなすぎた。私は勉強は割とできるほうであったが、私には家庭がなかった。私は父を憎んでいた。父は毎日台所のテーブルの上に千円札を置いて会社に出かけた。私の晩ごはんのお金だ。これが私と父との唯一のコミュニケーションだった。もちろんたまに会話もする。会話とも言えないようなごく短い会話。そんな父だが、台所のテーブルに千円札を置かなかった日はなかった。毎日、毎日、千円札が私と父を繋いでいてくれた。

私が目を覚ますと、父は既に会社に出かけている。土日はだいたい家にいるのだが、いつも部屋でレコードを聴いていた。父はジャズの愛好家で、父の部屋には大量のレコードがあった。当時の私にはジャズというものがほとんど理解できないものだった。時折父はノイズとしか言いようのない雑音だけが終始鳴り続けるレコードを聴くことがあった。それが私には苦痛で仕方なかった。
けれど父のレコードの中にも私が好きな歌があった。いや、その曲には歌はないのだが、悲しく優しいトランペットのメロディは私がこれまで聴いてきたどんな曲よりも歌だった。父は月に一度はそのレコードを聴いていたように思う。その歌の名前をいまだに私は知らない。せめて父が死ぬ前にタイトルだけでも聞いておくべきだった。

父が死んだとき、大量のレコードは父の数少ない友人のひとりが引き取った。父は自分の死を覚悟していたのか、その友人にレコードを引き取るように言っていたらしい。大量のレコードも売ればある程度のお金になる。けれど私はそのレコードを売る気にはならなかった。かといって私が持っていても仕方ないと思い、大切に保管してくれるなら、という条件でその父の友人にレコードを譲ったのだった。
あなたが死んだら、このレコードは全部私がまた引き取りますので、と言おうと思っていたのだが、言えなかった。自分が死んだ場合の話をされるのはあまり良い思いはしないだろう。けれど、いつかこのことはちゃんと父の友人に伝えようと思っている。

「お父さん!」
「お父さん!」
「お父さんはどうして何も言わないの?」
「お父さん、お父さんは何を考えているの?」

父のことが嫌いだった私は意図的に父のことを「お父さん」と呼ぶのをやめた。

「あのさ、」
「ん?」
「あのさ…」
「なんだ?」
「家の鍵、なくしちゃったんだけど…」
「それだったらまた作ればいい。鍵は新しく作り直す。だけどそれだとすぐにはできないから、とりあえずは俺がもってる鍵を使いなさい」
「わかった」
「けど鍵ないのにどうやって家の中に入った?」
「そのときは鍵あったよ。そのあとなくしたんだもん」
「そのあとどこ行った?」
「どこもいってないよ」
「じゃあ家でなくしたのか?」
「たぶんね」
「じゃあ家にあるだろ。探せよ」
「だってないんだもん」
「ちゃんと探してないだけだろ。こんな狭い家でなくなる訳ねえだろ!」
「ずっと探してたんだよ。でも、見つかんないんだもん。全然」
「どっかあるよ」

鍵はとうとう見つからなかった。どこを探しても見つからなかった。こんな狭い家でも、色んなものがどこかへ消えていった。何をなくしたのかさえ忘れてしまったものがほとんどだけど、鍵をなくしたのは覚えている。父と会話をしたからだろう。今でもそのときの父の声をはっきりと思い出せる。だからきっとその鍵は、まだどこかにあるはずだ。だけど、何をなくしたのかすら忘れてしまったものは、本当に消えてしまったということだろう。どこにも存在ができないのだから。

「これはなくすなよ」

そう言って父は鍵をくれた。

「わかった」

私はそう言って鍵を受け取った。

毎日父がテーブルに置く千円札を財布に入れて、夜は近所の中華屋かうどん屋に行く。中華屋ならラーメン450円。たまに旨煮定食700円。あんかけ焼きそば600円。うどん屋ならかけうどん280円。たまにエビ天うどん480円。これが私の晩ご飯の定番だった。
同じクラスの友達に羨ましいと言われたことがあったので、麺類ばかりじゃあきるよ、と答えたのだが、なんとなく定食を食べる気にはあまりならなかった。

私は白いご飯とおかずのある定食が羨ましかった。お母さんがつくってくれるような晩ご飯、それが定食だった。私が晩ご飯に定食をあまり食べなかったのは、そんなものは私には似合わない、私が食べちゃいけないものなんだ、と心のどこかで思っていたのかもしれないし、なによりそんな定食にお金を払って食べることが悔しいことに思えたからだろう。

かといってこんな父との二人暮らしの家に、暖かいご飯を求める気は更々なかった。家にある食べ物といえば乾いたポテトチップスに冷たいアイス。それで充分だった。

お父さん!お父さん!
お父さん!お父さん!

私は晩ご飯の代金を千円札で支払い、そのお釣りを貯金箱に貯めていた。毎日だいたい500円は貯金する。その貯まったお金で好きな本を買ったり、欲しかったテレビゲームも買ったりした。

私は貯金箱の中身を全部布の袋に入れた。財布には入りきらない。そのほとんどが小銭だった。バッグに着替えを詰め込んで、父が帰ってくる前に家を出よう。

私が今朝、父の机の上に置いた白い封筒を、母からの手紙の入った白い封筒を、私はバッグに入れた。

父が帰ってくる前に、私は旅に出た。これが私にとって初めての旅であった。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


ガタンガタンゴトン
ガタンガタンゴトン

私は4拍子より3拍子のほうが好きだ。3拍子には軽快さがある。3拍子はわくわくする。3拍子はアイデアが次々と生まれる。3拍子は波を打つ。3拍子はゆっくり揺れる。3拍子は月の光。3拍子は高速の技術。3拍子は風の囁き。3拍子は私の旅。

ガタンガタンゴトン
ガタンガタンゴトン

日が沈んだ後、家に帰ってひとりでじっとしているとね、静かにじっとしているとね、物音たてずにじっとしているとね、それでもなにか音がしてるでしょう。
それはなんの音だろう。冷蔵庫の音だったり、換気扇の音だったり。虫の声だったり。それらは複数の場所から異なる音色で私の耳に入ってくるでしょう。けれどそれはきっとひとつの音として、ひとつのハーモニーとして私は受け入れることでしょう。私の小さな古くてボロい家の中にある、大きくて掴みきれないハーモニーは、常に、常に!私の生活の中に、私の体のそばに、私の皮膚をなぞりながら、常に響いていた。そのハーモニーは常に響いていた。それを私は知っていたつもりでいたが、ほとんどの場面で私はそれについて何も感じずに暮らしていた。
そう、今でも鳴り続けている私の体に入り続けている音、私の皮膚を伝う音、常に音は鳴っている。ということは空気は常に震えている。常に鼓膜は震えている。常に皮膚は震えている。全てのものは常に動き続けている。たとえ私の目には止まっているように見えても。

私は空気の振動の中にいるのだろう。だけど空気が震えているようには見えない。目には見えないからね。だけど音が鳴っている。音は鳴り止まない。だから常に空気は震えている。その振動の中に私はいる。目に見えないものを信じるなんて、ただの言葉を信用してるってことかもね。でもね、目に見えないことは、目に見えることより、たくさんあるんだって。
目に見えない世界は、目に見える世界より、大きいんだって。

言葉で作られた世界は、言葉で壊さなきゃいけない。そうしないといつまでも、壊れないから。
もし、壊したいならね。

お母さん!お母さん!
お母さん!お母さん!

私は白い封筒を右手に持っている。白い封筒の中には母からの手紙が入っている。
ガタンガタンゴトン
電車が揺れる。自然の中には様々な音が常に鳴りつづけている。その様々な音が生み出すビートにアタマを付けるのは人間の行為だ。人間はビートにアタマを付けた。そして拍子が生まれた。3拍子、4拍子、5拍子、何拍子だろうが自由だ。自然の音は何拍子にでも捉えることができる。その人の感覚次第だ。何拍子だっていい。それが私には3拍子に聴こえてきた。

暑い日が続きますが元気にしていますか?

手紙の入った封筒の裏に書かれた北九州の住所にほど近いところまで来たみたいだ。ボールペンで書かれた細く消えそうな母の字は、とても綺麗で美しく、感情が無いほどに冷たい感じのする文字だった。

お母さん!お母さん!
お母さん!お母さん!

私の記憶の中では母に会うのはこれが初めてのことだった。

白い車が停めてある二階建ての家。そんなに大きくはないが綺麗な家だった。私は玄関のベルを鳴らした。少し木の匂いがする。すると男が出てきた。40歳ぐらいだろうか。父より10歳は若く見える。

「あの、すいませんが美樹恵さんはいらっしゃいませんか?」

「美樹恵は今出かけててうちにはいません。えっと、お名前は?」

「あの、母に会いに来たんです。美樹恵は私のお母さんなんです」

男はとても驚いた様子だったが、にっこり笑って家の中へ案内してくれた。

男は上品で優しかった。父とは全く違っていた。リンゴジュースを出してくれた。とても冷たくておいしかった。時間は夜の9時を過ぎていた。

「お腹空いてない?ごはん食べたの?」

「いや、食べてません。でも平気です」

男はすぐに私のごはんの準備をしてくれた。

「残り物だからおかわりはないけど。これで勘弁してね」

そういってカレーライスを私に出してくれた。
とても美味しかったので美味しいですと口にしたのだが、笑うことができなかった。

「母は何の仕事をしているんですか?」

母はライブハウスのブッキングマネージャーをやっていて、帰りは毎日終電で夜中1時頃になると言う。

「君は音楽はやらないの?」

「自分は、そういうの得意じゃないんで…」

「好きな音楽とかは?好きなバンドとかいないの?」

「えっと、あまり知らないんです。でも音楽は嫌いじゃないです」

男は笑ってリンゴジュースを注ぎ足してくれた。

夜も蒸し暑い日が連日続いていたが、この家の中はとても冷んやりして涼しかった。




(…つづく)

『太陽の小町』

太陽の小町という米が売ってあって
爆買いした

俺は太陽の小町という米を
爆買いした

太陽の小町を爆買いした俺は
米を滅茶苦茶に炊いた

滅茶苦茶に炊きあがった太陽の小町は
滅茶苦茶な味がした

『食パン』

なんの飯もない
なんの飯もないわ
なんかくれよ
なんの飯もないんだよ

いややっぱうそ
ちょっとはある
食パンが少しある
食パンが少しあるぐらいだから
俺はそんなに食べ物に困っているわけでもないみたいだ

でも例えばこの食パンを焼いて食べたら
食パンがなくなる
それはつまり
なんの飯もない

焼かないで食べても同じことだ
だから俺は食パンを焼かず
さらに食べもしない

すると俺は
ずっと生きてられる気がするんだ

本当に食べ物に困るまでは

『歩く』

孔雀の羽を1本食べて
線路の上をひとりで歩く
歩けど歩けど光は見えず
乾いた木の感触を足の裏に

ただひたすら梯子を登るように
真っ暗な線路をひとりで歩く
孔雀の羽は喉につっかえたまま
乾いた木の感触を足の裏に

遠くでぼんやりと光が見えたとき
白米の炊ける匂いとぬくもりが
線路の上を伝ってやってきて
乾いた木の感触を足の裏に

朝焼けを見た記憶を頼りに
何もない世界をひとりで歩く
何もかもあった世界の記憶と
乾いた木の感触を足の裏に

炊き上がったごはんは川に流され
焼き払われた畑と足跡
みんなは笑っていいよと言った
乾いた木の感触を足の裏に

暖かい風が背中に張り付いて
小さな縫い針が二の腕を刺す
優しい気持ちを思い出して
乾いた木の感触を足の裏に

音を立てて世界が動いて
音を立てて世界が止まった
なかなか良い音だと記憶に留めて
乾いた木の感触を足の裏に

体に巻き付いたタコ糸が舞い上がり
首の後ろから引っ張られる
空気の生ぬるさを肺に感じて
乾いた木の感触を足の裏に

なにげない瞬間が記憶の中に
忘れたくないものはちょっと忘れた
すぐそこにあるものを取るように生きる
乾いた木の感触を足の裏に

子どもたちが手を繋いで円をつくり
鏡の中にだけ嘘をついた
少しだけ世界にひびが入った
乾いた木の感触を足の裏に

どうってことなかった頃のように
ただ見える世界の中に生きて
信じているものは少しだけある
乾いた木の感触を足の裏に

抱きしめられたときに思い出した
抱きしめたときのことを少し
このままでいいから続けて
乾いた木の感触を足の裏に

あとはもうわかっているから
ゆっくり深く息を吐いて
吸い込んだまま眠ろうと思う
乾いた木の感触を足の裏に

『桃太郎』

昔々あるところに

おじいさんとおばあさんが

住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに

おばあさんは川へ芝刈りに行きました。

芝刈りばかり

しばかりばかりぃぃ
しばかりばかりぃぃ

その次の日

おじいさんは山へ芝刈りに

おばあさんは川へフィールドレコーディングに行きました。


おばあさんが川でフィールドレコーディングをしていると

どんぶらこ どんぶらこ

どんぶらこ どんぶらこ

どんぶらこ どんぶらこ

どんぶらこ どんぶらこ

と、それはそれは大きな桃が流れてきました。

おばあさんは

どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ

アワナダンス!アワナダンス!
アワナダンス!アワナダンス!

おばあさんは踊りくるっていました。


が、しっかりと録音もしていました。


その日の夜、

おばあさんは川で起こった出来事をおじいさんに嬉しそうに話しました。

じいさんや、聴いてちょうだい
とっても良いフィールドレコーディングができたのよ

どれどれ

どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ

アワナダンス!アワナダンス!
アワナダンス!アワナダンス!

おじいさんとおばあさんが踊り狂っていると、どんぶらこビートがダブルで重なって聴こえてくるではありませんか

どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ

あれれ、ばあさんや、このビートなんか狂ってない?

じいさん、自分が狂っているのか、この世界が狂っているのか、それは誰にもわからないのだよ

ばあさん、ほら、ちがうよ、外からビートが聴こえてくるよ!ほら!

おじいさんが扉を開けると、外からあのビートが聴こえてくるではありませんか

どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ

おじいさんとおばあさんは、そのビートの鳴るほうへ向かいました。


じいさん、やっぱりあの川からだよ

ばあさん、音が近づいてきたぞ
あっ、なんか来るぞ!

桃だ!大きな桃だ!でけえ!
まじででけえ!

どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ
どんぶらこ どんぶらこ

アワナダンス!アワナダンス!
アワナダンス!アワナダンス!


おい、ばあさん、おい!ばあさんっ!

おばあさんは踊り狂っていました。


ばあさん、しっかりしろっ!ばあさん!

はっ、じいさん、ここはどこ?私はダレンエマーソン?

ばあさん、早く家からナタ持ってこいナタ!

おばあさんは走り出しました。

じいさん、ほら、ナタだよ!

ようし、この化け物め

おじいさんが大きな桃めがけてナタを振り下ろそうとしたその時、

おばあさんが

STOP!!!!

ウェイタモメン!

ホワァーイ?アーユーキディン?

ワチャウ!ビーケアホ

リーブイットゥーミィ イツァピースォブケイク

ウェイ ウェイ ウェイ

ホワァーイ?ウマンイザニガオボザワァーゥド?

ノンノンノン タイトゥンナッ タイトゥンナッ ベイベ

イツァ テーレボゥ

アイバンミーツGIジョー?
アンダ ヘジテイティン


するとどこからか おぎゃあ おぎゃあ
と 赤ん坊の鳴き声が聞こえてきました。


おばあさんはこどもを産んでいました。


おじいさんは言いました



でかしたぞ!



(完)

『世界』

階段を降りていくと
下の方に広い空が見えた
青い空と白い雲の間に
たくさんの星が光っている

階段を降りていくと
下の方に広い空が見えた
青い空と白い雲の間に
たくさんの星が光っていた

そのとき自分がなくなった

自分がなくなった男は
空の中に降りていった

自分がなくなった女は
雲の中に降りていった

たくさんの星が光っていた


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