ちょうど2017年の夏に子どもが増えるにあたって忙しくなり、なかなか水族館にも行けない日々を過ごしておりました。
ちなみに産まれたこどもの写真はこちら

※はじめて産婦人科医らしい画像を提供(笑)。
あまり水族館の最新の情報を提供しづらい状況なので、今回はあえて古い情報を・・・。
これまで改装のために閉館していた気仙沼市立図書館が昨年2018年に復活しました。そして仕事で(あくまで仕事で)、気仙沼に行く機会がありまして・・・。
昔気仙沼にあった水族館の情報を仕入れてきました。
仙台市の図書館(メディアテーク)では、河北新報や朝日新聞の宮城県版は扱っているものの、三陸新報のバックナンバーが手に入らず、長いこと気仙沼市立図書館の復活を待っておりました。
・・・で、今回新しくなった気仙沼市立図書館で仕入れてきたのは、いずれも三陸新報で
昭和28年8月15日(土) 16日(日)
昭和35年5月21日(土)
昭和36年3月24日(金) 25日(土)
昭和43年10月20日(日) 23日(水)
の記事たち。
では、その記載と実際の出来事を交えてご紹介。長くなりますので、まずは昭和28年8月の水族館開館あたりのお話です。
昭和28年8月15日朝刊
二面:夏なお涼しい別天地 タイやヒラメ舞う“竜宮城” 循環式水族館お目見得

【おおまかな内容】
・15日からはじまる三陸観光物産展の目玉として期待される気仙沼水産高校内の水族館の工事の全工程が14日までに終了した。
・展示生物は ギンポ、ブリ、マサバ、ウミタナゴ、カワハギ、ウナギ、コチ、ハゼ、ボラ、メバル、ニダイ、イシダイ、スズキ、マアジ(記載はマアヂ)、ソイ、フグ、ヒラメ、カレイ、アナゴ、アイナメ、イソギンチャク、ヒトデ、タコ、イカ、アワビ、ウニ、カキなど
・水槽はグレーで、海底生物の展示に用いる電灯の光線に映える色合い
・工事のために1週間徹夜した中村校長、小幡先生は水族館の仕組みを以下のように説明している。
・水槽は10機あり、水量は10トン
・沖合いの水を汲んできて、循環・ろ過している
・水槽に送る前に冷却パイプ(1/4インチ管60メートルをコイル状にしたもの)を通して一定の温度を保っている
・水族館の工事は開始から完成まで20日余りという記録的な速成水族館
・日本で初めて水槽アク止め塗料に塩化ビニールを使用
・すべてが自動装置で管理に手を要しないなどの新しい工夫がなされている。
・普通なら半年はかかる工事が20日間で終えた技術陣の功労は賞賛に値する
論説:「祭り」と「水族館」

【おおまかな内容】
・いよいよ今日からみなと祭りと、三陸観光物産大展示会が11日間の日程が行われる(※実際にはみなと祭りは5日間 物産展が11日間)
・みなと祭りは例年の行事であるが、市制施行を記念したものである上に数十年ぶりに観光物産展も催されるため、その絢爛さは気仙沼地方に於ける空前のものとなる
・施設の圧巻は水高校内に作られた水族館である
・水族館は小額予算であること、短期間(約1ヶ月)で竣工したこと、水槽に塩化ビニール塗料を塗って鮮魚の試験飼育を行わないことなどがいずれも全国水族館のモデルケースであると東北大学の今井教授が折り紙をつけたほど
・建設に当たった中村水試場長以下職員の献身的努力は高く評価される
・気仙沼漁港は全国2位の鮮魚水揚げ港であり、種類は全国1位であるにも関わらず35000人の市民の7,8割が魚類の生態を知らない。
・水族館は今回の催しに箔をつけるだけでなく、市民の魚類に対する理解を豊にする
・宮城県には松島に水族館、女川に東北大の臨海試験所がある
・気仙沼は各種魚類を集める好立地であり、今回の水族館の拡大を図るだけでなく、「国立水族館」の誘致運動を展開すべき
・気仙沼湾は国立公園の候補地であり、この全国的景観に国立水族館を設けるのは極めて自然
など
一面広告:氣仙沼みなと祭り


【おおまかな内容】
・みなと祭りの日程
・市制記念三陸物産展の内容 案内図
・気仙沼小学校の野球グラウンドを取り囲むように物産館、工業館、観光館、農林館、文化館などの展示および、それを補助する施設が配置
・気仙沼水産高校内に水産館、水族館が配置
昭和28年8月16日(日)朝刊
二面小記事:水族館の公開 八時から九時

【おおまかな内容】
・水族館が15日に開館し、一日中観客をひきつけている
・まつりの期間中は観覧時間を毎日午前8時から午後9時に決定した。
まとめ
以上の記事と歴史的背景を重ね合わせて、一部注釈と私なりの解釈を入れて水族館の開館についての情報をまとめると以下の通り
正式名称
宮城県北産業科学館併設気仙沼市立水族館(ただし新聞では正式名称の記載はなく「水族館」と表現)
背景
・昭和2年に松島水族館が開館
・昭和24年? 女川の臨海試験所(農林省水産試験場の女川試験地と東北大学の水産実験所を合わせた呼称と思われる)開所
・気仙沼湾を国立公園に推薦しており、景観に合わせた国立水族館の誘致を目指していた
・昭和28年5月に本吉郡気仙沼町、鹿折町、松岩村の3町村が合併して気仙沼市が誕生
・8月の恒例行事「みなと祭り」に合わせ、市制施行を記念して、数十年ぶりに気仙沼に「三陸観光物産展」を誘致するとともに、水族館の建設を決定
概要
・昭和28年(1953年)8月15日 みなと祭り初日に合わせて開館
・館長(おそらく水試場長と同義):中村氏
※当時の水産高校校長も中村校長であることや記事の書き方からは水産高校の中村校長が館長と同義の水試場長を兼任したと思われる。
・気仙沼水産高校内に設置
・水槽は10基 総水量は10トン
・展示した水族はギンポ、ブリ、マサバ、ウミタナゴ、カワハギ、ウナギ、コチ、ハゼ、ボラ、メバル、ニダイ、イシダイ、スズキ、マアジ(記載はマアヂ)、ソイ、フグ、ヒラメ、カレイ、アナゴ、アイナメ、イソギンチャク、ヒトデ、タコ、イカ、アワビ、ウニ、カキなど
・当時の最新設備として、
・沖合いの水を汲んできて、循環・ろ過する循環式水槽であった
・水槽に送る前に冷却パイプ(1/4インチ管60メートルをコイル状にしたもの)を通して一定の温度を保った
・日本で初めて水槽アク止め塗料に塩化ビニールを使用
・すべてが自動装置で管理に手を要しない
その他の情報
・工期はわずか20日程度(一部記事には1ヶ月程度と記載)
・記事の中で、「東北大の今井教授が折り紙をつけた」という表現あり。
※おそらく今井教授=今井丈夫(いまいたけお)東北大学名誉教授(1903-1971年) 水産学者 カキの人工養殖法や品種改良の大家。上記の女川臨海試験所の東北大学側の責任者(肩書きの正式名称は不明)。
・開館初日の開館時間は不明だが、翌日以降は祭り期間中(~8月19日)は午前8時~午後9時。
・入館料などは記載なし
開館の時期の話題についてはこんな感じでしょうか。総水量は近代水族館の大水槽の1/100以下のスケールですが、当時としては最新鋭の水族館だったことがわかります。
かなりマニアックな内容になっていますので、楽しんで読む人なんてきっと存在しないかもしれませんが、気仙沼の水族館の歴史が埋もれてしまう前に記録として書き記す意味でも公開してみました。
ここで浮き彫りになった課題は、
・水産高校内の水族館の写真がほとんどないこと
・女川の臨海試験所についての情報が気になって仕方がない。ちなみに施設自体は廃止されているものの、管轄していた団体は農林水産省東北区水産研究所という機構に引き継がれているよう
・この当時の記録を探るためには水産高校にアポをとって訪問するしかないのかもしれない・・・
次回は気仙沼水産高校敷地内から魚市場前への移転のあたりのエピソードです。誰も見てくれなくてもマニアックな更新をしようと思います。
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