純愛とNTRのblog

NTR(寝取られ)、たまに純愛の小説を書いていくブログです。18歳未満の方は閲覧禁止ですよ!

トライアングル・トラップ    最終話     ~the last christmas~

紺碧の空が青をより一層色濃くし始める午後三時過ぎの東京の街。

ツリーを形取るLEDの煌きは、若者達にとって一年で一番楽しくてわくわくするような夜の到来を演出する定番の光景。まだ明るいにも関わらず、光度を全開にしたイルミネーションを眺めていると、誰もが満ち足りた幸せを感じずにはいられない、そんなイブの日に彼は故郷の国に降り立った。

スーツケースを転がしながら、その街並みを瞼に焼き付けるように歩く有二。予定よりも相当早く到着してしまったが、渋谷の煌びやかな世界はそれもあながち無駄ではなかったと思わせるには十分な威光を放っていた。

NYのクリスマスは、宗教国としては当たり前なのだが、歴史と規律をベースとした厳かな雰囲気がそこかしこに感じられるが、日本のそれは難しいことは抜きにして兎に角楽しむ為のイベントとして成立しており、完全に種を異にしている。以前の有二なら、本来の意味を重視するが故に、軽薄と言えなくもない日本のクリスマスの風習をどこか斜に構えて見ていたかもしれない。

しかし、今ではこの軽いだけのクリスマスについて、それはそれで良いと思えるようになったのは、背景に企業人としての合理性を思考と行動で体現する術に慣れてしまった自分がいるからなのだろう。或いは「大人の余裕」と言い換える事も出来るかもしれない。

目の前の学生カップルが子供っぽく見える。

後ろを歩く有二は、慈愛という言葉がぴったりな眼差しで他人である二人を温かく見つめていた。

心身が充実期を迎えていた成年男子として、触れるもの、目に入るもの全てを優しく受け入れる度量を持った有二にも、しかしただ一つだけ我を失う程に夢中になれる存在がある。

言わずもがな、紗綺という存在。

この人には合理的なアプローチは無理。

今も昔も泥臭く、何度も同じ失敗を繰り返しながら、手探りで、愚直にならざるを得ない存在。口下手で無口だった少年時代に想いの欠片すら表現する事が出来なかった有二は、重役やクライアントが唸るプレゼン資料を難なく拵える優秀な人材として重宝される今でさえ、彼女のことを思うと一歩先んじた行動を取る事に躊躇する瞬間がある。

それ程までに大切な存在。

触れると壊れてしまう、とまでは思わないまでも、紗綺の隣にいる時ですら、どこかに彼女が飛んで行ってしまいそうな錯覚に呆然とする事もしばしば。僅か数ヶ月会わなかっただけで、彼女の美し過ぎる瞳を直視する事が出来なかったのが、未だその部分だけ男として成長出来ていない証だろう。

 

一週間前、紗綺にさりげなくイブの予定を聞いた時、日中は友人と買い物に出掛けていると言っていた。だから僕のサプライズは、彼女が部屋に戻る夜から始まる。

コートのポッケに入った小さなケースを握る。

彼女の為に考えていたプレゼント、紗綺は喜んでくれるだろうか?一般的な若い女性が夢中になる貴金属にあまり興味を示さない紗綺だけれど、ネックレスはどんなシチュエーションでも合わせやすいと、お店の人も言っていた。持っていて損はないはず。

 

早く夜にならないかな・・・・・

 

そう思ってまだ明るい空を恨めしく見上げた時、もう一人の幼馴染の事を思い出した。

 

武瑠・・・もう何ヶ月も会ってないな・・・元気にしているだろうか?

 

20年近く一緒に過ごした友人の事を、僕がいない間に大切なフィアンセの事をお願いした彼の事を、今の今まで思い出せなかった自分の頭を軽く殴ると、僕は彼が住む町へと足を向けた。

駅を出て武瑠の部屋へ向かう道程は、どこか心が弾む。男同士、友情というものは良いものだ。早く日本に着いてしまったのは、フィアンセの事で頭が一杯で何も気付かない僕の為に、神様が武瑠と会う時間を作ってくれたという事なのかもしれない。

武瑠の部屋が見えてきた。

以前はいつも傍らに停まっていたスクーターが見当たらない。出かけているのだろうか?

いや、あれから半年以上も経っているのだから、色々と生活スタイルも変わっている事だろう。売ってしまったのかも。

呼び鈴を押す。

懐かしい音が中から聞こえた。

けど、それだけ。

・・・・・もう一度押す。

相変わらず聞こえるのは呼び鈴の音だけで、誰かがいる気配は全く感じられない。

よく考えれば今日はイブだ。あの武瑠の事だから、女の子と出かけているのかもしれない。寧ろそう考える方が自然だろう・・・

諦めた僕は、帰りしなに自然とドアノブを回していた。

ガチャリと開くドア・・・

僕は恐る恐る中に向けて声を掛けてみた。

でもやっぱり返答は無し。

思えば武瑠の場合、こういう事はしばしばあった。鍵をかけ忘れる事はしょっちゅうで、僕は中に勝手に入ってよく一人で彼の帰りを待っていたもんだ。

変わらぬ親友の事を思い、思わず苦笑いしてしまった。こういうの、本当に気が安らぐ。おっちょこちょいで、大らかで、イケメンなのにそれを鼻にかけず、僕に持っていないものを沢山持っている、そんな愛すべき親友。僕と紗綺が卒業し、一人で大学院に通っているけれど、うまくやっているのだろうか?まさか僕達の秘伝の試験対策ノートがないと言って、留年の危機に瀕しているとか?

数か月の歳月が僕を躊躇させたけれど、結局はかつてのように部屋の中に入っていって、帰ってくるかどうかも分からない親友を待つことにした。

一応、LINEに連絡を入れてみたけれど、ベッドサイドに置かれた武瑠のスマホが鳴るのを聞いて思わず漏れる溜息、そして僕は彼と連絡を取ることを諦めた。

若干レイアウトは変わっていたものの、基本的には以前と変わらぬ武瑠の部屋。悪いと思いつつ、やはり30分も人の部屋に居れば自然と視線はあちこちと物色するように彷徨ってしまう。

講義で使うのであろうか、以前は見かけなかった難しい本の山。無造作に床に置かれたJポップのCDが数枚。可愛らしいクッションまであった。

無機質で無頓着、事務的とも言える学部時代の武瑠の部屋と比較すると、やはり大分趣味が変わっていたような気がした。

 

あ、そういうことか・・・・

 

トイレを借りた後に、洗面所でふと目に留まった二本の歯ブラシ。

一本は明らかに女もの。

沢山の女性にチヤホヤされていた武瑠は、ある意味一人の女性に染まる事はなく、ずっと「彼らしさ」を失う事は無かったのに、今のこの部屋の現状はいよいよ彼も本気になった女性がいるという事なのだろう。

そんな目で改めて部屋を見回してみると、確かにそこかしこに微かに感じるその女性の存在。

ソファーの手すりに掛かっていた淡い色のカーディガンは女性もの。テーブルの上には髪を結わえる為の大きなヘアピンが二つ。そういえば、トイレの便座カバーとタオルもピンクのお揃いになっていた。

 

ついに武瑠も身の回りの世話を任せられる女の子ができたんだろうな・・・

こんな部屋には彼女以外、上げられないもんね

 

整理された机の前の椅子に座った。ふと目に入った正面のPCの電源は入ったまま。

 

このPCって・・・・・

 

右手がマウスに触れた時、静かなモーター音と共に起動するPC。

僕の心臓は高鳴った。

数年前のあの日の事を思い出す。この部屋で、二人で試験勉強をしていたあの日の事を。

額から滲み出る汗を拭いながら僕は席を立った。

 

ダメだよ・・・人の部屋に勝手に入って、しかもPCを覗くなんて・・・・

ただの犯罪者じゃないか・・・・

 

部屋を出ようとしたけれど、まだまだ時間は有り余るほどある。もう、諦めるしかなかった。そう、僕は自分の欲望に素直に従うことにしたんだ。

 

ごめん、武瑠・・・

ちょっとだけ、いいよな・・・

本当にごめん

 

僕は紗綺にあげる筈だった手土産の一つをテーブルに置くと、震える指先でフォルダをクリックした。

 

あった・・・・

 

Dドライブにある「SECRET」と書かれたフォルダはあの日のまま。

それを更にクリックすると、ずらりと画面を埋め尽くす動画ファイルの数々。一見でかつて見たそれよりも多くなっていた事が分かった。その数恐らく100以上。

 

いつのまにこんなに・・・・

 

妙な期待感で既に下半身が熱くなっていたのを恥じながら、でも湧き上がる黒い感情のまま、僕は知らない名前が書かれたその一つをクリックした。

やはり思っていた通りの動画。巧みに隠されたカメラが捉えた、武瑠と女性の逢瀬の場面。

小柄な相手の女性は、僕も大学で見かけた事のあった人。確か一年後輩だった思う。

印象としては大人し目だったその女の子が、武瑠の猛烈なピストン運動の下で身体が壊れてしまいそうな程揺り動かされていた。あんなに激しく、辛い体勢にも関わらず、その子は、「気持ちいいっ!」「もっとしてっ!」とこちらの心配をよそに悩ましい嬌声を何度も何度も上げていた。

以前と同じような親友の激しいセックスを見て、パンツの前が濡れてくる不快感で僕はファイルを閉じてしまった。

罪悪感と欲望の狭間で揺れ動いていた僕は、100以上並ぶフォルダに付けられた名前をボーッと見つめていた。

 

男を加えても、僕は大学に100人もの友人がいただろうか・・・・

武瑠は、やっぱり凄いな・・・・いつの間にこんなに沢山の人と知り合いになっていたんだろう・・・・

 

人を惹きつける魅力に溢れた親友の事を羨ましく思いつつ、そんな武瑠と幼馴染である事に何故か優越感に似た感情を抱いていた。

武瑠のそういうところをもっと見習わなくては、と思った矢先、「彼女」と書かれたフォルダを見つけた。100以上もの名前付きのフォルダの中でそれを見つけ、僕は単なる好奇心からそれを開かずにはいられなかったんだ。

 

武瑠が彼女とちゃんと呼べる相手・・・これは見てはいけないかもしれない

 

そう思ったのは一瞬で、興味が圧倒的に勝った邪な僕は、躊躇しながらも結局フォルダを開いてしまった。

それは他のどれとも違うアングルから撮られていた動画。

上下左右が狭くてより一層窮屈な構図は、武瑠が人一倍用心して撮った事を連想させるもの。オートフォーカスは、時折対象との距離感に機敏に対応できず、ぼやけてしまう。

そこに現れた一人の女性。

男物?の大きなシャツだけを羽織った長い髪の女性は、ベッドへ向かうとそのまま毛布に包まれるように入ってしまった。一瞬見えたその後ろ姿ですら、十二分に伝わってくるスタイルの良さ。さすが武瑠が彼女と言うだけあって、今まで見てきたどの女性よりも気品に溢れている。

ただ一つだけの違和感は、武瑠に対して満面の笑顔を投げかけてくる他の女性達と違い、彼女は彼がベッドに腰かけようともそちらを見ようともしない事。寧ろ、武瑠が彼女の気を引こうと躍起になっているようにも見えるくらい。彼女の冷たいとも言えるその態度から、本当に「彼女」なのだろうか、と疑ってしまいそうだ。

何やら話しかけながらパンツ一枚の武瑠がゆっくりと毛布を剥いでゆく。そしてシャツを、彼女の機嫌を損なう事を危惧する注意深さで脱がせていった。カメラのセット位置の関係なのか、残念ながら音声は殆ど聞こえない。

惚れ惚れするような背中が見えたが、すぐに添い寝して横になった武瑠の大きな背中の影に隠れてしまった。

彼が彼女の耳元で何かを囁く。

そして彼の左腕が前に回り、もぞもぞと動いている。

気難しい彼女を気遣う繊細な駆け引きが続くように思えたが、武瑠が片手でパンツを器用に脱いだ時、向こう側から彼女の腕が彼の背中に回された。やっと彼女が武瑠を受け入れた、という事なのだろう。

女性に関しては常に堂々として強気で推す武瑠が、こんなにも慎重に事を運ぶ姿は意外だった。今まで彼がこんなに恐々と接する女性がいただろうか?

 

・・・いや、一人いた・・・・・

 

僕達二人にとって、絶対に逆らう事の出来ない幼馴染。そう、武瑠にとってこの世で唯一思うように出来ない母親以外の女性。

しかし、僕が思うその人とは似ても似つかぬ振る舞いを、画面の中の彼女は武瑠に仕掛けていった。

武瑠の背中に回った手は、すぐに彼の頭を抱きかかえるように後頭部を抑え、二人は悩まし気に顔を左右に擦り合わせるようにしていた。そして彼女の脚が武瑠の脚に絡まり、まるで蜘蛛の巣にかかった獲物を逃がさないかのような積極性。それは、武瑠に抱かれた他の女性同様に、彼を貪欲に求める雌の様相を呈していた。

武瑠の髪の毛を掻き毟るようにしてキスに没頭していた彼女は、次第にその手を背中へ滑らせ、腰へ回し、そして前方へ。その刹那、やや腰が引けた武瑠の背中は、彼女の右手が彼の大事な部分へ伸ばされていた事を物語る。そしてそれに呼応するように武瑠も左手を彼女の股間へ伸ばす。

キスの水音と悩まし気な吐息が断続的に聞こえてきそうな画の中で、武瑠は上半身を起こして彼女の両脚を大きく開き、その中心へ顔を埋める。

僕は無意識に画面に顔を近付かせ、幼馴染が大切に想う相手の顔を見ようとした。

が、武瑠から口での愛撫を受ける彼女は恥ずかしそうに両手で顔を覆っており、加えて頻繁に変わるピントのお陰ではっきりと見ることができない。

悶々としながら見ていると、その女性は大きく一度腰をビクつかせ、そして自ら高く広げていた両脚をばったりと下してしまった。

恐らく彼女を一度目のアクメに導いた武瑠は、口元を拭いながらそのまま立ち膝となる。

自分と比べて極端に大きな武瑠のペニスは、ギラギラと滾る男の象徴として、まさに天を貫かんとする猛々しさを誇っていた。

 

で、でかい・・・武瑠の、やっぱりでか過ぎだよ・・・・

 

同じ男として畏怖の念とも羨慕ともおぼつかぬ複雑な気分で画面を見つめていると、彼女が気怠そうに身体を起こし、四つん這いになってそこに顔を近付けていった。

 

え?・・・・・

 

左手で長い髪の毛を耳にかけた時に見えたその横顔。

潤んだ瞳に、すっと通った美しい鼻筋・・・・・その綺麗な横顔は見覚えのある面影。

 

さ、紗綺?・・・・・・・

 

大きく口を開けて、ゆっくりと武瑠のペニスを頬張ってゆく横顔。背中を折れそうなほどに反らし、その反動で肉付きの良いぷりんとしたお尻を高く掲げながらフェラチオに没頭する姿は、破滅的なエロスと美しさを同居させていた。

激しく顔を前後に揺する度に乱れる髪の毛、そして重たそうに揺れる見事な造形の乳房。100人以上もの女性を抱いてきたであろう武瑠が、余裕なさげに苦しそうな表情で天を仰いでいるのは、この美しい彼女の奉仕に耐えている証拠。

画面の中で弱々しく何か語り掛ける武瑠を一瞬見上げると、ベッドサイドの引き出しを開けてコンドームを取り出した彼女は、一緒に立ち膝になってキスをしながらそこを見る事もなく器用にゴムを装着していった。その手慣れた動き、恐らく何度も何度もこの部屋で抱き合ってきたのだろう。

頻繁に変わるフォーカスが悩ましい。彼女の顔を中々確認することができない。

さっきの横顔や仕草、僕の愛するフィアンセに似ているような気がした。全体的な立ち振る舞いや、完璧な身体のラインも紗綺と一緒。もう少しズームアップで見る事が出来たなら、僕しか知らない彼女の特徴を見分ける事ができるのに・・・・

いや、あり得ない。

そもそも、武瑠と紗綺がこんな関係になっている事を想像している時点で僕はどうかしている。

 

ほら、画面の中の彼女、全然紗綺とは違うじゃないか

紗綺はあんなに激しく腰を振ったりしない

あんなに切なげにキスをねだったりしない

あんなに取り乱したりしない・・・・・

 

遠くに隠されたカメラが、画面の中の彼女の嬌声を微かに拾っていた。

 

「い、イクッ!・・・武瑠っ!もっと!もっと!あっ!あっ!あっ!あっ!イクッ!・・・ああっ!ああああっ!・・・」

 

紗綺は、あんな大きな声をあげたりしないよ・・・・・

 

マシンガンのようなピストン運動の後、武瑠がペニスを抜いてゴムを外していた。そして阿吽の呼吸で彼女は彼の反り返るペニスを激しく扱き、大量に射精された精液が彼女のお腹、胸、顔、そして髪の毛までをも汚してゆく。

僕のフィアンセは、こんなにはしたなく喘ぎながら、一心不乱に男のペニスを扱くような女じゃない。僕と繋がっている時でさえ、恥じらって声を我慢している紗綺は、絶対にこんな事はしない。

 

ごめん、紗綺・・・・武瑠・・・・一瞬でも君らの事を疑ってしまった・・・・・

僕は・・・僕は何をしているんだ・・・・

ごめん・・・・

 

画面を閉じた。

気が付けば、部屋が真っ暗になるほど日は沈んでいた。

武瑠はやっぱり帰ってこない。

台所に行って水道の蛇口から水を飲む。

僕は二人の事を信用しているはずなのに、動画を見終わった後フォルダの日付を確認し、それが僕達が大学2年の時のものだと知り、そして最悪万が一二人がその頃付き合っていたとしても、それはもう過去の事だと自らを言い聞かせようとしている逃げ腰の自分が嫌になる。

いや、だから、そもそも画面の人は別人だ。紗綺ではない。

僕が今感じているやるせなさは、世界一信用している幼馴染を疑った罪悪感に違いないはず。

 

「もう、6時か・・・・紗綺の部屋に、僕達の部屋に行かなきゃ・・・・」

 

不埒な僕は、あの二人が交わる場面を妄想した瞬間、不謹慎にも勃起していた事実にショックを受けていた。僕にとってあの二人の存在は一体何なのか。遠く離れていた数か月の間に、僕は大事な何かを失いかけていたのかもしれない。僕が欲しかったのは、会社人としての名声や成功ではない。紗綺との未来だ。今日帰国したのは、成長した自分が彼女にとって相応しい人間である事を再確認する意味もある。

そう、くだらない事を考えている場合ではない。

僕達の未来のため、今夜は二人で語り明かすんだから。

一週間あれば色んな事が出来るはず。結婚式の事だって具体的に詰めていけるよな。そうそう、指輪の事も聞いとかなきゃ。

 

・・・・うん、楽しい

やっぱり紗綺の事を考えていると、この上ない幸せな気持ちになれる

 

僕は電車を降り、二人の部屋までの道のりを足早に歩いて行った。

早く逢いたい。紗綺の笑顔が見たい。

 

僕が玄関に立っていたら、彼女はどんな顔をするんだろう・・・・

 

はやる気持ちを抑える必要もない。

右手に合鍵を握り締め、マンションのエントランスから中に入っていった。

高揚したこの気持ち、大きなプレゼンの前夜にも似たような心境になるのだが、明らかに種類が違う。仕事で成功を収めたいと思うのは、僕達の将来の為、いや、紗綺の為。そもそも仕事をする理由それ自体が紗綺の為と言っても良いくらいだ。

僕は封を開ける前のクリスマスプレゼントを前にした子供のように、ワクワクした気分で玄関のドアの前でインターホンを鳴らした。

 

・・・・・これは、悪い冗談に違いない・・・・

 

ついさっきの武瑠の部屋の時と同じ状況に、肩から力が抜ける思いでその場でしゃがみこんでしまった。

限界まで高まった期待感が頭のてっぺんから抜けて行くような喪失感は、別に不快なものではない。寧ろ高まり過ぎた気持ちをクールダウンしてくれる、今の僕には丁度良い調整弁的な役割を果たしてくれたようなものだし。

うん、そう思うことにしよう。

僕は自分のカギでドアを開けた。

玄関には紗綺のサンダルが一足だけ。靴を出しっ放しにしておく事を嫌う紗綺らしい、相変わらずの光景がどこか懐かしい。

勿論、僕のサプライズはまだ終わってはいない。

脱いだ靴を下駄箱の奥にしまうと、大きなスーツケースを抱えて部屋の中に入り、周りを見回す。

 

あった

ここしかないよな

 

壁一面のクローゼットを開けて、そこに持っていた全ての荷物入れて、着ていたコートも一緒に押し込んだ。

 

よし、完璧だ

これで僕が部屋に居る痕跡はどこにもないはず

後は彼女が帰ってくるのを待つだけ

 

真っ暗な部屋で待つわけにもいかず、僕は最低限の灯りをつけて紗綺の帰りを待つことにした。

二か月ぶりの自分たちの部屋は、以前のまま。

勝手知ったるこの部屋とはいえ、今はまだ紗綺の部屋。不躾な態度はほんの少しだけ憚れるけど、でも近い将来の新婚生活を妄想しては新たな家具の置き場所をあれこれと考えてみた。

 

すぐにでも子供を作りたいから・・・テーブルはもう少し大きめのを新調して・・・食器棚も今のでは少し小さいかな

 

白の木目調の食器棚を開けた。

綺麗に揃ったお皿は、やはりブランドものではないけれど、紗綺らしいセンスの良いものばかり。

 

ここに子供用のお皿とか・・・・あ・・・・食器、増えてるのかな?お客さん用かな・・・

 

お茶碗やお椀、大きな取り皿とか、丁度一人分の食器類が増えていることに気が付いた。紗綺なりに色々と考えて準備を進めてくれているのかもしれない。

そういえば、さっき洗面所にも新しいタオルが何枚もかけられていたし。

 

やっぱ絶対にいい奥さんになるよ、紗綺は

僕も仕事だけじゃなく、イクメンとしても頑張らなきゃ

 

心が弾む。

今すぐにでも、紗綺をこの腕で抱きしめたい。 

僕は何度も何度も時計を見ながら、フィアンセの帰りを心待ちにした。

そしてテーブルに置かれた二人の写真を手に取り、その中の笑顔の紗綺に語り掛けた。

 

帰国が決まったら、僕たちはすぐに同じ苗字になるんだ

そして僕たちの子供を授かり、育て、二人は一緒に歳を取っていくんだ・・・・

素晴らしい人生の始まりなんだよ

僕は死んでも僕たちの家族を守ってみせる

絶対に、絶対に幸せになろう・・・・

 

深々と降りだした窓の外の雪。

より具体化してきた二人の将来への想いが僕の視界を滲ませた時、玄関のドアが開く音が聞こえた。

 

紗綺だ!・・・紗綺が帰ってきた!・・・

 

思わず声を上げそうになるのをすんでのところで堪えると、ソファーから勢いよく立ち上がり、でも用心深く息を殺して玄関へと続くドアの方へそろりと歩み寄っていった。どんなに我慢しようとも滲み出る笑顔。おかしな話だけれど、今のこの状態でさえ、いや、こんな状況だからこそ、自分は本当に紗綺の事を好きなんだという事を強く意識した。

どうにも止める事の出来ない笑顔のまま、第一声を同時に放とうとそこのドアノブに手をかけた、まさにその時だった。

 

「あれ~?電気つけたままだったかな?」

「おっちょこちょいだな、紗綺は」

 

身体が完全に固まった。

愛するフィアンセの声と、それに重なる男の声。

ドアノブにかけた左手は震え、ドアの曇り硝子から隠れるように反射的に身を翻してしまった。

 

と、友達って、男?・・・・い、いや、お義父さんが一緒?・・・・え?・・・え?・・・

 

青天の霹靂。

虚を衝かれる、とはまさにこの事。

全身の毛穴が開き、同時に鳥肌も立っていた事だろう。

近付いてくる足音に、何故僕は怯えているのか?

 

「おかしいなー」

 

楽し気な紗綺の声がそこまで近づいた時、頭が混濁した状態の僕の身体は、完全に意志とは無関係に、自身の存在を消すことを最良の選択と判断した。

 

「意外と暖かい・・・」

「お、本当だ」

 

僕はリビングに入ってきた二人の声を、狭いクローゼットの中で聞いていた。

  

武瑠か?

なんだ・・・武瑠が一緒だったのか・・・・・じゃあ・・・・

 

僕はクローゼットから出ようとしたけれど、よく考えれば今のこの状況、逆に二人に不信に思われるかもしれない。良い歳をしてかくれんぼみたいな事をして・・・

恥ずかしさで扉を開けるのを躊躇していた時。

 

・・・・・

う、ん・・・なんだろう・・・二人の雰囲気、なんか以前と違うように感じるのは気のせいか?

・・・そっか・・・さっき武瑠の部屋で変なことを考えたからだ・・・俺ってば・・・

・・・・・

え?・・・・なんで?なんで二人が抱き合ってるの?

 

「俺、もう我慢できない」

 

は?・・・・・何言ってんの?

なんだよ、それ。まるで恋人同士みないな

あ・・・嘘だろ・・・・紗綺、だよな?それにお前は・・・武瑠だろ?

嘘だろ?なんの罰ゲーム?

そ、そうだよ、お前ら、なんかの罰ゲームで無理やりやらされてんだろ?

おかしいよ、こんなの

嘘だって、言えよ・・・言ってくれよ・・・・

頼む、もう、いいから・・・、もうそんなキス、みたいなこと、するなよ・・・

 

「朝からずっと一緒だったから、我慢し過ぎておかしくなりそうだ」

 

朝からって、紗綺、友達と買い物って言ってたじゃないか

今更武瑠の事、友達なんて他人行儀な言い方しないよな?

 

「夕ご飯は?」

「いらない・・・今すぐお前を抱きたい」

 

紗綺もそんな困ったような顔してるくせに・・・どこ行くんだ・・・武瑠の手を引っ張って、お前らどこ・・・行くんだよ・・・

 

僕は寝室へ向かう二人の後ろ姿を扉に刻まれたスリットの隙間から見ていた。

悪夢・・・

夢なら覚めてほしい。

でも、これは紛れもない現実。

この現実離れした光景は、すぐに僕の身体に変調を及ぼし始めた。

視界が狭まり、嫌な汗がとまらないのは涙の代わりなのかもしれない。こみ上げるものを必死に堪え、僕はやっとクローゼットから出ることができた。

それでもなお、音を立てないようにしている自分はいったい何に気を使っているのだろうか?

今すぐ僕達の寝室に怒鳴り込んで、武瑠を・・・・子供のころから一番に信用していた幼馴染を、殴ったっていいはずなのに・・・・

いや・・・・・違う

何かの間違いだ

こんなのあり得ないって

違う・・・・・

絶対に違う・・・・・

武瑠と紗綺が、なんて・・・・・

 

僕の膝はガクガクと震え、天地が逆転したような朦朧とした意識の中、そこから一歩も動く事が出来ないでいた。

 

 

 

 

武瑠に突然手を引かれて入った海外ブランドのお店。会社の先輩と何度か入った事のあるそのお店、武瑠は隣で始終そわそわしていたように見えた。

後で聞いてみると、人生初のTiffanyらしく、どうりで挙動不審だったはずと納得がいった。

勇ましく店内に入ってアレコレ品定めする彼の後ろ姿が頼もしくもあり、でもやっぱりどこか可笑しくて。私はずっと微笑みながら彼の振る舞いをつぶさに見つめていたと思う。

彼が何も言わずに私の胸元にあてがったネックレス。

え?私に?買ってくれるの?

まさか学生の武瑠が、と思ったけれど、こういう時に男の人に恥をかかせてはいけないと思い、咄嗟に「ありがとう」と言ってしまったけれど・・・・・

 

もう・・・・・無理しないで

変な汗かいてるよ?

ごめん、声も上ずっているから、ちょっと笑っちゃった

ねえ、武瑠・・・・

貴方には、もう十分もらっているから

大丈夫だから

 

そう思って結局私はやんわりと彼からの高価なプレゼントを断った。

ちょっと残念そうな表情の彼を見ていると、胸がキュンと切なくなった。

ケーキだけで良いから。

貴方はちょっと納得してないようだったけれど、

「だけど銀座のお店で売っている高級なケーキだけどね。凄く高いよ」

そう言ったらやっと笑ってくれたよね。

 

あのね・・・・

正直、朝からずっとドキドキしていたんだ

貴方とただ一緒に歩いている時でさえドキドキしていた

私、歩いている時、あなたの横顔をずっと見ていたような気がする

もう最後だから?

それとも武瑠と特別な日に会っているから?

今日初めて本当の恋人同士みたいに手を繋いでいたから?

 

あと数時間でこの人との関係はすべて終わる。高校生の頃から続いていたこの関係が。

寂しいと少しでも思ってしまっているのは、きっと最近毎日こうして逢っていたから。

 

この部屋に帰るや否や、武瑠に抱きしめれらた

あまりにも性急なその態度に少し驚いたけれど・・・

正直嬉しかった

凄く嬉しかった

私も早く武瑠と二人きりになりたかったから

それに・・・今日も貴方の彼女になってあげるつもりだったし

クリスマスだもんね

武瑠の好きにしていいから、今日は

今日で・・・最後だから

 

武瑠とこれまで何度も愛し合った寝室に入ると、彼は後ろから私の胸を鷲掴みにしてきた。少し痛いくらいに揉みしだかれて、こんなにも私を求めてくれている事が嬉しくて、そしてその思いに応えたくて、私は振り返って彼の唇を貪った。

柔らかくて熱い彼の唇の感触は、いつでもどこでも私の心を昂らせてくれる。甘い唾液の味、お互いの口中を弄り合う感触は、私の思考を根こそぎ奪い、彼しか見えなくしてしまう。

キスしながら私の服や下着を器用に脱がせてくれたそのお返しに、私も彼の服を脱がせようとしたけれど、シャツの小さなボタンが煩わしくていくつか飛ばしてしまったような気がする。けど、そんなのどうでも良いと思えるほどに無我夢中の私は、気づいたらはだけたシャツの間から覗く彼の逞しい胸元に舌を這わせていた。

武瑠の乳首を口に含んで舌で転がしていると、彼はいつも私の頭を優しく撫でてくれる。それが凄く嬉しくて、私は舌を割れた腹筋の溝をなぞるように蠢かせ、そして同時に彼のズボンとパンツをゆっくりと脱がせて行く。

反り返ったペニスがいつも引っかかるから大変だけれど、武瑠の一番男らしいその部分が目の前に飛び出すと、私はいまだに心が高鳴るのを抑える事ができない。十代の頃から何度も何度も、数えきれない位に見てきている筈なのに。

正直、そこを見ているだけで、その・・・イッてしまいそうになる事がある。絶対に武瑠には言えないけれど・・・・彼に私の気持ちを告白してから、彼とのセックスがどうしようもなく良過ぎて・・・・

彼の亀頭にチュッとキスして、透明な液体を音を立てて吸う。びくっとする武瑠の腰つきが可愛い。右手でペニスの根元を抑え、左手でたっぷりとした睾丸を包み込み、そして私は唾液を乗せた舌をカリ首に巻きつかせた。硬い硬い鋼鉄のようなペニスを愛撫していると、私のあそこから太腿の内側を伝う暖かい感触。その中心に触れられたいと思いつつ、でも彼の指ではなくて、この硬いペニスで貫かれたいと願う私の身体は、彼を高まらせようと激しいフェラチオを無意識の内に仕掛けていた。

 

「ああ、紗綺・・・出ちゃうよ・・・」

 

彼の腰が逃げてゆくと、私は両手で彼のお尻を抱きかかえ、そして唇が捲れるほどに一心不乱にスライドさせる。私の唾液が顎を伝い、下に垂れ落ちようとも構っていられないほど、愛する男の男たる所以のその部分が愛しくて堪らないから。

 

「あっ!・・・うぐっ・・・・」

 

彼は呻きながら一瞬腰を引いた直後、私の喉を突き破らんばかりに腰を押し出す。ガクガクと震える彼の身体、私の十指が彼のお尻に食い込むほど強く抱き締め、断続的に射精される暖かい精液を直接喉にかけられる感触で、私は一度目のアクメに達してしまっていた。

虚ろな思考のまま、一滴たりとも無駄にしまいと武瑠の精液を飲みつくした後、彼は鬼気迫る表情で私を押し倒すと、いきり立ったままのそこにアッという間にスキンを被せて私の中に入ってきた。いつもの流れるような作業は、私に一切のストレスを与えることもなく、実にスムーズに、的確に、私の身体を高みへと押し上げてくれる。

メリメリと膣の中を突き進む彼のペニス、大きな亀頭は柔らかい中の肉を擦りあげ、そしてすぐに子宮口まで届いてしまう。私は彼の身体にしがみつき、恐ろしいまでの快楽地獄に身を落とす覚悟をするだけ。

 

「紗綺っ!・・・・紗綺っ!」

 

言って、欲しいんだよね・・・

うん、言ってあげる・・・・貴方を、喜ばせたいし、私も、すごく、良くなるから・・・

 

「武瑠!ああっ!凄いっ・・・・武瑠の・・・チ〇ポ・・・凄く大きいっ!・・・だから・・・もっと!・・・もっと!してっ!」

「おぉぉぉ・・・紗綺・・・」

 

彼の表情が変わった。

獣のような猛々しさと、それに相反した憂いのある眼差しが、私の中にある雌の滾りに炎を灯す。

 

「あんっ!いやっ・・・あっ、あっ、・・深っ・・・・武瑠のっ・・・ああっ、だめっ、そんなところまで・・・・ああっ!あっ!もうっ・・・ああっ、あっ、あんっ!あぁぁぁっ!」

「凄え・・・お前の身体、やっぱ凄えよ・・・」

 

もはや自分ではコントロール不可能な身体は、彼に100%依存するのみ。激しいピストン運動で身体がおもちゃのように翻弄され、意識せずとも発せられる卑猥な言葉は彼を喜ばせるためなのだろう。まるで自分の声が他人のもののように聞こえる世界で、私は二度目の深いアクメを迎えた。

 

「ああっ、だめっ・・・貴方のチ〇ポっ・・・で、イっちゃうっ・・・また、イっちゃうからっ!・・・」

「あっ、あっ、凄っ、紗綺、ああっ!」

 

彼の動きに合わせる余裕もなく、猛烈に下半身を襲う快感のまま、私は腰を暴れさせ、そして果てた。

意識が飛びそうになったけれど、二人揃ってベッドから落ちてしまいそうな位激しい彼の注挿運動はそれを許さない。子宮の奥を何度も押し上げ続ける圧倒的な長さと太さと質量感に溢れる彼のペニスに貫かれ続け、失神する事も出来ずアクメの絶頂が永遠に続くような錯覚に、いよいよ私の身体は悲鳴を上げ始める。

 

「あっ・・・ぐっ・・・許してっ・・・武瑠っ・・・お願い・・・あああっ!あああっ!あああああっ!死んじゃうっ!死ぬっ!武瑠っ・・・・ああああああっ!」

「出るっ!あああっ、出るっ!おおぅっ!」

 

一気にペニスを引き抜いて素早くゴムを外す彼。私の胸元に裸の亀頭が見えた時、半分意識を失いかけていても自動的に私の両手は彼のペニスを掴み、激しく上下に扱き立てる。

二回目の射精は一回目同様私の頭を軽く超えて壁にかかる程の勢いがあり、その熱い痕跡は私の顔、胸元、お腹を汚してゆく。

彼が苦痛とも快感とも言えぬ表情で射精しているところを見つめながら彼の体液で汚されてゆくこの瞬間は、この上なく幸せな瞬間でもある。

そしてそんな時、私は自分が女である事に心から感謝し、好きな人に抱かれる幸せを噛みしめる。

短距離を全力疾走した後のように汗だくになった武瑠が、乱れた髪をそのままに目を爛々と輝かせて私の胸元を跨いできた。続けて二回射精したペニスは、さすがにお腹に張り付くような猛々しさは失っていたものの、それでも通常の男性器とは比べ物にならない存在感を誇っていた。

 

通常の男性器・・・

 

ふと脳裏を掠めたその人の事を忘れる為に、私はいつものようにそれを喉の奥まで飲み込んだ。

口の中を一杯一杯に埋め尽くす圧倒的な異物感は、例ええづく程に息苦しいとしても、今では私に安心感すら与えてくれる。精液と愛液でぐちゃぐちゃになっている私の両手でペニスの根元と睾丸を優しく摩る。そして中指で武瑠のアナルを撫で回した時、ペニスがビクンと跳ねてドロリとした塊が舌の上に落ちる。アナルを弄っていた中指を、縫い目に沿って押し込みつつペニスの方へスライドさせると、尿道に残っていた精液がドロドロと私の口中に吐き出され、それを夢中になって嚥下してゆく。

何度も何度も同じ作業を繰り返して全てを吸引した後、私が両手の指に絡みついた精液を舐め取っていると、彼は私の指ごと口に含むようなディープキスをしてくれる。そしてお臍に溜まった精液や胸にかけられたそれを指で掬い取っては私の口へ運び、最後は顔にかかったのを口で吸い取って私に口移しで渡してくれる。

 

「紗綺・・・好きだよ・・・」

「私も・・・好き・・・」

 

圧倒的な情熱と快感で火傷しそうな位に熱くなっていた心に、やがて僅かばかりの隙間風が吹き始め、それがすぐに嵐となって体中を駆け巡る事を私は知っている。

そう、フィアンセの存在。

私が生涯を共にすると決めた人。

武瑠に抱かれている最中は彼以外の一切を考える事が出来ないけれど、その逢瀬の合間でふいに湧き上がる堕罪意識。

皮肉にも、有二に抱かれるようになって初めて武瑠の男としての優秀さに気付いてしまった。別に人柄とか、そういった内面的な意味ではない。そんなの、二人とも最高だって知っているし。

武瑠しか男を知らなかった私がショックだったのは、その圧倒的なセックスの差。

抱き締め方、キスの仕方、愛撫、段取り、ペニスの形状、そして何度でもできる体力。あまりにもすべてが違い過ぎたんだ。同じ男の人で、こんなにも差があるものなのかと、正直悩んだと事もあったくらいに。私は、有二とは良いセックスが出来ないのかと悲しくなったりもした。

だけど、それは別に有二が悪いわけではなく、武瑠が人とは違い過ぎるという事を知り、同時に有二とは肌を合わせるだけで安心できる術を身に着けることで、私はひとまずのけじめとする事が出来た。

何故なら、私は有二の事が好きだから。

生涯支えていきたいと思う相手が有二だから。

あの人は、私がいないと駄目な人だから・・・・・

勿論、契りを交わした相手に対する最大級の侮辱を働いている意識はある。そしてそれは武瑠も同じはず。同時に果てた後、そのセックスが良ければ良いほど、彼の表情が呻吟するのを私は知っている。

収まりゆく昂りの中で、私たちは苦しさから逃れるために目の前の幼馴染にその退路を見出そうとしてしまう。

 

これで、最後だから・・・

 

いつしか私は心の中でこの言葉を繰り返すようになっていた。ひどい言い訳だ。不貞を働く女の常套句に違いないと分かっていても、それでもなお私は有二との将来を選びたいという思いに迷いはないはず。

だけど・・・・武瑠に対する積年の想いが何なのかに気付き、そしてそれを打ち明け、こうして毎日抱き合う日々の中で、寧ろ有二に相応しくない最低の私を切り捨ててほしいと思う事が、最近極たまにあるのも事実。こんな自棄になる事なんて今までは無かったのに・・・・

 

「泣いているのか?」

 

それはこっちのセリフだよ・・・

貴方がそんな風にしてくれるから私は・・・・

ごめん、貴方の所為にしている、私

貴方の優しさと、包容力の所為に

だって・・・・・だってどんなに嫌なことがあっても、貴方に包まれるこの場所に戻れば、全てはどうでもよくなってしまうから

 

「ずっと一緒にいよう」

 

武瑠はいつもそうやって思っている事を真っ直ぐに言ってくれるよね・・・

叶えられない望みだけれど、凄く嬉しいよ

 

逞しくて愛しい男の身体が私にのしかかる。

 

「武瑠の、もう勃起してる・・・・・」

 

少年のように恥ずかしそうに笑う武瑠。

絶対的な信頼感に比例する心地よい重さを感じながら、私は彼とこうして溶け合う時間が永遠に続けば良いと思ってしまっている事に落胆する。

私が添い遂げたいのは有二。彼のはず。

私は数ヶ月後には有二の苗字になって二人の家庭を築く。彼が期待するようにすぐに私達の子供を作って。

不貞の真っ只中でオレンジ色の未来を思い浮かべた時、既に硬く大きく勃起したペニスを誇張するように彼が意識的に私の下腹部にそれを押し付けてきた。そして、その行為はいとも容易く私の頭の中から有二の存在を吹き飛ばしてしまった。

 

「もっと・・・もっと一杯武瑠とセックス、したい・・・」

 

その言葉は、紛れも無い私の本心だった・・・・

 

ペニスから呆れるほど沢山の透明な液体を滴らせ、亀頭の先でそれがお臍に擦り付けられて行く感覚に身悶えしながら、私は彼から貫かれる瞬間を待ち焦がれるしか出来ないでいた。

 

 

 

三度目の射精を紗綺の背中にぶちまけた。

緩やかに、艶めかしくしなる彼女の背中、深い陰影でなぞられた背骨のくぼみに大量に溜まった精液の瘢痕は、その瑞々しい肌の上でゼリーのようにプルプルと踊っている。

紗綺はこの間何度イったことだろう。

殆ど毎日抱いているけれど、特に今日はいつもよりも乱れているような気がする。

射精が終わる度に口で丁寧に掃除してくれるのに、それも出来ないほど疲れ切っているのか・・・・・セックスの合間に俺の腕枕で寄り添いながらお互いの事を話す余裕も今日はなさそう。

 

あれから俺たち、毎日会っていたもんな・・・

俺の部屋で同棲の真似事だってやったし

なのに、今日で最後・・・なのか・・・・

 

中途半端に両脚を開いたまま、紗綺はうつ伏せの状態で気を失っていた。

ついさっきまで俺のペニスが収まっていた秘部はぽっかりと口を開けたまま。やがてその穴がゆっくりと閉じていく様は、いまだ俺の興奮を心の底から沸き立たせて止まない。

俺と繋がっている間に彼女が口にする卑猥な言葉の数々。俺が教えた事とは言え、明らかに彼女も一語一句発する度に興奮していたようだ。

特に有二との優劣を決定づける言葉の後には、奈落の底に落ちながら快楽を爆発させるような激しいアクメに塗れ、その表情は今まで見たどの女性よりも官能的で魅力的だ。もう、どうしようもない程に乱れた今日の彼女の姿は、俺は一生忘れることが出来ないし、恐らくこれからの人生でもこれほど美しいものに出会う事はないだろう。

有二の名前が彼女の口から発せられる度に、間もなく二人の新居となるこの部屋は悲痛な叫び声のごとく、大きく軋み音を立てる。それは部屋が俺を受け入れず、排除しようとしているかのようだ。騎乗位で腰をグラインドさせながら俺と有二のペニスを比較しては深いアクメに陥り、バックで犯されている間にはセックスそのものの違いを叫び、狂乱の喘ぎ声の中で世界は二人だけのものになる。激しい部屋の軋みは、廊下での不自然とも言える大きな物音となって何度も俺の耳に届いていたけれど、そんなものを一瞥する余裕もなく、目の前の世界一の肉体を貪るのみ。肉と肉がぶつかり合い、汗を同化させ、一番敏感な器官を溶け合わせる至上の快感の波に身を置きながら、外野の事など一切関知することもなく、俺と紗綺は一体となる。

 

こんな最高のセックス、あいつに出来るわけがない・・・・

 

失神したままの紗綺の両脚をそっと閉じ、俺はリビングへ向かった。

彼女が買い置いてくれている俺が好きなスポーツドリンクを飲んで喉を潤している時、テーブルに置かれた紙袋に目が行った。

Tiffanyのロゴが打たれた小さな紙袋の隣には、見覚えのある鍵。

 

なんだ、今日が最後とか言っておきながら、俺の為に鍵を用意してくれていたのか・・・

それにこの紙袋って・・・・あ・・・ネックレス?

そうか、頑なに俺からのプレゼントを断ったのって、これが理由かよ・・・

誰からもらったのか知らないけど・・・あの会社に勤める紗綺の事だから、同僚達と買ったのかもしれないな・・・・別に言ってくれても良かったのに

 

俺はドリンクと紙袋を持って寝室へ戻った。

 

「部屋の鍵、ありがとうな。それにこれ・・・・持ってたんだな」

 

俺はそう言って未だ失神したままの彼女の身体の横に紙袋を置いた。そしてティッシュを数枚取って紗綺の背中を汚したままの精液を丁寧に拭いていった。

若くてきめ細かな肌は、纏わりつく精液を馴染ませることも無く、拭き取るそばから艶やかな光沢を放つ。

そして、うつ伏せで寝ているため横に大きくはみ出している乳房に手を伸ばしてみた。

指の圧力を弾き返す弾力に、少しづつ下半身に血流が集中してゆくのを感じた。

たまらず彼女の身体を仰向けにすると、解放された大きな胸がその存在を主張する。

うっすらと光る肌がこの上なく綺麗で、上品で、そして卑猥だった。

女らしい丸みを帯びたお腹が微かに上下し、紗綺はうっすらと目を開けたようだけれど、まだ完全に意識は戻っていない。彼女の腕に触れてベッドの下に落ちたその紙袋の存在すら全く気付いていなかったし。

俺はドリンクを口に含み、そして彼女の乱れた髪の毛を整えながら口づけした。

接合された唇の合間から少しずつドリンクを流し込むと、やっと目を覚ましてくれたようだ。

 

「たけ・・・る・・・・」

 

口端から溢れ出させながら、舌をねっとりと絡ませてそのままディープキス。ドリンクの代わりに唾液を流し込み、それを喉を鳴らして嚥下する彼女が愛しくて仕方がない。

俺は完全に勃起したペニスを彼女の入り口に当てがった。

コンドームが付いていないそこを、彼女は一瞬見た、ような気がしたけれど・・・いや、見ていないかもしれない・・・・分からない・・・・

けど、どっちにせよ、俺はもう止められなかった。

そのままズブズブと挿入する。

カウパー液と紗綺の愛液が同化し、隔てるもの無く一つになった。

彼女の中は熱く燃え滾り、極限まで硬くなった俺のペニスが肉襞に包まれる極上の快感に、油断すると射精してしまいそうになる。

 

「あんっ、あっ、・・・武瑠のが・・・・もう・・・・」

 

奥まで押し付けた途端、軽いアクメに達した彼女の弛緩した表情は、ゾクゾクする程美しく、俺の加虐思考に火をつけた。

 

「お前・・・・・俺と別れられるの?」

 

紗綺は少しだけ瞳を見開いたけれど、下腹部を襲う性感にもはや太刀打ちできないといった様子で、すぐに目を瞑り、深い深い本格的なアクメに身を委ねていた。

そして両脚を俺の腰に巻きつかせてくると、耳元でこう言った。

 

「わか・・・れる・・・・今日で・・・終わり、だから・・・・・」

 

俺は無我夢中で腰を動かした。

硬い鉄のペニスで、紗綺の身体が壊れてしまえばいいと思った。

子宮を突き破らんばかりに激しくピストン運動を仕掛け、乳房をきつく揉む。

そのセックスが激しければ激しい程、何故か紗綺の甘味な嬌声は一段と高くなり、俺の一方的で乱暴で攻撃的な攻めを全て体内に取り込んでしまうような深さを見せつける。

 

「もっと!もっと、武瑠!・・・凄く、いいから!・・・・貴方とのセックス、一番だからっ!」

「紗綺っ!ああっ!俺も、最高だっ・・・・紗綺っ!」

 

たゆやかな紗綺の身体に包まれながら、ペニスの根元から湧き上がる射精感で、腰が壊れた玩具のように暴れ狂う。

お互いの名前を何度呼び合っただろう。

それは叫び声に近かったかもしれない。

でも、何度その名を呼んでも、もう俺のものにはならない・・・・・

その確信が、歪んだ快感となって爆発した。

激しく痙攣する紗綺の身体に抱きつきながら、同時に俺も彼女の一番深い場所で射精した。ドクドクと永遠に続くような勢いで射精を続け、なお腰の動きを止める事が出来なかった。

ペニスと膣がぴっちりと結合しているにも関わらず、止まらない注挿運動により精液が飛沫となって飛び散っても二人はセックスを止めようとしない。

 

「紗綺・・・・俺、有二の次で・・・・・二番目でも・・・いいから・・・・」

 

ふいに口をついて出た言葉に嘘はない

後悔も、しない

何故なら、紗綺がこうして俺を抱き締めてくれているから・・・・・

 

長い射精を終えたペニスは再び紗綺の中で硬度を取り戻し、それは二人が身体を離す理由を反故にした。

 

「愛してる、紗綺」

「私だって・・・」

 

さっきまでの嵐のようなセックスとは打って変わって、今二人を虜にしているのはまるで無風状態の水面のような穏やかな交わり。二人の愛の共同作業は、この日もいつものように朝まで、飽くことなく、二人を夢中にさせた。

 

有二・・・

俺、もう紗綺の事、諦める・・・・・・

だから・・・・お前の次で、いいから・・・・

もう、そうするしかないって、分かったから・・・・・

 

交尾活動と呼ぶに相応しい、夫婦にしか認められないセックスの揺らぎは、東の空が白み始めるまで続いたのだった・・・・・

 

 

 

 



時計は9時を回ろうとしていた。

外は氷点下まで冷え込み、澄んだ空気が柔らかく降り続く雪の結晶を一面に煌めかせていた。深く積もり始めた雪は都会の喧騒を吸収し、神秘的で静かな夜を演出してくれる。

正に聖夜と呼ぶにふさわしいひと時。

 

 

 

あ・・・母さんかい?俺だよ・・・有二だよ

うん・・・今、日本にいるんだ・・・・そう、今日帰国した

これから帰ろうと思うんだけどさ、大丈夫?

え?・・・ああ、こっちは大丈夫だよ・・・うん・・・・紗綺の所には寄ってきたから

喧嘩?ははは、してないって、そんなこと・・・・

あのさ・・・明日、父さんも休みだろ?・・・

話が・・・あるんだ・・・・うん、大事な話・・・・

 

 

 

携帯を切ると、僕は夜空を見上げた。

漆黒の闇から音もなく舞い降りてくる雪の一粒が僕の頬に優しい。

後悔、妬み、軽蔑、失望・・・・

真っ黒なキャンパスに浮かんでは消える粉雪を見ていると、心を覆いつくす様々な感情が綺麗に洗われて行く気がした。

前を向くしかない・・・分かっている。

だけど・・・・

 

目の前には傘も差さずに寄り添って歩くカップル。時折彼女の頭に積もった雪を掃う彼氏の仕草が暖かい。

紗綺に直接渡す事が出来なかったネックレス。僕にはもう紗綺がつけているところを想像するしか出来ないけれど・・・

 

きっと、綺麗だろうなぁ

 

柔らかな雪は冷たいはずなのに、僕の冷え切った身体には物足りない。

 

もっともっと降り積もれ・・・・

そして全てを、僕の身体ごと真っ白に染めて、何もかも失くしてしまえ・・・

 

頬を伝う涙はすぐに冷たい塊になろうとする。

 

見たかったな・・・・せめて彼女があのネックレスを付けている所を・・・・・

 

東京駅までに道のりは、足先まで冷えた僕にはあまりにも遠すぎた。

もう、すべてを終わりにしたい・・・・・

 

 

さようなら・・・紗綺・・・・武瑠・・・・・













トライアングル・トラップ(15)

随分と秋が深まった事を、私はカーテン越しのの外を見つめながら感じていた。

家を出るまであと一時間半はある。

少し前の私なら、出社前のこの時間は鉛のように重い身体に喝を入れる気概すら持ちあわせない、相当歳不相応な生き方をしていたはず。憂鬱な1日の始まりに諦めと落胆しか見出せない生活は、苦しさと情けなさで押し潰されそうな日々の繰り返しだった。

それが今は嘘のよう。

つい先日は会社の人達に別人のようだと言われた。

「表情が凄く明るくなったよ」「益々美人になったね」

社内で顔を合わせれば同僚や先輩達から大袈裟な美辞麗句を並べ立てられ、苦笑いする毎日。

実際、会社が楽しい。

仕事も驚く程順調だ。

辛い過去の仕打ちも、今は完全に決別できている。

「何か良い事あった?彼氏とラブラブかな?」

その言葉を掛けられる時、なんと言うか、ほんの少しだけ、飾るような笑顔になっていると思う。

良い事があったと言うのは当たっている。一ヶ月前、久し振りに有二の帰国が決まった事がそうだ。

だけど、私の最近の笑顔の所以は紛れもなく有二のおかげ、とは自信を持って言えない自分に感じる微かな浅ましさ。

この自己否定する苦々しさを打ち消して尚穏やかな気持ちにさせてくれるこの人の存在が、色々と状況をややこしくしているのだろう。

・・・・他人事のように私は・・・・・

相変わらず自分の事を客観的に考える事がある。それが大人になった、という事なのかもしれないけれど、私はその思考に違和感を持たずにはいられない。

自らの気持ちに素直に向き合う自信が無いのは、余りにも互いを知り尽くしているこの人に寄り添っているから・・・・・

私は汗ばむ身体にかかった毛布をそっと剥いでみた。

昨夜、呆れるほどに抱き合ったこの人の身体を見ると、未だに下腹部が熱くなる。

男の人の生理現象の一つだから仕方がないのかも知れないけれど、眠っているにも関わらず、血管を浮き立たせて張り裂けそうになっているペニスを目の当たりにすると、じんわりと分泌される唾液を止める事が出来ない。

幼馴染の無防備な寝顔、可愛いと思うのは失礼かもしれないが、そのあどけない表情とは裏腹の筋肉質な身体、そして異様と言える程の存在感を示す股間のアンバランスさに、私は平静を保てなくなる。

思わず、いや、しっかりと意識を持って、そこに触れる。

愛し合った痕跡を残す陰毛のザラつき、そそり立つペニスの硬さは、昨夜の情事を生々しく頭の中で再現させる。

有二を裏切ったあの日から、私達は度々こうして逢うようになった。

「今日、行きたい

彼からの一方的なメールは、仕事を終える直前のオフィスで読む事が多い。

それを断る理由は山のようにある。

疲れている事もあるし、会社の人と食事に行く約束もあったり。それに、何よりも私にはフィアンセがいるのだから。

だけど、私は結局何もせず、ましてや同僚との約束を反故にしてまで、マンションのエントランスの前に立っている武瑠に逢いに戻ってしまう・・・・

疾しさと罪悪感に押し潰されそうになるのにも、もう慣れてしまった。

この人とは身体だけの関係、大切な人の代わり、なんて世迷言も稚拙な自己弁護と分かっている。分かっているのに、私は武瑠が部屋にいる時は争う事を諦めてしまっている。

彼と二人きりでいる時は食事をする事も忘れ、何かに憑かれたように行為に没頭する。気が付けば夜が明けていた、なんて事も一度や二度ではない。

こうして出社前に抱かれる事も普通になっている。

目の前のペニスを握る。

硬くて熱い、鉄のような逞しさ。

口の中では、何かに期待するように唾が溢れてくる。

私は感情のまま、そこに舌を伸ばした。

チロチロと擽るようにしても、鋼鉄の棒はビクともしないから、私は本気の愛撫を仕掛けたくなる。キスをするみたいに唇を尖らせ、内側の柔らかい粘膜を駆使して唾液を擦り付けるようにそこに這わせる。下から上へ。上から下へ。

そして彼が一番感じるカリの所をグニュグニュと何度も往復させる。

「ん・・・・」

いつもここで彼は目を覚ます。

馬鹿みたいだけど、「勝った」と思う瞬間。

だけどその勝利の余韻も一瞬だけ。

彼は獣のように私に襲いかかり、あっという間に形勢逆転。

うつ伏せで上から押さえ付けられ、そしてズブズブと奥まで一気に抉ってくる腰つき。時間が無いのに、中を楽しむようにじっくりとピストンされて、私は切なげに声をあげてしまう。

すっかり彼の形に馴染んでしまった私の中は、いつものように全てが敏感な性感帯となり、僅かな動きにすら過剰なまでの快感を下腹部にもたらしてくれる。

抜ける寸前まで引かれる切なさ、そして深いところまで入ってくる歓び。武瑠の思うように翻弄され、僅かばかりの悔しさも溶けて無くなってしまうその刹那、私の両手を包み込むように握ってくる。

「紗綺の部屋の合鍵、俺に返してよ」

上から絡めた指に力を込め、後ろから私の耳元で囁く武瑠。

「返すもなにも、私のだから・・・それに今は有二が持ってるし」

「まあオートロックの暗証番号知ってるから別にいいけど・・・・」

「覚えてるの?」

「忘れた」

ほんの少しだけ、がっかりした気分になった。意味が分からない。

でも、彼がグッと奥まで押し込んできて、そのままグリグリと揺すられると、私の頭の中は真っ白になる。

「嘘だよ。忘れるわけないよ

その時、笑いながら言っている余裕綽々の彼にイかされた。

彼の手を握りながらイッている最中、頼みもしないのにゆっくりと私の顔を振り向かせ、唇を重ねてくる

「武瑠なんか、大っ嫌い・・・・・」

やっとの思いで呟こうとしたその言葉は、彼の唇に閉ざされてしまった。




険しい表情で慌ただしく化粧をする紗綺。惚れ惚れする程に美しいその横顔を見つめながら俺も身支度を始めた。別に今日の講義は午後からだし、このままこの部屋に居てもいいんだけど、頑なにそれを拒む彼女。いつもの事。

「また今日もシャワーも朝飯も抜き?」

「そんな時間、無い」

ややイラつきながら、一瞬横目で俺を見た。

悪いけど、たまに紗綺を怒らせてみたくなる。どうしようもなく楽しいんだ。

「なんでもっと早く起きないの?」

「な・・・それは貴方が・・・」

ルージュを引く手を止め、ムッとした顔で俺を睨む。そしてまた前を見て化粧の続き。

ごめん、こういうの、本当に楽しい。

やっぱ紗綺は最高だよ。

お前の部屋に泊まった朝って、いつも同じ会話してるよな。俺がギリギリまでお前を離さないから。でも紗綺だってなんだかんだ言って最後まで積極的、だろ?そんな恐い顔する必要もないと思うんだけど。

三大欲求の中で、俺達が一番優先してるのって性欲、だよな。寝食忘れて没頭なんて、中学生以来だよ。

「なんか、お腹ベトベトする」

不機嫌な表情のうえに眉間の皺まで加えた彼女は、スーツの裾を上げて自分のお腹を触っていた。

いつにも増して深く抱き合った痕跡が残っているのかもしれない。

ウェットティッシュを取り出した彼女の手を遮った。

「俺が拭いてやるよ」

「や・・・いいよ、自分でやる」

そう言いつつも、彼女は両手で裾を上げたまま視線を逸らした。

こういうの、凄く可愛いと思う。抱き締めたくなるのを我慢するのが大変だ。

むずがる彼女を立たせ、色濃くそこに残っていた精液の跡を丁寧に拭き取っていく。恥ずかしそうに俯きながらお腹を出す紗綺、ややローライズ気味のスカートのデザインは、丸出しにされたそのふくよかで柔らかそうな彼女のお腹を惜しげもなく晒していた。

緊張しているのか、丸いお腹が呼吸の度に波打つ。

ヤバい・・・また勃ってきちまう・・・・・

大きくて深い臍の中に溜まった精液を取り出す為、少しだけ強めに中に指をほじ入れた。

クリクリと動かした時、一際彼女の吐息が大きくなる

紗綺も感じているのか?

人差し指に巻いたウェットティッシュ越しに紗綺の臍の中の感触を堪能している内に、俺のは完全に勃起してしまった。昨夜から数え切れないほど射精しているにも関わらず、だ・・・

このまま押し倒そうか?

我慢の限界が近付いた俺は、左手で強引にスカートのベルト部分を押し下げようとした。

小さなパンツ一緒に中途半端に引き下げられ、ふさふさの陰毛が見えかけた時。

「だめっ!ヤダっ!」

紗綺が真っ赤な顔をしているのは怒っているからでは無いと思う。眉尻を下げた戸惑いの表情は、恐らく俺と同じ事を考えていた証拠。

「もう本当に遅れちゃう!武瑠も早く出て行ってよ!」

いつもの強気な彼女に戻ってしまった。

まあ、こんな彼女がいいんだけど、戯れの時間はもう終わり。

一応、最後にいつもの儀式を頼んでみよう。

「行ってきますのチューは?」

また頬を赤らめる紗綺。分かりやすい。

心底困ったような紗綺の瞳は潤んでいた。そして勢いよく顔を近づけると、軽い、でも歯がぶつかり合うようなキス・・・

ご近所の視線を気にかける彼女と時間差で先に部屋を出た。

柔らかい唇の余韻と、微かに痛む前歯の余韻。

めくるめく夜を一緒に過ごした彼女は、今夜俺以外の男の腕の中にいるはず。

やり切れない思いは御門違い。身の程知らずとは俺の事だ。

親友の一時帰国の知らせは俺にもあった。

当然だけど、二人は明日までのわずかな時間を共にする。

でも・・・・・無性にイラつく自分のなんと身勝手なことか。

忸怩たる思いを胸に、いつものように時間を気にせずゆっくりと歩ていると、ハイヒールがアスファルトを叩く冷たい音と共に甘い香りが俺を追い越して行った。

顔をに向けたまま無表情に俺を一瞥した彼女は、完璧なメイクにバリッとスーツを着こなしており、その足取りも軽やか。時間がないと言いながらも、最後の最後で玄関で俺がイクまでフェラチオを止めなかった女とは思えない精錬さ。

秋物の厚手の上着は大きな胸と括れた腰の落差を強調し、ムチっとしているのにスレンダーなお尻はピッチリとしたスカートに収まっている。周りの男共が紗綺を二度見する気持ちも理解できるけど、最近の俺は何故か良い気がしない。

正直、他の男に見せたくないと思ってしまっている。

こんないい女、やっぱり俺みたいな学生には釣り合わないのかな・・・・・

超一流企業に勤める親友と比較して自らを卑下する。身も心もドロドロになるまで抱き合っているのに、超えられない高い壁の存在に初めて気付いたような気分。

・・・・・邪魔者、なんだろうな・・・・・

俺は遠ざかる彼女の後ろ姿に声をかけることも出来なかった




「運転手さん、滅茶苦茶急いで欲しいけど、安全運転第一でお願いします」

見矛盾しているようなその言葉は、彼の生真面目な性格を物語っていた

本社での会議を終えた有二は、夜の街へ出て行こうとする同僚達を横目に一人タクシーに飛び乗った。
17時を回った週末の東京の街は煌びやかで、この後のイベントに対する期待感を益々高揚させる。道路の渋滞も思ったほどではなく、15分も車に揺られればそこに着くだろう。

やばい・・・緊張してきた・・・・・

後席で携帯の画面に映る恋人の写真を見た。

毎日、恐らく百回以上は見ているその画に僕は何度助けられた事だろう。

キーホルダーには僕の苗字を掘る事になるのかな・・・・・

左手には、僕と彼女の名前を彫ってあるキーホルダーに結えられた紗綺の部屋の鍵。

守るべき人、愛する人がいるという事の尊さと幸福をこの人に教えてもらった。どんなに感謝してもし足りないと思うその気持ちを、僕は彼女への愛情表現に変えて伝えたいと思っている。

座席にはささやかな花束。

NYには色々なものがあるけれど、華美な装飾を好まない彼女に僕が選んだプレゼント。

紗綺の部屋の小さな花瓶に収まる程度の花束を握り締めながら、車窓から徐々に飛び込んでくる懐かしい風景にいよいよ胸の鼓動が高鳴り始める。

「そこの角を右に回ったら止めてください」

着いた。

紗綺の部屋に、そして僕達の愛の巣となるその部屋に。

カードで支払いを済ませてタクシーから降りた時、自動的に開いた目の前のエントランス。

「おかえりなさい、有二」

「・・・・・紗綺・・・・・」

大好きな僕のフィアンセがそこにいた。

そう、彼女は僕のフィアンセ。将来のお嫁さんになる人。一緒に苦楽を共にして、生きていきたいと願った人。

清楚な淡いブルーのワンピースを着た彼女の姿を見て、胸が一杯になってしまった僕が、振り絞るようにして出した最初の言葉。

「ただ・・・いま・・・・・」

心なしか強ばっていたように見えた紗綺の表情がゆっくりと柔らかく、温かみに溢れる表情へ変わっていった。

そして、笑顔の頬を伝う一粒の涙を拭おうともせず、紗綺は僕の腕の中に飛び込んできたんだ。

馴染んだ甘い香りで頭がパンクしそうになりながら、花束を持ったまま彼女の身体を抱き締めた。

こんな幸福があって良いのだろうか?

感動で体の芯が震えるような感覚の中で、この人の事を絶対に幸せにすると決意を新たにした。

「しばらく帰れなくて悪かったね」

「ううん、大丈夫・・・」

「愛してるよ、紗綺・・・」

「私も・・・有二」

米国での生活で自己主張する術を多少は学んだつもりだったけれど、やはり言葉に出して愛情表現するのは、少しだけ口幅ったいような気がする

でも素直な思いを最初に宣言する事ができて良かったと思っている。武瑠に教わった、女性への普遍的な配慮、のお陰かもしれない

紗綺は会えなかった数ヶ月間、一体どんな生活を送っていたんだろう。

会社で友達は出来たのだろうか。

次から次へと思いが溢れては消えてゆく。

「その花束、NYから持ってきたの?」

「あ、いや、丸の内の花屋さんで・・・」

「だよね。知ってる」

冗談を言う彼女と見つめ合った。

目元が笑っていたけれど、そのあまりに美しい紗綺の顔を久し振りに間近で見た僕は、恥ずかしい事に脚が竦んでしまった。

こんなにも美しい女性が僕の伴侶になる・・・・ちょっと夢を見ているような気分。

ここでキス、だろうか?いや、流石にここではまずいだろう・・・

戸惑う僕の表情を見て紗綺は「ふふふ、やっぱ本物の有二だ」と、なんか嬉しそうにしていた。

やばい・・・・可愛い・・・・・・

ボーッとしている僕の手を引いて、僕にとっては新居となる紗綺の部屋に入っていった。

そして紗綺と一緒に台所に立って、二人で夕御飯の準備を始めた。

あっちで一人暮らしをしている僕は、たまの自炊料理は例外なく和食。日本の食材を手に入れるのは、今や現地ではさほど難しい話でもないし、何よりもこってりと、しかも大味なアメリカの食べ物はどうも好きになれなかったんだ。

「本当にいつもの感じでいいの?」

「うん、いつものじゃないとダメなんだ」

豪華な手料理を予定していた彼女に、所謂「普通」の晩御飯をお願いした。飾るのではなく、紗綺が作る普通の家庭料理が食べたかったから。

大根の煮物、焼き魚、ほうれん草のおひたし、それに小鉢をあと2品程の、質素ではあるが彼女の愛情の篭った食事を口にした時、懐かしい味に目頭が熱くなった。今初めて思うのだが、どこか自分の母親の味にも似ているような気がする

「有二、なんで目が赤いの?」

笑いを堪えながら紗綺が聞いてきた。

慌てて目元を拭ったがもう遅い。

彼女はお腹を抱えて笑いながら、でも彼女も泣いていた。

「いや、ごめん。涙が出るくらい可笑しすぎて」

なんだ、そっちかよ

いや、まあ、ありがとう・・・本当に、涙が出るくらい、美味しい、のは間違いないし・・・

二人で涙を拭いながら笑い合った。

楽しい。

楽しくて仕方がない

そこに理屈なんて何もない。

愛する人と語り合い、一緒の食卓を囲む。穏やかな時間の経過は、人として一番必要なものを充足してくれるような気がした。活力の源は、こういう所にあるという事なのだろう。

愛する妻と、そしていつの日か授る子供に囲まれて・・・・・

その夜、僕達は色々な事を話した。

近況は言うに及ばず、二人のこれからの事も。

日本に戻ってきたら、皆を呼んで盛大な式を挙げよう

そしてすぐに僕達の子供を作ろう

突然の提案に、少し戸惑っているようにも見えた。

僕の腕の中の紗綺はか弱く、どこか頼りない面持で、でもゆっくりと頷いてくれた。

柔らかい紗綺の身体は、僕に心地よい眠気を誘う。安心感と満足感に包まれた僕は、文字通り夢のようなひと時を過ごし、そして微睡みの中で描いた未来予想図に想いを馳せながら眠りについた。




「じゃあ、行くね」

「うん・・・」

電車のドアが閉まった後も、彼はずっと手を振ってくれている。

本当は空港まで見送りに行く予定だったのに、会社の同僚達と東京駅で合流するから駅までで良いという彼を見つめる私の心は複雑だった。

去り行く電車に向かって振っていた右手のやり場に困る。

こんなはずじゃ・・・

愛する人との数ヶ月ぶりの再会を待ち焦がれていたはずなのに、今のこの気持ちは完全に想定外。

色々と変わってしまった事を理解するには半日で充分だった、という事なのだろうか?

また暫く有二とは会えなくなる。

そして、それ程遠くない未来に、彼が帰国したら私は彼と結婚する。

当たり前。

決まっていた事。

そして、彼が期待するように私は彼の子を産む事になるだろう。

彼の期待?・・・・・

私の想いは?・・・・・

部屋までの足取りが重い。

正直、今は空港まで有二を見送らなくて良かったと思っている。こんな気持ちで彼と接するなんて考えられない。

この暗雲垂れ込めるような不安は、彼が行ってしまった寂しさからなのだろうか・・・・・

そう・・・・そうだよ

また一人になってしまった辛さと寂しさで、ちょっと不安になっているだけ・・・・・

コーヒーを注ぐ。

一つのカップが悲しい。

盛大な披露宴、子供達に囲まれた賑やかな家庭。彼に、有二に約束された未来は、より現実味を増して私の心に突き刺さる。

女としての幸せを今まさに手中にしようとしているのに、私は世の中の女性を全員敵に回してしまうような心許なさで胸が張り裂けそう。

私、頑張れ、何を迷っているの?もっと嬉しそうにしなよ

マリッジブルー?

・・・・・

幸せの絶頂にいるはずなのに、それを自分自身に強要しないと押し潰されそうになるなんて・・・・

心の奥底にしこりのように固まっていた想いが、胸を締め付け始める。

その想いは一線を越えさせ、全てを壊す禁断の戯言。そう、戯言だ。

でも、こんなにも頭の中は有二の事で一杯なのに、心の中には別の人。

嫌だ

嫌だよ

あの人の事が私の中でここまで大きくなっていたなんて・・・・・

・・・いや、違う、そうじゃない

大きくなったのではない

元々大きかったんだ

乗り越えられると、何処かで思っていた

有二に会えば、自分の中で折り合いが付けられると思っていた

彼はそもそも全てが違うと思っていた

でも・・・・薄々は気付いていた事でもある

もっと言えば、高校の時から分かっていた事

カップを持つ手が震えてる。

もう・・・これが、最後のチャンスかもしれない

誤魔化しはもう効かない

決別するために、彼に会おう

そして全部終わりにしよう

終わりにしないと、私達三人は、もう・・・・・

その時、部屋のインターホンが鳴った。

画面には武瑠の姿。

ただ只管、落胆のみ

迷った挙句、私はドアを開けるボタンを押した。どっちにせよ、彼は暗証番号を知っている。

ついさっき、私なりの決心をしたばかりなのに、画面であの人を見た時の気持ち。これが私自身が目を背けている本当の気持ちなんだろう。

「歩いているの、見かけたから・・・」

伏せ目がちな武瑠の表情は暗く沈んでいた。

「どうして・・・ここに来たの?・・・・・」

私のその言葉は他人が喋っているみたいに現実味がない。

「だって、お前が・・・紗綺が、悲しそうにしていた・・・」

「貴方には関係ない!」

彼の言葉に被せるように怒鳴ってしまった。

どうしてそんな事に貴方は気が付くの?

どうしてそんなに私に優しくするの?

「だって俺・・・いつも紗綺を見ていたから・・・・・」

もうだめ

やめて

それ以上聞きたくない

「有二を・・・武瑠の、幼馴染で、親友で、いつも傍で支えてくれたあの人を、裏切っているんだよ?・・・私達・・・」

彼の大きな手が、震える私の肩を優しく包んだ。

俺は・・・有二よりも何よりも紗綺の方が大切だ」

視界が真っ白になった。

耳鳴りのように、彼の声が遠くで聞こえる。

これは、現実、なのだろうか?

膝の力が抜けそうになったところで、武瑠は慌てて私を支えてくれた

本当に不器用な人

貴方のそんな表情、初めて見たかも・・・・・

でも・・・・・こんなの、ずるいよね・・・絶対に、ずるいよ、私達・・・・・

何度も包み込まれた武瑠の胸元へ顔を埋めていると、そこが私の本来の場所だと言わんばかりに騒めく心は落ち着きを取り戻していった。




昨日から居ても立ってもいられない、こんな気持ちは始めてだ

紗綺が有二と、他の男と、一緒にいる・・・そう考えただけで気が変になりそうだった。

一睡も出来なかった長い夜を飛び越えてなお募る憔悴感と無力感。

紗綺の街を朝から彷徨くなんて、まるでストーカーだと思いながらも、それ以外の選択肢など俺には分からなかった。

そして有二と一緒に歩く紗綺の姿を見た時、全てを投げ出したくなった。幼馴染として絶対に二人を祝福できると思っていた以前の俺じゃないんだと、この時はっきりと確信した。

もう、俺の出る幕はないと思ったのに・・・・紗綺があんな顔をするから・・・・

有二と別れた後、一人家に向かう紗綺の寂しさに塗れた後姿を、俺は見ていられなかったんだ

部屋のドアを開けた時のお前の顔も、やっぱり沈んでいたよな・・・・そんなお前を見てるのも辛かったけど、でも、やっぱり俺、紗綺を助けたいって、本気で思っている。一番大事な人だって、思っている

ずるくたっていい。何だっていいんだ。俺が、紗綺の事は、全部、絶対に責任を持つから

そしてそう言った時、お前は深いため息と、今にも溢れそうな涙を必死に堪えていた。俺は、そんな紗綺を放っておけないんだよ。俺にはお前を抱き締めて安心させる事しか出来ないんだ。今までだってそうだろ?高校生の頃からずっとそうだったはず

「何も心配するな。俺に頼れ」

そう言った時、お前は泣きながらやっと笑ってくれたよ

ごめん、やっぱり、もう我慢するのはやめだ。お前のその顔を見ていたら、もう自分を抑える自信がない

気付いたら、俺達は唇を貪っていた。そして何かに急かされるように玄関でお互いの下半身をがせ、床に倒れ込みながら一分一秒も惜しむように相手の大事な部分を慈しんだ。横を向いて身体は上下逆さまの状態で抱き合い、目の前の性器を愛でていた

っ白な太腿の奥にある、紗綺の一番大事な部分。既に陰毛が濡れるほど昂まっていたそこに、つい数時間前までは他の男のものが嵌っていたそこに、俺は夢中になってむしゃぶりついた。

彼女も俺の腰をガッチリと抱き締めて、そしてペニスを深々と咥えながら必死に中で舌を絡みつかせてくれていた。亀頭の先で彼女の喉元を感じると少し心配になるけれど、えづきながらそれを離さまいとしていた。

嬉しくて、気持ちよくて・・・

でも彼女は他人のもの。

その事実が男の雄心を熱く滾らせる

絶対に離すもんか

紗綺・・・・俺はもう・・・・・

俺は強引に彼女の腕を振りほどくと、彼女の両脚を抱えてその部分に亀頭を当てた。

口を拭いながら泣き出しそうな表情の紗綺を見ていると、自分自身を見失いそうになる。

俺はこんなにもこのの事を愛してしまっていたなんて・・・・

マグマの如く湧き上がる欲望のまま、一気に奥まで貫いた

喉から絞り出すような悲鳴、そう、悲鳴だ。紗綺は背中を仰け反らせ、俺と一つになった瞬間に激しく身体を痙攣させながら達してしまった。

ペニスを包む熱い感触。うねる膣の襞一つ一つが絡みつき、動いていないのに射精を強制する程の甘美な感覚で腰が引けそうになる。

俺の腕を必死な思いで掴んで耐えている彼女は、乱れた前髪を直す余裕もなく、頬を赤らめて呼吸を荒くするのみ。

ゆっくりと、中を味わいながらピストン運動を開始した。

「あっ、あっ、あっ、あっ、・・・・・いいっ、そこ・・・ひっ・・・あんっ・・・あああっ・・・」

ぎゅっと絡みつく彼女の中ペニスをぎりぎりまで引いた時に肉襞がカリに引っかるように引っ張り出され、そしてそのまま丸ごと奥まで押し込む。潤沢な愛液は性感を絶妙に高める適度な摩擦感を二人の敏感な部分にもたらし、より一層セックスに没頭させる。

一つになる事が、こんなにも感動的だと思ったことは一度も無かった。

今まで抱いてきた数え切れない程の女性達とでは経験出来なかった感動の理由は、相手が紗綺だから。そして数え切れない程の逢瀬を彼女と繰り返してきているけれど、そのどれよりも格段に昂っているのは、自分の気持ちに嘘を付くのを辞める決心をしたから。

嬉しくて、楽しくて、それでいて有り得ない位にエロくて・・・

改めて言いたい。

俺は、紗綺の事が大好きだ。

ずっと、ずっと前から、紗綺の事だけが大好きだったんだ。

滾る思いは彼女と一つになっている今まさに燃え上がり、興奮が突き抜けようとする。

心から愛する女とは、性器の交わりだけでは満足できない。

俺は腰を一心不乱に振りながらジャケットを脱いだ。彼女ももどかしげに上着を脱ぎ捨てると、一糸まとわぬ姿となって抱き合った。

暖かくて、柔らかくて、いい匂いがして・・・・

「紗綺の中、すっごく濡れてる・・・」

「・・・・・」

俺の首に腕を回した彼女は、羞恥に溢れた眼差しで俺を見つめるのみ。

上半身を密着させながら腰を振るのは、少しだけ動きづらい。でも、全身で一体となるこの感じは、単なる性的な欲求以上の満足感と多幸感を与えてくれる。

うねり始めた彼女の腰が、膣の中に隙間なく挿入されているペニスに多様な刺激をもたらす。

「あ・・・また・・・・いくっ・・・くぅ・・・・」

静かに、でも激しく身体を痙攣させながらイき始める紗綺。

同時に、精を搾り取ろうとする彼女の膣の中が強烈にペニスを締め上げる。

「気持ち、いいか?」

潤んだ瞳でコクコクと頷いていた。

「あいつより・・・有二よりも、いいか?」

ふいに出た言葉。そんなつもりは無かったのに。

彼女は目を見開くと、泣きそうになっていた。

なんてデリカシーの無い言葉を俺は言ってしまったんだ・・・

自分を見失うほどに興奮していた中で、あいつに負けたくないという自尊心が無意識にその言葉を吐かせてた。

本当に最低だ・・・

「いいよ・・・」

耳に届いたのは、予想だにしていなかった言葉。

思わず聞き返してしまったけれど、彼女は俺を引き寄せ、背中に回した腕で強く抱き締めながら耳元でこう言った。はっきりと、言った。

「有二よりも、ずっとずっと、気持ちいいよ・・・武瑠のセックス・・・・・」

彼女の目尻から溢れた涙がこめかみ伝っていたけれど、口元は優しく微笑んでいた。

脳が溶けてしまうかと思った。

勝利感とか優越感とか、そんな陳腐なものではない

有二の事なんか関係無い。

「ごめん、俺・・・・最低な事を言うけど・・・それ聞いて凄く喜んでいる・・・・こんな嬉しい事は生まれて初めてだって・・・・本当に最低だけど

彼女は柔らかく微笑むと俺の頬を優しく包み込み、そして口づけをしてくれた。

そこからは無我夢中だった。

大きな乳房が赤くなる程に吸い、揉みしだき、子宮を直接蹂躙する勢いで突きまくった。

突き抜けた興奮は、俺から一切のブレーキを外してしまったんだ。

彼女の身体を思いやる一方で、尽きぬ興奮は一層の一体感を求め、激しく全身を躍動させる。正常位で犯し、騎乗位ではペニスが折れそうな勢いで彼女に犯され、後背位では勢いが付きすぎてベッドから落ちても壊れた機械の如くピストン運動を止めることは無かった。

彼女は俺の腕の中で何度も何度も絶頂し、気を失いそうになっても必死になって俺についてきてくれた。

「もう、俺も・・・」

「きてっ!武瑠っ!お願いだから、一緒にっ!・・・・・・・」

膣圧が高まり、必死の形相で絶頂へ登り詰めようとする紗綺。

「おお、出るっ!おぉぉぉぉ、いくっ!」

「い、いやぁ、離れないで!このままがいいっ!お願いだから!武瑠の、頂戴!私に、頂戴っ!あああんっ!あああ、私も、またっ・・・・・あああああっ!いくっ!いっくぅぅぅぅ!

極限まで硬くなったペニスを彼女の奥の奥まで突き挿し、そのまま射精した。

俺が初めて紗綺と一体になれた瞬間だった。




「これより当機はニューヨークJFK空港へ向けて・・・・・」

夕闇迫る10,000メートルの上空で、僕は遥か雲海の彼方に見える地平線を眺めていた徹夜で飲み明かしたという同期たちは、皆離陸直後から眠っている。聞こえるのは後方からのジェットエンジンの音だけ。

一日千秋の思いで楽しみにしていた一時帰国が、アッという間に終わってしまった。

翌日からの仕事の事を考えると少しだけ気分が重たくなるけれど、今は彼女の事を思いながらその先の事を考えたい。

フィアンセだから、結婚が前提だから、別に、とは思いつつ、でも具体的な披露宴の計画や子供の事まで話せたのは、にしては凄い前進だったと思っている。離れていた期間を挽回する位の一体感がお互い持てたのではないだろうか。

仮に来年本国復帰となれば、ひょっとすると今から色々と準備する必要があるのかも。

いや、絶対そうだ。だって披露宴って、彼女の事だから友達沢山呼ぶんだろうし。となると、いつから招待状の準備を始めれば良いのだろうか?

失敗した・・・結婚指輪、どんなのが好きなのか聞いてくれば良かったよ・・・

・・・・って、何を慌てているんだろう、僕は・・・・

こんな自分が嫌になる事もたまにはあるけれど、用心深い性格は社会人となった今は掛け替えのない武器になっている。入社して半年が経ち、自慢ではないが、お陰で同期ではダントツの成果を挙げている方だと思う。

あと二ヶ月もしない内にクリスマス。米国人のボスが、そんな僕にご褒美として休暇をくれるといいなあ・・・・・なんて。まあ、それは無いってことは分かってるけど。

昨日、紗綺からクリスマスはNYに行きたいと言われた。凄く嬉しかったけど、仕事の休みが取れないとなると、つまらない思いをさせてしまう事になるから。

彼女、落ち込んでたな・・・いくら仕事とはいえ、断るのはちょっと辛かった。今朝駅まで送ってくれた時も、元気がなかったのはそのせいだろう・・・・・

・・・・・あ、そうか。新婚旅行で二人で行けばいいのか・・・

今頃思いつくなんて、なんか、やっぱり気が効かないな、僕は

メールでも打とうかな・・・・あ、ここからは無理か・・・・

窓の外はオレンジ色の水平線、空には星が瞬き始めていた。

機内の灯が徐々に落とされてゆく。

手元に向けられたスポットライトが、彼女と愛し合った昨夜のぬくもりが残る僕の両手を照らしていた。

そのリアルな感触は、米国で全うする事を誓った僕の決心に楔を刺そうとする。

今すぐにでも戻ってこの手で彼女を抱き締めたいと思った。

誰のために僕は頑張っているのか?

答えは明白。そして彼女もそれを知っていて、バックアップしてくれている。

悩むことなんかない。

「有二、なに気合入った顔してんの?」

「あ、あれ?起きてたの?」

「なんかさっきからブツブツ言ってたから目が覚めちゃったよ」

遠い異国の地でも、僕には仲間がいる。仲間がいるから、闘って行ける。そして闘う理由は、紗綺。

「明日から仕事だね、まあ、頑張ろうね」

「あ~、嫌なこと思い出さすなよな~」

他の同期達が笑っていた。

来年、4月かな・・・・日本に戻れるよう頑張るから、紗綺。沢山の人に祝ってもらって、幸せな家庭を作ろうな・・・・




「あああっ・・・・」

思わず漏れたのは、落胆の溜息?

彼のが離れていった後、私のあそこからドロっとした精液が溢れ出てきた。おかしな話だけれど、もったいない、と思ってしまっている。出来ればそのまま抜かずにいてくれれば、とさえ思ってしまっている。

「凄く良かった・・・」

肩で呼吸をしながら武瑠が言ってくれた。

素直に嬉しかった。

何度も何度も過激なまでの絶頂を与え続けられた私の身体、両脚ががくがくしてる。そこに行って労らってあげたいのに、気怠い身体と相まって一歩向こうに行くだけでも大変だ。

精液私ので、真っ白になっている彼のペニス。やっとの思いで、まだ硬いそこに触れることが出来た。

亀頭の先から睾丸まで、私達の体液で白く濡れているそこにキスをした。この一見グロテスクとも思えるペニスが愛おしくて堪らない。何度も何度も私を気持ち良くしてくれる、優秀な男の凶暴な性器に、私はある種の敬意を払いながら舌先を使って丁寧に愛撫するそして合間に彼の表情を確認し、気持ち良さそうにしていると分かれば嬉しくて益々張り切ってしまう。カリの溝に溜まった精液を吸い、竿に付着した愛液を舐めとり、睾丸を口に含んで優しく揉みほぐす。

「凄くいいよ・・・」

ペニスはすっかり綺麗になったけど、もっともっと良くなってもらいたいと願う私は、そのまま彼の裏腿を押し上げるようにして、奥に見えるアナルを舌先でつついてみた

身体をビクッとさせながら一瞬逃げようとする腰を抑える

唾液を舌に乗せ、表面で彼のアナルをズルっと舐め上げた。そしてそれを何度も繰り返した。

彼と決別する決心は、色々な事を変えてしまったような気がした。

核心を言わなくても伝わってくる武瑠の気持ちに、積極的に応えたいと思ってしまっているのは、恐らくこれが最後だと決めたから。男の人の肛門にキスをするなんて、考えたことも無かったのに、今は彼が喜ぶなら、それが自らの喜びであるかのように、進んでしたいと思っている。

抗えない彼への気持ちに素直になる事が出来たから、私は心から彼と接する事ができてるんだ。

「ここ、気持ちいい?」

「ああ、気持ち良すぎるよ・・・・」

四つん這いになった彼の肛門にキスをしながら、前に回した手でペニスを扱いた。

こんな恥ずかしい格好を私に晒してくれている彼の態度に、私はえも言われぬ興奮を覚えている。そして、全く硬度の衰えないペニスで再び貫かれたいと思ってしまっている。

その気持ちが伝わったのか、武瑠は私を優しく押し倒し、私は彼の期待に応えたくて両脚を思いっきり広げた。

真上を向いた勇ましいペニスが、精液が溢れ出ている私のヴァギナにあてがわれた。大いなる期待と興奮で私の呼吸も荒くなる。

「変なこと、聞いていい?」

ゆっくりと彼が入ってくる。

「んっ・・・いいよ・・・何?」

あれだけほぐされて、何度も貫かれている筈なのに、彼のがメリメリと掻き分けるように入ってくる挿入の瞬間に未だ慣れることが出来ない

「有二に・・・抱かれたんだろ?」

巨大な亀頭が狭い路をゆっくり突き進み、フィアンセとの子供を宿すその場所までアッという間に届いてしまった。有二のでは一度も届いたことのないそこに・・・・・

「うん・・・・・・ごめん・・・・・・・・・・」

何故武瑠に謝っているのか、今の私には分からない。

だけど、謝らずにはいられなかったから。私は感情に素直に従っただけ・・・

武瑠の目が真っ赤になっていた。

時折、「畜生・・・畜生・・・」と、自分を責めるように呟いている

貴方は・・・私がいなくて大丈夫な人でしょ?

ちょっと頼りなくて、呑気なところもあるけれど、それを全部理解してくれる、しようとしてくれる女の人が沢山いるじゃない・・・・

でもね・・・・でも有二は違う

しっかりしているけれど、私が支えてあげなければならない人なんだよ、あの人は

武瑠だって幼馴染なんだから知ってるはずだよ

それに・・・貴方だって・・・言ったじゃない、私達の結婚を・・・祝福するって・・・

・・・・あれ・・・ごめん・・・・なんで私まで・・・泣いてるんだろう・・・・・

「今夜だけ」

「え?・・・」

私は涙を拭って武瑠に言った。

「今夜だけ、武瑠の彼女になる。それで終わり。全部、終わりにする」

「・・・・・」

正常位で腰を振っている彼の身体を抱き締めた。

私は彼の首筋のフェロモンを嗅ぎながら、耳元でこう囁いた。

「滅茶苦茶にして・・・私を武瑠の色に染めて」

彼は夢中になってキスを仕掛けてきた。

必死に長い舌を延ばして私の口の中で暴れさせ、私は私で負けじと彼の舌に自分の舌を巻き付かせていった。暖かい唾液が流れ込み、ザラつく舌と舌を絡めながら、性器の結合をより一層深くしてゆく。

違う

全然違うよ・・・

凄く激しいのに、何もかもが優しくて

貴方のキスの仕方、愛撫、そして奥まで届く大きなペニスもそう

有二のじゃ、全然良くなかった・・・気持ち良くなれなかった・・・・・全然ダメだったから・・・・・

貴方の方が、ずっとずっと気持ちいいから・・・・

・・・・有二、ごめん・・・・・・

でも愛してる・・・愛してる、はず、だから・・・有二の事を

あああっ、また、すごいのが来る・・・ああああ・・・・武瑠・・・武瑠・・・・貴方が・・・・・

「あああっ!いくぅぅぅぅぅぅっ!あああああっ・・・・た、ける・・・・・・・」

大きくて深くて強いオーガズムの波が全身を駆け巡り、意識を飛ばそうとする。


嫌だ・・・気を失いたくない・・・・ずっと、ずっと武瑠を感じていたい・・・

「あひっ!・・・ひっ・・・うぐっ・・・・あああああっ!武瑠っ!ああああああっ!」

彼の二の腕を爪が食い込む程に掴みながら、私は薄れゆく意識と戦っていた。

「嫌だよ・・・俺、紗綺との事、終わりにしたくない・・・」

「だ、だめ・・・ああんっ!・・・無理・・・・っだめ・・・あああっ・・・」

「俺、ずっとずっと、昔から紗綺の事が・・・・」

その先を言わせまいと、私は彼の唇を塞いだ。

「それも言っちゃぁ・・・だめ・・・」

「紗綺・・・俺・・・・」

「私も・・・同じだから・・・貴方と、同じ気持ちだから・・・・」

止めどなく溢れる涙。

彼も泣いていた。

失望と期待と戒めと決心が私の心を乱す。

脳髄から液体が流れ出すような不思議な感覚と、急激に昂まるアドレナリンの咆哮が全身を駆け巡る。

「クリスマス・・・・お願いだから」

「・・・・・」

「一緒に過ごして欲しい・・・・それで、最後にするから・・・・な?・・・お願いだから・・・紗綺・・・・」

軋むベッドが悲鳴を上げる程に激しく交わる二人。

今まさに、紗綺の心と身体が武瑠と一緒になろうとしていたのだ。

「ほ、欲しいっ!・・・武瑠の・・中に頂戴っ!・・・・」

「行くぞ!・・・また、中に注いでやるからな・・・・ううっ!おぉぉぉぉっ・・・」

「私の名前を呼んでっ!お願いだから!呼びながら出してっ!」

「出るっ・・・紗綺っ!紗綺っ!あああああ!」

「武瑠っ!・・凄いっ・・・また大きくなってる!・・・・もう私もまた・・・・・」

「う、うおぉぉぉぅっ!紗綺っ!紗綺っ!・・・愛してる・・・紗綺の事、愛してる!」

「私も・・・愛してる!・・・・武瑠が・・・好き!・・・ずっと好きだったから!・・・・あああああっ!い、いくっ!いくっ!・・・いっくぅ・・・・・」

フィアンセが届かない深い所までペニスを侵入させ、フィアンセと子作りする大切な場所を武瑠の精液で満たしたまま、二人は気を失うように眠りについたのだった




それから二ヶ月後の事。

初雪が東京の街を白く染めた頃、一人の青年が大きなスーツケースを持って空港に降り立った。

二ヶ月ぶりの東京は寒いな・・・でもNYよりはマシか・・・・・

気流の影響で思いのほか早く到着してしまったその青年は、その後のスケジュールを考えながら電車に乗った。

出迎えは誰ひとりとしていない。誰彼は帰国を知らせていないから

思いがけずに貰えたクリスマス休暇。今度は一週間日本に滞在できる

紗綺、元気でいるかな・・・

びっくりするだろうな・・・・・・

スーツケースの中にはTiffanyのネックレス。一つくらいは持っていても損はないと思って買ったサプライズプレゼント

今日は12月24日

いきなり部屋に行ったら驚くだろうな・・・

薄く積もった雪に気をつけながら、その青年は都内へと向かって行った。





次回 トライアングル・トラップ 最終回











トライアングル・トラップ(14)

カーテンを開け放ったままの窓からの灯りしかないこの部屋の中は、目が慣れるにつれて少しづつ現実を映し出す。

今までなら見たくない光景だったけれど、今は違う。

一人じゃないから。

大きなベッドは、やっぱり二人が丁度良い。

いつも二つ置いてあった枕も久し振りにその役割を果たしてくれている。

武瑠の太い腕がきつく、でも優しく私を包み込んでくれる。

ついさっきまでの奈落の底にいたような感覚は、遠い昔の人ごとのように思えてくる。それ程までに居心地の良いこの空間。

筋肉質で熱く火照った肌を愛でるように、両腕を彼の背中に回す。そして肌と肌の隙間が無くなるくらい、私は彼を抱き締め、彼は私を抱き締めてくれる。

武瑠の厚い胸板に潰された乳房の痛みは心地良く、私の下腹部に押し付けられたペニスはまるで鋼の如くその存在感を増す。

鼓動はこれ以上ない位に激しく脈打ち、彼の吐息もその間隔を狭めていった。

少しづつ、少しづつ、私の両脚を割って入ってくる武瑠の身体、その動きは彼らしくもなく、何かに怯えるように拙く、危うい。

私は自ら両脚を広げ、内腿でそんな彼の硬い身体を挟み込んだ。

 

「いく・・・よ?」

 

声が震えていた。

 

「うん・・・・・」

 

答えた私の声も同じく震えていた。

身体を密着させたまま、私の入り口を確かめるように腰を動かす彼。そして私がそこに熱くて硬い感触を感じた瞬間、とてつもない罪悪感と不安で目の前が真っ暗になった。

私を抱き抱えてくれた彼を部屋に招き入れた時も有二の姿が脳裏をかすめたけれど、争う事が出来なかった。

その時と同じ感覚。

今、この温もりから離れる恐怖を考えると、私は何も出来なくなってしまう。

勿論、決してそれを良しとする筈がない。

だけど、このまま彼を受け入れないという選択肢は考えられなかった。でも身体は戸惑うように彼を受け入れようとしたり、拒絶しようとしたり。

でも、だけど・・・その二つのフレーズが頭の中で交錯する。表と裏の私が次々に顔を出しては消える。

そんな私の葛藤を知らずに、寧ろ都合良く彼のペニスが一気に私を貫いた。

ズルッと音がしそうな挿入感と存在感。

下半身に広がる鈍い痛みは、久しぶりに武瑠という男を受け入れた証。快感とは程遠い痛みで、一瞬呼吸が止まる。それでも男の人と、彼と一つになれた安心感が私の脳髄を痺れさす。

私が有二を裏切った瞬間だ。

頬を伝う涙が恨めしい。

せめて武瑠と一つになった感触をこれ以上味わいたくないと願う表の私が、彼の腰に絡めた両脚に力を込めて、動き出そうとするその身体を抑制する。動かれると、中に入っている彼のペニスの存在を嫌でも意識してしまいそう。

でも力強い男の身体を制止する意思も力もない裏の私が、ゆっくりと前後運度を始めるゴツゴツした身体にしがみついて、より一層の密着感を得ようとする。

もう、わけがわからない。

はっきりしているのは、一人暮らしで疲れた私の心を埋め合わせて余りある安心感をこの人は与えてくれるという事。今の私に一番必要なもの、それをもたらしてくれる、有二以外の唯一の存在。

 

混濁した意識の中で肌を重ねていると、キラキラと輝いていた青春の日々が蘇ってくる。

私はこの人に女にされた。

そしてまだ高校生の私の身体の隅々まで、セックスがもたらす女の喜びを焼き付けてくれた。

 

拘っていなかった筈の思い出が、今は後悔でしかない。何故なら、私に植え付けられた女としての性が彼を忘れられていない事を、今この瞬間、思い知らされたから。

武瑠も正常ではいられないのだろう。余裕を失った表情は鬼気迫るものがあった。私を抱き起こしてくれた、強くて逞しい男の面影よりも、今の彼はまるで高校生のように目の前の情事に没頭する盛った雄。

労わるような優しい動きは最初だけ。

狭くなった私の中を強引に広げながら、彼にしか触れられた事のない一番深い所まで容赦なくペニスを押し込んでくる。

 

「あっ・・・はぁん・・・・・」

 

思わず漏れた甘ったるい声に驚き、私は両手で口元を覆った。

無理矢理押し広げられた時に感じた痛みに慣れ始め、私の子宮は繁殖行為を羨望するように蠢き始めている。

少しづつ、でも確実に湧き上がるゾクゾクするような快感。

身体の奥へ刻印を打ち込むような圧倒的な性行為は、私の中に重くのし掛かる良心の呵責を少しづつ溶かして行く。

 

ダメ・・・やだ・・・・

 

押し寄せる波に恐怖する裏側で、私の理性がガラガラと崩れ落ちそうになったその時だった。

 

「うっ・・・紗綺・・・・あああっ!」

 

武瑠が一片の余裕も無い上ずった声をあげた。

そしてすぐに私のお腹、胸、顔に熱い迸りを感じた。

マグマのように熱く融合した性器の結合が解かれた事を理解した時、魂があそこから抜かれたような、かつて経験したことの無い空虚、まるで身体の一部が離れていったような不思議な感覚が私を襲った。

目の前の武瑠は目をギュッと瞑ったまま、まだドクドクと射精を続けている。

私とのセックスの快感に表情を歪めている彼の事が、寂しさと相まった私の心をキュッと締め付ける。

私は今、自分を包み込む彼の事が愛しくて堪らないと思ってしまっている。

 

抱き締めたい・・・

もっと、もっと強く抱かれたい・・・

この人に満たされたい・・・・・

 

私の両腕が彼の腰に伸びる。

そしてギリギリの所で止まる。

崩壊寸前の理性がすんでの所でブレーキを掛けてくれた。

行き場を失った私の両手は、そのままシーツを握り締めた。そして歯を食いしばり、首を左右に振る。

葛藤とかのレベルではない。

女としての喜びを実感した事は確かだし、一線を超えてしまった事実に言い訳の余地など無い。

私は、有二を裏切った。遠い国で一人で頑張っている彼を蔑ろにしたんだ。

夢なら覚めてほしい。辛い会社の出来事も、丸ごと夢であってほしい。

出来るなら、楽しかったあの頃に戻りたい。有二と武瑠に囲まれて馬鹿を言っていたあの頃に・・・・

 

「ごめん紗綺、俺・・・・・」

 

自信なさげな彼の眼差しは、どうしようもなく私の母性を擽る。

これ以上この人と肌を合わせ続けてはいけない。

直感的に彼の厚い胸板を押す。

彼も私の意図を汲んでくれたのか、悲しみに塗れた表情を浮かべ、そして私から離れてくれた。

また一人になる。

寂しい。

徐々に遠ざかっていく武瑠の身体の下半身は、未だ下腹部に張り付くようにいきり立ったまま。

中途半端に与えられた歓悦の渦中いる私は、再びそれに犯される事を僅かでも願っている自分を恥じた。

圧倒的な男を感じさせる彼の身体を前に、全てを曝け出したままの私は腕を組んで胸を隠す。今更こんな抵抗は無意味であると分かっていても、そうする事でしか自分自身を律する事が出来ないのかもしれない。

腕に感じる熱い精液の存在。

男臭い匂いが鼻を擽り、身体が中から溶けてしまいそうな錯覚を覚える。

寂しさと果てぬ欲望の真っ只中で、私を救ってくれた武瑠を、やっとの事で拒絶する意思を持つ事が出来たのに・・・

 

 

 

 

床に落ちたスマホのメール着信音で目が覚めた。

時計は既に8時を回っている。

 

「お友達の具合、どうだった?」

 

差出人は玲美。

昨夜紗綺からのメールを見た俺は、玲美との食事の途中で飛び出して来てしまっていた。確か、親友に何かあったかもしれない、とか何とか理由を付けていたように思う。

 

「昨夜はごめん、友人は大丈夫でした」

 

玲美からの返信は速かった。

 

「それなら良かった。武瑠君、凄く慌ててたから。私もホッとしたよ」

 

たった一行の文面から漂う余裕感は、玲美が歳上の女だからなのだろうか。

 

「この埋め合わせは必ずするから」

「高くつくよ!」

 

苦笑いしながらスマホをテーブルに置く。

ふと横を見ると、同じベッドの中の紗綺の後ろ姿。

辛うじて腰の下だけを隠すようにはだけた毛布。

彼女の背中の中心を走る背骨の窪みが緩やかなラインを描く。薄暗い部屋の中のその光景は、あまりにも幻想的で美し過ぎた。

思わず右手を伸ばし、そこに触れようとする。男として当たり前の行動だ。

ひょっとすると百人以上の女を抱いて来たかもしれないけれど、目の前の幼馴染は別格であり、比べる存在ではない事を昨夜再認識したばかり。

俺のペニスは既に完全に勃起している。

微かに白く残る精液の痕をなぞるように人差し指を滑らせた。

彼女は動かない。

でも、寝息も聞こえない。

 

「紗綺、起きてるんだろう?」

 

その問い掛けにも応えてくれない。

 

当たり前かもな・・・・・

 

俺は親友を裏切り、紗綺は婚約者を裏切った。

そして俺達は、苦楽を共にしてきた幼馴染を裏切ったんだから。

ほんの数時間前、彼女と一つになっている時に、俺は紗綺に伝えたい気持ちを何度も何度も飲み込んだ。「邪」になり切れない優柔不断な自分には、全てをぶち壊す勇気が無かっただけ。

一度目の射精の後、頑なに接触を拒んでいた彼女は、結局再び俺を受け入れてくれた。

あっという間に果ててしまった一度目、あんな経験は中学生以来かもしれないが、別に男としての威厳なんて大そうな事ではない。単に、紗綺ともっともっと繋がっていたかったから、俺は悲痛な面持ちの彼女を押し倒したんだ。

その二度目のセックスの時に見せた絶望に沈む彼女の表情と、時折浮かべた軽蔑の眼は、或いは彼女自身に向けられたものなのかもしれない。

後ろから俺に貫かれ、血が滲むほどシーツを握り締めながら快楽に落ちる事を拒絶するその背中に射精した。

気を失いそうな快心の射精だった。

でも、多分、紗綺は一緒に果ててはいなかったはず。彼女にとって、最後の一線だったのかもしれない。

そんな紗綺の艶やかな背中を掌で撫であげる。

柔らかいのにムチっとした弾力を秘めた彼女の身体は、禁断の扉をいとも簡単に開けさせようとする。

俺は、間違いをまた犯そうとしている。

いや、間違いとは思いたくない。

 

「武瑠」

 

前に回ろうとした俺の右手を遮るような紗綺の声。

 

「ごめんなさい・・・・・」

 

彼女はその温かい手で俺の手を避けた。

 

「もう、帰って・・・お願いだから」

 

鼻を啜りながら振り絞った紗綺のその言葉に抗うなど論外。

一番辛いのは紗綺なんだ。

 

改めて自分がした事の重大さに気が付いた俺は、何も言わずベッドから降りると身支度を整えた。

向こうを向いたままの紗綺の肩が震えている。

 

俺は結局紗綺の力にはなれないのだろうか?

俺ではダメなのか?

・・・あいつは一体何をやっているんだ・・・・・

 

理不尽だとは分かっている。

だけど、自分の女が辛い時に側にいてやれない奴なんか、男じゃない。

・・・いや、違う・・・何を言ってるんだ、俺は・・・・・

ごめん・・・有二・・・・

俺がこんな事言える立場じゃないのに・・・・・

 

紗綺の部屋を出て暫くした頃、彼女からメールが届いた。

 

「さっきはごめん。でも、ありがとう」

 

一瞬吹き抜けた風が木々を騒めつかせる。

 

・・・・・俺はどうすればいいんだ・・・・・

 

 

 

 

夕焼け色が窓から差し込む頃。

一日が暮れようとするその瞬間を見届ける覚悟が今も私には無い。

日が落ちて、日が昇り、そしてまた一日が始まる。辛い一日が。

 

もうこんな時間か・・・・・

 

武瑠が帰った後、私は部屋を一歩も出ることなく、ずっと二つの事を考えていた。

一つは答えの出ない自問自答。

犯してしまった間違いを言い訳するつもりはない。単に私がそれだけの女だったという事に過ぎないし、それに万が一にも武瑠に責任の一端があるなんて微塵も思わないから。彼には助けられこそすれ、昔から嫌な思いを一度だってされた事がない。

私が許せないのは、有二が愛している人間が私みたいなくだらない女だったという事。

就職してからは会社の人達に迷惑ばかりかけて、結局押し潰されそうになっては皆に支えられ、そして挙句は武瑠に親友を裏切らせている。

こんな女が彼を支えて行く事が出来るのだろうか?そもそも、そんな資格が私にあるの?

有二を支えて行きたいと願う私には、答えを出す勇気が無いだけなのかもしれない。

そして二つ目。

これは考えるというよりも、考えたくないのに頭からずっと離れない事。

そっとお腹に手を当てる。

その奥に感じる疼くような痛みは武瑠の所為。

紛れもなく、彼の温もりが身体に残っている。

ズタズタにされた私の心は、武瑠の腕に包まれる事で癒された。

つまり、あの温もりは本物だったという事。

今の私が欲しいものを、あの人は与えてくれた。

心が震える程の安心感に包まれたのはいつ以来だろう・・・その相手が有二ではなくて、武瑠だという事に何ら違和感を感じなくなっているのは抱かれた所為?

セックスをするという事は、こんなにも心と身体を変えてしまうものなのだろうか?

 

「あ・・・・・んんっ・・・・・」

 

お腹の奥がキュンキュンする。

 

だめ・・・・・

切ない・・・

 

こんなの、あの人とではあり得なかったと思う。

私の身体はどうなってしまったんだろう。

 

有二・・・ごめん・・・・・有二

 

私は彼に謝りながら、昨夜の禁断の逢瀬を思い出していた。

 

 

 

 

「昨日の今日で、別に無理しなくて良かったんだよ?」

「いや、別に無理ってわけじゃなくて、単に玲美とイチャイチャしたかっただけだから」

「馬鹿・・・」

 

俺達はロビーへ下るエレベーターに乗った。

その途端、名残惜しそうに抱き付いてキスをしてくる玲美。

紗綺の部屋を出た後、腹の底から湧き上がるような異常な性欲を鎮める為に彼女を呼び出した。セフレとしてならwin-winの関係になるんだろうが、彼女が俺に対して今持ってる感情は疑いなく恋愛そのもの。

正直少しだけ良心が痛む。

 

「今日の武瑠君、凄かった・・・」

 

蕩けるような玲美の表情は、寸分違わなく俺に堕ちている証拠。もうこの女は俺の言う事なら何でも聞いてくれるだろう。

だけど、やっぱり悪いけど、今の自分の心はここには無い。誰もが羨む容姿端麗なお嬢様を従え、例えば今このいつ扉が開くとも分からないエレベーターの中でフェラチオを強要しようとも、何の躊躇いもなくその行為に彼女は耽る事が出来るだろう。

でも、そんな中でも俺の脳裏に浮かぶのは紗綺の姿だけ。

この雲の上を歩くような所在無さは、彼女の部屋を出てからずっと続いている。

今夜は友人との約束があると言う玲美を見送った後、その思いは振り切ることのできない情炎となって益々己を滾らせる。

気がつくと、紗綺の駅。

朝見た光景が、まるでデジャブのよう。

 

紗綺を助けたい・・・・・本当にそれだけか?

助けた後に、俺は何を望んでいる?

 

彼女は親友の婚約者。

昨夜の情交は消せない事実だとしても、あの二人の未来に俺はいない。

見慣れた風景に、少しづつ後悔の念が湧き上がる。

今向かっている先で待っているのは、引き返せない地獄。人として許されないカタストロフィ。

 

もうだめだ・・・・

こんな事はやめよう・・・・・

 

紗綺の部屋の前まで来て踵を返そうとした時、俺はここまでの行動を後悔した。

部屋から出て来たばかりの紗綺がそこに居たから。

 

「さ、紗綺・・・・・」

 

彼女は一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに俯いた。そして寂しそうに微笑む面影と共に、そのまま何も言わずに部屋に戻ってしまった・・・・・

 

 

 

 

こっちに来てから初めての帰国が決まった。

とは言っても、本社の会議に出席するだけ。もっと言うと、僅か一泊しかできないから、随分と忙しない里帰りになってしまいそう。

それでも僕の心は浮き足立っていた。理由は簡単。

紗綺に逢えるから。

僕のフィアンセ、僕が世界一愛する人に逢えるから。

会議なんてどうだって良い・・・・・何て事は決して無いけれど、僕の心にあるのは難しい報告書の裏付け資料をどうやって準備するのかという心配事ではなく、数ヶ月前に見た彼女の笑顔だけ。

 

Did anything happen to make you so happy?

 

出社前のコーヒーショップで同僚達が声を掛けてくれる。どうやら僕は相当だらしの無い顔をしているらしい。

 

my precious one・・・」

 

そこまで言い掛けたところで、察しの良い皆は嬉しそうに首を振って僕の肩を叩いてくれる。

僕はPCを取り出して彼女の事を思った。

この湧き上がるハッピーな気持ちをどう彼女に伝えれば良いのか?キーボードを叩く指が空を踊る。

紗綺と会ったなら、話したい事は山のようにある。こっちに来てからはメールでのやり取りが殆どで、時間帯の関係で電話で声を聞くのも月に数回だけ。テレビ電話なるものがあっても、PCに強いとは言えない紗綺には少々ハードルが高かったんだ。

だからこそ、彼女への想いは今にも爆発しそうな位、僕の身体の髪の毛一本一本の先から足のつま先まで、熱く巡る血潮の如く溢れ出している。

この想い、彼女に伝えたい。

今すぐに。

じゃないと、僕はどうにかなってしまいそうだ。

帰国が決まってからというもの、まるで目の前にクリスマスプレゼントをぶら下げられた子供のように、僕は自分を見失いがちになっている。

こんな事ではいけないと思いつつ、でもそれを楽しむ余裕も最近の僕にはある。

全てが充実しているからこその余裕と希望。それは彼女も同じだろう。

会議が終わったその瞬間に僕はタクシーに乗って紗綺に会いに行こう。

そして仕事の事とか、友人の事とか、彼女ととことん語り尽くそう。

彼女の手料理を食べながら、僕たちの将来についても話さなきゃ。

夜は一緒のベッドの中で朝まで愛を語り合おう。

僅か一日の帰省なのに、僕の高鳴る気持ちは一向に止みそうにない。

ああ、楽しいな・・・本当に、楽しい・・・

 

Dear 紗綺」

 

格好良く打ち始めたキーボードの上で手が止まる。

 

武瑠はどうしてるかな・・・・・・まあいっか、今回はあまり時間が無いから、彼と会うのは次回という事で。

 

堪え切れない笑みを周りに悟られないよう、僕は身を屈めて紗綺への「ラブレター」を打ち始めたんだ。

 

 

 

 

「ああっ!・・・あっあっ、あっ、あんっ!・・・いやっ・・・だめっ、ああああっ!あっ!あっ!あっ!ああんっ!・・・・」

 

必死に果てる事を我慢していた昨夜の彼女とは別人のようだった。

全身からは汗が吹き出し、喉の奥から絞り出される嬌声に一切の躊躇は感じられない。バックから犯していても、時折彼女の方から腰を押し付けてくる素振りすらあった。

 

「ああっ・・・・ぐっ・・・イクッ・・・・・イクッ!イクッ!イクッ・・・・あああああっ!」

 

数度目のアクメが彼女を襲う。

しなやかな背中は、背骨が折れそうな程に反り返り、ガクガクと痙攣し出す。

奥まで嵌った俺のペニスがギリギリと絞られ、気を張っていないとそれだけで射精に導かれてしまいそう。

顔をシーツに押し付けたままアクメの波が去るのを待っているその後ろ姿、背骨に沿って首へ向けて流れる玉のような汗、大きく張り出した臀部は痙攣の名残でプルプルと震え、そして俺を咥え込む穴の傍でひくひくと開いたり閉じたりするアナルを目の当たりにして、我慢できる男などこの世にいる筈がない。

指が食い込む程強く紗綺の尻を掴むと、彼女はビクっと腰を震わせた。

そしてペニスが外れそうになるギリギリまで腰を引く。

 

「あ・・・あああああああっ・・・・」

 

首を反らしながら紗綺があげた切なげな声は、そこからペニスが抜かれる事を非難するかのよう。

カリの溝に溜まった真っ白な愛液がシーツに垂れる。

濡れそぼったヴァギナはすっかり俺の事を思い出したように、吸い付き、離そうとしない。

俺は力いっぱい彼女の尻を引き寄せ、同時に腰を一気に奥まで進めた。

パァーンッ!と肌と肌が叩き合う音が部屋に響く。

固く狭い膣道はすっかり柔らかくなり、グネグネと俺に纏わりつこうとする。深々と挿入されたペニスの先は、子宮口を強く押し潰す。

 

「あっ!・・・ひっ・・・あぐっ・・・・・ああっ・・・・ぐっ・・・・」

 

声を出す余裕すら無くなった紗綺の両手は、身体を支える事もできず、シーツの上に投げ出されたまま。高く尻を掲げる為の両脚も、徐々に力を失ってだらしなく開ききろうとしていた。

二人が愛し合う結合部からは、糸を引くような白濁液が溢れ出し、大きなシミとなってベッドを汚す。

激しい呼吸で波打つ彼女の柔らかいお腹を掌で後ろから優しく持ち上げ、上半身を倒して身体を密着させた。紗綺の背中から伝わる心臓の音が俺の鼓動と共鳴する。身も心も一体となるようなこの体位は、恐ろしいまでの興奮状態を俺にもたらし、熱く溶け合うお互いの性器をより一層敏感にした。

俺は繋がったまま、一気に紗綺の身体を回転させた。

寝ていても崩れない豊満な胸、真っ白なお腹は、汗によって艶めかしい艶を纏い、エロスの極みとなって勃起を益々硬くする。
ベットリと絡み合う陰毛の奥に俺のペニスが彼女の桃のような秘部を割って嵌っている様を見つけた時、泣きたくなる程の愛しさが俺の身体に過剰なまでのアドレナリンを巡らせた。
夢遊病に犯されたようなピストン運動は、紗綺の大きな胸を暴れさせ、全身の肌を小刻みに震わせる。

 

「紗綺・・・・あぁぁぁ・・・」

 

昨夜は頑なに逸らしていた彼女の虚ろな眼差しは、今でははっきりと俺を捉えていた。

 

言いたい・・・・今のこの気持ち、紗綺に伝えられたなら、どんなに幸せなんだろう・・・・

 

つい30分ほど前の話。マンションの前でばったりと会ってしまった時の事。

辛そうな表情の中に寂しそうな笑みを浮かべた紗綺の後をふらふらと追いかけ、戸惑いつつも彼女と一緒のエレベーターに乗った。

紗綺は一言も話さず、降りた後もまるでそこに俺がいないかのように部屋のドアを開けて中に入って行ってしまった。

俺はドアノブに手を掛けたけど、そこから先に進めなかった。

恐かったんだ。

今ここを開けたなら、どう転んでも三人にとって幸せな結末になる予感が全くしなかったから。

1分が過ぎ、2分が過ぎ、そして俺は遂にそこから立ち去る決心をした時だった。

中からドアが開いた。

そこには薄暗い玄関に佇む紗綺の姿。

悲しげな彼女の表情にはさっきの笑みなんてない。

悲しくて、辛い表情だけの彼女は、俺の腕を引いた。

よろける様に玄関に入った時、紗綺は俺の首にぶらさがるように抱き付きながら唇を合わせてきたんだ・・・・

もう、どうしようもなかった・・・俺には・・・・・・

 

 

 

 

いつものメール着信音が聞こえた。

何度も何度も、深く深くいかされている時でさえ、その音だけは私の耳に届いていた。愛するフィアンセからのメールを忘れる筈がない。

でも、来客の呼び鈴はもとより、他の一切の音を排除する激しいアクメの最中でも、私の心に直接響くその音を聞きながら、私はまた昂まりつつあるアクメを優先するしか出来ないでいた。

 

だって、身体がいう事を聞かないし・・・・もう、何も考えられないから・・・

ごめん・・・・武瑠を、彼の姿をマンションの外で見た時、もうダメかもって、思っちゃった・・・・・・絶対嫌だったのに・・・嫌だったはずなのに・・・・・

 

「あっ!やだっ・・・ダメっ!・・・凄く気持ちいいっ!武瑠っ・・・あああっ!またっ、私っ・・・・・」

 

私の中で彼のが一層硬く、大きくなったような気がした。

ああ、射精するんだろうな・・・不思議とそう直感した。

そしてやっぱり武瑠は凄まじいまでの腰の動きをした後、一気にそれを引き抜いた。

何度も何度も私を気持ちよくしてくれた彼のペニス。

黒くて、ちょっと信じられない位大きなそれを見た時、私は思わずそこに両手を伸ばし、そして必死になって扱いてしまった。本当に無意識の内に。

こうする事が彼を、男の人を喜ばす事だということも、武瑠との逢瀬で学んだ事。

 

「うう、紗綺・・・・」

 

両手で握るそこはカチンカチンに硬かった。それにすごく太くて長くて、今まで私の中に全部入っていたという事が信じられない大きさ。

ぬるぬるなのは私の所為だと思うと凄く恥ずかしいけれど、彼が気持ちよくなってくれるのに都合が良いから、私は一生懸命それを上下に擦る。左手で根元を扱き、右手で亀頭の段差の所を一生懸命扱く。

 

ああ、どんどん硬くなっていく・・・・

武瑠が目を瞑った・・・・もう少しだよね?・・・・出る、んだよね?・・・・

凄い・・・滅茶苦茶硬くなってる・・・・

あ・・・・ああ、凄い勢いで・・・・ビュッ、ビュッて、射精している

私のお腹が、武瑠ので熱く汚されていく・・・

別に・・・・嫌いじゃない・・・・

だって・・・だって私の身体で、よくなってくれているんだし・・・・

もっと、もっと、出してほしいって、思ってる・・・

あああ、昨日あんなに出したのに、まだ出るの?

凄いね・・・本当に凄い・・・・

あ・・・だめ・・・・今そんなキスされると私・・・・やっぱり、ごめん・・・凄く上手だって思ってしまう・・・・ごめん・・・・本当にごめん・・・・・・有二・・・・・

こんなの、武瑠でしかあり得ないって・・・・ごめんなさい・・・・・

 

夢中になって彼と舌を絡め合った。

お互い喉を鳴らしながら唾液を交換している最中でさえ、彼は私の掌に包まれたペニスをその中で器用にピストンさせていた。

豊富な精液が潤滑油になって、にちゃにちゃって音をさせてて、なんかすごく、いやらしい。

以前教えてもらったように、親指と人差し指で輪っかを作ってペニスの段差の所を擦ってみる。武瑠のが太過ぎて、私の指と指がくっつかない。申し訳ない、と思ってしまう。

でも何とかカリの溝?付近をシコシコと擦ってみると、途端に激しくなるキス。嬉しい。呻いているのは、気持ち良いからだよね?私までおかしな気分になってくるよ?
あ・・・また凄く硬くなってきたみたい・・・

 

・・・ダメ・・・欲しく、なっちゃう・・・・

ダメだよ・・・有二のメール、見なきゃいけないから・・・・

 

「お、お願い!・・・早くっ!武瑠っ!お願い!・・・・・」

 

私の口から出たのは、気持ちとは裏腹のその言葉

いや、違う・・・・身体と気持ちが違う、なんて事はない・・・・・

そんな都合の良い言い訳を言うつもりはない

実際に、私の右手は彼のペニスを自らの入り口に誘導している

そこを貫かれたいと、思っている

そう、別に、ただ単に、一緒に昂まりたいと、思っているだけ・・・・

・・・ごめん・・・有二・・・・大好き、だから・・・・でも、ごめん・・・・

辛くて、私、辛くてどうしようもなかったの・・・・・

今だけは・・・・この人に、縋っていたいから・・・・
・・・きた・・・・・凄く大きくて、怖くて、でも一番いい所まで届いてくれる、武瑠のが・・・

 

「はぁうっ!・・・凄っ!・・・・入って、くる・・・ああっ!武瑠っ!ああっ!凄く気持ちいいっ!・・・」

「紗綺!・・・ああああ!」

 

全く硬度を失っていない彼のペニスが激しく私の中を行き来する。大きな亀頭は中の柔らかい肉をゴリゴリと掻き回し、その勢いのまま奥の奥まで容赦なく突き刺してくる。

昨日の痛みなんかもう忘れてしまった。

今実感できるのは、私を中から破壊してしまいそうな強烈な快感のみ。

犯されている、なんて生優しいものではない。

フィアンセでは得ることの出来なかった圧倒的な性感の昂まりは、かつて武瑠との逢瀬で得られたものと同じ。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ、やだっ!・・・武瑠っ!どうしよう・・・・だめっ!ああっ、もう・・・・またいっちゃう!・・・・いっちゃうっ!」

 

荒々しく乳房を舐っていた彼の両手を奪い、指を絡ませて握り合った。

子宮の奥から爆ぜるアクメの予感が、遠のく意識の奥で彼の名前を叫ばせる。

 

「武瑠っ!きてっ!・・・お願いっ!きてっ!・・・・ああああああっ!・・・・」

「いくぞっ・・・ああ、紗綺っ!・・・・紗綺っ!」

「イクッ!・・・あああっ!イクイクイクッ・・・・っく!・・・・・・」

 

舌を深く絡ませ、互いの手を握り合い、快感でうねる身体を密着させ、一番敏感な部分をズッポリと嵌め合わせたまま、至高の瞬間を迎えた。
突き抜ける鋭利なアクメの快感で、私は意識を失ってしまったようだ・・・

傍らに、無造作に転がる携帯には目もくれずに・・・・・











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