こんにちは。
V系深読みライターの神谷敦彦です。

昨日に続いて本日も宇多田ヒカルさんの曲の感想と解釈を書きます。
ライブモードが続いていますね。
「道」も大好きな曲のひとつです。

アップテンポな曲で、サントリー天然水のCM通り、
ちょっと険しい道でも楽しみながら進んでいけそうな。
心を弾ませてくださる曲です。

■宇多田ヒカルさん「道」
※収録アルバム「Fantôme」




【目次】
(1)傷があることで得られるもの
(2)問うたら答えてくれる「あなた」を感じる
(3)編集後記

(1)傷があることで得られるもの
Aメロで「道」がどんな曲なのか、
すぐに分かります。
一見すると悲しい体験や闇が
意味を帯びてきたり光に見えてきたり。
そんな逆転が起きることを教えてくださいます。

言い方を変えれば意味付けをしてくださるとも言えそうです。
傷ついた、悩んだ経験があるほど、
ひとの心の動きに寄り添うことができるといったような。
傷はないにこしたことはないですが、
無傷な人生は無感動かもしれないですし。

「道」で歌われている
「傷の効用」ともいえるものは、
TAIJIさんも著書の中で仰っていました。
「心の傷」からセンスが生まれるというものです。
■TAIJIさんの「伝説のバンド「X」の生と死―宇宙を翔ける友へ」からの引用
俺は「センス」=「心の傷」なのだと思う。
心に持った傷、傷痕からセンスは
生まれるといっても過言ではない。

傷があれば沁みやすかったり痛みやすかったりするわけですが、
言ってしまえばそれが感受性かもしれません。
傷を見ない振りをしたり、その過去に蓋をすることを
ちょっと見直すきっかけをくださる考え方でもあります。

傷は宇多田ヒカルさんの歌詞からお借りすれば
「魂を彩る」ものですし、
TAIJIさんの言葉をお借りすれば傷はセンスですね。

お説教のように「辛い経験をバネにしろ」は
ただ反発したくなりますが、
歌詞や好きな著者の本の言葉では
すっと受け取れるのが不思議です。

(2)問うたら答えてくれる「あなた」を感じる
でもこの「傷を糧にする」という
ある意味ではとてもポジティブな思考は
「道」の中で生きている主人公も
ひとりで達観して発見したものではないようです。

「自分に問いかける」といえば返事をするのも
自分になるのが当然ですが、
「道」の中ではそうではないですね。
返してくれる「あなた」がいます。

この返事をしてくれる「あなた」が自分の中にいるひとは、
とてもしなやかな強さを持っていそうです。

おそらく、ひとは独りで生きるにはあまりにも弱くて。
でも自分を支える誰かの存在を自覚している時は
自分ひとりの力の倍かの力も出せるような。
「道」は支えてくれる誰かを探すように、前を向かせてくれます。

もしかしたら、この「あなた」はひとによっている、いないがあるのではなく、
自分がその存在を感じられているか、感じられていないかの問題でしょうか。
主導権は自分にあるような。

「あなた」は迷ったときの問いかけに、
返事をしてくれることの他にもう一つ特徴があるようです。
「道」の中では「いつかまた会える存在」として
歌われているように思います。

ということは、この「あなた」は近くにいる誰かである必要もなければ、
もしかしたらいまこの世にいるひとである必要もないのかもしれません。
自分が「側にいる」と、根拠を超えて感じられるのであれば、
「あなた」はいつも問いに答えてくれるかもしれません。

でも、この世にもういないのに「
いつかまた会える存在」というのは、どういったことなのか。
これはおそらく、私たち人間が(主語が大きい!)まだ不死を克服していないとすると、
みんな最期を向かえることになります。
その最期にはもう一度出会うという意味でしょうか。

ついつい「人間、孤独な道を・・・」なんて、
大きく悲観的に考えてしまうのですが、
「道」は英詩で「独りの道だけど独りではない」と
繰り返し高らかに歌い上げてくださいます。

歌詞通り、目に見えないものの存在に
時には想いを寄せてみても良いかもしれません。
それは霊的な存在を信じるという意味ではなく、
ひとの善意であったり、いまはもういないひととの繋がりであったり。

(3)編集後記
「道」は歌っている主語は自分でありながら、
確かに他者の存在に思いを寄せているものでした。
自分ではない誰かのことを考えさせてくださる曲でもありますね。

【宇多田ヒカルさんの曲の深読み記事】
(1)【宇多田ヒカルさんの「花束を君に」の感想と解釈】涙と笑顔を誘う旅立ちの曲
(2)【宇多田ヒカルさん「真夏の通り雨」の感想と解釈】悲しい課題の背負い方を教えてくれる曲
(3)【宇多田ヒカルさんの「残り香」の感想と解釈】「好き」も「愛してる」も言わない香りのラブソング:1686話目

【V系曲の深読み関連の記事】
  
(1)【トラウマがある、自分嫌いの人の肯定の仕方】DIR EN GREY「Followers」、the GazettE「DISTRESS AND COMA」、ゴールデンボンバー「101回目の呪い」の共通点:1641話目
(2)【キズの「ステロイド」の感想と解釈】副作用が起きる愛と起きない愛:1620話目
(3)【ザアザアの「キオク」の感想と解釈】忘れられるより忘れる痛みを歌ったミディアムバラード:1613話目
(4)【己龍の「野箆坊」の感想と解釈】「のっぺらぼうの自分」の息の根を止めてくれる曲:1670話目
(5)【己龍の「黒闇ニ惑ウ絵空事」の感想と解釈】生きたくなる遺書?九条武政さんの死生観?:1671話目
(6)【DADAROMAの「トゥルリラ」の感想と解釈】つぶやけば自由になるおまじない:1672話目
(7)【Toshlさんの「365日の紙飛行機」カバーの感想と解釈】母性的な、無条件の愛の応援歌:1684話目
(8)【Toshlさんの「手紙 ~拝啓 十五の君へ」カバーの感想と解釈】幼い自分が一番の幸せの審判:1685話目

========== 
【V系バンドマンの方へのお知らせ】
「剝き出しインタビュー」をはじめます。
詳細はこちらからご覧ください。
========== 

==========   
V系深読みライター神谷敦彦のプロフィール、執筆記事一覧、募集企画は      
こちらのページをご覧ください。   

「日刊ヴィジュアル系の深読み話」をメルマガで購読する場合は   
こちらからメールアドレスを入力して送信してください。   
毎日18時頃にこちらのブログ記事の読みどころをまとめた   
要約版を発行しています。   

お問い合わせ・ご依頼・記事テーマのリクエスト先は下記となります。   
・メール:record8memoryXgmail.com  
※Xを@に変換してお送りください。    
・ twitter:@atsuhiko_kamiya 
・LINE@:神谷敦彦【日刊ヴィジュアル系の深読み話】  
==========