2010年06月06日
確定事項
別になんてことのない、放課後だった。
なんてことのない放課後に、彼女はいた。
ここ最近の風景の一部と化した彼女が。
なんてことのない放課後に、彼女はいた。
ここ最近の風景の一部と化した彼女が。
「面白いか?」
いつもと違ったのは、そこに佐川潤―つまり俺がいるということだった。
「面白いかつまらないかで言ったら…どっちでもない。」
話しかけた俺を見ることもなく答えた彼女―五十鈴奏はここ数週間、放課後ただ何もせず、2階に位置する自分たちの教室のベランダの入り口に座り込んでグラウンド、空、もしくは学校敷地の向こうに広がる住宅街を眺めていた。
「面白くもないなら、なんで見てんだよ。」
「何も見てないよ。」
訂正。
五十鈴奏は放課後ただ何もせず、何も眺めていなかった。
「好きな人のこと考えてるの。」
予想外のことにドキリとした。
言った本人がするならまだしも、言われた側の俺がドキリとする理由はちゃんとある。俺は彼女のことが好きだった。それが今日、いつもいないはずの俺が放課後にいる理由でもある。ただ彼女と話したくて、彼女が一人になるこの機会に入りこんだのだ。だが、彼女の口から出た"好きな人"の言葉は、俺にとってダメージにしかなっていなかった。
「そういうこと、俺に言っていいの?」
「うんとね、佐川くんだから言った。」
むしろ言わないで欲しかったなど、後になってはどうしようもない。というか意味がわからない。
俺だから言った?流れからすると、俺の友達を好きで情報を聞きたいといったところだろうか。誰だろうかと思案してみるが、わかるはずもないので考えを止めることにした。かわりに「なんで?」と聞いてみることにしたが、聞く前に彼女が口を開いてしまった。だがこれも、俺にとっては聞きたくない情報だった。
「ねぇ知ってる?一か月ぐらい前からかな。クラスの子…って言っても一部だけど、佐川くんの好きな人が誰か、って噂してるの。」
「へー…って、はぁ!?えっ、じゃあ、五十鈴さんも知ってるの!?」
先程も言ったように、俺はすぐそばにいる女子、五十鈴奏が好きだ。もしその噂が正確なものであったなら、今のこの状況は恥ずかしいどころじゃないぞ。俺がこの放課後に話しかけただろう理由を彼女は理解していることになるじゃないか。うわ、この後俺はどうすればいい!?
「それがね、一人じゃないんだ、噂に上がってる子。だから、正確には知らない。」
「…。」
「でね?その内に…あたしも含まれてるんだ。」
「……。」
「だから、その…。」
セーフ?アウト?これはどっちだ?複数いる時点でギリギリセーフか?彼女が含まれてる時点でギリギリアウトか?
まさかの展開に頭がついていかなくなっていた俺は彼女に何を言えばいいかわからなくなっていた。というか言葉が出ない…と思っていた。
「気になるなら、教えるよ。」
自分の心とは反対に落ち着きいた声で発せられた言葉に身体がビクついた。ビクついたのは俺じゃなく、五十鈴さんだったが。
「あ、明日!明日聞く!!」
今までの会話で初めてこっちを向いて喋る五十鈴さん。その顔は何故か耳まで赤くなっていた。赤くなりたいのはこっちなんだが。
それだけ言ったかと思うと、急ぐように立ち上がり帰ろうとしていた。
「五十鈴さ「こっ、心の準備してくる!佐川くんの好きな人があたしでも、他の子でもいいように!」
それだけ言うと五十鈴さんは走って教室を出て行った。
残された俺は彼女の言葉の意味がわからず、余計にわけがわからなくなっていた。好きな奴に告白したりだとかフられるかもしれない、だとかでの心の準備ならわかる。むしろ心の準備が欲しいの自分の方ではないかと思った。
ただ、わけがわからなくなっていてもこれだけはわかる。俺は明日、好きな子に告白をしなくてはならないということ。
とりあえず外を眺めながら、明日どう告白しようか考えることにしたのだった。
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いつもと違ったのは、そこに佐川潤―つまり俺がいるということだった。
「面白いかつまらないかで言ったら…どっちでもない。」
話しかけた俺を見ることもなく答えた彼女―五十鈴奏はここ数週間、放課後ただ何もせず、2階に位置する自分たちの教室のベランダの入り口に座り込んでグラウンド、空、もしくは学校敷地の向こうに広がる住宅街を眺めていた。
「面白くもないなら、なんで見てんだよ。」
「何も見てないよ。」
訂正。
五十鈴奏は放課後ただ何もせず、何も眺めていなかった。
「好きな人のこと考えてるの。」
予想外のことにドキリとした。
言った本人がするならまだしも、言われた側の俺がドキリとする理由はちゃんとある。俺は彼女のことが好きだった。それが今日、いつもいないはずの俺が放課後にいる理由でもある。ただ彼女と話したくて、彼女が一人になるこの機会に入りこんだのだ。だが、彼女の口から出た"好きな人"の言葉は、俺にとってダメージにしかなっていなかった。
「そういうこと、俺に言っていいの?」
「うんとね、佐川くんだから言った。」
むしろ言わないで欲しかったなど、後になってはどうしようもない。というか意味がわからない。
俺だから言った?流れからすると、俺の友達を好きで情報を聞きたいといったところだろうか。誰だろうかと思案してみるが、わかるはずもないので考えを止めることにした。かわりに「なんで?」と聞いてみることにしたが、聞く前に彼女が口を開いてしまった。だがこれも、俺にとっては聞きたくない情報だった。
「ねぇ知ってる?一か月ぐらい前からかな。クラスの子…って言っても一部だけど、佐川くんの好きな人が誰か、って噂してるの。」
「へー…って、はぁ!?えっ、じゃあ、五十鈴さんも知ってるの!?」
先程も言ったように、俺はすぐそばにいる女子、五十鈴奏が好きだ。もしその噂が正確なものであったなら、今のこの状況は恥ずかしいどころじゃないぞ。俺がこの放課後に話しかけただろう理由を彼女は理解していることになるじゃないか。うわ、この後俺はどうすればいい!?
「それがね、一人じゃないんだ、噂に上がってる子。だから、正確には知らない。」
「…。」
「でね?その内に…あたしも含まれてるんだ。」
「……。」
「だから、その…。」
セーフ?アウト?これはどっちだ?複数いる時点でギリギリセーフか?彼女が含まれてる時点でギリギリアウトか?
まさかの展開に頭がついていかなくなっていた俺は彼女に何を言えばいいかわからなくなっていた。というか言葉が出ない…と思っていた。
「気になるなら、教えるよ。」
自分の心とは反対に落ち着きいた声で発せられた言葉に身体がビクついた。ビクついたのは俺じゃなく、五十鈴さんだったが。
「あ、明日!明日聞く!!」
今までの会話で初めてこっちを向いて喋る五十鈴さん。その顔は何故か耳まで赤くなっていた。赤くなりたいのはこっちなんだが。
それだけ言ったかと思うと、急ぐように立ち上がり帰ろうとしていた。
「五十鈴さ「こっ、心の準備してくる!佐川くんの好きな人があたしでも、他の子でもいいように!」
それだけ言うと五十鈴さんは走って教室を出て行った。
残された俺は彼女の言葉の意味がわからず、余計にわけがわからなくなっていた。好きな奴に告白したりだとかフられるかもしれない、だとかでの心の準備ならわかる。むしろ心の準備が欲しいの自分の方ではないかと思った。
ただ、わけがわからなくなっていてもこれだけはわかる。俺は明日、好きな子に告白をしなくてはならないということ。
とりあえず外を眺めながら、明日どう告白しようか考えることにしたのだった。
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