2010年12月16日

ゆめうつゝ 1

0:はじまりの時

目の前が真っ赤な液体で染まっていく。

真っ赤というより、赤黒い。

どんどん広がるそれを目の前に、私は立ち尽くしていた。

視界には、赤い液体を広がらせている人、それを遠巻きにしてざわめく人、ほんの少しだけボンネットがへこんでいる乗用車、そこから降りてくる人。

あまりにも唐突に訪れた出来事は、私の脳内では一瞬で理解することが出来なかった。

今自分が渡ろうとしていた横断歩道は青だった。

青だった歩道を進んでいた人が、横から走ってきた車にぶつかった。

車は急いでいたのか、交差点の曲がり角にも関わらず相当なスピードだった。

ぶつけられた人は、派手で鈍い音を出して撥ねられた。

交通事故だ。

理解した時、私は何かを叫んでいた。

何かを叫んで、目の前が真っ白で真っ暗になった。

red2moment at 20:45│Comments(0) 長編 | ゆめうつゝ

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