Mr.chicken

邦楽レビューの記事を中心に投稿しています。中には取り上げた作品を題材にした妄想小説レビューもありますが、卑猥な描写もあるので閲覧注意です。

Mr.Children『重力と呼吸』 トイズファクトリー 2018年10月3日発売
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[Mr.Children『重力と呼吸』CM]
[SPOT-A]


[SPOT-B]

[SPOT-C]


【収録曲】
①Your Song ★★★★
②海にて、心は裸になりたがる ★★★★
③SINGLES ★★★★★+1
④here comes my love ★★★★★
⑤箱庭 ★★★★
⑥addition ★★★★
⑦day by day(愛犬クルの物語) ★★★★★
⑧秋がくれた切符 ★★★★
⑨himawari ★★★★★
⑩皮膚呼吸 ★★★★★
総評:★★★★

 本作はMr.Childrenの19枚目(事実上17枚目)のオリジナルアルバムである。前作『REFLECTION』から3年4ヶ月ぶりとMr.Children(以下ミスチル)のアルバム発売の間隔としては過去最長となった。なお、アルバムタイトルが漢字・平仮名表記になったのは1996年の『深海』以来22年ぶり。
 本作の詳細に関しては発売13日前の2018年9月20日0時まで解禁されなかった。
[解禁前の表示]
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 詳細解禁の3日前には公式HPに『10691059』という暗号(上の画像(ネットからの拾い画像)を参照)が表示され、詳細解禁までのカウントダウンが行われていたが、Twitterの我がTLではその暗号の意味について様々な憶測が飛び交っていた。例えば「10月6日からツアーが始まりそれは全59公演行われる」であったり「10曲69分、10曲59枚の2枚組」など様々飛び交っていたが、いずれも不正解だった。私含め、誰一人として『10691059』がアルバムタイトル『重力と呼吸』を意味しているとは予想できなかった(というか予想不可能)。
 本作は全10曲、収録曲48分とかなりコンパクトな内容となっている。前作発売後に発表された新曲のうち「ヒカリノアトリエ」「忙しい僕ら」「お伽話」「こころ」は未収録となり、コンセプトアルバムとなっている。そして、全体的に王道から脱したかつてないほどの”スルメアルバム”となっている。・・・というのも初めて本作を聴いた際は内心「ん?」と感じ、イマイチピンと来なかった。が、しかし聴けば聴くほど、本作の魅力を感じるようになり、発売から1週間足らずで大好きな作品となった。

①Your Song
[Mr.Children「Your Song(MV)」]
 
[Mr.Children「Your Song(Original Story)」]

 2018年9月20日のアルバム詳細解禁と同時にMV(Short ver.)が解禁された。ネット上でも同じ意見の書き込みがあったが、歌い出しやアウトロ部分の桜井和寿のシャウトは何だかONE OK ROCKのTakaを彷彿とさせる印象を受けた。調べてみると2017年4月23日、ミスチルとワンオクは対バンをしており、その後、桜井、鈴木英哉、Takaが3人で食事をした際の写真が公開されている。
[食事会の際のスリーショット]
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 ズラズラと述べてしまったが、このようにMr.ChildrenとONE OK ROCKの交流もあり、本当に同バンドから影響を受けているのかもしれない。そして楽曲自体はそこまでキャッチ―ではなく、バンドサウンド主体にシンセサイザーが加わっている印象だ。アルバム全体と同様、初めて聴いた際のインパクトはそこまでなかったが、聴けば聴くほど味が出てきて、気づいたらハマっていた。この曲のタイトルは同時発売の全曲詩集のタイトルにも起用されている。
 MVは東京日比谷のビルの屋上で撮影されたと言われているが、桜井は終始ハンドマイクではなく、スタンドマイクで歌っており、2002年の『IT'S A WONDERFUL WORLD』期以前の彼を彷彿とさせる。
 歌詞に着目するとタイトルの如く、大切な人に宛てた内容になっている。「君と僕が重ねてきたたくさんの日々は今となればこの命よりも失い難い宝物」という歌詞は、大切な人と別れた直後のリスナーの方が聴くと本当に涙が溢れそうになると思う。
 そして「時に窮屈そうに囚われている考えごとになんてことのない一言でこの心を自由にしてしまう」という歌詞も王道から脱した本作の雰囲気にもリンクしている気がする。
 アルバム発売のインタビューにて桜井は今回はあえて歌詞には力を入れていないという主旨の発言はしていたが、やはりそれでも印象的な歌詞はあり48歳となった今も天才ポエマーであると思う。

②海にて、心は裸になりたがる

 バンドサウンド主体のポップロックナンバー。”ポップロックナンバー”とは記載したが、「youthful days」「箒星」「擬態」「fantasy」ほどの王道さは見られない。ただ、「海にて、心は裸になりたがる」というタイトルの通り、曲全体からは開放感や爽やかさが漂っていて聴いていて心地良い。ちなみに1回ドライブしながら聴いてみたが、かなりマッチしていて最高であった。さらにはラスサビでは転調しており本当にリスナーの興奮はこの曲の中ではMAXに到達すると思う。
 歌詞に目を向けると教訓的な内容のフレーズが目立っている。「重箱の隅をつつく人、その揚げ足をとろうとしてる人、画面の表層に軽く触れて似たような毒を吐く」は何だかTwitterの”炎上”騒動を指している歌詞に感じるのは私だけではないはず。
 そして一際印象的だったのが、「対照的と思っていても実はあちこちが似ているよ。今心は裸になりりたがっているよ」「嫌なやつだと考えていても実はちょっぴり気になっているよ。今心は裸になりたがっているよ」という部分。「あの人と自分は何だか合わない」と私自身生活を送っていると思うことがあるのだが、そんな気持ちに対する教訓的なメッセージのように感じられる。

③SINGLES
[Mr.Children「SINGLES(MV)」]


 テレビ朝日系ドラマ『ハゲタカ』主題歌に起用されたが、ドラマ放送時では最後までフル解禁や先行DL配信はされず、アルバム発売までお預け状態となった。ただ今思うとそれで良かったと思っている。アルバム発売後、初めてフルで聴いて本当に感動した。往年のミスチルらしさ溢れる王道ポップと実験的サウンドが融合している。1番は前作『REFLECITON』でいうところの「fantasy」のようなミスチルお得意の王道ポップスが展開されているが、2番のサビでは一部ボーカルの加工が為されている。・・・というのも桜井の歌声にさらに桜井の歌声が被せられている。ここはネット上で賛否両論となっているが、斬新で私は好きだ。そして2番のサビ後の間奏ではドラムやベース、キーボードが目立っていて、迫力満点。何だか東京ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンというアトラクションを楽しんでいるような気分に近い(例えがわかりにくい)。Cメロ部分では桜井のシャウトが響き渡っていて、これもまた中毒性があると思う。
 この曲は恋人と別れた主人公の心情が描かれている。タイトルの「SINGLES」は孤独となっている主人公とその相手を指したものだろうか。
 歌い出しは回想シーンから始まっている。「君は嬉しそうに、しばらく空を見ていた。東京タワーの向こうに虹が架かって。で、そのあと僕の頬にキスした」とここだけ聴くと本当にロマンチック。
 「僕は意外といろんなことを覚えてて戻れないことよくわかってたって何処かに面影を探してしまう」と主人公はなかなか相手に対する未練をかなり引きずっている様子。
 「悲しいのは今だけ。何度もそう言い聞かせ、いつもと同じ感じの日常を過ごしている」「どんな音楽も痛快と話題の映画も君の笑顔には敵わないってわかった。ねぇ君はまだあの虹を覚えてる?」というフレーズはリスナーの私までも胸が締め付けられてしまう。
 ラスサビでは少しでも主人公が前向きに考えようとしているのが窺える。「楽しいのは今だけ。自分にそう言い聞かせ、少し冷めた感じで生きる知恵もついたよ」と主人公は言っているが、それでも何だか切なくてたまらなくなる。片想いだった方も含め、失恋したリスナーの方はこの曲を聴けば感傷に浸れるんじゃないかと思われる。私自身、本作『重力と呼吸』で最もお気に入りの楽曲かもしれない。

④here comes my love
[Mr.Children『here comes my love』シングルジャケット]
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[Mr.Children「here comes my love(Music Short Film)」]


  2018年1月19日にミスチル7作目の配信限定シングルとしてリリースされた。この曲はフジテレビ系ドラマ『隣の家族は青く見える』主題歌として起用され、同ドラマの初回放送の翌日に配信リリースとなった。私自身も購入したが、本当にリピートが止まらなかったし、それから9ヶ月近く経過した現在も好きな1曲である。
 本作はロックバラードナンバー。イントロ~1番冒頭まではピアノ中心のアレンジとなっているが、その後、バンドサウンドも目立ち盛り上がっている。2番になるとエレキギターの音色もさらに目立ち、Cメロ後の間奏部分ではギターソロの部分も存在する。小林武史のピアノアレンジが目立っていた”コバチル”期とは違う魅力が感じられる(”コバチル”期も好きですが)。
 そして桜井のボーカルも圧巻。高音も綺麗に出ていて、本当に心地良すぎる。明らかに2012年の『[(an imitation)blood orange]』の頃より声量が増しているし声も透き通っている。
 この曲は主人公と相手の運命的な出逢いがテーマになっている気がする。最も印象に残った歌詞はCメロの「あって当然と思ってたことも実は奇跡で数え切れない偶然が重なって今の君と僕がいる」という部分。・・・何だかハッとさせられる。恋愛に限らず、今自分自身が何気なく過ごしているこの”ありふれた日常”も奇跡の連続によって神様から授かった恩恵なのかもしれない。そう思うと1日、1日を大切にしたいと思う。この曲はそう思わせる意味も込めて書かれた1曲なのかもしれない。

⑤箱庭 
 ブラスアレンジが利いた1曲で、前作『REFLECTION』収録の「You make me happy」をさらにメロディを明るくしたようなイメージだろうか。そしてサビのメロディの一部が「ヒカリノアトリエ」に近似しているように感じる。何度聴き直してもどことなく似ている気がしてならない。そして、この曲のサウンドは旅行をしながら聴くと絶対ピッタリだと思う。今度、機会があれば是非試してみたいものだ。
 しかし、明るいメロディとは裏腹に歌詞はそこまで明るくない。恐らく失恋ソングだろう。序盤から「ヒリヒリと流れる傷口から染み出る赤い血の色の悲しみが胸にこぼれる」「ジリジリ寂しさは現実味帯びてくる。気づかぬふりはできない。でも認めたくない」とインパクト溢れるフレーズから始まっていて圧倒される。
 「誰のための愛じゃなく、誰のための恋じゃなく不器用なままに僕はただ君を大好きでした」という部分を聴いていると本当に涙が頬を伝いそうになる。さらに終盤では「誰のための愛じゃなく、誰のための恋じゃなく、乱暴なまでに僕はまだ君を好きで残酷なまでに温かな思い出に生きてる。箱庭に生きてる」という歌詞となっており本当に生々しい表現だ。主人公のようになかなか相手の事は忘れられないものだと思う。

⑥addiction
  シンセサイザーによるイントロから始まるロックナンバー。メロディも終始シリアスで、中毒性をはらんでいる。桜井の歌い方も鬼気迫るものを感じる。サビでは「more more more!」というフレーズが多く、印象に強く残る。ラスサビの「今日は大人しく出来ても」の「出来ても」の歌い方が1~2番のサビの歌い回しと異なっていて、この部分を聴く度にドキッとしてしまう。
 歌詞もかなり意味深。インターネット上でもかなり言われているが、薬物中毒者の曲のように感じてしまう。「どんなに言い聞かせても変わらぬものがあるよ。欲しくてたまらないよmore more more!」「上級者は誰にも感づかれぬように上手いことやってるらしい。あちら側の自分とここで生きる自分を冷静にコントロールして」「今日は我慢できてもまた手を出してしまうだろう。決して満足なんかできないよ more more more!」はもう薬物中毒者の心の叫びにしか思えない。
 仮にこの曲が薬物中毒者の心の叫びがテーマだとすれば、本作『重力と呼吸』に収録した意図が気になるところだ。あくまでも推測に過ぎないが、人間の性を描いているので本作のコンセプトにも当てはまっていると判断され収録に至ったのかもしれない。
 それにしてもこの曲も控えめに言って本当に格好良く聴けば聴くほど虜になってしまいそうになる。

⑦day by day(愛犬クルの物語)

 タイトルの一部の「愛犬クルの物語」というキーワードは本当にぶっ飛んでいる。2018年9月20日にアルバム収録曲のタイトルが発表された際はあまりに遊び心の利いていたからか、「JEN(鈴木英哉)がボーカルを務めてるんじゃない?」とインターネット上で議論を巻き起こしていた。・・・しかし、実際にフタを開けてみると桜井がボーカルを担当している良質ポップ。サビ以外のメロディもとにかくキャッチ―で聴き心地が抜群。アルバムは1周目ではなかなかそこまで良さがわからなかったが、この曲は1周目から気に入った。本作『重力と呼吸』発売まで全く解禁されていなかった新曲群の中では最初にハマった曲だと思う。
 終始バンドサウンド主体だが、可愛らしい要素もある。某雑誌の特集ページには、この曲について「最高にチャーミングなロックンロール」と述べられているが、まさにその通りである。この曲のサウンドを聴くと本当に疲れも吹っ飛んでしまいそうだ。特にサビの「So day by day」の部分は気持ちいくらいに高音が出ているのがたまらない。
 この曲はその名の通り、主人公の飼い犬”クル”について描いた曲で、歌詞カードを読むだけでもクルが可愛いのが伝わってきて自然に顔がほころびそうになる。「どんな時だって嬉しそうにその尻尾を振る」「扉開く度、駆け寄り舐めている」という部分からも人懐っこい性格なのが伝わる。
 クルは主人公と妻の間になかなか子供が生まれず、その代わりとして飼ったようだ。夫婦はクルと共に幸せな日々を送っていたようだ。ただ、歌詞中の「綺麗だったあの女性(ひと)がいなくなってからも」というフレーズがなかなか意味深だ。何となくだが主人公の妻は亡くなってしまったと思われる。「今もソファに残っているあの柔らかい膝の上の温もり。夢の中思い出すように深く眠っている」とクルの様子を描いた歌詞が本当に切なく、こちらまで感情移入してしまいそうになる。
 「箱庭」と言い、この「day by day(愛犬クルの物語)」と言い、ポップなメロディに切ない歌詞を乗せるのは桜井の職人芸とも言えよう。

⑧秋がくれた切符

 本作『重力と呼吸』収録曲で最もしっとりとしたバラードナンバー。アルバムの流れにおいて「箸休め」的ポジションにメロディはタイトル通り秋のイメージで、10~11月の夕方にこの曲を聴きながら散歩をすると本当に幸せな気分になると思う。
 曲中ではストリングスも目立っていて、この音色を聴くと秋のひんやりとした空気を連想してしまう。本当に風情を感じる。
 この曲は恋人同士を描いた曲。歌い出しの「風の匂いもいつしか秋のものになってた。カーディガン着た君の背中見てそう思う」という部分も本当に微笑ましくなる。
 話は脱線するが、女の子のカーディガンを羽織った姿は控えめに言って大好きである。秋冬のシンボルと言っても過言ではない。本記事を執筆した時季からは女の子のカーディガン姿をどんどん見ることが出来るので目に焼き付けておきたい。
 さて、カーディガンの話はこのぐらいにしておく。サビの歌詞では「神様が僕らにくれた何かの切符みたいだ」という歌詞が何度かあるが、これは何の切符なんだろうか。歌詞中でははっきりと言われてはいないが、「秋の空気は恋人同士の関係を発展に導いてくれる」という意味だと私は勝手に解釈している。・・・というのも秋の空気を嗅ぐと何故か恋がしたい衝動に駆られることがある。つまりこの「切符」はそれに関連していると想像している。

⑨himawari
[Mr.Children『himawari』シングルジャケット]
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[Mr.Children「himawari(MV)」]


[Mr.Children「himawari(Live ver.)」]

 2017年7月26日にミスチル37枚目のシングルとしてリリースされた。ちなみに映画『君の膵臓を食べたい』主題歌として書き下ろされた1曲である。またタイトルに表記はされていないが、アルバム制作にあたり再録している。アルバム版の方がバンドサウンドが強くなっているが、桜井の歌い方はシングル版より優しくなっている印象。
 この曲はロックバラードナンバーでシングル発売時は「2010年代ミスチルを代表する曲になるんじゃないか」などとインターネット上で大絶賛されていた。バンドサウンドとストリングスの調和、切なさとキャッチ―さが両立したメロディが大好評だった。次に述べることはアルバム版、シングル版に共通することだが、Cメロ~ラスサビの盛り上がり方は王道中の王道で、本当に秀逸。Cメロの「邪にただ生きてる」の「る」の力強いロングトーンからの重厚なギターソロ。その後の「おおおだから」というラスサビの入り方は完璧。そして、ラスサビの「嵐が去ったあとの陽だまり」の「陽だまり」の部分の盛り上がり方、そして最後の「そんな君を僕はずっと」の「ずっと」の部分のロングトーンも初めて聴いた際は素晴らしすぎて突沸してしまった。
 この曲は恋人を亡くした主人公の心情が描かれていて、書き下ろし曲ともあり映画『君の膵臓を食べたい』の内容にも沿っている。
 私が一番ドキッとした歌詞はCメロ全体。「諦めること。妥協すること。誰かに合わせて生きること。考えてる風でいて実はそんなに深く考えていやしないこと。思いを飲み込む美学と自分を言いくるめて実際は面倒臭いことから逃げるようにして邪にただ生きている」の部分はほとんど私自身ではないか(知らんがな)。いや、私に限らず、この部分が心に突き刺さったリスナーの方も多いのではないか。・・・というか多くの日本人に当てはまりそうな気がする。このような桜井節は大好物である。本当にサウンド、歌詞両面で貫禄のある大名曲だと思う。

⑩皮膚呼吸

 2017年にNTTドコモ『25周年キャンペーン』CMソングとして起用され「未発表曲DEMO」と公開された楽曲の完成形。当然と言えば当然だが「未発表曲DEMO」ほど淡泊ではなく程よく味付けがなされている印象(ただ、アレンジはバンドサウンド主体)。
[NTTドコモ『25周年キャンペーン』]
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 この「皮膚呼吸」は本作『重力と呼吸』店着日(2017年10月2日)からネット上では絶賛の嵐だったが、私自身はこの日やその翌日の時点ではその良さが正直判らなかった。しかしフライングゲット(以下フラゲ)からの日数が経過し聴けば聴くほど、自分の中での印象は鰻上りとなり、フラゲから1週間弱で大好きな1曲となった。ネット上でも同様のコメントがされていたが、サビの盛り上がり方はアルバムと同年発表のBank Band with Salyuの楽曲「MESSAGE‐メッセージ‐」に似ている気がする。
[Bank Band with Salyu「MESSAGE-メッセージ‐」]

 皆さんもご存知の通り、タイトルの一部がアルバムタイトルと重複している。もうこの時点でアルバムのテーマを凝縮した1曲と想像してしまう。
 歌詞は2018年現在の桜井の心境が吐露されている。歌い出しでは「と、ある日こめかみの奥から声がして”それで満足ですか?”って尋ねてきた」という歌詞があるが、それに対して「このまま変わっちまう事など怖がらずにまだ見ていたいのに…」と綴っている。ミスチルのアルバムカラーはそれぞれ異なっている。2010年代だけ切り取ってみても『SENSE』『[(an imitation)blood orange]』『REFLECTION』、そして本作『重力と呼吸』はそれぞれ雰囲気がバラバラである。これは「皮膚呼吸」の上記の歌詞のようにミスチルは”変化を恐れないバンド”だからなのかもしれない。ミスチルはデビューから25周年を過ぎても安定を求めず、常に冒険している。この曲を聴くと『重力と呼吸』は収録曲数こそは少ないが、歌詞の内容に着目すると変化を恐れないミスチルの渾身の意欲作というのがヒシヒシと伝わってくるし、今後の活動も本当に楽しみになる。

◯まとめ
 記事冒頭では触れなかったがアルバムタイトル『重力と呼吸』は短縮すると『重吸』。本作は19枚目であることから、その省略形『重吸』と合致する。これが意図的なものか偶然なのかは定かではない。ちなみに9枚目のアルバム『Q』というタイトルも特に意味はないらしいが、今回はどうなのか地味に気になってしまう。
 本作は10曲と曲数や収録時間が少ない分、前作『REFLECTION』よりも気軽にリピートすることが出来る。そして、全体的にあっさりとしたアレンジなので最初のインパクトこそは少ないが、アクが少なく聴きやすい作品だと思う。次のアルバムも今から楽しみである。
 さて、今回の記事はここまでとする。ちなみに本作の詳細が解禁される前に予想記事も書いたが、結果的に大外れとなった。駄文ですが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。見出し画像はAmazonのサイトより引用いたしました。

2000年の所有オリジナルアルバム ※日付は発売日
2月16日:小松未歩『小松未歩3rd~everywhere~』★★★★
2月23日:Hysteric Blue『WALLABY』★★★★★
3月1日:aiko『桜の木の下』★★★★★
3月8日:ポルノグラフィティ『ロマンチスト・エゴイスト』★★★★
3月15日:Every Little Thing『eterinity』★★★★
3月25日:BUMP OF CHICKEN『THE LIVING DEAD』★★★★
4月19日:小田和正『個人主義』★★★★
6月28日:倉木麻衣『delicious way』★★★★★
7月26日:スピッツ『ハヤブサ』★★★★
8月30日:L'Arc〜en〜Ciel『REAL』★★★★
9月27日:Mr.Children『Q』★★★★★
11月1日:ゆず『トビラ』★★★★
12月6日:B'z『ELEVEN』★★★★

 
 今回の名盤特集は2000年。この年、90年代活躍したアーティストの解散(WANDS、サニーデイ・サービス、恋愛信号、センチメンタルバス、Favorite Blueなど)、活動休止(LUNA SEA、ポケットビスケッツ)が相次いだ。そこまでは至らなくとも解散危機や、キャッチーさからかけ離れた作品を発売したアーティスト(Mr.Children、スピッツ、B'z、ゆず、L'Arc〜en〜Cielなど)も多かった。
 その一方、aiko、宇多田ヒカル、椎名林檎、倉木麻衣、BUMP OF CHICKEN、ポルノグラフィティなど当時の若手アーティストも大健闘していた。
 そしてよくネット上で話題になるのがこの年の7月19日。アルバムではないがサザンオールスターズ『HOTEL PACIFIC』、L'Arc〜en〜Ciel『STAY AWAY』、中島みゆき『地上の星/ヘッドライト・テールライト』、GLAY『MERMAID』と豪華アーティストがシングルを同時発売している。同週7月21日放送のテレビ朝日『MUSIC STATION』ではサザンオールスターズ、L'Arc〜en〜Ciel、GLAYが共演していたらしいが今思うと本当に豪華すぎる組合せだと思う。

小松未歩『小松未歩3rd~everywhere~』
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 タイトルの如く、小松未歩の3枚目のオリジナルアルバム。1990年代の”ビーイングサウンド”と2000年代の”GIZAサウンド”の過渡期にあたる作品。小松未歩は世間一般では『名探偵コナン』のイメージが強いが、本作には同アニメのタイアップ曲は1曲も収録されていない。しかし、完成度は高いのでコナンファンの方にも是非聴いて頂きたい。
 アルバム全体の流れも申し分ないのだが、前半は「As」~「風がそよぐ場所」、後半は「No time to fall」~「Holding, Holding on」の流れが本当にお気に入り。
 曲単位だと「BEAUTIFUL LIFE」「風がそよぐ場所」「No time to fall」「Holding, Holding on」を猛プッシュしたい。

Hysteric Blue『WALLABY』

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 Hysteric Blueの2枚目のオリジナルアルバム。”ポップロックの神髄”とも言える1枚。収録曲のメロディはとにかく王道。このグループで最も知名度の高い「春~spring」が収録されている前作『baby blue』よりも好きなアルバムで先日久々に聴いたら改めて名盤っぷりに震えてしまった。
 冒頭の「ソンナコトイエナイ」はボーカルTamaの台詞が録音されたもの。本当に可愛すぎてキレてしまった。その他にも「直感パラダイス」「ふたりぼっち」「Dear」など名曲打率が高く、Twitterの私のアカウント(@REFLECITONsaiko)のMy名盤にも入れさせて頂いた。

aiko『桜の木の下』
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 aikoのメジャー2枚目のオリジナルアルバム。「カブトムシ」「花火」「桜の時」と言ったファン以外にも知名度の高い楽曲が収録されているほか、それ以外の楽曲も総じてキャッチーなのでaiko初心者にぴったりの1枚。そしてオープニングを飾る「愛の病」はそのキャッチーさに程よくダーク要素も含まれているのがたまらない。その他のアルバム曲(カップリング含む)では「お薬」「桃色」が好きだ。本作は売り上げを伸ばし、最終的には140万枚を超える大ヒットアルバムとなった。

ポルノグラフィティ『ロマンチスト・エゴイスト』
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 ポルノグラフィティのデビューアルバム。ネットなどで今日も名盤として語り継がれているアルバムだが、私はそこまで聴き込めていなかった。そこで改めてこの記事を書くにあたり聴いてみたところ1曲目の「Jazz up」の歌詞が本当に”ポルノ”要素満載で度肝を抜かれた。「両手を合わせて(広げて)乳房もとめて」というド直球な歌詞もインパクトが強いのは言うまでもないが、子宮を意味する「the mother's sky」という造語や「隠さなくてもいい。ジョリジョリでいいから」という歌詞が本当にエロの極み。こんなことを爽やかに言ってみたいものだ(アウト)。
 その他にも「ライオン」や「ロマンチスト・エゴイスト(曲)」のようにメロディが強いアルバム曲が収録されていることも改めて実感したので、これを機にもっと本作を聴き込んでいきたい。

Every Little Thing『eterinity』
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Every Little Thing(以下ELT)の3枚目のオリジナルアルバム。ちなみにキーボード担当の五十嵐充がメンバーとして参加した最後のアルバムとなった。そしてこの頃からボーカル持田香織の歌声にも変化が見られ始めている。初期ではクールな歌声だったが、この頃からふわふわ?とした歌声に変わり始めている。本作は収録曲数は全11曲だが、そのうち2曲は同一楽曲「sure」のバージョン違いあるため、実質10曲(「sure」のリミックスバージョンは未収録でも良かっt...)。
 このアルバムの魅力はやはり五十嵐充によるアレンジのシンセサイザーの演奏音。1997年の『everlasting』や1998年の『Time to Destination』と同様、本作を初めて再生した際もサウンドがあまりにもドストライクすぎて衝撃を受けた。特に私がハマったのは「The One Thing」というバラード曲。シンセの音色と切ないメロディはこの上ないレベルでマッチしている。感傷に浸りたい気分の時にこの曲を聴いたら本当に涙が出るかもしれない。
 この曲の他にも名曲揃いで、これからも大事にしていきたいアルバムだと思う。

BUMP OF CHICKEN『THE LIVING DEAD』
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 BUMP OF CHICKENのインディーズ2枚目のアルバムで全編物語形式のコンセプトアルバムとなっている。粗削りなバンドサウンド、そしてボーカル藤原基央の歌声が本当にたまらない。この頃の藤原の歌声はガラガラで、現在のクリアで穏やかな藤原の歌声と正反対である。
 この粗削りな雰囲気は単にメンバーが若かっただけではなく、多忙なスケジュール、契約問題など様々な問題によってメンバーが重圧に苛まれていた時期だったことも関係しているそうだ。
 このアルバムで特にプッシュしたい楽曲は「続・くだらない唄」「ランプ」「K」「Ever Lasting Lie」。そして1曲目「Opening」と10曲目「Ending」は2008年に1つの曲にまとめられ再レコーディングされた。そのリアレンジバージョンには「プレゼント」というタイトルがつけられた。

小田和正『個人主義』
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 小田和正ソロ6枚目のオリジナルアルバム。オリジナルアルバムとしては1993年の『MY HOME TOWN』以来6年半ぶりの発表となっている。ソロ初期はAOR色が強い雰囲気となっているが、この時期になると大きくサウンドが異なっている。私としてはこの時期のサウンドの方が聴き馴染みがあるので安心感がある(勿論初期のAORサウンドも好きだが)。
 また本作品は1998年にバイク事故により小田が重傷を負った後の初のアルバムでもある。つまりバイク事故は少なからず本作の作風に影響を与えていると思う。
 「忘れてた思い出のように」「woh woh」は特にお気に入りの曲だと思う。「woh woh」は小学生の頃にベストアルバム『自己ベスト』で初めて聴いたときから好きな1曲で本当に思い入れが深い。

倉木麻衣『delicious way』
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 倉木麻衣のデビューアルバム。R&Bと王道ポップが共存した名盤。そのバランスは本当に絶妙で、それまでR&Bに馴染みの薄かった私でもすぐにハマることができた。
 デビュー曲にして自身最大のヒット曲となった「Love,Day After Tomorrow」、日本テレビ系『名探偵コナン』のエンディングテーマにも起用された「Secret of my heart」、倉木自身がお気に入りの「Stay by my side」と名シングル曲が収録されていて粒揃いだ。そしてアルバム曲も決してシングル曲に負けてはいない。例えば「Everything's All Right」は親しみやすいメロディで好きな1曲。当時17歳のあどけなさが残る歌声が本当に合っていて心に染みわたる。
 本作は累計売上400万枚を超える大ヒットとなり2000年のオリコン年間アルバムランキング1位となった。

スピッツ『ハヤブサ』
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スピッツ9枚目のオリジナルアルバムでポリドール在籍時最後のアルバムとなった。1992年の『惑星のかけら』、2016年の『醒めない』と並んでスピッツの中ではかなり激しいサウンドが目立っている作品となっている。10数年前に初めて聴いた際、それまで抱いていたポップなスピッツのイメージとは異なっていたのでカルチャーショックを受けた。今になって思うと、その激しいサウンドもスピッツを構成している要素の1つだと感じていて、好きなスピッツのアルバムの1つとなっている。
 本作のうち猛プッシュしたい曲はやはりタイトル曲の「8823」。アルバム全体の作風を象徴したロックナンバー。1990年代半ば以前の草野マサムネとは異なって男らしさ全開でかつ気だるい歌い方となっている。3年前、スピッツが出演していた『ARABAKI ROCK FEST.2015』ではこの曲が演奏された。スピッツファンではない大学のクラスメイトもこの曲を絶賛していて嬉しさの極みだったのも本当に思い出深い。
 
L'Arc〜en〜Ciel『REAL』
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 L'Arc〜en〜Ciel(以下ラルク)8枚目のオリジナルアルバム。このアルバムもロック色全開で、キャッチー要素が薄くTwitterの我がTLでも賛否両論となっている。本当に人間の”REAL”な側面を描写した作風になっていて、心が荒んでいる時には無性に聴きたくなる1枚だ。
 そして、本作には「NEO UNIVERSE」「STAY AWAY」「LOVE FIES」「finale」と言ったシングル曲の他に声を大にして推したいアルバム曲がある。それは「bravery」というバラードナンバーでファンに向けたメッセージが歌詞になっている。「昔はよかったなんて言うけれど、その瞳の奥に何を写してきたっていうのさ。見てきたように何でも言うけれどただ表しか見てないあなたに何が判るの?」という歌詞が特にお気に入り。当時のメンバーの精神状態が顕著に表れた歌詞なのだろう。 
 
Mr.Children『Q』
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 Mr.Children(以下ミスチル)の9枚目(実質8枚目)のオリジナルアルバム。6年前、本作を初めて聴いた際は「何だこれは?取っ散らかってて取っ付き難いわ」という印象を抱いた。しかし、聴く回数を重ねるにつれて本作の魅力に気付き始めた。
 アルバム全体が取っ散らかっている印象そのものは今も変わらないが、それは反対に本作の醍醐味だと思う。・・・というのもこの取っ散らかり具合は当時のバンドの迷走っぷりや制作過程で散りばめた遊び心(例:楽曲のテンポをダーツの得点で決める)など様々な背景因子が重なって生じたもので、当時のミスチルだからこそ作り出せたと思う。それを意識して聴くと本当に楽しめる1枚だと思うし、”迷盤”でかつ”名盤”と言える。
 「口笛」「NOT FOUND」といったシングル曲が名曲なのは言うまでもないが、アルバム曲(カップリング含む)では「CENTER OF UNIVERSE」「Surrender」「つよがり」「ロードムービー」「Halleluiah」がお気に入り。
 そして、この頃の桜井和寿の声量は本当にすさまじい。高音も綺麗に出ているし(近年また高音が出るようにはなってきているが)、程よく歌い方も尖っているのが突沸モノである。当時のミスチルのLIVEにも参戦したい人生だった。

ゆず『トビラ』
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 ゆず3枚目のオリジナルアルバム。彼らのではかなり暗い作風のアルバムと言われている。Wikipedia情報によると、このアルバム制作当時メンバーは今後のゆずの方向性に悩んでいたという。
 特に「仮面ライダー」「何処」は攻めた曲調・内容となっていて初めて聴いた際は驚いてしまった。ゆずへのイメージが覆されたアルバム。ただ、まだ聴き込めていない作品の1つなのでもっと聴き込んで新たに魅力を発見したい。

B'z『ELEVEN』
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 B'z11枚目のオリジナルアルバムで、前作『Brotherhood』以上に本格的なハードロックが展開されている。稲葉浩志のキレッキレなボーカルもそうだが、この頃の松本孝弘の奏でるギターの音色は何だか独特(あくまでも楽器ド素人の見解)。イライラしているときに、このギターの演奏音を聴くと、その気持ちが浄化されそうな気がする。
 「今夜月の見える丘に」以外の収録曲では「Seventh Heaven」「信じるくらいいいだろう」「Ranging River」がお気に入り。「Ranging River」は”THE世紀末”というイメージのロックバラードで、それが20世紀最後の年の年末に発表されているのが感慨深い。
 2000年はキャッチー要素が薄いアルバムが多く発表されているが、本作は特にそれが際立っていると思う。

◯まとめ
 他の年もそうだが、ここに挙げていない未収穫の名盤も数多くあると思う。これからも機会があれば2000年の他の作品も収穫したい。
 さて、今回の記事はここまでとする。最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。見出し画像はAmazonのサイトを引用いたしました。

Hysteric Blue『WALLABY』 Sony Music Records 2000年2月23日発売
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【収録曲】
①ソンナコトイエナイ ★★★★
②Midnight Rave ★★★★
③ラバーズ ★★★★★
④直感パラダイス ★★★★★
⑤ふたりぼっち ★★★★★
⑥Paradox ★★★★
⑦アンバランス ★★★★
⑧真昼の夕焼け ★★★★
⑨なぜ… ★★★★★
⑩雨上がり  ★★★★
⑪Dear ★★★★★
⑫今見える明日、戒める今日 ★★★★
総評:★★★★★


 本作はHysteric Blue(以下ヒスブル)の2枚目のオリジナルアルバムで前作『baby blue』以来10ケ月ぶりの発売となった。本作は前作かそれ以上に”ポップロック”を極めた作風で、アップテンポな収録曲が多い。そこにボーカルのTamaの可愛らしく、かつ力強い歌声が絡み合って聴き心地最高の1枚となっている。そして全12曲収録となっているが、全くと言っていいほど中だるみしない。このように完成度の高いアルバムなので2000年を代表するアルバムの1つとなっていると思う。

①ソンナコトイエナイ
 メロディはなく事実上のインストゥルメンタルとなっているが、終始Tamaの台詞が聞こえる。その台詞をアバウトにざっと書いてみると「はーいTamaです!ホエホエ!Tamaです!お?18歳18歳!あーはい!いろいろ。はい!げん玉!はい!駒!はい!11時半!お願いしますホエホエホエホエホエリキャ!・・・なんとなくまめまめまめまめまめまめーまめーえーそんなこと言えない。そんなこと言えない」という内容。全くもって支離滅裂で意味不明な内容なんだが、「18歳!18歳!」と「まめーまめー」の部分は本当に可愛くキュンとしてしまうのは私だけではないはず。
 台詞が終わると曲間もなく次トラックに進んでいる。

②Midnight Rave
 激しいドラムの演奏音から始まるポップナンバーで、後にシングル『Dear』のカップリングにリカットされた。歌い出し~サビ前までのTamaの歌い方はクールで、サビではパワフルなTamaの声を堪能することができる。終始アップテンポでかつメロディも本当に王道ポップなので本当に聴きやすい。
 前トラック~本曲の流れは絶品級で何度聴いても不思議と初めて聴いたときの感覚を忘れず、新鮮な気持ちで楽しむことができる。

③ラバーズ
 プレイステーション2専用ゲームソフト『スキャンダル』の主題歌に起用された。前トラックに引き続き、アップテンポなポップナンバーだが、サビのメロディからは切なさも漂っていて控えめに言って大好物以外の何物でもない。1番の「たとえばあんなに間違ってた行為でもどんなに優しくされても許せるはずなくても、それでもやっぱり傍に感じられてるなら自ら去っていくなんてそんな事出来やしない」という部分を初めて聴いた際は「俺はこういうメロディを探し求めてたんだよ」という衝撃を受けたのは忘れられない。
 この曲は年上の恋人に浮気をされた女性の心情が歌詞になっている。冒頭の歌詞は「かけめぐる突然すぎる出来事。とめどなくのぼせた頭から白い湯気が出てきた」となっていて、これは相手の浮気が発覚した際の主人公の困惑や怒りが入り混じった感情を示している。本当に生々しい歌詞だと思う。
 また「”悪気はない…”」や「こんなはずじゃなかったなんて、そんな風に嘆かれたって何を誰を恨めばいいの?解決する術もしらないから」という歌詞から相手の男はかなり言い訳がましい性格なのだろう。正直、リスナーの1人としては「そんな男となら別れちまえ」と言いたいところだが、「それでも未だに離せない腕枕に幸せなんだと感じさせられてしまう」という歌詞で締めくくられていることから最後は2人は仲直りしたのだろうと思われる。

④直感パラダイス
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 ヒスブル6枚目のシングルとして2000年1月26日に発売された。
 「直感パラダイス」もタイトルに”パラダイス”というワードが入っているだけに爽やかさ溢れるポップスナンバーとなっている。そして曲全体からも感じられるが、特にラスサビ前のギターソロでは何だか90年代末~00年代初頭特有の懐かしい雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。リアルタイムでこの曲を知っていたわけではないが、聴いていると上記の雰囲気によって、何だか自分の幼少期~小学校低学年の頃の懐かしい記憶が思い出される。
 この曲は毎日、悪戦苦闘して辛い思いをしているリスナーを励ます内容となっている。「所詮はいたずら、神様の人生ゲームなんだもの。簡単にゴールしちゃって面白くないでしょ」「泣き出しそうな空、笑い飛ばしながら鼻歌並べればそのうち晴れるでしょ」などとTama流の応援フレーズが展開されている。
 中でも私の目を引いたのが「高くもっともっとフルパワーなボディーで空へ向かって飛び跳ねろ。ハレンチな姿になれたらそこはパラダイス」という歌詞。皮肉にも作曲を担当したナオキは後に強姦及び強制わいせつ罪で逮捕されてしまった。当然のことだが、”ハレンチな姿になれ”ても彼にはパラダイスが訪れることはなかったのである。
 さて、ナオキの逮捕の件はさておき、この曲はアップテンポなサウンドとTama流の応援メッセージが調和した名曲だと思う。


⑤ふたりぼっち
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 ヒスブル5枚目のシングルとして1999年10月20日に発売され、NHK『ポップジャム』エンディングテーマに起用された。本作『WALLABY』の曲順ではここにきて初のバラードナンバー。曲全体からは儚い雰囲気が漂っていて、Tamaの歌い方もこの曲では少し落ち着いていて大人っぽく聞こえる。2番サビ後のギターソロも何だか趣深い。本当に夏から秋へと変わるちょうど今の時季(9月)にぴったりな曲調だと思う。
 この曲はリスナーによって解釈が分かれると思うが、私は今は亡き恋人を偲ぶ主人公の心情が歌詞になっていると解釈した。 
 「逢引の帰り道、ふたりぼっち。半歩ずつ遠ざかる君の肩。思い出したように振り返る笑顔にもう一度会えると思って取っておいた手紙。車の窓から捨てた。誰にも気づかれずぞっと…」という部分が切ない。本当に片想いも含めて好きな異性と顔を毎日のように合わせることは当たり前のことではない。冷静に考えればそうだとわかるが、恋に夢中になっているときは却ってそれに気づきにくいもの。この曲の主人公のように相手と突然会えなくなった時に初めてその日常がいかに幸せだったのか気づくことも決して珍しくないと思う。
 ダラダラ語ってしまったが、深読みしすぎかもしれないが「今いる身近な人を大切に。そして何気ない毎日も本当に幸せなこと」というメッセージ性をこの曲からは感じてしまう。


⑥Paradox
 切なさ溢れるバラードナンバー。かなり鬱レベルの高い内容となっている。別れた恋人を想っているのか主人公はかなり精神的に辛そうだ。特に「大好きな夕暮れに誰かかまって遊んで。きゃしゃな胸。人ゴミでつぶれちゃう。やな事もいい事も全部続けばよかった。そばにきてもう一度助けて…」という部分を聴くと本当にこちらまで感情移入して心が押し潰されそうな気分になる。
 また、タイトルの「Paradox」は日本語で「逆説」という意味。歌詞中では「”思い出せば忘れられる”」という元恋人の言葉がまさにそれだ。しかし、元恋人のことを思い出しても主人公の気分は楽になってはいないのが切ない。「涙は止まらない」という歌詞で締めくくられているように主人公は最後まで救われない。その後の展開はリスナーの想像にお任せといったところだろうか。

⑦アンバランス

 タイトルに反し、切なさとキャッチーさのバランスが理想的なポップナンバー。そして何といってもこの曲のTamaの歌い方が可愛すぎて辛い。例えば「いつかはごほうびをくれるわ。きっとそんなもんでしょう?」の「でしょう?」の部分を聴くと本当にメロメロになってしまいそうだ。
 この曲は精神的に”アンバランス”になっているリスナーに向けた歌詞が描かれている。「いつでも天から神様はちゃんと見ててくれる。いつかはごほうびをくれるわ。きっとそうでしょう?」と冒頭からかなり救われるフレーズがあるのがたまらない。そして、「行き場も逃げ場もないくらい、そんな時もあるわ。たまにはバラ色の夢でも見なきゃやっていけないでしょう?」という歌詞にもかなり共感できる。辛い時こそ、何か楽しい妄想をしたり、趣味を楽しんでストレスを発散したりしないと本当にやってられないと思う。そんな現代を生きる1人1人の悩める人間に寄り添った歌詞は大好物である。

⑧真昼の夕焼け
 1960~70年代前半のような歌謡曲色がほのかに感じられるポップナンバー。2番AメロとBメロの間の間奏部分も”和”のテイストが感じられる。サビも素晴らしいの一言に尽きる。
 この曲は晩秋~初冬が舞台になっている。ただ引っかかるのは「真昼の夕焼け」というこの曲のタイトル。一見意味不明だが、これは何を意味しているんだろうか。・・・恐らく主人公が昼寝をしながら見た夢の中の元恋人とのデートシーンで登場した夕焼けを指しているのだろう。この夕焼けは元恋人への熱い気持ち(=未練)を体現したものだと解釈している。
 曲の終盤では「誰もいないオフィスで雑仕事片付け。ふらふら街へ出る、日曜の夕暮れ」と現実場面のシーンが登場しているのが何とも言えない。・・・というのも元恋人とのデートをしている夢のシーンとついつい対比してしまってこちらまで切ない気持ちになってしまう。

⑨なぜ…
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 ヒスブル4枚目のシングルとして、1999年7月28日に発売され、TBS系ドラマ『P.S. 元気です、俊平』主題歌に起用された。自身最高となるオリコン週間2位を記録した。曲調としては切なさ溢れるポップロックナンバーとなっている。
 この曲はサビの一節から始まり、その後Aメロに移行している。そしてBメロ~サビの繋がり方は本当に秀逸。月並みな言い方しかできないが、本当に徐々に盛り上がっているのがたまらない。
 これも元恋人を想う主人公の気持ちがテーマになっている。歌詞中では「聞きたい。でも聞けない。右の手に2つの指輪」という部分が本当に引っかかった。
 これは2通りに解釈できる。まず1つ目としては単純に主人公にプレゼントするために自分の指輪と合わせて2つ持っていたという説。これなら素直に微笑ましい。しかし、2つ目の解釈としては彼は浮気していて別の恋人から指輪をプレゼントされ2本持っていた可能性だってある。かなり判断に迷ったが、今回は前者のパターンで、まさに主人公にプレゼントしようとして指輪を2本持っていたと推測する。・・・というのも、その後の歌詞に「イヤにはしゃいでた土曜の夜。ありふれた談笑。その中で。真面目な顔をしてふとつぶやく。ひと言がどうしても気になって」とある。これは愛の告白と考えられ、そうだとすると指輪は主人公に対して渡そうとしていたという結論に至った。
 「ナゼあきれるほど気にしちゃうの昔の恋、さよなら」という歌詞もわかりみが深すぎる。好きな人、もしくは好きだった人の事なんてそう簡単には忘れられないものだから。


⑩雨上がり
 しっとりとした雰囲気のバラードナンバー。本当に聴いていて何だか安心するような曲調でタイトル通り”雨上がり”の街を散歩しながら聴くと気分が盛り上がりそうだ。全体を通して美しく上品なメロディとなっていて特にCメロの「愛しい風よ。あたしを忘れないでいて、冷たい風の中…」という部分は絶品中の絶品。いい意味で鳥肌モノ。
 歌詞も本当に美しく、雨上がりの都会と自然が共存した綺麗な光景を想起させるフレーズが多い。「白いわたげを胸に刺してまるでずっと遠い世界へ。つながっていたような景色。青く消えた都会のなみだ」や「時間と共に優しい季節が深い傷もやがて包みこんでくれるから」という歌詞が特に好き。

⑪Dear
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 ヒスブル7枚目のシングルとして2000年3月29日にリカットされた。イントロ~1番冒頭Aメロはスローテンポのバラード調で地味な印象も否めないが、その後テンポが加速しバンドサウンドも加わりポップロック調へと変化しているのは突沸モノ。そしてサビではさらに盛り上がりに磨きがかかっている。今回のレビューを書くにあたりこの曲を聴いた際も本当にテンションが上がってしまった。
 この曲は当時のメンバーと同世代の20歳を迎えようとしている主人公の気持ちがテーマになっていると解釈している。「いつまでも子供のつもりがもうすぐハタチ本当早いもので」は私自身が20歳を迎えるときに感じていた気持ちと合致して共感でしかない。
 そしてこの曲は「Dear」というタイトルである点から歌詞は主人公から両親へ宛てたメッセージとも捉えられる。「最近電話してないけど、元気でいますか?今日この頃」はまさにそれを象徴した歌詞だと思う。そして、同時にこの主人公は親元を離れて1人暮らししていることも想像できる。
 この曲のように家族へのメッセージがテーマになっている曲を聴くと心が温かくなってしまう。


⑫今見える明日、戒める今日
 1999年のツアーの音源を収録したもの。ミドルテンポのポップロックナンバーで観客の声も収録されていて臨場感も堪能できる。そして、最後には「春~spring~」のライブ音源のイントロが流れてアルバムの再生が終了する。
 この曲は自分を卑下したり、心を閉ざしているリスナーの背中を押す内容となっている。歌詞を聴いていると本当に涙が出そうになった。
 まず、歌い出しの「かみしめた奥歯、ソコに沁みた。なのに流してた。もう何遍も逃げた。こころざし半ばで味占めた」は心が痛い。まさに私じゃないか。そして「目の前の現実と…夢の違いにもがきながら」「閉ざしてた心に鍵閉めた」も自分に当てはまりすぎて辛い。
 そんな心当たりがありすぎる私の心に最も響いたフレーズは「”もしもアタシなら”ってちょっと背伸びして眺めたら景色が変わった。ここが自分の居場所だったと感じられていた」という歌詞で本当に教訓になる。自分次第で人生観が変わることもあるのかもしれない。
 最後の歌詞も「”よーしアタシなら”って、もっと背伸びして眺めたら気持ちも違った。ここは自分の居場所なんだもん。これは肝心だから」となっている。やはりこの曲で一番言いたいことは「自分次第で世界の見え方も変わる」ということなんだろう。

◯まとめ
 
本作はポップロックの真髄と言っても過言ではないほどのアルバム。もっともっといろんな方に聴いて頂きたい1枚で前作同様、JUDY AND MARY辺りが好きなら間違いない。
 さて、今回のレビューはここまでとする。最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。見出し画像はAmazonのサイトを引用いたしました。

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