Mr.chicken

邦楽レビューの記事を中心に投稿しています。中には取り上げた作品を題材にした妄想小説レビューもありますが、卑猥な描写もあるので閲覧注意です。

桑田佳祐『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat.梅干し‐EP』 タイシタレーベル/SPEEDSTAR RECORDS 2021年9月15日発売

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【収録曲】
①Soulコブラツイスト~魂の悶絶 ★★★★★
②さすらいのRIDER ★★★☆☆
③SMILE~晴れ渡る空に~ ★★★★★+1
④金目鯛の煮つけ ★★★★☆
⑤炎の聖歌隊[Choir(クワイア)] ★★★★★
⑥鬼灯(ほおずき) ★★★☆☆
総評:★★★★☆



 
本作は桑田佳祐初のミニアルバムで桑田ソロ名義のアルバムとしては前作『がらくた』以来約4年ぶりの発売となった。なお、桑田佳祐&The Pin Boys名義の「レッツゴーボウリング」「悲しきプロボウラー」の収録は見送られた。
 本作の特徴はまずタイトルが長い点。私も何も見ずに正式名称が言えないのはここだけの秘密である。・・・タイトルがあまりにも長いので公式サイドでも『ごはんEP』と称されている。このミニアルバムは6曲入りで収録曲を伝統的な日本食の品目に例えて、このクソ長いタイトルになったようだ。桑田は6曲について「立ち返るべきところに戻ったというか、飽きの来ない『いいもの』だけ取り揃えたのかな」という自負があるという。それを踏まえると「レッツゴーボウリング」「悲しきプロボウラー」が本作のコンセプトに合わずに未収録となったのも納得だ。
 本作を初めて聴いた正直の印象は・・・・アルバム単位としてはそこまで印象に残らなかった(小声)。しかし、先行配信シングル「SMILE~晴れ渡る空のように~」「炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]」「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」のメロディがかなり強かったので桑田佳祐のメロディセンスは65歳に突入しても健在だということを実感した。

①Soulコブラツイスト~魂の悶絶


 桑田佳祐3作目の配信限定シングルで2021年8月30日に発売となった。複数のタイアップに起用された。1つはユニクロ『LifeWear』CMソングに起用され、桑田本人も出演している(下の動画参照)。また、もう1つはNetflix独身配信映画『浅草キッド』主題歌にも起用されている。また、音楽番組でも後述の「SMILE~晴れ渡る空に~」とともに披露されている。



 この曲は「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」という正直かなりクセの強いタイトルだが、曲自体は歌謡曲テイストに万人受けのしやすい王道メロディとなっていてかなり圧倒された。65歳にもなってもなお、こんなに素晴らしいメロディを世に放つ彼は「本物」としか言いようがない。
 男が主人公として描かれていて、女性に振られても幸せと思い求め続ける様子が歌詞に描写されている。「幸せになれるワケはないのに何故イケナイ人を愛しちゃうんだろう?」と悔やみつつも「必ず明日はやってくるんだろう」と前向きになろうと必死になっている様子が窺える。しかし「まるでコブラツイストを喰らったみたいに悲しい色の空…I can't get you my mind」結局失恋相手のことを忘れられずに傷心気味なところで曲が終わっているのが切なすぎる。

②さすらいのRIDER
 ミディアムテンポのロック曲。良くも悪くも「ザ・アルバム曲」という曲調でTwitterの某フォロワーが”アルバムにおいて「海苔」の部分に当たる”とツイートしているのを見て納得してしまった(引用失礼)。

③SMILE~晴れ渡る空のように~


 桑田佳祐1作目の配信限定シングルで2021年7月12日にリリースされた。発売こそは2021年だが、YouTubeでは前年の2020年にはMVがフルで解禁されていた。この曲は民放5系列による「一緒にやろうよ」という2020年東京オリンピック共同企画のテーマソングとして発表された。しかし、新型コロナウイルス拡大の影響で東京オリンピックの開催は延期となり2020年にリリースするタイミングを失ってしまった。そして1年後の2021年7月のオリンピック開催月にリリースとなった。
 壮大なバラードナンバーに軽快なメロディが絡み合って初めて聴いた時から好印象で2021年に発売されたJ-POPの楽曲の中でもかなり上位に入るレベルで大好きな1曲である。
 曲全体を通して素晴らしいが、特にBメロ⇒サビの流れは本当に流石としか言いようがない。サビでは力強く伸びやかな桑田の歌声に同性ながら惚れ惚れしてしまう。
 歌詞では当たり前だがオリンピックを思わせるような内容となっている。実は今回の東京オリンピックはほとんど見てない(小声)のだが、そんな私にもスーッと染み入るフレーズとなっている。サビの「栄光に満ちた孤独なHERO 夢追う人達の歌。情熱を消さないで歩みを止めないで。この世に生まれた以上。愛情に満ちた神の魔法も悪戯な運命(さだめ)にも心折れないで。でなきゃ勝利は無いじゃん!!」という歌詞はオリンピック選手にも言えることだろうが、毎日必死に生きている我々社会人、学生にも通ずると思う。この曲はコロナ禍よりも前に書かれたものだが、コロナ禍の現在に聴くと本当に心を鷲掴みにされ涙が出そうになる。メロディも歌詞も文句なしの大名曲だと思う。

④金目鯛の煮つけ


 アルバム曲だが、SOMPOグループCMソングに起用されている。このCMにも桑田本人が出演している(上動画参照)。切ないフォーク調のナンバーとなっている。A~Bメロのメロディは「ザ・アルバム曲」という感じでそこまで印象に残らなかったが、サビのメロディのインパクトはめちゃくちゃ強い。
 歌詞はコロナ禍で混沌とした気持ちになっている人々を励ますような内容となっていて「夢も希望も胸に生きてたつもりが何処かで失くしたモノばかり。悲しみを迎えに行くのは止めたよ。明日は笑顔でいるために」「夢も希望も胸の奥で燃えている。誰にも内緒でいたいけど悲しみを迎えに行くのは止めたよ。今宵は月さえついて来る」という歌詞は「辛いことばかりに目を向けないで前向きに楽しく生きようよ」という桑田からリスナーへのメッセージにも取れる。このレビューを書くにあたり歌詞を読んでいて1人で泣きそうになっていたのはここだけの秘密である(小声)。

⑤炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]


 桑田佳祐2作目の配信限定シングルで2021年8月11日に発売された。桑田のソロ名義初期の楽曲を彷彿とさせるようなキラキラとした爽やかなポップナンバーだが、不思議と悪い意味での焼き直し感もないのが素直に凄いと思う。なお、Cメロも存在していてその部分では桑田の歌声が加工されている。MVでは桑田がドライブするシーンがあるがサザン名義の「DIRTY OLD MAN~さらば夏よ」のMVのドライブシーンを思い出したファンの方も多いと思う。
 この曲も前向きなフレーズが多く応援歌となっている。特にコロナ禍に突入し、精神的に辛くなっているリスナーに向けているのかと勝手に思ってしまう。「新しい朝がやって来る。出会いの予感。重たいカバン下して。Woo夢見てた、今日が来ると信じていた」「開演お待ちどうさん。ご来場。大変ご苦労さん、毎日お疲れさん。ようこそここに」という部分はコロナ禍が終わり、2019年以前のような日々が戻って、それまで辛い日々を耐えてきた人々を労う未来のシーンを描いているのだろうか。特に後者の部分を聴いていて気付いたら私の目が潤んでしまっていた。「生きるのが辛い事もある。勇気を出して笑顔になろう」という言葉にも励まされたファンも多いと思う。やはりTwitterの某フォロワーも言っていたように”やっぱ桑田佳祐だわ。あの人のうたには人を元気にする力がある。”と思う(勝手に引用すみません)。

⑥鬼灯(ほおずき)
 私は洋楽には全く詳しくないが、Wikipediaには「1970年代初めのポールマッカートニーを想起させる音像の楽曲」と記載されている。実際に聴くとマイナーテイストが強くメロディは正直そこまで印象に残らなかった(小声)。
 歌詞は恐らく1940年代の太平洋戦争期の日本が舞台になっていると想像してしまう。歌詞に登場する主人公は女の子で祭りで年上の青年男性と出会ったようだ。その青年男性は「妹みたい」と可愛がってくれる優しい性格の持ち主であったが、ある日彼のもとに召集令状が届き戦地に行ってしまったのだ…。歌詞中の「紅(くれない)燃ゆる海の彼方へひとり君は征(ゆ)くのか?」という部分からは取り残された主人公の悲痛な心情が伝わってくる。「若者たちは翼広げて最果ての大空へ。美しいあの島へ。夜鳴く鳥のように」という表現も生々しい。戦争は本当に百害あって一利なしだと改めて痛感する。

まとめ
 今回のミニアルバムは全曲ハズレなし!!!・・・とまでは行かないけどシングル曲からは桑田佳祐の底力を改めて感じる1枚だった。桑田自身も65歳を迎え、決して若くはない年齢だが、彼よりも3~40歳も年下の私の方が元気を分けてもらっている気がする。1978年にサザンオールスターズのボーカルとしてデビューしてから今年で43年。今後もどんな名曲を世に放つのか楽しみである。
 今回のレビューはここまでとする。駄文ながら最後まで読んで頂きありがとうございました。見出し画像はAmazonから引用致しました。

SARD UNDERGROUND『オレンジ色に乾杯』 2021年9月1日発売 GIZA studio
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【収録曲】
(★★★★☆は4.5)
①オレンジ色 ★★★★★
②あの夏の恋は眩しくて ★★★★★
③夏の恋はいつもドラマティック ★★★★☆
④これからの君に乾杯 ★★★★
⑤少しづつ 少しづつ ★★★★
⑥イチゴジャム ★★★★
⑦君には敵わない ★★★★★+1
⑧ブラックコーヒー ★★★★★
⑨黒い薔薇 ★★★☆☆
⑩夏の終わりに… ★★★★
BT Blue tears ★★★★☆
総評:★★★★★


 アルバムレビューの前にまずSARD UNDERGROUNDのことがよくわからない方もいると思うので簡単に紹介する。SARD UNDERGROUND(以下SARD)は元々4人組のZARDのトリビュートバンドで2019年1月に結成した。メンバーは神野友亜(ボーカル)、赤坂美羽(ギター・コーラス)、杉岡泉美(ベース・コーラス)、坂本ひろ美(キーボード・コーラス)の4人構成だったが、赤坂は2021年5月27日に体調不良(詳細不明)に伴い脱退しており、2021年12月現在は3人組バンドとして活動している。



 本作はSARD3作目のアルバムである。本作以前に発売していた『ZARD tribute』『ZARD tribute II』はZARDの楽曲のカバーアルバムであったため今回は初のオリジナル作品(収録曲も全曲オリジナル)である。本作は当初収録曲名に由来して『夏の終わりに...』というタイトルだったが、大人の事情で変更になったようだ。
 私がSARDのアルバムで初めて聴いたのはデビューアルバムの『ZARD tribute』だったが、個人的には正直「…。」印象が強かった(ZARD tributeIIはまあまあ良かったけど)ので、今作はそこまで期待はしていなかったし、アルバム発売前にオリジナル曲を聴くこともなかった。
 そして2021年9月1日、本作が発売となり同時にサブスクリプションの配信も開始となった。サブスクのApple Musicユーザーだった私は何気なく本作を聴いてみた・・・・そしたら、予想外の完成度の高さに圧倒されてしまったのだ。メロディの質の高さは勿論、1990年代を彷彿とさせる懐かしい雰囲気に涙が零れそうになってしまった。本当に本作をまだ聴いていない方で「SARDはZARDのコピーバンドでしょwww本家には遠く及ばないし興味ないw」という方にこそお勧めしたい1枚である。
 本作の収録曲のうち3曲にはZARDの坂井泉水による未公開詞によるものである。坂井の没後14年経過する2121年になってもなお坂井の歌詞が生き続けていると実感して感慨深いものがある。また、作曲陣にはZARDの楽曲にも携わっていた大野愛果、川島だりあ、徳永暁人が多くを手掛けている。さて、収録曲を1曲ずつレビューしていきたいと思う。



①オレンジ色

 アルバム1曲目を飾るのに相応しい爽やかなポップナンバー。KBS京都『キモイリ!』エンディングテーマに起用されている。作詞はボーカルの神野、作曲は川島だりあ・Chrisが担当している。爽やかなメロディに神野のクールな歌声が調和して名曲に仕上がっている。初めて聴いた時からこの曲の魅力に引き込まれてしまった。
 イントロではバンドサウンドのほか、1990年代を彷彿とさせるキーボード、シンセサイザーのような演奏音も聞こえていて本当にドストライクである。曲中でもバンドサウンド主体でありながら背景にキラキラとした音色になっていて非常にアクセントになっていて耳触りが最高になっている。間奏で聞こえるギターの音色も近年のバンドで流行しているピロピロギターではなくZARDや初期の小松未歩の1990年代の楽曲に近い印象で実家のような安心感がある。
 歌詞からは主人公が異性の友人のことを考えている情景が思い浮かばれる。「急ぎすぎるているくらいの日々が私には居心地が良くて恋なんて興味がないよ」と言いつつも「だけどあの頃も気づいていた君の名前を呼んだ時のトキメキ」とあるので実際相手のことが気になっていた・・・・というか片想いをしていたのだろう。もしかすると歌詞に登場する主人公はツンデレキャラなのかもしれない。
 曲の終盤では「あの日に見た悲しい夢も愛おしく思えた。いつもそばにそして君がいるから」という歌詞があるがなかなか意味深である。・・・あくまでも私の勝手な解釈だが、相手は別の女性と付き合ってしまったのかもしれない。「愛おしく思えた」に関してだが、主人公は決して寝取られマゾ(自主規制)なんかではなく他の人と付き合ったとしても友達としてはずっと一緒だと前向きに考えようと必死になっているのかもしれない。

②あの夏の恋は眩しくて


 爽やかなバラードナンバー。作詞は神野、作曲は山口篤が携わっている。第52期サンテレビガールズイメージソングに起用されている。この曲もストリングス、ひんやりキーボード、懐かしの音色のエレキギターの演奏音が散りばめられており、初めて聴いた時から好感触であった。
 歌詞は知り合いの男性への思いを綴った内容となっている。歌詞中には「目を閉じたまま愛し合っていた」など相手とのエピソードが描写されている。しかし「悲しい色に染まる前にいっそこの恋に鍵をかけてしまいましょう」というフレーズがあるように相手との愛し合っていることなどの一連のエピソードは主人公が浸っている白昼夢だと私は解釈している。彼になかなか話しかけることができずにウズウズしていてなかなか関係が進展していない現実を直視したくないのかもしれない。

③夏の恋はいつもドラマティック


 明るい曲調で独特なリズムのポップナンバーで2021年7月22日に配信限定として先行リリースしている。なお作詞は坂井泉水、作曲は徳永暁人とZARD「永遠」の作詞作曲コンビとなっている。テレビ朝日『musicるTV』2021年9月度オープニングテーマになっている。この2人の組み合わせの新曲を令和の世に聴けることができたのは本当に感動モノである。
 イントロではドラムの演奏音の他にコーラスも聞こえる。昨今のJ-POPの楽曲でイントロのコーラスを堪能することができるのは少ないイメージだったので懐かしい気持ちになることができた。
 歌詞の内容は坂井泉水らしい主人公の女性が恋人への愛情を綴ったものである。特に2番の「自信がないからいじわるになる」「とても寂しいからスネたりする」「あなたの前ではつい明るく振舞ってしまう」「私だって本当はすごく泣き虫」「昨日みた夢のこと解けないナゾのこと」「けれどあなたがずーっと好き」という表現は坂井にしかできないフレーズ。作詞者のクレジットを見る前に聴いたときから「これは坂井泉水が書いたんじゃないか?」と思って調べたら本当に坂井本人で感動したのは今後も忘れることがないと思う。やはり普段強がっている主人公がふとした瞬間に弱い部分を滲ませるのを表現するJ-POPの作詞家として坂井の右に出る者はなかなかいないと思う。

④これからの君に乾杯


 2020年6月3日にSARD2枚目のシングルとして発売された。作詞は坂井泉水、作曲は川島だりあ・Chrisとなっている。タイアップとしてMBS『+music』2020年4~6月テーマ曲として起用された。シングルとしてはオリコン最高6位とトップ10入りを果たしている。
 この曲のメロディも本当に耳に残りやすく、親しみやすい。アレンジもキーボード、エレキギター、シンセサイザーの演奏が1990年代のJ-POP好きとしてドストライクで申し分ない完成度である。
 倦怠期を迎えたカップルの女性が恋人に対しての複雑な心情が綴られている。この曲でも”坂井節”が存分に発揮されている。1番の「もしも自信を失くして自分を嫌いになっても決してあきらめないで」「情けない気持ちにGood-bye」という歌詞を聞いてメロメロになったZARDファンの方も多いかもしれない(私もその1人である)。この不器用なリスナーの気持ちに寄り添う歌詞も本当に坂井らしく実家のような安心感を覚えてしまった。また「気取ってる私もワタシだし、気さくで甘えん坊な私は君を追いかけている」「負けず嫌いな私も私だしナーバスで我ママで弱虫それも私です」というフレーズはもしかすると坂井自身が抱いていた自分のイメージを歌詞にしたのかもしれない。
 2番では前述のような恋人に対する気持ちが描写されている。「あんなにつっぱっていた君がめっきり丸くなっちゃって逆にかえって心配になる」「たまにはかわいいって言ってよ。つき合う前はよく言ってくれたじゃない」という部分は喧嘩が絶えないカップルを描写したZARDの「愛が見えない」を彷彿とさせてしまう。坂井が描く恋愛ソングは倦怠期のカップルを描写したものが割と多い気がするが、これも坂井の実体験に基づくものなのだろうか…非常に気になるところである。・・・まあ、脱線しそうなのでそれはおいておいて、この曲の主人公の交際相手は不器用で根は優しい性格で慣れない人には頑張って自分を少しでも良く見せようと躍起になっていたのかなぁと歌詞から想像できる。坂井が描く男性は大体不器用で優しい人が多い気がする。

⑤少しづつ少しづつ


 2020年2月10日にSARD1枚目のシングルとして発売された。作詞は坂井泉水、作曲は大野愛果となっている。坂井(作詞)×大野(作曲)の組み合わせも「少女の頃に戻ったみたいに」等、後期ZARDの多くの楽曲であるので懐かしい気持ちになってしまった。この曲は読売・日本テレビアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマとして起用されている。
 しっとりとしたバラードナンバーでストリングスやコーラスが効果的に使用されていて良い意味で圧倒される。メロディも切なくて聴き入ってしまう。アルバムの発売時期は9月だったが、秋の夕暮れの爽やかな空気の中、散歩しながらこの曲や後述の「ブラックコーヒー」の曲調はその時季にピッタリで散歩しながら感慨深い気分に浸ることができた。
 この曲も関係が危うくなっている恋人同士が描かれている。1番では「一緒にいたいのに一緒にいるのがつらいんだ」「好きなのに嫌いなんだ」と主人公の複雑な心情が述べられている。「ああ今度こそは最後かもしれない。いつからこんなにすれちがうようになったんだろう」というフレーズからも喧嘩が続いていることが覗える。
 2番ではさらにスケールの大きな歌詞になっている。「人は何故生まれてくるの」「目的は?何かのために誰かのために生きるものなの?」と綴られており主人公は恋人とのすれ違いからか相当心を病んでいるのだろう。その後にも「お互い気づかいが足りなくなって慣れてしまい苦いストレスでハートに穴があきそう」と主人公は辛い気持ちを吐露している。
 曲の終盤には「誰もあなた以上になれない」とあり、曲中の架空の人物ながらその後、相手との関係が修復して幸せになってほしいと勝手ながら祈ってしまった。

⑥イチゴジャム


 キュートな雰囲気が漂うポップナンバーで作詞は神野友亜、作曲は大野愛果が担当している。タイアップとしてテレビ愛知等で放送されているアニメ『おかしなさばくのスナとマヌ』主題歌に起用されている。この曲も初めて聴いた時からメロディの強さに引き込まれてしまった。収録時間の長さは3分20秒余りと短めではある。しかし、その短い収録時間にメロディが凝縮されていてサラっと聴けるのが
この曲の魅力だと思う。
 この曲は失恋ソングだと思う。主人公の女性は恋人に手作りのイチゴジャムを時々プレゼントしたり2人一緒に仲良く作ってイチャラブしていたのだろう。「君に作ったイチゴジャム 甘さは控えめがいい 温めると溶ける ふたりの恋みたい 追えば離れていくから 君はいつも読めないね」という歌詞は男女のすれ違いが描写されており何ともほろ苦い。主人公と相手は交際当初はラブラブだったのだろうが、お互いの理想の距離感が嚙み合わずに関係が徐々に冷え切ってしまったのだろう。ポップなメロディやキュートな曲調とのギャップが大きすぎてこのレビューを書きながら改めて驚いてしまった。

⑦君には敵わない


 1990年代のZARDの楽曲にあっても不思議ではない王道ポップナンバー。作詞は神野友亜、作曲は川島だりあ・Chrisが担当している。タイアップとしてTBS『王様のブランチ』2021年9月度エンディングテーマに起用されており、本作の収録曲の中では一番のお気に入りである。
 この曲は先行シングルとしても発売されていない正真正銘のアルバム曲だが、正直シングル表題曲としても十分に通用するクオリティである。メロディの完成度の高さは言うまでもなく、アレンジもバンドサウンドやキラキラとした演奏音、そしてコーラスが絶妙に融合している。ラスサビでは転調してかなり盛り上がりを見せており、初めて聴いた時からハマってしまった。神野の歌い方も他の収録曲よりも可愛らしく聞こえる気がする。
 そして作詞は神野が手掛けているが、この曲は坂井の世界観に近い気がするのも魅力である。・・・というのも主人公が異性の友人に密かに恋心を抱いていて、どうやら主人公も意中の相手も不器用な性格であるようだ。まさにZARDの「心を開いて」を彷彿とさせる「不器用リスナーホイホイ」な歌詞の内容で本当にドストライクである。
 歌い出しの「ずっと君のその隣の歩きたいの手をつなぎそしてたまにスキンシップをしたり走ったり転んだり」という歌詞から甘酸っぱさ満点で堪能しながら1人でニヤニヤしてしまうのはここだけの秘密である(小声)。曲中のお気に入りの歌詞は「メチャクチャな歌でも君が歌うなら聴いていたい」という部分。これは”男性が言われたい台詞ランキング”なるものがあったら上位になること間違いなしだろう。
 また、「君の前だと不器用になる 認めたくなくて 意地を張る」という部分も坂井が描写する歌詞に登場しても不思議ではない。良い意味で坂井の歌詞の世界観のオマージュなんだと思っている。本当にこの曲はメロディもアレンジも歌声も歌詞も非の打ちどころがなく完璧である。

⑧ブラックコーヒー


 2021年2月10日にSARD3枚目のシングルとして発売された。タイアップとして上述の「イチゴジャム」と共にアニメ『おかしなさばくのスナとマヌ』主題歌に起用されている。作詞を神野友亜が、作曲を大野愛果が担当している。この曲はしっとりとしたバラードナンバーで秋のひんやりとした空気に当たりながら聴いていると、ついつい感傷に浸ってしまう。1番や2番のサビでも十分に完成度が高いが、2番サビ後間奏⇒Cメロ⇒ラスサビと畳みかける流れは最早芸術の領域で、聴いていて目の奥から熱いものがこみ上げそうになってしまった。
 この曲はタイトルにもなっているブラックコーヒーのほろ苦さと恋愛のほろ苦さを掛けた片想いソングになっていると捉えている。勝手な想像だと主人公の意中の相手は落ち着いた雰囲気の男性でどうやら喫茶店にいることが多いようだ。「近づきたくて嫌いだったブラックコーヒー いつの間にか好きになってた いつもそこにいると知ってて偶然装って何度も会いに行った」という歌詞に対して「一歩間違えたらス〇ーカーじゃん」というマジレスはおいといて、主人公の恋愛熱の高さが覗える。
 また強調して言うが「ずっとあなたのミルク色の夢をみたい」という歌詞も決して下ネタではない(と断言したい)。・・・コーヒーにおけるミルクはマイルド要素でもなるので恐らく意中の相手が普段見せない意外な弱くて不器用な一面も見てみたいという意味なんだと解釈している。私は男なのでわからないが男性が普段見せない一面に対して胸キュンする「ギャップ萌え」という言葉もあるぐらいなので、主人公もギャップ萌えに憧れているのだろうか。最後は「夜は寒くても体は熱くなる 寒い夜は朝まで抱きしめて」というドキッとするフレーズで締め括られている。神野友亜・・・、もしかするとなかなかの変態なのかもしれない(小声)。

⑨黒い薔薇


 作詞は神野友亜、作曲は大野愛果が担当しているロックナンバーで神野のボーカルもクールさが際立っている。男性目線の歌詞となっていてフレーズもなかなかアダルトな雰囲気となっている。印象的な歌詞は「暗闇に潜めた蠟燭の煌めきと影 蝙蝠の森の中の蜘蛛の巣の青い城」というキラーフレーズ。・・・・かなりエロい表現だろ。

⑩夏の終わりに…


  本編の最後を飾る1曲で作詞が神野友亜、作曲は徳永暁人が担当している。切なさも漂うしっとりとしたバラードナンバーで「夏の終わりに…」はアルバムのタイトルにも採用される予定だった。
 神野の歌い方も憂いげなのがたまらなく、2番サビ後のひんやりとしたキーボードの音色を耳にするとスーッと心が洗い流されるような感覚に浸ることができるのもこの曲の醍醐味だろう。
 主人公の女性が交際している男性に対して後ろめたさを抱いているような歌詞になっている。私の勝手な解釈だが恐らく浮気をしているが相手にバレていない状況を描写しているのかもしれない。  
 「私のプロフィールもあなたでいっぱい」「”ごめんね”と言えばきっとあなたは私から離れていくでしょう?」という歌詞からも他の男と会っていながらも本命の恋人とは離れたくないという複雑な心情が垣間見えてしまう。フィクションの内容でありながら浮気をしながらも何だか自分に酔っている主人公に何とも言えない気持ちになってしまった。

(ボーナストラック)Blue tears

 この曲は通常盤のボーナストラックとして収録されていて作詞は神野、作曲は花沢耕太が担当している。この曲は倉木麻衣の「渡月橋~君想ふ~」を彷彿とさせるようなカントリーテイストが強い印象である。ラスサビ前のキーボードはどことなく懐かしい雰囲気である。
 この曲は恐らく両想いながらになかなか距離を縮めることができない男女を描いた恋愛ソングである。この曲の歌詞もなかなかぶっ飛んだフレーズがある。「君の涙を吞みたい」「君が解けないから君に溶けたい」というのもキラーフレーズである。恐らく主人公の女性は相手の男性が積極的にアタックしてこないことに対してじれったさを感じているのかもしれない。

●まとめ
 この作品は最初はサブスクリプションで鑑賞していたが、あまりにもハマってしまったのでダウンロード購入してしまった。そして現在ZARDの楽曲をカバーしたアルバム『ZARD tributeIII』も絶賛制作中ということなので続報も非常に楽しみである。オリジナル曲についても今後も期待したい。
 アルバムレビューの投稿は2年3ヶ月ぶりでかなり期間が空いてしまった。今後もマイペースながらにレビューを投稿していければと思う。駄文でしたが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。今回の見出し画像はこちらより引用致しました。

ブログの記事としてはお久しぶりです。記事の更新は2年2ヶ月ぶりだと思います。執筆で使用していたPCの調子が悪くなかなか更新できませんでしたが、PCをこの度買い替え、無事にログインできたので駄文ながら再開したいと思います。今後ともよろしくお願い致します。本格再開後の最初の記事を何にするか考えるとわくわくします・・・笑 見出し画像はネットより引用させて頂きました。

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