レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

メジャーでの葛藤を経て、もう一度「独断と偏見」を取り戻したい--ボールズ山本剛義、現状の生活と今後の展望を語る

司会者「またインタビュー記事なんですね。最近多くないですか」

レジー「話を聞きたい人が多くてね。インタビューじゃないネタは一個大きめのを仕込み始めたんですが、実は今回の記事以外にも一個インタビュー系があります。まあその辺の話は一旦置いておくとして、ここでは現在活動を休止しているボールズのボーカルでありソングライターの山本剛義さんへのインタビューをお送りします」

司会者「今年の春先にドラムの谷口さんが脱退してバンドとしては活動休止してるんですよね」

レジー「うん。去年出たアルバム『SEASON』についてインタビューさせてもらって、あの作品が苦しみぬいて作った作品だってことをじっくり話していただいたんですけど。そういう感じを経てリリースして、にもかかわらず今のような状況になっているということに対して山本さん的にも話したいことがあるんじゃないかとは活動休止のアナウンスがあったときからずっと思っていました。バンドの拠点が大阪なのでなかなか話を聞く機会をとれなかったんですが、ちょうど大阪に行く用事があったのでそのタイミングでインタビューを行いました」

司会者「谷口さんの脱退について、あとはメジャーで音楽をやるということについてなどシビアな話も包み隠さずしていただきました」

レジー「ありがたかったです。ひとりのミュージシャンがどうやって音楽を自分のもとに取り戻そうとしていくか、っていうドキュメントにもなっていると思うので、ボールズファンの方もそうでない方もぜひ読んでいただけると嬉しいです。最後には今後の活動の展望について話していただいています。それではどうぞ」

 


>>>


離れていったメンバー、残ったメンバー

---3月末に谷口(修、ドラム)さんの脱退とバンドとしての休止が発表されてから山本さんがどういう状況なのか気になっておりまして、どこかで一度お話ししたいと思っていました。お時間いただきありがとうございます。

「いえ、こちらこそありがとうございます」

---今日は「これまで」のことと「これから」のことをそれぞれお聞きしたいと思っています。少し後ろ向きな話題についても質問させていただくことになるかもしれませんが、差しさわりのない範囲で答えていただけると嬉しいです。

「わかりました。よろしくお願いします」

---まず、谷口さんが脱退されたことについてお聞きしたいと思います。これについてはどういうタイミングでの出来事だったんでしょうか。

「この話が出たのは、ボールズがこれまで所属していたユニバーサルと契約して活動することができないとなった時期です。この決定についてはメンバーの思いも大人側の事情もそれぞれあるんですが、そのときに彼も一度立ち止まって自分のことをゆっくり考えたんだと思います。自分の生活のことや将来のことをいろいろ考えての決断で、何か決定的な理由があったわけではないようなんですが・・・「メジャーから離れよう」となったことはきっかけとしては大きいのかもしれないです」

---メジャーから離れるということについては追って掘り下げさせてもらえればと思っていますのでまずは谷口さんに関わることについて質問させていただくと、この話を聞いたときに山本さんはどうお思いましたか。

「まず最初に「寂しいな」と思ったんですけど・・・ミラーマン時代からメンバー変更の多いバンドだったんですよね、僕ら。で、それが本当にいいことかはわからないんですけど、辞めていくメンバーのことを引き留めたことはこれまで一度もないんです。だから寂しいけど「わかった」って。それに、僕にとって音楽はメジャーにいようがなんだろうが、やっていないと不自然なものだから。小さいころからずっとそばにあったものだし」

---はい。

「だから、今辞めるっていうことの気持ちはわかっているつもりではいるんですけど、「あ、そうなんや」くらいにしか思っていないという部分もあります」

---なるほど。ボールズが直近までの5人の編成になってからの期間で言うと・・・

「3、4年くらいかな。谷口とは7年くらい前から一緒ですよ」

---僕も全然素人レベルですけど高校や大学の時に音楽やっていて、そこでバンドの解散やメンバーの脱退みたいなことは何回か経験しているんですけど。やっぱりああいうのって、同じ物事に対する自分と相手の温度差とか、信用していたものが一瞬で崩れちゃう感じとか、結構きつかったというか、大げさに言えばちょっと人間不信になった記憶もあって。今のお話を聞く限り、そこまでダメージを受けず意外とさらっと受け止めているのかなと思ったんですが。

「何て言ったらいいのかな、もちろんそんな簡単に割り切れる話ではなかったんですけど・・・谷口がバンドの中で一番愚直に努力をしているメンバーだっていうのをみんな知っていたから、脱退したいって話を聞いたときに「あ、燃え尽きたんやな」って素直に受け入れることができたんですよね。バンドとして何も成し遂げていない中で「燃え尽きた」なんておこがましいんですけど、すっきりした気持ちで決断できたんだなっていうのがよくわかったので。もしかしたら冷たく聞こえるかもしれないですけど、不思議とすっと飲み込むことができたんです」

---今回ある種の節目でメンバーが抜けるというタイミングで、ボールズではない形で音楽をやるということは考えなかったのでしょうか。

「ああ、考えました考えました。阪口(晋作、ベース)と2人でやればいいじゃんとも一瞬思ったし、他の友達とやるみたいな方法もあったと思います。ただ、今のメンバーがいてくれたからこそ助かった部分っていうのも気づいてないことも含めてたくさんあったと思うし、彼らがやりたいと言ってくれているうちは一緒にやれたらいいなって。現時点で大前提にあるのは「音楽をやりたい」なので、ボールズというものに死ぬほどこだわっているかと言われればそうじゃないかもしれないというのが本音ではあるんです。でも、ボールズはやります」

 


改めて「メジャー」について考える 音楽で食うのか、音楽を続けるのか

---少し踏み込んだ話になってしまうかもしれませんが、先ほどちらっと出たメジャーレーベルとの契約が終了したということについて山本さんはどのように捉えていますか。

「・・・セールスや動員といった数字的な部分で追いついていないところがあったのは事実なので、そういう中での話という側面がまずあります。一緒に仕事させてもらっていたユニバーサルのスタッフのことがほんと好きだったので、さっきの谷口のことと同じ感想になっちゃうんですけどめっちゃ寂しいなと思いました。音楽業界って「音楽に詳しくない業界人」がものすごく多いんですけど、僕の周りにいる人たちは音楽好きだったり詳しかったりでそういうのも楽しかったし。ただ、メジャーレーベルで音楽を作っていくということの難しさや大変さを感じていたというのも一方ではあって。最初のアルバム(『スポットライト』2014年7月)を出した後くらいから迷いはあったというか、なんかサラリーマンみたいだなって思ったり・・・音楽を仕事にする以上はそういう瞬間が出てくるのは当然だとは思うんですけど、いろんなものに追い立てられて、いろんな人の意見を聞きながら音楽を作るのがほんとにしんどかった」

---そんな状況だったんですね。

「「メジャーのレコード会社が悪い」みたいなことを言うつもりはほんとに全くなくて、みんなが作品やバンドの状況を良くするために一生懸命いろんなことを考えてくれて心からありがたかったんですけど、バカ正直にそういうのを聞いていこうとしていく中で、自分の中にある判断の軸がどんどん見えにくくなっていってしまったんですよね。それが辛くて」

---前回のインタビューでは『SEASON』の制作時、つまり『スポットライト』のリリース後のお話を聞かせていただいた際に、自分たちの音楽が支持されない、CDも思ったより広まらないしフェスでもうまくいかない、そういう中で次の道を探していくためにすごく模索をしたとおっしゃっていたかと思います。そういった外的な部分で困難と直面しながら、内面では今お話しいただいたような精神的な揺らぎがあったということでしょうか。

「そうですね。外的な部分でいろんなことがある中でさっき話したようなネガティブな気持ちがわいてきてしまって、何をどうすればいいのかわからなくなってしまった、というのが一番正確かもしれないです。そんな感じで音楽をやるのがしんどかった時期にアジカンのゴッチさんに相談したことがあったんですけど、その時に「“音楽で飯を食っていく”ための方法を考えるのは間違いじゃないけど、そこにこだわらずに“自分の好きな音楽を一生続けていく”方法を探すのも選択肢としてありなんじゃないか」ということを言われたんですよね。それがものすごく心に響いて。このままいくと自分が音楽を嫌いになるんじゃないかって思っていたから」

---はい。

「その言葉がずーっと頭にあって、それを踏まえて「音楽を続けていく」っていう観点で考えると今のやり方をずっとやっていくのは難しいなあと思って。それで一旦ライブとか制作とかをストップして一か月くらいゆっくりしたいっていう話をしたんですけど。ただやっぱり今の環境だとそんなやり方は厳しいよねってことになって、それだったら・・・ということで今回の結論に至っている部分もあります。だからそういう意味ではポジティブにも捉えているんですけどね。たぶんメジャーレーベルはどこであっても効率を大事にすると思うし、予算があって、期日があって・・・それは理屈としては正しいと思うんですけど、その理屈を離れた非効率的なやり方でもう一度やりたいんです」

---今の「予算」とか「効率」みたいな話と関連しそうなところでもう一つお聞きしたいんですけど、『スポットライト』をリリースしたときにボールズってある意味「持ち上げられていた」じゃないですか。たくさんのメディアに登場して。

「はい。ほんとそうですね」

---で、次に『SEASON』が出るときにはその感じが全然なくなっていて。このブログでインタビューさせていただきましたけど、全体的にはあんまり取り上げられなかったですよね。

「そうなんですよね。おかんも言ってました」

---(笑)。でも『スポットライト』と『SEASON』にそのメディア露出の差の分だけクオリティの差があったか言えばそんなことは絶対ないし、ともすれば『SEASON』の方がクオリティが高いっていう見方もできると思うんです。僕はメディアの中にもレーベルの中にもいたことがないから実際にはこの手のお金やら広告やらの詳細な事情をそこまで正確にわかっているわけではないんですが、いちリスナーとして「あ、こんなに雰囲気が変わっちゃうのか」って素朴にびっくりするところがあったんですけど。

「僕自身もすごいびっくりしたんですよね。そういう感じになるというのはロジックとしてはわかってはいたんですけど、周りの人には「なんでこうなっているんですか」っていう話をわりとしました。でも、自分の周りのスタッフが一生懸命やってくれているのはよく知っていたから、この怒りやむなしさを誰にぶつけたらいいかわからなかったのがきつかったですね。その時に思ったのは・・・音楽ってそもそも誰かと手を組んでやるものじゃないのかもしれないなってことで」

---なるほど。

「自分の作ったものに対して自分と同じ熱量で愛を注いでくれる人って、絶対に存在しないんですよ。そう考えたときに、言い方は悪いですけど「自分よりも熱量が低い人」にそれを触られることって結構ストレスになるなって。作った側とそうでない側には越えられない壁があって、僕はその壁の外側にいる人に自分が作ったものを安心して任せられる性格じゃなかった。だからスタッフの人たちもやりにくかったと思うし。それでもそういう中でめいっぱいサポートしてくれていたわけで、ほんとに感謝しかないです」




フラットになるための作業 そして「音楽を聴かない人」のことを知る

---わかりました。それで今はメジャーから離れて、音楽以外の生活の部分も整えながら仕切り直しに向けて少しずつ動いているという状況ですよね。伺っているところで言うと、音楽活動とは別に会社で働かれているというのと、あと結婚されたということで。おめでとうございます。

「(笑)。ありがとうございます。結婚しました。つい最近です」

---結婚生活はいかがですか。

「まだ一緒に住んでないんですよ。嫁が東京で僕が大阪なので。だからそんなに実感はないです」

---なるほど。会社のお仕事と音楽に関する活動についてのバランスは取れていますか。

「そうですね、今のところは「仕事しているから音楽がやりづらい」みたいなことはないです。むしろ音楽に対して頭柔らかくいられるなあと思いますね」

---今までとは全く違うコミュニティに身を投じているわけで、音楽というものを相対化できているのかもしれないですね。

「はい。仕事をするということ自体もそうですけど、それ以外にも今は意図的にそういうこと、音楽に関する自分の感覚をリセットできるようなことをしようとしています。休止してしばらく、音楽を一秒も聴かなかったんですよ。あと阪口とも全く連絡をとらなかった。とりあえずこれまでの自分にこびりついていたものをまっさらにしたいなと思って。あえてクラブ、それも音楽どうでもいいようなチャラ箱に連れてってもらったり」

---(笑)。

「行ったことないところに行ってみようと思って。どうやってみんなが女の人に話しかけているかもわからんくて、ナンパしてる男の後ろでどうやってるのか観察していたんですけど。僕には理解できない世界でした。ただ、これもっと早く行っといたら良かったなとも思いましたね。みんな全然音楽に興味なくて」

---「みんな音楽聴いてない」というのは音楽好きが集まっているわけではない場所に行くとほんとそう思いますよね。僕もよく会社で感じます。この人たちって別に音楽全然関係なく生きているんだよなって。

「僕も同じです。結構衝撃やったんですよ。おかんも嫁も音楽好きだし、バンドメンバーやスタッフももちろんそうだし、学生の頃も音楽聴く友達とつるんでいたから、そういう世界があることをほんとに知らなかったんですよね」

---山本さんがボールズでメジャーレーベルに行ってやりたかったことって、広くみんなに聴いてもらえる音楽を作ることだったじゃないですか。

「はい」

---それってある意味、今山本さんが職場で一緒にいる人たちがボールズの音楽を聴くっていう世界を目指していたってことだったと思うんですよね。

「確かにそうですね。・・・ああ、僕、全く筋違いなことをやろうとしていましたね(笑)。そりゃこいつら俺の音楽を通勤中に聴かないよな・・・(笑)」

---(笑)。

「そういう人たちのことをほんとに知らなすぎたなと思います。みんなある程度音楽好きだと思って生きてきたけど全然そんなことないっていうのを今さら知ったというか。音楽の世界で仕事していると曜日感覚なくなるから「金曜日の夜」に特別な感情とかなかったんですけど、今は金曜日の夜が嬉しかったり・・・ほんまに世間知らずやったなって思います」


「年内、遅くとも年明けには」

---感覚をリセットする作業の成果は出てきていますか?

「そうですね。僕が取り戻したかったのは「独断と偏見」というか、周りの誰にも左右されずに「かっこいい/かっこわるい」「いけてる/いけてない」を判断できる軸だったんです。「なんかわけわからんけどこれはめちゃくちゃいい」みたいなことをぱっと思えるかどうか。で、だいぶその感じが戻ってきている実感はあります。それはまだボールズがミラーマンだった時の感覚でもあるんですけど、一方でそこにメジャーでやっていた時の経験とかも加わっているんで、そういう新しい基準を持った自分がどんな音楽を作れるのか今はわくわくしています。で、そうやって音楽を作ることについてわくわくできているということにとてもほっとしています」

---なるほど。曲も作り始めているんですね。

「はい。5月末、6月くらいから。納得いくものが出来始めているんで」

---ちなみにどんな感じの音ですか?

「音は・・・ざらっとした感じですかね。「ざらっと」っていうと言い方広すぎますが・・・土臭いですね。流行らなさそう」

---(笑)。

「それをメインにやっていくかはわかんないですけど、今作っているのはそういう感じですね。なんか、土臭い、泥臭い、ざらっとした。で、自分が今聴きたいのはそういう感じのものです。これまで「広く聴いてもらいたい」っていうことを言っていて、「自分で音楽を作る」よりも「作った音楽を聴いてもらう」ことばかりに比重が寄っちゃっていた時もあったんですけど、今はとにかく自分が聴きたいと思うものをしっかり作ることに注力したいと思っています」

---これまでのボールズもしくはミラーマンの曲でタイプが似ているものとかは・・・

「(しばし熟考)・・・難しいですね」

---今までとは違う感じの。

「聴いたことない感じですかね、ざらっとしているけど、ぱんと開けているんです」

---キャッチーではある。

「数か月前にレジーさんにインタビューされていたら「めちゃめちゃキャッチーです!」って言っていたと思うんですけど、世の中のことをちょっと知ってしまったのであれがキャッチーかどうかは・・・」

---(笑)。

「キャッチーではないかもしれない」

---「誰かにとって聴きやすい」よりも、山本さんの耳に気持ちの良いものを作ろうとしている感じですね。

「はい。少なくとも今はそういうものを」

---あとはそれに言葉を。

「書かないといけないですね。無理やり書くことはできると思うんですけど、最初はそうやって作りたくないなと思って」

---『SEASON』では歌詞を意識的に変えた、フワッとした空気感のある歌詞じゃなくて聴き手の心を刺すような言葉を使いたい、というモードでしたよね。そこからの変化はありますか?

「うーん・・・ファンシーな感じがいいなと。いきなり言われても意味わかんないと思いますけど・・・」

---リアルすぎないみたいな。

「そんな感じですね。まだ誰も書いたことのない歌詞を書きたいです。ちょっとずつ気持ちを高めていっているので、そろそろ書けるような気がしています」

---楽しみにしています。作品もそうですし、ファンの皆さんはライブをどういうタイミングでやるのかというのも気になっているかと思いますが。

「実は、もうやろうと思えばいつでもできるんですよ。ドラムももう決まっているし」

---そうなんですか。

「はい。昔の曲でライブやろうということであれば少し準備すれば何とかなるんです。ただ、既存の曲をやるなら休止した意味がないと思っているので。新しい曲でライブ一本できるくらい揃えてからやりたいなと。遅くとも年内、もしくは年明けくらいには何かしらやれると思っています。それがワンマンになるのか企画になるのかはまだわからないですけど、自分たち発信でやるつもりです」

---今置かれている環境だとライブ含めた活動の仕方も自由に考えられるというか、クリエイティビティを発揮できますね。

「そうですね。・・・でもそういうのはメンバーに任せたいかな。僕は黙って音楽を作りたいです。メジャーの時はそういうのも自分から考えなきゃって意識もなくはなかったんですが、やっぱりそういうのが得意じゃないことが分かったんで。とにかく今は、自分が100%、好きなものだけを作る。で、そのうちまた「みんなに聴いてもらいたい」みたいな気持ちもわいてくると思うんですけど、そのときは今までの経験を踏まえてそういう感情にうまく対処できたらなと思っています。そこにとらわれるとしんどくなってしまうというのはよくわかったんで」

---わかりました。では最後に「ボールズどうなってるんだ」と思っているファンの方たちに一言いただけますと。

「何かネット見ていると「解散したのか」みたいなことを言われていたりもするんですけど(笑)、ドラマーも決まって前に進んでいます、ちゃんと動いていますというのが一番伝えたいことですかね。時間がかかってしまっているのは申し訳ないんですが、もう少しだけ待っていてください」

---ありがとうございました。久しぶりにお会いしましたが、元気そうで安心しました。

「こちらこそありがとうございました。こういう状況になるとさーっと引いていく人たちもやっぱりいるので、今回こうやってインタビューしていただけてすごく嬉しかったです。また気合入れ直して頑張ります」


>>>


司会者「インタビューは以上になります」

レジー「ポジティブな言葉が聞けて良かったです。インディーで少し人気になって、メジャーデビュー時に「期待の新人!」みたいに取り上げられる人って複数いるけど、その人たちが全員そのままスターになっていくわけではない。で、フェードアウトしちゃった人って大体その後のことを取り上げられることがなくなっちゃうけど、その人の人生ってのはそこからも続いていくんだよね。厳しい状況に置かれた中で音楽とどう向き合うかってことにこそ実は音楽家として本質が出るのかもしれないなあなんて今回思いました。ここからボールズがどういう音楽を作っていくのか楽しみにしています。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。冒頭にもありましたが次回もインタビュー企画ですかね」

レジー「その予定です。アーティストインタビューとはまたちょっと切り口違う感じでやりますのでしばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る

司会者「前回までインタビューシリーズということでしたが」


レジー「何と期せずしても今回もインタビュー記事になってしまった。この前まとめて告知した後に決まった話なので大目に見てください。というわけで、今回は6月22日に3枚目のアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースしたAwesome City Clubのatagiさん、PORINさん、マツザカさんへのインタビューをお届けします」

ACCアー写
 


司会者「このブログには昨年のクラウドファンディングシングル「アウトサイダー」以来、約1年ぶりの登場です


レジー「この1年のオーサムといえばライブが劇的に良くなっているってイメージなんですが、アルバム前に発表された「Don’t Think, Feel」のMVがめちゃくちゃ素晴らしかった。パフォーマンス面での進化も含めて堪能できて最高」


 


司会者「圧倒的メジャー感」


レジー「この曲は音もMVもすごくストレート、奇を衒わずに直球をがつんと投げ込んできてるところがいいなと思って、アルバムにもそういうモードが表れています。前作『Awesome City Tracks 2』のときもかなりバンドとしての素を見せている感じだったのでそのままスムーズに今作へ流れていったのかなと思っていましたが、実際には紆余曲折あって辿り着いた境地だったようです。まずはそんな話からどうぞ」



>>>


 「Awesome City Clubって何なんだ?」

---昨日ツイッターで、マツザカさんが「めっちゃいい曲が出来た」ってツイートしているのを見ました。


マツザカ「ああ、今新曲作っているんですよ」

---もう次のアルバム用の。

マツザカ「まあアルバムに向けてがっつり作っているとかじゃないんですけど、とりあえず新曲を」

---絶えず作っている感じなんですか?

atagi「僕ら、ストック曲ってのがあんまりなくて(笑)。毎回、レコーディングが終わるたびに「よし作るぞ!」って制作期間に入るんですよ」

マツザカ「今回は余裕持って始めた方だよね」

PORIN「そうだね(笑)。学んだね、いろいろ」

---なるほど。今回の『Awesome City Tracks(※以下ACT) 3』も、前作のレコーディング終わってからばーっと作ったんですか?
 
PORIN「曲によりけりですね。「Vampire」は制作期間に入る前からありました」

atagi「それが基本軸になって、そこから広げていくような形でいろんな曲を作っていったんですけど・・・」

マツザカ「『ACT2』が出てから年始くらいまでに作っていた曲は、一旦全部ボツにしているんです」

---そうなんですか。

マツザカ「だから「Vampire」以外の今回入っている曲は、それ以降に作ったものです」

---どういうきっかけでそんなに大胆な決断をしたんでしょうか。

マツザカ「なんて言うんですかね・・・いろいろあって、みたいな感じなんですけど(笑)。最初このアルバムを作り始めるときに、新しいこと、今までと違うオーサムを見せようって気持ちが強かったんですよね。それでアルバムタイトルも『ACT3』じゃないものにしようなんて話もあったりして。そういうモードで作っていたのが年始までの曲たちなんですけど、何をやってもうまくいかない感じがどうも続いたんですよね。こだわっているんだけどおいしくないご飯、みたいな。で、そこから、「新しいことをやろう」とかっていうのにとらわれなくてもいいんじゃないか?ってなって、それから2か月くらいで収録曲を作り直しました」

atagi「潜在的に「何か新しいことをしなきゃ」みたいな雰囲気があったんですけど、その辺の具体的なイメージをメンバー5人でちゃんと共有できていなくて、にもかかわらず「アルバムにどの曲を使うか」みたいな話に進んじゃったりしていたんですよね。で、「ほんとにこのままでいいの?」ということになり・・・そのままアルバムを作ることもできたんですけど、ここは勇気を出してルネッサンスしよう!と(笑)」

PORIN、マツザカ「(笑)」

---(笑)。

atagi「再生しよう、ということになりました。かなり色んなことを考え込んでしまったんですけど、結果的にはそうやって考え込んだ分、その反動ですごく開けた作品になったと思っています」

---なるほど。前作の『ACT2』は1枚目の『ACT』に比べるとバンドとしてのナチュラルな部分やピュアな側面が出たアルバムだと思っていたし、前回のインタビューでも「バンドとして解放された」なんてお話をされていたので、今みたいな状況だったというのはちょっと意外でした。

atagi「・・・こういう心境について話すとき、意外とPORINは自分の話をしないけど、そのときどう思ってたの?」

PORIN「私は・・・メジャーでやっている以上は多くの人に届けたいなと思っているんですけど、ファーストとセカンドでは思っていたより手ごたえがなかったっていうのが本心ですね」

---もっと届くものにするためには、今回のアルバムで何かを変えなきゃいけないんじゃないかっていう意識があった。

PORIN「はい」

---皆さんそれぞれにいろんな想いがあったんですね。今回のアルバムは、セカンドで自分たちの自然体な感じとか本音を出して、その路線の延長線上にあるもの、推し進めたものっていうイメージだったんですけど、そんなにストレートにつながっているわけでもないというか。

atagi「そうですね・・・ファーストはインディー時代に自分たちだけで作っていたものをベースにしてメジャーで出して、セカンドの時はもっと音楽に対して真面目にありたいって思っていたんですけど、今度は真面目が過ぎてちょっとこじらせてしまったというか(笑)」

---(笑)。

atagi「で、結果どうなったかっていうと、真面目であるとかそうじゃないとか、どう見られたいかとか、そんな話ではなくてもっと感覚的に思ったことを発露させるのが大事で、そういうものが曲としてのエネルギーにつながっていくっていうことに気付いた。今はそういう方向に進んでいます」

---その辺の話は改めて5人でも話されたりしたんですか。

マツザカ「しましたね、かなり。ちょうど以前の曲をボツにするタイミングで、「Awesome City Clubって何なんだ?」みたいな話を5人でじっくりしたりとか・・・アルバムのテーマもそういう中で見えてきました。自分たちはダンスミュージック的なことをやっていると思っているんですけど、単純に「踊れる」だけじゃなくて「心躍る」ようなものを作りたい、とか。言葉に関しては、レジーさんが言ってくださったとおりセカンドの延長線上にあって、セカンドでもナチュラルで強い言葉を乗せられたと思っていたんですけど、もっともっとエモーショナルな部分が感じられる歌詞にしよう、と。PORINがさっき言っていたように、ファーストとセカンドで伝わらなかった人たちに伝えるためにも歌詞についてはもっと研ぎ澄ましていきたいという話をメンバーみんなで共有しました」


「Don’t Think, Feel」が示すメッセージ

---今のお話を聞くと、「Don’t Think Feel」っていう曲のタイトルがめちゃめちゃ意味ありげなものに感じられます。

マツザカ「この「Don’t Think, Feel」って言葉、最初は自分に対しての独り言みたいな感じだったんですよね。さっき話したようなバンドとしてぐちゃぐちゃしていた時期に、「いろいろ考えすぎちゃってるな」と思っている中からぽろっと出てきたもので。だからもっとネガティブな感じの曲になるかと思いきや、いしわたり(淳治)さんとやることで力強いラブソングに昇華されました」

---「考えるな、感じろ!」って、かつてのオーサムのイメージからはかなり遠い言葉ですよね。

マツザカ「はい」

---PORINさんはこの言葉を聞いたとき、どう思いました?僕の中でPORINさんは飄々としたイメージなので、こういう熱い言葉とは距離がある感じがします。

PORIN「確かに、私にはそんなに響いてなかったかもしれない・・・」

atagi、マツザカ「(爆笑)」

atagi「怖いよ」

PORIN「(笑)。でも、さっきもお話ししたとおりバンドの雰囲気があまり良くなかったから、ぴったりな言葉だなと思いました」

---この曲の歌詞はラブソングの体裁をとっていますが、自分たちを鼓舞しているような言葉にも聞こえたんですよね。

atagi「うんうん」

マツザカ「そういう側面はあると思います。1曲目の「Into The Sound」にも同じようなテーマの言葉があって、「お前も同じこと考えてたのか!わかるよ!」みたいな(笑)。結果的にではあるんですけど他の曲にもそういう意味合いのフレーズが散りばめられていて、それが作品の深みにつながったなと僕は思っているんですけど」

---なるほど。さっきちらっとお話も出ましたが、この歌詞はいしわたりさんとの共作で書かれましたよね。これについてはどういう経緯で一緒にやることになったんですか?

マツザカ「もともと、いしわたりさんのいたスーパーカーと僕らってちょっと似てるなあと思っていたんですよね。編成とか、分業していることとか。それでいずれ一緒にやってみたいと思っていたんですけど、今回強いメッセージの曲を作りたいという狙いがあったので、じゃあこのタイミングでお願いしてみようということになりました。今回男女の掛け合いがあるんですけど、スーパーカーに「Lucky」って曲があるじゃないですか」

 

---僕すごい好きです、あの曲。

マツザカ「いいですよね。ああいう男女の目線が交錯するような曲を作りたい、っていうのは以前からぼんやりとあったんです。ただ、「Don’t Think, Feel」に関しては最初からそういうことをやろうとしていたわけでは実はなくて、いしわたりさんと作っていく中であのアイデアが生まれました」

---お一人で歌詞を書くのとはどのあたりが違いましたか?

マツザカ「いろんなことが全然違いましたね・・・僕が書いたものをいしわたりさんが添削して、そこにさらに僕のアイデアを入れて、という形でラリーを続けていったんですけど、いしわたりさんはたぶん言葉の伝わるスピードというか、ぱって聞いた瞬間にどのくらい意味が理解されるかを特に重視していたのかなと思います。ストレートなラブソングみたいな「メッセージをはっきり書く」タイプの歌詞って、僕の中ではまだ照れがあるんですよね。そういう意識でメッセージを忍ばせるくらいの感じで書いた歌詞を見せると、「それだと伝わりづらい」「ここまで言い切ろう」みたいなアドバイスをいただいたりして。そういう観点はすごく勉強になったし、自分の中にも吸収できたんじゃないかなと思っています」

---わかりました。一方でサウンドとしては、よりブラックミュージック的な要素を前面に出している感じですよね。

atagi「そうですね」

---どういった狙いで音作りを進めていったのでしょうか。

atagi「ちょうどこの曲を作る前に、何の気なしにザップ(アメリカのソウル/ファンクバンド)を聴いていて、すっごいかっこいいなと思ったんですよね。僕は以前ソウルバーで働いていたりもしてそういう音楽が好きなんですけど、日本にあるファンクって全体的に軽い印象のものが多いなとは前から思っていて。そういうのではなくて、自分が好きな「重たいファンク」みたいなのをオーサムでやれないかなというところから始まりました。最終的にはポップな歌ものに落とし込めたと思うんですけど、根底にあるファンクイズムみたいなものは意識して作りました」

 

---腰に来る感じはありつつ、とにかくポップでキラキラした楽曲になりましたよね。

マツザカ「完成するまでのバントとしてのストーリーも含めて、マジックみたいなものがかかった曲になったと思っています」

---MVもインパクトありました。それこそファーストの頃のMVに比べるとストレートさが全然違いますよね。以前はもっとコンセプチュアルで、曲の魅力をど真ん中で伝えるよりはちょっと斜めから表現していたと思うんですけど、「Don’t Think, Feel」のMVからは「もうそういうのいいから!」みたいな覚悟を感じたというか。

 



atagi「あの当時とは見ているステージが違うと思います。「いい雰囲気だよね」みたいなことは正直言われ飽きたというか(笑)。聴いている人たち、周りの人たちともっと一緒になって面白いことをやりたい、熱くなりたい、っていう気持ちが強いし、MVにもそれが表れているかなと思います」

---atagiさんにとってはハンドマイクでのパフォーマンスも新たな取り組みですね。

atagi「そうですね。初めてだったんですけど、意外と無理なくできました。この前メンバー5人で僕が働いていたソウルバーに遊びに行ったときに年配の方々が踊りまくっているのを見たんですけど、そういうのも記憶の片隅にありました」

マツザカ「以前「愛ゆえに深度深い」をハンドマイクでやったらどうかって話もあったんですけど、そのときはatagiがあまり乗り気じゃなくてやらなかったんですよね。今回こうやって自然にパフォーマンスできているのは、フロントマンとしての決意みたいなものができてきたんだなと」

---PORINさんはいかがですか。

PORIN「私個人としては、初めて自分の素をMVで出せたっていう実感がありますね。「人形からの脱却」じゃないですけど・・・人間味あふれるものを出すことに何の躊躇もなくなってきたし、そういう心境になれているのは今回のアルバムを作りきったからだと思います」


「一番大事なのは歌」

---「Don’t Think, Feel」に関しては、全体的に強いメッセージが込められている中でPORINさんのパートの儚い感じがかなり効いているなと思いました。

マツザカ「そうですね、あの曲のキラーフレーズだなと思っています」

atagi「あれはエポックメイキングですよね」

---あのパートに胸がキュッとしている人も多いと思うんですけど、PORINさん的にはあそこがこの曲にとって重要だ!みたいな意識ってありましたか?

PORIN「・・・いや、録るまで気づかなかったです」

マツザカ「全く興味ないってことね、この曲にね(笑)」

PORIN「そんなことはないです(笑)。ただ、今までのオーサムだったらありえない言葉づかいなんですよ、あれって。だから最初はちょっと頭の中にはてなが残りつつ・・・って感じだったんですけど、レコーディングして、MVを公開して、いろんな反応に触れる中で「みんなこういうのをいいと思うんだな」って後から理解しました」

---「Don’t Think, Feel」のPORINさんパートの歌詞って、アルバム全体のテーマともつながっているような気がしたんですよね。『ACT3』はいろんな曲に力強いフレーズがありつつも、曲のモチーフとしては気持ちが人に届かない感じとか・・・

マツザカ「はい」

---「Moonlight」は死んじゃった人をイメージしているのかな、とか。

atagi「おお、さすが」

---「届きそうで届かない」とか「いなくなっちゃう」とか、もっというと「生と死」とか、そういう現実社会において向き合わないといけないしんどいことがこのアルバムには描かれているように感じたんですよね。そういうもどかしさみたいなものがPORINさんのあの2つのフレーズに凝縮されているように思えて、そういう意味でも「Don’t Think, Feel」はアルバム全体のエッセンスが詰まっている曲なのかなと。

PORIN「なるほど」

マツザカ「新しいですね、その解釈は」

---今まで以上に現実と向き合っている感じはアルバムの最後の曲の変遷からも感じました。『ACT』の「涙の上海ナイト」は「上海」と言いつつもリアルではない空間がテーマになっていて、『ACT2』の「Lullaby for TOKYO CITY」では「東京」っていう自分たちが住む街について描かれていて、今回は「Around The World」で「世界」を題材にしつつも自分自身の内面に潜っていくような曲になっている。この変化が結構象徴的だなあと。

atagi「・・・次は何にすればいいですかね」

---「宇宙」じゃないですか。

3人「(笑)」

マツザカ「アルバムの最後の曲って、何かしら深い意味を持たせたくなってしまうんですよね。そういう曲って大体制作期間の中盤から終盤にかけてできてくることが多いんですけど、そのあたりから「ああ、アルバムができるんだな」って実感します。「Around The World」も結構ギリギリのタイミングでできました」

---言葉の話について続けて聞かせていただくと、PORINさんも高橋久美子さんと歌詞を共作していますよね。実際にやってみていかがでしたか。

PORIN「自分だけで歌詞を書くよりも、言葉がかなり色鮮やかになったなと思います。私が書いたら表面的に見えるものだったりえげつなくなりそうなものだったり、そういうものをいい具合にファンタジーに落とし込んでもらいました」

---メタファーをふんだんに使っている「Vampire」と<渋谷のミニシアター>から始まる写実的な「エンドロール」の対比も面白いです。

PORIN「「Vampire」はキラキラしている曲だったので歌詞もファンタジックにしたいなと思っていて、「エンドロール」はこれまでにない暗めの曲だったのでリアルな表現を心掛けました。曲調も歌詞も全然違うので、歌い方も自然と変わりました」

---「エンドロール」のつぶやくような歌い方は新境地が開けた感じですね。

PORIN「そうですね。これまでになかったPORINだと思います(笑)」

---(笑)。PORINさんボーカルの2曲って、もっとマニアックにしようと思ったらそういう仕上がりにもできると思うんですよ。リバーブいっぱいかけて、ボーカルと後ろのバランス変えて。

マツザカ「確かにそうですね」

---実際には歌がちゃんと聴こえるポップな曲になっているわけですが、もっといじりくりたい!っていう欲望みたいなものがあるんじゃないかなとか思ったんですけど・・・

atagi「いやー・・・ありましたね(笑)」

PORIN「ね」

atagi「「エンドロール」は僕が打ち込んだトラックが基本的にはそのまま使われている楽曲なんですけど、当初は裏テーマとして「オーサムなりのエイフェックス・ツインをやろう」って考えていたんですよ(笑)。ただ、作っているうちに肩の力が抜けていって」

マツザカ「エンジニアの浦本さんとは結構話し込んでたよね」

atagi「「そういうのをやりたいのもわかるけど、もっと自然でいいんじゃない?」みたいなことを言われたりしながら一緒に整理していきました」

---なるほど。オーサムがバンドとして志向している「広く届けたい」っていう話は、場合によっては音楽的な洗練性とトレードオフになる部分もあるのかなと思うんですが・・・

atagi「うーん、僕は全然そういうふうに思っていないんです。もちろん難しいバランスではありますけど、やれている人はいるわけで。僕らはボーカルありきのバンドだから一番大事なのは歌だと思うんですけど、歌のためにはサウンドが洗練されている方がいいこともあるのかなとか」

マツザカ「今のレジーさんのお話っていろんな場所で何となく共有されているテーマだと思うんですけど、実際に当事者になってみるとあんまり「これは大衆的、これは洗練」みたいな垣根は全然ないというか。僕らの判断がシンプルになってきている部分もあるんですけど、単純に「いいか悪いか」でしかないのかなと思っています」


「どーんと」「単細胞で」「遊びが必要」

---今作の制作過程で「Awesome City Clubって何なんだ?」という根源的なお話をメンバーでされたということでしたが、今回のアルバムを作り上げたことでその問いに対する答え、「オーサムらしさ」もしくは「オーサムらしくあるために必要なこと」みたいなものは見えてきましたか?

atagi「・・・これはあくまでも個人の意見なんですけど、僕としては全然見えていないです。ただ、見えなくていいかなと思っているというのが本心で、それを考えようとしているうちはなかなかクリアにならないのかなと。無意識の中にこそ答えがあると思うので、今はあえてそういう思考は切り離すようにしています」

マツザカ「僕はひとつだけ見えてきたものがあって、それは「真面目になり過ぎないこと」なのかなと思っています。セカンドで真面目になりすぎていたっていう話はさっきatagiからもありましたけど、「真面目に頑張ってクオリティ上げてきました」みたいなことばっかりやろうとしても面白いものができないなというのは最近ほんとに思っていて」

PORIN「遊び心は大事だよね。普段からもっと遊びが必要だなとは私も思っています」

atagi「ん、それは今遊んでないからそういうことを言っているの?」

PORIN「え?遊んで・・・いる方だけど、私は」

マツザカ、atagi「(笑)」

---なるほど(笑)。

PORIN「(笑)。バンドのみんなでソウルバーに行った時もすごくいいマインドが生まれたし、ああいうことは個々でもやっていく必要があるのかなと思いました。そこからバンドとしての余裕とかおしゃれさが生まれるような気がするし、お客さんも自分たちにそういうことを期待していると思うので」

マツザカ「「こういう感じの曲はこんな人に受けそう」とか「こういう仕掛けで」とか、そういうことは自然に気にしちゃっていたりするので、「何も考えない」くらいの方が僕らにとってのちょうどいいバランスなんだろうなと思います。いろんな思考の枠組みから自由になった方が、PORINの言う遊び心も生まれるのかなと」

---まさに「Don’t Think, Feel」ですね。必要以上に考えすぎないことが大事というか。

マツザカ「そうですね。今までは「この曲は誰々っぽいからやめよう」みたいなマイルール的なものもあったんですけど、だんだんそういうのものなくなりつつあるんですよね。自分たちがいいと思うならそれを信じてどーんとやっちゃおう、っていうのが今のバンドのモードです」

atagi「仮に考え足らずだったとしても、自分たちが勢い持って「これ、良くないですか!?」って言えるものを作っていきたいですね。「単細胞で行こう!」って言ったらちょっとおかしいですけど(笑)、あれこれ考えて深みにはまって、わけわかんないことになるっていうのが一番よくない」

---なるほど。で、そんなモードのまま、新しい曲を作り始めていると。

atagi「・・・外タレのインタビューみたいなこと言いますけど、今ものすごくいい状態なんですよ(笑)。ここからツアーもあるし、またいろんな経験ができればと思っています」

マツザカ「まだバンドとして経験が浅いから、この年になっても「成長している」みたいな体験ができているんですよね。些細なことなんですが、昔ラジオのレギュラー番組をバンドでやっていたことがあって、その特番をこの前久々に収録したんですよね。で、当時はみんなしゃべれなくて僕がMCをやっていたのに、今回はPORIN大先生が回すようになったり(笑)。僕ら自身が新しい体験をしているのと同じように、お客さんにも新しいものをどんどん提示できていったらいいなと思います」

---わかりました。では最後にこの先に向けた意気込み的なものをお聞きしたいんですけど、せっかくなんでラジオも回せるようになったPORINさんにしめていただけますと。

PORIN「はい(笑)。この先の話もあったんですけど、まずは今回のアルバムがものすごくいいものになっていると思うので、ぜひ聴いていただいて、良かったらライブにも遊びに来ていただきたいです。なんか普通だな・・・(笑)」

atagi「もっとチャラいやつ、遊んでるやついこうよ(笑)」

マツザカ「どのクラブでかけてほしいの?」

PORIN「・・・渋谷のContactでお願いします!(笑)」

---(笑)。今後の作品も期待しています。ありがとうございました。

3人「ありがとうございました!」


>>>

 司会者「インタビューは以上になります」

レジー「バンドとしてどんどんシンプルになっていってるのがよくわかる。あと洗練性と大衆性はトレードオフじゃない、って話も面白かった」

司会者「インタビュー中にもありましたが、この辺は作っている人よりも周りにいる人の方がとらわれているのかもしれないですね」

レジー「うん。紋切型のフレームだから便利なんだけど、そんな単純な二項対立の中で音楽を作っているわけじゃないんだよね。そのあたりはちょっと反省しました。1枚目から音楽的にも精神的にもだいぶ変わっていると思うけど、実はまだそれから1年と数か月しか経ってないんだよね。すごいスピードで進化しているし、この先も楽しみです。お時間いただきありがとうございました。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「一旦未定で。もしかしたらフェスの話かな」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」


Shiggy Jr. 個別インタビュー(3) 池田智子が語るボーカリストとしての覚悟

司会者「Shiggy Jr.個別インタビューも今回でラストです」

レジー「はい。予告通り、ボーカルの池田智子さんのインタビューをお届けします」

ShiggyJr_main_photo_3rdsg - コピー
 

司会者「池田さんは普段のインタビューでも率先して発言していただいていますし、日頃の言動やバンド外での活動も含めてShiggy Jr.のスポークスマン的な存在ですね」

レジー「うん。そんな池田さんには今回のEPの聴きどころに加えて、この1年間のバンドの動きを総括してもらったり、活動を通してご自身が考えていることについてパーソナリティーに関わる部分も含めてお話しいただきました。まずは読んでいただきたいのですが、できれば過去2回分、原田さん森さん諸石さんのインタビューが未読の方はぜひそちらも合わせて読んでいただきたいと思います。それではどうぞ」


>>>>>> 

 
多様な楽曲で見せるボーカリストとしての進化


---元気ですか。

「はい、あ、元気です。健康観察からなんですね・・・(笑)」

---(笑)。じゃあよろしくお願いします。

「お願いします」

---今日池田さんには3つの観点からインタビューさせていただきたいなと思っています。まずは「Shiggy Jr.のボーカリスト」として、という話です。僕、実はShiggy Jr.のライブを最近見れていなくて少し古い話になってしまうんですが、去年の赤坂BLITZでのワンマンに行かせていただいたときに池田さんの歌がすごい良いなーって思ったんですよね。

「おおー、ありがとうございます。嬉しい」

---簡単な言い方になっちゃうんですけど、声がでかくなったなっていう印象がすごくあって。いい歌と声量って不可分なものだと思うから、そこが強化されているのは素晴らしいなと。そのあたり含めて、ご自身のボーカルを良くしようというところで特に気をつけていることなどあれば教えてください。

「バンドを組んだ時からトレーニングはしていて、それが身になってきているっていうのはまずあるのかなと思っています。あとは意識の話で、ライブをするときの恐怖心みたいなものにだんだん勝てるようになってきているかもしれないです。ライブ前はいまだに緊張するけど、精神的に少しずつ強くなってきているというか」

---精神的に強くなるきっかけとかがあったんですか。

「ライブの回数を重ねてきているっていうのが大きいとは思うんですけど・・・最近は、「ライブに来てくれるお客さんは、怯んでいる自分を見に来ているんじゃない」っていうことをよく考えるようになりましたね。お金と時間とエネルギーをかけてライブに来てくれる人たちに対して、仮に声が裏返ってしまったとしても堂々としている自分を見せないとダメなんだ、と。そういう気持ちと恐怖心が毎回戦っている感じです」

---わかりました。では、今回のEPに収録されている4曲についてお聞きしたいんですけど・・・1曲目の「恋したらベイベー」は、例によって原田さんの妄想が歌詞で炸裂しています。

 

「(笑)」

---今回の歌詞をどうやって解釈して自分のものにしていったんですか。

「歌詞を見たときに、すごくキャッチーなキャラクターだなと思いました。好きな人にすごく積極的に行くっていう感じがマンガの主人公みたいだなと。だから自分に重ねるというよりは、その主人公のかわいさみたいなもの、「強気だけどほんとは不安」っていう雰囲気をちゃんと出したいなと考えて歌いました。今回のボーカル、3回録り直しているんですよね。テイクを重ねたとかじゃなくて、「これで完成!」っていうのを3回。たぶん史上最多なんですけど」

---へー。

「最初に録ったのが「GHOST PARTY」をリリースするかしないかのときだったんですけど、そのときはもうちょっと大人っぽい仕上がりになっていたんですよね。今回シングル切れるってなって、じゃあもっと元気な声の方がいいねという話になり、そこから微調整を繰り返して今のものになりました」

---「元気な声」ということだと、あの曲の歌い出しはかなりガツンと来ますね。

「あそこをどのくらいのテンションにするかは結構相談しました。原田くん(原田茂幸、ギター)からも「<べー>の伸ばし方はカーンと抜ける感じがいい」っていう要望があったりして、かなりこだわって録りました」

---一方で、2曲目の「Still Love You」はかなり大人っぽい感じで。すごくこの曲好きなんですけど・・・新しいShiggy Jr.が聴けたな、と思いました。

「ありがとうございます、私もすごく好きなんです」

---サビの池田さんの歌い回しが胸に刺さります。

「やった(笑)。でもこの曲、ほんとに難しいんですよ!今まで録った曲の中で一番難しかったかもしれないです。リズムが肝になる曲だと思ったので、リズム隊のグルーヴを崩さないようにっていうのは特に気をつけていました。あとはこの曲の原田くんのイメージがMISIAさんだったからそういう歌い上げる感じの音源を聴いて練習していたんですけど、あんまりそっちに寄りすぎちゃうと私が歌う面白みがなくなっちゃうから、歌い上げつつも自分らしさは残すようにしたいなと考えていました」

---続く3曲目の「key of life」はまた前2曲と雰囲気が違いますが、他の曲よりもまっすぐ歌っているなあという印象を持ちました。

「ああ、確かにそうかもしれないですね。この曲は生っぽい感じで、音程がちょっと上ずっているところとかも結構残しているんですよ。だからストンとした感じに聴こえるのかも。アニメのタイアップ曲なんで、今見てくれている小さい子が大人になった時に歌ってくれたりするような曲になってほしいなと思っています」

---アニメの主題歌なので、普段Shiggy Jr.を聴かないような人たちも届きそうですね。小さいころ聴いた曲って結構覚えてるし。

「そうなんですよね。いろんな人の心に残っていったらいいなと」

---で、4曲目の「TOWN」は前からライブで演奏されていた曲ですが、今回収録しようとなった理由はどんなところにあるんでしょうか。

「今回メンバーの希望でEPという形をとれるってなったんですけど、他の3曲と並べたときに何が入ったらバラエティに富んだ感じになるかなっていうのを考えていく中でバンドサウンドっぽいものが欲しいという話が出て、「あ、じゃあこれが一番いいじゃん!」となりました。前から音源化したいとは思っていたので、やっと出せるというか」

---なるほど。待望の音源化。

「そうですね(笑)。「Saturday night to Sunday morning」と同じくらいからやっているから」

 

---僕が初めてmona records(※以下モナレコ)で見させていただいたとき(2014年1月)にも演奏されていた記憶があります。

「ほんとに昔からある曲なんで・・・待たせたなって感じです(笑)。いつもは音源を作ってからライブでやることがほとんどなんですけど、今回はライブが先だったんで、レコーディングの段階でお客さんの前で歌った思い出がたくさんあったんですよね。そういうことを思い浮かべながら歌を録ったので、すごく楽しかったです」


「社会人1年目」の楽しさと大変さ


---次に、2つ目の観点として、池田さんはShiggy Jr.のボーカルであるとともに、バンドの広報担当的な・・・

「(笑)。はい」

---先頭に立ってバンドを広めていく、みたいなことをされているポジションなのかなと思うんですが、そんな池田さんから見てこの1年、つまりメジャーデビュー1年目を総括していただきたいなと。良かったこと、改善したいと思ったこと、それぞれあると思うんですけど。

「そうですね、この1年を振り返ってみると、やっぱりスタッフさんがついてくれたことっていうのがとにかく良かったなと思います。自分たちだけではできないことをかなりの部分でサポートしてもらえたし、その中で音源をこだわって作ったり、今まで行けなかった場所にライブをしに行けるようになったりできたので。で、改善したいことは・・・ちょっと抽象的な言い方になっちゃうかもしれないんですけど、メジャーデビュー1年目でわからないことがたくさんあって、いろんなことのバランスに悩むことが多かったなあと」

---バランスですか。

「たとえば、「こだわり」と「わがまま」の境界線はどこなのかとか、どこまで本音を出して良くてどこから隠さなきゃいけないのかとか・・・インディーでやっていた時は「別に私は私でいいじゃん!」って言えちゃっていたのが、いろんな人が関わってくる大きなプロジェクトになっていく中で、「これをやったら誰がどうなっちゃうんだろう」みたいなことを考えたりとか・・・(笑)」

---なるほど。

「そういう状況で、それでも自分を貫いて思ったことを言うときもあれば、もっと良い方法があるならと自分の考えを一旦引っ込めることもあったり・・・そういうバランスで悩むことや学ぶことがたくさんあった1年でした。2年目はもうちょっと自分なりのやり方が見つかっているのかな、という感じです」

---単に「好きにやればいい」みたいなところから、いろいろな責任が発生する環境に変わっていったと。

「まあでも、それが特にしんどいかっていうとそういうことでもなくて、人並みにって感じですね。「私だけがこんなにつらい!」とか「アーティストって苦悩する職業なんだ!」とか・・・(笑)」

---(笑)。

「そういうのではないです。普通の企業で働いている周りの友達を見てもすごく苦労しているし、それと変わらないのかなと。自分の好きなことがやっと仕事になって、だからこそこういう経験ができている、みたいな感覚の方が強いですね。社会人1年目で、「あ、こんなこともあるんだ」って新鮮に感じているというか」

---社会人1年目、なるほど。「会社に所属する」みたいな意味では実際にそうですもんね。

「ちょっと遅いんですけどね(笑)」


「もっと行きたい」という気持ちと「原点回帰」

---この1年でShiggy Jr.の存在は着々と広まりつつあると思うんですけど、池田さん的にこのスピード感はどのように認識されているんでしょうか?想像していた通りなのか、思っていたより速いのか、それとも少し手間取ったなというのが正直なところなのか・・・

「うーん、言い方がすごく難しいな・・・確実に言えるのは、「まだまだだな」「もっと行きたいぞ」って思っているということですね。たぶんメンバー全員そうだと思うんですけど」

---ちょっと意地悪な聞こえ方をしちゃったら恐縮なんですけど、去年「サマータイムラブ」をリリースしたときに「オリコン7位を目指したい」っておっしゃっていたじゃないですか。

 

「ああ、はい」

---僕もそのくらい行くのかななんて思って見ていたんですけど、ふたを開けてみるとそこまで行かなかったですよね。

「うんうん」

---そういうのも含めて、池田さんないし皆さんの中で「もっといけたんじゃないか」みたいな気持ちが多少なりともあるのかな、と思ってさっきの質問をさせていただいたんですけど。

「なるほど。・・・オリコン7位って言った時は、スタッフさんがざわついていたんですよね。まじか!みたいな(笑)」

---(笑)。

「あれは何も知らなかったから言えた部分もあったんですけど・・・でも、いつでも夢は大きく持ちたいし、それにもしその夢を実現したとしても満足するのは一瞬だけだと思うんです。すぐに「もっとできるんじゃないか」って思うはずだし、これからもずっとそうなのかなと」

---今回のリリースを発表する際に、モナレコでイベントがあったじゃないですか。あれに行ったとき、ちょっと懐かしい気持ちがして。

「ああ、そうですよね」

---1年前に渋谷でやったメジャーデビューイベント(@渋谷 duo MUSIC EXCHANGE)の方が華やかではあったけど、それに対して先日のモナレコのイベントは派手ではないけどすごくShiggy Jr.っぽいなという印象を受けたんですよね。今回リリース間隔も少し空いた中でああいうイベントをやったっていうのは、「初心に帰る」みたいな気持ちがメンバーの皆さんにもあったのかなと思ったんですけど。

「ほんとにそういう感じですね。今回EPという形で4曲入りの作品を出すのも「原点回帰」というか、「Shiggy Jr.はいろんなタイプの音楽をやっているんだぞ」っていうインディーの時から変わっていないバンドの良さをちゃんと伝えたいっていう思いもあるんですよね。じゃあその「原点回帰」を一番表せる場所ってどこなんだろうってメンバーで話をして、やっぱりモナレコでやりたいよねってなったという経緯があります。だからメンバー自身もすごく懐かしい気持ちがありました」

---このタイミングで「原点回帰」をするというのは、心のどこかに「一度リセットしたい」というような気持ちがあったんでしょうか。

「・・・もしかしたらあるのかもしれないですね。スタッフさんが変わったりして、年末年始はいろいろバタバタしていたので。リリースが半年くらい空いたこともあってその間に個人個人もすごくいろんなことを考えたし、メンバー4人での話し合いも何度かしました」

---その話し合いっていうのは、バンドの方向性とか・・・

「そうですね。ミーティングもそうだし、メンバー4人だけのLINEがいまだにあるのでそれがたまに動いたりとか。メンバーとの意思疎通の重要性とか、バンドとして何を大事にしなきゃいけないかとか、そういうことをすごく考えた半年間でした」

---Shiggy Jr.の4人はいつも楽しく騒いでいるイメージですけど、そういう本音トークというか深い話もするんですね。

「しますね。仲がいいからこそそういう話ができるというか、意見が違ってもけんかには絶対ならないし。たとえば、自分がいっぱいいっぱいで「あんな言い方しなければよかったな」と思っていても、メンバーは自分が言いたかったことを理解してくれていたりするし、そういう阿吽の呼吸みたいなものが増えてきたかな。メンバーの仲とか信頼関係はどんどん良くなっていて・・・うん、いい感じです」


「根っからハッピーな人間ではない」からこそ頑張れる


---ここまでShiggy Jr.のボーカルとして、次にShiggy Jr.の広報担当としてのお話を伺ってきたんですが、最後に池田智子さんっていう一人の人間についてお聞きしたいと思います。

「おお!どきどきしますね(笑)」

---(笑)。さっきお話しいただいた「どこまで自分の本音を出すか」みたいな話ともつながるかもしれないんですけど、今のShiggy Jr.における池田さんの役割は「原田さんが作った曲をボーカルとして表現する」というものじゃないですか。で、人前で歌を歌いたい人である以上、「自分の想いを伝えたい」とか「自分の内面を知ってもらいたい」みたいな気持ちも、ないことはないんじゃないかなという気がしていて。そういうところで思い当たることがあるか、それともそんなことは全然考えたことがないということなのか、そのあたり教えていただければなと。

「歌詞の意味とか内容に加えて、自分の気持ちはどうしているのかってことですよね。実は、それは最近よく考えているんですよ。曲を作る人たちはこういう感じで言えない気持ちを歌詞にしたりライブで表現したりするんだなって実感したことがあったので、レジーさんすごいなと思いながら聞いていたんですけど・・・(笑)」

---ありがとうございます(笑)。

「ただ、今はボーカリストとしての自分の役割を全うしたいという気持ちの方が強いです。あとは、自分がライブで歌うときに歌詞の内容を伝えようとするのは当然あるとして、最近はそれに加えて「今日来てくれたお客さん、ハッピーになって帰ってくれよ!」っていう念みたいなものを込めるようになりました。Shiggy Jr.には切ない曲もありますけど、ライブ全体でハッピーなものになるようにしたいって考えているから、その気持ちが伝わってほしいなと」

---今「ハッピー」という言葉が出ましたが、Shiggy Jr.の音楽のベースには「みんなをハッピーにする」っていう使命みたいなものが昔からありますよね。それを強く信じることができる背景には、どういう気持ちがあるんでしょうか。 確か以前インタビューさせていただいたとき、池田さんは「自分は昔インターネットにこもっていた」とおっしゃっていたと思うんですが。

「はい。家にひきこもりすぎて人と話せなくなっていたんで・・・」

---そういうエピソードから考えると、池田さんって必ずしも「全身全霊ポップで元気でハッピーです!」って人でもないのかなと・・・

「そうですね(笑)。違うと思います」

---にもかかわらず、Shiggy Jr.で音楽をやる時には「みんなにハッピーなものを届けるんだ」っていうモードになれる。そのあたりはどんなふうにご自身の状態を持っていっているんでしょうか。

「うーん・・・そこは自分の中でもまだ模索しているところもあります。自分がずーんとなっているときにもライブはあるし、今の自分の状態とライブで表現しないといけないことの間にすごく差がある、どうしようっていう状況もこの半年の間に限ってもなくはなかったし。でも、そういうのって何かしらみんなあると思うんです」

---そうですね、まさにさっきおっしゃっていた通り、社会人であればそういうことは普通にありますよね。

「そうですよね。それでもステージに立つと勝手にスイッチが入ることもあるし・・・自分は根っからハッピーな人間ではないし、昔はずーっと家にこもっていて(笑)、どこかにちゃんと自分の居場所ができたらいいなって思い続けていたから。だからこそ、ほんとは苦手だった人前に立つっていうことも振り切って頑張れているのかなと思います」

---わかりました。では最後に、先ほど「原点回帰」というお話もありましたが、ここからShiggy Jr.というバンドが改めて動いていくにあたって何を目指していくのか、その中で自分は何をやっていきたいかみたいな話をお聞かせいただけますと。

「国民的なポップバンドになりたい、っていうのは相変わらずすごくあります。あとはやっぱりとにかく音楽を続けていきたい、ステージに立って歌を歌って、みんなを元気にするっていうことを続けていきたいんですけど、それをやり続けていく中でShiggy Jr.に関わっている人みんな、メンバーやスタッフさん含めた全員で幸せになりたいですね。あとはもっと大きなところでライブをやりたい、ホールでもやりたいしいつかドームでもやりたいという目標はメジャーデビューの前から変わっていないです。昔は「ホールツアーをやりたい」なんて気軽に言っていて、今はその難しさもリアルにわかってきてはいるけど、やりたいと思う気持ち自体はインディーの頃と全く同じだし、これからもその気持ちのまま進んでいきたいと思います」

---いつか47都道府県ホールツアーとかやってほしいですね。Shiggy Jr.が志向しているものに合いそうな感じがします。

「やりたいですね!そのくらいの大きなことをやりたいなって思っています」


>>>>>>


 司会者「インタビューは以上になります」

レジー「バンドの外向きの顔としての大変さと、それをやり続ける覚悟みたいなものを感じました。100%ポップでハッピーなものをやるためにはいろんなことを飲みこんだり抱えたりしなきゃいけないし、心の内面みたいなものを見せる方がある意味ではよっぽど簡単なんだよね。その辺は先日のいきものがかり水野さんのインタビューとも同じような感触がありました」

司会者「内面やメッセージを見せていくってのはShiggy Jr.じゃないんじゃないか、みたいな話は原田さんのインタビューでもありましたね」

レジー「うん。今回個別にインタビューをしてて、4人が目指しているものとかやろうとしていることっていうのがほんとに揃ってるなあと改めて思いました。ここまで共通認識がばっちりそろっている組織、なかなか作れないよ。文字通りバンド一丸、一心同体って感じがすごくしました。ぜひともこのまま、というかさらに加速して突っ走ってほしいなと切に願っています。今回の企画は作業量としてはなかなか負荷が大きかったんですけど、いろんな話が聞けて面白かったです。読んでいただいた方の中でもこのバンドに関する新しい発見があったら嬉しいですね。改めてShiggy Jr.の皆さまおよび関係者の皆さま、ありがとうございました。それではこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「ちょっと一旦未定で」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

Shiggy Jr. 個別インタビュー(2) 森夏彦・諸石和馬が語るバンドへの愛と信頼

司会者「予告通り、『恋したらベイベー -EP』リリースにあたってのShiggy Jr.個別インタビュー第二弾ですね」

レジー「はい。今回はリズム隊のおふたり、ベースの森夏彦さんとドラムの諸石和馬さんのインタビューをお送りします」

ShiggyJr_main_photo_3rdsg - コピー
 (写真左端が諸石、右端が森)

司会者「Shiggy Jr.のインタビューはボーカルの池田さんとギターの原田さんが対応されていることが多いので、このおふたりだけというのはなかなか貴重ですね」

レジー「そうね。この辺はShiggy Jr.を以前から追っているレジーのブログならでは、ということで。今回のインタビューではリズム隊の立場から見たEP収録曲について、それからおふたりにとってのShiggy Jr.というバンド、および池田さんと原田さんの存在などについてお話を伺いました。さすが高校時代からコンビを組んでいるだけあって、息の合ったやり取りを聞かせてくださいました。それではどうぞ」


>>>>


改めて考える「Shiggy Jr.らしさ」、そして「Still Love You」との苦闘

---森さんは先日のNegiccoの中野サンプラザは見に行ったんですか?

森「行きましたよ・・・最高でした」

---(笑)。

森「マジでよかった。バンドの演奏もほんとすごかったし。Negiccoの曲はバンドに合いますね」

 

---ほんとはNegiccoの話ももっと聞きたいんですけど・・・

森「今回は趣旨が違いますね(笑)」

---Negiccoの話は1年前のインタビューでも少しさせていただきましたが、「1年前に聞いた話」で言うと、諸石さんはもう「サンキュー」を演奏する際にピリピリしなくなりましたか?

諸石「そうっすね(笑)。最近は自由に楽しめている感じがあります。だいぶ慣れてきたと思います」

---わかりました。ではここから本題に入りたいんですけど、前作「GHOST PARTY」から今回のEPまで少し間隔が空きました。リリースにあたってはどうですか、「やっと出せる」って感じですか。

 

森「そうですね、ちょっと空いちゃったんで」

諸石「7か月?」

森「そう」

---その間って、メンバーの皆さんとしてはどういう雰囲気だったんですか?ライブもありましたし活動が止まっているという感じではなかったと思いますが。

森「ライブはやっていましたけど、リリースがないと不安になる気持ちもやっぱりありましたね。個人的には、新しい作品を発表したいなって思っていました」

---楽曲としては今回EPに入っているどの曲も「GHOST PARTY」からは振れ幅があると思うんですけど、その辺はリズムを担っているおふたりからすると、「結構違う感じのアプローチをしなきゃいけないな」って感じなのか、それとも「まあShiggy Jr.としてはこれくらいの幅の中でやるんだろうな」ってことなのか・・・

諸石「後者だと思います。もともと曲のバリエーションはたくさんあって、どこにでも振り切れる強さがShiggy Jr.の良さでもあると考えているので。今回のEPに関しては、4曲ですごくいいバランスをとれたかなと思います」

森「楽曲の幅の広さに関してShiggy Jr.は寛容っていうか、何をやってもShiggy Jr.っぽくなる、池田(智子、ボーカル)が歌って、しげ(原田茂幸、ギター)が曲作って、俺らが演奏すればそうなるんで、振れ幅がでかいっていうのは特に問題じゃないですね。だからアプローチの仕方も割といつも通りで、曲に合ったラインやリズムパターンを作るということに集中していました」

---森さんが今まさにおっしゃっていた「Shiggy Jr.っぽい」というところについてもう少しお聞きしたいんですが、Shiggy Jr.っぽい曲や音楽ってどういうものだと思いますか?4人が鳴らせば・・・ってのは大前提としたうえで、もう少し言語化することはできますか。

森「そうですね・・・わかりやすさ、キャッチーさ、あとは池田の声とか」

諸石「うん。池田の声は大きいと思う。しげのメロディラインも特徴的だよね」

森「サウンドで言うとどうだろうな・・・「四つ打ちだからShiggy Jr.」でも「速いからShiggy Jr.」でもないし、切ない曲もあるし、でもそういうのも全部Shiggy Jr.っぽいから、音楽ジャンル的な意味では定義しにくいかもしれないです」

---やってみたら今回もShiggy Jr.になったな、みたいな。

森「そうです」

諸石「現状の「Shiggy Jr.っぽさ」で言うと、「サマータイムラブ」とか「恋したらベイベー」のような「ポップ、でもちょっとだけレトロな感じ」みたいなことなのかなと個人的には思っています」



 

---わかりました。今お話にも出た通り今回のEPには4曲収録されていますが、リズム隊のおふたり的に特に大変だったのは・・・

森、諸石「(食い気味に、かつ苦笑しながら)「Still Love You」ですね・・・!」

---間髪入れずにきましたね(笑)。

森「「Still Love You」はね・・・やばいですよあれは・・・」

諸石「ほんとに・・・」

---やばさをぜひ具体的に。

森「とにかく難しいんですよね」

---ベースはいろんな音の隙間に入っていく感じで、かつ弾きすぎないプレイだなと思って聴いていました。

森「まさにそうなんですけど、弾きすぎないシンプルなフレーズをおいしいところに着実にはめていくことが重要だったので、「針の穴に糸を通す」みたいな正確さが求められていたんですよね。それがしんどくて。しかもあの曲のテンポが・・・」

諸石「BPMが絶妙なんですよね。遅くもないし、速くもない。微妙に我慢し続けないといけない」

森「競歩みたいな感じなんですよ。走りたい!って気持ちをずっと抑えながら」

諸石「ドラムはそのテンポの中で16ビートを基本的には同じパターンで刻み続けるっていうのが本当に大変でした。最初に録音した時の、スタジオに漂っていた絶望的な感じは忘れられないです」

森「録り終わった後にみんなで聴いた時、ディレクター含めて全員真顔なんですよ(笑)。その沈黙の中で、「・・・じゃあもう一回やってみようか」って。で、何回やってもできなくて・・・事前に結構練習したんだよね俺ら」

諸石「うん。「これはやばい」って言って2人でかなり仕上げていったつもりだったんですけど・・・」

森「その結果あれだからね。なかなか満足いくものができず、スケジュールも押してしまっていろんな方に迷惑をかけてしまい・・・ほんとに凹みました、音楽辞めようかなってくらいに。終わった後、俺らスタジオのリビングルームみたいなところで動けなかったですから。あれきつかったよな?」

諸石「あれはね・・・」

森「今までで一番辛いレコーディングでした」

---お話を聞いているだけで辛さが伝わってきます。臨場感がすごい。

森、諸石「(笑)」

---でもあの曲、Shiggy Jr.としては新しいですよね。

森「そうですね」

---僕もすごく好きです。

諸石「これはすごいいい曲だなって思いました」

森「あとはライブでどうやるかなんですけど、あれから俺らも修行したので(笑)、もう大丈夫だと思います」


タイプの違う楽曲でリズム隊が果たす役割

---「Still Love You」以外の曲のお話も聞きたいのですが、「恋したらベイベー」はリズムのアプローチで言うと「サマータイムラブ」に近い雰囲気なのかなと思いました。

諸石「そう・・・かな」

森「曲調は確かに近いですよね」

---キックがずっと入って、その上をベースが動いて・・・みたいな組み合わせに近いものを感じたんですけど。

諸石「ああ、そういう意味ではそうですね」

森「ベースも16分音符の同じようなフレーズがあったりしますね。サビがスラップなのも共通しています」

---「サマータイムラブ」の時のインタビューでは「スラップは苦手」とおっしゃっていましたが・・・

森「Shiggy Jr.の曲はほんとスラップ多くて大変なんですけど・・・(笑)。少しずつですけどだんだんうまくなってきました」

---「恋したらベイベー」はあたまのボーカルがインパクトありますよね。

森「ラジオとかで、あそこで掴みたいですね。なんだこれ?って(笑)」

諸石「始まった瞬間の」

森「お店とかで流れて、ちょっと店内ざわついてほしいです。どうしたこの曲?って」

---(笑)。3曲目の「key of life」は、最初聴いた印象だと「バンド感」みたいなものは他の曲より後退しているように思ったのですが、ああいう曲の中でベースとドラムはどういう役割を担おうとする感じなんですか?

森「あの曲は・・・時間がなかったんですよね、レコーディングの時に」

諸石「ぶっちゃけね」

森「だからあんまり変なことはしないで、基本的には曲のボトムを支えることだけやろうと思っていました」

---なるほど。4曲目の「TOWN」はそれこそおふたりが加入する前からある楽曲ですけど、ライブでもお馴染みですよね。

諸石「ライブでやってるのとはアレンジ変えたんだよね」

森「変えたっけ・・・あ、そうだ。バスドラとかね」

諸石「リズムをすごくシンプルにしたんですよね。その分、池田としげの歌の兼ね合いとかホーンとかがバンと前に出るようにアレンジしたつもりです」

---なるほど。改めてですけど、ほんとに4曲ともタイプが違いますよね。

森「(笑)。ただ、さっきの話ともつながりますけど、音楽的な共通点がなくてもどれもShiggy Jr.になっているというか、同じところにいる感じになっていると思っています」


Shiggy Jr.から得た刺激、Shiggy Jr.にもたらしたもの

---今回のEPがちょうどメジャーデビューして1年くらいであるとともに、おふたりはShiggy Jr.に加入されてから2年ちょっと経つということになりますね。加入後いろいろあったと思うんですけど、特に印象深いこととかっていうとどんなことになるんでしょうか。

森「印象深いこと・・・いっぱいあって難しい」

諸石「いろいろあったな・・・」

---今の4人の佇まいってどこからどう見ても違和感がないと思うんですけど、最初は池田さんと原田さんがいるところに森さんと諸石さんが加わったわけですよね。今みたいにぱちっとはまるようになったきっかけって何かあるんですかね。

森「何かの出来事によって一気に変わった感じではないと思いますね。いつの間にこうなったってことだと思うんですけど・・・「この4人は絶対に大丈夫」って感じになったのは2年前の夏くらいかなあ」

---『LISTEN TO THE MUSIC』のリリースパーティーあたり。

 

諸石「そうですね」

森「あの前後はほんとに毎日一緒にいたんで。1か月間連続とか全然あったし」

---すごいですね。夫婦みたい。

森「(笑)。その中で結束が強まりました」

---Shiggy Jr.に加入して、学んだことや刺激や受けたことなどあれば教えていただきたいです。個人的なことでも全然結構なんですけど。

諸石「自分はこれまでアンダーグラウンドのシーンでずっとやっていて、今はShiggy Jr.に入っていわゆるメジャーシーンにいるんですけど。その両側を経験したことで、いろいろ感じることはあります。最近は、もっと自分がプロでありたいとか、もっとたくさんの人に好きになってもらいたいとか、そんなことをより強く思うようになりました」

---アンダーグラウンドのシーンで活動されていた時は、そういう意識はあまりなかったんですか?

諸石「なかったわけじゃないですけど・・・以前自分がいた環境のことを思い返すと、極端な話、誰かに好きになってもらう必要はなかったんですよね。自分たちがかっこいいと思うことをやって、好きだったらついてこいよって感じの空気が強かったから。だからこそシーンとしては尖ったものになっていくんだと思うし、そういうところで音楽をやるのももちろん楽しかったです。ただ、最初は「音楽で売れたい」って思いがあって、そのためにすごい音楽をやろうとしていたつもりだったのに、周りの人同士で認め合うみたいなことを繰り返しているうちに、いつの間にか目的が「広く知ってもらう」とかではなくなってきちゃうというか・・・今振り返ってみるとそんな構造だったなと思います。アンダーグラウンドとメジャーのどっちが良い悪いということではなくて、大きく違うんだなあと」

---なるほど。

諸石「そういう場所から今の環境に来たので、音楽を売ることや音楽をビジネスにすることの大変さを痛感しています。それと同時に、バンドマン同士の憶測ではなくて実際にいろんな経験をしている人の話を聞けたり、過去のデータがあったり、ほんとにいろんな側面からのサポートを受けられているので本当に恵まれているなあと思っています」

---森さんはいかがですか。

森「いろいろあるんですけど・・・単純に、頑張ることって大切だなって思いました。一つ一つの行動に意思とか意味を持ってやり続けていれば、絶対に未来につながっていくんだっていうのをShiggy Jr.に入ってからはよく考えます。池田がやっている「お願いごとノート」はまさしくそういうことだと思っているんですけど、「先のことを意識しながら行動する」のと「目の前のことだけを追う」のは微妙にやることに差が出てくるんだなあと。自分は「大きな目標を意識する」とかほんとにやってきてなくて、それこそ学生時代の試験とかも全部小手先でやっていたから」

---バンド活動の中で、人間性の部分にも影響があるんですね。

森「そうですね。「丁寧に一日を生きる」とか、人としてすごく大事なんだなって。で、Shiggy Jr.っていうバンドはそういうことの積み重ねというか、丁寧に作業をして、適当なことをせずに真摯に進んでいくっていうがすごく合っていると思うから、自分もそういうことができるように頑張っていかなきゃなと」

---「お願いごとノート」のお話もありましたが、森さんが今お話しいただいたのって、池田さんの姿勢と通ずる部分が大きいのかなと思ったんですけど・・・

森「そうですね」

---おふたりから見て、池田さんのパーソナリティー、その中でもバンドを一緒にやっていくうえですごいなと思うところを少し説明していただけますと。

諸石「あの子はプロだから。ほんとにずっとバンドのことを考えてるからね」

森「そうそう。それだけじゃなくて、バンドのプロデュースと言うか、「どう見せるか」みたいな感覚的な部分もすごく鋭いから」

諸石「それがやっぱりShiggy Jr.の根っこにあると思います」

森「それに周りに気も遣うし、礼も欠かさないんで・・・よくできた人間だなあと(笑)」

---(笑)。では原田さんはいかがでしょうか。

森「しげはとりあえずストイック、それで不器用ですね。言われたことは「違うんじゃないか」と思っていたとしても全部やるし、そういうところはほんとにストイックだなと。・・・あれはできないよなあ」

諸石「うん」

森「努力する才能があるんだと思います」

諸石「彼が作る曲の幅、あとは歌詞の世界を広げる能力はほんとに尊敬しています。それに、普通の人が回り道して説明するようなところをしげは一本道で提示できる人間だから、バンドのリーダーとしてもすごいなと思いますね」

森「そうだね」

---おふたりもすごく池田さんと原田さんのことを信頼しているし、池田さんや原田さんと話していてもおふたりへの信頼がすごく伝わってくるんですけど、そういうお互いの信頼こそがShiggy Jr.っていうバンドのコアですよね。

諸石「はい」

森「基本ですよね、そこは絶対」

---逆に森さんと諸石さんがShiggy Jr.に持ち込んでいるものって・・・

森「なんだろ」

諸石「男臭さじゃない?(笑)」

---(笑)。

森「男子校感(笑)」

諸石「うるささと男子校感」

森「以前の雰囲気はわからないですけど、雰囲気は絶対変わったんじゃないかな。たぶんこんなうるさい2人もそんなにいないんで」

---ストイックな原田さんとかプロ意識のある池田さんに対して、いい具合の・・・

森「緩衝剤、潤滑油みたいな(笑)」

諸石「もともと俺ら高校から一緒で・・・もう10年目なんですけど」

森「そうだな」

諸石「言い方がちょっと気持ち悪いですけど(笑)」

---(笑)。10年付き合ってます、的な。

諸石「それが入ったから、やっぱ空気は変わるんだろうね」

森「4人みんな平等だもんね、今。それぞれが各々の場所を見つけている感じです」


楽曲に対する全幅の信頼

---今日のお話で「Shiggy Jr.は楽曲の幅が広い」というテーマが出てきていたと思いますが、一方で森さんも諸石さんもこのバンドでは出していないご自身の音楽性みたいなものがありますよね。Shiggy Jr.のメンバーとして、ではなくてひとりのベーシストとドラマーとして考えたときに、「自分の一番やりたいこと」と「バンドで求められること」のギャップのようなものはないのか、もしあるとすればどうやって折り合いをつけているのか、みたいなことを今日お聞きしたかったんですけど。

森「んー、正直ストレスは全くなくて。そもそもこのバンドの曲が好きだし・・・それに、ポップスってほんと難しいんですよ(笑)。だからShiggy Jr.の曲を通して楽しく勉強しているみたいな部分もあります。もちろん「自分のやりたい音楽」というようなものはありますけど、個人的なことよりもメンバーとしてShiggy Jr.の音楽を良くしたいと思ってます」

---なるほど。原田さんが作ってくる曲とかそこで求められていることが楽しいし、そこで刺激を得ていると。

森「そうですね。毎回違うことをやるから自分の引き出しが増えていっている感じはします。スラップ苦手なのにしょっちゅうやらされるし(笑)。・・・わかんないですけど、たとえばShiggy Jr.が「メロコアしかやりません」みたいに同じような曲しかやらないバンドだったらすぐ飽きてたと思うんですよね。そうじゃないから、楽しくやってます」

---諸石さんはいかがですか

諸石「俺は・・・さっきの森の話とも重なりますけど、もともとしげが作るShiggy Jr.の曲が好きでこのバンドに入って、あいつの感性とか才能を信じて今に至っているから、今ここでドラムを叩けること自体がすごく光栄なんですよね。だから「やりたいことができてない」みたいなことを感じる瞬間はほんとにないし、めちゃくちゃ難しいんですけど、刺激的で楽しいです」

---やっぱり根幹には原田さんが作る楽曲に対してのリスペクトがあるんですね。

森「うん、それはかなり」

諸石「すごく強くあります」

---諸石さんは以前のバンドではメタルをやっていたわけで、Shiggy Jr.とはだいぶ距離がありますが。

諸石「そうですね。そのうちその経験も活かせたらなとは思ってもいます。最近昔の動画とかを見返したりするんですけど、「これもうちょっと持ってこれるんじゃねーか」っていうところがいくつかあって。しげの曲に寄り添ってドラムを叩くっていうのは「ポップスであろうとする」ってことだと思うんですけど、そこに自分の経験を入れていくことで、他の人にできないドラムのアプローチができるんじゃないかなとうっすら考えています」

---わかりました。では最後に、リリース間隔もちょっと空いて、仕切り直しみたいな部分もあるのかなと思っているんですけど、改めて、Shiggy Jr.をどういうバンドにしたいか、もしくは何を目指したいかというところ、プラスそこに向けてご自身でどういうことをやっていきたいか、みたいなお話をお聞かせいただければと思います。

森「「恋したらベイベー」は結構前から温めていて、最初にこの曲を聴いた瞬間にバンドのみんなが「いけるぞ」ってなった曲です。そういう曲を出すにあたって、ジャケットをイラストに変えたりアー写も少し違う雰囲気のものにしたり、いろんなチャレンジをしています。今年最初の作品なんで、ここからShiggy Jr.の再構築じゃないですけど、楽しくてハッピーっていうバンドが伝えたいことを改めてしっかり出していきたいと思っています。収録されている曲はどれもいいし、聴いてもらえたら絶対好きになってもらえるはずなんで。このEPがShiggy Jr.の名刺代わりになるように、自分自身も頑張っていきたいです」

諸石「EPに関しては森が言った通りで、自信作です。それに付け加えると、Shiggy Jr.っていう存在がもっとエンターテイメントになったらいいなと思っていて。Shiggy Jr.の音楽をよりたくさんの人に聴いてもらっていろんな人の共通項になりたいっていう気持ちは昔から変わっていないんですけど、音楽以外の部分からもうちらを好きでいてくれる人をもっとハッピーにできないか、っていうことを今真剣に考えています。楽しみにしていてほしいですね」

---楽しみにしてます。今日はどうもありがとうございました

2人「ありがとうございました!」


>>>>


司会者「インタビューは以上になります」

レジー「おふたりとも心からShiggy Jr.というバンドそのものやShiggy Jr.の楽曲のことを愛しているのが伝わってきました。途中「メンバー同士が信頼してるのは基本だ」ってお話があったんだけど、ここまで深いきずなでつながっているバンドは必ずしも多くないんじゃないかなとも思うんだよね。このバンドのライブでステージから感じるポジティブな空気感っていうのはこういうところから作られているんだなと改めて感じました。というわけで次回はこのシリーズのラストということで、ボーカルの池田さんの単独インタビューをお届けします。しばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
ギャラリー
  • メジャーでの葛藤を経て、もう一度「独断と偏見」を取り戻したい--ボールズ山本剛義、現状の生活と今後の展望を語る
  • メジャーでの葛藤を経て、もう一度「独断と偏見」を取り戻したい--ボールズ山本剛義、現状の生活と今後の展望を語る
  • メジャーでの葛藤を経て、もう一度「独断と偏見」を取り戻したい--ボールズ山本剛義、現状の生活と今後の展望を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る
  • Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る