レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。
対談形式はリスペクトしているこちらのブログより拝借しております。
  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

「Perfume × TECHNOLOGY」presents “Reframe”を振り返る そして未来へ、そして伝説へ

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司会者「3月20日、21日にNHKホールで行われた『This is NIPPON プレミアムシアター「Perfume × TECHNOLOGY」presents "Reframe"』の模様がBSプレミアムで放送されました」



レジー「2日とも一般発売後のプレイガイド復活時にチケット取れて行ったんですが、どういう展開になるかわかったうえでテレビ見たのに緊張感すごかった。で、これについてはちょこちょこツイートしたりしてるので一度まとめておきたいなと。まずは初日見た後にまとめて2日目終演後にツイートした内容について貼っておきます」


司会者「興奮してますね」

レジー「興奮しました。やっぱりまずはコンセプトですよね。まあなんか、いろいろ社会の膿が出てるタイミングだと思うんですよ。ハリルホジッチの件にこじつけるまでもなく。この先に向けて社会を再構築できるのか、ってのが国家的な課題だったりもするわけですよね。そういうときに「Reframe」って言葉を掲げて、ここ10年で大きく勝っているブランドの1つと言ってもいいPerfumeが自分たちのここまでの道筋を振り返ってその存在を「再構築」しようっていう心意気がまず素晴らしいなと」

司会者「テクノロジーとの絡みはここ数年グループとして力を入れてきたものです」

レジー「そういう積み重ねがあったからこそその側面を尖らせたステージができると。序盤にedgeの振り付けが使われてたりPerfumeの掟とかJPNスペシャルとか、これまでのライブでそっち側にフォーカスしてた演出を盛り込んでいたりと、何もかもが必然性に満ちている感じの構成やばい。あと当日はそんなにいい席じゃなかったので全容分からない部分もあったんですが、テレビで見て改めて感じたこともありましたのでそれもツイート貼っておきます」







司会者「結構ぴちっと踊ってましたね」

レジー「いつものライブ、特にこの曲はダイナミック成分多めなんだなというのを改めて感じた。今回はぴったりあるべきところに当てることを重視したパフォーマンスだったんだなと」


司会者「この辺のテクノロジーというものに対する距離感は本人たちもコメントしてますよね。パフォーマンス後ののっちのコメントとか」

「テクノロジーは人間が作る、温度や愛があるものだと思ってます。今回は皆さんに写真を投稿していただいて、その写真と一緒に私たちがパフォーマンスをしましたが、そんなふうに皆さんと同じステージに立って1つの作品を作り上げるのは、テクノロジーがないとできないことだなと思います」

レジー「この話は、音楽とか芸能とかそういう限られた範囲でのことではなく、この先の未来の社会がどうあるべきか、っていう大きなテーマとつながってくると思います。テクノロジーの便利さを享受する中で人間性をどう担保するか、みたいな話はこの先絶対に問題として浮上するはずだから。その手の課題に対するトップランナーですよね、チームPerfumeは」



司会者「三角形と四角形の話は序盤でステージが大きく入れ替わるところですね。三角形が組み合わさって四角形になっている絵が出てきます」

レジー「無限未来でも四角いフレームを持ってるけど、3から4ってのは重要なんだよねきっと。「願い」で3人がファンの“願い”を受け取っていくさまが明確に描かれていたけど、そうやって「Perfumeとあなた」「WE ARE Perfume」を文字通り実現するのが今、そしてこれからのPerfumeなんだと。そこから始まる「無限未来」で、最後今までいろいろなステージセットがあったり何かが映し出されたりしたバックが無地になっていく。いろんな思いを感じて、改めてここからスタートっていうね。素敵。メンバーの年齢とかも含めてグループとしてますます日本の芸能史にとっての未踏の世界に入っていこうとしているわけですが、引き続き応援しないわけにはいかないなという気持ちを強くしました」

司会者「ツイートでも少し言及ありましたが2020年のオリンピックの開会式で、みたいな話も当然出てきますね」

レジー「そうね。まあただ、Perfumeが仮に出たとしても、それだって彼女たちにとっては途中経過なんじゃないかなと思うんだよね。Perfumeが開会式出てほしい!って願望は別にいいとして、何となくAKBとかジャニーズとかLDHとかの「仮想敵」に対する当てつけとしてPerfumeの名前出してるだろって思っちゃうケースもわりとあってそういうのはなんだかなあって感じもする。なのであんまりオリンピックどうこうを言うつもりはなくて、この先もただただまだ誰もやっていないことをやって、社会の道標になるような表現を通じて我々をハッとさせてほしい、という気持ちが強いですね。ほんと今回のステージ最高でした。直前にPTAのリラックスしたライブがあったので、その対比も良かった。最初の方の話ともつながりますが、どっちもできるのがPerfumeの強みですね。またこっち側に全振りしたライブ見たいです。というわけで今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回は」

レジー「一旦未定でお願いします」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

【紹介・告知】『夏フェス革命』関連記事+3/23(金)ツイッター対談

改めてお礼:いろいろ取り上げていただいてます

レジー「SKY-HIインタビュー、読んでいただいた方ありがとうございます

司会者「日高さん的にも深いところまでお話しいただいた実感があるようで、こちらとしても嬉しいですね」


レジー「またぜひ。で、その最後にも書いた通り今回は告知で。ここでもたびたび触れている『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』についてなんですが、まずそれに関連してこの本についてありがたいことにいろいろ拾っていただいているのでその辺のご紹介を。あとイントロダクションはこちらで全部読めます


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司会者「この前日経新聞の書評に載りました

レジー「あっさりした内容でしたけどね。取り上げていただいてありがとうございました。それよりも中身掘っていただいているのをご紹介したいです。個人のブログだと印象的だったのはこの2つ。褒めていただいてるやつと辛口なやつ」



司会者「あとはインタビューいただいたものも」

レジー「最初にやっていただいたリアルサウンドのは本の概観をまとめていただいているし、フェスティバルライフのはより「フェス」ってテーマで深掘りしていただいた記事になってます。あとは個人ブログでこの本に絡めた企画に出させてもらったりしました。自分自身が個人ブログ作ってからいろいろやることが広がったので、今まさにブログやってる方々と何かしら絡んだり、おこがましい言い方ですが力になれたり後押しするきっかけになれたりしたらいいなあとは常々思っています。引き続きお声掛けください」





司会者「インタビューはこの先もいくつか出ますね」

レジー「アップを待つ段階のものもあればこれから日程決めるやつもあっていろいろですが、引き続きよろしくお願いいたします。あと読んでいただいた方向けには「この本がどうやってできていったか」をまとめたnoteもありますのでそちらもよければ」


この流れで告知を:柴さんと(ツイッターで)話します

司会者「あと先日柴那典さんもブログで書評を書いていただいています」

レジー「さすがばちっとまとめていただきました。ありがとうございました。で、この流れでなんですけど、この書評を起点として、柴さんと『夏フェス革命』に付随する話をツイッターで意見交換する、ということを今週末やってみたいと思っています。テーマ決めて、リプライをそれぞれぶら下げていく形で。「ツイッター対談」とかって形にうまくなればいいんだけど、やったことないからグダグダになるかもしれませんが。その辺含めてのチャレンジって感じです。で、柴さんとも相談して、枠組みとしてはこんな話をしようかと」

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①ここ5年ほどのフェスを取り巻く状況や言説についての見直し
・いわゆる「二項対立」的な議論="かつてフェスにいた音楽好きvs音楽に興味ないレジャー層"に対する見解(あらゆるレジャーとSNSが一体化していく中で、こういう切り分けはどこまで有効か)
・日本のシーンにおけるフェスの影響力をどう評価するか→ここ数年で強まっている?それとも相対化されている?対峙するには「自分でフェスをやる」以外にあるか?(フェスが乱立する→単にプラットフォーム競争になるだけ)
・2013年ごろからあった「アイドルとロックフェス問題」とは結局なんだったのか?今後こういう「火種」になりそうなものはあるか?

②今後のフェス(短期視点、中長期視点)
・今年注目していること(ブッキングでも周辺でも)
・フェスがこの先文化として定着するために必要なこと→ひたちなかに今いる若者が10年後20年後にもフェスに行くようになるには?
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司会者「あの本における「音楽シーン」周りの話によりフォーカスした内容ですかね」

レジー「そうですね。「協奏」っていうフレームの深化とかは別の場所でやるのを徐々に準備始めてるんですが、ここでは音楽寄りの話を。『夏フェス革命』読んだ人のコメント見てると、柴さんの論を引用してる「タイムテーブルとヒットチャート」話に反応してる人が多いので、最初にそこ提唱した柴さんに改めてそのあたり聞いたりしたいなと思っています。予定では3/23(金)の夜、たぶんMステ終わってからスタートする感じになると思います。詳細な段取りとかはまた直前に。この日は代表戦もあるので、そちら見ながらでもツイッター眺めてみてください。あと後日アーカイブ的にまとめられたらと思ってますが、そのやり方は追って考えます。というわけで、本読んでいただいた方、ご興味ある方は金曜日よろしくお願いいたします。今回は以上で」

司会者「わかりました。次回は」

レジー「Perfumeの話をやるかもですがちょっと考えます」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

SKY-HI『ベストカタリスト』リリースインタビュー、から派生して社会と世界について語る

司会者「前回の記事で次は「さくっと軽めのエントリーを上げたい」的な話がありましたが」

レジー「結局全然そんな感じのものじゃなくなってしまった。というわけで、今回は3月21日に『
ベストカタリスト -Collaboration Best Album-』をリリースするSKY-HIにお話を伺ってきました」



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司会者「こちらのブログには昨年の『OLIVE』リリース時以来の登場です」

レジー「そのときは作品だけの話にとどまらずにご自身の哲学みたいなものを結構お話いただいたんですが、今回も『ベストカタリスト』の話から今の世の中に向けている視線についていろいろ刺激的な話をしていただきました。その一端がうまく伝われば幸いです。それではどうぞ」



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どうしてもアルバムツアーじゃないツアーをやらせてほしい

 

---今日は『ベストカタリスト -Collaboration Best Album-』のリリースインタビューという体を取りつつ、作品のことに限らず日高さんが今お考えになっていることをいろいろ聞かせていただければと思ってます。

 

「了解です!」

 

---まずは『ベストカタリスト -Collaboration Best Album-』について、今回「コラボベスト」というフォーマットの作品を出すことになった経緯からお願いします。

 

2つありまして。自分の客演したものをそろそろ一度まとめておきたいなという気持ちは前からあったんですけど、去年はMIYAVIさんとか(コラボレーションアルバム『SAMURAI SESSIONS Vol.2』に収録されている「Gemstone / MIYAVI vs SKY-HI」)、チェコとか(Czecho No Republic x SKY-HI コライトシングル「タイムトラベリング」)、メジャーレーベルでそういうコラボが続いたんで、このタイミングでそれをやるのがいいのかなと思ったのが1つ」

 


 

---かなりたくさんの楽曲にフィーチャリングで参加されてますよね。

 

「はい。これまで正規にリリースしているものでも50くらいあるし、ブートっぽい位置づけのものも含めるとたぶん100近くあるんですよね。ここを逃したら一生出ないだろうなと思って()、こういうものを作りました。で、もう1つの理由としてあるのが、アルバムツアーじゃないツアーをやりたかったんですよね。タイミングとしてはフルアルバムを出さないといけない時期で、作ろうと思えば作れないこともないんですけど、ここでフルアルバムを出したらまたそのアルバムのツアーをやる、そうなるとそのセットリストは当然新しいアルバム中心のものになるじゃないですか。もちろんそれをやりきることにはすごく達成感を覚えるんですが、そうやってどんどん新しい曲が増えていく中で、これまで作った曲がだんだんライブでやれなくなっていくのもなんだかなあと思っていて。それで、「どうしてもアルバムツアーじゃないツアーをやらせてほしい」ってスタッフにお願いして」

 

---なるほど。やりたいライブがあって、そこからリリースするものが決まったと。

 

「そうですね。ありがたいことに日本武道館の映像作品とか『OLIVE』とかが威厳を保てる結果が出ていたので、ちょっと申し訳ないけど今回はわがままを聞いてもらいました。以前「RL2」っていうアルバムツアーじゃないツアーをやったんですけど・・・それが非常に最高だったんですよ」

 

---自由度が高いというか。

 

「自由度が高い!それをまたやりたかったんです。最近はご時世もあってか自分としても書きたいことがたくさんあるから、このままいくと愛情こめて作った曲がどんどんライブでやれなくなっちゃうなという気持ちもあって、一度過去の曲たちを救ってあげたいなと」

 

---そのツアーもすでに始まっていますね。

 

「はい。…今、すごく楽しいですよ」

 

---自由を謳歌しているわけですね。

 

「幸せが過ぎますね。楽しくてしょうがない。早くいろんな人に見てもらいたいなと思ってます」

 

---去年の武道館あたりから、「SKY-HIのライブがすごいらしい」という評判はだいぶいろいろなところまで波及した感じがしますね。

 

「以前から「ライブに来てくれた人たちが帰り道に世界で一番幸せそうな顔をしている」っていうのをずっと目指してきていて、今はそれをできている自信があります。音が止まらないでどんどん展開していくようなライブが自分としては好きなんですけど、それを生バンドでやるのはなかなか大変なので、ライブの準備は「曲を練習する」というよりも「作戦を立てる」って感じですね。誰の耳元に次の曲のテンポを流しておくかとか、誰がきっかけで次の曲が始まるかとか、そういう細かいことを綿密に打ち合わせしてます。そんな形でライブをやってるので、自分のことは「コンダクター」だと思ってますね。JB(ジェームス・ブラウン)から学んだことです」

 

 

どこか世の中から隔絶された人たちが集まっています()

 

---『ベストカタリスト -Collaboration Best Album-』には新曲が3曲入っているので、そちらについても伺えればと思います。「One Night Boogie feat. THE SUPER FLYERS」はもろなファンクな感じで。

 



「あれはまさにJBがやりたかったんです。あと、「上手に歌わない」っていうのをやろうと思って()。最近すごく声が出るようになってきているんですけど、これを録ったときってちょうどその時期に入りかけてたタイミングだったんですよね。今普通に録ったら後で「もっとうまく歌えたのに」ってなるかもしれないなと思って、じゃあいっそのこと上手く歌おうとするのをやめようと」

 

---しゃがれた感じのボーカルが印象的です。

 

「思いっきりシャウトしてますし、ラップもあんまり聞き取らせる気がない感じになってます。一度こういうのをやっておきたかったんです、はちきれんばかりの衝動というか…おかげさまでライブでやるとほんとに楽しいですよ()

 

---昨年出た「Marble」もちょっとゴスペルっぽいというか生感のある音でしたけど、今SKY-HIとしてそういう感じのをやりたいみたいな気持ちはあるんですか?

 

「ありますね。チャンス(・ザ・ラッパー)とか、一時期のカニエ(・ウエスト)とか、あとはアンダーソン・パークとか、そういう感じの。今そういうモード、というよりは自分の好みとして、って方が近いかもしれないですけど」

 

---一方で「何様 feat. ぼくのりりっくのぼうよみ」はより今のアメリカのトレンドっぽい感じもありつつ。

 

「そうですね。いつも曲を出すときは打算的な意味じゃなくて「今一番ポップで、かつ一番エッジーに聴こえるものはなんだろう」って考えるんですけど、今ならこういうのがそこにはまるのかなと。作る前からぼんやりとやりたいものは見えてたんですよね。現行マナーのビートでそれなりにスピットしたラップをやって、でもちょっと日本っぽいコード感がサビとかにあって、あんまりポジティブではないことを歌っていて・・・みたいなことを考えている中で、あ、じゃあぼくりりに頼んでみようかなと。この曲は自分で自分を褒めてあげたいところがあるんですけど、サビのオケ、ちょっとぼくりりっぽくないですか?」

 

---わかります。彼のアルバムにも入っていそうなというか、ぼくりりさんがボーカルで出てきても全然違和感がないですよね。

 

「そうですよね!あれができたとき、もしかして俺天才かな?って…」

 

---()

 

「自分の才能を信じられるなと()

 

---ぼくりりさんの飄々としたパーソナリティは日高さんと対照的な気がするんですけど、そんなお2人の気が合うのが面白いですよね。

 

「俺もほんとはあれくらいの感じの方が時代に合ってていいんだろうけど・・・()。なんだろう、責任を伴って音楽をやってた人たちばかり聴いてきたからそういうふうにはなれないってのがあるのかな。気が合うのは対照的だからこそってところも大きいと思いますよ。曲の話をしようと思って電話してるとどんどん脱線してっちゃうんですけど()

 

---目線の高さは同じくらいだけど、そこからの切り込み方が違うのかなとか、傍から見ていると思います。

 

「あ、ほんとそんな感じだと思います。この曲のMVには最上もがに出てもらっていて、あとミックスはw-inds.の(橘)慶太くんにやってもらってるんですよね。俺とぼくりりも含めて、どこか世の中から隔絶された人たちが集まっています()

 


 

---そして3曲目に入っている「ハリアッ! -Fast Fly Ver.- feat. 尾崎裕哉 & KERENMI」、これめちゃくちゃいいですね。

 

 

「まじすか!KERENMIも喜びますよ」

 

---何というか、こういう曲がヒット曲として聴かれる世の中になったらいいな、と思いました。

 

「あー、わかる」

 

---ちょっとm-floを思い出したりしつつ。

 

「特にm-floっぽいものを作ろうとしたわけではないんですけど、「One Night Boogie」と「何様」が濃い目なので、こういうさらっとしたのもあるといいなと思って。あとちょうど海外から帰ってきたタイミングで作ったんですけど、向こうでファストラップが喜ばれることが多かったので、そういうのをいっぱいやりたいなと思っていましたね。日本語のカチカチした感じが面白いみたいで」

 

---母音がつながらないところとかですかね。

 

「そうそう。べろべろに酔っ払ってる奴らに「マシンガン!」みたいに言われたりとか()。それで意識的にそういうのを入れてます。あとはやっぱりメロディの綺麗さって大事だなってこの曲のサビで改めて感じました。あそこはKERENMIが作ったところですけど、自分にとってもメロディに対していろいろ考えるきっかけになりましたね」

 

生きること、死ぬこと、愛すること、戦うこと

 

---冒頭で「フルアルバムは作ろうと思えば作れないこともない」ってお話があったと思うのでここでそのあたりお聞きしておきたいんですが、日高さんとして「次のSKY-HIのアルバム」がどういうものになるかっていうのはもう見えているんですか?

 

「どこまで言えばいいかな…まず、俺の中で『カタルシス』と『OLIVE』、あともう1枚の三部作ってイメージなんです。ただ、三部作の最後についてはどう作るかちょっと迷っている部分も正直あるので、もしかしたら次に出すのは「三部作の最後」ではないものになるかもしれない」

 

---『カタルシス』と『OLIVE』で「生と死」みたいなものを描ききったようにも見えるんですが、もう1枚あるんですね。「迷っている」というお話もありましたが、どういうことを描こうかというのがもしあれば、差し支えない範囲で聞かせていただきたいのですが。

 

「別のインタビューでも話したことがあるんですが、俺が歌っていることって昔から4つくらいしかないんですよね。生きること、死ぬこと、愛すること、戦うこと。その切り口で考えると、『カタルシス』は「死ぬことに生きることを見つけた」、なんか武士道みたいですけど()、そういうテーマで。あとあのアルバムを作るときにはいろんな葛藤もあったから「戦う」っていう要素も少しは入っていたかもしれないです。次の『OLIVE』は「生きることに愛することを見つけた」ってアルバム。それであのアルバムのツアーで「世界平和」みたいな話をしたんですけど…日本で「世界平和」っていうと新興宗教か?みたいな空気になるじゃないですか」

 

---ああ、この前もありましたね。綾瀬はるかさんが「世界平和」って言ったら「天然だ」みたいな扱いをされた、なんてニュースが話題になりましたけど。

 

「あれもおかしいですよね!スタンディングオベーションされたっていいことなのに。で、俺はその「世界平和」っていう考え方はそれこそマイケル・ジャクソンとかジョン・レノンとか、あとボブ・マーリーとか、そういう人たちから学んだことなんですけど、あの人たちってみんな戦っていたと思うんです。非暴力を貫きながら。「愛すること」を突き詰めようとすると、どこかで「戦うこと」っていうのに行き当たるのかなと思うんですけど、『カタルシス』『OLIVE』の次にやってみたいのはそういうものなんですよね。優しくて強いもの、それでちゃんとポップなもの。アメリカが何でも最高だとは思わないけど、やっぱり今の日本の空気はアメリカと比べると民主主義の概念とか批評性とか、そういうものが薄いんじゃないかなと思わざるを得なかったりもするし…そこに対してちゃんとファイティングポーズをとるアルバムを作りたい。ただ、繰り返しになりますけど、すぐ次にそういうアルバムに取り掛かるのかはちょっと保留しているところですね。今作っている曲も多岐に及びすぎていて…ポジティブにカオティックな状況です()。現行のメインストリームっぽいものもあれば、生っぽいやつもあります。生っぽいものに関して言えば、もしかしたらこの先もうちょっと音数を減らしたタイプの曲が増えるかもしれないですね。今まではブラスを入れるか入れないかってところが判断基準になってた面もあるんだけど、ドラムとギターだけとか、そういうのもやりたい」

 

下の世代の人たちがもっと自分のまんまで音楽とか芸能をやっていける時代になるといいなあ

 

---今のお話にあった「戦う」というスタンスは、昨年の「キョウボウザイ」あたりからすでに顕在化している感じはありますね。

 


 

「あれはファイティングポーズが一番強いものですね。ロジックのビートジャックもそうかな。「愛する」の方がファクターとしては強いけど、戦ってる曲だから」

 


 

---メジャーなポジションにいながら社会問題に切り込んでいく、そういうスタンス自体が注目を浴びている感じもあります。

 

「…あれなんなんですかね?変な話、それで注目されたってちっとも嬉しくないんですよ()。もちろん今まで接点のなかった媒体に呼んでもらえたり、「キョウボウザイ」もロジックのビートジャックもミュージシャンとか関係者の方に評価してもらったり、それはありがたいことではあるんですけど…「日本にもコンシャスなラッパーがいた!」みたいな評価自体、何周遅れりゃ気が済むんだよっていう思いも正直あって。ああいうテーマ自体は「Marble」でも、それこそ「アイリスライト」の頃からやってはきているわけですし、ほんとは普通に「いい曲だね」とか「かっこいいね」とか言われるのが一番嬉しいんですけど、あれをやること自体が評価されるっていう今の日本の状況に関してはなかなかオプティミスティックになれないというのは少なからずありますね。ただ、この先もそういうことは普通にやっていくと思います。暮らしている中で自然に感じたことがそのまま曲になるから」

 


 

---今の時代に人前で表現をされている以上、そういうことを発していかないといけないという気持ちもあるんですかね。

 

「みんなが無理にそうする必要はないとは思ってますよ。去年この件でいろいろインタビュー受けたときに、「今ああいうのが出てこない人の気持ちがわからない」くらいのテンションで喋ったんですけど、それはちょっとだけ後悔しているというか、改めて考えてみると別にそんなこともねえなとも思ったり()。まあただ、「こういうことは言わない方がいい」みたいな暗黙のルールはできるかぎり壊していきたいですね。そういうムードって、エンターテイメントの世界全体とつながってくる話だと思うから。アメリカのショービズとか、あともしかしたらK-POPもそうかな、そこにいる人たちってすごく自己愛とか自尊心とかを大事にしているように見えるんですけど、やっぱり今の日本の芸能はそういう感じからは逆行しているというか、「自分のままでいちゃいけない」というような空気がまだまだ強いような気がしていて…若くて可愛い女の子がそういう中で変にキャラを作ったり「私なんか」って言いながら何かをしているのを見るとほんとに辛い気持ちになるというか」

 

---なるほど。

 

「それで、たぶん「今までのミュージシャンの正しい姿」っていうのはそういう風潮がまかり通るような場所から外れるっていうことだったと思うんですよね。テレビ出ません、とか芸能の世界から距離を置きます、とか。でも俺は、そういう場所に対してもちゃんと愛情を持って接していけば何か変えられるのかもしれないと思っているし、俺の世代はともかくとしてさらに下の世代の人たちがもっと自分のまんまで音楽とか芸能をやっていける時代になるといいなあと」

 

---日高さんがいわゆる芸能界にも足場を築きながら活動をされているからこそ、そういう実感が生まれるんですよね、きっと。

 

「そうだと思います。俺の使命みたいなものがもしひとつあるんだとしたら、それは「逃げないこと」…だとちょっと違うかな、「目を背けない」の方が近いかもしれない。ジャンヌダルクみたいに何かに立ち向かっていくというやり方もあると思うんだけど、俺にとっての戦い続けることっていうのは「優しく寄り添う」とか「嫌なことまで含めて引き受ける」とかそういうことなのかなと。もしも人間に役割があるのだとすれば自分はそういうものを課されている気がするので、それはちょっとだけ頑張りたいです」

 

SKY-HIが売れるとしたらこういうのかな?」っていうのを一個作りました

 

---「世界平和」っていう話もそうですし、アメリカのエンタメと比較したときの日本の状況とか、あと海外でライブをされたことも含めて、今日高さんの視界は地球全体に向いている感じですね。

 

地球全体に向きますよ、やっぱり。そうやって大きな視点で考えれば考えるほど、目の前のひとりをいかに幸せにするか、愛するか、そういうことが大事になってくると思っているので、そこはちゃんとやっていきたいです。あと今の自分は日本の中ではかなりたくさん曲を作ったり発表したりしているとは思うんですけど…」

 

---そうですよね、どこにそんな時間があるのかなと思うときもあります。

 

「いや、でも俺はそれフューチャーに聞きたいですよ()。海の向こうに目を向けるとアルバムが2週連続で出たりするし、全然俺なんてやってない方だと思うから。そう思わせてくれるという意味でも、アメリカのショービズには感謝しています。あと去年結構海外に行って思ったのは…今、アジア人ってあっちですごく過ごしやすいんですよ。スタジオに行ってもアジア系のミュージシャンがたくさんいるから特に変な目で見られることもなく。で、この状況を作ってくれてるのはたぶん韓国とかの音楽のおかげで。やりやすくしてくれてありがとうっていうリスペクトはものすごくあるんですけど、日本がそういうことをやれなかったって今証明されてしまっていることについてはいろいろ思うところもあります。国際線の中でアジアのいろんな国のアワードをやってるプログラムがあったから見ていたんですけど、カメラワークとか演出の派手さとか、ほんとすごくて。やっぱりそういうのを見ていると…日本で生まれて、日本の音楽を聴いて育ってきた自分が、この先「ああ、他のアジアの国は羨ましいなあ」とか思いながら音楽人生を終えていく、ってことになるんだとしたら、単純にそれは嬉しくないですよね。これはエンターテイメントの問題だけじゃないのかもしれないし、そういうことに口を出すと「いち芸能人の思い上がり」とか言われそうな気もするけど、そんな状況の中で自分に何ができるのかというのはちゃんと考えていきたいと思っています」

 

---OLIVE』の時点では「単曲のヒットを作りたい」というようなお話をされていたと思うんですが、そこからさらに目指すものが大きくなっているんですね。

 

「そうですね、「もっとこういうことをやった方がいい」っていうのはいろいろ見えてきていますし、あと去年の一時期は「売れたい売れたいって言ってたけど、俺は今のこの日本のショービズ界でほんとに売れたいのか…?」って考えてしまったこともあります。ただ、さっきも話しましたけど、そこから逃げないっていうのも大事だと思うし」

 

---なるほど。じゃあ「ヒットを狙う」みたいなこともやりつつ。

 

「はい、今年はそれをやりたいなと思って、「SKY-HIが売れるとしたらこういうのかな?」っていうのを一個作りました。まだ出すタイミングは発表されていないんですけど」

 

---おお、素晴らしい。

 

SKY-HIが売れるとしたら、エミネムの『8 Mile』みたいなやつか、もしくはこういうのなんじゃないかなと思って…もちろん当たるも八卦、当たらぬも八卦ですけどね。楽しみにしていてください」


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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「相変わらず言葉が強い」

司会者「ビジョンが明確ですね」

レジー「音楽を介して社会を見ているミュージシャンなんだなあと改めて思いました。とかく前に出て発信する人っていろいろ言われがちだけど、矢面に立って何かをしようとする人たちのことはこれからも応援したいと思っています。アルバム自体も、SKY-HIの音楽家としての多彩さが堪能できる1枚になっているので、ぜひ聴いてみてください。日高さんおよび関係者の皆さま、ありがとうございました。今回はこんな感じで」

司会者「次回はどうしますか」

レジー「告知みたいなやつをたぶん間髪いれずにあげると思います。しばしお待ちを」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也10,000字インタビュー 『MODE MOOD MODE』とロックバンド哲学を語る

司会者「というわけで、前回の予告どおり、UNISON SQUARE GARDEN田淵智也単独インタビューということで」

レジー「前置きはいいですかね。今回のインタビューでは新作の『MODE MOOD MODE』についてその中身と合わせて前作『Dr. Izzy』との関係性、あと幕張でのライブ、3月に出る新曲「春が来てぼくら」について田淵さんに話していただいてます」


(画像はAmazonリンク)



司会者「あと『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』に関する話もしていただいています」


(画像はAmazonリンク)

レジー「あの本の内容も絡めて、ユニゾンというバンドがどういうスタンスで活動しているのか、誰に向けて音楽をやっているのか、という話もいろいろしていただきました。すでにいろんな雑誌とかに記事が出てますが、たぶんここでしかしていない話もあるはずなので、少し長めですがぜひお楽しみください。それではどうぞ」


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「会場が大きくなっても、新しいアルバムが出ても、それを受けて特別な何かをしようとは全く思っていなかったです」

 

---新しいアルバム聴かせていただきました。すごく良かったです。

 

「ありがとうございます」

 

---あとこちら側の話で恐縮なんですが、僕も年末に『夏フェス革命』というこの20年くらいのフェスの動向について分析した本を出しまして…

 

「読ませていただきました!面白かったですよ」

 

---ありがとうございます。今日は新作の話を中心に、少し本の話も絡めさせていただきつついろいろ聞かせていただければと思っています。よろしくお願いします。

 

「お願いします!」

 

---まず本題に入る前に、先日の幕張メッセでのライブについてお聞きしたいなと。どうでしたか?

 

「悪くなかったですね。「大きい会場だと音楽体験として完全に満足のいくものを提供するのは難しい」という気持ちは今も変わっていないんですけど、ああいう会場でロックバンド然としたライブをやることに意味を見出してくれた人もいたし、やって良かったと思っています。基本的にツアーは程よい会場規模で全国をきっちり回ることが大事だと思っているんですけど、そこがちゃんと守られるのであれば、まあたまにはこういうのもいいのかなと…()。いつも通り楽しかったです、ほんとに」

 

---今回のツアーに関しては去年の11月にZepp Tokyoでも見させていただいたんですが、幕張でのライブはあのときの感じがそのまま大きくなったというような印象でした。ライブハウスで感じられた熱気が損なわれることなく数万人規模にまで拡大されたというか。

 

「そう思っていただけたなら良かったです。一番懸念していたのは音の問題なんですが、リハの時に客席でチェックしたら「音、意外といいな」と思ったんですよね。そこはスタッフの人たちがほんとに頑張ってくれたんだと思うし、長年付き合ってきてる中でバンドのアティテュードや信念をちゃんと汲み取ってくれているスタッフだからこそできたんだと思います。もちろんあの空間を作るために必要なエネルギーは相当なもののはずだから毎回できることじゃないだろうけど、やろうと思えばここまでできるんだなと」

 

---タイミング的にはアルバムが発売された直後のツアーファイナルとなりましたが、「アルバムの曲やってみようかな」とか思わなかったですか?

 

「いや、それは全然ないですね。アルバムの曲、難しいからまだ練習したくないし()。まあそれは冗談ですが、アルバムが出るにしても「幕張のライブはあくまでも去年からやっているツアーのファイナルだ」っていう意識だったので。会場が大きくなっても、新しいアルバムが出ても、それを受けて特別な何かをしようとは全く思っていなかったです。他の会場に来た人たちがかわいそうですしね」

 

 

「“10% roll,10% romance”は…実は最初は3曲目に置こうとしていたんです」

 

---その「曲が難しい」という『MODE MOOD MODE』についてお聞きしたいのですが、その前段として前作『Dr. Izzy』という作品の性質に関して少し確認しておきたいなと。あのアルバムが出たときに、「肩透かし」という印象を受けた旨の原稿を書いたんですが…

 

()。はい」

 

---その辺に関連して、今回MUSICAのインタビューで『Dr. Izzy』に関して<「あ、この人達ヒット曲を出しても売れる気ないんだ」っていうのがよくわかるアルバムだったと思う>と明言されていましたよね。そのあたりの真意について改めて伺いたいなと。

 

「そうですね、まずあのアルバムが出る前に「シュガーソングとビターステップ」があって、あの曲はありがたいことにいろんな環境の助けもあって多くの人に聴いてもらえたと思うんですけど。そうなったときに、「シュガーソングとビターステップ」があってもなくても僕らのことを好きでいてくれる人、「ファン」っていう言葉は個人的にちょっともやっとするのでなるべく「物好き」と言っているんですけど、そういう人に対して「あ、ユニゾン変わる気ないんだな!良かった!」って気持ちを持ってもらうことがバンドとして大事なんじゃないかなと思ったんですよね。『Dr. Izzy』はそんな考え方で作ったアルバムでした」

 

---まずはユニゾンのことをしっかり見てくれている、意識してくれている人たちに対してどう思われるかを重視したと。「シュガーソングとビターステップ」があれだけ広がったわけで、「勢いに乗ってああいう曲がたくさん入ったアルバムを出そう!」みたいなことをしてもそれはそれで成果があったと思いますが、そういうことはやらなかったわけですよね。

 

「売れ線に走る、みたいなね()。たとえば「日本国民みんなから支持されたい!」って考えていたなら、そういうやり方ももちろんあったと思いますよ。チャンスですしね。ただ、僕の中では「自分たちのことを好きでいてくれる人たちは、あくまでも特定の好みを持った限られた層」っていう意識が強いんです。自分の視界にはそういう人たちしか入れないようにしているので、その人たちだけのことしか考えられないんですよね。だからその意味では、『Dr. Izzy』も『MODE MOOD MODE』も、そこにいる人たちに向かってやっているという点に関しては同じなんですよ。『Dr. Izzy』は「ユニゾン変わってなくて良かった!」と思ってもらいたい作品で、『MODE MOOD MODE』は「え、ユニゾンここまでやるの!?」って思ってもらうためのアルバム。これまでの取材とかだと「揺さぶりをかける」って言葉で説明してますけど」

 

---わかりました。今回の作品を作るにあたっての大枠のスケッチみたいなものはどのタイミングで見えてきていたんですか?

 

「大枠自体は『Dr. Izzy』を出して、全国ツアーが始まったタイミングで何となく見えてはいました。前作が出来上がったときに、ディレクターから「もう少しポップな曲が欲しいなぁ…」みたいなことを言われたんですよね。で、そのときに、「それは次にやります」って言ってたりしていたこともあって…そのやり取り自体は売り言葉に買い言葉っぽくもあったんですけど()、僕自身ポップなものが嫌いなわけではないので、『Dr. Izzy』との対比という意味でも次は聴いた後にそういう感触が残るような作品にしようかなと考えていました。ただ、シングルが4曲入るというのは想定外だったんですよね。で、僕はシングルを書くときには遺憾なく才能を発揮してしまうので…」

 

---()

 

「「いい曲書いちゃったな!」と思って。「ポップなアルバムを作ろう」っていうもともとの狙いがある中でそこに強い4曲がさらに入ってくるっていうことになったので、その辺の動きに合わせて大枠を少しずつ修正していきました」

 

---想定どおりのポップなアルバムになっていると思います。その印象を強めているのが終盤、9曲目からラストまでの流れにあると思っていて。特に「10% roll,10% romance」「君の瞳に恋してない」の最後2曲が読後感にかなり効いているように感じます。「10% roll,10% romance」が映画のラストシーン、「君の瞳に恋してない」が大団円のエンドロール、みたいで素敵だなと。

 

「なるほど()。良かったです」

 

---このあたりの曲順に何かしらの狙いはありますか。

 

「「君の瞳に恋してない」に関しては、あらかじめ狙ってラストに置いていました。いろいろ取材で話している中で思ったんですけど、今回のアルバム作りは『CIDER ROAD』を作ったときの感覚と近かったのかなと思っていて。というのは、あのアルバムは「最後の曲を「シャンデリア・ワルツ」にすること」がとにかく大事だと思って作っていたんですよね。「君の瞳に恋してない」も「シャンデリア・ワルツ」と同じくらい作ったときの達成感があって、「この曲をアルバムの印象を決定づけるものにしよう」と思ってアルバムの構成を考えました。「10% roll,10% romance」は…実は最初は3曲目に置こうとしていたんです」

 

---そうなんですか。

 

「はい。ただ、「君の瞳に恋してない」と並んでこのアルバムの軸になる曲の「オーケストラを観にいこう」をなるべく序盤に置きたいと思っていたんですが、この曲と「10% roll,10% romance」が両方アルバムの最初のほうにあるのはちょっとバランスが悪いなと感じていて…で、アルバムができあがる直前に「フィクションフリーククライシス」を急遽作ることになったんですけど、そのタイミングで試しに「10% roll,10% romance」を後ろのほうに移したら、思わぬカタルシスが生まれて、この流れ結構いいなと。そんないきさつで最後2曲が今の組み合わせになりました」

 

---今曲名が出ましたが、「フィクションフリーククライシス」はこのアルバムの中で大きな役割を果たしていますよね。これがあるからこそ9曲目からの流れが生きると思います。

 

「あの曲は最初入れる予定はなかったんですけど…「ポップなアルバム」を作ることを当初から考えていましたが、シングルが4曲になったこともあり、「もしかしたらそっちに行き過ぎてるかも?」とアルバムが完成する直前に思って、もうちょっとちゃんとしすぎてない、だらしない感じの曲を入れておこうかなと()。あとこの曲は最初から「Invisible Sensation」につなげるための曲として作ったので、「フィクションフリーククライシス」と「Invisible Sensation」が0秒でつながるようなものにしようと思っていました。そうなることで、「Invisible Sensation」がシングルのときとは違う聴こえ方をするんじゃないかなと」

 



 

「あそこまで振り切ったことをやるのは楽しかったですね()

 

---「君の瞳に恋してない」がラストに配されているわけですが、『Dr. Izzy』と『MODE MOOD MODE』の違いがここにわかりやすく現れているように感じました。前作のラストの「Cheap Cheap Endroll」は歌詞も<君がもっと嫌いになっていく>ですし…

 

「あー、なるほど()

 

---サウンドも含めて突き放して終わるみたいな感じだったと思うんですけど、今回は音も言葉もリスナーに寄り添ったものになっていますよね。

 

「確かにそうですね。歌詞の方向性という意味では意図的にそういう違いを作ったわけではないんですけど、おっしゃってることはよくわかりますよ。『Dr. Izzy』はやり散らかして終わったほうがいいように思ったので最後ああいう感じになっていて、『MODE MOOD MODE』とはだいぶ雰囲気が違うと思います。何かメッセージをこめた、ということではなくてあくまでも気分の違いという話ではあるんですけど」

 

---「君の瞳に恋してない」はホーンやピアノなどかなり大胆なアレンジが施されていますが、3人で曲の肉付けをしていくときと比べてやり方の違いはありますか?

 

「この曲に関しては、3人でアレンジをする前に僕のほうでピアノのコードをかなりガチガチに決めていきました。で、斎藤(宏介、ボーカル&ギター)くんにも「ピアノの人にはこの通りに弾いてもらうつもりだから、ギターのコードもなるべく変えてほしくない」「もし変えるならば、それに合わせてピアノのコードもいじるから、都度共有してほしい」という要望を伝えて、彼もそこを汲んで考えてくれました。それまでのノリでコードの共有をおろそかにすると終盤頭を悩ませるということが過去にあったので、今回は慎重にやりましたね。さっき「揺さぶりをかける」って話をしましたけどこの曲はまさにそれの象徴というか、嘘みたいに派手な雰囲気にして、聴いてくれた人たちがちょっとざわっとするというか、「え、お前らどこ行こうとしてるの!?」って思うような仕上がりにしたいと思っていました」

 

---「ざわっとする」ということだと「オーケストラを観にいこう」もそうですよね。こちらもアルバムの軸になる曲とのことですが、ユニゾンがここまで壮大なストリングスいれるんだ?っていう。

 

「あそこまで振り切ったことをやるのは楽しかったですね()。なんだかんだでストリングスもピアノもすごく好きなので。「オーケストラを観にいこう」に関しては昔からあった曲なんですけど、今回のアルバムがこの曲のポテンシャルをフルに発揮できるタイミングだなと思って、晴れて出すことになりました。もし『Dr. Izzy』に入れることになってたらああいう派手なアレンジはしなかったと思うんですけど、今回は「もう何やってもいい!」っていう感じで」

 

---なるほど。いずれライブでフルオーケストラいれてやったりとかは…

 

「いやー、さすがにそれは()

 

---オーチャードホールとかで。

 

「オーチャードホール!いいですねそれ!()。いつかそんな試みがあってもいいとは思うんですけど、今はアルバム作って全国回るほうが興味ありますし、もしそんなことをやるとしたら相当準備しないといけないから…まあ気が向いたらということで()

 

---「揺さぶりをかける」という観点でいうと、「静謐甘美秋暮抒情」もいつものユニゾンとはちょっと雰囲気が違いますよね。

 

「そうですね、あれも今回の変わり種というか、「君の瞳に恋してない」「オーケストラを観にいこう」と同じく「ユニゾンこんなのもやるんだ!?」っていう枠ですね。新しいトライではあったんですけど、なかなかいい感じに仕上がったなと思っています」

 

---イントロが始まったときにちょっとした驚きがありますよね。インタビューでインスパイア元としてTOKYO No.1 SOUL SETの名前を挙げられていたのもちょっと意外でした。

 

「そんなにあの手のジャンルの曲をたくさん聴いているわけではないんですけど…ソウルセットとか、あとそれこそAwesome City ClubとかSuchmosとかそういう感じの曲を鈴木(貴雄、ドラム)くんに聴いてもらって、ああいう雰囲気をどうやって出そうかと一緒に考えました」

 

---ロックバンドとしてこういう音をやるのって結構新鮮な気がしますし、ぜひもっとやってほしいです。

 

「なかなか難しいんだよな…()。でも確かに評判いいんですよ」

 

---演奏力がないとできない取り組みですよね、おそらく。

 

「本家の方には申し訳ないですけど、「なんちゃって」であればいろいろできちゃうバンドなんだなというのは今回のアルバム作りを通して改めて気づいた部分でもありますね。スタジオミュージシャンほど上手くはないにしても、決して下手なわけではないので」

 

---なるほど。ちなみに、今回のアルバムは「ポップ」というのがひとつのキーワードになっていると思いますが、田淵さんにとっての「ユニゾン的なポップな楽曲」というのをあえて言語化するとどういうものになるんですかね?

 

「うーん、そうだな…基本的には「メロディがちゃんとあるもの」ですね。Aメロ、Bメロ、サビの流れ、そこにちゃんと抑揚があってドラマが感じられるかとか。歌詞の内容とか譜割りの多い少ないは僕にとってポップか否かには関係ないです。メロディが良くてテンポ感とリズムの大枠が変わらなければ、どうアレンジしても曲の雰囲気は変わらないと思うので」

 

---「メロディのちゃんとあるものがポップ」という観点から『MODE MOOD MODE』の楽曲の並びを改めて見たときに、「ポップなものになったな」という実感はありますか?

 

「そうですね、特にシングル曲に顕著なんですが、全体的に「メロディがしっかりしていること」に執着したアルバムなので、そこは達成できていると思います。…ただ、僕としては、自分の書く曲はすべて「ポップ」だと思ってるんですけどね()。もともとが歌謡曲脳なので、特に強く意識しなくてもメロディが立った楽曲をいつも作っているはずです。今回は自分のそういう好みがより色濃く前に出たアルバムなのかなと認識してます」

 

 

自分たちが思い描いているやり方に反応してくれる人たちを大事にしていこうっていうのが僕の考え

 

---田淵さんは「フルアルバム」というリリース形態をすごく大事にされていると思うのですが、一方で世の中的にはだんだん「フルアルバム」というもの自体が徐々に「古いフォーマット」になりつつあるという状況も生まれてきていますよね。そういった時代の流れがある中で、田淵さんがフルアルバムにこだわる理由というのは何かありますか?

 

「こだわっているのは…そういうのを好きだと思う人たちがいるからですかね。少なくとも僕の視界には、今の時代にCD をウキウキしながら開封して、音源自体はすぐにパソコンとかに取り込んじゃうのかもしれないけど、それを歌詞カード見ながら聴いて楽しんでいる人たちがちゃんと入っているから。そういう人たちのことを肯定してあげたいという気持ちが強いです。あとは何より、単純に僕の中の「ロックバンド像」として、フルアルバムで語れるバンドのほうがかっこいいと思うから、というのもあります」

 

---「フルアルバムで語れるバンドのほうがかっこいい」というのは、田淵さんが音楽にのめりこみ始めたときの記憶からくるものが大きいんですか?

 

「そうですね。ただ、その憧れだけを追っていても駄目だとは思うし、大きい時代の流れの中で自分たちのやろうとしていることが時代遅れだっていうことももちろん理解はしているつもりです。そこまで踏まえたうえで、じゃあユニゾンは何やるのかってのを考えていかなきゃいけないんだなというのは最近よく思います。時代とケンカしたいわけではないので、便利なものは適度に取り入れながら、でも自分の視界に入っている人たちが悲しまないやり方をしていかないとなと」

 

---なるほど。田淵さんの思いとして、バンドの活動を通してさっき挙げていただいたような「視界に入っている層」、CDを嬉々として買うような層を増やしたいという気持ちはあるんでしょうか。

 

「いや、それはないかな。そういう人たちにも存在意義を持たせてあげたい、というのはありますけど…YouTubeでもサブスクリプションサービスでもフェスでも何でもいいんですけど、いろいろな形で音楽を楽しめるのはいいことだと思いますし、その中で自分にとって楽しいものをリスナーが選ぶのは当然なんですよね。『夏フェス革命』の中で、フェスやDJブースでの楽しみ方に関して<ただ、フェスの参加者はもちろんそんなことを気に留めることもなく、自らが楽しいと思う行動に身を委ねていく。>というくだりがあるじゃないですか(注:P132より抜粋)。ここで語られている「提供する側の事情に関係なく受け手は自分にとって心地よいことをする」って話は、フェスに限らずあらゆる場面に当てはまると思うんですよね。そういう大前提がある中で、自分たちの意図する音楽の楽しみ方をしていない人たちに文句を言うんじゃなくて、自分たちが思い描いているやり方に反応してくれる人たちを大事にしていこうっていうのが僕の考えです」

 

---引用していただいてありがとうございます。今田淵さんが言っていただいたところは、僕としても本を通じて言いたかったことのひとつです。個々人はあくまでも各自が楽しいと思ったことを選び取っているだけで、その中から大きな潮流ができあがっていく、というような発想は重要なんじゃないかなと。

 

「音楽をそれぞれの形で楽しんでいる人たちに対して「こうするべきだ!」って水を差すのも何か違うと思いますし僕としても今に至るまでにそういうマインドが無かったとは全然言えないので、改めて考えさせられたなと()この本はそういう気づきがいろいろあって、ある種のビジネス書として名著だと僕は思っているんですよ」

 

---ほんとですか()。光栄です。

 

「僕自身、これを読んで改めて「フェスを作ってる人たちってすごいんだな」と思うようになりました。紙のアンケートからは見えてこないようなことを読み取って、ユーザーの需要の半歩先をいく提案をたくさんしてきた結果が今のフェスの盛り上がりを作っているってことですよね。で、その過程でいろいろな人たちがフェスの楽しさを知っていったわけじゃないですか」

 

---そうですね。「フェスには濃い音楽好きだけじゃなくていろいろなタイプの人が来ている」「音楽に対して切実な気持ちを持っていない人も含めて巻き込めたからこそ、フェスというものは成長した」というのは本の論旨のまさに中心的な部分です。個人的にはそういう状況、「音楽好きではなさそうな人がたくさんいるフェス」という空気に対して思うところがないわけではないですが、それを否定するつもりはなくて、あくまでも現状を記述するとこうなる、というスタンスなんですけど。

 

「懐疑的な視点から書いている部分もあると思うんですけど、否定ではないというのは読んでいて伝わってきました。個人的には、こういうフェスの現状がある中で、「自分は誰に向けて音楽をやるべきか?」というのが再度クリアになったような気がしています。ワンマンライブにもフェスにも行くという人がいれば、フェスの空気が好きだからこそそこにいる人もいる。この先もオファーいただいたらフェスに出ることはもちろんありますけど、そこで何をするかにあたってはそういう状況をちゃんと理解したうえで決めていくべきなんだろうなと。バンドマンとしてはそんなことを考えたんですが、たぶんリスナー目線でもいろいろ感じる部分のある本になってると思いました。「フェス楽しい!」って感じている人にとっては「今の空気に対してこんな意見を持っている人もいるのか」って発見があるだろうし、逆に「フェスの一体感は嫌い」みたいな人は今なぜこういう状況になっているかっていうことが改めてわかると思うので、それぞれ人間的に成長できる…って言ったら大げさかもしれませんが()、また違った角度から音楽を楽しむ助けになるんじゃないかな」

 

 

入口と落とし穴を作り続けてるって言ったらいいのかな

 

---アルバムから間髪いれず、新曲「春が来てぼくら」が3月にリリースされます。すでにアニメ「3月のライオン」ではその一部が放送されていますが、ほんとに美しい楽曲ですね。

 

「個人的には「芸術作品を作ったな」という思いが強いですね。「売れるべき!」とかそういうのよりは、目立たなくてもいいんですけど「すげーもん作ったんだな…」って物好きな人たちにはわかってほしいとは思っています」

 

---映像との組み合わせもばっちりで。

 

「素晴らしいですよね!」

 

---途中でバーンとバンド名も出ますよね。

 

「あれはおいしい体験ですね()。「シュガーソングとビターステップ」のときもそうだったんですけど、タイアップでありがたいのは周りの人たちが僕らの楽曲をどんどん底上げしてくれることなんですよね。だからいまだに「シュガーソングとビターステップ」が売れたのは僕らの実力ではないと思っているし、仮に「春が来てぼくら」がそうなったとしても同じように感じると思うんですけど…少なくとも楽曲そのものに関しては、「3月のライオン」っていう作品のオープニング曲としてもユニゾンの曲としてもすごく純度の高いものになっているはずだし、さっきから話している僕の視界に入っている人たちに対しても「もしからしたらタイアップ嫌いかもしれないけど、まあいい曲だから聴いてくれよ」って胸を張って言える曲になっていると思うので、そういう意味では非常に満足してます」

 

---田淵さんの中で、「春が来てぼくら」のようなロックバンドとしての美しさを体現していてテレビで流れても違和感のない曲と、ライブハウスで映えるギターを激しくかき鳴らすような曲、ユニゾンのそういう二面性みたいなものはどういうふうに位置づけられているんですか?

 

「うーん、僕としてはあくまでも本質的には同じでやり口を変えているだけって感じなんですが…あえて言えば、入口と落とし穴を作り続けてるって言ったらいいのかな。たとえば「春が来てぼくら」でユニゾンのことを好きになってくれた人がライブハウスに来たとして、その人が「もっと「春が来てぼくら」みたいな曲がいっぱいあると思ってたのにちょっとイメージ違ったな、もうライブ行かなくていいや」ってなったとしたら、それはそれで仕方ないじゃないですか。ただ、中にはそうやってライブハウスに来て、うっかりはまってしまう人もいるはずなので。レジーさんが今言っていただいた2つの方向性のうちの前者はユニゾンのことを意識するきっかけとしては機能しやすいと思うので、そういうものはこの先もちゃんと作っていきたいとは思っています。それはメジャーレーベルにいるバンドの務めだとも思ってやっている側面もありますけど、それ以上に僕自身そういう音楽も好きというのが大きいですね」

 

---テレビで流れる音楽を作ったとしても「お茶の間で人気者になろう!」とかそういう話ではないですもんね、ユニゾンの場合は。

 

「そうですね。僕がやりたいのは、曲を作って、アルバムを作って、全国を廻ってライブをするロックバンド、それだけなので。で、そういうバンドの曲を聴いたりライブを見たりするために貴重な時間を割いてくれる人たちがいるのであれば、その人たちには胸を張って好き勝手音楽をやる。それはこの先もずっと変わらないと思います」


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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「やりたいことが明快、というのは改めて伝わってきました。『MODE MOOD MODE』、ここ数年のバンドもののアルバムとしてもかなり上位に入る出来の作品だと思うので、ぜひ聴いてみてください。改めまして田淵さんおよび関係者の皆様ありがとうございました。今回はこんな感じで。次回は今度こそさくっと軽い感じのエントリをあげたいと思っています」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

 

音楽に関する文章をウェブメディア・雑誌や個人ブログに書きつつ、会社ではそういうのとは関係のない仕事をしています。ツイートは音楽、アイドル、Jリーグ(柏レイソル)、読書など。12月11日に本出ます。https://t.co/Ql6NrdnKb4 お仕事のご依頼などご連絡は下記リンクからお気軽にどうぞ




 

 

 

 

 

 

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