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「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

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アイドルと自意識、アイドルの自意識26 - 『「アイドル」の読み方』から2年半、香月孝史さんとのアイドル話再び(後編)

司会者「前回に引き続き、『「アイドル」の読み方』の著者である香月孝史さんとのアイドルシーン談義をお届けします」

 


レジー「前編では主に4846絡みの話をしつつ、アイドル本人の主体性というものに対して受け手としてどうやって向き合っていくかみたいな話題に触れました。後編では個々のグループについてというよりはもう少し俯瞰的な目線で、この先アイドルシーンというものがどうやって続いていくかというような話をしています。僕がリアルサウンドに書いてヤフトピにもなった記事を起点にしてますので、良かったら本文中に貼ったリンクからそちらも読んでみてください。それではどうぞ」

※前編はこちら 

 

 

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アイドルの続け方、人生の続け方(例えば政治家になる、など)

 

---前回の記事の際に香月さんがお話しされていた「この文化は持続可能なものなのか」という視点は僕にとってすごく新鮮だったんですよね。そのあたり意識しながら書いたのが、「アイドルは年齢とキャリアをどう重ねていく? AKB48PerfumeNegiccoが示す新モデル」というリアルサウンドの記事なんですが、PerfumeにせよAKB48の卒業生にせよ、「アイドルを出自として長く活動を続けていく」というフォーマットが少しずつですが整備されつつあるような印象を持っています。

 

Perfumeは「アイドルグループが継続していく」ということに関して、現段階での一番の成功例ですよね。また、AKB48を卒業したメンバーが女優として活躍するケースが増えているのも素晴らしいと思います。ここで気をつけたいのは、Perfumeのような「少人数固定型」のグループとAKB48のような「多人数循環型」のグループだと「活動の継続性」ということの意味がだいぶ違うということです。「少人数固定型」の場合はそこにいるメンバーが基本的にはそのままの構成で芸能界を生き残っていくということになると思うんですけど、「多人数循環型」の場合は「グループそのものは継続する」「メンバーは入れ替わる」「入れ替わったメンバーがそれぞれの場所で居場所を確保する」というような形になるかと」

 

---なるほど、「Perfumeが続く」というのはあくまでもあの3人が変わらずかっこいいパフォーマンスを見せていくことと同義だけど、「AKB48が続いていく」ということになるといろいろなレイヤーの話が混ざってくるわけですね。

 

「そうですね。先ほどお話した「AKB48はこれからメンバーが循環していく」というのをさらに噛み砕くとそういうことなのかなと」

 

---今の分類に沿って話を進めるとすると、「少人数固定型」のグループが活動を続けて年を重ねていくというモデルについては、どこかのタイミングで必ず「それはアイドルなのか?」みたいな問いが発せられますよね。「Perfumeがアイドルか、もしくはアーティストか」という話はインターネットにおいて燃える話題ランキングの上位に入ると思いますし()、音楽的に面白い作品を連発しながらキャリアを積んでいるNegiccoも徐々にそういうフェーズに来ているのかなと思います。正直彼女たちがアイドルだろうがアーティストだろうがどっちでもいい、というかどうでもいいと思ってますが。

 

Perfumeの進んでいる道が本当に前例のないものだから、名前をつけるのが難しいんですよね。少なくとも彼女たちが今の時代における「アイドル」的なものを出自として登場してきているのは事実なので、Perfumeがこれからどうなっていくかというのが一つのモデルケースになることは間違いないとは思います。Negiccoはグループとして成熟しながらも今のアイドルマーケットの作法、接触こみでCDの枚数を売るというようなところにもコミットしているので、Perfumeよりもわかりやすく他のグループの道しるべになるかもしれないですね」



  

 

---「多人数循環型」の話だと、先日公開されていたAKB48のドキュメンタリー映画で「グループを辞めて芸能界を去ったメンバーの充実ぶり」が描かれていたのが気になりました。グループ自体が継続していく中で、「循環した」メンバーが活躍する場所は必ずしも芸能界じゃなくてもいいんだなと。言われてみれば当たり前ですが、目から鱗でした。小森美果さんのママっぷりとか素敵でしたね。

 

 

「良かったですよね。48での活動を踏み台にして芸能界で成功する人もいれば芸能界じゃない場所でちゃんと人生を送っている人もいるということが可視化されるのは、グループが継続していくうえでとても良いことだと思います」

 

---全員が必ずしもスムーズにはいかないにしても、少なからずそういうパスもあるというのが見えているとアイドル当人にとっても外野にとっても安心感がありますよね。「芸能界じゃない場所でも輝ける」ということを考えたときにどうしても言及したくなってしまうのが、先日の参議院議員選挙に立候補していた今井絵理子のことなんですけど。SPEEDが「アイドル」だったのかどうかみたいな話は置いておくとして、10代でスターになった方がいろんな事情はあったんでしょうけど30代前半で国会議員になると。これ、48グループに関しても今後起こり得ることですよね。しかもあのグループには高橋みなみといううってつけの人材がいるわけで。

 

「そうですね。しかるべきタイミングで打診はされますよね、絶対」

 

---ここは特に結論のある話をしたいわけじゃないんですが、僕自身SPEEDの中で絵理子が一番好きだったので、ああいう形で池上さんに嫌味を言われたりするのを見るのは結構しんどかったんですよね。そしてその番組にたかみなも出ていると。で、この前の選挙は18歳から投票が可能になるということもあって、その年代が多い女性アイドルが何かと選挙に関連するネタに担ぎ出されていましたよね。その辺の諸々を眺めながら、今後「アイドルと政治」みたいなトピックも浮上してくるのかななんて思いました。

 

「うーん・・・この辺は、アイドルっていうフレームで語る話でもないような気もしますけどね。たかみなが人物として象徴的すぎるからそこに引っ張られちゃうところはあると思いますが、じゃあ彼女が選挙に出たとしてそれがアイドルの文化のあり方に関係してくるかというとそうでもないでしょうし。「有名人が選挙に出るというのはどういうことか」っていう、より一般的な話題の派生でしかないと思いますよ」

 

 

「アイドル」の歴史は実はまだ短い そして「また松田聖子か・・・」

 

---そう言えば先ほど紹介した僕の記事について「アイドルが年齢を重ねていくモデルとして松田聖子がいるじゃないか」みたいな反応が結構たくさんあったんですけど、それに対してはかなり違和感があって。確かに松田聖子はアイドルだったし今もアイドルのまま年をとっているのかもしれないけど、同じ言葉でも今とは指し示す意味が違いすぎるというか。

 

「そうですね。松田聖子に関しては基本的には「過去にものすごく売れたソロの芸能人がそのままサバイブし続けている」という話ですし、そこで用いられる「アイドル」の語義は到底、今日のアイドルというジャンルにそのまま適用できるようなものではないので、その例を挙げたとしても今のアイドルシーンに対しては何も言っていないと思います。・・・ちょっとこういう言い方はあれですが、そういう話を整理したくて『「アイドル」の読み方』を書いたんですけどね。「またそこからですか?」っていう()

 

---()

 

「まだ読まれてないんだな、頑張らなくては、と思いました()

 

---ヤフコメでそういうのが出るのはまあどうでもいいとしても、わりと音楽聴いていそうな人の間でも結構そういう意見が出てきていたりしました。「1980年代のアイドル」と「2010年代のアイドル」は別物だと思うんですけど、そういう認識がなかなか浸透していかないなと。現状の「アイドルシーン」というものは、それこそ松田聖子がアイドルとして全盛期だった時代とは切り分けて考えた方がいいですよね。

 

 

「僕はその方が見やすいと思います。アイドルという言葉自体は昔から変わらずあるにせよ、芸能界で地位を確立した一握りのスターのことだけを意味していた80年代と、「名乗れば誰でもなれる」みたいな状況――以前、「アイドル」という言葉の語義の広さが「バンド」という単語に近くなっているのではという話をしましたが、そうした状況――にますます近づきある10年代を接続させて考えるのは無理があるというか。そもそも、今くらいの規模や裾野の広さでアイドルに関するシーンが成立しているのってたぶん初めてなんですよね。プレーヤーも多いし、メディアで売れている旧来型のアイドルに近い人からライブだけで活動している人までタイプも幅広くて、もっと言えば90年代であれば「アーティスト」という打ち出しで世に出ていたであろう人たちも「アイドル」としてそのシーンに包含されているわけで」

 

---確かにSPEEDPUFFYも当時は「アーティスト」扱いでしたけど、たぶん今デビューしていたら「アイドル」に括られそうですよね。

 




 

「はい。シーンとして、ジャンルとしてものすごく厚みを持った状態になってきていて、それは今までなかった状況と言っていいはずなんです。だからこういう時代に個々のアイドルがどうやって長く続けていくか、もしくはシーン全体としてどうやって持続可能なものになっていくか、とかって問いに対して、「アイドル」という単語に引きずられて過去の事例を当てはめることは無理があると思うし、だからこそ先ほど話題にあがったPerfumeのあり方やAKB48が「循環モデル」をちゃんと作れるかみたいなことがかなり重要になってくるんじゃないかなと。それぞれが今までの世の中になかったことをやろうとしているので」

 

---アイドルに関する文化の層が厚くなっていっている一方で、その根幹には「握手券をつけて同じCDをたくさん売る」というビジネスモデルが存在していますよね。そこに対しての批判は根強く存在するし、そういう話と「若い女性がフロントに立つエンタメ」という性質も相まって、アイドルという文化全般への嫌悪感みたいなものは明確に世の中に存在しますよね。そういう悪意のようなものが一気に噴出したのが、先日小金井であった事件に対する「これだからアイドルは・・・」的な反応だったと思います。その時に出てきた意見にはたくさんの誤解も含まれていましたけど、事実としてそういうネガティブな感情が抱え込まれているというのが可視化されたわけですよね。先ほど香月さんにご提示いただいた「AKB総選挙の内部からの相対化」という話もそういう世間からの風当たりみたいなものも踏まえたうえで出てきているのかなとも思うんですが、改めてこういった風潮に対して香月さんとしてはどのようにお考えですか?

 

「そうですね・・・まず、「握手券つきでCDが売られる」という話はアイドルに関するところからだけでは解決できないというか、音楽業界全体で「音楽を売ることについての特効薬」が出てこない限りは変わらないんじゃないかなと思っています」

 

---確かにそうですね。アイドルとは到底呼べないようなミュージシャンも同じようなことをやっていたりしますしね。

 

「今みたいな対面コミュニケーション至上主義がどこまで続くのかなってのはありますし、どこかで揺り戻しが来るような気もするんですけど、しばらくはこのビジネスの仕方に対する批判は払拭されないんじゃないかなと。そういう前提を踏まえたうえでなんですけど、そもそもジャンルを継続させていかない限りイメージが変わるということも起こりえないと思うので、まずは何であれ続いていくことが大事なんじゃないのかなとは思っていますね。歴史が積み重なっていくうちに受け手も循環するし、時代の潮目も変わる」

 

---「受け手の循環」というのもキーワードですね。「将来の夢はアイドルです」なんて女の子が普通に出てきている中で、そういう人たちが我々くらいの年齢になる20年後にはもはや「アイドルはださい、アイドルファンは気持ち悪い」みたいなイメージを全く共有できないものになっているかもしれない。

 

「当たり前のものとして定着しているかもしれないですよね。新しい世代が受け手側にも入ってくる中でステレオタイプな反感も薄まっていくんじゃないかなと思っています。1年半前にお話しした際にも歌舞伎の例を出しましたけど、歌舞伎って戦後しばらく経った頃でもまだ、近代主義的な観点からは「芸術性の低いもの」として扱われていたんですよね。それが、受け手が循環することで前提とするイメージも変わるし、それに対応して戦略も変わっていって、今ではわりと高尚なものに捉えられている。時代の趨勢が変わっていく中でイメージもどんどん変わっていくと思うので、そういう変化が起こるためにも今の世間からの感情がどうであれとにかく長く続いていくことが重要なんじゃないかと思います」

 

 

「楽曲派」から考える 「アイドルの存在が“当たり前”な世界」

 

---今回お話しさせていただくにあたってここ数年のアイドル周りのことをいろいろ反芻していたんですけど、3年前にB&Bで柴さんとさやわかさんと一緒に「アイドルとロックの蜜月」っていうトークイベントに出演したことを不意に思い出したんですよね。2013年のロックインジャパンにPASSPO☆とかアプガとかがどさっと出て、その中にベビメタも含まれていたりして。その辺を踏まえて「この先アイドルはどういう形でロックフェスに関わっていくのか」みたいなテーマだったんですけど・・・今考えると、ああやってわざわざイベントやったのはなんだったんだろう?ってくらい賞味期限の短い話だったんだなって。

 

「確かにそういう話題もありましたね、くらいの感じになっちゃいましたね」

 

---ロックインジャパンに関して言えばそうやって売出し中のアイドルを出したのは2013年と2014年だけ、今年出演したアイドルはベビメタ、でんぱ組、しゃちほこ、℃-ute4組。結局アリーナクラスの動員が見込めるグループしか呼ばれなくなったと。

 

 

「ジャパンとしても試行錯誤だったんでしょうね。「大きいの以外はなくてもいい」って判断をドライにしたというか、もともとこのジャンルそのものにそこまでコミットする必然のあるイベントではないってことなんでしょうけど」

 

---そうですね。で、それに関連してお話ししたいのがいわゆる「楽曲派」みたいな言葉で称されるムーブメントについてなんですけど、2013年とか2014年とかって「アイドル“も”聴きます」っていうスタンスがすごく持てはやされた時代だったと思うんですよね。フェス側もそういう姿勢を見せようとしていたし、早耳であることを示したいリスナーもそういう行動をとった。僕自身もそういう波に乗っていた部分っていうのはやっぱり少なからず、正確に言えばかなりあったと思います。で、そういう行為がファッショナブルだと思われていた時代っていうのがあっという間に過ぎ去ってしまったんだなあという実感があるんです。先ほどまでの「シーンの層が厚くなってきている」という話の一方で、少し前までアイドルシーンにたくさん存在した「音楽好きです!語りたいです!」みたいなタイプのリスナーは実質的にかなり離脱しているような感触があって。そういうゾーンとも親和性のあるリリスクのことが好きな香月さん的に、そのあたりどう見えているのかなということを最後にお話ししたいんですが。

 

 

「そうですね・・・個人的には「楽曲派」みたいなことにフォーカスして話をしてもそこまで実りはないような感じもしますけど()、最初に指摘したいのはこの「楽曲派」という言葉ですよね。そもそもこの言葉自体、使われ始めた当初から「()」がついていたものだと思うんですよ。「そのグループが好き・そのメンバーが好き」と「そのグループの曲が好き」っていうのは完全に切り離すことはできないと思うんですけど、そこをあえて「曲だけ好き」というポーズをとることのおかしみも含めての「楽曲派」という呼称なんじゃないかなと思うんですよね。逆のベクトルで「ガチ恋」もそういうことなのかもしれないですけど」

 

---「楽曲派」という言葉は「()」がつくものだっていう感覚なんですが、「アイドル“も”聴きます」「それってわかっているよね」みたいな価値観が一時的にでも浸透していく中で意外と剥がれちゃっていた感じもするんですよね。そういうアイロニー抜きにして、「センスの良いアイドル楽曲を感度よく摂取する層」みたいなベタな意味になっていた局面が少なからずあったような・・・

 

「なるほど。「()」の意味合いは自称じゃなくて他称の方で残っていたんですかね」

 

---で、たぶんアイロニーなくこの言葉を使っていた層、言葉を使わないにしてもそういう意識を共有していた層が、根こそぎいなくなったのが今の状況のような気がしているんですけど。その人たちは今は必死にフリースタイルダンジョンを見ている、的な。

 

()

 

---そう考えないと女子流があそこまで苦しんでいるのは説明しづらいし・・・もちろん曲とか見せ方の問題はあると思いますけど。あと今年で言えばWHY@DOLLGemini』とかわーすた『The World Standard』とか、そういう層が喜びそうなアルバムも結構出ているのにちょっと前のような盛り上がり方をしていなかったり。



 

 

「うーん・・・ざっとした言い方をしてしまうと、「アイドルにもいい曲あるじゃん!」っていう「発見」をすることが旬だった時代があったんですよね。で、おそらく数年前は「そういう人たちはこの辺を聴いておけばOK」みたいな範囲があったと思うんですよ」

 

---とりあえずTパレ祭りに出ている人聴いとけば大体カバーできる、みたいな。

 

「それが今はどこをおさえておけば良いという感じでもなくなってきているというのはあるんじゃないですかね」

 

---それはあると思います。「この辺おさえておけば大丈夫」があったからそこに人が呼びこまれたけど、いい作品がいろんな場所から生まれてくる中でそれを網羅することができなくなった。「できなくなった」には「そこまでして聴かなくてもいいや、労力かけなくてもいいと思った」というニュアンスも含まれてくると思いますが。

 

「そんなに出てこられたら逆に困る、みたいな感じですかね。・・・難しいんですけど、この辺の話はある意味ではアイドルというものの位置づけが「正常なもの」に向かっているという言い方もできると僕は思います。「アイドルのいい曲を発見する」っていうスタンス自体が、暗黙のうちにアイドルのことを下位に見ているとも言えるじゃないですか」

 

---確かにそうですね。そう考えると、「アイドル“も”聴いている」が差別化にならない時代の方が健全だという言い方もできるのか。

 

「どこかをおさえておけば良いという感じではなくなっているのも、アイドルというジャンルを使った表現の質量それぞれでの向上の帰結でもありますよね。何年か前は「アイドルとロックバンドや若手の注目株が絡む」ということ自体がものすごくフレッシュに見えていましたけど、今はそこまでではない。それを「シーンとして盛り上がってない」「気にする人が減ってしまった」って捉えることもできなくはないですが、そもそもそういうことがやたらと話題になっていたこと自体がイレギュラーだったという言い方もあり得ると思うんです」

 

---なるほど。

 

「「アイドル×有名ミュージシャンでかっこいい楽曲!」みたいなものが話題になっていた背景には、「アイドルの曲がかっこいいことが珍しい」「何も知らないアイドルがそんなセンスのいい人と絡むなんて素敵」みたいな、言ってしまえば鼻持ちならない感情が少なからずベースにあったわけですよね。ちょっと見方として穿ちすぎなのかもしれないですけど、そういうトレンドが消滅しつつあるっていうのは、ある意味では「アイドルがいい曲を歌う」ということが当たり前のものとして認識されるようになってきている証拠なのかもしれないし、希望的観測ではありますけどそれはつまりアイドルシーンというものが「見下したり、その裏返しで持ち上げたり、という対象ではない、普通に存在する場所」になろうとしているということなんじゃないかなと思います」

 

 

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司会者「以上になります」

 

レジー「「循環」っていうのが一つのキーワードだよね。今のアイドルシーンというものはまだまだ新しいものだし、これがどうやって続いていくのか、もしかしたら続いていかないのかみたいなことをはちゃんと見届けていきたいと思います。まあここで出てきてる話だけでいろんな話題を網羅できているとは思っていないけど、何かしらのガイドにはなっていれば嬉しいです。香月さんの『「アイドル」の読み方』はほんとに今のシーンを考えるうえで必須の一冊なので、未読の方はこれを機会に読んでみてはいかがでしょうか。というわけで香月さん改めてありがとうございました。今回はこんな感じで」

 

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

 

レジー「ちょっと未定なんですけど、少し大きめのやつを仕込んでいるのでもしかしたら若干間隔が空くかもです。しばらくお待ちいただけますと。タイムリーなネタがあればそれはそれでまた」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識25 - 『「アイドル」の読み方』から2年半、香月孝史さんとのアイドル話再び(前編)

司会者「前回も少し話がありましたがまたまたインタビュー企画で」

 

レジー「今回のはインタビューというよりは対談色が強いですかね。2014年の年末に『「アイドル」の読み方』の著者の香月孝史さんとあの本を入口として当時のアイドルシーンについて話した記事をアップしたんですけど、今回はその続編ということで」

 



アイドルと自意識、アイドルの自意識
21 - 『「アイドル」の読み方』を巡る香月孝史さんとの対話(前編)

アイドルと自意識、アイドルの自意識22 - 『「アイドル」の読み方』を巡る香月孝史さんとの対話(後編)

 

司会者「あの本が出てから2年以上経ちました」

 

レジー「そうね。少し時間が経ったので、また改めてアイドルを取り巻く環境がどんなふうになっているのか?ということについて話し合ってきました。今回と次回、前後編に分けてお送りします」

 

司会者「お話ししたのは7月の半ばくらいでしたね」

 

レジー「まだTIFの前、あとはAKB48の総選挙からそこまで日が経ってなかった時期です。そんなタイミングも反映された内容になっているかと思います。前編は48および46の現状や今後の展望についての話です。俯瞰する感じとファン目線が入り混じる感じになってますが、そのあたりも含めてお楽しみいただければと。それではどうぞ」

 

 

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坂道シリーズの好調の秘訣は「正攻法」

 

---前回お話させていただいたのが2014年の年末でしたね。

 

「そうですね。ちょうど『「アイドル」の読み方』が出た年です」

 

---あれから1年半ちょっと経って、女性アイドルを取り巻く環境について変わった部分、変わっていない部分いろいろあると思います。今日は最近のトピックをネタにしながら、「女性アイドル」について、それから件の本でもテーマになっていた「女性アイドルを取り巻く言説」についてざっくばらんにお話しできればと思います。よろしくお願いします。

 

「お願いします!」

 

---最初に、香月さんの感覚として、前回記事のタイミングと今時点を比較した際に「女性アイドル関連で特に変わったこと」として思い当たるのはどういったあたりでしょうか。

 

「そうですね・・・僕個人の観測範囲で言うと、乃木坂46の大きさが変わったっていうのがあるかなと」

 

---あー、確かに。

 

2015年の1年かけて、全然違う大きさになっちゃいましたからね」

 

---乃木坂に関しては、香月さんもいろいろ関連するお仕事をされていますよね。

 

「そうですね。前回レジーさんとお話しした後くらいから乃木坂関連のお仕事をさせていただくようになりました。乃木坂46運営委員会委員長の今野さんにお話を聞く機会なんかもあったんですけど、乃木坂はAKB的な瞬発的な仕掛けで話題をとるんじゃなくて、ある種地道に種を蒔いていくっていうスタンスが徹底しているんですよね。乃木坂の露出が2015年に増えたことの一因としてこの年にファッション誌の専属モデルが一気に決まったことがあるんですが、これも2012年に白石麻衣さんがLARMEにレギュラーで出るようになった時から積み重ねてきているファッション方面へのアプローチの賜物なわけで」

 

---ここまで少しずつやってきたことが花開いたのが、2015年のブレイクだったと。

 

「そういう意味では、乃木坂の活動はわりと正攻法なんですよね。ファッション方面の活動については、そもそもオーディションでメンバー選ぶ時点で「洋服をきれいに着られる骨格かどうか」というのが基準になっていたそうなので、この成果は狙い通りなのかなと」

 

---ファッション系の活動を通じて女性ファンも増えているんですかね。

 

「女性に受け入れられやすい素地は他のグループと比べてあるんじゃないかなとは思います。ファッション誌との関わり方にしても既存の読者の反発を招かないような形、いきなり看板扱いするんじゃなくて少しずつその雑誌に馴染ませていくようなやり方をとっていますし、これまで乃木坂に関与のなかった女性にも自然な形で訴求できているんじゃないでしょうか」

 

---僕この前西野さんの写真見たくて「non-no」買っちゃいましたからね。

 

()。少しずつ馴染ませていくやり方はグループ全体の運営にも表れていて、その西野さんが初めてセンターになったのが8枚目のシングル「気づいたら片思い」なんですけど、今野さんが「西野にスイッチを入れたい」っていう目論見を持ち始めたのが5枚のシングル「君の名は希望」の頃なんです。センター候補と位置づけてから、実際にセンターになるまでちょうど1年くらい。この期間は、齋藤飛鳥さんが11枚目のシングル「命は美しい」あたりで選抜常連メンバーになってから最新シングル「裸足でSummer」でセンターを務めるまでの期間と大体同じです。多少時間をとって成長させていく、というプロセスを重視するのが乃木坂らしいやり方なのかなと」

 

---なるほど。堀さんみたいな特例もありますが・・・()

 

「あれはきっと2期生をどう活かしていくかという模索のひとつだったんだろうなとは思いますけど」

 

---「裸足でSummer」の話がありましたが、あの曲のMVがすごい好きです。

 

 

「乃木坂のMVってドラマを作りこむものが多い印象ですけど、あの曲は「夏のある一日に車に乗ってビーチに向かう」っていうストレートな企画ですよね。モチーフとしては既視感があると言えばあるんですが、それをあの高水準に仕上げている」

 

---そうですね。そういうオーソドックスなやつをビジュアルパワーで有無を言わさない感じにしちゃうところがいいなあと。

 

CDのジャケットも地撮り棒を使ったもので、決して奇を衒ったものではないんですよね。「アイドルの自撮り」だけなら、今やどこにでもあるような絵です。それでも、単に自撮りのカジュアル感やチープさという「ありふれた魅力」をそのまま表現するのではなく、普通に自撮りをしても実現できないような品の良い一枚絵に仕上げているのがさすがだなと思います。当たり前のことをハイクオリティでやってくる感じが」

 

---46周りで言うと、欅坂46の「サイレントマジョリティー」はどうですか。今年を代表する一曲になりつつある感じもします。僕も最初かなりびっくりしました。

 

 

「あそこまで「曲」「歌詞」「振り付け」「衣装」「MV」を全部統一した世界観で作りこめているのって、4846の最近の楽曲ではなかったと思います。そういう統一感があのインパクトにつながっているのかなと」

 

---ただキャッチーなだけじゃなくてサビの頭でメロディが潜る感じとか、結構チャレンジングなことをやるなあと。あとは何と言っても平手さんのカリスマ性が。

 

「「サイレントマジョリティー」はそういう部分を強調する振り付けになっていますしね。「サイレントマジョリティー」のシングルに収録されている曲の振り付けはどれも演劇っぽい要素があって、視覚的なドラマを見せるという部分でのこだわりがすごく感じられます。で、「世界には愛しかない」はその延長線上にある」

 

 

---あの語りはびっくりしますよね。

 

「さすがに演者がまだ曲に追いついてない部分はありますけど・・・意欲はすごく感じます。彼女たちがキャリアを重ねたらさらに物凄い表現になりそうですし。欅坂でここまで大胆なチャレンジができているのも、乃木坂4年分のノウハウがあるからだと僕は思うんですよね。昨年MdNの乃木坂の増刊(「MdN EXTRA Vol.3 乃木坂46 映像の世界」)に関わらせていただいた際に過去の映像作品とかについてもいろいろ話を聞いたんですけど、相当練って作っているのがよくわかったし、クリエイターの発想に委ねていいものを引き出そうというトライもしているんですよね。時間のない中でもちゃんと作品を作ろうとしているし、その姿勢は欅坂にも出ているのかなと」

 

 

着実に「環境」になりつつあるAKB48

 

---坂道シリーズの作品に関する充実したお話を聞くと、最近の48関連との差が際立ちますね。もう秋元康は飽きちゃったんでしょうか・・・

 

()

 

---個人的には4846の作品群に明確なクオリティの差を感じてしまうんですけど。

 

「ここからはお互いファンの愚痴みたいな感じになっちゃいそうですけど・・・()。」

 

---48周りの曲で良かったやつってありますか?僕はHKT48の「12秒」は好きでした。

 

 

「あの曲はイントロとか気持ち良いですよね。あとは「君はメロディー」が」

 

---あれはほんといい曲ですよね。

 

 

「ただ、制作面での都合のつかなさもうかがえるというか、もうちょっと楽曲と蜷川実花の手がけるビジュアルとをすり合わせられなかったのかなとは思いますけどね。それから、あれを10周年の曲にするべきだったのかというか、ああいういい曲を若いメンバーに渡さないで黄金期のメンバーにやらせるのはどうだったのかなと」

 

---そこに関しては、「前田大島がいたからこそあの曲が出てきた」って部分も大きいのかなというのが僕の印象なんですけどね。あのメンバーだから秋元康もピンときてああいう曲を持ってこれた、最近は48側であまりピンと来ていない、そのピンとくる感じは46側に寄っている。

 

「それは確かにそうでしょうね」

 

---・・・やっぱり48の作品の話をしてると暗くなるな()

 

48に関しては、「環境」としてちゃんと定着してくれればそれでいい、それこそがアイドルシーンに対する一番の貢献だと思っている、っていうのが僕のスタンスですかね。48グループって世の中的には勢いが弱まってきているように見えているだろうし実際そういう側面はあると思うんですけど、一方でこの10年かけて各地に劇場作ってメディアに出ていく回路も複数構築しているわけですよね。こちらが慣れきってしまっているだけで、それはものすごく偉大なことなんですよ。・・・希望的観測ではありますけど、「48の終わりの始まり」みたいなことを言うフェーズはすでに越えつつあるんじゃないかなと思っています」

 

---48が終わる・いつ終わるのか」みたいな話はみんな好きですよね。

 

「そうですね。もう5年くらいやってるんじゃないですか」

 

---確かに()

 

「今の48って、「メンバーが循環していく」という経験を初めてしている最中なんですよね。ブレイクしたのが2009年か2010年だとして、そのときにすでに知名度のあったメンバーがまだ何人か残っています。つまり、まだ「完全な循環」は経験していない。だから「メンバーが循環しながらも続いていくものなんだ」っていう前提自体が世の中にもまだないし、最初に栄光を築いたメンバーと入ってきたばかりのメンバーが比較されてパワーダウンしているように見えるのも仕方ない部分もあるのかなと」

 

---終わろうとしているんじゃなくて、続き方を模索している、脱皮しようとしているタイミングというか。

 

「そうですね。そういう試行錯誤を経たうえで、地方グループも含めたAKB48という仕組み自体が長く継続していくようになればアイドルというジャンルにとってはそれでいいのかなと。たとえば演劇の世界で言えば、宝塚があって、劇団四季があって、歌舞伎があって、っていうところに2.5次元舞台が出てきたとしても別にそれは「○○に勝った」「△△はもう終わり」とかって話ではなくて「シーン全体の豊かさ」として捉えられるはずなんですよね。48もそういう定着した存在の一つになったらいいなと思うし、徐々にそこに近づいてはきているのかなと。そうやって続けていくうちに、何十年か後に「48すげー!」っていう時代がまた来たりもするでしょうし。そういうサイクルの中で、作品として優れたもの、「恋するフォーチュンクッキー」みたいにみんなが歌えるような歌とかもどこかのタイミングでちゃんと出てくるのではないでしょうか。単純に、現時点でまだそこまでの歴史を経ていないから、周囲がそういう想像力を持ちにくいだけのことで」

 

 

選抜総選挙とメンバーの主体性 「相対化」と「エンタメの強度」

 

---先ほど出てきた「AKBはもう終わり」的な話がなされる際に、選抜総選挙に関する熱量についても取り上げられることが多いですよね。さっしーが馬鹿勝ちしちゃう構造だったり、なかなか新しいスターが見えてこなかったり、いろんなことが突っ込まれますが、体感値として僕自身も今年の選抜総選挙にそこまで盛り上がってなかったんですよね。

 

「それは何か理由があるんですか?」

 

---・・・直截的な話で言うと、「今俺AKBより乃木坂の方が好きだな」って。

 

()

 

---投票している最中に気づきました()。ただ、それだけじゃなくてもっと構造的な部分で感じているところもあるなあと思って。そのあたりについて今日香月さんとお話しながら考えたいなと。

 

「なるほど。まず、僕らがあのイベントの刺激みたいなものに慣れてきている部分は間違いなくありますよね。それこそ最初の高橋栄樹監督のドキュメンタリーはインパクトありましたが、もはや総選挙でメンバーが感情をむき出しにしている光景がお馴染みのものになってしまったというか」

 

 

---確かにもう普通のものになっちゃっていますよね。ショッキングなものとして映らない。

 

「一方で、受け手は慣れたとしてもメンバーは変わらずそれに晒され続けているという構造があって」

 

---そう考えると、あのイベントが立候補制を取り入れたというのはそういうものに対する配慮というか・・・

 

「そう思います。2013年に立候補制が導入されましたが、本格的に空気が変わったのは去年からですよね。小嶋陽菜さん、松井玲奈さんという選挙に出れば選抜入りが堅い人たちが自分の意思で出ないということを表明したと。あれによって、「総選挙に出ること」と「総選挙に出ないこと」が同等の選択肢として提示された。つまり総選挙というイベントそのものが相対化されることになったんですよね。「出ない」と宣言すること自体が総選挙に対する批評的な意味も帯びるし、自身の主体性やスタンスを示すことにもなると」

 

---はい。

 

「で、僕としてはその流れに関しては肯定的なんですけど。やっぱり、生身のアイドルを順位付けの場に晒して、それ自体を一大コンテンツにするという側面を持つ総選挙が倫理的な面から批判を浴びるイベントだっていうのは仕方のないことなので、それに対してメンバーそれぞれが自分なりのスタンスをとれる仕組みっていうのは社会通念とも合致する動きだと思いますし。もちろん、そういう批判自体も一面的なところはありますが。ただ、内部の人が相対化相対化言っていけば、イベントとしての強度は落ちていきますよね。その辺を考慮したうえで、自分にとってメリットがなくても総選挙に出続けているのが指原さんなのかなと」

 

---メンバーの主体性をキープするためのイベントの相対化と、そのイベントそのもの強度の維持って話ですよね。本音で言うと、僕個人としてはこの相対化されていく現状は正直物足りなく感じる部分はあるんです。

 

「わかります」

 

---僕はゆいりー(村山彩希)が好きなメンバーの一人なんですけど、あの子は絶対総選挙に出ないんですよね。もちろんそれが本人のスタンスだって言われればそれまでなんですけど、まあまあ推されている瞬間もあったのに何で出ないの?そういうのがあることわかっててAKBにいるんじゃないの?っていう。

 

「難しいですね。参加者にとって相対化のチャンスを与えない状況の方がイベントとしての熱量は保てる、でも、それは一方で倫理的なマイナス面をガン無視するということにもなるわけで。やっぱりメンバー自身も運営も「自分たちがやっていることは世間的な感覚から乖離したものになっていないか?」って振り返る機会は作るべきだと思うんですよね。そのあたりの乖離を放置しすぎた結果として3年前の峯岸さんが坊主になった件があったとも言えるし」

 

---ああ、なるほど。

 

「総選挙の「倫理面を無視したところでの面白さ」は自分でもわかっているし、そんなに理不尽な話だけではなくてあのイベントがいろんなきっかけやドラマを運んでくるという側面は肯定したいので、一概に否定しちゃうわけにもいかないというところがまた自分の中でも苦しいんですが・・・正直、総選挙関係のことを何かしら書くときにはいつも迷いがあります」

 

---・・・ちょっと話が逸れるかもしれませんが、香月さんはアイドルについてのこういう話をしたり文章を書いたりするときに、「そのアイドル自身の気持ち・主体性」みたいなことをどのくらい慮っているんですか?曖昧な投げかけになってしまうんですが、「このイベントによってメンバーが苦しむかもしれない」っていう発想は、もちろん意味は分かるんですけど心の深いところで理解しているかというとそこまでピンと来ていない部分も実はあって。「エンタメを楽しむ側」「エンタメを提供する側」というように考えたときに、極端な話を言えば向こう側の人が抑圧されていたとしても見えているものが面白ければ別にいいじゃん、っていう気持ちが心のどこかにあるんですよね。

 

「はい」

 

---そういう考え方だと、「倫理的に問題のあるイベントをメンバーの側から相対化できた」っていう香月さんのお話に対しても「それによってイベントをつまんなくしてるんじゃねーか」という思いの方が勝ってしまうというか。そりゃ「出ない」っていう選択肢があった方がいいのかもしれないけど、たとえば「会社に入ったけどこの会議には出たくありません」って通用しないよな、とかそういうことを思ってしまうんですよね。

 

「あの・・・わかります。僕も「心配しすぎなんじゃないの?」って言われたらそれで終わりではあるんですよね。でも、僕はそこで倫理観というか、ためらいみたいなものを捨ててしまうのは危ないんじゃないかなとも思っていて。よく「アイドルとは生き方を見せるエンタメだ」みたいな言い方がありますよね。虚構の見世物のみで完結できるエンターテイメントではない、かつそれをやっている人たちはまだ人生の選択肢をそこまでたくさん経験している人たちではない。だからこそ「面白ければいい」っていう態度で気軽に見るのはやはり危うさを孕んでいるんじゃないのかなと」

 

---なるほど。たぶんそのあたりはメンバー間にも温度差はありますよね。今回の公式ガイドブックのきたりえのインタビューで「NGT48のメンバーは意識が高い。その証拠に全員が総選挙に立候補している」っていう趣旨のコメントがあって。これって、「総選挙に出ていない人は意識が高くない」とも読めますよね。

 

「もちろんそういう意見もあるとは思いますよ。それはそれで正解だと思うし、一方では「絶大な知名度とコネクションをある意味で好き勝手なスタンスで個々のメンバーが利用できる」というのが48の美点だとも思うので、「総選挙のためにこのグループに入ったんじゃない」っていうのも一つの正解になってほしいというのが僕の考えですね。中からの相対化でイベントとしての熱量が下がってしまっているのだとすれば、それを見越したうえで、つまり世間の価値観とのずれを可能な限り小さくしたうえで新たなイベントのあり方を描く必要があるんじゃないのかなと。短期的に見ればそれを「イベントとしての曲がり角」ということもできるんでしょうけど、48がちゃんと社会に受け入れられて長く続いていくものになるためには必要なステップだと思います」

 

 

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司会者「前編は以上になります」

 

レジー「最後の方の話ですが、アイドルというエンタメをどういうスタンスで楽しむかっていうところはいろんな考え方があるなあと思うので、そのあたりは読んでくださった方自身の向き合い方とも照らし合わせてもらえると嬉しいです。後編では個々のアイドルグループであったりアイドルカルチャー全体が今後どうやって続いていくか、という話をしています。そちらもぜひ」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

 

レジー「と言いつつ、次のアップは9/3土曜日の予定です。それまでしばしお待ちください」

メジャーでの葛藤を経て、もう一度「独断と偏見」を取り戻したい--ボールズ山本剛義、現状の生活と今後の展望を語る

司会者「またインタビュー記事なんですね。最近多くないですか」

レジー「話を聞きたい人が多くてね。インタビューじゃないネタは一個大きめのを仕込み始めたんですが、実は今回の記事以外にも一個インタビュー系があります。まあその辺の話は一旦置いておくとして、ここでは現在活動を休止しているボールズのボーカルでありソングライターの山本剛義さんへのインタビューをお送りします」

司会者「今年の春先にドラムの谷口さんが脱退してバンドとしては活動休止してるんですよね」

レジー「うん。去年出たアルバム『SEASON』についてインタビューさせてもらって、あの作品が苦しみぬいて作った作品だってことをじっくり話していただいたんですけど。そういう感じを経てリリースして、にもかかわらず今のような状況になっているということに対して山本さん的にも話したいことがあるんじゃないかとは活動休止のアナウンスがあったときからずっと思っていました。バンドの拠点が大阪なのでなかなか話を聞く機会をとれなかったんですが、ちょうど大阪に行く用事があったのでそのタイミングでインタビューを行いました」

司会者「谷口さんの脱退について、あとはメジャーで音楽をやるということについてなどシビアな話も包み隠さずしていただきました」

レジー「ありがたかったです。ひとりのミュージシャンがどうやって音楽を自分のもとに取り戻そうとしていくか、っていうドキュメントにもなっていると思うので、ボールズファンの方もそうでない方もぜひ読んでいただけると嬉しいです。最後には今後の活動の展望について話していただいています。それではどうぞ」

 


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離れていったメンバー、残ったメンバー

---3月末に谷口(修、ドラム)さんの脱退とバンドとしての休止が発表されてから山本さんがどういう状況なのか気になっておりまして、どこかで一度お話ししたいと思っていました。お時間いただきありがとうございます。

「いえ、こちらこそありがとうございます」

---今日は「これまで」のことと「これから」のことをそれぞれお聞きしたいと思っています。少し後ろ向きな話題についても質問させていただくことになるかもしれませんが、差しさわりのない範囲で答えていただけると嬉しいです。

「わかりました。よろしくお願いします」

---まず、谷口さんが脱退されたことについてお聞きしたいと思います。これについてはどういうタイミングでの出来事だったんでしょうか。

「この話が出たのは、ボールズがこれまで所属していたユニバーサルと契約して活動することができないとなった時期です。この決定についてはメンバーの思いも大人側の事情もそれぞれあるんですが、そのときに彼も一度立ち止まって自分のことをゆっくり考えたんだと思います。自分の生活のことや将来のことをいろいろ考えての決断で、何か決定的な理由があったわけではないようなんですが・・・「メジャーから離れよう」となったことはきっかけとしては大きいのかもしれないです」

---メジャーから離れるということについては追って掘り下げさせてもらえればと思っていますのでまずは谷口さんに関わることについて質問させていただくと、この話を聞いたときに山本さんはどうお思いましたか。

「まず最初に「寂しいな」と思ったんですけど・・・ミラーマン時代からメンバー変更の多いバンドだったんですよね、僕ら。で、それが本当にいいことかはわからないんですけど、辞めていくメンバーのことを引き留めたことはこれまで一度もないんです。だから寂しいけど「わかった」って。それに、僕にとって音楽はメジャーにいようがなんだろうが、やっていないと不自然なものだから。小さいころからずっとそばにあったものだし」

---はい。

「だから、今辞めるっていうことの気持ちはわかっているつもりではいるんですけど、「あ、そうなんや」くらいにしか思っていないという部分もあります」

---なるほど。ボールズが直近までの5人の編成になってからの期間で言うと・・・

「3、4年くらいかな。谷口とは7年くらい前から一緒ですよ」

---僕も全然素人レベルですけど高校や大学の時に音楽やっていて、そこでバンドの解散やメンバーの脱退みたいなことは何回か経験しているんですけど。やっぱりああいうのって、同じ物事に対する自分と相手の温度差とか、信用していたものが一瞬で崩れちゃう感じとか、結構きつかったというか、大げさに言えばちょっと人間不信になった記憶もあって。今のお話を聞く限り、そこまでダメージを受けず意外とさらっと受け止めているのかなと思ったんですが。

「何て言ったらいいのかな、もちろんそんな簡単に割り切れる話ではなかったんですけど・・・谷口がバンドの中で一番愚直に努力をしているメンバーだっていうのをみんな知っていたから、脱退したいって話を聞いたときに「あ、燃え尽きたんやな」って素直に受け入れることができたんですよね。バンドとして何も成し遂げていない中で「燃え尽きた」なんておこがましいんですけど、すっきりした気持ちで決断できたんだなっていうのがよくわかったので。もしかしたら冷たく聞こえるかもしれないですけど、不思議とすっと飲み込むことができたんです」

---今回ある種の節目でメンバーが抜けるというタイミングで、ボールズではない形で音楽をやるということは考えなかったのでしょうか。

「ああ、考えました考えました。阪口(晋作、ベース)と2人でやればいいじゃんとも一瞬思ったし、他の友達とやるみたいな方法もあったと思います。ただ、今のメンバーがいてくれたからこそ助かった部分っていうのも気づいてないことも含めてたくさんあったと思うし、彼らがやりたいと言ってくれているうちは一緒にやれたらいいなって。現時点で大前提にあるのは「音楽をやりたい」なので、ボールズというものに死ぬほどこだわっているかと言われればそうじゃないかもしれないというのが本音ではあるんです。でも、ボールズはやります」

 


改めて「メジャー」について考える 音楽で食うのか、音楽を続けるのか

---少し踏み込んだ話になってしまうかもしれませんが、先ほどちらっと出たメジャーレーベルとの契約が終了したということについて山本さんはどのように捉えていますか。

「・・・セールスや動員といった数字的な部分で追いついていないところがあったのは事実なので、そういう中での話という側面がまずあります。一緒に仕事させてもらっていたユニバーサルのスタッフのことがほんと好きだったので、さっきの谷口のことと同じ感想になっちゃうんですけどめっちゃ寂しいなと思いました。音楽業界って「音楽に詳しくない業界人」がものすごく多いんですけど、僕の周りにいる人たちは音楽好きだったり詳しかったりでそういうのも楽しかったし。ただ、メジャーレーベルで音楽を作っていくということの難しさや大変さを感じていたというのも一方ではあって。最初のアルバム(『スポットライト』2014年7月)を出した後くらいから迷いはあったというか、なんかサラリーマンみたいだなって思ったり・・・音楽を仕事にする以上はそういう瞬間が出てくるのは当然だとは思うんですけど、いろんなものに追い立てられて、いろんな人の意見を聞きながら音楽を作るのがほんとにしんどかった」

---そんな状況だったんですね。

「「メジャーのレコード会社が悪い」みたいなことを言うつもりはほんとに全くなくて、みんなが作品やバンドの状況を良くするために一生懸命いろんなことを考えてくれて心からありがたかったんですけど、バカ正直にそういうのを聞いていこうとしていく中で、自分の中にある判断の軸がどんどん見えにくくなっていってしまったんですよね。それが辛くて」

---前回のインタビューでは『SEASON』の制作時、つまり『スポットライト』のリリース後のお話を聞かせていただいた際に、自分たちの音楽が支持されない、CDも思ったより広まらないしフェスでもうまくいかない、そういう中で次の道を探していくためにすごく模索をしたとおっしゃっていたかと思います。そういった外的な部分で困難と直面しながら、内面では今お話しいただいたような精神的な揺らぎがあったということでしょうか。

「そうですね。外的な部分でいろんなことがある中でさっき話したようなネガティブな気持ちがわいてきてしまって、何をどうすればいいのかわからなくなってしまった、というのが一番正確かもしれないです。そんな感じで音楽をやるのがしんどかった時期にアジカンのゴッチさんに相談したことがあったんですけど、その時に「“音楽で飯を食っていく”ための方法を考えるのは間違いじゃないけど、そこにこだわらずに“自分の好きな音楽を一生続けていく”方法を探すのも選択肢としてありなんじゃないか」ということを言われたんですよね。それがものすごく心に響いて。このままいくと自分が音楽を嫌いになるんじゃないかって思っていたから」

---はい。

「その言葉がずーっと頭にあって、それを踏まえて「音楽を続けていく」っていう観点で考えると今のやり方をずっとやっていくのは難しいなあと思って。それで一旦ライブとか制作とかをストップして一か月くらいゆっくりしたいっていう話をしたんですけど。ただやっぱり今の環境だとそんなやり方は厳しいよねってことになって、それだったら・・・ということで今回の結論に至っている部分もあります。だからそういう意味ではポジティブにも捉えているんですけどね。たぶんメジャーレーベルはどこであっても効率を大事にすると思うし、予算があって、期日があって・・・それは理屈としては正しいと思うんですけど、その理屈を離れた非効率的なやり方でもう一度やりたいんです」

---今の「予算」とか「効率」みたいな話と関連しそうなところでもう一つお聞きしたいんですけど、『スポットライト』をリリースしたときにボールズってある意味「持ち上げられていた」じゃないですか。たくさんのメディアに登場して。

「はい。ほんとそうですね」

---で、次に『SEASON』が出るときにはその感じが全然なくなっていて。このブログでインタビューさせていただきましたけど、全体的にはあんまり取り上げられなかったですよね。

「そうなんですよね。おかんも言ってました」

---(笑)。でも『スポットライト』と『SEASON』にそのメディア露出の差の分だけクオリティの差があったか言えばそんなことは絶対ないし、ともすれば『SEASON』の方がクオリティが高いっていう見方もできると思うんです。僕はメディアの中にもレーベルの中にもいたことがないから実際にはこの手のお金やら広告やらの詳細な事情をそこまで正確にわかっているわけではないんですが、いちリスナーとして「あ、こんなに雰囲気が変わっちゃうのか」って素朴にびっくりするところがあったんですけど。

「僕自身もすごいびっくりしたんですよね。そういう感じになるというのはロジックとしてはわかってはいたんですけど、周りの人には「なんでこうなっているんですか」っていう話をわりとしました。でも、自分の周りのスタッフが一生懸命やってくれているのはよく知っていたから、この怒りやむなしさを誰にぶつけたらいいかわからなかったのがきつかったですね。その時に思ったのは・・・音楽ってそもそも誰かと手を組んでやるものじゃないのかもしれないなってことで」

---なるほど。

「自分の作ったものに対して自分と同じ熱量で愛を注いでくれる人って、絶対に存在しないんですよ。そう考えたときに、言い方は悪いですけど「自分よりも熱量が低い人」にそれを触られることって結構ストレスになるなって。作った側とそうでない側には越えられない壁があって、僕はその壁の外側にいる人に自分が作ったものを安心して任せられる性格じゃなかった。だからスタッフの人たちもやりにくかったと思うし。それでもそういう中でめいっぱいサポートしてくれていたわけで、ほんとに感謝しかないです」




フラットになるための作業 そして「音楽を聴かない人」のことを知る

---わかりました。それで今はメジャーから離れて、音楽以外の生活の部分も整えながら仕切り直しに向けて少しずつ動いているという状況ですよね。伺っているところで言うと、音楽活動とは別に会社で働かれているというのと、あと結婚されたということで。おめでとうございます。

「(笑)。ありがとうございます。結婚しました。つい最近です」

---結婚生活はいかがですか。

「まだ一緒に住んでないんですよ。嫁が東京で僕が大阪なので。だからそんなに実感はないです」

---なるほど。会社のお仕事と音楽に関する活動についてのバランスは取れていますか。

「そうですね、今のところは「仕事しているから音楽がやりづらい」みたいなことはないです。むしろ音楽に対して頭柔らかくいられるなあと思いますね」

---今までとは全く違うコミュニティに身を投じているわけで、音楽というものを相対化できているのかもしれないですね。

「はい。仕事をするということ自体もそうですけど、それ以外にも今は意図的にそういうこと、音楽に関する自分の感覚をリセットできるようなことをしようとしています。休止してしばらく、音楽を一秒も聴かなかったんですよ。あと阪口とも全く連絡をとらなかった。とりあえずこれまでの自分にこびりついていたものをまっさらにしたいなと思って。あえてクラブ、それも音楽どうでもいいようなチャラ箱に連れてってもらったり」

---(笑)。

「行ったことないところに行ってみようと思って。どうやってみんなが女の人に話しかけているかもわからんくて、ナンパしてる男の後ろでどうやってるのか観察していたんですけど。僕には理解できない世界でした。ただ、これもっと早く行っといたら良かったなとも思いましたね。みんな全然音楽に興味なくて」

---「みんな音楽聴いてない」というのは音楽好きが集まっているわけではない場所に行くとほんとそう思いますよね。僕もよく会社で感じます。この人たちって別に音楽全然関係なく生きているんだよなって。

「僕も同じです。結構衝撃やったんですよ。おかんも嫁も音楽好きだし、バンドメンバーやスタッフももちろんそうだし、学生の頃も音楽聴く友達とつるんでいたから、そういう世界があることをほんとに知らなかったんですよね」

---山本さんがボールズでメジャーレーベルに行ってやりたかったことって、広くみんなに聴いてもらえる音楽を作ることだったじゃないですか。

「はい」

---それってある意味、今山本さんが職場で一緒にいる人たちがボールズの音楽を聴くっていう世界を目指していたってことだったと思うんですよね。

「確かにそうですね。・・・ああ、僕、全く筋違いなことをやろうとしていましたね(笑)。そりゃこいつら俺の音楽を通勤中に聴かないよな・・・(笑)」

---(笑)。

「そういう人たちのことをほんとに知らなすぎたなと思います。みんなある程度音楽好きだと思って生きてきたけど全然そんなことないっていうのを今さら知ったというか。音楽の世界で仕事していると曜日感覚なくなるから「金曜日の夜」に特別な感情とかなかったんですけど、今は金曜日の夜が嬉しかったり・・・ほんまに世間知らずやったなって思います」


「年内、遅くとも年明けには」

---感覚をリセットする作業の成果は出てきていますか?

「そうですね。僕が取り戻したかったのは「独断と偏見」というか、周りの誰にも左右されずに「かっこいい/かっこわるい」「いけてる/いけてない」を判断できる軸だったんです。「なんかわけわからんけどこれはめちゃくちゃいい」みたいなことをぱっと思えるかどうか。で、だいぶその感じが戻ってきている実感はあります。それはまだボールズがミラーマンだった時の感覚でもあるんですけど、一方でそこにメジャーでやっていた時の経験とかも加わっているんで、そういう新しい基準を持った自分がどんな音楽を作れるのか今はわくわくしています。で、そうやって音楽を作ることについてわくわくできているということにとてもほっとしています」

---なるほど。曲も作り始めているんですね。

「はい。5月末、6月くらいから。納得いくものが出来始めているんで」

---ちなみにどんな感じの音ですか?

「音は・・・ざらっとした感じですかね。「ざらっと」っていうと言い方広すぎますが・・・土臭いですね。流行らなさそう」

---(笑)。

「それをメインにやっていくかはわかんないですけど、今作っているのはそういう感じですね。なんか、土臭い、泥臭い、ざらっとした。で、自分が今聴きたいのはそういう感じのものです。これまで「広く聴いてもらいたい」っていうことを言っていて、「自分で音楽を作る」よりも「作った音楽を聴いてもらう」ことばかりに比重が寄っちゃっていた時もあったんですけど、今はとにかく自分が聴きたいと思うものをしっかり作ることに注力したいと思っています」

---これまでのボールズもしくはミラーマンの曲でタイプが似ているものとかは・・・

「(しばし熟考)・・・難しいですね」

---今までとは違う感じの。

「聴いたことない感じですかね、ざらっとしているけど、ぱんと開けているんです」

---キャッチーではある。

「数か月前にレジーさんにインタビューされていたら「めちゃめちゃキャッチーです!」って言っていたと思うんですけど、世の中のことをちょっと知ってしまったのであれがキャッチーかどうかは・・・」

---(笑)。

「キャッチーではないかもしれない」

---「誰かにとって聴きやすい」よりも、山本さんの耳に気持ちの良いものを作ろうとしている感じですね。

「はい。少なくとも今はそういうものを」

---あとはそれに言葉を。

「書かないといけないですね。無理やり書くことはできると思うんですけど、最初はそうやって作りたくないなと思って」

---『SEASON』では歌詞を意識的に変えた、フワッとした空気感のある歌詞じゃなくて聴き手の心を刺すような言葉を使いたい、というモードでしたよね。そこからの変化はありますか?

「うーん・・・ファンシーな感じがいいなと。いきなり言われても意味わかんないと思いますけど・・・」

---リアルすぎないみたいな。

「そんな感じですね。まだ誰も書いたことのない歌詞を書きたいです。ちょっとずつ気持ちを高めていっているので、そろそろ書けるような気がしています」

---楽しみにしています。作品もそうですし、ファンの皆さんはライブをどういうタイミングでやるのかというのも気になっているかと思いますが。

「実は、もうやろうと思えばいつでもできるんですよ。ドラムももう決まっているし」

---そうなんですか。

「はい。昔の曲でライブやろうということであれば少し準備すれば何とかなるんです。ただ、既存の曲をやるなら休止した意味がないと思っているので。新しい曲でライブ一本できるくらい揃えてからやりたいなと。遅くとも年内、もしくは年明けくらいには何かしらやれると思っています。それがワンマンになるのか企画になるのかはまだわからないですけど、自分たち発信でやるつもりです」

---今置かれている環境だとライブ含めた活動の仕方も自由に考えられるというか、クリエイティビティを発揮できますね。

「そうですね。・・・でもそういうのはメンバーに任せたいかな。僕は黙って音楽を作りたいです。メジャーの時はそういうのも自分から考えなきゃって意識もなくはなかったんですが、やっぱりそういうのが得意じゃないことが分かったんで。とにかく今は、自分が100%、好きなものだけを作る。で、そのうちまた「みんなに聴いてもらいたい」みたいな気持ちもわいてくると思うんですけど、そのときは今までの経験を踏まえてそういう感情にうまく対処できたらなと思っています。そこにとらわれるとしんどくなってしまうというのはよくわかったんで」

---わかりました。では最後に「ボールズどうなってるんだ」と思っているファンの方たちに一言いただけますと。

「何かネット見ていると「解散したのか」みたいなことを言われていたりもするんですけど(笑)、ドラマーも決まって前に進んでいます、ちゃんと動いていますというのが一番伝えたいことですかね。時間がかかってしまっているのは申し訳ないんですが、もう少しだけ待っていてください」

---ありがとうございました。久しぶりにお会いしましたが、元気そうで安心しました。

「こちらこそありがとうございました。こういう状況になるとさーっと引いていく人たちもやっぱりいるので、今回こうやってインタビューしていただけてすごく嬉しかったです。また気合入れ直して頑張ります」


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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「ポジティブな言葉が聞けて良かったです。インディーで少し人気になって、メジャーデビュー時に「期待の新人!」みたいに取り上げられる人って複数いるけど、その人たちが全員そのままスターになっていくわけではない。で、フェードアウトしちゃった人って大体その後のことを取り上げられることがなくなっちゃうけど、その人の人生ってのはそこからも続いていくんだよね。厳しい状況に置かれた中で音楽とどう向き合うかってことにこそ実は音楽家として本質が出るのかもしれないなあなんて今回思いました。ここからボールズがどういう音楽を作っていくのか楽しみにしています。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。冒頭にもありましたが次回もインタビュー企画ですかね」

レジー「その予定です。アーティストインタビューとはまたちょっと切り口違う感じでやりますのでしばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る

司会者「前回までインタビューシリーズということでしたが」


レジー「何と期せずしても今回もインタビュー記事になってしまった。この前まとめて告知した後に決まった話なので大目に見てください。というわけで、今回は6月22日に3枚目のアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースしたAwesome City Clubのatagiさん、PORINさん、マツザカさんへのインタビューをお届けします」

ACCアー写
 


司会者「このブログには昨年のクラウドファンディングシングル「アウトサイダー」以来、約1年ぶりの登場です


レジー「この1年のオーサムといえばライブが劇的に良くなっているってイメージなんですが、アルバム前に発表された「Don’t Think, Feel」のMVがめちゃくちゃ素晴らしかった。パフォーマンス面での進化も含めて堪能できて最高」


 


司会者「圧倒的メジャー感」


レジー「この曲は音もMVもすごくストレート、奇を衒わずに直球をがつんと投げ込んできてるところがいいなと思って、アルバムにもそういうモードが表れています。前作『Awesome City Tracks 2』のときもかなりバンドとしての素を見せている感じだったのでそのままスムーズに今作へ流れていったのかなと思っていましたが、実際には紆余曲折あって辿り着いた境地だったようです。まずはそんな話からどうぞ」



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 「Awesome City Clubって何なんだ?」

---昨日ツイッターで、マツザカさんが「めっちゃいい曲が出来た」ってツイートしているのを見ました。


マツザカ「ああ、今新曲作っているんですよ」

---もう次のアルバム用の。

マツザカ「まあアルバムに向けてがっつり作っているとかじゃないんですけど、とりあえず新曲を」

---絶えず作っている感じなんですか?

atagi「僕ら、ストック曲ってのがあんまりなくて(笑)。毎回、レコーディングが終わるたびに「よし作るぞ!」って制作期間に入るんですよ」

マツザカ「今回は余裕持って始めた方だよね」

PORIN「そうだね(笑)。学んだね、いろいろ」

---なるほど。今回の『Awesome City Tracks(※以下ACT) 3』も、前作のレコーディング終わってからばーっと作ったんですか?
 
PORIN「曲によりけりですね。「Vampire」は制作期間に入る前からありました」

atagi「それが基本軸になって、そこから広げていくような形でいろんな曲を作っていったんですけど・・・」

マツザカ「『ACT2』が出てから年始くらいまでに作っていた曲は、一旦全部ボツにしているんです」

---そうなんですか。

マツザカ「だから「Vampire」以外の今回入っている曲は、それ以降に作ったものです」

---どういうきっかけでそんなに大胆な決断をしたんでしょうか。

マツザカ「なんて言うんですかね・・・いろいろあって、みたいな感じなんですけど(笑)。最初このアルバムを作り始めるときに、新しいこと、今までと違うオーサムを見せようって気持ちが強かったんですよね。それでアルバムタイトルも『ACT3』じゃないものにしようなんて話もあったりして。そういうモードで作っていたのが年始までの曲たちなんですけど、何をやってもうまくいかない感じがどうも続いたんですよね。こだわっているんだけどおいしくないご飯、みたいな。で、そこから、「新しいことをやろう」とかっていうのにとらわれなくてもいいんじゃないか?ってなって、それから2か月くらいで収録曲を作り直しました」

atagi「潜在的に「何か新しいことをしなきゃ」みたいな雰囲気があったんですけど、その辺の具体的なイメージをメンバー5人でちゃんと共有できていなくて、にもかかわらず「アルバムにどの曲を使うか」みたいな話に進んじゃったりしていたんですよね。で、「ほんとにこのままでいいの?」ということになり・・・そのままアルバムを作ることもできたんですけど、ここは勇気を出してルネッサンスしよう!と(笑)」

PORIN、マツザカ「(笑)」

---(笑)。

atagi「再生しよう、ということになりました。かなり色んなことを考え込んでしまったんですけど、結果的にはそうやって考え込んだ分、その反動ですごく開けた作品になったと思っています」

---なるほど。前作の『ACT2』は1枚目の『ACT』に比べるとバンドとしてのナチュラルな部分やピュアな側面が出たアルバムだと思っていたし、前回のインタビューでも「バンドとして解放された」なんてお話をされていたので、今みたいな状況だったというのはちょっと意外でした。

atagi「・・・こういう心境について話すとき、意外とPORINは自分の話をしないけど、そのときどう思ってたの?」

PORIN「私は・・・メジャーでやっている以上は多くの人に届けたいなと思っているんですけど、ファーストとセカンドでは思っていたより手ごたえがなかったっていうのが本心ですね」

---もっと届くものにするためには、今回のアルバムで何かを変えなきゃいけないんじゃないかっていう意識があった。

PORIN「はい」

---皆さんそれぞれにいろんな想いがあったんですね。今回のアルバムは、セカンドで自分たちの自然体な感じとか本音を出して、その路線の延長線上にあるもの、推し進めたものっていうイメージだったんですけど、そんなにストレートにつながっているわけでもないというか。

atagi「そうですね・・・ファーストはインディー時代に自分たちだけで作っていたものをベースにしてメジャーで出して、セカンドの時はもっと音楽に対して真面目にありたいって思っていたんですけど、今度は真面目が過ぎてちょっとこじらせてしまったというか(笑)」

---(笑)。

atagi「で、結果どうなったかっていうと、真面目であるとかそうじゃないとか、どう見られたいかとか、そんな話ではなくてもっと感覚的に思ったことを発露させるのが大事で、そういうものが曲としてのエネルギーにつながっていくっていうことに気付いた。今はそういう方向に進んでいます」

---その辺の話は改めて5人でも話されたりしたんですか。

マツザカ「しましたね、かなり。ちょうど以前の曲をボツにするタイミングで、「Awesome City Clubって何なんだ?」みたいな話を5人でじっくりしたりとか・・・アルバムのテーマもそういう中で見えてきました。自分たちはダンスミュージック的なことをやっていると思っているんですけど、単純に「踊れる」だけじゃなくて「心躍る」ようなものを作りたい、とか。言葉に関しては、レジーさんが言ってくださったとおりセカンドの延長線上にあって、セカンドでもナチュラルで強い言葉を乗せられたと思っていたんですけど、もっともっとエモーショナルな部分が感じられる歌詞にしよう、と。PORINがさっき言っていたように、ファーストとセカンドで伝わらなかった人たちに伝えるためにも歌詞についてはもっと研ぎ澄ましていきたいという話をメンバーみんなで共有しました」


「Don’t Think, Feel」が示すメッセージ

---今のお話を聞くと、「Don’t Think Feel」っていう曲のタイトルがめちゃめちゃ意味ありげなものに感じられます。

マツザカ「この「Don’t Think, Feel」って言葉、最初は自分に対しての独り言みたいな感じだったんですよね。さっき話したようなバンドとしてぐちゃぐちゃしていた時期に、「いろいろ考えすぎちゃってるな」と思っている中からぽろっと出てきたもので。だからもっとネガティブな感じの曲になるかと思いきや、いしわたり(淳治)さんとやることで力強いラブソングに昇華されました」

---「考えるな、感じろ!」って、かつてのオーサムのイメージからはかなり遠い言葉ですよね。

マツザカ「はい」

---PORINさんはこの言葉を聞いたとき、どう思いました?僕の中でPORINさんは飄々としたイメージなので、こういう熱い言葉とは距離がある感じがします。

PORIN「確かに、私にはそんなに響いてなかったかもしれない・・・」

atagi、マツザカ「(爆笑)」

atagi「怖いよ」

PORIN「(笑)。でも、さっきもお話ししたとおりバンドの雰囲気があまり良くなかったから、ぴったりな言葉だなと思いました」

---この曲の歌詞はラブソングの体裁をとっていますが、自分たちを鼓舞しているような言葉にも聞こえたんですよね。

atagi「うんうん」

マツザカ「そういう側面はあると思います。1曲目の「Into The Sound」にも同じようなテーマの言葉があって、「お前も同じこと考えてたのか!わかるよ!」みたいな(笑)。結果的にではあるんですけど他の曲にもそういう意味合いのフレーズが散りばめられていて、それが作品の深みにつながったなと僕は思っているんですけど」

---なるほど。さっきちらっとお話も出ましたが、この歌詞はいしわたりさんとの共作で書かれましたよね。これについてはどういう経緯で一緒にやることになったんですか?

マツザカ「もともと、いしわたりさんのいたスーパーカーと僕らってちょっと似てるなあと思っていたんですよね。編成とか、分業していることとか。それでいずれ一緒にやってみたいと思っていたんですけど、今回強いメッセージの曲を作りたいという狙いがあったので、じゃあこのタイミングでお願いしてみようということになりました。今回男女の掛け合いがあるんですけど、スーパーカーに「Lucky」って曲があるじゃないですか」

 

---僕すごい好きです、あの曲。

マツザカ「いいですよね。ああいう男女の目線が交錯するような曲を作りたい、っていうのは以前からぼんやりとあったんです。ただ、「Don’t Think, Feel」に関しては最初からそういうことをやろうとしていたわけでは実はなくて、いしわたりさんと作っていく中であのアイデアが生まれました」

---お一人で歌詞を書くのとはどのあたりが違いましたか?

マツザカ「いろんなことが全然違いましたね・・・僕が書いたものをいしわたりさんが添削して、そこにさらに僕のアイデアを入れて、という形でラリーを続けていったんですけど、いしわたりさんはたぶん言葉の伝わるスピードというか、ぱって聞いた瞬間にどのくらい意味が理解されるかを特に重視していたのかなと思います。ストレートなラブソングみたいな「メッセージをはっきり書く」タイプの歌詞って、僕の中ではまだ照れがあるんですよね。そういう意識でメッセージを忍ばせるくらいの感じで書いた歌詞を見せると、「それだと伝わりづらい」「ここまで言い切ろう」みたいなアドバイスをいただいたりして。そういう観点はすごく勉強になったし、自分の中にも吸収できたんじゃないかなと思っています」

---わかりました。一方でサウンドとしては、よりブラックミュージック的な要素を前面に出している感じですよね。

atagi「そうですね」

---どういった狙いで音作りを進めていったのでしょうか。

atagi「ちょうどこの曲を作る前に、何の気なしにザップ(アメリカのソウル/ファンクバンド)を聴いていて、すっごいかっこいいなと思ったんですよね。僕は以前ソウルバーで働いていたりもしてそういう音楽が好きなんですけど、日本にあるファンクって全体的に軽い印象のものが多いなとは前から思っていて。そういうのではなくて、自分が好きな「重たいファンク」みたいなのをオーサムでやれないかなというところから始まりました。最終的にはポップな歌ものに落とし込めたと思うんですけど、根底にあるファンクイズムみたいなものは意識して作りました」

 

---腰に来る感じはありつつ、とにかくポップでキラキラした楽曲になりましたよね。

マツザカ「完成するまでのバントとしてのストーリーも含めて、マジックみたいなものがかかった曲になったと思っています」

---MVもインパクトありました。それこそファーストの頃のMVに比べるとストレートさが全然違いますよね。以前はもっとコンセプチュアルで、曲の魅力をど真ん中で伝えるよりはちょっと斜めから表現していたと思うんですけど、「Don’t Think, Feel」のMVからは「もうそういうのいいから!」みたいな覚悟を感じたというか。

 



atagi「あの当時とは見ているステージが違うと思います。「いい雰囲気だよね」みたいなことは正直言われ飽きたというか(笑)。聴いている人たち、周りの人たちともっと一緒になって面白いことをやりたい、熱くなりたい、っていう気持ちが強いし、MVにもそれが表れているかなと思います」

---atagiさんにとってはハンドマイクでのパフォーマンスも新たな取り組みですね。

atagi「そうですね。初めてだったんですけど、意外と無理なくできました。この前メンバー5人で僕が働いていたソウルバーに遊びに行ったときに年配の方々が踊りまくっているのを見たんですけど、そういうのも記憶の片隅にありました」

マツザカ「以前「愛ゆえに深度深い」をハンドマイクでやったらどうかって話もあったんですけど、そのときはatagiがあまり乗り気じゃなくてやらなかったんですよね。今回こうやって自然にパフォーマンスできているのは、フロントマンとしての決意みたいなものができてきたんだなと」

---PORINさんはいかがですか。

PORIN「私個人としては、初めて自分の素をMVで出せたっていう実感がありますね。「人形からの脱却」じゃないですけど・・・人間味あふれるものを出すことに何の躊躇もなくなってきたし、そういう心境になれているのは今回のアルバムを作りきったからだと思います」


「一番大事なのは歌」

---「Don’t Think, Feel」に関しては、全体的に強いメッセージが込められている中でPORINさんのパートの儚い感じがかなり効いているなと思いました。

マツザカ「そうですね、あの曲のキラーフレーズだなと思っています」

atagi「あれはエポックメイキングですよね」

---あのパートに胸がキュッとしている人も多いと思うんですけど、PORINさん的にはあそこがこの曲にとって重要だ!みたいな意識ってありましたか?

PORIN「・・・いや、録るまで気づかなかったです」

マツザカ「全く興味ないってことね、この曲にね(笑)」

PORIN「そんなことはないです(笑)。ただ、今までのオーサムだったらありえない言葉づかいなんですよ、あれって。だから最初はちょっと頭の中にはてなが残りつつ・・・って感じだったんですけど、レコーディングして、MVを公開して、いろんな反応に触れる中で「みんなこういうのをいいと思うんだな」って後から理解しました」

---「Don’t Think, Feel」のPORINさんパートの歌詞って、アルバム全体のテーマともつながっているような気がしたんですよね。『ACT3』はいろんな曲に力強いフレーズがありつつも、曲のモチーフとしては気持ちが人に届かない感じとか・・・

マツザカ「はい」

---「Moonlight」は死んじゃった人をイメージしているのかな、とか。

atagi「おお、さすが」

---「届きそうで届かない」とか「いなくなっちゃう」とか、もっというと「生と死」とか、そういう現実社会において向き合わないといけないしんどいことがこのアルバムには描かれているように感じたんですよね。そういうもどかしさみたいなものがPORINさんのあの2つのフレーズに凝縮されているように思えて、そういう意味でも「Don’t Think, Feel」はアルバム全体のエッセンスが詰まっている曲なのかなと。

PORIN「なるほど」

マツザカ「新しいですね、その解釈は」

---今まで以上に現実と向き合っている感じはアルバムの最後の曲の変遷からも感じました。『ACT』の「涙の上海ナイト」は「上海」と言いつつもリアルではない空間がテーマになっていて、『ACT2』の「Lullaby for TOKYO CITY」では「東京」っていう自分たちが住む街について描かれていて、今回は「Around The World」で「世界」を題材にしつつも自分自身の内面に潜っていくような曲になっている。この変化が結構象徴的だなあと。

atagi「・・・次は何にすればいいですかね」

---「宇宙」じゃないですか。

3人「(笑)」

マツザカ「アルバムの最後の曲って、何かしら深い意味を持たせたくなってしまうんですよね。そういう曲って大体制作期間の中盤から終盤にかけてできてくることが多いんですけど、そのあたりから「ああ、アルバムができるんだな」って実感します。「Around The World」も結構ギリギリのタイミングでできました」

---言葉の話について続けて聞かせていただくと、PORINさんも高橋久美子さんと歌詞を共作していますよね。実際にやってみていかがでしたか。

PORIN「自分だけで歌詞を書くよりも、言葉がかなり色鮮やかになったなと思います。私が書いたら表面的に見えるものだったりえげつなくなりそうなものだったり、そういうものをいい具合にファンタジーに落とし込んでもらいました」

---メタファーをふんだんに使っている「Vampire」と<渋谷のミニシアター>から始まる写実的な「エンドロール」の対比も面白いです。

PORIN「「Vampire」はキラキラしている曲だったので歌詞もファンタジックにしたいなと思っていて、「エンドロール」はこれまでにない暗めの曲だったのでリアルな表現を心掛けました。曲調も歌詞も全然違うので、歌い方も自然と変わりました」

---「エンドロール」のつぶやくような歌い方は新境地が開けた感じですね。

PORIN「そうですね。これまでになかったPORINだと思います(笑)」

---(笑)。PORINさんボーカルの2曲って、もっとマニアックにしようと思ったらそういう仕上がりにもできると思うんですよ。リバーブいっぱいかけて、ボーカルと後ろのバランス変えて。

マツザカ「確かにそうですね」

---実際には歌がちゃんと聴こえるポップな曲になっているわけですが、もっといじりくりたい!っていう欲望みたいなものがあるんじゃないかなとか思ったんですけど・・・

atagi「いやー・・・ありましたね(笑)」

PORIN「ね」

atagi「「エンドロール」は僕が打ち込んだトラックが基本的にはそのまま使われている楽曲なんですけど、当初は裏テーマとして「オーサムなりのエイフェックス・ツインをやろう」って考えていたんですよ(笑)。ただ、作っているうちに肩の力が抜けていって」

マツザカ「エンジニアの浦本さんとは結構話し込んでたよね」

atagi「「そういうのをやりたいのもわかるけど、もっと自然でいいんじゃない?」みたいなことを言われたりしながら一緒に整理していきました」

---なるほど。オーサムがバンドとして志向している「広く届けたい」っていう話は、場合によっては音楽的な洗練性とトレードオフになる部分もあるのかなと思うんですが・・・

atagi「うーん、僕は全然そういうふうに思っていないんです。もちろん難しいバランスではありますけど、やれている人はいるわけで。僕らはボーカルありきのバンドだから一番大事なのは歌だと思うんですけど、歌のためにはサウンドが洗練されている方がいいこともあるのかなとか」

マツザカ「今のレジーさんのお話っていろんな場所で何となく共有されているテーマだと思うんですけど、実際に当事者になってみるとあんまり「これは大衆的、これは洗練」みたいな垣根は全然ないというか。僕らの判断がシンプルになってきている部分もあるんですけど、単純に「いいか悪いか」でしかないのかなと思っています」


「どーんと」「単細胞で」「遊びが必要」

---今作の制作過程で「Awesome City Clubって何なんだ?」という根源的なお話をメンバーでされたということでしたが、今回のアルバムを作り上げたことでその問いに対する答え、「オーサムらしさ」もしくは「オーサムらしくあるために必要なこと」みたいなものは見えてきましたか?

atagi「・・・これはあくまでも個人の意見なんですけど、僕としては全然見えていないです。ただ、見えなくていいかなと思っているというのが本心で、それを考えようとしているうちはなかなかクリアにならないのかなと。無意識の中にこそ答えがあると思うので、今はあえてそういう思考は切り離すようにしています」

マツザカ「僕はひとつだけ見えてきたものがあって、それは「真面目になり過ぎないこと」なのかなと思っています。セカンドで真面目になりすぎていたっていう話はさっきatagiからもありましたけど、「真面目に頑張ってクオリティ上げてきました」みたいなことばっかりやろうとしても面白いものができないなというのは最近ほんとに思っていて」

PORIN「遊び心は大事だよね。普段からもっと遊びが必要だなとは私も思っています」

atagi「ん、それは今遊んでないからそういうことを言っているの?」

PORIN「え?遊んで・・・いる方だけど、私は」

マツザカ、atagi「(笑)」

---なるほど(笑)。

PORIN「(笑)。バンドのみんなでソウルバーに行った時もすごくいいマインドが生まれたし、ああいうことは個々でもやっていく必要があるのかなと思いました。そこからバンドとしての余裕とかおしゃれさが生まれるような気がするし、お客さんも自分たちにそういうことを期待していると思うので」

マツザカ「「こういう感じの曲はこんな人に受けそう」とか「こういう仕掛けで」とか、そういうことは自然に気にしちゃっていたりするので、「何も考えない」くらいの方が僕らにとってのちょうどいいバランスなんだろうなと思います。いろんな思考の枠組みから自由になった方が、PORINの言う遊び心も生まれるのかなと」

---まさに「Don’t Think, Feel」ですね。必要以上に考えすぎないことが大事というか。

マツザカ「そうですね。今までは「この曲は誰々っぽいからやめよう」みたいなマイルール的なものもあったんですけど、だんだんそういうのものなくなりつつあるんですよね。自分たちがいいと思うならそれを信じてどーんとやっちゃおう、っていうのが今のバンドのモードです」

atagi「仮に考え足らずだったとしても、自分たちが勢い持って「これ、良くないですか!?」って言えるものを作っていきたいですね。「単細胞で行こう!」って言ったらちょっとおかしいですけど(笑)、あれこれ考えて深みにはまって、わけわかんないことになるっていうのが一番よくない」

---なるほど。で、そんなモードのまま、新しい曲を作り始めていると。

atagi「・・・外タレのインタビューみたいなこと言いますけど、今ものすごくいい状態なんですよ(笑)。ここからツアーもあるし、またいろんな経験ができればと思っています」

マツザカ「まだバンドとして経験が浅いから、この年になっても「成長している」みたいな体験ができているんですよね。些細なことなんですが、昔ラジオのレギュラー番組をバンドでやっていたことがあって、その特番をこの前久々に収録したんですよね。で、当時はみんなしゃべれなくて僕がMCをやっていたのに、今回はPORIN大先生が回すようになったり(笑)。僕ら自身が新しい体験をしているのと同じように、お客さんにも新しいものをどんどん提示できていったらいいなと思います」

---わかりました。では最後にこの先に向けた意気込み的なものをお聞きしたいんですけど、せっかくなんでラジオも回せるようになったPORINさんにしめていただけますと。

PORIN「はい(笑)。この先の話もあったんですけど、まずは今回のアルバムがものすごくいいものになっていると思うので、ぜひ聴いていただいて、良かったらライブにも遊びに来ていただきたいです。なんか普通だな・・・(笑)」

atagi「もっとチャラいやつ、遊んでるやついこうよ(笑)」

マツザカ「どのクラブでかけてほしいの?」

PORIN「・・・渋谷のContactでお願いします!(笑)」

---(笑)。今後の作品も期待しています。ありがとうございました。

3人「ありがとうございました!」


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 司会者「インタビューは以上になります」

レジー「バンドとしてどんどんシンプルになっていってるのがよくわかる。あと洗練性と大衆性はトレードオフじゃない、って話も面白かった」

司会者「インタビュー中にもありましたが、この辺は作っている人よりも周りにいる人の方がとらわれているのかもしれないですね」

レジー「うん。紋切型のフレームだから便利なんだけど、そんな単純な二項対立の中で音楽を作っているわけじゃないんだよね。そのあたりはちょっと反省しました。1枚目から音楽的にも精神的にもだいぶ変わっていると思うけど、実はまだそれから1年と数か月しか経ってないんだよね。すごいスピードで進化しているし、この先も楽しみです。お時間いただきありがとうございました。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「一旦未定で。もしかしたらフェスの話かな」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」


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