司会者「前回の予告通り、インタビュー記事をお送りします」
レジー「今回は5月にUKプロジェクトからデビューしたodolという5人組のロックバンドです。まだメンバーは20代そこそこで、結成してすぐに去年のフジロックのROOKIE A GO-GOに出演したりと今後が期待される人たちです」
司会者「6月号のMUSICAでレビューを書きましたね」
レジー「アルバム『odol』について書きました。アルバムすごく良かったよ。その内容がこちらです」
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『odol』/odol
心躍る、もしくは心震える
昨年のフジロックのROOKIE A GO-GOにはThe Fin.や吉田ヨウヘイgroup、Yogee New Wavesといった今のシーンで注目を浴びる若手実力派がひしめいていたが、今回紹介するodol(オドル)もそのステージに立ったバンドの一つである。2014年2月に結成、今作が初のフィジカルリリースとなる彼らの特徴は繊細なピアノと轟音のギターのアンサンブル。水滴による小さな波紋がやがて大きな波になっていくようなダイナミズムは、剛速球を志向するあまり棒球を投げ込みがちな昨今の若手ギターバンドと異なる雰囲気を醸し出している。バンドの魅力がわかりやすく凝縮されているのが、ピアノ主体のAメロからサビで一気にギターが前面に出てくる“飾りすぎていた”。また、ボーカルのミゾベリョウの歌も表現力豊かで、“ふたり”ではちょっと舌足らずな少年っぽい表情を見せたかと思えば“愛している”では奥田民生ばりの力強さを響かせる。「四つ打ち」「シティポップ」みたいな最近のトレンドとは無縁だけど、ポストロックやシューゲイザー的な音像を持ちつつも最終的に耳馴染の良いうたに落とし込むodolの音楽の間口はとても広いのではないかと思う。UKプロジェクトの先達でもあるTHE NOVEMBERSやきのこ帝国のファン、あとは『DISCOVERY』あたりのミスチルが好きな人におすすめしたい。 レジー
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司会者「これを読んだバンドサイドからアプローチがあったんですよね」
レジー「びっくりしました。何でも真面目に取り組んでおくもんですな。間口の広さに言及したこととか『DISCOVERY』を引き合いに出したところとかに反応いただけたみたいです。それでぜひ一度お話ししませんかということで、今回に至りました。こういう機会をいただきありがとうございました」
司会者「インタビューに答えてくださったのはボーカルのミゾベリョウさんとピアノの森山公稀さんです。前後編の2回に分けてお送りします」
レジー「前編はおふたりがodolを結成するまで、そしてodolでどうやって音楽を生み出しているかについて伺いました。それではどうぞ」
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odol前夜 出会い、そして「オドル」
---MUSICAのレビューでミスチルの『DISCOVERY』を引き合いに出したんですが、そこに反応していただけたとのことで。
ミゾベ「僕とギターの井上(拓哉)がミスチルのことをすごく好きで、井上に関しては一番好きなアルバムが『DISCOVERY』なんです」
---そうなんですか。
ミゾベ「今回のアルバムに入っている「愛している」の原型ができたときに、Aメロとかが『DISCOVERY』っぽいねって話をメンバーでしていて。そうしたら的中されて」
森山「○○っぽいというのは避けようとしていたんですけど、ばれました(笑)」
---「THE NOVEMBERSときのこ帝国」だけだと普通というかUKプロジェクト関連のバンドで想像の範疇かなと思ったので、少し距離のありそうな名前を出してみました。というわけで、すでに先行して『odol』のレビューを書かせていただいておりますが、改めてodolというバンドについてお話聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。
2人「お願いします!」
---まずはodolというバンドの結成に至るまでを振り返れればと思うんですが、おふたりが中学生のころに知り合ったのが最初なんですよね。
森山「中2で初めてクラスが一緒になりました。名前がミゾベ・森山でとなりだったんですよ。背の順もとなりで」
ミゾベ「成績も同じくらいで」
森山「(笑)。それで一緒にいることが多くて」
---音楽の話を介して仲良くなったんですか。
森山「最初は全然そういう感じじゃなかったですね」
ミゾベ「音楽の話だと・・・初めて森山から借りたCDがSOUL'd OUTでした」
---意外な名前が出ましたね(笑)。
森山「当時アニメの主題歌で流行ってたんですよね。あと、教室にあったキーボードでレミオロメンの「3月9日」を一緒に弾いてました」
ミゾベ「僕は小さい頃にピアノを習ってたんですけど、小3くらいでやめて何にも弾けなくなってて。でも家にピアノはあったんで、それで練習して、学校で昼休みに森山と連弾するみたいな」
---あ、歌うんじゃなくて連弾ですか。
森山「僕が教えながら左手を弾いて。だんだんミゾベも左手が動くようになっていって」
---最初はピアノユニットだったんですね。
ミゾベ「そうですね(笑)」
---当時はどんな音楽を聴いていたんですか。
ミゾベ「一番好きなのはミスチルでした。小学生の時に『I ♥ U』を初めて聴いて、過去の作品も遡って全部聴いたんですけど。そこからYouTubeの関連動画をいろいろ見たり。オアシスの『(What's the
Story) Morning Glory?』 も好きでした。あとSimple Planとかも聴いてたな」
森山「僕はスガシカオがすごく好きでした」
---なるほど。おふたりでバンドをやろうという話はどの辺から出てきたんでしょうか。
森山「中3の頃にミゾベがバンドやりたいと言い出して。実際に始めたのは別々の高校に入ってからですね。僕は最初そこまでやる気はなかったんですけど、誘われるがままに。そのときのパートはベースでした。ピアノやってたのでそのままキーボードかなと思ってたら、「お前ベースね」と言われて。初めは断ったんですけど(笑)、やってみたらはまりました」
ミゾベ「僕は最初からボーカルです」
森山「ただ、高校の時のバンドはあまり続かなくて、2人でいくつかのバンドを転々としましたね。僕のパートもベース→ベース→ピアノと変わりました」
---どういうのをやっていたんですか。
ミゾベ「基本はオリジナルです」
森山「僕は他のバンドでコピーもやっていたんですけど。ミゾベとのバンドはオリジナルばっかりですね」
---面白いですね。いきなりオリジナル志向だったんですか。
ミゾベ「そのときから性格がひねくれていて、周りのバンドと差をつけたいみたいな気持ちでオリジナルをやっていました。そんなに技術はないんだけど、「俺らは自分たちで曲作ってるから」みたいな顔をしてた」
森山「高校時代はバンド組んで2か月でライブやったり、下手くそなのにちゃんとレコーディングして音源作ったり、いろいろな体験をしました。それで東京行って大学でまたバンドやろうと言ってたんですけど、僕が浪人してしまって。ミゾベは先に東京でバンドを始めて、僕は1年後に東京へ行ったんですけど、そのタイミングでミゾベの知り合いとかを集めて出来上がったのがodolです」
---ちなみにodolというバンド名はどうやって決まったのでしょうか。
森山「僕が浪人して福岡に残っていた時に、2人でユニットみたいなことをやろうという話があったんですよ。離れていても曲作りはできるなということで。それで名前をつけようということになったんですけど」
ミゾベ「そのときに日本語の名前にしたいと思って1か月悩んで・・・(笑)。それでカタカナで「オドル」にしようと。ダンスを踊るとか、胸が躍るとか、いろんな意味があるのが日本語っぽいなあと思って。ただ、結局2人での「オドル」の活動はあまりしなくて、東京で改めてバンドをやるときにまたこの名前を使おうということになったんですけど、いざバンド名にしてみるとカタカナ表記が微妙なんじゃないかと思い始めて。で、いろいろ考える中でototoyというウェブサイトの表記を見て、これや!と」
---(笑)。
ミゾベ「最後がyになってるのもいいなと思って、それも参考にしながらodolになりました」
odolが表現したいこと、表現の産み出し方
---odolを組むにあたってはどういうことをやりたいと思っていたんですか。
ミゾベ「自分の中では、セブンスとかテンションとかが入っているコード感で、ボーカルはささやく感じじゃなくてしっかり張るところがあって、そこにピアノが加わる、みたいなことをやりたいなとは漠然と思ってました。特にそういうのを掲げてメンバーを集めたということではないんですが」
森山「音のイメージよりもスタンスのイメージというか、「こういうスタンスで活動していこうぜ」みたいなのが合う人で組んだバンドという感じですね」
ミゾベ「あと、音楽性を伝えたいというよりも、音楽を通して生まれる感情みたいなものを伝えたいという気持ちがありました」
---「こういう音楽をやりたい」と言うよりは、その音楽から呼び覚まされる感情を大事にしたいと。具体的にどういう気持ちを呼び覚ましたいとかってありますか
ミゾベ「全体を通してこういう感情だと限定することはないですね。曲ごと、作品ごとに自分の中でのテーマは変えています」
---なるほど。odolのサウンドは繊細なところとダイナミックなところの起伏がかっこよくて、一方で歌やメロディもすごくしっかりしていてといろいろな構成要素があると思うんですが、一番メインになるのは何だと思っていますか。
森山「間違いなく歌ですね。メロディを含めた歌」
---そういう志向に至った理由はありますか。
森山「音楽としてのポップさとかキャッチーさを担保したいというのが大きいですね。間口を狭めたくないというか、いろんな人に聴いてもらえるものにしたいので」
---キャッチーという話で言うと、odolの曲はメロディもそうなんですけどイントロがどの曲もいいなと思っていて。一音で空気が変わるような感じがまさにキャッチーというか、聴いている人の気持ちを一気に鷲掴みするような感覚があります。そのあたりのこだわりはありますか。
森山「それはありますね。歌をすごく大事にするのと同時に、歌のないところをどう聴かせるかというのも意識しているので。イントロで何を押し出すのかは結構みんなでじっくり考えます」
ミゾベ「言われてみれば一番時間がかかるかもね」
森山「確かに。メロディのある部分はそれを立てるためにわかりやすくしていく傾向にありますが、そうじゃないところはなんでもできちゃうんで逆に時間がかかります」
---歌のあるところとないところで発想の仕方が変わるんですね。今イントロをみんなで考えるというお話がありましたが、曲作りのプロセスはどんな感じなんですか。
森山「最初はメロディのないものを原型としてメンバーの誰かが作って持ってきて、それを一度バンドで演奏して組み上げていきます。で、その後に僕がメロディをつけて、メロディラインとか休符の置き方とかを5人で共有しながらさらにバンドでアレンジをしていって・・・という流れで最終形に持っていきます。なのでバンド全体の共作、という感じですね(注:『odol』の収録曲の作曲者として全曲に森山がクレジットされているのに加えて、「あの頃」「飾りすぎていた」「欲しい」はギターの井上、「愛している」にはドラムの垣守翔真の名前もある)」
ミゾベ「ひとりで作り切ってしまうということは今のところはほぼないです。出来上がったメロディに歌詞をつけていく中で、僕が歌いやすいようにメロディを変えることもあります。ただ、曲によっては「ここは変えんなよ」みたいなのが指定されていて」
森山「(笑)。変えないでくれという箇所もあれば、ここはクセを出していいよという部分もあります。たとえば「生活」に関しては、全部変えないでくれというオーダーでしたね。元のメロディに言葉の数をぴったり合わせてほしいと」
ミゾベ「完成するまでに3か月くらいかかりました・・・「生活」は去年の7月、フジロックのROOKIE A GO-GOに出たときにもやったんですけど、今とは歌詞が違ってて」
森山「そのときもまだ途中でしたね。納得いってない状況で本番を迎えてしまったので」
---アレンジのプロセスでメンバー全員のアイデアが足されていくんですね。
ミゾベ「そうですね。そういうことができるように、引き出しのたくさんあるメンバーを選んだというか」
森山「各自の音楽の趣味は結構バラバラです。もちろん重なっているところもありますが」
---いろんなエッセンスが混ざっていくと。
森山「混ざるものが多い方がいいというのはこのバンドを組んだ時から思っていることですね」
---出汁をとるときにはいろんなものが入ってた方がいい味になりますよね。
森山「濃厚な感じで」
ミゾベ「メンバーそれぞれにルーツとかバックグラウンドがあってそういうものをodolの音楽に反映させてはいるんですけど、何かに似ている音楽にはしたくないという気持ちは強くあります。たとえば銀杏BOYZが好きだからパンクをやるんじゃなくて、銀杏BOYZが好きだから全く他のことをやるというか・・・高校生の頃にバンド組んで2か月で初めて出たライブの時に、森山の親戚のおじちゃんに「桜井さんに歌い方が似てるね」って言われたのがすごく印象に残ってて。その人は僕がミスチル好きなことは知らなかったんですけど」
森山「動きとか、目配せするところとか。当時ミゾベはそれしか知らなかったから、それがアーティストというものの動き方だと思ってて(笑)」
ミゾベ「それ以来、自分の好きなものをストレートに出した結果として何かに似てるって言われないようにしたいなと思っています。初めて会った対バンの人に「レディオヘッド好きでしょ?」ってよく言われるんですけど、レディオヘッド本気で聴いてるのはギターの井上くらいなんですよね。「レディオヘッド好きでしょ?」「いや、あんまり」「じゃあ誰好きなの?」「ミスチルです・・・」っていうかみ合わない会話をよくしてます(笑)」
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司会者「前編はここまでです」
レジー「後編はアルバム『odol』について、そして「世界一を目指す」と公言しているバンドの今後についてお話しいただいています。次回もぜひ読んでみてください」
司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
レジー「と言いつつ後編のアップ予定は7月16日の木曜日です。しばしお待ちください」