レジー「今回から先日告知したこちらの企画にお付き合いいただければと思います」

 

2016年のPerfumeとこれからのPerfumeを巡る五百蔵容さんとの往復書簡

 

司会者「企画趣旨は先日の告知ツイートを貼っておきましょうかね」




レジー「こんな感じで、メールでそれぞれの言いたいことを投げかけつつ話を進めていく、というようなことをやっております。2016年のPerfumeはアルバムを出してがっつりツアーをやるという形で「ミュージシャン」としてフル稼働していたわけで、何がどうだったかちゃんと考えておきたいなと思ってPerfume論客としてもお馴染みの五百蔵さんのお力を借りることにしました。たぶん45回の連載になると思いますが、まずは初回ということでどちらかというと総論的なところから話を進めています。それではどうぞ」

 

 

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レジー→五百蔵

 

これから何回かのやり取りを通じて、2016年のPerfumeの活動、特に『COSMIC EXPLORER』のツアーについて総括していければと思います。よろしくお願いします。

 

今回は1回目ということで、総論的に2016年のPerfumeを振り返りたいなと思います。

 

2016年はアルバム『COSMIC EXPLORER』がリリースされた年ではありますが、まずその前段として配信リリースされた「FLASH」が非常に重要だったという認識があります。以前の鼎談記事の際にも話題になりましたが、そろそろPerfumeの代表曲を「チョコレイト・ディスコ」「ポリリズム」から更新してほしい・・・というタイミングで発表された「FLASH」は、映画「ちはやふる」との相乗効果もあり世の中的にかなり「見えた」楽曲になったと思います。先日の福岡のライブでは新規のお客さんがたくさんいたことがMCで確認されました。いろいろな要因があるとは思いますが、「FLASH」が果たした役割も大きいのではないでしょうか。

 

 

もっとも、2016年は「サイレントマジョリティー」「花束を君に」「前前前世」、そして「恋」(逃げ恥との合わせ技一本)と例年になくメジャーシーンにおけるトピックが多かったため、「FLASH」の位置づけがだいぶ後退してしまっているのが残念ではありますが・・・いずれにせよ、最近は海外ツアーだったりライブのテクノロジーだったり、どちらかというとクローズドな場での活躍ばかりが取り上げられがちだったPerfumeにおいて、「ヒット曲」という誰もがアクセス可能な話題が生まれたのは素晴らしいことだと思いました。

 

FLASH」が世の中ごとになりかけた一方で、『COSMIC EXPLORER』については(オリコン1位にはなったものの)どうにも世間の反応が薄かったような印象があり、ここについては個人的には非常に残念でした。ただ、作品の内容はPerfumeの自己ベストを更新するものであり、「ライブアクト」的なイメージが強くなり始めているPerfumeがまだまだ音源だけでここまで新しいことができるというのを示したことはとても価値があると思います(もしかしたら「Perfumeが」ではなく「中田ヤスタカが」かもしれませんが)。 

COSMIC EXPLORER』の中身そのものの話に入るとそれだけでかなりのボリュームをとってしまいそうなので笑、それぞれの既出文章の紹介で代用したいと思います。

 

Perfumeの新アルバムはなぜ“稀有な音楽体験”を生むのか レジーの『COSMICEXPLORER』徹底考察

■地球に落ちてきた女性たち~STORYとしてのCosmic Explorer 

 

そして『COSMIC EXPLORER』を引っ提げての長いツアーがありました。ツアーのフレーム的なところについては、「3569を地方に持って行ったアリーナエディション」「アメリカのを体感した北米ツアー」「スタジアムアクトとして唯一無二の存在であることを証明したドームエディション」という感じの印象を持っています。この辺についてはメインのアジェンダとしておいおい個別に掘り下げていきたいと思っていますが、個人的には前半のアリーナエディションは昨年の武道館を踏襲した部分が大きいのかなというところでやや物足りなく感じた部分があり、後半のドームエディションについてはアリーナでの懸念点含めて様々な部分が整理されて劇的な飛躍を遂げたライブだったように思いました。

 

また、それ以外で言及しておきたいのは、昨年の「アメトーーク!」での「ライブがすごい!」話あたりに端を発する「イノベーションのアイコン」としてのポジションがさらに強化されている点です。その帰結がユニクロとのコラボなのかなと思いますが、ツイッターでさらっとオープンになっていたナイアンティックへの表敬訪問とポケモンGOをやりこんでいるというエピソードもグループとしてのブランドイメージ強化に寄与しているのではないでしょうか。

 

というわけで、2016年のPerfumeは、

l  FLASH」による久々の代表曲の獲得

l  COSMIC EXPLORER』での音楽的キャリアの更新(と世間の評価とのギャップ)

l  尻上がりに調子を上げていったツアー

l  「イノベーションのアイコン」としてのポジション強化

といった感じでまとめられるかなというのが僕の印象です。

 

ここまでを踏まえてまず五百蔵さんにお伺いしたいのは、

 

2016年のPerfume」について、総体としてどんな印象を持っていますか?またそう思う理由としてどんなトピックがありますか?

 

ということです。ツアーの内容についてはこの先詳細にお話ができればと思っておりますので(ここからの展開は五百蔵さんと僕の話次第!なのでどうやってそこに辿り着けるかまだ青写真はありませんが・・・)、まずは全体的なところから論を始められればと思います。よろしくお願いいたします!

 

 

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①五百蔵→レジー

 

ありがとうございます。では早速・・・と行きたいところですが、その前に、まず今回の考察の前提として、ここ数年のPerfumeの取り組みとそこに関する自分の認識についてお話しさせてください。

 

2013年の東京ドームで、ぼくはPerfumeに関して、ひと段落ともとれるような深い満足感を得ました。それは、これまで映画、音楽、物語・・・など数多くの作り物を受け取ってきたなかでも、屈指のものだったように思えます。これほどのものを表現して、みせてくれた以上、Perfumeに何も求めてはいけない。Perfumeにこれ以上何か求めることがあるとすれば、観客をこれほど幸福にしてきた総量に見合うくらい、彼女たち自身が幸せに一生を過ごして欲しいということくらいである。そんなふうに感じていました。

 

それは2013東京ドームのパフォーマンスがエンターティンメント的に、そして芸術的にそれほどのレベルに達していたから、という意もあります。

 

また同時に、こういう意も含んでいます。

 

OKGOのダミアンが発した「きみたち(Perfume)は自分がどれほどすごいことをしているかわかっていない」という発言のおそらく真意であろう、<Perumeは、Perfume後にどんどん発展していくであろう「デジタルテクノロジーを駆使したエンターティンメントのステージパフォーマンス」のベーシックを定義したオリジネイター、歴史的存在である>という評価の根幹をなす、彼女たちが(とりわけ直角二等辺三角形ツアー以降)作り上げ積み上げてきた他に類を見ないライヴ・フォーマットを「少なくともこのフォーマットではこれ以上のものはもう作れないに違いない」と思えるレベルまで作りきった、極め尽くしたのではないか。ひょっとしたら今後は、この水準を繰り返すこと、維持していくことしかできないのではないか。でも、もしそれが芸術的な停滞になり自己模倣に陥るようなものになってしまったとしても、ぼくらは(少なくともぼくは)それを失望すること、残念がることはできまい・・・

 

実際、翌年の「ぐるんぐるん」ツアーは、パフォーマンスの質はさらに美しく磨かれ(とくにのっちの身体が柔らかさを増し、ゆかちゃんが翌年以降完全に自分のものとするダイナミズムを表現しはじめた)、周年突入のために配された演出が特別なイベント感を強めた満足度の高いステージでしたが、フォーマット自体はこれまでのものをほぼ踏襲しており、アートフォームとしては踊り場に入ったことを感じさせるものでした。

 

ぼくは「Perfumeはこれから、このフォームをやはり繰り返していくのかもしれないが、それを残念に思わないようにはしよう」と、改めて思っていました。

 

その身勝手な思い込み(先走った諦念)は、3569ツアーで心地よく打ち砕かれることになりました。新たに実装された、Perfumeと観客との感情的な同期をより直接的に実現するあらたな仕掛けである3569のコーナー --- セットリストのランダマイズを観客と共謀する仕掛け --- を従前のフォーマットに組み込むことによって、Perfumeのステージパフォーマンスはみごとにヴァージョンアップを果たしていました。そのランダマイズ共謀のシステムには未知なる伸びしろ、ステージパフォーマンス一般の常識を再定義する可能性までもがあり、アートフォームとしてのPerfumeにより一層奥行きのある創造性を再充填しうるものだったとおもいます。しかも、それは彼女たちにテクノロジー・イノベーションの女神としての高位を与えるなんてものではなく、「観客との親密さを高めたい、距離を縮めたいとどれほど思っているか」「観客に幸福な気持ちになってもらいたいとどれほど思っているか」「そして、その気持ちを何とかして伝えることはできないか」いという、Perfume3人(とりわけあ~ちゃん)が昔から(たぶん広島時代から)たゆまず育ててきた強い意志を、これまで以上に強力に表現する手助けとなるアイディアになっていた。それが何より素晴らしかったし、まさにPerfumeの真髄を体現しているものだと思いました(マディソン・スクエア・ガーデン(以下MSG)での実装を狙っていると思われるセントラルステージのデザインとも、それはベストマッチのアイディアでした)。

 

2016年のPerfumeは、パフォーマンスユニットとしては、そういった達成と新しい可能性とともに始まったのではないかと思っています。

 

前置きが長くなってしまいましたが、そういった認識のうえで「2016年のPerfume」の活動総体について考えると・・・

 

Perfume2016年は、大きな期待を感じさせるスタートアップを遂げたのは間違いないと思います。「FLASH」の位置づけと果たした役割についてはレジーさんと同じ認識です。一方で、結果としては通年の活動の中で、これまでの年以上に様々な「大きな課題」「新たな課題」「古くて新しい課題」が浮き彫りとなった一年だったのではないでしょうか。

 

通常であれば「これまでのキャリアの中でも特筆すべきなくらい、充実した活動内容を残した1年」と評されてもおかしくない年だったのは確かだと思います。が、ぼく的には、「近いうちに -- おそらく、パフォーマンスの強度が維持できているうちに -- MSG2daysライヴを行う」という遠大で難易度の非常に高い目標が掲げられた以上、Perfumeのハイ・アベレージなルーチンをもってしてもなお、必要なレベルに届いていないのではないかと思えます。

 

チーム内では当然、ぼくらが気づかない・知りようもない細部までにいたる様々な現状認識と総括がなされ方策が練られているものと思いますし、その難易度に対する2017年以降のチャレンジに期待が持てるのも確かなのですが、2016年の活動終了時点では「ぐるんぐるん」の時に感じられた以上の、より深刻な踊り場にさしかかったという印象をぼく自身は持ちました。

 

レジーさんは前回のメールでは2016年のPerfumeについてポジティブな点を挙げていただいていたと思いますが、一方ではどんな課題があったか(もしくは、そんな課題そのものがあるのかどうかも含めて)について意見交換してみたいところです。

 

 

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司会者「初回は以上になります」

 

レジー「ざっくり今年は良かったよね的な投げかけに対して、いや確かにそうなんだけど今後考えるとこれでもしんどくね?というボールが返ってきたところですね。で、次回はそのあたりをより具体的に掘り下げていきます。しばしお待ちください」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」