司会者「前回に引き続きこちらの企画ですね」

 

2016年のPerfumeとこれからのPerfumeを巡る五百蔵容さんとの往復書簡

 

レジー「第2回目です。企画趣旨および初回の内容はこちらでどうぞ。前回は2016年のPerfumeに関する全体的な総括の中で、五百蔵さんの方から「課題があったのでは?」という投げかけで終わりました。今回はその辺をもう少し具体的に掘り下げています。それではどうぞ」

 


 

 

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②レジー→五百蔵

 

返信ありがとうございます。なるほど、2016年のPerfumeの課題・・・

 

個人的には、Perfumeが直面していた最大の課題は「それなりに息の長いグループとして定着しつつも、実は代表曲が「チョコレイト・ディスコ」「ポリリズム」のままである」というところだと思っていたので、ここに関しての回答があった2016年は逆に「長年の課題を解決した年」というような認識でした。

 

そういった前提を踏まえつつ、今年Perfumeについての不満やもうちょっとやれただろうと思ったことがあったとすれば・・・僕にとってそれは幕張でのライブ、『COSMIC EXPLORER』ツアーのスタンディングエディションということになります(僕は幕張の初日と3日目の2回、どちらもスタンディングエリアで見ました。地方のアリーナを見れなかったのが悔やまれます)。

 

今回の幕張でのライブを見た後、Perfumeのライブにしては珍しく「あれ?」と思いました。Perfumeのライブは常に何かしらのレイヤーで「新しさ」というものを強烈に感じるのですが(五百蔵さんが「停滞」を感じたとのことだった「ぐるんぐるん」のツアーでも、レア曲の披露やアニバーサリー的な空気によって形成されたライブとしての親密感にPerfumeのライブのまた違った方向性を見たように思いました)、幕張のライブではそういった感じがあまりしなかったのです。普段であれば「Perfume×テクノロジー」とも言うべきパフォーマンスを見せる中盤の見せ場に配された「Cosmic Explorer」の演出(映像と宇宙船を模したセットの移動)には大きなサプライズを感じませんでしたし(ドームエディションではあれがオープニングになっていて非常にしっくりきました)、「STORY」はやはりすごかったですが初めて見た武道館ほどのインパクトはありませんでした。また、セットリストをサイコロの出目で決める「3569のコーナー」がライブ終盤に唐突に導入されていたことで、(あの企画の大変さや志の高さは理解しつつも)ライブ全体の流れがあそこで分断されてしまったかのような印象を持ちました。また、3569についても「STORY」と同じく初出のインパクトという面では当然のことながら後退していたように思います。

 

STORY」「3569」ともに去年と一緒じゃん!という感想は2015年の武道館のライブを見る機会に恵まれた自分のわがままの部類に過ぎないとは思いますし、今回のツアーが全国各地を回る構成であったことを考えると「地方のファンに「3569」を見せる」というような意味合いがあったこともよくわかります。ただ、直截的な新しさが提示されなかった(ように感じられた)幕張でのライブに言いようのない物足りなさが残ったことは紛れもない事実でした。

 

ここから少しうがった見方になるかもしれませんが、このときの不完全燃焼感は8月頃に思わぬ形で解消されました。リオ五輪閉会式の「トーキョーショー」のスタッフチームにMIKIKO先生やライゾマティクスの名前を見たときに、「この人たちのここ最近のリソースはオリンピックという国家事業のために投入されていたのだな・・・」と感じました。

 


 

おそらく多大な工数を要求され、かつかなりの精神的な負荷もかかるであろうオリンピック関連のイベントを前にして、「Perfumeのライブをアップデートする」という部分へのコミットが普段のライブよりもできなかったのではないか。もちろん本人たちが手を抜いていたなんてことは100%ないと思いますが、「複数の大きなプロジェクトに同じだけのパワーを注ぎ込む」というのは普通に考えてほぼ不可能なのではないでしょうか。

 

というわけで、2016年に顕在化したPerfumeの最大の課題というのは「Perfumeを支えるブレーンであると同時に、もはやPerfumeの一部分と言っても過言ではないMIKIKO先生とライゾマティクスの面々が「見つかってしまった」こと」なのではないかなと。今回の「トーキョーショー」の評判から察するに、2020年に向けてもMIKIKO先生やライゾマティクスがチームの中心になっていく可能性は大いにありますよね。そう考えると、2020年までの今後3年間においても「オリンピックに関するプロジェクトがPerfumeの活動を阻害する」というようなことがどこかで起こってしまうのではないか・・・(ちなみに、この観点から考えても、マディソン・スクエア・ガーデン(以下MSG)は何とか2018年くらいまでにはやりたいですよね。2019年から2020年まではオリンピックの準備が本格化するでしょうし。それ以降となると、Perfumeの年齢的な部分も含めてパフォーマンスレベルが維持できるのかという問題も出てくると思います)。

 

2020Perfumeが関わる、ということがあればまた話は変わってきますが。

 

Perfumeのライブ表現における進化が国際的イベントの動向に影響を受けるかもしれない」というのはある意味では面白いことではありますが、そんなふうに笑ってられない状況だなあという認識も一方ではあります。「スタッフまで含めた総合戦」という形での戦い方を確立したPerfumeが、その自らが作ったフォーマットに足を引っ張られる。そんなしんどい状況が起こってしまう兆しが見えたのが2016年だったのではないか。

 

というわけで、やや無理やりひねり出した感もありますが、僕なりに考える「2016年におけるPerfumeの課題」でした。前回のメールから察するに、五百蔵さんにはもう少し具体的に「課題」を感じている部分があるのかなと思いますので、そのあたりぜひご教示いただければと思います。

 

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②五百蔵→レジー

 

お返事拝見いたしました。ありがとうございます。レジーさんのご意見、問題の核心部分に触っているのではと強く感じました。

 

ひとまず、2016年のPerfumeの活動のうちにぼくが見た課題ですが、

 

「極めて高い目標設定(近い未来におけるMSGでの2days実現)に対して、ライブにおける実装面で生じた多数の問題を吸収・解決しきれないまま終わったのでは?」

 

という問いにまとめることができるかと思っています。その「実装面での問題」のうちに、レジーさんの挙げられた「Perfumeのアートフォームにとって不可欠なスタッフのリソースが、他の巨大プロジェクトに吸収され減衰するのではないか?」というテーマも含まれているという認識です。

 

「実装面での問題」について考えるにあたって、今回のツアー(ドーム公演は少し位置づけが違うように思えるのでアリーナツアーと北米ツアーにフォーカスします)における構想面でのトライを簡単にまとめておきたいと思います。

 

【春のアリーナツアー】

■セントラルステージとそれを串刺しにする花道、二つのサブステージ

→シンプルな構成のフォルムを用いて1万〜2万規模のアリーナ空間を有効活用する

Perfumeのベーシックなフォーマットを全て詰め込んだ構成

→「楽曲のパフォーマンスと精緻に連動するインスタレーション」「大規模な機構」「映像演出」「ツアーオリジナルのメドレー」「淀みないMC」など、「Perfumeのライブとは?」と言われて思い浮かびそうな要素を全部入りで盛り込む

Perfumeのアートフォームを刷新し大成功した3569の拡張

→ライブ後半の盛り上げフェイズに配置する(事実上の「格上げ」)

 

【北米ツアー】

■アリーナツアーの内容をホールツアー仕様に凝縮した構成

→スペースの都合で大規模な機構、3569は割愛する

→「STORY」のSXSWヴァージョンをセットリストに組み込む 

■割愛した要素に対する北米ツアーオリジナルでの補完

CE:大規模機構を活用するのではなく、ステージを占有するLEDスクリーンとドローンを用いた演出を導入する

3569:「ポケモンGO!」のパロディとなる「PerfumeGo!」を観客とのコミュニケーション要素として導入する

■北米ツアーオリジナルのメドレー

 

かなりボリューミーです。そのうえで、「あくまでも『COSMIC EXPLORER』のアルバムツアーである」という大前提があり、そういった複雑な要件を「MIKIKO先生やライゾマティクスの五輪引き継ぎイベントへの参加」「昨年来の主要スタッフ入れ替え」といったリソース上の不安も抱えながら遂行しようとしました。相当チャレンジングな取り組みだったと思います。が、この先目指すステージ(それは単にMSGでライブをやるというだけにとどまらず、そこでものすごいものを見せられるような世界有数のポップスターになるということも含まれていると思います)のことを考えると「リスク満載でもこのくらいのことをやれなければ」という意気込みだったのではと推測されます。

 

ですが、少なくともアリーナツアーにおけるステージ上のアウトプットだけを見ると、事前の不安ががっつり顕在化してしまったという側面が強かったように感じています。

 

まず、前述のとおり「これまでやってきたことの全部入り」「3569の進化」「アルバムツアー」と多数のテーマが混在するライブとなったことにより、パフォーマンスの焦点が拡散してしまったというのは否めないところかと思います。本来であれば「『COSMIC EXPLORER』をライブでどう表現するか?」に特化されるべきところに「今後を見据えたPerfumeのパワーアップに向けたチャレンジ」という軸が導入されたことで、「ライブとして何を見せるか」という部分についてはぼやけてしまったと言わざるを得ません。

 

次に、「全部入り」+3569」という構成そのものの是非についてなんですが、このやり方によってライブごとのクオリティにぶれが生じたのでは?というのが気になりました。「3569」の出目によってライブの流れが大きく変わってしまうこと、様々な要素を盛り込んだ構成が進行におけるミスを引き起こしやすかったことなどによって、「はまらない日はとことんはまらない(流れが悪い)」というような状況が生まれてしまっていたように思います(ぼくがアリーナツアーで参加したのは静岡エコパアリーナの初日(アリーナ)、2日目(スタンド)、幕張の初日(スタンド)、最終日(アリーナ)の計4回なんですが、このグループのライヴとしてはこれまでに記憶にないほど映像出力やサウンドのオンオフなどスタッフマターの細かいミスや不具合が散見されました)。特に幕張では、会場の広さとステージセットのアンマッチも相まって、なかなか厳しいシチュエーションだったと感じました。

 

ここに関しては、一方で「はまったときの爆発力はすごい」ということの裏返しでもあり、チャレンジとして否定されるべきものではないと思っています。ぼくの参加した静岡の2日目の盛り上がりはこれまでのPerfumeのライブ史上でも屈指の出来栄えだったように思いますし、ネット上で語り草になっている徳島でのパフォーマンスもおそらくそうだったのではないかと思います。ただ、そういったブレを吸収するための策が実質的にはPerfume3人のMC以外に準備されていなかったというのはどうなのかなと感じましたし、その背景にはレジーさんご指摘の話も含めた人的リソース(もしかしたら資金的リソースも?)の問題があるということも十分考えうるな、と。

 

現在のPerfumeの状況について「より深刻な踊り場にさしかかった」という表現を前回使いました。これは、「MSGに相応しい存在となるためには必要だとチームが考えて設定した高い目標レベルまで到達できなかった」「それを乗り越えるための方策が今のところは見えていない」という意味合いです。もちろんチーム内ではこういった考察よりもはるかに深い検討が行われていると思います。「方策が見えていない→危機!」というのは短絡的な見方である可能性も高いでしょう。ですが、外に見えてきているもののみで判断すると「踊り場」と言わざるを得ない、というのがぼくの印象です。こう感じてしまうのは、商業的成功と芸術的達成を高水準で両立しようとするチームPerfumeに対する期待値が高すぎるからかもしれません。ですが、Perfumeはその楽曲とライヴパフォーマンスのトータルクオリティにおいて、世界的に見ても極めてオリジナリティの高いハイ・アベレージな実績をすでに一定の期間重ねてきています。なので、Perfumeの仕事を評価するには「Perfume自身が達成してきたこと」や「彼女たちが目指している場所」を基準点に考えるしかない……。言い換えると、3人とそのチームが「他の追随を許さない孤高の地点」に立っているからこそ生じる特別な困難と直面しているということなのではないでしょうか。

 

以上が、ぼくの感じた「課題」についてです。Perfumeにとってライブの場における表現のアップデートはグループの生命線であり、そこに関して目標とアウトプットのギャップが見えたのは少し危ないなと感じました。ただ、もちろんこのツアーにもいい部分がたくさんあったのはもちろんですし、ドームツアーでは違って見え方をしたところも多数あったと思います(一方でドームについても気になった箇所はいろいろありましたが)。今回少しネガティブな話題に傾いてしまったので、次回はツアー全体での良かった点、今までよりも成長した点について意見交換させていただき、そのうえでドームの内容なども振り返りながら改めてツアーとしての総括、および今後のPerfumeの展望についてお話しできればと思いますがいかがでしょうか。

 

 

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司会者「第2回目は以上になります」

 

レジー「2016年のPerfumeの活動の根幹をなしていたライブに関して、大きなチャレンジが必ずしもうまくいかなかった部分があったのでは?という話をしました。この辺はいろんな見方があると思いますが、グループとしての目標がものすごく高いからこそ課題も生まれるということなのかなと。で、次回はそういう中での収穫について取り上げる予定です。しばしお待ちください」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」