司会者「というわけで、前回の予告どおり、UNISON SQUARE GARDEN田淵智也単独インタビューということで」

レジー「前置きはいいですかね。今回のインタビューでは新作の『MODE MOOD MODE』についてその中身と合わせて前作『Dr. Izzy』との関係性、あと幕張でのライブ、3月に出る新曲「春が来てぼくら」について田淵さんに話していただいてます」


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司会者「あと『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』に関する話もしていただいています」


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レジー「あの本の内容も絡めて、ユニゾンというバンドがどういうスタンスで活動しているのか、誰に向けて音楽をやっているのか、という話もいろいろしていただきました。すでにいろんな雑誌とかに記事が出てますが、たぶんここでしかしていない話もあるはずなので、少し長めですがぜひお楽しみください。それではどうぞ」


unison


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「会場が大きくなっても、新しいアルバムが出ても、それを受けて特別な何かをしようとは全く思っていなかったです」

 

---新しいアルバム聴かせていただきました。すごく良かったです。

 

「ありがとうございます」

 

---あとこちら側の話で恐縮なんですが、僕も年末に『夏フェス革命』というこの20年くらいのフェスの動向について分析した本を出しまして…

 

「読ませていただきました!面白かったですよ」

 

---ありがとうございます。今日は新作の話を中心に、少し本の話も絡めさせていただきつついろいろ聞かせていただければと思っています。よろしくお願いします。

 

「お願いします!」

 

---まず本題に入る前に、先日の幕張メッセでのライブについてお聞きしたいなと。どうでしたか?

 

「悪くなかったですね。「大きい会場だと音楽体験として完全に満足のいくものを提供するのは難しい」という気持ちは今も変わっていないんですけど、ああいう会場でロックバンド然としたライブをやることに意味を見出してくれた人もいたし、やって良かったと思っています。基本的にツアーは程よい会場規模で全国をきっちり回ることが大事だと思っているんですけど、そこがちゃんと守られるのであれば、まあたまにはこういうのもいいのかなと…()。いつも通り楽しかったです、ほんとに」

 

---今回のツアーに関しては去年の11月にZepp Tokyoでも見させていただいたんですが、幕張でのライブはあのときの感じがそのまま大きくなったというような印象でした。ライブハウスで感じられた熱気が損なわれることなく数万人規模にまで拡大されたというか。

 

「そう思っていただけたなら良かったです。一番懸念していたのは音の問題なんですが、リハの時に客席でチェックしたら「音、意外といいな」と思ったんですよね。そこはスタッフの人たちがほんとに頑張ってくれたんだと思うし、長年付き合ってきてる中でバンドのアティテュードや信念をちゃんと汲み取ってくれているスタッフだからこそできたんだと思います。もちろんあの空間を作るために必要なエネルギーは相当なもののはずだから毎回できることじゃないだろうけど、やろうと思えばここまでできるんだなと」

 

---タイミング的にはアルバムが発売された直後のツアーファイナルとなりましたが、「アルバムの曲やってみようかな」とか思わなかったですか?

 

「いや、それは全然ないですね。アルバムの曲、難しいからまだ練習したくないし()。まあそれは冗談ですが、アルバムが出るにしても「幕張のライブはあくまでも去年からやっているツアーのファイナルだ」っていう意識だったので。会場が大きくなっても、新しいアルバムが出ても、それを受けて特別な何かをしようとは全く思っていなかったです。他の会場に来た人たちがかわいそうですしね」

 

 

「“10% roll,10% romance”は…実は最初は3曲目に置こうとしていたんです」

 

---その「曲が難しい」という『MODE MOOD MODE』についてお聞きしたいのですが、その前段として前作『Dr. Izzy』という作品の性質に関して少し確認しておきたいなと。あのアルバムが出たときに、「肩透かし」という印象を受けた旨の原稿を書いたんですが…

 

()。はい」

 

---その辺に関連して、今回MUSICAのインタビューで『Dr. Izzy』に関して<「あ、この人達ヒット曲を出しても売れる気ないんだ」っていうのがよくわかるアルバムだったと思う>と明言されていましたよね。そのあたりの真意について改めて伺いたいなと。

 

「そうですね、まずあのアルバムが出る前に「シュガーソングとビターステップ」があって、あの曲はありがたいことにいろんな環境の助けもあって多くの人に聴いてもらえたと思うんですけど。そうなったときに、「シュガーソングとビターステップ」があってもなくても僕らのことを好きでいてくれる人、「ファン」っていう言葉は個人的にちょっともやっとするのでなるべく「物好き」と言っているんですけど、そういう人に対して「あ、ユニゾン変わる気ないんだな!良かった!」って気持ちを持ってもらうことがバンドとして大事なんじゃないかなと思ったんですよね。『Dr. Izzy』はそんな考え方で作ったアルバムでした」

 

---まずはユニゾンのことをしっかり見てくれている、意識してくれている人たちに対してどう思われるかを重視したと。「シュガーソングとビターステップ」があれだけ広がったわけで、「勢いに乗ってああいう曲がたくさん入ったアルバムを出そう!」みたいなことをしてもそれはそれで成果があったと思いますが、そういうことはやらなかったわけですよね。

 

「売れ線に走る、みたいなね()。たとえば「日本国民みんなから支持されたい!」って考えていたなら、そういうやり方ももちろんあったと思いますよ。チャンスですしね。ただ、僕の中では「自分たちのことを好きでいてくれる人たちは、あくまでも特定の好みを持った限られた層」っていう意識が強いんです。自分の視界にはそういう人たちしか入れないようにしているので、その人たちだけのことしか考えられないんですよね。だからその意味では、『Dr. Izzy』も『MODE MOOD MODE』も、そこにいる人たちに向かってやっているという点に関しては同じなんですよ。『Dr. Izzy』は「ユニゾン変わってなくて良かった!」と思ってもらいたい作品で、『MODE MOOD MODE』は「え、ユニゾンここまでやるの!?」って思ってもらうためのアルバム。これまでの取材とかだと「揺さぶりをかける」って言葉で説明してますけど」

 

---わかりました。今回の作品を作るにあたっての大枠のスケッチみたいなものはどのタイミングで見えてきていたんですか?

 

「大枠自体は『Dr. Izzy』を出して、全国ツアーが始まったタイミングで何となく見えてはいました。前作が出来上がったときに、ディレクターから「もう少しポップな曲が欲しいなぁ…」みたいなことを言われたんですよね。で、そのときに、「それは次にやります」って言ってたりしていたこともあって…そのやり取り自体は売り言葉に買い言葉っぽくもあったんですけど()、僕自身ポップなものが嫌いなわけではないので、『Dr. Izzy』との対比という意味でも次は聴いた後にそういう感触が残るような作品にしようかなと考えていました。ただ、シングルが4曲入るというのは想定外だったんですよね。で、僕はシングルを書くときには遺憾なく才能を発揮してしまうので…」

 

---()

 

「「いい曲書いちゃったな!」と思って。「ポップなアルバムを作ろう」っていうもともとの狙いがある中でそこに強い4曲がさらに入ってくるっていうことになったので、その辺の動きに合わせて大枠を少しずつ修正していきました」

 

---想定どおりのポップなアルバムになっていると思います。その印象を強めているのが終盤、9曲目からラストまでの流れにあると思っていて。特に「10% roll,10% romance」「君の瞳に恋してない」の最後2曲が読後感にかなり効いているように感じます。「10% roll,10% romance」が映画のラストシーン、「君の瞳に恋してない」が大団円のエンドロール、みたいで素敵だなと。

 

「なるほど()。良かったです」

 

---このあたりの曲順に何かしらの狙いはありますか。

 

「「君の瞳に恋してない」に関しては、あらかじめ狙ってラストに置いていました。いろいろ取材で話している中で思ったんですけど、今回のアルバム作りは『CIDER ROAD』を作ったときの感覚と近かったのかなと思っていて。というのは、あのアルバムは「最後の曲を「シャンデリア・ワルツ」にすること」がとにかく大事だと思って作っていたんですよね。「君の瞳に恋してない」も「シャンデリア・ワルツ」と同じくらい作ったときの達成感があって、「この曲をアルバムの印象を決定づけるものにしよう」と思ってアルバムの構成を考えました。「10% roll,10% romance」は…実は最初は3曲目に置こうとしていたんです」

 

---そうなんですか。

 

「はい。ただ、「君の瞳に恋してない」と並んでこのアルバムの軸になる曲の「オーケストラを観にいこう」をなるべく序盤に置きたいと思っていたんですが、この曲と「10% roll,10% romance」が両方アルバムの最初のほうにあるのはちょっとバランスが悪いなと感じていて…で、アルバムができあがる直前に「フィクションフリーククライシス」を急遽作ることになったんですけど、そのタイミングで試しに「10% roll,10% romance」を後ろのほうに移したら、思わぬカタルシスが生まれて、この流れ結構いいなと。そんないきさつで最後2曲が今の組み合わせになりました」

 

---今曲名が出ましたが、「フィクションフリーククライシス」はこのアルバムの中で大きな役割を果たしていますよね。これがあるからこそ9曲目からの流れが生きると思います。

 

「あの曲は最初入れる予定はなかったんですけど…「ポップなアルバム」を作ることを当初から考えていましたが、シングルが4曲になったこともあり、「もしかしたらそっちに行き過ぎてるかも?」とアルバムが完成する直前に思って、もうちょっとちゃんとしすぎてない、だらしない感じの曲を入れておこうかなと()。あとこの曲は最初から「Invisible Sensation」につなげるための曲として作ったので、「フィクションフリーククライシス」と「Invisible Sensation」が0秒でつながるようなものにしようと思っていました。そうなることで、「Invisible Sensation」がシングルのときとは違う聴こえ方をするんじゃないかなと」

 



 

「あそこまで振り切ったことをやるのは楽しかったですね()

 

---「君の瞳に恋してない」がラストに配されているわけですが、『Dr. Izzy』と『MODE MOOD MODE』の違いがここにわかりやすく現れているように感じました。前作のラストの「Cheap Cheap Endroll」は歌詞も<君がもっと嫌いになっていく>ですし…

 

「あー、なるほど()

 

---サウンドも含めて突き放して終わるみたいな感じだったと思うんですけど、今回は音も言葉もリスナーに寄り添ったものになっていますよね。

 

「確かにそうですね。歌詞の方向性という意味では意図的にそういう違いを作ったわけではないんですけど、おっしゃってることはよくわかりますよ。『Dr. Izzy』はやり散らかして終わったほうがいいように思ったので最後ああいう感じになっていて、『MODE MOOD MODE』とはだいぶ雰囲気が違うと思います。何かメッセージをこめた、ということではなくてあくまでも気分の違いという話ではあるんですけど」

 

---「君の瞳に恋してない」はホーンやピアノなどかなり大胆なアレンジが施されていますが、3人で曲の肉付けをしていくときと比べてやり方の違いはありますか?

 

「この曲に関しては、3人でアレンジをする前に僕のほうでピアノのコードをかなりガチガチに決めていきました。で、斎藤(宏介、ボーカル&ギター)くんにも「ピアノの人にはこの通りに弾いてもらうつもりだから、ギターのコードもなるべく変えてほしくない」「もし変えるならば、それに合わせてピアノのコードもいじるから、都度共有してほしい」という要望を伝えて、彼もそこを汲んで考えてくれました。それまでのノリでコードの共有をおろそかにすると終盤頭を悩ませるということが過去にあったので、今回は慎重にやりましたね。さっき「揺さぶりをかける」って話をしましたけどこの曲はまさにそれの象徴というか、嘘みたいに派手な雰囲気にして、聴いてくれた人たちがちょっとざわっとするというか、「え、お前らどこ行こうとしてるの!?」って思うような仕上がりにしたいと思っていました」

 

---「ざわっとする」ということだと「オーケストラを観にいこう」もそうですよね。こちらもアルバムの軸になる曲とのことですが、ユニゾンがここまで壮大なストリングスいれるんだ?っていう。

 

「あそこまで振り切ったことをやるのは楽しかったですね()。なんだかんだでストリングスもピアノもすごく好きなので。「オーケストラを観にいこう」に関しては昔からあった曲なんですけど、今回のアルバムがこの曲のポテンシャルをフルに発揮できるタイミングだなと思って、晴れて出すことになりました。もし『Dr. Izzy』に入れることになってたらああいう派手なアレンジはしなかったと思うんですけど、今回は「もう何やってもいい!」っていう感じで」

 

---なるほど。いずれライブでフルオーケストラいれてやったりとかは…

 

「いやー、さすがにそれは()

 

---オーチャードホールとかで。

 

「オーチャードホール!いいですねそれ!()。いつかそんな試みがあってもいいとは思うんですけど、今はアルバム作って全国回るほうが興味ありますし、もしそんなことをやるとしたら相当準備しないといけないから…まあ気が向いたらということで()

 

---「揺さぶりをかける」という観点でいうと、「静謐甘美秋暮抒情」もいつものユニゾンとはちょっと雰囲気が違いますよね。

 

「そうですね、あれも今回の変わり種というか、「君の瞳に恋してない」「オーケストラを観にいこう」と同じく「ユニゾンこんなのもやるんだ!?」っていう枠ですね。新しいトライではあったんですけど、なかなかいい感じに仕上がったなと思っています」

 

---イントロが始まったときにちょっとした驚きがありますよね。インタビューでインスパイア元としてTOKYO No.1 SOUL SETの名前を挙げられていたのもちょっと意外でした。

 

「そんなにあの手のジャンルの曲をたくさん聴いているわけではないんですけど…ソウルセットとか、あとそれこそAwesome City ClubとかSuchmosとかそういう感じの曲を鈴木(貴雄、ドラム)くんに聴いてもらって、ああいう雰囲気をどうやって出そうかと一緒に考えました」

 

---ロックバンドとしてこういう音をやるのって結構新鮮な気がしますし、ぜひもっとやってほしいです。

 

「なかなか難しいんだよな…()。でも確かに評判いいんですよ」

 

---演奏力がないとできない取り組みですよね、おそらく。

 

「本家の方には申し訳ないですけど、「なんちゃって」であればいろいろできちゃうバンドなんだなというのは今回のアルバム作りを通して改めて気づいた部分でもありますね。スタジオミュージシャンほど上手くはないにしても、決して下手なわけではないので」

 

---なるほど。ちなみに、今回のアルバムは「ポップ」というのがひとつのキーワードになっていると思いますが、田淵さんにとっての「ユニゾン的なポップな楽曲」というのをあえて言語化するとどういうものになるんですかね?

 

「うーん、そうだな…基本的には「メロディがちゃんとあるもの」ですね。Aメロ、Bメロ、サビの流れ、そこにちゃんと抑揚があってドラマが感じられるかとか。歌詞の内容とか譜割りの多い少ないは僕にとってポップか否かには関係ないです。メロディが良くてテンポ感とリズムの大枠が変わらなければ、どうアレンジしても曲の雰囲気は変わらないと思うので」

 

---「メロディのちゃんとあるものがポップ」という観点から『MODE MOOD MODE』の楽曲の並びを改めて見たときに、「ポップなものになったな」という実感はありますか?

 

「そうですね、特にシングル曲に顕著なんですが、全体的に「メロディがしっかりしていること」に執着したアルバムなので、そこは達成できていると思います。…ただ、僕としては、自分の書く曲はすべて「ポップ」だと思ってるんですけどね()。もともとが歌謡曲脳なので、特に強く意識しなくてもメロディが立った楽曲をいつも作っているはずです。今回は自分のそういう好みがより色濃く前に出たアルバムなのかなと認識してます」

 

 

自分たちが思い描いているやり方に反応してくれる人たちを大事にしていこうっていうのが僕の考え

 

---田淵さんは「フルアルバム」というリリース形態をすごく大事にされていると思うのですが、一方で世の中的にはだんだん「フルアルバム」というもの自体が徐々に「古いフォーマット」になりつつあるという状況も生まれてきていますよね。そういった時代の流れがある中で、田淵さんがフルアルバムにこだわる理由というのは何かありますか?

 

「こだわっているのは…そういうのを好きだと思う人たちがいるからですかね。少なくとも僕の視界には、今の時代にCD をウキウキしながら開封して、音源自体はすぐにパソコンとかに取り込んじゃうのかもしれないけど、それを歌詞カード見ながら聴いて楽しんでいる人たちがちゃんと入っているから。そういう人たちのことを肯定してあげたいという気持ちが強いです。あとは何より、単純に僕の中の「ロックバンド像」として、フルアルバムで語れるバンドのほうがかっこいいと思うから、というのもあります」

 

---「フルアルバムで語れるバンドのほうがかっこいい」というのは、田淵さんが音楽にのめりこみ始めたときの記憶からくるものが大きいんですか?

 

「そうですね。ただ、その憧れだけを追っていても駄目だとは思うし、大きい時代の流れの中で自分たちのやろうとしていることが時代遅れだっていうことももちろん理解はしているつもりです。そこまで踏まえたうえで、じゃあユニゾンは何やるのかってのを考えていかなきゃいけないんだなというのは最近よく思います。時代とケンカしたいわけではないので、便利なものは適度に取り入れながら、でも自分の視界に入っている人たちが悲しまないやり方をしていかないとなと」

 

---なるほど。田淵さんの思いとして、バンドの活動を通してさっき挙げていただいたような「視界に入っている層」、CDを嬉々として買うような層を増やしたいという気持ちはあるんでしょうか。

 

「いや、それはないかな。そういう人たちにも存在意義を持たせてあげたい、というのはありますけど…YouTubeでもサブスクリプションサービスでもフェスでも何でもいいんですけど、いろいろな形で音楽を楽しめるのはいいことだと思いますし、その中で自分にとって楽しいものをリスナーが選ぶのは当然なんですよね。『夏フェス革命』の中で、フェスやDJブースでの楽しみ方に関して<ただ、フェスの参加者はもちろんそんなことを気に留めることもなく、自らが楽しいと思う行動に身を委ねていく。>というくだりがあるじゃないですか(注:P132より抜粋)。ここで語られている「提供する側の事情に関係なく受け手は自分にとって心地よいことをする」って話は、フェスに限らずあらゆる場面に当てはまると思うんですよね。そういう大前提がある中で、自分たちの意図する音楽の楽しみ方をしていない人たちに文句を言うんじゃなくて、自分たちが思い描いているやり方に反応してくれる人たちを大事にしていこうっていうのが僕の考えです」

 

---引用していただいてありがとうございます。今田淵さんが言っていただいたところは、僕としても本を通じて言いたかったことのひとつです。個々人はあくまでも各自が楽しいと思ったことを選び取っているだけで、その中から大きな潮流ができあがっていく、というような発想は重要なんじゃないかなと。

 

「音楽をそれぞれの形で楽しんでいる人たちに対して「こうするべきだ!」って水を差すのも何か違うと思いますし僕としても今に至るまでにそういうマインドが無かったとは全然言えないので、改めて考えさせられたなと()この本はそういう気づきがいろいろあって、ある種のビジネス書として名著だと僕は思っているんですよ」

 

---ほんとですか()。光栄です。

 

「僕自身、これを読んで改めて「フェスを作ってる人たちってすごいんだな」と思うようになりました。紙のアンケートからは見えてこないようなことを読み取って、ユーザーの需要の半歩先をいく提案をたくさんしてきた結果が今のフェスの盛り上がりを作っているってことですよね。で、その過程でいろいろな人たちがフェスの楽しさを知っていったわけじゃないですか」

 

---そうですね。「フェスには濃い音楽好きだけじゃなくていろいろなタイプの人が来ている」「音楽に対して切実な気持ちを持っていない人も含めて巻き込めたからこそ、フェスというものは成長した」というのは本の論旨のまさに中心的な部分です。個人的にはそういう状況、「音楽好きではなさそうな人がたくさんいるフェス」という空気に対して思うところがないわけではないですが、それを否定するつもりはなくて、あくまでも現状を記述するとこうなる、というスタンスなんですけど。

 

「懐疑的な視点から書いている部分もあると思うんですけど、否定ではないというのは読んでいて伝わってきました。個人的には、こういうフェスの現状がある中で、「自分は誰に向けて音楽をやるべきか?」というのが再度クリアになったような気がしています。ワンマンライブにもフェスにも行くという人がいれば、フェスの空気が好きだからこそそこにいる人もいる。この先もオファーいただいたらフェスに出ることはもちろんありますけど、そこで何をするかにあたってはそういう状況をちゃんと理解したうえで決めていくべきなんだろうなと。バンドマンとしてはそんなことを考えたんですが、たぶんリスナー目線でもいろいろ感じる部分のある本になってると思いました。「フェス楽しい!」って感じている人にとっては「今の空気に対してこんな意見を持っている人もいるのか」って発見があるだろうし、逆に「フェスの一体感は嫌い」みたいな人は今なぜこういう状況になっているかっていうことが改めてわかると思うので、それぞれ人間的に成長できる…って言ったら大げさかもしれませんが()、また違った角度から音楽を楽しむ助けになるんじゃないかな」

 

 

入口と落とし穴を作り続けてるって言ったらいいのかな

 

---アルバムから間髪いれず、新曲「春が来てぼくら」が3月にリリースされます。すでにアニメ「3月のライオン」ではその一部が放送されていますが、ほんとに美しい楽曲ですね。

 

「個人的には「芸術作品を作ったな」という思いが強いですね。「売れるべき!」とかそういうのよりは、目立たなくてもいいんですけど「すげーもん作ったんだな…」って物好きな人たちにはわかってほしいとは思っています」

 

---映像との組み合わせもばっちりで。

 

「素晴らしいですよね!」

 

---途中でバーンとバンド名も出ますよね。

 

「あれはおいしい体験ですね()。「シュガーソングとビターステップ」のときもそうだったんですけど、タイアップでありがたいのは周りの人たちが僕らの楽曲をどんどん底上げしてくれることなんですよね。だからいまだに「シュガーソングとビターステップ」が売れたのは僕らの実力ではないと思っているし、仮に「春が来てぼくら」がそうなったとしても同じように感じると思うんですけど…少なくとも楽曲そのものに関しては、「3月のライオン」っていう作品のオープニング曲としてもユニゾンの曲としてもすごく純度の高いものになっているはずだし、さっきから話している僕の視界に入っている人たちに対しても「もしからしたらタイアップ嫌いかもしれないけど、まあいい曲だから聴いてくれよ」って胸を張って言える曲になっていると思うので、そういう意味では非常に満足してます」

 

---田淵さんの中で、「春が来てぼくら」のようなロックバンドとしての美しさを体現していてテレビで流れても違和感のない曲と、ライブハウスで映えるギターを激しくかき鳴らすような曲、ユニゾンのそういう二面性みたいなものはどういうふうに位置づけられているんですか?

 

「うーん、僕としてはあくまでも本質的には同じでやり口を変えているだけって感じなんですが…あえて言えば、入口と落とし穴を作り続けてるって言ったらいいのかな。たとえば「春が来てぼくら」でユニゾンのことを好きになってくれた人がライブハウスに来たとして、その人が「もっと「春が来てぼくら」みたいな曲がいっぱいあると思ってたのにちょっとイメージ違ったな、もうライブ行かなくていいや」ってなったとしたら、それはそれで仕方ないじゃないですか。ただ、中にはそうやってライブハウスに来て、うっかりはまってしまう人もいるはずなので。レジーさんが今言っていただいた2つの方向性のうちの前者はユニゾンのことを意識するきっかけとしては機能しやすいと思うので、そういうものはこの先もちゃんと作っていきたいとは思っています。それはメジャーレーベルにいるバンドの務めだとも思ってやっている側面もありますけど、それ以上に僕自身そういう音楽も好きというのが大きいですね」

 

---テレビで流れる音楽を作ったとしても「お茶の間で人気者になろう!」とかそういう話ではないですもんね、ユニゾンの場合は。

 

「そうですね。僕がやりたいのは、曲を作って、アルバムを作って、全国を廻ってライブをするロックバンド、それだけなので。で、そういうバンドの曲を聴いたりライブを見たりするために貴重な時間を割いてくれる人たちがいるのであれば、その人たちには胸を張って好き勝手音楽をやる。それはこの先もずっと変わらないと思います」


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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「やりたいことが明快、というのは改めて伝わってきました。『MODE MOOD MODE』、ここ数年のバンドもののアルバムとしてもかなり上位に入る出来の作品だと思うので、ぜひ聴いてみてください。改めまして田淵さんおよび関係者の皆様ありがとうございました。今回はこんな感じで。次回は今度こそさくっと軽い感じのエントリをあげたいと思っています」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」