レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

2014年10月

名古屋に集ったtofubeatsと次代のJ-POPの担い手+ちょろっと告知

「J-POPのオルタナティブ」を堪能しに名古屋へ

レジー「10月18日に「HOLIDAY Vol.1」というイベントが名古屋であって、それに行ってきました」

司会者「新幹線乗っちゃうと近いですよね名古屋」

レジー「そうね。結婚式とか出張とかでたまに行くけどいつもそう思う。今回のイベントは出演者が最高だったんですよ。ライブアクトだけでもこんな感じ」

tofubeats
Shiggy Jr.
Orland
Idiot Pop
パブリック娘。
ラブリーサマーちゃん


司会者「ちょっとした総ざらい感があります」

レジー「今回行こうと思った直接のきっかけは最近Shiggy Jr.のライブ見れてないなーってときにこれがあったっていう感じなんだけど、全部のアクト見たい!ってモチベーションで参加したイベントは意外と久しぶりの気がする」

司会者「これ以外にもDJの時間があって、14時から終電近くまでの超長丁場イベントでした」

レジー「さすがに疲れたね。座るスペースもそんなにないし。あとこの手の「パーティー」に一人で参加したの結構久々だったので最初はちょっと気圧されたというか、雰囲気にビビりました。ただ、ライブがどれもよかったのでかなり楽しかったよ」

司会者「東京以外で見るShiggy Jr.はいかがでしたか」

レジー「いやーあの盛り上がりはなんだったんだろうってくらいすごかったよ。前の方で見てたけどみんな踊ったり跳ねたり凄まじいことになってた。イベント始まって結構時間も経っててお酒飲んでる人が多かったみたいな場の特性上って話もあったのかもしれないけど、それ差し引いても爆発してました。待ってました!感はあったような」

司会者「ちょうど前日にサバンナ高橋とちゃあぽんのやってる番組のライブが放送されたりフジテレビで8月のリリパがちらっと流れたり、火がつく空気が醸成されてる感じもありますね」

レジー「僕の横でかわいい女子2人組が踊りまくってたのが印象的でした。他のライブでいうと、初めて見たIdiot Popがすごい良かったです。2年前の年間ベストにも入れてたんだけどパフォーマンス見るのは初めてで。どんなことやるのかなと思ってたら、ホーンもいるバンドセット」

司会者「音源の雰囲気とだいぶ違いましたね」

レジー「緻密にびっしり構築された世界みたいなイメージだったんだけど、この日のライブはそういうイメージ残しつつももっと開放的な感じだったよ。超楽しかった。今年出たアルバムもおすすめです」





司会者「名古屋のバンドとしてはOrlandが出演していました」

レジー「この人たちも初だったんだけどかっこよかった。以前音源聴いたときはかっこよすぎてあんまり自分ごとにならないなあって思ったんだけど、ライブだとそんなことどうでもよくなって踊らずにはいられない感じで。横山輝一の“Lovin' You”をカバーしてるって話を事前に聞いててすごいところ持ってくるなって思ったんだけどそれもやってた。この曲は以前「レジーのポータル」で僕が作った「90s J RARE GROOVE」ってプレイリストにも入れてたんだけど、90年代のブラックミュージック風味J-POPがこういうところで復活するってすごい面白いですね。ボコーダー使ったアレンジもいけてました」





司会者「今回のイベントはUrban Weekend Clubって人たちが主催してたんですよね」

レジー「そうそう。で、今回こういう面白いパーティーを作ったUrban Weekend Clubのたまやまんさんにブッキングとかあと名古屋のシーンの話なんかをイベント後にメールで聞いてみました。この前YEBISU MUSIC WEEKENDを仕切ってる大山さんにインタビューしたときにも思ったけど、こういう企画者の話は面白いよね。それではどうぞ」

---
●イベントを主催しているUrban Weekend Clubについて、自己紹介をお願いします。

「Urban Weekend Clubについては僕(Daiki Tamayama)と弟(Takuro Tamayama)によるクリエーションプロジェクトで、音楽、アート、アパレルを軸に様々な表現活動を行なう場として立ち上げました。基本的には僕がディレクション、弟がデザインを担当しています。現状ではMIX CDのリリース、HOLIDAYなどイベント開催、アパレル商品の販売などを行なっています。まだ始動したばかりで、かつお互いマイペースすぎるので(笑)あまり活動が出来てないのが現状ですが、これからいろいろと面白いことが出来たらいいなと考えています」

●この「HOLIDAY Vol.1」は、「ここに来れば、今の時代のアンダーグラウンドにあるポップミュージックがわかる」とも言えるようなラインナップになっていると感じました。どのような意図・視点を持ってブッキングを進めましたか?

「単純に僕がいま見たい人達、大好きな人達を呼びたいというのがスタートではありますが、コンセプトとしては「クラブもライブハウスもインターネットも関係なく、最高のポップミュージックを体験できるパーティーにしたい」という思いが強かったです。まず、2014年の音楽シーンにおいて絶対に外せない存在でありぼくにとってのミュージックヒーローでもあるtofubeatsは必ず呼びたいと思って最初に声をかけました。そこを軸にして、tofubeatsと組み合わせたいアーティストや自分の好きなアーティストに声をかけていきました。そういう意味ではレジーさんの仰った「ここに来れば、今の時代のアンダーグラウンドにあるポップミュージックがわかる」という言葉もすごく的を得ているなあと思いました」

●今回のイベントはtofubeatsのアルバムリリースパーティーという側面もありますが、東京ではたとえばShiggy Jr.などのバンドやlyrical schoolといったアイドルまでひっくるめた「tofubeats以降のシーン」が形成されつつあるという印象があります。そういった動き・空気感は名古屋にもリアルタイムで伝わっているのでしょうか。

「あくまでも個人的な印象ですが、東京や関西と比べてしまうと名古屋ではそういうシーンがまだまだ形成されていないようにも感じます。ただ、最近では名古屋のパーティーでも関連する曲が多くかかるようになりつつあるし、それへの反応が良くなっているのも確かなので、今後名古屋でもそういった動きがどんどん広がっていって欲しいと思っています。そんな気持ちがあるので、tofubeatsを起点にブッキングした名古屋のパーティーにたくさんの反響があったのは本当に嬉しいことだと感じました。このメンツが名古屋に集まる、ということに意味があると思っていたので」

●今回は名古屋からOrlandが出演していましたが、Orland以外の名古屋のバンドで「今回の出演者が好きならこれも好きなはず」というアーティストをぜひ紹介してください。

「Orlandとも仲良くやっている6ピースバンドのHOT HOT SEXはいかがでしょうか。ディスコパンク〜エレクトロポップ周辺の音で海外インディーの匂いも感じるなかなか面白いバンドです。今回のイベントではラウンジDJとしてシンセのOFUROこと江口が出演してくれました。他にはFU-MUwhite white sisterssukida dramasジョセフ・アルカ・ポルカなどがおすすめです」

●イベント主催者として当日のフロアの光景・出来事で特に心に残っている瞬間があれば教えてください。

「ラブリーサマーちゃんやパブリック娘。、Phunkamentalsなど名古屋での出演が初めてのアーティストに対してもお客さんがすごく反応してくれたのを見て、本当にブッキングしてよかったなあと思いました。また、デイタイムのイベントということで普段クラブに行かないようなお客さんも多くいたと思いますが、DJの時間も常にフロアに人がいて踊ってくれているのは「クラブもライブハウスもインターネットも関係なくパーティーしたい」という僕の理想が叶った瞬間のような気がしてとても嬉しかったです(※当日のたまやまんさんのDJミックスはこちらからどうぞ)。あとはHOLIDAYでしか見れないような出演者同士のコラボレーションがいくつも楽しめたのは主催としてもすごく心が躍った瞬間でした」
---

司会者「名古屋でこの組み合わせのイベントをやることにすごく意義を感じているんですね」

レジー「やっぱり「インターネットで物理的な距離が無効になる」とは言っても東京とそれ以外の場所が何から何まで一緒になるわけじゃないし、今回のたまやまんさんみたいな人たちがリアルの場を作っていくことで本当の意味で波及していくんだろうね。ネット上の「バズ」に実態を付与していくというか」

司会者「「ミュージックヒーロー」というのもいい表現ですね」

レジー「ほんと最近のトーフさんってそんな感じだよねえ。この日は一番最後の出番で、ど頭に直前でDJやってたオカダダさんとセットで“ダンシンスルーザナイト”をかましてて超テンション上がりました。で、このイベント前にリリースされた『First Album』も当然のように良かったです」


ダンスとうたが交錯するtofubeats『First Album』の話

司会者「tofubeatsのアルバム『First Album』についてはすでにいろいろなメディアでレビューやインタビューが掲載されています」





レジー「去年このブログでやったインタビューもそうでしたが、トーフさんのインタビュー大体面白いよね。いろいろ思ってることがあって言いたいことがはっきりしてる感じとか、初期衝動っぽいものがありつつも戦略的な立ち振る舞いをしているところとか。で、アルバムの話で言うと、聴いていく中で最初にびっくりしたのがパラパラ」

司会者「LIZとやってる“CAND\\\LAND”ですね」

レジー「かっこいいよねこれ。ちょっと前にこの人のことを国分さんのブログで知ってフリーで落とせる音源を何の予備知識もなしに聴いてたんだけど、今回のコラボは相思相愛な感じで」



司会者「リアルサウンドのインタビューでも語られてました」

LIZは『BBC Radio 1Xtra - Diplo and Friends』もそうですけど、Mad Decentとある程度繋がったところで「tofubeatsと一緒にやってもいいよ」と言ってくれるアーティストが何人かいて。その中から今回はLIZと組むことになりました。今後もMad Decent周りのアーティストとは何かできればと思ってますね。

レジー「クールジャパンとか派手な海外進出とかじゃなくて、普通な感じで日本と海外のクリエイターがつながってるのがいいなあと。この曲に関しては、ちょっと前にトーフさんのtumblrにD&DのPVが貼られてたことがあったんだけど個人的にはその辺の曲の雰囲気も感じました」



司会者「懐かしい」

レジー「当時から結構嫌いじゃなかった。で、LIZの曲の後に“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”を挟んでインスト曲固め打ちのパートがあるんだけど、この辺についてもNEXUSのインタビューでこんな風に解説していました」

まあ、こんなんもできまっせっていう。前回もそうなんですけど、本当は複雑なビートとかしたいっていうことだったりもします。“Populuxe”ではポリリズムをやってるし、“zero to eight”では今でいうロウハウスっていうのもやってるし、“framed moments”だったらバックビートのハウスをやってる。最近のクラブミュージックのビートもフォローをしてるし、そういうのは作ってて楽しいからやっぱり入れておきたいという。あと、こういうことをメジャーでやる人がいなくなっちゃったら、本当に日本の人が誰も踊らなくなっちゃうっていうのはありますよね。

司会者「ダンスミュージックのいろんなトレンドを取り込んでいると」

レジー「恥ずかしながらちゃんとわかってないジャンルだけど、こうやって言語化できるアーティストに整理して提示してもらえるとなるほどあそこでなんやかんや言われてたのはこれのことか!ってわかるよね。ネットで断片的な情報はいっぱい手に入るけどそういうのに接してるだけじゃなかなか自分の中に入っていかなかったりするわけで」

司会者「このパートがあるからこそ他の歌ものが生きていきますね」

レジー「うん。インスト4曲から“Her Favorite”があって、その後“Don’t stop the music”で森高千里の声が聴こえてきたときに旅から帰ってきたような感じになる。で、アルバム終盤に入ってる“衣替え”ね。これやばいでしょ」

司会者「“ディスコの神様”のカップリングに収録されていた際には本人のボーカルでしたが、今回はボニーピンクが歌っています」

レジー「最初からこの組み合わせを想定して作ってたって話だけどほんとにしっくりくるよね。個人的にはこれから寒くなっていく中でたくさん聴きそう。1番の歌が終わってストリングス入ってくるところとか鳥肌もんだよなー。そういやトーフさんはさっき紹介したリアルサウンドのインタビューでやりたい方向性として古内東子、中島美嘉“TRUE”、MISIA“Mother Father Brother Sister”、深田恭子“イージーライダー”って名前を出してたんだけど、この並びはすごい期待が高まります。tofubeats解釈の“イージーライダー”とか超聴いてみたいわ」



司会者「いい曲」

レジー「日本的な情緒というか、適度にしっとりしてて適度にカラッとしてる質感の歌もの。こういうのがJ-POPという名称のもとに広く世の中で聴かれるようになるともっといい社会になるのではとか思う」

司会者「トーフさんは「景気を良くしたい」みたいな大きな視点での発言がたまにありますが、そういう使命というようなものを持って発信活動をしてるように見えますよね。先日の「WIRED」に掲載されていたトーフさんの原稿「インターネットはいかにぼく(と音楽)を救ったか?」という文章の締め、「日々をよくするために、音楽をやろう。」ともつながってきます」



レジー「あれも面白かった。CINRAのインタビューだと「ちゃんと売れたい」なんて話もしてたし、そういう気持ちの強さというか向かってる方向が明確なのが音楽だけではなくて言葉の強さとか面白さにつながってるのかなとか思います。今回は紹介できるリンクとかなくて関連曲動画ばかりになってしまったけど、アルバム未聴の人はぜひ聴いてみてほしいです。」


宣伝:11月あたまのYEBISU MUSIC WEEKENDに出ます

司会者「tofubeatsですが、11月1日から3日にかけて行われるYEBISU MUSIC WEEKENDに出演します」

レジー「トーフさんは11/3で、ライブはもちろんトークセッションもあるんだよね」

司会者「「tofubeatsと音楽ライター/ブロガーが語る、ディグ術と隠れたJ-POPの名盤」というテーマです」

レジー「隠れたJ-POPの名盤というのでどんなのが出てくるのか楽しみです。で、実はこのイベント僕も出ます。初日の11/1、ライブがない日なんですけど。18時から「パソナ ミュージックメイト presents 『音楽で食わずに、音楽と生きる 〜W キャリアがもたらす世界〜』」というセッションに出ます」

司会者「セッションのタイトルは以前このブログで「音楽と関係ない仕事をしながら音楽に関わっている人たち」について特集した記事と同じです」

レジー「YMWの主催者の一人でもある永田純さんはこの特集の参考文献にもなってる「次世代ミュージシャンのオンガク活動ハンドブック」の著者でもありますが、どこかでこの特集を知ってくれたようでちょうど連載してる最中に一度お声掛けいただいてお会いしたんですけど、そんな縁もあって今回出ることになりました」



司会者「何話すんですか」

レジー「正直まだ決まってないんですけど、僕以外にも「音楽じゃない仕事+音楽関連の活動」を並行してやってる引力レコーズの白木裕也さん、シンガーのウエムラケイさんが出ます。で、普段どうやって生活してるのかとかどういう経緯でこうなったのかとか、そういう具体的な話をしつつこういう存在って結局なんなんだろうみたいなことが伝わればいいのかなと思ってます。チケット絶賛発売中ですのでもしご興味あれば。ちなみに僕の出る日だけのチケットは当日券のみで1,000円、ライブのある2日もしくは3日のチケットを持ってる人は無条件で1日にも入場できるそうです。3連休の初日の夜ですが、飲みに行く前にでも立ち寄ってもらえると嬉しいです。告知も終わったので今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「とりあえず未定でお願いします」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

若杉実『渋谷系』から考えるむかしといま

ポップだけど重厚なルポ、若杉実『渋谷系』

レジー「若杉実『渋谷系』を読みました」



司会者「読み応えありましたねこれ」

レジー「うん。表紙のどっしりした感じに違わぬ重厚な本だった。で、面白かったのと同時にちょっと想像と違った。渋谷系ど真ん中世代ってわけじゃない自分にとって、「渋谷系」って言われて思い出すのはやっぱり「カラフルなポップス」みたいな感じのやつなんですよ」

司会者「ピチカートとかね」

レジー「そうそう。カジヒデキとか。カジヒデキこの前のアルバムすごい良かったね」



司会者「そういう音楽について書かれてないんですかこの本は」

レジー「もちろんそんなことはないんだけど、むしろそれよりももっと違う潮流についての記述が多かったです。この本についてのトークイベントで、著者の若杉さんがわかりやすく説明していたのでそちら引用します

今まで渋谷系といったものを取り上げた雑誌などをいろいろと見たのですが、みんなネオアコ系が中心になっているんですよ。でも、一般的にはフリッパーズが解散した以降から渋谷系という言葉が出て来たとされてる。となると、別々の活動を始めたふたりの動きにこそ着目しなければいけない。つまりクラブっぽくなったり、黒っぽくなったり、と。ネオアコ系のみで語る視点を切り崩していかないと、今まで紹介されたものと同じになってしまうなと思ったんです。あくまでもいろんな要素が入った「渋谷系」であって、「ネオアコ系」じゃないんですよね。

司会者「なるほど」

レジー「なんとなく「渋谷系=ネオアコ系」みたいな構図が確かに頭の中にあったので目から鱗でした。この本の主な舞台になってる90年代前半はまだ子どもでクラブなんて当然行けなかったから、その辺の話はいろいろ勉強になりました。U.F.O.とか昔知ったかぶりして口にしてた記憶があるよ。恥ずかしい」

司会者「アシッドジャズ、レアグルーヴといったムーブメントが重要なものとして出てきます。それと合わせて、若杉さんなりの渋谷系の定義ともいうべき記述がありますね」

渋谷系とは、とりもなおさず日本版アシッドジャズではないか、というのが僕なりの持論だ。逆に言うとアシッドジャズはイギリスにおける渋谷系だった、と言いたいところだが、それはやっぱりちがうだろう。
その両者を結ぶことばをひと言で表すなら、やはりそれは“温故知新”となる。過去の音源を掘り起こして新たな知識を発見し、現代に蘇生させる。なにもそれは、渋谷系やアシッドジャズにかぎったことではないだろう。ただ、88年から音楽メディアがCDに代替し、それにともない旧譜、名盤、レア盤の類がいっきに再発された流れは、東京・ロンドンを中心とした都市部の文化水準をいっきに向上させた。アシッドジャズも渋谷系もその時代が重複する。(P113)


レジー「確かに「元ネタ」なんて言葉を知ったのは渋谷系に絡んだ情報に接し始めてからだったなあ。この定義は今の特定のシーンの状況を考えるうえでも示唆に富んだものだなと思ってます。そのあたりは後半の方で。で、この本で一番インパクトあったのはここね。当時ゼストの店員をしていた仲真史さんの話」

92年の立冬になると仲はロンドンの街を満喫していた。翌年の春には帰国しゼストの店員にふたたび戻るのだが、そこに友人の小山田圭吾が来るなりこう言い寄る。

「これからは“渋谷系”というものがくるらしい」

フリッパーズ・ギターを解散し、まもなくコーネリアス名義によるソロ第1弾「The Sun Is My Enemy 太陽は僕の敵」(93年9月)を送り出すときだった。このプロモーションをしている最中に、ある雑誌編集者からその名前を教えられたらしい。(P21)


司会者「この部外者感すごい」

レジー「こういう感じの裏ネタ的な話もいっぱいあってほんとに「当事者のルポ」という感じの本です。渋谷系ってなんだろう?って素朴に思ってる人にはおすすめ。あとリアルサウンドに栗原裕一郎さんがレビューを書いてたのでそちらも合わせて。さらに言うと、渋谷という街のあり方、セゾングループの都市開発とかその手の話も関連してくるので、北田暁大『広告都市・東京』とか参考文献にも出てきてた森川嘉一郎『趣都の誕生』なんかも併読すると面白いと思います。この2冊とも結構前に読んだから改めて読みたいな」

 


81年千葉生まれ東京育ちの少年と渋谷系

司会者「ここまでの話でもちょこちょこ出てきましたが、「渋谷系」というものを知ったのはどのあたりですか」

レジー「小学生のころは間違いなく知らなかった。中学校入って、中1のときにませたクラスメイトがカヒミ・カリィがどうとか言ってた記憶がある。それが94年ごろ。あと95年の3月、期末テストの試験休みの時に池袋のタワレコでソウルセットのCDを買ったんだけど、確かそのときには知ってたね。当時はネットもないし音楽雑誌もまだそんなに読んでなかったからテレビで知ったんだと思う。なんか日本のヒップホップを特集してた番組を見たような」

司会者「“DA.YO.NE”とか“今夜はブギーバック”とかが売れた時代ですね」

レジー「たぶんその流れでそういう特集があり、その中で「渋谷系」という概念を知ったはず。だから90年代初頭の話なんてのは全然わからなくて、そのときはフリッパーズギターというものの存在すら知らなかった。あとそれと前後するけどカーディガンズにどっぷりはまって」

司会者「スウェディッシュポップ」

レジー「“Carnival”でがっつり喰らって、クラウドベリージャムにいき、テレビで見たパインフォレストクランチにはまり。今の自分の趣味嗜好の根底にあるのがこの辺の人たちの音楽」







司会者「カーディガンズのバックにいたトーレヨハンソンはJ-POPにも影響を及ぼしてましたね。ボニーピンクの『Heaven’s Kitchen』が97年5月」

レジー「原田知世とかもね。こういう中で最初に書いた「渋谷系=カラフルなポップス」みたいな自分内イメージが漠然と出来上がっていくんだけど。ただ、考えてみると自分にとっての「渋谷系」って、単に「オリコンやMステには出てこないかっこよさげな音楽」というもののラベルとして使ってただけのような気もするな。96年2月のサニーデイ『東京』、かせきさいだぁのメジャー1stが96年9月、あと96年8月のソウルセット『Jr.』とか、全部「渋谷系の範疇」として触れてた気がするんだけど」

 



司会者「その辺別にギターポップじゃないですよね」

レジー「「フォーキー」とかそんなキーワードがよく出てきてた気が。サニーデイ経由ではっぴいえんど知ったりもした。このころの情報源はたぶんワッツインとワッツインエス、あとたぶんバウンスももう読んでたよな。RO社の雑誌はまだ読んでない」

司会者「その辺の音楽雑誌遍歴はこちらの記事にまとめてますのでご興味あれば」

レジー「前も書いたけどワッツインエスとかいい雑誌だったと思う。うん、なんかいろいろ思い出してきた。「一般的な世間の流行とは一味違う(とされている)もの」、もっと言えば「何となくセンスが良さそうなもの」と渋谷って街を自分の中で勝手に結び付けてたんだな。学校が渋谷に近くて定期プラス150円くらいで行けたから場所としても身近だったし。アナログレコードがおしゃれだ、みたいな話をどこかで聞きつけてポータブルレコードプレーヤー買ったり。しかもカジヒデキモデル」

司会者「マスカットカラーね」

レジー「そしてレコードを「ジャケ買い」するという。「ジャケ買い」って言ってみたかっただけだからね今考えると。買ってもほとんど聴いてないレコードとか結構あったと思う。それこそ若杉さんの本にたびたび出てくるゼストにも行ったし。自分にとっては渋谷のミニシアターに行くのも「渋谷系的振る舞い」だった。とりあえず「トレインスポッティング」は見とかないと、みたいな」



司会者「振り返っていくとなかなか軽薄な感じですね」

レジー「ほんとそうだよね。スノッブの極み。ただこのときって、こういうことを誰かにひけらかしたりはほとんどしてなかったと思うんだよね。一部の友人と共有はしてたものの、そういうことよりも新しいものを知って自分の感覚が変わっていくこと自体を面白く感じていたというか。その辺はSNSの時代とはだいぶ態度が違うわな。こういう話題で誰かとつながりたいとも思ってなかったし。「つながり」みたいな話は音楽とかそういうものとは関係ないところで充足してた」

司会者「なるほど」

レジー「あとは実際に現場に足を運ぶとか、自分から情報を探すみたいなスタンスはこの時期に培われたんじゃないかな。自分の中では、渋谷系というものに負わせていた「オリコンやMステには出てこないかっこよさげな音楽」という位置づけがそのまま97年98年デビューのロックバンドにスライドしていった感じですね。中学生から高校生にかけて典型的に「形から入る」姿勢でいろいろやってたことがその後のライフスタイルに大きく影響してると言えるのかなと思います」


渋谷系から「いま」を見る

司会者「昔話ばかりしてもあれなので、もうちょっと今の状況につながる話をしたいところです」

レジー「そうねえ。そういえばちょっと前に「音楽だいすきクラブ」で渋谷系の特集があったじゃないですか」

司会者「ディスクレビューとか力入ってましたね」

レジー「で、ああいうことをやると必ずネガティブスタンスからの「あれが入ってる/入ってないのはおかしい」になりますよね。特に渋谷系って概念があいまいだから、どう捉えるかで無限に広がる領域だし」

司会者「ブレイク前のミスチルやスピッツは渋谷系なのか、とか」

レジー「そういう意味では今回取り上げた若杉さんの本も渋谷系というものの「全体」を取り上げてるとはたぶん言えないし、実際本の終盤はかなり駆け足で進む印象がありました。本の帯に「渋谷系の勃興と衰退、その源流と現在」ってあるんだけど、「現在」については結構あっさり」

司会者「アキシブ系の話とかはさらっとでしたね」

レジー「さすがにそこまで字数とれないってことなんだろうけど。個人的にはこの辺の動きはもっと知られてもいいというか、「オタクとサブカルの勢力争い」みたいな二元論ベースの話がもはや無効になっている証左としてわかりやすい例なのかなとか思う。自分の周りだけかもしれないけど、「渋谷系全盛期にクラブで遊んでました」的な今アラフォーくらいの人たちってだいたいアイドルとかアニメとか馬鹿にしてるんだよね。あなたたちが崇拝してたキラキラギターポップが今一番聴けるのはアイドルソングとアニソンなんじゃないの、ってのはよく思う」



司会者「そういう側面もありますね」

レジー「あと冒頭に紹介した「渋谷系=アシッドジャズ」の話で出てきた「温故知新」「レコード→CD」という整理は最近のインディー周りの動きともリンクしてるかもと思いました。音楽メディア、ここでは雑誌とかそういうことじゃなくて「音楽を運ぶ媒介」って意味で使ってますけど、それが変わるタイミングはやはり何かしらのムーブメントが起きるってことなのかね。今はまさに「フィジカル→非フィジカル」に動こうとしているタイミングで、アシッドジャズの本質が「レア音源がCDで再発されて昔のものに触れやすくなった」ということだとすると、最近は「ネットで世界中の昔の音源が聴ける+リアルタイムのものもタイムラグなしで聴けるようになる」っていうもっとダイナミックなことが起こっているというか。で、そういう波を乗りこなしてるヘビーリスナーがミュージシャン側に回っている」

司会者「「温故知新」だけじゃなくて、同時代で行われていることからも刺激を受けて新しいものが生まれていると」

レジー「そう考えるとやっぱりインターネットすごいな。すでにいろんな人が言ってるだろうしさっき触れた音楽だいすきクラブの特集でもちょこっと言及があったと思うけど、渋谷系と最近のインディーの動きって何か共通性があるような気がしてて、一方では「元ネタ・ルーツに対する態度が異なるから別物なのでは」みたいな言説もそうねえなんて思ってたんだけど、「レコード→CD」「フィジカル→非フィジカル」っていう「音楽を乗せる媒体の変化」の軸を入れると根底にある共通性が見えてくるのかなと感じました」

司会者「今は「CD→レコード」、さらには「CD→カセットテープ」みたいな話もあるからより複層化してますね」

レジー「そうね。最初に紹介したこの本のトークイベントは最近できた渋谷HMVのレコードショップでやったみたいなんだけど、あそこも一つの流れへの対応とも言えるだろうし。個人的にはあのお店から何か新しいものが生まれる感じとかはあんまりしなかったんだけど」




司会者「若杉さんの本にもこのお店の開店にあたってこんな記述が」

レコード蒐集家をはじめ周囲の評判はおおむね歓迎のようだ。ぼくもアナログ愛好家の端くれとしてこのニュースに一瞬色めき立ったが、冷静に考えると微妙な話でもある。『SHIBUYA RECOMMENDATION』という起爆剤のもとに渋谷系を謳歌してきたCDショップが、こんどは時代の遺物を抱え込む側に回るのだから。はたしてこの構図からどんな生産性が導けるのだろうか。(P183)

レジー「あの店の限定商品とかもあるし、単なるマニアの慰めものじゃなくて新しい動きになったら楽しいなあとは思います」

司会者「わかりました。長くなってきたのでそろそろまとめていただけると」

レジー「やっぱり「渋谷系」って言葉にはいろんな文脈が埋まってるよね。いろいろ考えるきっかけになって面白かったです。あと90年代後半からゼロ年代初頭の「渋谷系以降」的なバンドが意外と最近の人たちに影響を与えているのでは、ってネタはこの前CDジャーナルで松永良平さんと対談した時に話したんだけどもう読めないのかなあれ。シンリズムとキリンジとか、OK?NO!!とシンバルズとかね。OK?NO!!アルバム楽しみです。で、最後にこの本にもさまざまな動きのキーマンとして登場する橋本徹さんの話を引いて終わりたいと思います。いろいろ考えさせられるなこの記述は」

橋本徹は渋谷系という動きを加速させたのはマッキントッシュの登場だと指摘する。
「ぼくらがやってきたようにアイデアと行動力さえあればだれでも自分たちでできる」
また、そこには“インターネット以前”という条件も不可欠だと言い添える。
「完成したものが世に出回ると共鳴してくれるひともいるけど、その逆に批判したり嫉妬したりとネガティブな反応も出てくる。そこをネット前夜だとシャットアウトできたんじゃないかな(笑)。そのおかげで好きなことをみんながどんどんやれた」
鬼のいぬ間に選択といったところか。時間にしておよそ5年。2ちゃんもツイッターもない空白の5年は、共鳴者だけで自分たちを取り囲むことができたというわけだ。そしてその間に、渋谷系はすくすくと成長した。(P94)


司会者「難しいところですね」

レジー「この記述に渋谷系というものが持つ「楽園感」というかユートピアな感じがよく出てるよね。とりあえず今回はこんな感じで」

司会者「では次回はどうしますか」

レジー「今度行くイベントの話か、告知か、ちょっと検討中です」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

ニッポンの新しい音楽祭 YEBISU MUSIC WEEKEND 主催者インタビュー

司会者「前回の赤い公園津野米咲さんに引き続きインタビュー企画ですね」

レジー「はい。取り上げるのは11月あたまに行われる新しいイベント、YEBISU MUSIC WEEKENDです」

YMW-Eyecatch.jpg

司会者「これ出演者が面白いですよね」

レジー「細野晴臣から森は生きているまで、加えてベルハーにゆるめるモ!も。ジャンルも世代も飛び越えてます。僕の好きなAwesome City Clubも出るよ」



司会者「「ライブ、トーク、プレゼンで音楽を楽しむ × 知る × 考えるエンタメフェス」というコンセプトが掲げられているとおり、ライブと並行していろいろなトークセッションなどが行われます」

レジー「いわゆる「フェス」がフィジカルな欲求を満たす場というか、どんどんスポーティーになってる中でなかなか意欲的なイベントだなと思います。で、今回はこのイベントの実行委員会の中心メンバーの一人、大山裕之さんにお話を伺いました。大山さんは普段はフリーランスでウェブデザイナーの仕事をしながら、このイベントにおいてもフロントに立って活動しています。そして25歳と若い」

司会者「確か去年のB&Bのトークイベントに来てくださった時が初対面でしたね」

レジー「そうそう。その後ちょこちょこ顔は合わせてたんだけどがっつり2人で話し込んだのは今回が初だったので、僕の方もいろいろ刺激になりました。このインタビューではYEBISU MUSIC WEEKENDというイベントの見どころや志であったり、あとはDIYでフェスを立ち上げるとはどういうことなのかというような話にも触れています。お金の話も出てきたり、わりと生々しさのあるテキストになってるかなと。それではどうぞ」


---


YEBISU MUSIC WEEKEND そのカオスな魅力とは

---まずはYEBISU MUSIC WEEKEND(以下YMW)の成り立ちからお話しいただければと思います。

「前身となっているのはYOAKEというトークセッションとライブを融合させたイベントです。2012年11月に恵比寿のガーデンルームで1回目が行われて、これまでに計3回開催されています。このイベントは「音楽シーンの現在を感じ、未来を考えるトーク&ライブ」というテーマでやっていたんですが、正直今ひとつお客さんの顔が見えないというか、誰が来ているのかよくわからない、少なくともリスナーやミュージシャンには届いていない印象でした。音楽の取り巻く環境もまた変わってきたし、一度ちゃんとリスナーの方を向いたイベントをやろう、それなら規模を拡大してやろう、という話が出たのが今年の3月ごろですね。そこから本格的な準備が始まりました」

---YMWでは「ライブ、トーク、プレゼンで音楽を楽しむ・知る・考えるエンタメフェス」というコンセプトが掲げられていますが、トークセッションとライブが並列になっているというのはこのイベントの一つの特徴ですよね。海外で言えばサウス・バイ・サウスウエスト(以下SXSW)、日本でもつい最近行われたTHE BIG PARADEなども同じような形式をとっています。

「そうですね。ただ、この前飯田仁一郎さん(YMW実行委員会の一人、OTOTOY編集長)がブログで「日本のSXSWとか言っているの、もう良くねぇ?! 」なんて書いていて。僕自身2013年にSXSWには行ってるんですが、ああいう街全体がお祭りになる感じは理想だと思う反面、トークセッションとライブで客層や聞き方のモードが全然違うのが結構気になったんですよね」

---なるほど。

「日本にSXSWのようなイベントが根付かない理由は音楽とビジネスのバランスが悪いからだと思います。SXSWで行われているトークセッションはどちらかというとビジネスの話が多くて、普通のリスナーが興味を持てる内容になっていない。それでもあのイベントが成立しているのはオースティンという場所だからであって、あのコンセプトをまるまる日本に持ち込んでも意味がないのかなと。そのあたりも踏まえて、YMWのトークセッションでは「リスナーがいかに音楽を楽しむか」「テーマがビジネスでも面白く」という観点からトークセッションを考えています。音楽産業がリスナーの方を向いていなかったらそもそも産業として成り立たないので、そこは順序立ててやっていこうと。そしてビジネスがテーマのトークセッションでも、しっかり面白ければ受け入れてもらえるはずだと思っています」

---トークセッションと並行してたくさんのライブも行われますが、こちらのブッキングについてはどんな方針で進めましたか?

「今の音楽シーンの最前線にいる人、音楽と表現に真摯に向き合っている人に出てもらいたいと考えていました。そんなこと言ったらみんなそうなんですけど…。象徴的なのは細野さん(細野晴臣)ですね。デビュー40年を過ぎてもいまだシーンの最前線にいて、後進からもリスペクトされている存在です。鈴木慶一さんのやっているControversial Sparkについても同じことが言えます。彼らのステージはお客さんだけでなくほかのアーティストにもぜひ見てほしいと思っています。そして逆にそういったベテランたちにミツメやYogee New Wavesを見てほしい。お互いに刺激しあってもらえたら最高です」





---個人的にはベルハー(BELLRING少女ハート)とゆるめるモ!が気になりました。「ロックフェスにアイドルが出るのはありかなしか」みたいな話はたびたび俎上に上がりますが、そのあたり何かご意見はありますか。



「まずはっきりさせておきたいのは、YMWは「ロックフェスではない」ということですね。もっと大きい意味での「音楽祭」みたいなものをイメージしています。だからブッキングの際にジャンルがどうこうみたいな話は全く考えていないです。アイドルだけじゃなくて上原れなさんやSuaraさんみたいなアニソンの方もいますし、NATURE DANGER GANGはもはや意味わかんなくて最高だし」



---確かにかなりバラエティ豊かな出演者ですよね。

「改めて聞かれると困っちゃうんですが、僕らなりに今の日本で「音楽祭」という切り口で出演者を選んだらこういう形になっていました」

---細野さんや鈴木さんみたいなベテランもいれば、森は生きているや吉田ヨウヘイgroupといったインディーシーンで活躍している人もいて、もちろんアイドルやアニソンシンガーもいると。考え方としては共感するという前提であえてネガティブな質問をさせていただくと、リスナーがタコツボ化して「聴きたいものだけ聴けばいい」という空気感が強い今の状況でこういうジャンルレスのイベントをやるというのはなかなかハードルが高いような気がするのですが。

「完全にハードル高いですね。でもそのハードルを無理に超えようとはしていなくて。今、おもしろい音楽がたくさんあって、色々なことを考えて実行してきた人たちがいて、そういう人たちを恵比寿に集めてみたけど、どう?楽しくない?くらいの感じです。聴きたいものを聴きに行って、そのついでに見たライブがちゃんと楽しかったら、それは良い出会いになるだろうし。そもそもフェスってそういう場だと思います。ただ、同一ジャンル内で予定調和なものを作るのではなくてエッジのある気になっちゃうブッキングにしたいというのはずっと考えていました。ニコニコ超会議やFREEDOMMUNE的なものというか」

---あー、なるほど。それは面白いですね。

「あの辺のイベントみたいなカオス感を出したいです。今回の会場である恵比寿は「大人のおしゃれな街」というイメージがあると思いますが、そういう洗練された空間の裏側で実は混沌としたヤバいイベントが行われている。そんな構図を作れたらいいなと。非現実感もでるし。SXSWを日本に持ち込むという発想というよりは、今この国にあるノリで突き進んだほうが良いかなと思っています」


「フリーランス・25歳」のフェス作り

---大山さん以外にも3人の方が実行委員会の主要メンバーとして名を連ねています。

「はい。永田純さんはYMO のワールドツアーに舞台スタッフとして同行したり、矢野顕子やレ・ロマネスクのマネージメントに関わってきた音楽エージェント/ プロデューサー。ミュージシャンへの「なんでも相談室」をやってる一般社団法人の代表でもあります。渡邉憲一さんは海外アーティストのプロモーターを皮切りにレコード会社、音楽出版社、マネージメント、SXSW Asia 事務局長を歴任してきたなんかすごいっぽいオジサン、あとは先ほど少し名前の出たOTOTOY編集長の飯田仁一郎さん、それから僕の4人が中心です。飯田さんはOTOTOY編集長でありながらリアル脱出ゲームやったりボロフェスタやったりバンドやったり、ようわかりません。4人ともほとんどフリーランスとして活動していて、かつ世代がバラバラなのもこのイベントの特徴かなと」

---20代の大山さん、30代の飯田さん、50代の永田さん、60代の渡邉さん。これだけ世代が違うと考えていることもだいぶ違いますよね。

「そうですね、それぞれがセーブし合えるのでいいバランスだと思います」

---4人の中で役割分担的なものはありますか?

「一応は飯田大山がライブのブッキング、永田渡邉がトークのブッキングと協賛になってはいますけど、実際にはみんな何でもやってます。あとは僕の本業がウェブデザイナーなので、そっち周りの作業は引き受けていますね。ほんとはもっとサイトもいじりたいんですけど、リソース的になかなか」

---昼のお仕事と両立しながらやってるんですもんね。大変ですか?

「正直・・・単純に昼間の仕事と両立するの無理じゃね?って思ってます(笑)」

---そりゃそうですよね(笑)。

「僕含め、このイベントに100%工数を割ける人がいないのでそこはハードですね。入院したさあります」

---一方で、そういうメンバー構成でありながらこんな大きなイベントを企画できるというのもそれはそれで面白いなと思います。以前このブログで「音楽以外の本業を持ちながら音楽に関わっていく人たち」の特集をしてそれなりに反響があったのですが、大山さんのケースもそれに当てはまるなあと話を聞いてて思いました。

「そうですね。とは言え今回のケースは前身のYOAKEだったり、飯田さんが企画しているボロフェスタだったり、そういう知見があるからこそDIYで回せているというところもあります」

---DIYというお話がありましたが、イベンターをかまさない形で企画を走らせる中で大変なこととかはありますか?

「当日の運営はもちろん、一番大きいのはメディア力というか、宣伝の部分ですかね。宣伝費50万もないですし。ただ、DIYだからこそ自分たちの肌感覚というか、リスナー目線には忠実になって進めたいとは思っています。例えば入場時にドリンク代をとらないとか。普通に考えると「あれは何のお金なんだろう」ってなるはずなので。めっちゃ利益になるんですがあえてカットしています。あとはチケット代。やっぱり「若い人が高いお金を払ってフェスに行く大変さ」ってのはよく理解しているので、今回は価格をグッと抑えています。他にも冷静に考えるとおかしくない?という部分はいっぱいあると思います」


YMWのこれから、そして「フェス」のこれから

---チケット価格の話がありましたが、今回3日間で5,500円、学割だと4,500円というかなり破格の設定が話題になっていますね。

「ここについては主催の思いを一番わかりやすく示せるところだと思って、意思を持って決めました。気軽にいろいろな人に来てもらいたいなと。ちなみにトークのみの11月1日は、11月2日および11月3日の「1日券」でも「3日通し券」でも入場できる謎仕様です」

---こういう値段でここまでのアーティストが見られるというのは素晴らしい試みだと思います。ただ、主催者側としてもアーティスト側としても収益的に厳しい部分というのは当然出てきてしまいますよね。

「どう考えてもやばいです(笑)。アーティストサイドにはイベントの志を理解してもらうように努めていますが、負担を強いている部分があることは否めないのでお金以外のところで還元していきたいとは思っています。現状では出演アーティストに関する告知を公式サイトやツイッターなどで行っていますが、今回YMWが行われる11月までだけではなくて継続的にプッシュしていきたいなと。YMWというものを単発のイベントではなくて、常にいい音楽を紹介しているメディアとして機能させていきます。というのも、YMWが出演者のフックになれないなら意味ないと思っているので。ウェブサイトもそういう位置づけにしたい」

---「フェスとはメディアである」みたいな話をさらに進めて文字通りの「情報メディア」にしていくと。

「そうですね。今度11月16日に行われるアコースティックライブイベント『GOOD VIBRATIONS vol.1』をYMWとして少しお手伝いさせていただくのですが、そんな形でいろいろなリアルなイベントにも関わっていって「YMWが推しているなら間違いない」というような状態にしたいです。そういう一連の活動のシンボル的な存在として、11月の大きなイベントがあるというようになればいいなあと思います」

---単発のイベントではなくていい音楽を体現するブランドのような存在に、ということですね。そのために初回の成功が大事ですね。

「そうですね。今回ダメだったら終わりですよ」

---そんなこと言わないでくださいよ(笑)。何をもって成功とするかというところもあると思いますが、最初のチケット代の話からつなげると、今回のイベントに関して収支についてはどのような見通しを立てていますか?

「初回ということもあって、利益を出すというよりはとにかく赤を出さないということを念頭に置いてやっています。まずはトントンできっちり終わらせたい。とはいえもちろんそれ以上の結果が出せるのならばそうしたいですね」

---今回はチケットを低価格に設定していますが、音楽ビジネス全体を見渡すと「お金を持っている人から確実にとる」みたいな手法もかなり増えていますよね。先日のポールの武道館10万円みたいなやり方もそうですし。今後人口も減っていく中で、こういうイベントで確実に収益を出すというところについてどう考えていくかというのは生々しい話ですが大きなテーマだと思っています。もしかしたら大山さんだったり僕だったり、「音楽ではないところで生計を立てている」という形の人が音楽に関わっていくというのも一つのアプローチなのかもしれません。

「このイベントがお金の面でもちゃんと成功しないといろいろ説得力が出てこないと思うので、そのあたりはきっちりやりたいなと思います。本当はどーんとギャラも払いたいし。協賛の形ひとつとっても、まだまだいろんなやり方はあると思っていて。今回トークセッションの一部はパートナー企業と組んで行っているのですが、場合によってはライブの方にもそういう考え方を適用できるかもしれないですし。さっきのレジーさんのお話は音楽に関わる人間が音楽以外のところからの収入で生活するということですが、イベント運営そのものについても音楽業界以外のところからお金を持ってくるというやり方もあるんじゃないかなと。この間のU2とAppleのように。ここはもっと模索していきたいと思います。とりあえず未だに協賛募集中です。500万ください」

---(笑)。ありがとうございました。最後に、「俺も/わたしもフェスを立ち上げたい」みたいな気持ちをうっすら持っている人たちがもしかしたらこのインタビューを読んでくれているかもしれないので、そういう方に向けてメッセージなりアドバイスなりいただければ。

「うーん、難しいな・・・ひとりだけでこのイベントを作っているわけではないというのを大前提でお話ししますと、僕はデザイナーなので物事をできるだけフラットに見ようと常に意識しているのですが、そういう思考ができる人を仲間に入れた方がいいかなと。フェスをやりたい!なんて考えている人のニーズは普通の人のニーズと間違いなく違うので(笑)。主催による主催のためのイベントにならないように。あとはレジーさんもそういう側面があったと思いますが、とにかく発信した方がいいよと。それも戦略的に。よく言いますけど、アイデアに価値はないというやつですね」

---やりたいって思ってるだけじゃ始まらないですからね。

「言葉にすると安っぽくなってしまいますが、何かをやりたいと思っているならば「似た考えを持っているそれなりに有名な人がいいね!するような記事を書けるか」みたいな視点が必要なのかなと思います。そうすることで自然と仲間も増えていくし。YMWは今ボランティアスタッフ募集しているので、YMWがそういった方が活躍するキッカケになったら嬉しいです。あとはそうですね、ステイヤングってことですかね」

---縁起の悪い言葉ですね(笑)。

「オチに使ってください(笑)」


---

司会者「インタビューは以上になります」

レジー「そういえば去年福岡のサンセットライブの主催者である林さんに話を聞いたんだけど、あれと読み比べても面白いかもね。フェスをやろうという人の考え方は面白いです。今回はインタビュー内に自分の言いたいことも盛り込んでるので特に付け加えることもないのでこんな感じで。11月あたまってこのYEBISU MUSIC WEEKEND以外にも東京圏でいろんなイベントがあっていろんな場所が盛り上がると思うけど、このイベントもきっと楽しいはず」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「今のところ未定で。読んでる本の話とかするかもだけど」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
ギャラリー
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)
  • 最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)