レジー「今回は久々にこちらの企画をやります」

 

あの1023円で何が買えたか? -もはや誰も顧みない90sJ-POPを勝手に供養する-

 

アマゾンを巡回して「1円で買える90年代半ば~後半デビューのさして売れなかった人たち」のCDを3作品発見して回収(送料340円×3枚、総計1023円)→その中身について自分の思い出も交えて話をする

※現在は送料350円のため総計1053円だが、企画開始当初のタイトルを継続


 

司会者「前回が20152月なのでかなり間が空きました」

 

レジー「最近の90年代熱を受けてそろそろやろうかなと。宇野さんの本もそうだし、あとこんなブログ記事も読んだりして」

 

司会者「90年代リバイバル的な音楽の話を受けて、結構90年代は語られることが増えてますよね。それこそ渋谷系とか」

 

レジー「いろいろあるけど、やっぱり自分にしっくりくるものってなかなかないんだよね。まあ見る立場が違うから当たり前なんだけど。よく言われてるように90年代の音楽が渋谷系一色だったなんてことは絶対ないし、都内の女子高生がみんな援助交際してたのか?みたいな不思議な気持ちになったり。少なくとも自分の観測範囲ではそんなことはなかった」

 

司会者「隠してただけかもしれないけどね」

 

レジー「そうだったらかなりショックだ。ほんといろいろどうかなと思う話はあるのよ。オザケンの話するのにヘイヘイヘイについて全く目配せがないとか、メロコアと東京ストリートニュースとか。まあそういうのは置いておくとして、そもそもこの僕の企画って「ポスト・ミスチル」みたいに括られてたけどそんなに売れなかった、消えてしまったけど愛すべきバンドたちを茶化しながらもリスペクトを込めて紹介するみたいな個人的な動機で2013年に始めたものなんですけど、事ここに及んでは90年代の一つの歴史を紡ぐ企画として当初とは異なる意味を持ち始めてるような気がしていまして。すでに当初紹介したかったバンドの話からずいぶん離れているんだけど、妙にユートピア的に語られがちな90年代の音楽シーンの多様性を振り返ってあの時代を再解釈する企画として改めて位置付けられればなと思っています」

 

司会者「過去の記事もずらっと並べておきますので是非読んでいただきたいですね」

 

第1回:After me/rough laugh/CURIO
第2回:cool drive makers/ZEPPET STORE/ROBOTS
第3回:SMILE/オセロケッツ/坂本サトル
第4回:PEPPERLAND ORANGE/RAZZ MA TAZZ/SweetShop
第5回:Jungle Smile/TIMESLIP-RENDEZVOUS/the autumn stone 
第6回:Rumania Montevideo/ザ・カスタネッツ/Letit go
第7回:THE CHEWINGGUM WEEKEND、the PeteBest、No’where               

 

レジー「うん。「90年代」っていうものの見方も少し変わるかも。というわけで今回の3枚はこちら」


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司会者「またこれまでと少し毛色の違う作品も入ってますね」

 


レジー「そうね。一応自分なりのテーマはあります。まずはこのアルバムから行ってみましょう」


 

RE-BIRTH/MULTI MAX

 


 


司会者「まずはマルチマックスです。89年にデビュー、って当初の約束事から逸脱してますけど」

 

レジー「まあちょっと大目に見てください。チャゲアスのチャゲのユニットね。89年っていうとチャゲアスは「WALK」とか「LOVE SONG」とか出してた頃です」

 




 

司会者「今聴いても名曲。あとアルバム『PRIDE』で1位をとってますね」

 

レジー「ここから90年代前半のメガヒット時代へ続くと。で、そういうタイミングで「自分の音楽のルーツを追求したい」という想いでできたグループです」

 

司会者「3人組で、メンバーは淺井ひろみと村上啓介。村上氏は、90年代SMAPのキーマンでもある小森田実と一緒に音楽活動していた時代もあるとのこと。このアルバムは1993年のリリースですね。チャゲアスとしては「YAH YAH YAH」のリリース年です」

 

レジー「最初に動画も貼りましたけど、大ヒットシングル「勇気の言葉」を収録しています」

 

司会者「大ヒットって」

 

レジー「なんかよく流れてた記憶がある。で、このアルバム、もちろんチャゲのユニットと言いつつ女性ボーカルの曲もあったりします。あとこれASKAが歌えばチャゲアスになるんじゃね的な曲もちょこちょこ」

 

司会者「「I CAN'T STOP EATING -食わずにはいられない」とか「今夜ちょっとさ」風でもありますね」

 

レジー「チャゲアスとの音楽的な住み分けとは誰かきっちり補足していただけると嬉しいです。あと曲が長い。これは時代柄かもなーと思う」

 

司会者「このマルチマックスですが、1996年に活動休止となりました。ちょうどチャゲアスが一度活動を止めた時期とも重なります。ちなみに2014年に過去のVHS作品がDVD化されました」

 

レジー「ASKAもソロ活動バリバリやってたし、やっぱりチャゲアスって「ユニット」だったんだよなあと改めて思いました。バンドの中心人物のソロということで言えば、このくらいの時期だと桑田佳祐にせよTUBEの前田亘輝にせよあったけど。ちょっと時代ずれるけど、同じ2人組でもゆずはそれぞれが音楽活動ソロでやって作品作るイメージあんまりわかないもんね。そう考えると、ユニコーンとかルナシーとかラルクみたいにメンバー全員がソロで作品作ってたみたいなケースの異常性が際立ちますな」


 

BEYOND THE LIGHT/To Be Continued

 

 
 


司会者「続いてはTo Be Continuedです」

 

レジー「通称トゥビコンね。それでどれくらいの人に伝わるのか」

 

司会者「1991年に結成、2000年に活動休止しました。ボーカルだった岡田浩暉は今でも俳優として活動しています」

 

レジー「このアルバムは彼らの最大のヒット曲「君だけを見ていた」を収録しています。9枚目のシングルということで結構下積みあったんだね。しかしこれが50万枚売れてるわけですごい時代だ」

 

司会者「ドラマ「もしも願いが叶うなら」の挿入歌だったんですよね」

 

レジー「あの時の中山美穂可愛かった記憶がある。ダウンタウンの浜ちゃん、フライングキッズの浜崎貴司と3兄弟役だったんだよね岡田さんは。初の俳優仕事だったみたいなんだけど、ミュージシャン役でした」

 

司会者「ドラマの中でガンガン歌ってましたよね」

 

レジー「歌と俳優両方やる人はたくさんいるけど、デビュー作にミュージシャン役で出て、3か月間の間歌ってるシーンが何度もテレビで流れるって結構えげつないプロモーションの仕方だよね。そりゃ売れるわっていう。で、この「君だけを見ていた」は最近でもありそうなJ-POP的バラードなんですが、アルバム全体の音の感じはシングライクトーキング的なAOR感があったりもします。3人組だし編成も意識してたりするんだろうか。この前リアルサウンドにも書いたんだけど、今流行っているとされる「シティ・ポップ」的な音って、シングライクトーキングなんかとリンクする部分が大きいと思うんだよね。で、トゥビコンは何気にそのラインに乗っているように思いました。あとこのアルバムに入ってる別のシングル「逃げたりしない」とか今時っぽい」

 


 

司会者「このイントロ、今のアイドルの曲でやったらみんな興奮しちゃいそうな感じですね」

 

レジー「2014年の夏にCDジャーナル誌上で「あたらしいシティ・ポップ おかわり」って対談を松永良平さんとやったときに「今のシティ・ポップというムーブメントはブックオフで買える90年代のジャンクCDとつながっている」っていう話があったんだけど、あれから1年半以上経ってその状況はますます加速してるなあという感じはする。あとこのグループのメンバーだった佐藤鷹さんは、コスミック・インベンションというグループに昔所属していたようで。当時は佐藤克己名義」

 


 

司会者「「YMOジュニア」なんて呼ばれていたそうです」

 

レジー「恥ずかしながら全然知らなかった。YMOの武道館公演の前座もやったとのこと。で、このコスミック・インベンションって、AKB48の代表曲でお馴染みの井上ヨシマサさんがいたんだね。この動画だと豊武能征と名乗っている」

 

司会者「リアルサウンドにもインタビューが載っています

 

レジー「またこの企画が期せずして今の時代とつながってしまった。井上さんは小泉今日子への曲提供で作曲家デビューしてるということも今回知りました。AKB48における井上ヨシマサの存在というのも、いろんな音楽・芸能の歴史の集積によってこのグループが形成されているということの一つの証左ですね」

 
 

LOVE IS A MELODY D&D memorial 1st〜』/D&D

 



 

司会者「ラストはD&Dです。3人組の女性パフォーマンスグループで、96年にデビューして99年に活動休止。この手の編成のグループを取り上げるのは今回が初めてですね」

 

レジー「まずはとりあえず冒頭に貼った動画を見ていただきたいです。テンションの高さがすごい。もはやちょっと圧迫感がある。これヘイヘイヘイかな」

 

司会者「メインで歌っているオリビア迫力ありますね」

 

レジー「90年代の勢いを感じる。この曲の作曲は庄野賢一。SMAPHey Hey おおきに毎度あり」の作曲者です。マルチマックスに続いてまたSMAPとのつながりが出てきてしまった」

 

司会者「この話は以前トーフさんがツイッターでしてました」
 

 

レジー「トーフさんはこのあたりいろいろ追ってそうだなー

 

司会者「この人たちは沖縄アクターズスクールの出身、かつライジングプロダクションということでこの当時バカ売れしていた安室ちゃんやSPEEDと直接つながっている感じですね」

 

レジー「うん。でもさすがにそれだけ近い系統の人がガンガン売れてる時にちょっとしんどかったような気がするな。3匹目のどじょうを狙ったものの、さすがにもう席はなかったという。この構造は当初の企画のコンセプトでもあった「ポストミスチル」の話とも重なるかもね。似たようなことやったら売れるかと思いきや、結果的には本家との差が強調されるだけだったわけで。あと今回D&Dを取り上げた意味合いとして、この人たちは「若い女子が歌って踊る」というフォーマットをとっているけど当時は「アイドル」という呼称もしくは括りではなかったというところね」

 

司会者「このあたりの話は前回のエントリーでもしました。90年代半ばのJ-POPにおいて、「アイドル」という概念はほぼ存在しなかったと」

 

レジー「この前はSPEEDをひとつの例として話を進めたけど、もちろんこの人らもその流れにあてはまります」

 

司会者「このネタなかなかしつこくやりますね」

 

レジー「いや、ほんとこの部分はすごく気になっているところで。これだけ90年代ブーム的な様相を呈しているからこそ、メガヒット時代の「アイドル」的な体裁をとっていた人たちと昨今のグループアイドルの「つながり」と「断絶」のそれぞれについて改めて整理しないといけないなと個人的には強く思っています。たとえばD&Dが醸し出しているハイテンション感と最近のアイドルの共通項を見出すことも可能ではあると思うけど、そもそも当時と今では根本的な思想や背景が違うのは正しく理解したいですよね、っていう。ちょっと広げると、ここ最近、というかたぶん数か月単位の話のような気がするけど、「シティ・ポップ」とか「渋谷系再評価」みたいな話が一気に広がりを見せてますよね。で、その言葉がかつて持っていた意味とか、あとはそれが孕む曖昧さや危うさがちゃんと腑分けされないままバズワードになっちゃったからカオス状態に陥っているんだと思うんですよ。本来権威を持っているとされている人たちが雑な使い方をオーソライズしている側面も結構あるし。その辺についてはだいぶメディアごとの理解度の差が出てきてる印象はあります。「シティ・ポップ」というタグについては3年前くらいは自分も適当に使い散らしていた印象があり、そのうち自分でも何を示しているのか曖昧だなという感触を持つようになって、迂闊には使わないようにはしつつもさっき紹介したCDジャーナルやらリアルサウンドの記事、あとこの前MUSICAに書いた王舟『PICTURE』のレビューやらで自分なりに定義とか解釈をしようとトライしてはみてるものの、正直このカオス状態はもはや手遅れのような気がしていて。おそらく10年代の「アイドル」という現象についてももうまもなく一旦総括するような動きが出てくると思うんだけど、これについては「シティ・ポップ」みたいなわけわかんないことにならないといいなあと思っています。ちょっと企画そのものの趣旨から逸れたかな。まあいいか、最初に書いた通りこの企画には90年代を再解釈するという新しい意味付けが加わったので」

 

司会者「わかりました。では最後まとめていただけますと」

 

レジー「とりあえず現在進行形の「ライジングプロダクションのアイドル」という原宿駅前ステージ申し込んでみたら当たったので今度見に行ってきます。いずれはそんな話もまた。今回はそんな感じで。次回はまだわかんないけどインタビュー話もいくつか仕込んでいるのでそのうち」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」