レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

シーンあれこれ

odol リリースインタビュー 『視線』で見せた新境地を語る

司会者「少し間が空きました」

レジー「いろいろ仕込んでまして。ほんとはりりぽんの話とかやりたいんだけど。とりあえず速報的にはMオンの記事に書いたのでそちらもぜひ」

司会者「記事内で触れた大場美奈さんにもご紹介いただきまして」

レジー「ありがとうございました。応援してます。で、今回なんですが、9月20日にEP『視線』をリリースするodolのミゾベさんと森山さんのインタビューをお送りします」


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司会者「このブログには3度目の登場となりますね」

荒々しくも美しいニューカマー、odolの裏側 (インタビュー前編)
荒々しくも美しいニューカマー、odolの裏側 (インタビュー後編)
odol『YEARS』リリースインタビュー:バラエティ豊かな新作に秘めた思いを語る

レジー「最初の作品から何かと絡ませていただいているのですが、今回の作品もまた大きく変わったように思います。『視線』の曲も何曲か配信されていますが、「GREEN」は鹿野さんのラジオでも取り上げられて話題になったみたいね」




司会者「これインパクトありますよね」

レジー「今までになかった怒りの発露。サウンド面でもオーソドックスなバンドサウンドからは離れているし、いろいろびっくりしました。ミゾベさんと森山さんにそのあたり含めて聞いてきていますのでどうぞ」


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音楽を聴く量が10倍くらいに増えた

---最初に『視線』の音源を聴かせていただいたときに、「これは問題作だ!」と思いまして・・・

ミゾベ、森山「(笑)」

---これまでと大きく変わった部分もあると思いますので、そのあたりもお聞きできれば。よろしくお願いします。

ミゾベ、森山「お願いします!」

---まずは少し遡って、前作『YEARS』をリリースしてからの反応や手応えなどについてお聞きしたいのですが。



森山「そうですね・・・うまい言い方が思いつかないんですけど、いい感じに届いたのかなとは思います。想定していたような形で受け取ってもらえたというか」

ミゾベ「(1stの)『odol』のときよりも僕らのことを知ってくれた人が多かったと思うので、それはうれしかったですね。ライブに来てくれる人が増えたり、地方でも少しずつ知ってもらえるようになったり」

---あと、バンドとしては新メンバーが加わって6人になるという大きな出来事もありましたね(注:2016年11月にDATSのメンバーとしても活動する早川知輝が加入)。変わったこと、変わらないこと、いろいろあったのではないかと推察しますがいかがでしょうか。

森山「他のバンドもやっている早川さんが後から入ってきてくれたことで、「違う人間が集まっているのがバンドなんだ」ということを意識するようになりました。元の5人は最初からodolのメンバーとしてやっているので、「それぞれが違う人間なんだ」みたいなことを改めて考えるようなきっかけがなかなかなかったんですよね。早川さんの存在が刺激になって、「バンドとは何か」みたいなことをより深く考えられるようになったのかなと」

---音楽的な部分でも変化はありましたか?
 
森山「手が増えたっていうのはもちろんあるんですけど、それ以上に「楽器やパートに対するこだわりは捨てるしかない」と思いましたね。例えば曲によっては「ギター2本もいらないな」となるときもあるし・・・メンバーがいるからといって必ずしも6つの楽器を入れる必要はないと考えるようになったので、そういう意味では逆に発想が自由になったかもしれないです」

---今回の作品を聴かせていただいたときにこれまでのギターロック的なフォーマットからはかなり離れた作品になったなという印象を受けたんですが、今お話しいただいたような編成の変化が影響している部分が大きいんですか?

森山「うーん、どうだろうな・・・少しは関係あるかも、くらいですかね。そもそも「ギターロック」と意識してodolの音楽を作ったことはないんですけど、今回の楽曲のアレンジはギターまで含めて僕がやることもあったのでそっちの方が影響は大きいかもしれないです。もちろん最終的な演奏への落とし込みはメンバーと一緒にすり合わせながら行ったんですけど。最近はギターロック的な音で伝わる人が減っているような気がしていたので、そういう意識が曲にも出ているんじゃないかなと思います。もともとメンバーみんな「ギターロックをやりたくてodolをやっている」ってわけでもないから、とどまる必要もないのかなと」

ミゾベ「ギターの2人も、ギターへのこだわりよりも楽曲をどう良くするかってところに意識が向いていました」

---「ギターロック的な音で伝わる人が減っているのでは」とのことですが、何かそういうふうに思い至るきっかけがあったんでしょうか。

森山「具体的に何があったわけではないんですが、『YEARS』を作ってから音楽を聴く量が10倍くらいに増えたんですよね」

---10倍ですか。すごい。

森山「今までは自分が好きなものを深く聴くばかりだったんですけど、それだけじゃなくて売れているところから国内外問わずジャンルレスに聴くようになりました。Apple Musicが完全に生活に染み込みましたね。前はCDへのこだわりみたいなものもあったんですけど、そういうのも1ミリもなくなりました。『YEARS』のときに自分に蓄積されているものが足りないように感じたので、世の中を把握しながらいろいろ聴いてみようと思って。そういうインプット量の増加も今回のサウンドに影響していると思います」

ミゾベ「前回のインタビューでも森山が話していましたが、『YEARS』を作れたことには満足しているんですけど、できた後に「何か違うな」というような感触があったんですよね。『視線』を作るにあたってはその違和感が何なのかを探るところから始まっているので、メンバーそれぞれでもバンド全体でもいろいろな試行錯誤がありました」


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(『視線』ジャケット画像)


『YEARS』までの流れは一回バシッと途切れている

---『YEARS』への違和感というお話がありましたが、odolとしてはあの作品を経て今回どのようなものを作ろうと思ったんですか?

森山「『YEARS』には「モラトリアム」っていうテーマがあって、その時点での僕ら自身のことに目を向けて作っていたんですけど・・・モラトリアムを過ぎたら、自分たちのことばかりを歌い続けるわけにはいかないなと。学生の頃は日々楽しく過ごしていればよかったのが、卒業した後はひとりの社会人として責任を背負ったりするようになるし、それでストレスを感じたりしんどい気持ちになったりもしますよね。odolも今作でそういうステップに入ったというか。・・・『YEARS』の後バンドとしてどうするかはかなり話したよね」

ミゾベ「うん。音を出してる時間よりも話し合ってる時間の方が長かったです」

森山「そういう状況になって、音楽をやること自体が結構きつい時期もあったんですよね。でもまずはとにかく一曲作らないと、と思って作り始めたのが「私」です。最初の仮タイトルは「シンプル」だったんですけど、シンプルに音楽を楽しみたい、なんとなくいい感じの音楽を作ろう、という気持ちでした。そのわりには7拍子だったりストリングスが入っていたりと決してシンプルなものにはなっていないと思うんですが(笑)、odolとしてのひねくれ方みたいなのが出ているかなと思います」

---「私」のストリングスはかなり印象的でした。おしゃれな感じで好きです。

森山「ほんとですか!良かった」

---この曲は今作の中でも特にギターロック的な意匠からは遠いところにありますね。

森山「そうですね、「私」に関しては意識的にバンドっぽい音と距離をとった部分があるかもです。当時は聴いていて個人的にピンとくるバンドもあまりいなくて、ギターでコードを弾かれると拒絶しちゃうような感じだったので」

---なるほど。そう考えると、『YEARS』の頃とは明確にモードが変わっていますね。

森山「はい。『YEARS』までの流れは一回バシッと途切れていますね。再スタートの一曲目です」

---「私」は歌詞も面白いですね。今までになかった女性的な言葉遣いで。

ミゾベ「この曲は「自分だけど自分じゃない」みたいなことを歌いたくて・・・odolで歌うのは自分しかありえないけど、たとえばバイトをしているときとかって「別に自分である必要はないんじゃないか」みたいなことを思うんですよね。そういうもやっとした気持ちを歌おうとしたときに、一人称が「僕」とかだと「odolとしての自分がodolではないときの自分を歌う」みたいな矛盾が生じるような気がして、一人称が<私>の歌詞を書きました。違う人格に自分を投影した方が本音で歌えるというか。あとは軽やかな感じの曲だったので、それに合うようなノリの良い言葉を選ぼうとは考えていました」

---曲のおしゃれな雰囲気や女性的な言葉遣いとは裏腹に、「私」で歌われている内容は結構閉塞感がありますよね。美しさとかはかなさみたいなものが主題になることが多かった今までのodolの言葉とは少し雰囲気が違うように思いますが、これまでの『odol』や『YEARS』の時と比べてミゾベさんの中で歌いたいことって変わりましたか?

ミゾベ「うーん、どうだろうな・・・(しばし沈黙) 最初から「こういうことを歌いたくなった」というような話ではなくて、できあがったあとに6曲の歌詞を並べてみて「あ、こういう気持ちもあったんだな」ということを整理できたというか。自分の中の複雑な気持ちを言葉にすることによって他人に見えるものにする、その過程で思っていることや考えていることをひとつひとつ消化しながら歌詞にしていったんだと今振り返ると思います。あとは、僕自身大学を休学したりとか自分なりに悩んだうえで何かしらの選択をしたタイミングと『視線』を作っている時期が重なっているので、そういう部分での変化はあるのかなとも思いますね。物事が思い通りにいかないときに感じるやるせない気持ちとか、そういう感情は今まで以上に歌詞にこもっているかもしれないです」


「GREEN」は今自分が感じていることをちゃんと音楽にできた

---今お話しいただいたフラストレーションのような感情が一番表れているのがEPの冒頭に入っている「GREEN」なのかなと思います。音の質感にも言葉にも怒りに近い感情がダイレクトに出ているように思いました。

森山「そうですね、今おっしゃっていただいた「怒り」っていうのがこの曲の感情に一番近い言葉だと思います。モラトリアムを経て社会に目を向けたときにそういう気持ちが湧き上がってきてしまったので・・・基本的にはodolの作品に個人の主義主張みたいなものを入れたいとは思っていないんですけど、ひとりの人間として感じたことをそのまま音にすることが今は必要なんじゃないかなと。「GREEN」は今自分が感じていることをちゃんと音楽にできたと思うし、だからメンバーにも「これをリードトラックとして出すべきだ」というスタンスで聴いてもらいました。その時点でメロディもアレンジも9割がた完成していました」

ミゾベ「最初に聴いたときにこれは強い気持ちで歌わないといけないなっていうのはすごく感じました。だから生半可な状態で歌詞をつけちゃだめだなと思って・・・一日中机に向かっても一文字も出てこない、みたいな日もあったんですけど。どこかから持ってきた言葉じゃなくて、自分の根源から持ってこないといけないと思ってこの歌詞を書きました」

---言葉もそうですし、ボーカルそのものからも切実さやシリアスな感じが伝わってきます。キーの高さもそれに寄与していますね。

森山「メロディに関しては普段は使わない「ド」の音まで使っています。怒りとか切実さを伝えるには、歌詞の内容関係なくこの高さで叫んだ方がいいなと思って」

ミゾベ「最初聴いたときに「高くね?」ってなったんですけど(笑)」

森山「仮にちゃんと出なかったとしても「ド」の音を出そうとするミゾベの声の感じも想像できたんで、どうしても無理なら考えるけど基本はこれで行こうとなりました」

---サウンド面で言うと「私」と同じくストリングスが効果的ですね。「私」と違って、「GREEN」のストリングスはより切実さや深刻な雰囲気を増幅させる感じで。

森山「この曲の感情や強さに合う音を探して、デモを作るときにいろいろ試した結果チェロとバイオリンに辿り着きました」

---あとはドラムがかなり重要な役割を果たしているように思いました。この曲のドラムの感じを聴いたときに、最近のジャズとかネオソウルとかそういうトレンドの影響をちょっと感じたんですよね。先日WONKとも対バンされていましたが、そのあたりから触発されている部分もあるのかなと。

森山「そのシーンからの影響は大きいですね。明らかに盛り上がっているじゃないですか。ただ、サウンドそのものに影響されたというより、そのシーンにいる人たちがカッコ良く思えたから、そういうトレンドをポジティブに吸収しようというスタンスになれたというか。「いろいろな音楽を新しい感性で組み合わせて新しい音楽を作る」みたいなことを自分たちはやりたいんだなというのを改めて自覚しましたね」

---これ、ドラムの垣守さんはかなり大変だったじゃないかなと想像しますが・・・今までと求められることがだいぶ違うというか。

ミゾベ「むずそうやったよね」

森山「ニュアンスの出し方とかの細かいところで長い時間話し合いました。やっぱり僕がいいと言っても奏者には奏者の考え方があるので、そのあたりのすり合わせは大変でしたね。ただ、そういう往復を繰り返すことでより説得力のあるものになったんじゃないかなと思います」

---垣守さんはああいうタイプのドラミングの引き出しを以前からお持ちだったわけではないですよね。

森山「そうですね。日本のロックとかが彼のルーツのはずなので、新しいチャレンジだったと思います。ただ、今までのやり方にこだわるんじゃなくて、今回の楽曲にどうやって貢献していくかというのを楽しみながら考えていってくれたように思います。これはこの曲に限らずだし、他のメンバーについてもそうなんですが。そういうプロセスの中で、どの楽曲も最初に僕が想像していたものより良くなっていったなという実感はすごくあります」


バンドをやっているときだけは純粋の楽しめる

---最後に収録されている「虹の端」はギターが6本という変わった編成の曲ですね。

森山「はい。今回のEPの制作は「バンドってこういうものだよね」みたいな先入観をみんなで取っ払っていく過程でもあるんですけど、「メンバーの音だけじゃなくてストリングスが入っていてもいいんじゃないか」「メンバー全員が演奏しなくてもいいんじゃないか」という感じで「ギターだけの曲があってもいいんじゃないか」っていうアイデアも生まれました。「ギター6本でやる」、あと「サビはみんなで合唱する」というところを伝えたうえで聴いてもらったんですけど、合唱っていうのが先にあったから歌詞もミゾベの気持ちというよりは「みんながみんなを見ている」というような言葉になったのかなと」

ミゾベ「僕が歌詞を書くときはいつもAメロから書くんですけど、この曲はサビしかない状態がしばらく続いていたのでなかなか歌詞にとりかかれなかったんですよね。Aメロまで含めて完成したのがレコーディングの2日前とかで、その時点では歌詞が一文字もなかったんです。でも不思議と焦るような気持ちはなくて、いざ書き始めたら2時間くらいで一気に完成しました。メロディを聴いたときに「いい曲だから早く歌詞書きたいな」と自然と思えたし、すごく素直な気持ちが詰まっていると思います」

---何かこういう原風景があって、それを言葉で描写した感じなんですか?

ミゾベ「原風景・・・っていうのは?」

---たとえば小さいころの記憶とか、具体的にこういう光景のイメージがミゾベさんの中にあったのかなとか思ったんですけど。すごくビジュアルが浮かんでくる言葉なので。

ミゾベ「なるほど。そういうことではないんですけど・・・この曲も実際に6人で集まってギターでやってみたりとかしたんですけど、今回のEPを作るにあたってはほんとに長い時間を6人で過ごしたんですよね。毎日のように一緒にいて音楽やって、『YEARS』のあとにバンドの方向性を話し合ってた時は大変なこともあったけど、最終的には「このメンバーで音楽やるのっていいな」っていうポジティブな気持ちに100%なれたんです。この曲からはそういう感じが伝わるといいなと思っているんですけど」

森山「今ミゾベが言った「音楽」っていうのは「バンド」の方がニュアンスとしては近いかもしれないです」

ミゾベ「うん」

森山「ミゾベは小さいころから音楽をやっていたってタイプではなくてバンドから音楽に入っているから、音楽と言えばみんなで音を出すことなんですよね。だからそういう意味では、この歌詞はミゾベの原風景と言えるのかもしれないですね」

---『視線』全体としては「GREEN」に代表されるような不安や怒りみたいなものが大きなテーマとしてありつつ、最後は<不安な気持ちなんて飛んでいくよ>っていう前向きな強い言葉を歌う「虹の端」で終わるっていう構成はかっこいいですね。全体を通して感情の起伏の見える感じが。

森山「後半3曲は比較的ポジティブな曲になっているという認識なんですが、その最後を「虹の端」で締められたのは良かったと思っています」

ミゾベ「ポジティブになれて良かったよね、最後」

森山「(笑)」

ミゾベ「僕らは音楽の力を信じているからこそ音楽を作るし、誰とでもつながれるものだと思って昔から音楽をやっているので、全体として重ためのメッセージであったとしてもそういう印象が聴いている人の中に残ったらいいなと思います」

森山「うん。世間に目を向けたときにマイナスな感情になる時もありますけど、そうやって暮らしている中でもバンドやっている時だけは純粋に楽しめるし、ポジティブな気持ちになれるときってもはや僕らにはそこしかないから」

---「GREEN」から「虹の端」まですごくまとまった6曲だと思いますが、今回も『YEARS』のときと同じような「こうじゃないんだよ!」という気持ちはありますか?

森山「うーん、ないと言えば嘘になるんですけど・・・『YEARS』を作った後とはだいぶ違いますね。あのとき感じたことを1年かけて整理して、「バンドって何なんだろう」っていう問いへの現時点での僕らの6通りの答えが『視線』に入っている曲たちなので。『視線』っていうタイトルには「主観の世界」っていう意味もあって、「あくまでも僕たちの見えている世界はこうです」っていう投げかけをしているのが今回の作品でもあるんです。そういう作品が、今度はリスナーの方の視線に映った時にどういうことを感じてもらえるかがとても楽しみです」

ミゾベ「ほんとに楽しみですね。あとは、手段は何でもいいので今回の曲を聴いてどう思ったのかぜひ教えてほしいです。それが次の作品をつくる時の刺激になるので。すでにあるようなものを真似しても意味がないと思っているし、この先も聴いた人が新しい何かを感じ取ってもらえるようなものをodolとして作っていきたいと思います」


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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「なんとなくodolって世間の流れとかとは違うところで自分たちの美しさみたいなものを追求しているイメージだったんだけど、そういう人たちが違う世界に目を向けたことで表現のあり方がガラッと変わる感じがすごく面白かった。きっとこの先もいろんな刺激を受けてどんどん変わっていくんだろうね。改めてミゾベさん森山さんありがとうございました」

司会者「わかりました。次回は」

レジー「もう一つインタビュー企画が控えているのでそちらをお送りします」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

最近の関心事のアラカルト的なまとめ(クリープハイプからsora tob sakanaまで)

司会者「3月にPerfumeの企画をやり終えてから更新が止まりましたね。燃え尽きましたか」

 

レジー「まあいろいろあるんですよ。というかこれは現状の構造的課題なんですが、そもそもこのブログって「テーマを一つ定めてそれについて長尺で書く」っていうスタイルでずっとやってきてるんですよね。で、ここ2年くらい、それと全く同じことをリアルサウンドの「レジーのJ-POP鳥瞰図」でやってるわけです」

 

司会者「確かに2013年とかだったらブログで書いているであろうネタをリアルサウンドで扱ってますね」

 

レジー「そういう状況なので最近はブログではインタビューだったり連載だったり、企画色の強いエントリを書いているんですけど」

 

司会者「先日の一橋新聞のインタビューでも話していた内容です」

 

レジー「うん。で、それ系のやつはアップに至るまでにいろいろ仕込みに時間がかかるんだよね。noteにも書いたんだけど、今年の1Qはバタバタしててその辺を事前に仕込む余裕があんまりなかった。というわけで、今時点で控えている企画とかがない」

 

司会者「状況は分かったんですけど、結局どうしますか」

 

レジー「ちょっと考えたんですが、今回は今まで意外とやってなかったこととして、最近気になっているトピックをアラカルト的に取り上げる感じのエントリにしたいと思います。触れているテーマはこちら。興味のあるところだけ読んでいただいても」

 

・相変わらず「加齢」問題

・ロックバンド10年選手の逆襲

・僕たちは「平手アゲ」にどう対峙すべきか

・すごいぞsora tob sakana

・気になるニューカマー

 

 

相変わらず「加齢」問題

 

司会者「4月にリアルサウンドでSKY-HIw-inds.、三浦大知の作品の紹介、およびここまでのキャリアをジャニーズや女性アイドルと並べて論じた原稿がアップされました」

 

 





レジー「去年の年末にw-inds.の「We Don’t Need To Talk Anymore」のMVがアップされたあたりでガツンと盛り上がったよね。そこを皮切りに、今年に入ってこの3組のアルバムが立て続けにリリースされたと。個人的にはSMAPがいなくなったタイミングでこの辺の人たちがちゃんと見えてきている、っていうところにジャニーズ1強的な構造のほころびを感じたりする」

 

司会者「三浦大知はアルバム『HIT』のタイミングでメディアにたくさん出てましたね。テレビもそうですし、ウェブ記事もたくさんありました」

 

レジー「みんな褒めてて辟易だわ、みたいなツイートも早速見たよ。こういうのが出るってことはかなり広いゾーンに届いている証拠かと」

 

司会者「今回の記事は「若くしてアイドル的に受容された人たちがどうやってキャリアを重ねていくのか?」というテーマが主題になっていますね。で、この3組はある種のモデルケース的なものになり得ると」

 

レジー「去年ヤフトピになった女性アイドルのキャリアに関する記事の男性版という感じですね。あとその直前にあげた松田聖子に関する記事でも、似たようなテーマを扱っています。自分のライフステージが変わってるからという部分が一番大きいとは思うんだけど、「人前に立つ人たちが年を重ねながら活動していくというのはどういうことか?」って問いには今とても関心がある。最近ぱるるのことがグループ在籍時よりも好きで追っかけてるんだけど、これももしかしたらここで言う問題意識にリンクしているところがあるから興味を持っているのかも」

 

司会者「ロックバンドも活動20年目で初武道館!みたいなケースもいろいろ出てきてますしね」

 

レジー「うん。この辺考えていくと、超大ヒットがなくても継続的に活動するってありえるのか?っていう産業全体の話にもつながってくるし、あとは逆に若い層の芽を摘んでいるのでは?なんていう視点も出てくるかも。ここは継続的に考えていきたいですね」

 

 

ロックバンド10年選手の逆襲

 

司会者「バンドの話がありましたが、最近は一時よりも日本のバンドをまた聴いている感じがありますね」

 

レジー「なんか「どれも同じでほんとに退屈でやばい」みたいな状況を自分の中で抜けた印象がある。四つ打ちだなんだって話が行ききったのかな。そういうムードを横目に見つつも、もっとオリジナリティあることをやろうとしている人たちがどの世代にも出てきている感じ。それで言うとクリープハイプの「イト」は素晴らしいですね」

 

 

司会者「映画「帝一の國」の主題歌です」

 

レジー「これ、MUSICAで「「恋」や「前前前世」になれるのでは?」って書いたんだけど、そういうポテンシャルがある曲だと思うんだよなあ。「四つ打ち全盛以降」でもあり、「星野源以降」でもあるバンドサウンド。クリープハイプはここ最近明らかにソウルとかR&B風のアプローチが増えてて面白かったんだけど、それがこうやってポップに弾ける形に帰結するとは思ってなかった。レーベル移籍のいろいろを含めて停滞していたバンドの復活、みたいな側面もあるようなんですけど、そういうの抜きにしても楽しめる1曲かと。あと同じ流れで触れたいのがベボベの新しいアルバムのリードトラックになってる「すべては君のせいで」も最高よね」

 


 

司会者「本田翼が」

 

レジー「本田翼が。いや、それもそうなんだけど、この曲ほんと超かっこいいでしょ。これも3人になって・・・みたいな重要な背景があるわけだけど、それより何よりいわゆる「ギターロック」がこれだけ飽和した感じになっている中でまだまだ瑞々しいことがやれるって一発で提示しててすごい。やっぱりバックグラウンドにある音楽とか表現全般に対する知識って重要なんだろうか。なんとなく「イト」と「すべては君のせいで」がこのタイミングで続けて出たっていうのは最近のメインストリームのロックについて一つの転換点になるような気がします。星野源がポップフィールドの楽曲に対して一つの基準を作ったのと同じような位置づけになっておかしくないはずなんだけど、どっちの曲も」

 

 

われわれは「平手アゲ」にどう対峙すべきか

 

司会者「季節的にもうすぐAKB48の総選挙ですね」

 

レジー「今年は上の方の人ほんとに出ないし、だいぶ楽しみ方が変わりそうな感じですね。このタイミングでフジテレビの中継やめてほしいな。ネットで有料配信とかにして、変な解説とかなくひたすらステージの映像だけ映しといてほしいわ。ただ、もういずれにせよ大した話題にはならないよねこのイベントは。今はすっかり覇権が46に移ったわけで。最初乃木坂46が「AKB48の公式ライバル」とかって出てきたときにはみんな「何言ってんだこいつ」って感じだったのに、今ではAKBのメンバーがすっかり46を意識しちゃってるわけで、なんだかんだで秋元康すごいなと思うよ。46の曲もダサくなってる感じなのが気になるけど」

 

司会者「欅坂46の「不協和音」はいろいろな意味で話題になりました」

 

 

レジー「絶賛する向きもあるよね。もう僕ほんとに無理で、あの謎のシンセにまったく意味を見いだせないし、今こういうことをやるのが耐えられないというか」

 


 

司会者「このタイミングでロッキングオンジャパンにも平手さんが初登場しました」

 

レジー「「曲は作ってないけど時代の必然!つまりロック!」ロジックの発動ね。ここについては落ち着いたらちゃんとやりたいと思って少し資料を集めてるんですが、たとえば昔浜崎あゆみや宇多田ヒカルがJAPAN誌に初めて出たとき、「この人たちは弊誌が取り扱って然るべき精神性を兼ね備えた存在である!」みたいな話って意外としてないんだよね。Perfumeのときもそう。それが最近だと今回の平手さんだったり、あと去年いきものがかりが出たときも「逆にロック」というような話を殊更にしていると。何て言うのかな、「世間が思うロッキングオンジャパンのイメージ」みたいなものに自ら突っ込んでいっている感じ。情熱大陸なんかも典型的なんだけど、フォーマットを発明した人たちはどこかのタイミングで必ずそうなる」

 

司会者「JAPAN誌に限らず欅坂に関しては「平手さんとその仲間たち」みたいな見え方がずいぶん強調されますね。NHKの「SONGS」も完全にそうでしたし」

 

レジー「そもそも「サイレントマジョリティー」のときからそうだったし狙い通りってことではあるんだろうけどね。アマゾンプライムに「誰が徳山大五郎を殺したか」があるので遅ればせながら見始めててまだ序盤なんだけど、あれの平手さんのポジションもすごいよね。欅坂はとても好きですが、あのプロジェクトは「秋元康のいまだ解消されないサブカルコンプレックス×坂道チームのクリエイティビティ=うるさ型も大満足」みたいなフレームが随所に見え隠れするのでその辺はちょっと苦手です。それやるには平手さんが「時代のカリスマ」みたいになった方が都合いいだろうから今みたいな構造になってるんだろうけど」

 

司会者「実際アイドルと縁のなさそうな音楽評論の人たちがいろいろ書いていますよね」

 

レジー「AKBが広がった時には社会学系の人たちがわんさか入ってきて、欅坂がブレイクした時には音楽系の人たちがわんさか入ってきてると。個人的には是々非々でいきたいと思ってます。2016年の欅坂は最高だったけど、正直「不協和音」で不安になった。この先も面白いものちゃんと出てくるかな」

 

 

すごいぞsora tob sakana

 

司会者「アイドル絡みで言うと先日sora tob sakanaのバンドセットのライブを見ましたね」

 

レジー「いやーすんごかったよ。よく参照させていただいているこちらのブログに「「いいライブ」じゃなくて「すげえライブ」でした」と書いてあったけどまさに。緻密に折り重なった音が爆音で鳴っている中で少女4人が必死に歌う絵面、あの神々しさは何だったんだろう。「広告の街」かっこよかったなあ。なぜかバンド演奏の動画貼れないのでこちらから見てください

 


 



司会者「リキッドルームがソールドアウトでした」

 

レジー「雰囲気的に、普段から現場を追っているって人は半分くらいかな?ちょっとぶれありそうだけど、いずれにせよ自分も含めて「あの音楽をバンドでやるならぜひ見てみたい」って感じで集まった人たちが結構な数いたと思われる」

 

司会者「楽曲派の残党」

 

レジー「最近ここにきてなぜか「楽曲派とは?」みたいな記事2つくらい見たけどなんなんだろうね。まあそれは置いておくとして、このライブ見て「ちゃんとクリエイティブにお金と手間をかければまだまだアイドルはいろんなことができる」って思いました。まあただあれを毎回やるわけにもいかないんだろうし、「オケをバックにやる普段のライブとかも含めて活動を回していきながら肝のライブで凝ったことをやる」ってほんと大変だよね。そうやって自転車操業的になっていく人たちがほとんどなんだろうし。だからこそあのリキッドのライブは価値があるものだったと思う。神崎風花ちゃん超かわいかったのでまた見に行きたいな。しかしステージから降りたときの写真がツイッターに流れてきてたけど、おじさんがかわいいとか言うのが憚られるくらい子供でびっくりした。やはりステージ上だとマジックがかかりますね」

 

 

 

気になるニューカマー×3

 

司会者「ここまで4つのテーマについて書いてきましたが」

 

レジー「平手さん周辺の話は追って掘り下げると思います。他のテーマももしかしたらそのうち。最後に最近知った人たちの音源を紹介して終わろうかと。まずこれ」

 

 

 


司会者「福岡のバンド、COLTECOです」

 

レジー「確かApple Musicで薦められたんだけど、最高に気持ちいいです。最近のトレンドよりも少し無機質な感じに振ってるのが面白いと思いました。次に先日タワレコで盤を買ったこの人たち」

 

 

 

司会者「yaoyorosという東京のバンドです」

 

レジー「6月にミニアルバムが出るそうなのでそちらも楽しみ。なんか『MUGEN』あたりのサニーデイに通じる浮遊感とかやるせない感じがドキドキする。最後にサンクラで聴いたこちら」 

 



司会者「宮崎のsayonarablueというバンドです」

 

レジー「これ超いいよね。HOLIDAY! RECORDSのツイートで知ったんだけど、だんだん盛り上がっていく感じとか「それ待ってました!」みたいに気持ちいいツボを順番についていってくれるような楽しさがある。早く他の曲も聴いてみたいです。というわけで、今回はバラバラといろんな話題について書きましたがこのあたりで」

 

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

 

レジー「仕込み時間が取れたらその平手さんとJAPAN問題についてやるかも。予定は未定で」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

SKY-HI ロングインタビュー:新作『OLIVE』について、そして表現者としての覚悟について語る

司会者「予告通りインタビュー企画ということで」

レジー「はい。今回はアルバム『OLIVE』をリリースしたばかりのSKY-HIへのロングインタビューをお届けします」


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司会者「『OLIVE』、評判ですね」

レジー「今回はその『OLIVE』について、あとはそこから派生して制作や表現についての考え方などについてもいろいろ伺ってきました。やはり信念を持っている人の言葉は強いし引き込まれるなあ、と感じっぱなしのインタビューとなりました。まずは読んでみてください。それではどうぞ」


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2016
年、ロックインジャパンでの「リベンジ」

 

---僕が初めてSKY-HIのライブを見させていただいたのが2013年、ロックインジャパンのDJ BOOTHだったんですけど。

 

「あのときですか!あの少ない数の中にいらっしゃったわけですね(笑)」

 

---ちょうどあの頃にSKY-HIという存在、「AAAの人がこんなことやってるんだ」というのを知って見に行きました。で、日高さんのブログとかを見させていただくと、あの時のステージがご自身にとってかなりトラウマというか、わりと苦戦したという印象を持たれているようなんですが・・・

 

「あの・・・記念すべき一日でした(笑)」

 

---(笑)。あのライブがしんどかった記憶は全くないんですが、日高さんご自身はどう感じたんですか?

 

「ライブそのものに関して、純粋に見ていただいた方に「よくなかった」と言われるようなパフォーマンスでは全然なかったと思います。「MCで舞い上がってしまった」みたいなこともなかったし。ただ、ライブが始まる前に待っていてくれた人が極端に少なかったのは・・・悔しかったというよりは、現実を知ったというか」

 

---なるほど。

 

「あの頃はトーフビーツとの作品があったり(注:トーフビーツの2013年のアルバム『lost decade』に収録の「Fresh Salad feat.SKY-HI」)、イトーヨーカドーのCMに出たり(注:2012年のCM「イトーヨーカドー ネットでチェック」。古坂大魔王、dream5の重本ことりと共演)とトピックがあったので、そういうところから興味を持って見に来てくれた人たちをどうやってロックするかっていうゲームプランを考えていました。ただ、あのフェスのお客さんにはそういう人がほとんどいなかったようで、そのプラン通りにはやれなかった。当時は自分に対するムーブメントみたいなものも感じてはいたんですが、それも今思えばヒップホップ畑が9割で、ああいう場所まで届いていなかったいうか・・・これってたぶんSNSをやっているアーティストが陥りがちな話で、「俺はそうじゃない、そいつらとは違う」と思っていたけど実は自分もそこに陥っていたのかもしれない。「自分はまだまだだ」と思っていたところに、「具体的にどのくらいまだまだか」を見せつけられてしまったという感じでした」

 

---そこから3年経った2016年のロックインジャパンで、そのときのリベンジを果たしたと。

 

「そうですね、とりあえずその時の借りは返したかなと・・・(笑)」

 

---パフォーマンス中から手応えはあったんですか?

 

「そのときは感じられました。向こう側から走ってきてくれる人もいたし、ステージを見づらいところにも人がたくさん入ってくれていたし。それでも入場規制がかかったわけじゃないから、まだまだ頑張らないといけないんだけど・・・ジャパン的には「抜擢」という形での出演だったと思うので、その結果ガラガラの惨敗みたいなことになったら自分以外の人の顔にも泥を塗ってしまうという怖さもあったんですが、実はあの日は正直それどころではなくて(笑)。4月にのどの手術をして、その直後に仕事で海外に行ったんですけど、そこが乾燥している地域だったり飛行機での長距離移動があったりして「こういうことをしてこの後歌えるのかな」って精神的に不安になっちゃったんですよね。そこからジストニアみたいになってしまい、話しているときは普通なんだけどいざ歌おうとすると声が裏返ってしまうというような状況が夏まで続いていたんですよ。ジャパンの前日もまだそういう感じだったので、「やばい、これはもう無理かもしれない」と。「3年かけてやっとリベンジの機会をもらったのに、これで明日ダメダメだったらどうする?」って話をスタッフにもしたんですが、そうしたらそれに対して「もしそうなったらまた3年かけてやり直すしかないね」と言われたんですよね。それを聞いて、「あ、そうか。じゃあそれでいいや」って」

 

---ふとしたことで開き直れたと。

 

「はい。そういう気持ちになれたからか、マイクチェックのときから「あれ、わりかし声が出るぞ」となって、本番でも問題なくやれたんですよね。だからあの日は「ジャパンのステージにもう一回立てた」「そこでたくさんのお客さんに見てもらえた」ということ以上に、「声が出た!まともにやれた!」っていう喜びがすごくあって。それに加えて、声が裏返りまくるライブをやっていたのも知っているダンサーたちが同じように一緒にいて戦ってくれている、そういうシチュエーションにも幸せを感じていたり」

 

---なるほど、ご自身の複数の文脈がきれいにリンクしたのがあの日のステージだったんですね。

 

「でした。だから、自分の歴史、「俺史」の中では・・・(笑)」

 

---(笑)。

 

「俺史では結構大切な場面だったと思います」

 

 

SKY-HIのステージのバックボーン

 

---昨年末のライブを2度ほど見させていただいたときに思ったのですが(注:クリープハイプとの対バン@豊洲PITCOUNTDOWN JAPAN)、今のSKY-HIのライブは歌があって、踊りがあって、バンドとダンサーもいて、さらに自分で楽器も弾いて、もちろんラップもあって、とかなりたくさんの要素が盛り込まれていますよね。ああいうスタイルはどうやって生まれたんでしょうか。

 

「大前提として、自分のライブは「至高のエンターテイメント」であり「究極のコミュニケーション」でありたいと思っています。「来てくれたお客さんにそういうものを提示するために」、つまりは「お客さんを満足させるために」って考えていく中でライブのやり方は常に変わっていっているんですけど・・・新しいことを取り入れていくというよりは、自分のDNAとして存在しているものを出していくって感じですかね。逆に言うと、自分のDNAにないものはやらない」

 

---DNAですか。

 

「そう。自分が中学生の時にドラムを始めてバンドやるようになったこととか、ヒップホップ好きになってそこからジャズもソウルもファンクも好きになったこととか、そういうのが結果的に自分にとっての武器になって、それをライブで出していっているって言えばいいのかな。俺、AAAの最初の5年とかって、もらったお金を全部CDやアナログにつぎ込んじゃってたからほんとに貧乏だったんですよね(笑)。でもそのときそうやって聴いてたものが今の自分を作っている部分はあると思います」

 

---なるほど。たとえば海外のアクトとかから刺激を受けたりとか、そういうのはあるんでしょうか。

 

「うーん、(ジャスティン・)ティンバーレイクとかディアンジェロとかにはかなりやられましたけどね。ただそれは単に楽しかったってだけじゃなくて、彼らの音楽的バックボーンと自分のDNAがシンクロしたからこそ魅力的に感じたって部分も大きいのかな。あと自分にとっては、音楽を好きになるのって人との出会いとセットだったりするんですよね。俺の音楽の師匠みたいな人って2人いるんですけど、1人が中学生の時最初にドラムを教わった人で。いきなり俺の前でドラムの教則本を破り捨てたんですよ(笑)。「こんなもんやっててもうまくならない」って言って、ポリスのドラム譜をくれて。そこからストーンズやって、ドゥービーブラザーズやって・・・そういう中で音楽をすごく好きになって、近所のTSUTAYAの「名盤」ってコーナーにあるCDを片っ端から借りてきて、ライナーノーツまでがっつり読み込んだりしてました。もう1人が189歳のころに知り合ったFM YOKOHAMAのディレクターの方なんですけど、この人もまたちょっとネジの外れた人で(笑)、会うたびにCD200枚くらいくれるんですよ」

 

---すごいですね(笑)。

 

「トライブ(ア・トライブ・コールド・クエスト)が好きって言ったら、周辺のネイティブタン関連の音源をくれて、そこまでは俺もわかるんですけど、さらにそのネタもの、同時期にやってた人っていう感じで・・・「僕の持ってる財産をあげるよ!」とかって言って。もちろん他にもいろんなところから影響を受けてるんだけど、直接的な意味での恩師はこの2人ですね。今は全然会ってないんですけど」

 

---ご自身の中で血肉されているものでライブが構成されていると。

 

「うん。だからいろいろやっているけど器用貧乏みたいな感じにならないんだと思いますよ。・・・そもそもあんま器用じゃない、ってことかもしれないけど(笑)」

 

 

OLIVE』で自分と向き合い、嫌いな自分を肯定する

 

---日高さんの音楽的なバックグラウンドとして様々なジャンルの音楽があることは、『OLIVE』を聴かせていただいてもよくわかります。アグレッシブな曲からメロウな曲、R&Bからロックチューンまでかなりバラエティに富んだ楽曲が収録されていますが、アルバム作りに関しては先ほどまでお話しいただいたようなご自身のルーツを自由に発露させた結果として作品ができていくのでしょうか?それとも事前に設計図みたいなものがあるんですか?

 

「あ、そこに関しては完全に設計図です。アルバムを出した後のシングルから次のアルバムの設計図を作り始めるんですけど・・・今回で言うと、「クロノグラフ」を出す段階では今度のアルバムは大きな意味での「別れ」みたいなものを内包する作品にしたいなと思っていました。「クロノグラフ」のことは「別れを愛する曲」と自分では位置づけていて、この考え方は『OLIVE』が持っている「I LOVE」の精神につながっていったと言えるんですけど、決定的に『OLIVE』の方向性が固まったのは次のシングルの「ナナイロホリデー」ですね。あの曲を作っていく過程で、のどの手術なんかもあって「人生半端じゃねーくらい大変だ・・・まじ面倒くせえ・・・」みたいなことを感じつつも(笑)、バンドのみんなやダンサーのみんなと音楽を共有してそれをたくさんの人に手渡すことのできている今は夢の中よりも喜びに溢れているじゃないかって思ったんですよね。その感覚が自分の中に結構しっくりきたので、次のアルバムは「ナナイロホリデー」で終わる、「現実は夢の中なんかより喜びに溢れている」というメッセージで終わるってことが確定しました。で、じゃあそこに到達するまでの「人生めんどくせえ・・・」をどうやってアルバムの中で展開させていこうかな、というところから映画の脚本を書く感じで必要な楽曲を作っていきました。基本的にはアルバムはいつもこういうプロセスを踏んで制作しています。だから俺のアルバムの作り方は「こういう曲を録ろう」っていうよりは「アルバムの6曲目、こういうシーンに該当する曲を録ろう」「その6曲目に続く7曲目を録ろう」みたいな形で進みます」

 

---なるほど。はっきりした青写真が最初にあって、それに基づいてアルバムを組み立てていくと。

 

「はい。ただ、今回は作っている途中で「『タイタニック』で言うところの2人が船上で手を取り合うシーンがないな」と気づいて。つまりリードトラックがないな、ということになって、それで「アドベンチャー」を追加しました。で、それに合わせて「BIGPARADE」の聴こえ方を少し調整したかな。そのくらいですね、最初のイメージから変わったのは」

 

 

---「曲の寄せ集め」ではなくて、明確なコンセプトアルバムになっていることをとても大事にされているわけですね。

 

「今の時代のアルバムってそうじゃないといけない、とは思ってますね。ダウンロード販売にせよストリーミングにせよ「アルバムの単曲のみ」で聴くことがどんどん簡単になっているわけで、「アルバム」というパッケージを聴かせる以上は小説とか映画とかと同じレベルのものを作る責任があるのかなと。映画なら特定のチャプターだけ売るなんてことはないだろうし、小説だって一部の段落だけ売るとかありえないですよね。アルバムも本来はそういうものだと思うから。たまに中学生や高校生のファンの子に「こんなにちゃんと流れのあるアルバムを初めて聴きました!」みたいに言われることがあって、それはすごく嬉しいんだけど、俺にとってはそれが当たり前のことというか。シングルを集めただけ、というようなアルバムには価値を感じないですね」

 

---「流れ」という話だと、個人的には冒頭の3曲の流れがスカッとするなあと思いました。<君が泣いた世界を壊しに来た>という力強いメッセージとは裏腹にメロウで切ない「リインカーネーション」、<全隊進め!>というような進軍ラッパ的な「BIGPARADE」と来て、世の中に対して一発かましてやるという感じの「Double Down」につながると。2016年の活動について日高さんは「今まで自分を無視し続けてきた音楽シーンが少し手のひらを返した1年」なんておっしゃってましたが・・・

 

「(笑)。はい」

 

---そうやって「何かを戦って勝ち取った」みたいなご自身の気持ちがこの冒頭の流れにこめられていたりするんでしょうか。

 

「えーと、「Double Down」単体ではまさにそういう話とリンクしているんですけど、『OLIVE』の中の位置づけで言うと、その3曲は俺とリスナー、あとはリスナーとリスナー自身、俺と俺自身の出会いの導入って感じですかね。映画とかの山場が終盤に来るのと同じで、『OLIVE』のクライマックスはやっぱり「創始創愛」「Over the Moon」から「クロノグラフ」「ナナイロホリデー」って続くラストの流れだと思っていて。で、「創始創愛」では<僕が愛した君が愛した僕を愛してみるよ>とかって言っているんですけど、本当の意味で自分を愛することって決して簡単なことではないと思うんですよ。そこに到達するには、まずちゃんと自分に向き合わないといけない。そのために必要だったのがアルバムの最初の方の楽曲ですね。だから<君に会いに来た>(「リインカーネーション」)とか<さぁ始めようか>(「Double Down」)とかって言葉は、もちろん俺がリスナーに対して語りかけている言葉ではあるんですけど、一方では「自分の中の自分に会いに来た」みたいな意味だったり自分自身を鼓舞するような意味合いも大きかったりします」

 

 

---なるほど。それで言うと、冒頭3曲に続く「Stray Cat」の<孤独もちゃんと向き合えばいつの間にか相棒になった>もまさに「自分と向き合う」という話とつながってきますね。この<孤独>という言葉とも関連するんですが、僕が今回気になったのが<パレード>というワードです。「BIGPARADE」も含めていくつかの曲で使われる<パレード>ですが、パレードって一人でするものではないですよね。孤独と向き合う、自分と向き合うみたいな話がある一方で、必ず誰かが横にいるであろうパレードという行為がフォーカスされていることに何か意味はあるんでしょうか。

 

「あ、それはね、2つあります。1つ目はもちろん俺自身がみんなを先導して、「不良でも優等生でも、殺人犯でも牧師さんでも、俺のリスナーであることには変わりないから、俺に割いてくれた時間に対して責任を持つよ」というような話。そういう俺の器のデカさを示しつつ・・・(笑)」

 

---(笑)。それは想像できました。

 

「で、もう1つは、「いろんな自分を全部連れていこう」って話ですね。たとえば親としての自分がいれば社会人としての自分がいたり、マイナス思考の自分がいれば意外とあっけらかんとしている自分がいたり、いろんな自分がいるじゃないですか。で、やっぱりあんまり好きじゃない、出したくない自分ってのもありますよね。でも・・・その特定の自分だけ認められない、どこかに置いていきたいとかって、その自分がかわいそうじゃないですか」

 

---ああ、なるほど。そういう人格も含めて自分なんだ、と。

 

「そうです。だから<パレード>にはそういう自分も連れていくよ、って意味も含まれています。結局「自分と向き合う」というのと同じ意味合いになりますね。嫌いな自分も含めて救ってあげるのは大変だけど、それをちゃんとやりたかった」

 

 

宗教、覚悟、反骨精神

 

---「現実は夢の中より素晴らしい」とか「嫌いな自分も含めて救ってあげる」とか、ちょっと宗教に通ずるような強さを感じますね。

 

「最近それ、よく言っていただくんですよね・・・(笑)。いや、全然嬉しいんですけど」

 

---という話とも関係するんですけど、MUSICAで日高さんが2016年のベストアルバムを挙げられていたじゃないですか(※下記参照)。ここで挙がっている海外の作品の多くが、ゴスペル的な世界観を持っていますよね。

 

MUSICA 20171月号より

1 『カタルシス』/SKY-HI

2 Malibu/Anderson .Paak

3 The Life Of Pablo/Kanye West

4 Coloring Book/Chance The Rapper

5 In My Mind/BJ the Cicago Kid

同率5 24K Magic/Bruno Mars

 

「あ、そうですね。確かに」

 

---ゴスペルって、虐げられている人たちが声を上げて、歌っている間は自身の生を肯定するというような機能がかつてはあったと思うんですけど、この辺の作品を踏まえたうえで改めて『OLIVE』について考えると、ここに名前が挙がっているような作品の精神性、モードみたいなものともすごくリンクしているのかなという感じがしました。

 

「そうだと思います。ソウルやゴスペルの精神みたいなのに寄った感覚は少なからずありました。ただ、そうなったのは単にUSの音楽のモードがそうだから、そしてその手の音楽が好きだからっていうだけではなくて、そういう考え方が今現在最も必要なものに感じられたからですね。『カタルシス』を出した時には<愛の無い時代>って直接言えていたんですけど、もはや今はそんなことすら言っている場合ではなくなってきてるというか・・・(笑)。自分を肯定する、そして他者も肯定するっていうのはとても大変で、だけどますます大事なことになっていると思う。そういう時代のあり方と向き合えば、勝手にゴスペル然とした作品が結果として生まれてくるんじゃないかな。それは俺が選んだ作品もそうだし、『OLIVE』もそう。そういう意味では、『カタルシス』を<“愛の無い時代” いや目に見えないからこそ探して生きるのさ>で終えられたのは自分にとってはとても大きかったですね。あそこから『OLIVE』までがつながってる」

 

---なるほど。自分自身を肯定し、そして他者をも肯定する、というのは前作『カタルシス』以前の一つの転機にもなった「カミツレベルベット」の<Everything’s gonnabe alright>というフレーズから今に至るまで日高さんにとっての大きなテーマになっていますよね。今作でも「BIGPARADE」において、<そう悪いことばっかじゃないさ>という前向きなメッセージが出てきます。現実はシリアスになっている、<愛が無い時代>とか言っている場合ですらない、そういう状況でも「肯定」にこだわるのは、「こんな時代だから肯定しなきゃならない」なのか、「肯定したい」なのか・・・

 

「それは両方ですかね。「カミツレベルベット」によって自分は救われたんですけど、あの曲によって救われた人が自分以外にもいる、ということを思い上がりではなくちゃんと実感できたんですよね。その過程で、「救う人」としての責任と覚悟が生まれたというか・・・「愛」「平和」を正面切って言うための責任、覚悟、あとは自信。そういうものを「カミツレベルベット」がくれたんです。だから、「BIGPARADE」でもああいうフレーズがさらっと出てくる俺になれたのかな」

 

 

---そういうポジティビティって、気をつけないと非常に無責任なものになっちゃいますよね。

 

「はい。だからこそ昔はそういうことを書けなかったし、「カミツレベルベット」でもそういう意味のことは歌えたけど、それが日本語じゃなくて英語だったというのはまだまだ完全に突き抜けられてはいなかった、責任と覚悟が足りていなかったってことだと思います。今はその責任も覚悟もちゃんとある」

 

---タイトルの『OLIVE』も、花言葉はずばり「平和」ですしね。まさに責任、覚悟、自信がないと掲げられないものだと思います。『カタルシス』で「死」と向き合ったからこそ、いわば対極にあるようなこういうテーマが出てきたという部分はあるんでしょうか。

 

「それはすごくありますね。死生観みたいなものを考え抜いたからこそ、今生きていることの意味を強く感じられるようになったし、いろんなことを愛せるようになったのは間違いないです。『カタルシス』を作る中で死と向き合って逃げずに戦った結果として、愛とか平和とかってちゃんと言えるようになった」

 

---「愛」「平和」という前向きな、すべての人と連帯するようなメッセージが強く出ている今作ですが、日高さんの活動には「色眼鏡で見ていた奴らをぶっ潰してやる」みたいな動機もやっぱりあるのかなとは思います。きっとぶん殴ってやりたい人たちだっていまだにいっぱい・・・

 

「(笑)。ね、まあそれは」

 

---そういうところに対しての「今に見てろよ!」という感情はこれまでのモチベーションとして大きかったと思うんです。ご自身のそういう「負のパワー」みたいなものとはどうやって折り合いをつけていったのでしょうか。

 

「まず・・・「なにくそ、このやろう」みたいな怒れる気持ちはありますよ、ずっと(笑)」

 

---そうですよね。

 

「それはもちろん今もある、いろんなところに対して。ずっとあるんだけど・・・きっと、そういうマイナスの視線を向けられてそれに対して俺がむかついた、そういうことがあったからこそ今の自分があるんだと思ったら、それすらもありがたいって思えるようになったんですよね。この先もむかつくことは間違いなくあると思うけどそれはもうしょうがないし、それでも生きていれば普通に明日が来るから。そういう流れの中で、自分を愛して、周りにも愛を持って接する、それさえできていればいいんじゃないかな」

 

---そうすると、今の日高さんの活動のモチベーションとしては、「自分を認めさせる」というような話よりも「自分を中心にポジティブな世界を作っていく」ということの方が大きい。

 

「『カタルシス』リリース前に比べれば確実にそうなっていると思います。けど・・・今の話に対して即答で「はい!」と言えるかは正直わからないですね。反骨精神みたいなものはもうないです、って言ったら嘘になってしまう。でも、今はそういうレベルのことよりも、スタッフだったりファンだったり、いろいろな形で俺と過ごしている人たちに「SKY-HIと一緒にいて、好きでいて良かった」と思わせたい。そういう気持ちの方がはるかに強いです」

 

 

「一対一で」「誠実に」リスナーと向き合いたい

 

---日高さんはご自身の活動の中で、様々なタイプのクラスターに対してパフォーマンスをしますよね。ロックファンだったり、ヒップホップファンだったり、Jポップやアイドルが好きな人だったり。オーディエンスの質に応じて、ご自身の意識やライブのやり方で変わってくる部分はありますか?

 

「セットリストとかはもちろん細かく違いますけど、それは「同い年の人と喋るときはタメ語」「先輩と喋るときは敬語」くらいの差だから大した話ではないですね。そういうシチュエーションがどう、みたいな話よりは「人と向き合う」という意識をいつでも強く持つようにしています。何年何月何日のこのライブに来ているこんな人、たとえば彼女と付き合って2年目でうまくいっててデートにお金がかかる、でもそこから何とかチケット代を捻出してSKY-HIのライブに来た、テンションが上がって思わずTシャツを買ってしまった・・・自分を見に来てくれている人みんなにこういうストーリーが何かしらありますよね。だから、その場にいる○○ファンとしてのひとかたまりではなくて、いろんなストーリーを持った一人一人が集まっているということを意識したうえで、その一人ずつに届くようなライブをやろうとは心がけています」

 

---なるほど。「CDの売上の数字は「1」の積み重ねだから価値がある」という趣旨のお話を以前からされていると思うのですが、そこともつながる考え方ですね。「まとまり」ではなくて「個」で捉える。

 

「そうですね。それはすごく強いし、そうじゃないとコミュニケーションの本質からずれるんじゃないかな。・・・今話していて思ったんですけど、俺自身いろいろな形で一緒くたに括られて見られることが多くて、それがすごく嫌だったからそういうことを大切にするようになったのかもしれないですね。「アイドルの子が何かやってるらしいね」みたいな見方を俺に対してする人は、俺の裏側のことを何も見ようとしていないわけじゃないですか」

 

---はい。

 

「それと同じで、ファンの人たちをひとまとまりで捉えることって、ひとりひとりのドラマを無視することになっちゃうと思うんですよね。そうじゃなくて、個とちゃんと向き合う。それで、その人にとってのナンバーワンになる。それを続けていくと、世界的に見てもナンバーワンになれる。そんなふうに思っています」

 

---「ナンバーワン」であったり「国民的な存在」であったり、SKY-HIとしての活動において目指しているものはとても壮大ですよね。グループとしてはそういうポジションを獲得できている部分もあると思うんですけど、個人でも「売れたい!」という気持ちを前面に出している。「Jポップの人が、アンダーグラウンドで好きなことを実はやっています。かっこいいでしょ?」という形の方が気楽にやれるんじゃないかな、みたいなことも思ったんですが・・・

 

「今おっしゃっていただいたような「趣味でやってます」みたいな見られ方を絶対にしたくないからこそ、過剰なくらい「ナンバーワンを目指す」と言っている部分はとても大きいですね。AAAの人だからどうこう、という逃げ道を自分で絶っていきたいというか。・・・あの、41日に告白して、ふられたら「いや、エイプリルフールだよ!何本気にしてんの?」みたいなことをやりたくないんですよ(笑)」

 

---なるほど(笑)。

 

「たとえふられる可能性があったとしても、きれいな夜景の見えるところで真剣に交際を申し込まないと、真摯に向き合っているとは言えないと思うんです。だから仮に「ナンバーワンになる、って全然なれてねーじゃん」って言われるリスクを背負うことになったとしても、そういう覚悟を持ってやることが大事だと思っています」

 

---「覚悟を持ってリスクを背負う」ことは「音楽が好き」というような話とダイレクトに結びついてくることでもないと思いますし、たとえば何となく飄々とやってます~みたいなスタイルの方が滑ったときの傷は小さかったりするじゃないですか。

 

「小さいですよね。わかります」

 

---それでも日高さんがあえてそういう道に進んでいくことには何か理由があるんでしょうか。

 

「何なんですかね、両親の育て方が良かったのかな(笑)。大きいこと言いますけど、どうせならすべての人が幸せに死んでほしいじゃないですか。で、俺は不特定多数の人の人生に触れる可能性を持たせてもらっているから、俺に触れた人みんなが触れる前より幸せになってもらいたいと本気で思っているんですよね。そうしないと、ステージに立つ人間として不誠実というか。その境地に辿り着くためにも自分はナンバーワンにならないといけないし、世界に出しても恥ずかしくないナンバーワンのエンターテイメントを提供し続ける必要がある。ぬるいことをやっているって思われないためにも、自分に発破をかける意味でも、こういうことはこの先も言い続けます」

 

 

「キャッチーはエッジー」

 

---今後のSKY-HIの活動において、「ナンバーワン」「国民的な存在」を目指していくためにもっとやっていきたいこと、変えていきたいことがあれば教えてください。

 

「いっぱいあるんですけど・・・まず、このタイミングでヒットソングが欲しいんですよね。シングル、単曲でちゃんとヒットさせたいというのが大きい。あと、ポップスとしてのマナーに則ったものを作るのと同じくらい、とんでもなくエッジーなものを産み落とすことにも貪欲でいたいです。俺、「エッジー」は「キャッチー」だと思ってるんですよ。「すげー!真似できねー!」みたいなことって、誰かをエンターテインするためには必要な要素のはずだし」

 

---なるほど。「エッジーであることがキャッチーにつながる」って話は、SKY-HIとしてのライブの印象にもつながりますね。

 

「ほんとですか?嬉しいです」

 

---突き詰めまくっていびつになった結果として超ポップになっているというか。

 

「そうすね。前から言ってるんだけど、「ポップ」とか「キャッチー」とかって、階段を下りていくことによって作られるものじゃないと思うんですよ。パイの大きそうなところに適応していてもポップなものなんて作れないし、階段を登りきったところにしか「ポップ」も「キャッチー」も存在しないと思う。「KING OF POP」があれだけ尖ってるわけだし」

 

---マイケル・ジャクソンなんてまさにそうですが、誰もやっていないことやるのが一番ポップなんですよね。「目につく」ためには「適応する」よりも「突き抜ける」方が有効というか。

 

「ほんとそう思います。『カタルシス』と『OLIVE』、ハードで切迫した空気と愛や喜びに溢れた世界をそれぞれ作れたわけで、「これをやっていけば唯一無二でいられる」っていうのは見えてきたんで。両方の方向を突き詰めていって、他の誰にもできないエンターテイメントを作りたい。エッジーでありつつ、ちゃんと王道感を保っているもの。で、それをできればヒットソングっていう形で帰結させたい、という最初の話につながります」

 

---わかりました。いろいろお話しいただきありがとうございました。

 

「いっぱい喋っちゃいました(笑)」

 

---OLIVE』リリース後にツアーが始まり、ファイナルには日本武道館でのライブが控えています。

 

「今度の武道館で、「向こう10年はこいつだ」っていうのを証明しないといけないと思ってます。たぶんですけど、エッジーでしかも長く残っていくメッセージを生み出せる存在っていうのを神様がこうやって・・・(ふるいにかける仕草)」

 

---選り分けられている最中だと。

 

「音楽家に限らずものを作っている人たちがみんなそういう形でふるいにかけられていて、今のところはそこに残してもらえていると思うんで。そこに残してもらえている存在としてナンバーワンになる、そして関わっている人を全員幸せにする。それを目指してこの先もやっていければと思います」

 

 

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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「今の時代に音楽をやることの意味、CDを売ることの意味みたいなことに対してものすごく自覚的な方なので、お話を聞いていてすごく面白かったというのがまず最初の感想ですね。あと自信がものすごくあるけど謙虚さや感謝みたいなものもちゃんとあって、そのバランスも興味深いものがありました。アンチに対しても感謝する、なんて考え方に辿り着いているのはほんとすごい」

司会者「見習った方がいいですな」

レジー「ほんとに。たぶん2017年って男性のポップアクトの動向が結構注目される気がしていて、SKY-HIはまさにその急先鋒って感じだと思います。今後も注目ですな。武道館も楽しみです。改めましてありがとうございました。今回はそういったところで。次回ももう一発インタビューの予定です。しばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」 

 

Shiggy Jr. 『ALL ABOUT POP』リリースインタビュー 「ポップのすべて」に向き合った4人が自信作について語る

司会者「結局またインタビュー企画ですか」

レジー「次はほんとにインタビューじゃないやつあげるよ。たぶん。やっと目途が立ったので。時流に乗りつつ時流にたてつくような話になるかなと思っているのでご期待ください。とりあえず今回は、ファーストアルバム『ALL ABOUT POP』をリリースしたばかりのShiggy Jr.の皆さんのインタビューをお届けします」


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司会者「5月の『恋したらベイベー -ep』のときはメンバーそれぞれの個別インタビューだったので、4人でのインタビューはメジャーデビューシングルの『サマータイムラブ』以来ですね」

レジー「メジャーデビューから1年経って、うまくいったこといかなかったことをいろいろ経てついにリリースされたアルバムです。作品について僕がどう思ったかはインタビュー内でもちょこちょこ触れてるのでそちらを読んでいただきたいのですが、タイトル通りの気合いのこもったアルバムになっています」

司会者「ご存知の方もいるかと思いますがこのブログではShiggy Jr.のことをインディー時代から追いかけているわけで、メジャーでアルバムが出るというのはなかなか感慨深いですね」

レジー「うん。記事中にも過去インタビューと関連しているところにはリンク入れたりしているので、未読の方は良かったらそちらも読んでいただきたいです。今回は個々の楽曲の話も結構しているので、すでにアルバム聴いた方は思い出しながらもしくは再度聴きながら読んでいただけますと。それではどうぞ」



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「ポップ」と「ダンス」と「グルーヴ」

 

---先日池田さんの地元の富山でライブをされたんですよね。(注:16108日 BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2016

 

池田「そうなんです。初めてだったんですけど、すごく楽しかったです」

 

---ご家族の方もたくさん来られたとのことで。

 

池田「はい。親戚がめっちゃ来ました()

 

森「最前にね」

 

諸石「池田のファミリーゾーンができてたよね」

 

---ライブ中豪快に間違えたという噂もツイッターで見ましたが・・・() 


池田「何でも書かれてしまう・・・()。やってしまいました」

 

---その日のライブでもアルバムに収録される新曲が披露されたようですが、今回のアルバムは「ついに」という表現がぴったりだと思います。まずはアルバムが完成したことについて、それぞれコメントをいただけますと。

 

池田「デビューしてからずっと制作をやっていたこともあって、「やっと出せる!」という思いが強いです。フルアルバムを出すのはインディーズの時も含めて初めてなんですけど、こういうボリュームのある形態を通してShiggy Jr.の「いろんなことをやりたいんだぞ」っていうスタンスを示せたんじゃないかなと思っています。自己紹介的な1枚であるとともに、めちゃめちゃ気合いが入っている1枚ができました」

 

原田「ほんとに1年半くらいずーっと作り続けていたので、ようやくできたなと。使わなかった曲もいっぱいあるんですけど、最終的には一番いい形のものになったと思いますね。ほっとしています」

 

森「Shiggy Jr.のデビューから今までの歴史全部がこのアルバムには入っていると思っています。いろいろなタイプの曲があるんですけどどれもShiggy Jr.感がちゃんとあると思うし、これを聴けばShiggy Jr.がわかるっていう作品になったかなと」

 

諸石「ほんとに気合いを込めた作品です。今でも移動中に聴いたりもしますし、自分にとっての大好きなアルバムができたと思っています。ジャケットも最高ですし、早く聴いてほしい、手に取ってもらいたいです」

 

---ありがとうございます。充実感とともに、皆さんかなり「出し切った!」という感じが伝わってきました。

 

4人「()

 

---直球のタイトルにも気合いが表れていますよね。

 

池田「曲が半分くらいできたタイミングでタイトルを決めようって話になったんですけど、そこでしげゆきくんから出てきたのがこのタイトルです。みんなすぐに「それだ!」ってなりました。大きいタイトルですけど、怯んだりすることもなく」

 

---原田さん的にはどんな思いが。

 

原田「・・・もう、『ALL ABOUT POP』じゃないですか」

 

---()

 

原田「こうなっちゃうとこれ以外のタイトルが思い浮かばない()。ポップであることのすべて、みたいな内容がいいんじゃないかって話の中で決まりました」

 

---なるほど。以前原田さんにインタビューさせていただいたときに「SMAPのアルバムみたいにしたい」という発言があったかと思うんですが、ALL ABOUT POP』を聴かせていただいて、ほんとに90年代のSMAPみたいだなーと思いまして。

 

原田「よかった」

 

---で、なんでそう思ったのかなって考えていて、いろんなジャンルがあるとか全曲キャッチーとかいろいろあると思うんですけど・・・一番思ったこととして、ゆっくりの曲も含めて、ダンサブルな感じ、踊れる感じがあるような気がしたんですよね。この前見させていただいたライブ(注:16629日 “対バン”スかこれ。vol.1 @LIQUIDROOM)でも池田さんがダンスする場面があったり、もしかしたら「ダンス」っていうのが作品のキーワードになっているのかなとか思ったんですけど。

 

原田「なるほど、どうだろうな・・・明確にそういうことを考えていたわけではないんですけど」

 

---少し遡ると、「Saturday night to Sunday morning」にも<朝まで踊りとおせ>って歌詞が入っていたりするじゃないですか。

 

諸石「確かに」

 

原田「踊らせたがりなんですよね()

 

---ポップミュージックとダンスって不可分なものだと思うので、無意識的なものにせよそういうところに接近していっているのは面白いなあと。

 

原田「SMAP話でいうと、90年代の音楽ってハウスっぽい感じで踊れる雰囲気のものが多いですよね。そういう音楽を僕自身好きっていうのが一番大きいです。「ダンス」と関係しそうなことだと・・・キメの音楽よりもグルーヴの音楽、って言ったらいいのかな」

 

 

 

新単位「0(ゼロ)シギー」と多様な楽曲の裏側

 

---「グルーヴの音楽」というキーワードが出ましたが、リズム隊のお2人は原田さんのそういう嗜好が強く出ている今作の楽曲をプレイするうえで感じたことはありますか。

 

森「しげがそういうのを好きなのは前から知っていたので特に違和感はなかったですし、プレイもいろいろやれるので楽しくできました」

 

諸石「僕も同じですね。シングルの突き抜けてハッピーな感じとはまた違う雰囲気のものも単純にかっこいいなって思うし。今回の制作ではしげゆきの作曲能力の高さにほんと驚かされました。いろんなタイプのものが出てきて、「こんなのも作れんのかい、君」みたいな」

 

池田「うん」

 

---褒められてますね。

 

原田「褒められると喋らなくなるんで、僕」

 

池田、森、諸石「()

 

諸石「なんで?()

 

---()。「タイプの違う楽曲」というのは今作の一つの特徴ですよね。シングルでは「元気でポップなバンド」という側面が特に表題曲において強調されていたように思いますが、アルバムではもっと振れ幅が大きくなっているのは何かしらの狙いがあったんでしょうか。

 

原田「狙いというか、たとえば「HOME」みたいな曲も昔から自分としては得意だったし、そういう部分をシングルで見せてなかっただけ、という方が正確ですかね。シングル向けには意識的にテンションの高い楽曲を作っていた部分もあったし、アルバムを聴いてもらった時の印象の方が素に近いのかなと思います。あとは自分のモードというか、同じようなものを作りたくないという意識が結構あるのでそこから曲調に幅が出てくるというのもあります」

 

---ちなみに今おっしゃっていただいたような楽曲の幅はシングルのカップリング曲でも見られたように思いますが、今回収録されているのは・・・

 

原田「「keep on raining」だけです」

 

---あ、ほんとだ。

 

池田「基本的にはシングルの表題曲と新曲、あとは「LISTEN TO THE MUSIC」を入れて・・・っていう形だったはずなんですけど、全員が「keep on raining」は入れたいって」

 

---皆さんお好きなんですね、「keep on raining」。

 

森「なんか好きなんですよ」

 

池田「「keep on raining」はすごくShiggy Jr.っぽいよね、っていう話はメンバーでよくしているんです。テンションも高すぎず低すぎず・・・ゼロ地点。ゼロシギー」

 

---ゼロシギー()

 

池田「テンションの高いシングル曲は5シギーくらいで、テンポも遅すぎず速すぎずの「keep on raining」はゼロシギーって感じです」

 

森「なんかわかる。みんないるべきところにいるというか」

 

池田「だからアルバムにも入れたかったです」

 

原田「「手紙」とかはマイナスシギーだね」

 

---ゼロシギー、面白いですね。全曲何シギーか教えてほしいです。

 

4人「()

 

池田「アンケートとって平均を出さないといけないですね()

 

---keep on raining」がShiggy Jr.の「原点の音」としてあったうえでそこからかなりいろんな方向に広がっていく今回のアルバムですが、個人的には「I like it」と「groove tonight」の2曲が好きです。どちらも松井寛さんアレンジですね。特に「I like it」の80s感は「LISTEN TO THE MUSIC」の正統進化みたいな印象を受けました。

 

原田「「I like it」も「groove tonight」も、もともとは「Still Love You」(注:『恋したらベイベー -EP』に収録。アレンジは松井寛)と合わせてアレンジをお願いしたんですよ。「I like it」は、デモの段階ではリズムの音色とかがもうちょっと90sっぽい仕上がりだったんです。あがってきてびっくりしました」

 

---groove tonight」はフルートがすごく面白いですよね。いい違和感というか。

 

原田「あれも松井さんのアイデアです」

 

---松井さんアレンジ曲というと、前回の「Still LoveYou」で森さんと諸石さんがかなり苦戦したというお話がありましたが・・・

 

森「アルバムには打ち込みで作られたものが入っているんですけど、これをライブでどうやるかっていうので今いろいろ試行錯誤しているところです。この2曲は鬼門ですね・・・()。でも松井さんの曲はやっていてほんとに勉強になります。セオリー通りじゃないもんね」

 

諸石「じゃない。驚くようなところにキックが入っていたりとか、リズムをはめる位置が普通じゃない。今はひたすら練習してます」

 

---池田さん的には松井さんの曲を歌うときにはどんなことに気をつけていますか?

 

池田「R&B調の大人っぽい曲が多いから、声のトーンがキャピキャピしすぎないようにとは考えています。今回はむしろ少し無表情なくらいで歌う方がいいのかな、というイメージを持っていました。あと松井さんの曲はコーラスが難しいんですよね。和音としてどう成立させるかってところが重視されているから、歌うラインとしてはすごくとりづらいんです。毎回朝方まで泣きそうになりながらやっていました」

 

---松井さんの2曲とは対照的に、「dynamite」では皆さんロックに弾けまくっていますね。

 

原田「立ち位置的には『LISTEN TO THE MUSIC』における「oyasumi」です」

 

---特に男性陣の楽しそうな感じが音から伝わってきます。昨年のクワトロでのワンマンライブ(注:1571日 “ワンマン”スかこれ。vol.1)での3人でのセッションを思い出しました。

 

諸石「うんうん」

 

池田「セルフアレンジだもんね」

 

諸石「この曲は3人でスタジオにこもって遊びながらアレンジした曲なんで、初期衝動的な楽しさが詰まっていると思います」

 

---3人で遊んでる感がすごくありますよね。

 

諸石「「ここミスタービッグにしようぜ!」とか「レッチリっぽい感じにしようぜ!」とか」

 

森「爆笑しながら作りました」

 

---バンドキッズですね。

 

原田「バンドキッズでしたね」

 

---楽器楽しいよね!って()

 

森「ほんとそんな感じです()

 

諸石「楽しー!って()。ノリしかない感じで」

 

---男だけで作られたものを聴いて池田さんはどう思いましたか。

 

池田「みんな楽しそうだなってのがイントロの時点で伝わってきたので()、私も歌うのがすごく楽しかったです。ただ、最初はどうしても男臭いオケに自分の声が馴染まないのが気になって・・・かっこよく歌おうとかってしてみたんですけど、どうしても中途半端な感じになっちゃうんですよね。どうしようかなと思ったんですけど、「声が浮いているのが面白いからあんまり気にしなくていいよ」って言ってもらえて、それで思いっきり歌うことができました」

 
 

 


生っぽい言葉と「スタート」

 

---今回収録されている新曲は、歌詞の面でも新境地というか、シングル曲の妄想チックな恋愛描写とは異なる言葉が並んでいますね。歌詞の書き方に関して変わった部分はありますか?

 

原田「なんか変わったような気はしますね。最近自分自身も歌詞がいいものを好きになるようになってきているんですけど、やっぱり言葉がちゃんとしている曲の方が聴いてもらえるんだなって改めて感じています。だから前よりも思いのある歌詞を書くようになったのかな。・・・まあただ、ものすごく変わったというわけではないと思いますよ。シングル曲はアゲアゲで行きたかったからああいう言葉遣いになっているけど、そういうのじゃない曲調のものに対して自然とパーソナルな部分が少し出た、くらいのことなのかなと」

 

---大きく何かが変わったわけではないと。では他のメンバーから見て、原田さんの歌詞が変わっているというような印象はありますか?

 

諸石「以前は内容よりも音の感じで歌詞を決めるスタンスだったと思うんですけど、最近は表現も増えているしいろんなことが連想できるものになっているなあと。歌詞がいい曲が昔から好きなので、今の感じはすごくいいなあと思ってます」

 

池田「しげゆきくんの歌詞がどんどん変わっていってる、どんどん良くなってるというのはすごく感じます。「手紙」なんかはほんとにまっすぐな言葉で、ブースで泣きそうになるくらいでした」

 

---「手紙」の歌詞はグッときますよね。あと少し切り口は違いますが、「groove tonight」の歌詞も今までになく生々しい感じで面白いなと。

 

池田「「groove tonight」は自分の生活とか実年齢に近い感じでめちゃくちゃリアルでした。今までシングルでは歌ってこなかったことなので新鮮でしたね。シングルが外向きの自分だとすると、「groove tonight」は部屋を覗かれているくらいのイメージです()

 

---()。ファンタジックな恋愛というよりは、働いている人のリアル、みたいな。

 

池田「そうですね。普通に生活している自分に近いような言葉を歌えたのはすごく嬉しかったです」

 

---個人的に印象に残ったのは、「スタート」「Beautiful Life」あたりの楽曲から「今はしんどいけど頑張ろう」みたいなメッセージが感じられるところなんですよね。バンドの状況に対しての言葉というような側面もあるのかな、なんて思って聴いていました。こういう感情の吐露のようなものって今まであまりなかったと思うんですが。

 

原田「基本的にはさっき言った通り、曲調から自然にこういう言葉が出てきたってことではあるんですけど・・・まあでもよくあることですよね()。物事がうまくいかないときっていうのは」

 

池田「バンドに限らず夢があって何かをやっている人だったら、うまくいかなくてもどかしいみたいな気持ちはみんな持っていると思うんですよね。そういうのを隠す必要はないと思ったし・・・「スタート」はそういう思いを素直に表現できたと思っています。しんどいときに何を思って、何を信じて、そして何ができるのか、みたいな・・・この曲はバンドのドキュメンタリーのような曲だと思っています。Shiggy Jr.Shiggy Jr.としてみんなに歌っている曲です」

 

諸石「「スタート」はほんとに等身大な感じだよね」

 

森「うん。この曲には特別な感情がありますね。演奏していて、何か魂にグッとくるものがあります」

 

 

30,000枚」と有言実行精神

 

---作品そのものの話からは少しそれてしまうんですが、今回のリリースにあたって池田さんから「30,000枚が目標」っていう宣言があったじゃないですか。
 

 


池田「はい」

 

---これ、僕にとっては結構インパクトあったんですよね。ミュージシャンが自分たちの作品のセールスに責任を持つっていうのはある意味では当然のことだし素晴らしいなと思ったんですが、やっぱり「音楽家が数字の話をする」みたいなことに対するアレルギーは少なからずいろんなところにあるような気がしていて。それに仮に30,000枚いかなかったとして、それ自体は作品の中身そのものが否定される話ではないのに、ああいうステイトメントを出すことによって中身と数字の話が結びついちゃう、達成できなかったから良くないアルバム、みたいになってしまうリスクもあるのかなと。いろいろなことが考えられる中で、池田さんが思い切ってああいうことを言ったのってどういうことなんだろうな、というのを今日聞きたいと思っていたんですけど。

 

池田「なるほど・・・。このアルバムを30,000枚売りたいって話はメンバーともスタッフさんともしていたんですよね。で、それが決して簡単なことではないっていうのも、これまでやってきたことを考えればもちろんわかっているんですけど。うーん、何て言ったらいいかな・・・やっぱりバンドやっていてうまくいかないこともある中で、今回このアルバムを出せるってなった時にすごく嬉しかったんですよね。それで改めて自分の中で火がついた、みたいな感じがあって。作品の内容についてはものすごく自信があるし、『LISTEN TO THE MUSIC』のときみたいに『ALL ABOUT POP』が私たちや応援してくれているファンのみんなに新しい景色を見せてくれるんじゃないかってほんとに思っているんですよね。だからそれを実現するためにも、「何となく売れたらいいな」とかじゃなくてやっぱりちゃんと口に出さないといけない。そんな気持ちで書きました」

 

---お願いごとノート理論。まずは書こうと。

 

池田「そうです。いろいろなことを経験してできることとできないことがわかってくる中で、こうやって目標を外に出すことにビビっている自分もいたんです。だけどそれを怖がっちゃいけないと思いました。それがうまくいっても失敗しても、絶対に意味があると思う」

 

---「ちょっと大きいかも」という目標を掲げてそれに向かってやっていく、そういう有言実行な感じは以前からバンドの活動の原動力ですよね。

 

池田「はい」

 

諸石「言っていくことが大切だと思います」

 

森「「30,000枚売る」っていう言葉の強さが引っ掛かったかもしれないですけど、やっていることはインディーズの頃と同じだと思います」

 

---原田さんはいかがですか。

 

原田「もちろんバンドとして目標を持ってやるのはいいことだと思います。ただ、僕自身はどういう状況であれとにかくやり続けていくだけです。そのスタンスはこれからもずっと変わらないですね」

 

 

 

改めて考える「Shiggy Jr.らしさ」、そしてバンドのこれから

 

---今回アルバムを作り切ったうえで、改めて「Shiggy Jr.らしい音楽」みたいなもので見えてきたものがあれば教えてください。

 

池田「・・・難しいね。いろんな曲があるってこと?違う?」

 

原田「うーん・・・まあ、オムニバスっぽいっていう」

 

---オムニバス。なるほど。

 

原田「自分がそういうの好きだからっていうのもあるんですけど」

 

---「オムニバス」でぱっと思い浮かんだのが映画のサウンドトラックとかなんですけど、いろんなシーンにそれぞれマッチする音楽を提供しているのがShiggy Jr.だってのはわかりやすいですね。生活のどんな場面にも馴染むというか。

 

池田「あとは全部ポップにまとまっているっていうのは肝だと思います。「難しいことをやってすごいと思われる」「わかりやすくて好きになってもらえる」という選択肢があった時に後者の方を選ぼうっていうのはバンドとして一貫しているし。しげゆきくんの曲は誰も置いてきぼりにしないし、「これを知らないとわからない」みたいなものがないから。そういうのもShiggy Jr.の大事な要素だなと歌っていて思います」

 

原田「あとは池田が歌えばShiggy Jr.っぽくなりますよね」

 

池田「えー、そうなのかな」

 

---そういう自覚は。

 

池田「うーん、大事な要素だと思ってもらえるのは嬉しいんですけど・・・必ずしもそれだけじゃないとは思うんですよね。たまに別のところに呼んでいただいて歌うこともありますけど、それがいつも「Shiggy Jr.らしいか」というとそういうことでもないと思うし。しげゆきくんの曲があって、私の歌があって、みんなで演奏してこそのShiggy Jr.らしさだと思います」

 

---わかりました。ではそろそろ締めに入りたいのですが、今回のアルバムがバンドとしてのゴールというわけではもちろんないと思いますので、現時点における今後の展望、今回こういうことができたけどこの先はこんなことがやりたい、というようなものがあれば教えていただけますと。

 

池田「このアルバムを出すことで、より自由になれたと思うんですよね。今までのシングルでは表現しきれなかったことをちゃんと出せたから、たとえばこの先のシングルでは明るくてアゲアゲではないものももしかしたら出せるようになるかもしれないし。『ALL ABOUT POP』を起点にして、バンドの可能性をもっと広げていけたらいいなと思います」

 

原田「最近よく考えているのは・・・この1年半で、アレンジも、レコーディングのやり方も、音作りの感じも、かなりいろんなことを学んだんですよ。その中で、ある程度自分でいけるなっていうのが見えてきたんですよね。だから、もっと自分で全部完結させるスタイルにそろそろ取り組みたいなと思っています。その方がえぐみみたいなものはもっとでるのかな、とか」

 

---なるほど。原田色がもっと強まる。

 

原田「やってみないとわからないですけど・・・()。そうしたらもっと面白くなるんじゃないかなって」

 

森「しげがいろいろ方向性を模索する中でリズム隊に求められるものもさらに変わってくると思うから、そういうものに柔軟にプレイできる力とセンスを磨いていきたいですね。アレンジャーさんが入らないならば自分たちでもっとアイデアを出していかないといけないだろうし」

 

諸石「今作のレコーディングでも、いろんなジャンルの楽曲にすぐに対応できるようにならなきゃいけないっていうのは痛感したんですよね。収録されなかったけど今回もジャズっぽい曲があったし、この先たとえばボサノバとか民族音楽っぽいものとかが出てくるかもしれないし・・・どういうものが来てもちゃんと叩けるように、今はいろんなジャンルのドラムを研究して引き出しを増やしていこうとしています」

 

---一つのゴールにたどり着いた時点で次の具体的なアクションがそれぞれイメージされているのがすごくShiggy Jr.っぽいなと思いました。改めて最後に、何か言い残したことがあれば。

 

池田「ほんとに聴いてほしいし、ツアーに来て欲しい。それで周りの人にShiggy Jr.を勧めてほしいです。私たちももちろん全力でやるんですけど、聴いてくれた人たちの声が一番力になるので。よろしくお願いします」

 

---このアルバムが広まっていくことを楽しみにしています。今日はありがとうございました。

 

4人「ありがとうございました!」





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司会者「インタビューは以上になります」

レジー「今作への自信と、ここにかける気合いみたいなものがすごく伝わってきた。 最後に池田さんが言ってた「わかりやすくて好きになってもらえる」って、ほんとはすごく大変なことだと思うんだよね。一部の人に「これは俺にしかわからない」って思われた方がよっぽど楽に支持層を作れるし、でもそうじゃなくて全方位でやるんだっていう強い気持ちがぶれないのはすごいと思う」

司会者「30000枚についても明確でした」

レジー「うん。有言実行こそこのバンドのコア。このまま変わらずにいってほしいです。アルバムとしても、いい時期のSMAPが体現してたような色鮮やかなポップ感が詰まったとても面白い作品になっていると思うので、まだ聴いてない人もこれを機にぜひ聴いてみてください。改めてShiggy Jr.の皆さまありがとうございました。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。で、次回はインタビューではないと」

レジー「はい。ここ数か月人知れず仕込んでたものがあるのでそれをやる予定です。しばしお待ちを」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

 

Awesome City Clubインタビュー ピュアな気持ちで作り上げた『Awesome City Tracks 3』の裏側を語る

司会者「前回までインタビューシリーズということでしたが」


レジー「何と期せずしても今回もインタビュー記事になってしまった。この前まとめて告知した後に決まった話なので大目に見てください。というわけで、今回は6月22日に3枚目のアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースしたAwesome City Clubのatagiさん、PORINさん、マツザカさんへのインタビューをお届けします」

ACCアー写
 


司会者「このブログには昨年のクラウドファンディングシングル「アウトサイダー」以来、約1年ぶりの登場です


レジー「この1年のオーサムといえばライブが劇的に良くなっているってイメージなんですが、アルバム前に発表された「Don’t Think, Feel」のMVがめちゃくちゃ素晴らしかった。パフォーマンス面での進化も含めて堪能できて最高」


 


司会者「圧倒的メジャー感」


レジー「この曲は音もMVもすごくストレート、奇を衒わずに直球をがつんと投げ込んできてるところがいいなと思って、アルバムにもそういうモードが表れています。前作『Awesome City Tracks 2』のときもかなりバンドとしての素を見せている感じだったのでそのままスムーズに今作へ流れていったのかなと思っていましたが、実際には紆余曲折あって辿り着いた境地だったようです。まずはそんな話からどうぞ」



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 「Awesome City Clubって何なんだ?」

---昨日ツイッターで、マツザカさんが「めっちゃいい曲が出来た」ってツイートしているのを見ました。


マツザカ「ああ、今新曲作っているんですよ」

---もう次のアルバム用の。

マツザカ「まあアルバムに向けてがっつり作っているとかじゃないんですけど、とりあえず新曲を」

---絶えず作っている感じなんですか?

atagi「僕ら、ストック曲ってのがあんまりなくて(笑)。毎回、レコーディングが終わるたびに「よし作るぞ!」って制作期間に入るんですよ」

マツザカ「今回は余裕持って始めた方だよね」

PORIN「そうだね(笑)。学んだね、いろいろ」

---なるほど。今回の『Awesome City Tracks(※以下ACT) 3』も、前作のレコーディング終わってからばーっと作ったんですか?
 
PORIN「曲によりけりですね。「Vampire」は制作期間に入る前からありました」

atagi「それが基本軸になって、そこから広げていくような形でいろんな曲を作っていったんですけど・・・」

マツザカ「『ACT2』が出てから年始くらいまでに作っていた曲は、一旦全部ボツにしているんです」

---そうなんですか。

マツザカ「だから「Vampire」以外の今回入っている曲は、それ以降に作ったものです」

---どういうきっかけでそんなに大胆な決断をしたんでしょうか。

マツザカ「なんて言うんですかね・・・いろいろあって、みたいな感じなんですけど(笑)。最初このアルバムを作り始めるときに、新しいこと、今までと違うオーサムを見せようって気持ちが強かったんですよね。それでアルバムタイトルも『ACT3』じゃないものにしようなんて話もあったりして。そういうモードで作っていたのが年始までの曲たちなんですけど、何をやってもうまくいかない感じがどうも続いたんですよね。こだわっているんだけどおいしくないご飯、みたいな。で、そこから、「新しいことをやろう」とかっていうのにとらわれなくてもいいんじゃないか?ってなって、それから2か月くらいで収録曲を作り直しました」

atagi「潜在的に「何か新しいことをしなきゃ」みたいな雰囲気があったんですけど、その辺の具体的なイメージをメンバー5人でちゃんと共有できていなくて、にもかかわらず「アルバムにどの曲を使うか」みたいな話に進んじゃったりしていたんですよね。で、「ほんとにこのままでいいの?」ということになり・・・そのままアルバムを作ることもできたんですけど、ここは勇気を出してルネッサンスしよう!と(笑)」

PORIN、マツザカ「(笑)」

---(笑)。

atagi「再生しよう、ということになりました。かなり色んなことを考え込んでしまったんですけど、結果的にはそうやって考え込んだ分、その反動ですごく開けた作品になったと思っています」

---なるほど。前作の『ACT2』は1枚目の『ACT』に比べるとバンドとしてのナチュラルな部分やピュアな側面が出たアルバムだと思っていたし、前回のインタビューでも「バンドとして解放された」なんてお話をされていたので、今みたいな状況だったというのはちょっと意外でした。

atagi「・・・こういう心境について話すとき、意外とPORINは自分の話をしないけど、そのときどう思ってたの?」

PORIN「私は・・・メジャーでやっている以上は多くの人に届けたいなと思っているんですけど、ファーストとセカンドでは思っていたより手ごたえがなかったっていうのが本心ですね」

---もっと届くものにするためには、今回のアルバムで何かを変えなきゃいけないんじゃないかっていう意識があった。

PORIN「はい」

---皆さんそれぞれにいろんな想いがあったんですね。今回のアルバムは、セカンドで自分たちの自然体な感じとか本音を出して、その路線の延長線上にあるもの、推し進めたものっていうイメージだったんですけど、そんなにストレートにつながっているわけでもないというか。

atagi「そうですね・・・ファーストはインディー時代に自分たちだけで作っていたものをベースにしてメジャーで出して、セカンドの時はもっと音楽に対して真面目にありたいって思っていたんですけど、今度は真面目が過ぎてちょっとこじらせてしまったというか(笑)」

---(笑)。

atagi「で、結果どうなったかっていうと、真面目であるとかそうじゃないとか、どう見られたいかとか、そんな話ではなくてもっと感覚的に思ったことを発露させるのが大事で、そういうものが曲としてのエネルギーにつながっていくっていうことに気付いた。今はそういう方向に進んでいます」

---その辺の話は改めて5人でも話されたりしたんですか。

マツザカ「しましたね、かなり。ちょうど以前の曲をボツにするタイミングで、「Awesome City Clubって何なんだ?」みたいな話を5人でじっくりしたりとか・・・アルバムのテーマもそういう中で見えてきました。自分たちはダンスミュージック的なことをやっていると思っているんですけど、単純に「踊れる」だけじゃなくて「心躍る」ようなものを作りたい、とか。言葉に関しては、レジーさんが言ってくださったとおりセカンドの延長線上にあって、セカンドでもナチュラルで強い言葉を乗せられたと思っていたんですけど、もっともっとエモーショナルな部分が感じられる歌詞にしよう、と。PORINがさっき言っていたように、ファーストとセカンドで伝わらなかった人たちに伝えるためにも歌詞についてはもっと研ぎ澄ましていきたいという話をメンバーみんなで共有しました」


「Don’t Think, Feel」が示すメッセージ

---今のお話を聞くと、「Don’t Think Feel」っていう曲のタイトルがめちゃめちゃ意味ありげなものに感じられます。

マツザカ「この「Don’t Think, Feel」って言葉、最初は自分に対しての独り言みたいな感じだったんですよね。さっき話したようなバンドとしてぐちゃぐちゃしていた時期に、「いろいろ考えすぎちゃってるな」と思っている中からぽろっと出てきたもので。だからもっとネガティブな感じの曲になるかと思いきや、いしわたり(淳治)さんとやることで力強いラブソングに昇華されました」

---「考えるな、感じろ!」って、かつてのオーサムのイメージからはかなり遠い言葉ですよね。

マツザカ「はい」

---PORINさんはこの言葉を聞いたとき、どう思いました?僕の中でPORINさんは飄々としたイメージなので、こういう熱い言葉とは距離がある感じがします。

PORIN「確かに、私にはそんなに響いてなかったかもしれない・・・」

atagi、マツザカ「(爆笑)」

atagi「怖いよ」

PORIN「(笑)。でも、さっきもお話ししたとおりバンドの雰囲気があまり良くなかったから、ぴったりな言葉だなと思いました」

---この曲の歌詞はラブソングの体裁をとっていますが、自分たちを鼓舞しているような言葉にも聞こえたんですよね。

atagi「うんうん」

マツザカ「そういう側面はあると思います。1曲目の「Into The Sound」にも同じようなテーマの言葉があって、「お前も同じこと考えてたのか!わかるよ!」みたいな(笑)。結果的にではあるんですけど他の曲にもそういう意味合いのフレーズが散りばめられていて、それが作品の深みにつながったなと僕は思っているんですけど」

---なるほど。さっきちらっとお話も出ましたが、この歌詞はいしわたりさんとの共作で書かれましたよね。これについてはどういう経緯で一緒にやることになったんですか?

マツザカ「もともと、いしわたりさんのいたスーパーカーと僕らってちょっと似てるなあと思っていたんですよね。編成とか、分業していることとか。それでいずれ一緒にやってみたいと思っていたんですけど、今回強いメッセージの曲を作りたいという狙いがあったので、じゃあこのタイミングでお願いしてみようということになりました。今回男女の掛け合いがあるんですけど、スーパーカーに「Lucky」って曲があるじゃないですか」

 

---僕すごい好きです、あの曲。

マツザカ「いいですよね。ああいう男女の目線が交錯するような曲を作りたい、っていうのは以前からぼんやりとあったんです。ただ、「Don’t Think, Feel」に関しては最初からそういうことをやろうとしていたわけでは実はなくて、いしわたりさんと作っていく中であのアイデアが生まれました」

---お一人で歌詞を書くのとはどのあたりが違いましたか?

マツザカ「いろんなことが全然違いましたね・・・僕が書いたものをいしわたりさんが添削して、そこにさらに僕のアイデアを入れて、という形でラリーを続けていったんですけど、いしわたりさんはたぶん言葉の伝わるスピードというか、ぱって聞いた瞬間にどのくらい意味が理解されるかを特に重視していたのかなと思います。ストレートなラブソングみたいな「メッセージをはっきり書く」タイプの歌詞って、僕の中ではまだ照れがあるんですよね。そういう意識でメッセージを忍ばせるくらいの感じで書いた歌詞を見せると、「それだと伝わりづらい」「ここまで言い切ろう」みたいなアドバイスをいただいたりして。そういう観点はすごく勉強になったし、自分の中にも吸収できたんじゃないかなと思っています」

---わかりました。一方でサウンドとしては、よりブラックミュージック的な要素を前面に出している感じですよね。

atagi「そうですね」

---どういった狙いで音作りを進めていったのでしょうか。

atagi「ちょうどこの曲を作る前に、何の気なしにザップ(アメリカのソウル/ファンクバンド)を聴いていて、すっごいかっこいいなと思ったんですよね。僕は以前ソウルバーで働いていたりもしてそういう音楽が好きなんですけど、日本にあるファンクって全体的に軽い印象のものが多いなとは前から思っていて。そういうのではなくて、自分が好きな「重たいファンク」みたいなのをオーサムでやれないかなというところから始まりました。最終的にはポップな歌ものに落とし込めたと思うんですけど、根底にあるファンクイズムみたいなものは意識して作りました」

 

---腰に来る感じはありつつ、とにかくポップでキラキラした楽曲になりましたよね。

マツザカ「完成するまでのバントとしてのストーリーも含めて、マジックみたいなものがかかった曲になったと思っています」

---MVもインパクトありました。それこそファーストの頃のMVに比べるとストレートさが全然違いますよね。以前はもっとコンセプチュアルで、曲の魅力をど真ん中で伝えるよりはちょっと斜めから表現していたと思うんですけど、「Don’t Think, Feel」のMVからは「もうそういうのいいから!」みたいな覚悟を感じたというか。

 



atagi「あの当時とは見ているステージが違うと思います。「いい雰囲気だよね」みたいなことは正直言われ飽きたというか(笑)。聴いている人たち、周りの人たちともっと一緒になって面白いことをやりたい、熱くなりたい、っていう気持ちが強いし、MVにもそれが表れているかなと思います」

---atagiさんにとってはハンドマイクでのパフォーマンスも新たな取り組みですね。

atagi「そうですね。初めてだったんですけど、意外と無理なくできました。この前メンバー5人で僕が働いていたソウルバーに遊びに行ったときに年配の方々が踊りまくっているのを見たんですけど、そういうのも記憶の片隅にありました」

マツザカ「以前「愛ゆえに深度深い」をハンドマイクでやったらどうかって話もあったんですけど、そのときはatagiがあまり乗り気じゃなくてやらなかったんですよね。今回こうやって自然にパフォーマンスできているのは、フロントマンとしての決意みたいなものができてきたんだなと」

---PORINさんはいかがですか。

PORIN「私個人としては、初めて自分の素をMVで出せたっていう実感がありますね。「人形からの脱却」じゃないですけど・・・人間味あふれるものを出すことに何の躊躇もなくなってきたし、そういう心境になれているのは今回のアルバムを作りきったからだと思います」


「一番大事なのは歌」

---「Don’t Think, Feel」に関しては、全体的に強いメッセージが込められている中でPORINさんのパートの儚い感じがかなり効いているなと思いました。

マツザカ「そうですね、あの曲のキラーフレーズだなと思っています」

atagi「あれはエポックメイキングですよね」

---あのパートに胸がキュッとしている人も多いと思うんですけど、PORINさん的にはあそこがこの曲にとって重要だ!みたいな意識ってありましたか?

PORIN「・・・いや、録るまで気づかなかったです」

マツザカ「全く興味ないってことね、この曲にね(笑)」

PORIN「そんなことはないです(笑)。ただ、今までのオーサムだったらありえない言葉づかいなんですよ、あれって。だから最初はちょっと頭の中にはてなが残りつつ・・・って感じだったんですけど、レコーディングして、MVを公開して、いろんな反応に触れる中で「みんなこういうのをいいと思うんだな」って後から理解しました」

---「Don’t Think, Feel」のPORINさんパートの歌詞って、アルバム全体のテーマともつながっているような気がしたんですよね。『ACT3』はいろんな曲に力強いフレーズがありつつも、曲のモチーフとしては気持ちが人に届かない感じとか・・・

マツザカ「はい」

---「Moonlight」は死んじゃった人をイメージしているのかな、とか。

atagi「おお、さすが」

---「届きそうで届かない」とか「いなくなっちゃう」とか、もっというと「生と死」とか、そういう現実社会において向き合わないといけないしんどいことがこのアルバムには描かれているように感じたんですよね。そういうもどかしさみたいなものがPORINさんのあの2つのフレーズに凝縮されているように思えて、そういう意味でも「Don’t Think, Feel」はアルバム全体のエッセンスが詰まっている曲なのかなと。

PORIN「なるほど」

マツザカ「新しいですね、その解釈は」

---今まで以上に現実と向き合っている感じはアルバムの最後の曲の変遷からも感じました。『ACT』の「涙の上海ナイト」は「上海」と言いつつもリアルではない空間がテーマになっていて、『ACT2』の「Lullaby for TOKYO CITY」では「東京」っていう自分たちが住む街について描かれていて、今回は「Around The World」で「世界」を題材にしつつも自分自身の内面に潜っていくような曲になっている。この変化が結構象徴的だなあと。

atagi「・・・次は何にすればいいですかね」

---「宇宙」じゃないですか。

3人「(笑)」

マツザカ「アルバムの最後の曲って、何かしら深い意味を持たせたくなってしまうんですよね。そういう曲って大体制作期間の中盤から終盤にかけてできてくることが多いんですけど、そのあたりから「ああ、アルバムができるんだな」って実感します。「Around The World」も結構ギリギリのタイミングでできました」

---言葉の話について続けて聞かせていただくと、PORINさんも高橋久美子さんと歌詞を共作していますよね。実際にやってみていかがでしたか。

PORIN「自分だけで歌詞を書くよりも、言葉がかなり色鮮やかになったなと思います。私が書いたら表面的に見えるものだったりえげつなくなりそうなものだったり、そういうものをいい具合にファンタジーに落とし込んでもらいました」

---メタファーをふんだんに使っている「Vampire」と<渋谷のミニシアター>から始まる写実的な「エンドロール」の対比も面白いです。

PORIN「「Vampire」はキラキラしている曲だったので歌詞もファンタジックにしたいなと思っていて、「エンドロール」はこれまでにない暗めの曲だったのでリアルな表現を心掛けました。曲調も歌詞も全然違うので、歌い方も自然と変わりました」

---「エンドロール」のつぶやくような歌い方は新境地が開けた感じですね。

PORIN「そうですね。これまでになかったPORINだと思います(笑)」

---(笑)。PORINさんボーカルの2曲って、もっとマニアックにしようと思ったらそういう仕上がりにもできると思うんですよ。リバーブいっぱいかけて、ボーカルと後ろのバランス変えて。

マツザカ「確かにそうですね」

---実際には歌がちゃんと聴こえるポップな曲になっているわけですが、もっといじりくりたい!っていう欲望みたいなものがあるんじゃないかなとか思ったんですけど・・・

atagi「いやー・・・ありましたね(笑)」

PORIN「ね」

atagi「「エンドロール」は僕が打ち込んだトラックが基本的にはそのまま使われている楽曲なんですけど、当初は裏テーマとして「オーサムなりのエイフェックス・ツインをやろう」って考えていたんですよ(笑)。ただ、作っているうちに肩の力が抜けていって」

マツザカ「エンジニアの浦本さんとは結構話し込んでたよね」

atagi「「そういうのをやりたいのもわかるけど、もっと自然でいいんじゃない?」みたいなことを言われたりしながら一緒に整理していきました」

---なるほど。オーサムがバンドとして志向している「広く届けたい」っていう話は、場合によっては音楽的な洗練性とトレードオフになる部分もあるのかなと思うんですが・・・

atagi「うーん、僕は全然そういうふうに思っていないんです。もちろん難しいバランスではありますけど、やれている人はいるわけで。僕らはボーカルありきのバンドだから一番大事なのは歌だと思うんですけど、歌のためにはサウンドが洗練されている方がいいこともあるのかなとか」

マツザカ「今のレジーさんのお話っていろんな場所で何となく共有されているテーマだと思うんですけど、実際に当事者になってみるとあんまり「これは大衆的、これは洗練」みたいな垣根は全然ないというか。僕らの判断がシンプルになってきている部分もあるんですけど、単純に「いいか悪いか」でしかないのかなと思っています」


「どーんと」「単細胞で」「遊びが必要」

---今作の制作過程で「Awesome City Clubって何なんだ?」という根源的なお話をメンバーでされたということでしたが、今回のアルバムを作り上げたことでその問いに対する答え、「オーサムらしさ」もしくは「オーサムらしくあるために必要なこと」みたいなものは見えてきましたか?

atagi「・・・これはあくまでも個人の意見なんですけど、僕としては全然見えていないです。ただ、見えなくていいかなと思っているというのが本心で、それを考えようとしているうちはなかなかクリアにならないのかなと。無意識の中にこそ答えがあると思うので、今はあえてそういう思考は切り離すようにしています」

マツザカ「僕はひとつだけ見えてきたものがあって、それは「真面目になり過ぎないこと」なのかなと思っています。セカンドで真面目になりすぎていたっていう話はさっきatagiからもありましたけど、「真面目に頑張ってクオリティ上げてきました」みたいなことばっかりやろうとしても面白いものができないなというのは最近ほんとに思っていて」

PORIN「遊び心は大事だよね。普段からもっと遊びが必要だなとは私も思っています」

atagi「ん、それは今遊んでないからそういうことを言っているの?」

PORIN「え?遊んで・・・いる方だけど、私は」

マツザカ、atagi「(笑)」

---なるほど(笑)。

PORIN「(笑)。バンドのみんなでソウルバーに行った時もすごくいいマインドが生まれたし、ああいうことは個々でもやっていく必要があるのかなと思いました。そこからバンドとしての余裕とかおしゃれさが生まれるような気がするし、お客さんも自分たちにそういうことを期待していると思うので」

マツザカ「「こういう感じの曲はこんな人に受けそう」とか「こういう仕掛けで」とか、そういうことは自然に気にしちゃっていたりするので、「何も考えない」くらいの方が僕らにとってのちょうどいいバランスなんだろうなと思います。いろんな思考の枠組みから自由になった方が、PORINの言う遊び心も生まれるのかなと」

---まさに「Don’t Think, Feel」ですね。必要以上に考えすぎないことが大事というか。

マツザカ「そうですね。今までは「この曲は誰々っぽいからやめよう」みたいなマイルール的なものもあったんですけど、だんだんそういうのものなくなりつつあるんですよね。自分たちがいいと思うならそれを信じてどーんとやっちゃおう、っていうのが今のバンドのモードです」

atagi「仮に考え足らずだったとしても、自分たちが勢い持って「これ、良くないですか!?」って言えるものを作っていきたいですね。「単細胞で行こう!」って言ったらちょっとおかしいですけど(笑)、あれこれ考えて深みにはまって、わけわかんないことになるっていうのが一番よくない」

---なるほど。で、そんなモードのまま、新しい曲を作り始めていると。

atagi「・・・外タレのインタビューみたいなこと言いますけど、今ものすごくいい状態なんですよ(笑)。ここからツアーもあるし、またいろんな経験ができればと思っています」

マツザカ「まだバンドとして経験が浅いから、この年になっても「成長している」みたいな体験ができているんですよね。些細なことなんですが、昔ラジオのレギュラー番組をバンドでやっていたことがあって、その特番をこの前久々に収録したんですよね。で、当時はみんなしゃべれなくて僕がMCをやっていたのに、今回はPORIN大先生が回すようになったり(笑)。僕ら自身が新しい体験をしているのと同じように、お客さんにも新しいものをどんどん提示できていったらいいなと思います」

---わかりました。では最後にこの先に向けた意気込み的なものをお聞きしたいんですけど、せっかくなんでラジオも回せるようになったPORINさんにしめていただけますと。

PORIN「はい(笑)。この先の話もあったんですけど、まずは今回のアルバムがものすごくいいものになっていると思うので、ぜひ聴いていただいて、良かったらライブにも遊びに来ていただきたいです。なんか普通だな・・・(笑)」

atagi「もっとチャラいやつ、遊んでるやついこうよ(笑)」

マツザカ「どのクラブでかけてほしいの?」

PORIN「・・・渋谷のContactでお願いします!(笑)」

---(笑)。今後の作品も期待しています。ありがとうございました。

3人「ありがとうございました!」


>>>

 司会者「インタビューは以上になります」

レジー「バンドとしてどんどんシンプルになっていってるのがよくわかる。あと洗練性と大衆性はトレードオフじゃない、って話も面白かった」

司会者「インタビュー中にもありましたが、この辺は作っている人よりも周りにいる人の方がとらわれているのかもしれないですね」

レジー「うん。紋切型のフレームだから便利なんだけど、そんな単純な二項対立の中で音楽を作っているわけじゃないんだよね。そのあたりはちょっと反省しました。1枚目から音楽的にも精神的にもだいぶ変わっていると思うけど、実はまだそれから1年と数か月しか経ってないんだよね。すごいスピードで進化しているし、この先も楽しみです。お時間いただきありがとうございました。今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「一旦未定で。もしかしたらフェスの話かな」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」


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