レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

アイドル話

アイドルと自意識、アイドルの自意識24 - アイドル楽曲大賞2015へ投票したけど語れることはあまりない

司会者「前回の更新から1か月以上経ってしまった上にもう年末なんですが」

 

レジー「正直この前のPerfume座談会でわりと力尽きた感はある。読んでいただいた方ありがとうございました。というわけで12月も半ばに差し掛かってきていますが、ここからはレジーのブログの年末恒例ということでベストソング、ベストアルバム企画に入ります。今回は先日投票の締め切られた「アイドル楽曲大賞2015の投票結果についてまとめたいなと」

 

司会者「1314にも同様の記事をアップしています」

 

レジー「今年は過去2年に比べてアイドル楽曲というものを聴く時間が大きく減ったのでちょっと投票が難しい部分もありました」

 

司会者「サブスクが始まってそっちで音楽掘るのに時間がとられたところがありますよね」

 

レジー「かなりでかい。やっぱり時間は有限だからなあ。この辺はもうちょっと考えたいところもあるのですが、まずは一旦投票結果と寸評的なものをざーっと行きたいと思います。あ、その前に補足。この企画、前年の終わり間際に発売のものも対象になっているんだけど、気分的に去年のものはいれていません。本当は今回の対象期間内だとNegicco「光のシュプール」が1位なんですが、それは自分の中で対象外にしています。あと例年通りPerfume、去年からの清竜人25もなんとなく除外しています。その辺を踏まえまして、メジャー楽曲、インディーズ楽曲、アルバム、推し箱の4部門についての投票結果をどうぞ。まずはメジャー楽曲から」
 

 

1位:HKT4812秒」


 

2位:吉田凜音「真夏のBeeeeeeaM.


 

3位:lyrical school「ワンダーグラウンド」


 

4位:東京女子流「Stay with me


 

5位:乃木坂46「今、話したい誰かがいる」



司会者「1位はHKT48です」

 

レジー「これはほんとにいい歌だと思う。「言い訳Maybe」の人がやってるアレンジもツボだった。サビのメロディラインがNico touches the Wallsみたいだからぜひカバーしてほしいです。吉田凜音は、暑さとSKE48の衝撃のせいであまりちゃんと回らなかったTIFで見てすっかり好きになりました。その後見れてないのでまた見たいな。リリスクは安定のって感じで。この曲は「とりあえず流行ってるソウル調やっとけ」の先に進んでる感じで良かったです」

 

司会者「4位の女子流はどうなんですか」

 

レジー「アイドルやめます宣言もあったし悩んだけどこの曲はよく聴いたので少し逡巡しましたが入れました。5位の乃木坂46は「5曲目に入れるのがちょうどいい曲」っていう位置づけで。もうひと押し欲しかった感じもありつつ、よくできた曲だなあと。あと投票した後に見たFNS歌謡祭のパフォーマンス、西野さんが最高だったよ」

 




司会者「延々ツイートしてたこれね」



レジー「衣装が良かったので全員素敵だったけど、西野さんは髪型含めて最高だったうえにこの「トがあり」の部分ね。動画で言うと116で一時停止して見てほしい。ちょっと画質粗いから顔は分かりづらいけど、いかに西野さんの動きがほかの人と比べて最高かよくわかるから」

 

司会者「相当熱がこもってますね。この話はこのくらいにしてインディーズ部門に進んでください」

 

レジー「インディーズ部門は正直苦労しました。とりあえず選んだ5曲はこちら」
 

 

1位:あヴぁんだんど『点滅ばいばい』



2位:Maison book girl snow irony


 

3位:FaintStar『フィルム! フィルム! フィルム!


 

4位:Stereo Tokyo PARTY PEOPLE


 

5位:photograph『純情ジレンマ』


 
 

司会者「1位はあヴぁんだんどです」

 

レジー「作詞が最果タヒなんだよね。サンクラで聴いて一気に胸を掴まれました。ブクガは何となく忌避していたんですがアルバム聴いたら度胆抜かれました。FaintStarphotographに関しては、「もうこういう渋谷系オマージュとかソウルベースのアイドルポップスとか飽きたわー」とか最初言ってたけど結局好きっていう。Stereo TokyoTIFでマジで喰らってしまったので、敬意を表してここに入れました。あそこまで馬鹿に振り切れるのはすごい。続いてアルバム部門と推し箱部門」

 
 

1位:Maison book girlbath room

2位:吉田凜音『Fantaskie

3位:lyrical schoolSPOT

 

推し箱:HKT48

 
 

司会者「HKT2年連続ですね」

 

レジー「今までの音楽関係なく好きってところに今年は「12秒」が加わったので文句なしです。アルバムの上2枚は、全体での私的ベストでも上位に来るくらい好きです。リリスクは曲と同じく順当ですね。投票結果はこんな感じです」

 

司会者「通して何かあれば」

 

レジー「今年は「アイドルシーン見てます」なんて言うのも憚られるくらい接触量が減ってしまいました。これはさっき挙げたサブスクのせい、それによるアイドルに割く時間の低下っていう自分の事情がでかいけど、もう少しマクロでみると「アイドルという文化が「アイドル戦国時代」とか持てはやされていろんなものが出てきた結果、もはや「細分化」ですらなくて「断片化」、かけらが何となく散らばってて「全体」という概念はないみたいな状態になっている」という感触があって、ここに生半可な気持ちでコミットするのが難しいなあと思うようになったってのもあります。ごちゃごちゃ書いたけど、平たく言ってしまうと「何を聴いていいのかわからない」状態が続いて距離を感じてしまったというのが自分にとっての2015年のアイドルシーンの印象」

 

司会者「アイドルの数もイベントの数も増えてますしね」

 

レジー「うん。一方で、いろいろ出てきたわりには次の大きな収穫につながる芽みたいなものがあったかというと・・・という感じがする。この辺は詳しく追ってる人からするとはあ?って言われるかもしれないけど。これって、2000年代初頭に洋楽が置かれていた状況と似ているような気がしています。なんか細かくなりすぎてもうよくわからん、そしてメディアも的確にはこの状態を拾えていないというどうしようない状態に突入しつつあるのかなとか」

 

司会者「うーん」

 

レジー「まあこれは流れについていけなかった人の戯言だと思ってもらっていいです。「シーン全体がどうのこうの」みたいなある種冷やかし的な人を追い出せたんだとしたら、もしかしたらそれはそれでいいことなのかもしれないし。そういう意味で、僕自身は残念ながら「冷やかし」の域を出ることができなかったんだなあと改めて思いました。とは言えたぶん来年も「あー何聴いていいかわかんね」とか言いながらも結局いいものには出会ってるように思うし、自分なりの距離感でこの文化を楽しんでいければいいなと。2016年のアイドル曲も楽しみにしています。あとその前に、年末に開票される順位と自分のもののギャップにも注目しています。「12秒」何位になるかな。今回はこんな感じで。たぶん次回は年間ベストアルバムです」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」


特別企画:Perfume「LIVE 3:5:6:9」を巡るファン座談会

司会者「前回の記事で、引き続きPerfume話をやるかもという予告がありましたが」

 

レジー「その予告通りということで、今回は先日のワンマンライブ「LIVE 3:5:6:9」についての座談会をお送りします。僕の感想は前回の記事に大体書いたので、ここでは別の人の意見も聞いてみようということで。日頃からPerfumeについて話している友人を中心に3名に集まっていただきました。こんな方々です」

 

◆五百蔵容(いほろい・ただし)

1969年生まれ。株式会社セガ(現・株式会社セガゲームス)にてゲームプランナー、シナリオライター、ディレクターを経て独立。現在、企画・シナリオ会社(有)スタジオモナド代表取締役社長。2005年頃に秋葉原の路上で偶然Perfumeと出会い、気になって活動を追い始めたところ深みにはまって現在に至る。ゲーム、Perfume以外にも音楽、サッカー(ジュビロ磐田のサポーター)、映画など様々なエンタメへの造詣が深い。

Twitter@500zoonoteも同)

 

◆澤山大輔(さわやま・だいすけ)

1978年生まれ。Perfumeと同じく広島出身。複数のサッカー系媒体、IT系企業を経てフリーのWEBディレクター/編集者に。現在はスポーツマーケティング専門サイトの立ち上げ準備中。2007年にPerfumeと出会ったいわゆる「ポリ新参」。もともとの好みはマキシマム ザ ホルモンなどのラウドなロック。サンフレッチェ広島のサポーターでもある。

Twitter@diceK_sawayama

 

◆ピエール中野(ぴえーる・なかの)

言わずと知れた凛として時雨のドラマーにして、Perfumeの魅力をブレイク前から発信し続けているアンバサダーのひとり。今回は澤山さんのお友達として飛び入り参加。

Twitter@Pinakano

 

司会者「なんかすごい人が混ざってる気が」

 

レジー「あくまでもPerfumeファンの集いですので。座談会は三人祭の話から始まり、「3:5:6:9」のセットリストやすごろくの話、そしてこのライブの何がすごかったのかをステージプロダクションから解き明かす五百蔵さんの解説、そしてPerfumeの今後についてと展開します。踏み込んだ考察もしていますが、あくまでも「ファンの妄想」として捉えていただけると幸いです。いつも以上に長い、超長い記事ですがのんびり楽しんでいただければと思います。それではどうぞ」



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「三人祭」のこぼれ話と2人の信者の感想

 

---まずは三人祭のご出演、お疲れ様でした。僕は凛として時雨のライブを初めて見させていただいたんですが、武道館の空気が一気に変わったのを感じました。

 

中野「おそらくああいうステージを求められているのかなと思ったので、MCも入れないセットリストを組みました」

 

---MCはありませんでしたが、Perfumeの自己紹介を真似していましたね(注:「3人合わせて、凛として時雨です!」とポーズ付きで自己紹介)。

 

中野「あれ実は前回のツアーから勝手に1人でやってたんですよ。勿論、2人ともやってくれなかったですが(笑)今回のライブ前にTKから「やった方がいい?」って言われて、「やれるならやった方がいいよ!絶対喜ぶよ!」と。せっかくPerfume誘ってくれんだし、そういったサービス精神はちゃんとあるバンドです。みんな(特に時雨を知ってる人は)びっくりしたと思うんですけど(笑)

 

---ちょうど席がサブステージの目の前だったのでPerfume3人とのトークパートも間近で見れたんですが、あそこも圧倒されました。Perfumeへの愛がほとばしってるというか。

 

中野「もっといろいろ話したかったんですけどね。全然時間が足りなかった(笑)。例えばあの日つけていたブレスレットは、Perfumeの初めての武道館ライブ(注:200811月)のパンフレットでかしゆかがつけていたのと同じものだったんです」

 

---(笑)。

 

中野「誰も気づいてくれなかったんですけど、かしゆかだけ気づいてくれて。さすがですよね。昔自分のライブで「Perfume ひこぼし募集中」(注:20077月に代官山UNITで行われたライブ)で「いまハマってるアイドルが理想の男性について話してたんだけど、自分には一個も当てはまる要素が無くて箱推しに変えた」という話をMCでしたけど全く反応がなかった、とかネタはたくさんあったんですけど時間の都合上泣く泣く断念しました

 

澤山「時間足りないですよね。もっと聞きたかった」

 

---最後に出演者が全員登場した「Puppy love」ではエアドラムを披露されていました。

 

五百蔵「あそこでエアドラムを発見した時はみんな「うおー、ピエール!!」ってなりましたよ」

 

中野「ありがたいです。ワールドツアーTシャツに着替えたんですけど、それも誰にも気づいてもらえず」

 

一同「(笑)」

 

---あそこはテレビでもちょいちょい流れていましたね。

 

中野「テレビだと「セッションには凛として時雨も参加!」って言われてたんですけど、ピエール中野しかいないっていう・・・(笑)。フジファブ先輩(フジファブリック)からも「ピエールしかいないの!?」って言われたんですけど、「大丈夫です、俺3人分なんで、まあ見ててください」って

 

---ちなみに「3:5:6:9」のライブは・・・

 

中野「時期的にいろんなことが重なって行けなかったんですよ・・・めっちゃ行きたかったんですけど。なので今日はぜひ皆さんの話を聞きたいなと。誰に聞いても「すげー良かった」しか言ってないから」

 

---僕が行ったのは27日で、ほんとに感激してブログにも感想を書いたんですけど。お二人が行かれたのはどの回ですか?

 

五百蔵「僕は29日と30日です。30日は家庭の事情で「3:5:6:9コーナー」(すごろく)の途中で退席してしまったんですけど。でも29日だけで十分満たされました」

 

澤山「僕は29日、あと107日の広島」

 

---やばかったですよね。

 

澤山「やばかった」

 

中野「・・・そんなにですか?(笑)」

 

澤山「そんなにですよ」

 

---各論に入る前に、まずはお二人のざっくりした感想をいただければと思います。

 

五百蔵「僕の中でPerfumeのライブのフォーマットは2009年の直角二等辺三角形ツアーで固まったという印象があるんですけど、2013年のドームでそのフォーマットを使い尽くしちゃったなあと思っていたんですね。2014年のぐるんぐるんツアーもすごく良かったけど、今までの使いまわし感、自己模倣感が否めない気がしていて。だからファンとして勝手に心配していたんですけど、今回の武道館ではそれが全部払拭されていて、さらにあと10年戦える新しいコンセプトも示唆しているように感じられました。もうひれ伏すしかない、みたいな気分になっています」

 

澤山「僕自身はもうちょっとパーソナルな受け止め方をしていて。自分がPerfumeにはまったのは「ポリリズム」の頃くらいからなんですけど、ちょうど人生がしんどい時で。その当時聴いていた曲、たとえば「Twinkle Snow Powdery Snow」とか「スウィートドーナッツ」とかを武道館で見れたのがすごくジーンときましたね。もう日の目を見ないのかな、っていう感じの曲を結構やってくれたからセンチメンタルな気持ちになりました」

 

五百蔵「それもあのライブの良さを表していますよね。過去と未来を一緒に提示してくれるライブだったと思います」

 

 

神業、すごろくコーナー

 

---古い曲が演奏されたというのは主にすごろくのコーナーですよね。僕が行った日は「レーザービーム」「未来のミュージアム」「Twinkle Snow Powdery Snow」「1mm」「彼氏募集中」だったんですけど、個人的には「Twinkle Snow Powdery Snow」はかなり久しぶりに見たので嬉しかったです。

 

 

中野「久しくやってないですよね。僕も見たいなーと思ってフェスでDJやるときにサウンドチェックでかけたりしてたんですけど。そしたら自分のいない武道館でやるという」

 

一同「(笑)」

 

中野「まあそんなこともあるよねって」

 

五百蔵「29日は「微かなカオリ」をしばらくぶりに見れたのが良かったです」

 

 

---あれもずいぶんやってないなあ・・・あのコーナーは最近のPerfumeのライブだと構造上入れることのできない即興的な要素が強調されていましたよね。壮大なステージばかり見ていて忘れ気味だったけど、「ああ、ほんとはこういう人たちだよね、生身の3人そのものがすでにかっこいいんだよね」っていうのが改めてわかったというか。その場で立ち位置を決めていく感じはかなり迫力がありました。

 

澤山「今回のライブについて「3569」でツイートを検索してたら偶然見つけたんですけど、9nineの佐武宇綺さんが「あんなに大変なことを、あんなに楽しそうにやることに衝撃を受けた」と話をしていて。同じ演者から見てもすごい領域に到達しているんだなあと改めて実感しました」

 

中野「裏側を知っていると余計にそうなりますよね」

 

五百蔵「すごろくのコーナーは、もしもあの3人がMIKIKO先生の作る壮大なステージだけをやっていたとしたらきっとできなかったんじゃないかなと思うんですよ。ワールドツアーに出て、3人の立ち位置だけで勝負が決まるような状況で自分たちが主導権を握りながら質の高いステージを作ってきたからこそ、あんなにシビアな企画を僕たちにとってのお楽しみになってしまうようなレベルまで昇華できたんだと思うんです。これまでやってきたことがすべて積み重ねになってこの企画があるし、そうやって一貫性を保ちながら表現の強度を高めていっているのはほんとにすごいなと」

 

---「チームPerfume」と言うとMIKIKO先生や真鍋大度さんといった後ろの「大人たち」がフォーカスされがちですけど、Perfume3人もただ担がれているだけじゃないんですよね。パワーバランス的には優秀な裏方と主役の3人がしっかり拮抗しているというか。

 

澤山「明白にそうですよね。いまだにそういう勘違いをしている人がいるのかもしれないけど、もはやそういうレベルではないと思っています。裏方の人たちがレベルの高いものを作れるのも、ひとえに彼女たち自身がハイクオリティだからっていう」

 

---すごろくのコーナー以外でセットリストについて何か気になったところはありましたか。

 

澤山「「GAME」の使い方が面白かったですよね。すごろくのほわんとした雰囲気をあの曲で一回リセットしてから「STORY」に突入するという構成が考えられているなあと思いました」

 

五百蔵「僕は「FAKE IT」ですかね」

 

 

---1曲目、どアタマです。

 

五百蔵「この選曲自体がこのライブ全体においてすごく重要な役割を果たしていると思いますし、最初にお話しした「新しいコンセプト」にも関連しているという認識です。それについて、これまでのPerfumeのライブのセットの変遷も踏まえて自分なりの考察をお話したいと思います」

 

 

「視野の一体化」とWE ARE Perfumeの秘密 ステージプロダクションから見るPerfumeライブの進化

 

五百蔵「まずこの話の前提となるのが、視覚演出においては「登場人物と観客の意識をいかに同一化させるか」が肝である、ということです。たとえば黒澤明監督の映画『用心棒』なんかはそれがすごく巧みに実現されているんですよね。舞台となる宿場町について、主人公視点だと中央部はこう見える、外側からはこう見える、というのをストーリーの中で淀みなく表現していく。それによって観客はその宿場町の構造を知らず知らずのうちに立体的に捉えていて、だからこそ「主人公が歩いていて、ぱっと振り向くとやくざがいる」みたいな描写があったときに「振り向いた先にどんな景色があるか」を自然とイメージできるんです。そういうことの積み重ねで、主人公と観客の気持ちが一体化してくる。この手法はホラー映画なんかでもよく使われています」

 

---あー、なるほど。

 

五百蔵「中田秀夫の『リング』を例にとると、部屋のここにテレビが、ここにドアがあるというのを自然に見せておく。そのうえで何か出るぞ、という雰囲気を出しておけば、ドアから家族がふいに入ってくる、というだけでも観客にとっては恐怖になる。観客の頭の中で部屋の構造がイメージできているので、ちょっとしたショックがよりリアルに感じるんです。で、ここまでを踏まえてPerfumeのライブの話をしたいんですけど、まずは2010年の東京ドームです」

 

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(作成:五百蔵氏)

 

五百蔵「このライブはものすごく壮大な試みで、いかに3人でこの空間を支配するかっていうことが考え抜かれていると思うんですけど、ここまでお話しした「主人公と観客が視野を共有して一体感を得る」という観点から見るとうまくいっていない部分が多いステージなんです」

 

澤山「確かに、どっち見ていいかわかんない瞬間がたくさんあった記憶があります。同一視野に3人を収めづらかったというか」

 

五百蔵「ドームの空間を物理的に埋めることを優先した結果、その意図のために観客の視線があっちこっちに振り回されて「Perfumeがどこにいるか」「ステージでどういう展開になっているのか」が直感的に把握しづらい構造になっています。中押しの「Perfumeの掟」も違う場所から3人が登場する演出でしたしね。ライブ終盤でPerfume号に乗って場内を一周したのにはそういうライブの中で少しでも会場全体の目線を集中させようという狙いがあったのかもしれないですが、それについても「Perfume1曲でぐるーっと全体を回るやり方だと間延び感が出てきてしまったりして、何をやっても演者と観客が一体感を得づらい状況に陥ってしまっていたと思います。Perfume3人にとってもたぶん同じで、緊張感のあるものすごくテンションの高いパフォーマンスを展開していたにもかかわらず、おそらくオーディエンスのことを客席のブロックごとに分断して認識せざるを得なかったと思うんですよ。つまり、自分たちが「ドーム全体を浴びれない」という環境になってしまっていました。その課題を払拭したのが、2013年のドームライブです」

 

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(作成:五百蔵氏)

 

五百蔵「このセットは、観客のほとんどが「どこで何が起こっているか」をある程度一望できるようになっています。さらに、ステージの形が円状になっているので、観客が彼女たちの動きをゆったりと見渡せるだけじゃなくて、Perfume3人も客席を滑らかに見ることができるように設計されているんですよね。これは3人がアームで上空に上がる「ポイント」の映像を見るとよくわかります。双方がお互いをしっかり意識できるようなステージセットになって、僕ら観客の気持ちと彼女たちの気持ちが一体化するようになったのがこの時のライブだったと思います」

 

中野「全然違いましたよね、確かに」

 

五百蔵「Perfume号の使い方も2010年とは違って3曲使って全体を回る形になったので、どの席に座っていても「あ、来た来た!」とじっくり楽しむことができました。さらにParty Makerの途方もない仕掛けも、平面上の方向を散らすんじゃなくて縦方向に完結させているので、これも何が起こっているのか一目でわかる」

 

澤山「確かに2010年に縦の発想はなかったですよね」

 

五百蔵「この時のライブで、Perfumeはどんなでかい箱でも自分たちが見ているものと観客が見ているものを一体化させることができるというステージングの極意を得たと思うんです。で、ここまで踏まえて今回の「3:5:6:9」の話に入るんですけど」

 

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(Perfume展後編 撮影:澤山氏)

 

五百蔵「「3:5:6:9」の円形ステージは、ほぼどこからでも全部丸見えです。Perfumeのライブにはおそらく「Perfumeが見ているものと観客が見ているものを、いかにしてできるだけ近づけるか」というコンセプトがあるはずなので、この形はまさにそれと合致していると思います。そして、最初にお話しした『用心棒』や『リング』のように、観客に対して「このステージを立体的に感じさせる」というのを徹底してやっていくんですね。1曲目に3人がステージ中央で踊る「FAKE IT」をやったのは、最初に観客の意識をステージのど真ん中に集中させるためです。しばらくそのフォーメーションの曲をやった後に、すごろくのパートではステージの外周にセットされたルーレットの上を3人が実際に移動していましたよね。その動きを追うことで、観客はステージの形を意識するようになる。さらに曲ごとにどちら側を向いて歌うかを「指示書」という演出を介して決めることで、ますます平面上での方向に関する意識づけを進めます。そこまで終わったら、今度は怒涛の縦の展開です。「STORY」は上から3人の映像が降ってくるし、「Party Maker」では下から上へせり上がる。そういう操作で、観客は知らず知らずのうちにPerfume3人が立っている空間を立体的に認識していくんですね。で、それも全部最後の「STAR TRAIN」を見せるための伏線になっていて」

 

---はー・・・なるほど。

 

五百蔵「「STAR TRAIN」ではステージ中央に3人が向かい合いながら歌ってそのままステージが上がっていくんですけど、3人の真ん中にカメラがあって、武道館全体の観客の姿を映し出していく。これはつまり、彼女たちがライブ中にずっと見てきた景色なんですよ。観客ひとりひとりがこのステージの構造を無意識の中で立体化していて、そこに彼女たちの視野が疑似的に重なる。言い換えると、映画で言うところの「登場人物と観客の視野の一体化」が起こる。つまり「Perfumeがこのライブ中にずーっと見ていたものを、自分たちが今見ている」という状況になるんですよね。そして、そんな演出と一緒に歌われているのが「ここが新しいスタートラインですよ、みんなで進んでいきましょう」っていうメッセージがこもった「STAR TRAIN」であると。まさに「WE ARE Perfume」ですよね」

 

---完璧ですね。

 

五百蔵「今回のライブで、Perfumeはさらにアーティスティックな発展を遂げるための基礎を作ったんだと思います。ここまでの規模感で本人たちと観客の視野を一体化させることで多幸感を増幅していくアーティスト、他にいないですよ」

 

中野「視野の一体化といえば、大森靖子も中野サンプラザでステージに鏡を置いて観客を映すっていう演出をやっていました

 

五百蔵「なるほど。たぶんインタラクティブな時代に表現をやっている人たちにとっての共通の課題意識なのかもしれないですね」

 

 

Perfumeの未来はどこまで続くか、という急浮上した問い

 

澤山「Perfumeがこの先戦えるコンセプトを獲得したっていう五百蔵さんのお話はすごく納得できるんですけど、一方で僕は広島のMCであ~ちゃんが「いろいろ悩んだけどPerfumeを続けて行くことに決めました」という趣旨のコメントをしたのがすごく気になっています。今のPerfumeって、第二幕の終わりに近づいているんじゃないかという印象があって。第一幕がデビューから「ポリリズム」でのブレイクまで、第二幕が今の大活躍期だとすると・・・こういう集大成的なすごいライブを見せてくれたからこそ、ここで一旦休んでくれてもいいんじゃないかなんて気持ちにもなりました」

 

五百蔵「いろんなインタビューの発言とかを見ていると、一度自分たちの人生のことはペンディングにしてここからがラストスパートなのかなという気もしますよね。いずれにしてもそんなに時間はないのかもしれない、という感触は澤山さんと同じです」

 

---Perfumeの引き際って話ですか。どういう感じになるんですかね。

 

澤山「単に解散という形にはしないと思いますし、してほしくないですね。仮に活動停止ということがあったとしても、戻ってくるまでにアミューズがファンベースをつなぎとめるためにいろいろやってくれることを期待してますけど・・・それこそ中野さんと掟ポルシェさんと宇多丸師匠でPerfumeについて語る会をやりますよね(笑)」

 

中野「やれることはまだまだいっぱいあるんですよね。「アメトーーク!」だって「まだやってなかったんだ?」って感じでしたし」

 

五百蔵「一度活動停止してから戻ってくると、どうしても懐メロ大会みたいになってしまう人たちも多いですよね。Perfumeはこれまでもアイドルの常識みたいなものをことごとく覆してきたから、カムバックの仕方も見た事のないようなものであってほしいなと」

 

中野「メンバーそれぞれがちゃんと批評性を持っているから、「周りがこう思うだろうな」みたいなことは結構把握しているんですよね。だからあまり心配はいらないかなと思っています」

 

---あとどのくらいの時間が残されているかはわかりませんが、個人的にはそろそろ「ポリリズム」「チョコレイト・ディスコ」を更新する「世間的な代表曲」があるといいなと思っています。

 

澤山「それが最後にして最大の難関かもですね。これがPerfumeっていう完成形ができちゃってますし」

 

五百蔵「僕は「Wonderwall」くらいの曲が・・・」

 

---おお!(笑)

 


 

澤山「マディソン・スクエア・ガーデンで合唱するための」

五百蔵「これから世界でいっぱしの存在感を示すには、やっぱり曲に尽きると思うんですよね。いくらテクノロジーが凄まじいステージをやって「WE ARE Perfumeで一体化だぜ」って言っても、それだけだと「ライブのすごいグループがいたね」で終わっちゃうから。それこそ人種を越えて感動できるような曲があったらほんとにいいなと思います」

 

---ありがとうございました。では最後に今回のライブについて、もしくはそれを踏まえたPerfumeというグループについてそれぞれ一言ずついただけますと。

 

五百蔵「曲もダンスもステージも、最も基礎的で伝統的な技術を踏まえ作る。その上で最高に新しいことをやる、しかもハイコンテクストなものではなく、その歌やダンスが幸福、感情、様々な人間性をただただ増幅して奏でる。それが観客にとっても幸福、感情として響く。それがPerfumeのライブだと思うのですが、今回はその集大成であり、新たな始点を刻むものだったなと感じています」

 

澤山「フォーマット的に別次元に行く素地はできたし、いくらでも先を見据えられるスタッフに恵まれていますし、何より本人たちにその実力が十分に備わっている。個人的には一生何らかの形で続けてほしいなと思っているので、そういう視点から意思決定をしてもらえたらいちファンとしては嬉しいですね。あとは、欲を言えばアンセムがあればいいなとは僕も思います」

 

中野「そうですね、とりあえず3人ともかわいいからそれに尽きるかなと・・・(笑)」

 

---(笑)。その通りですね。今日はどうもありがとうございました。

 

 

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司会者「ホントに長いですね」

 

レジー「うん。これは長い。最後まで読んでくださった方には感謝しかない。今回は特に補足とかないです。みんな「WE ARE Perfume」見に行こうね。こんな感じで」

 

司会者「次回はどうしますか」

 

レジー「もう11月だし今年終わろうとしてるのでそういう話をするかもですがまた考えます」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識23 - 節目のステージでPerfumeが見せた地力、そこから派生する妄想

レジー「いやー最高だったねPerfumeの武道館」

 

司会者「921日から続いた各種イベントが終わりました。結成15周年、メジャーデビュー10周年の記念イベントです」

 

レジー「ほんと素晴らしかった」

 

司会者「この人たちのライブは基本ネタバレ厳禁ということで、最終日の107日のライブが終わった直後から関連ツイートがTLに溢れてましたね」

 

レジー「もうまじで最高だったよ」

 

司会者「さっきからそれしか言ってませんが」

 

レジー「そういう感想しか出てこないくらいのライブだったんだよね。というわけで、無事にすべての行程が終了したので今回のライブについての個人的振り返りをやりたいなと思います。僕が行ったのは923日の三人祭と927日の「LIVE 3:5:6:9」の2日目です」

 

司会者「どちらもアリーナ席でしたね」

 

レジー「今まで武道館、代々木、たまアリ、東京ドーム、京セラドームと大箱で見たけどアリーナ席初めてでした。PTAさまありがとうございます。そんな感じで、まずは三人祭の話から」
 

 

三人祭で示した「J-POPのハブ」としての可能性

 

司会者「「三人祭」はイベントタイトル通り、Perfumeと同じく三人組だけが出演するイベントです」

 

レジー「これまでは対バン形式で各地でやってた「Perfume FES!!」の発展形って感じだよね。司会者がいたり、セット自体も比較的シンプルなものだったり、いわゆる「フェス」感が強調された形になってた。なのでPerfumeのライブらしい「テクノロジーを駆使した演出」みたいなのはなかったけど、その分3人のフィジカルな魅力を堪能できました。1曲目の「Pick Me Up」からすごかったなあ。しかし「NIGHT FLIGHT」があんなにエロい曲だったとは」

 

司会者「はあ」

 

 

レジー「この動画は6年くらい前のやつだけど、古い曲に新たに色気が付与されていってるのはいいですね。三人祭に関しては、パフォーマーとしてのPerfumeはもちろんのこと、オーガナイザーとしてのPerfumeという面でも良かったです」

 

司会者「それぞれの出演者に対して送ったオファーVTRも紹介されていました」

 

レジー「どういう意図のイベントかが丁寧に伝わってきました。この日はトップバッターがNegiccoだったんだよね」

 

司会者「初っ端から「圧倒的なスタイル」で、恒例のラインダンスはPerfumeも出てきて6人でやってました」

 
レジー「いきなりクライマックス!って感じだったねあれは。最近のPerfumeNegiccoの絡みは良いよね。これに関しては以前のコンバットRECさんのツイートが端的にまとめてくださってます」



司会者「地元を背負って、苦労もしつつ、いろんなシーンの人たちを味方につけながら大きくなろうとしている、というPerfumeがたどった道筋をNegiccoも進んでいると」

 

レジー「いい話だ。次の空想委員会、Perfumeとのコラボがなかったのは何か気の毒だった。WEAVERは結構久々に見たけど「シークレットシークレット」のカバーはいけてたね」

 

司会者「間奏でPerfume3人も出てきて、6人でのピアノ連弾も披露しました」

 

レジー「アリーナ前の方の下手きわきわの席だったので、ピアノ弾いてる3人の後ろ姿というレアなものが見れましたよ」

 

司会者「WEAVER3人はPerfumeと仲良しなんですね」

 

レジー「事務所も一緒だしね。「6人でご飯食べに行ったことがある」って話をしたとき会場がちょっとざわっとなったのが面白かった。僕もざわっとなった」

 

司会者「空気を察してか「すいません!」って言ってましたね」

 

レジー「あのリアクション良かった。WEAVERは音源よりライブのが全然いいよね。以前MUSICAのレビューで結構辛いこと書いちゃったんだけど、ライブのフレッシュさがもっと音源に反映されれば・・・!とか思いながら見ていた。で、次に見た凛として時雨は初だったんですけど」

 

司会者「すごかったですね」

 

レジー「一瞬で武道館の空気変わっちゃったもんね。まったく通ってきていないバンドだったんだけど、ほんとにかっこよかった。あと今回のライブは演奏後にPerfumeのメンバーとサブステージでトークするコーナーが設けられてたんですけど、そのときのピエール中野がまたすごかった」

 

司会者「Perfume3人、司会のとーやま校長、あとピエール中野の5人でのトークでした」

 

レジー「ちょうど席の目の前でそれが行われてたんだけど、Perfume3人がいるのに思わずピエールを見てしまう吸引力。Perfume愛が溢れまくってたね。ほとばしってた」

 

司会者「凛として時雨の次がフジファブリックでした」

 

レジー「一緒にやるのは「若者のすべて」かな?と思ってたら「夜明けのBEAT」だったね。『モテキ』のつながりを忘れてた」

 

司会者「あ~ちゃんは山内総一郎と仲良しなんですね」

 

レジー「なんか親密な感じしたよね。全然知らなかった。フジファブがこの日やった「Green Bird」良かったです」

 

司会者「アゲハスプリングスが絡んでますね」

 

レジー「一番新しい「GirlGirlGirl!」も今までにない感じだし、また新境地を開拓してていいなあと」

 

司会者「ここまでざーっと三人祭の出演者を振り返ってきましたが」

 

レジー「まあ見事にバラバラなメンツだよね。考えてみたらフジファブとNegiccoが一緒に出るイベントとかなかなかレアなんじゃないかな」

 

司会者「この辺はPerfumeの求心力あってこそですよね」

 

レジー「今回のライブパンフレットにも「ありがたいことに、結構「声がかかるの待ってますけど」「オファーまだ来てませんが」と言われることも多くなってきたんです」という話が載ってたんだけど、そもそもファンが多いんだろうね業界の中でも。あらゆるところに越境していろんなことをやった結果、謎のハブ化を遂げているというか」

 

司会者「MJの司会をやってるのも大きいですよね」

 

レジー「そうそう。Mステのタモリと言ったら大げさだけど、満遍なくいろんな人が出る音楽番組の司会だということも含めて、細分化されまくっている日本の音楽シーンのちょうど交わるところにいる人たちなんだよね。三人祭はそういうことを思いました」

 

司会者「そのうちほんとに野外で複数ステージ作って夏フェスみたいなことができちゃいそうですね」

 

レジー「ほんとだよね。これまでの対バン企画で出てた人も含めれば相当豪華なイベントになるよね。ついでにお笑い芸人にも好きな人いるみたいだから、お笑いのステージも作ったりして」

 

司会者「大トリではPerfumeらしい派手な演出もかますと」

 

レジー「どう考えてもいいイベントになるな。早く企画してほしい」

 

 

「アイドル」の向こう側へ、LIVE 3:5:6:9

 

司会者「続いて、ワンマンライブ「LIVE 3:5:6:9」の話にいきましょう」

 

レジー「何はなくても円形ステージですね」

 

司会者「10年の東京ドーム以来でしょうか」

 

レジー「これは明言されてないけど、去年の代々木第一体育館でのライブが「09年代々木のリベンジ」的な意味合いがあったのと同じで今回の円形ステージにも「10年東京ドームのリベンジ」みたいな気持ちが込められてるのかなとかちらっと思った。あの時のライブってメンバー的に納得いってない部分があったような話も後から出てきてたし、超個人的な話だと普通のスタンド席だったのにスクリーンの場所との折り合いが悪くてステージが結構見えづらくて、それでライブに没頭できなくて「チームPerfumeでもこんなことあるのか」と感じた記憶もあって。そういうものの払拭みたいなことがあるのかなとか。わからないですが」

 

司会者「今回の目玉として、リストアップされた過去曲の中から歌う曲をその場で振るサイコロの出目で決める企画がありました」

 

レジー「曲決めて、円形ステージだから正面どこにするか決めて、それに合わせて踊りのフォーメーション決めて、っていうのをその場でやると。このパートはほんとにすごかった」

 

司会者「音響や照明も関係するわけで、チームとしての総合力が問われますね」

 

レジー「うん。特にすごかったのは3曲連続でやるところで」

 

司会者「27日は「Twinkle Snow Powdery Snow」→「1mm」→「彼氏募集中」という流れでした」

 

レジー「この中で「1mm」についての動きを決めてるときに、あ~ちゃん主導で軽くやり取りする中で3人の意識がぱーっと揃った瞬間があったんだよね。あそこはマジで鳥肌でした。チームPerfumeがすごいのは当然として、そのフロントに立っている3人がやっぱりすごいというのを証明したパートだったように思います」

 

司会者「あの場で3人だけでさくさくいろいろ決めていく感じは、よくある「アイドルは大人の操り人形」的な話の対極にある光景でしたね」

 

レジー「さすがにそういうことを無邪気に言う時代遅れな人は減っている感じするけど、確かにそんな話を完全に無効化する迫力があった。今現在Perfumeはアイドルかアーティストかみたいな話は不毛なのでしませんが、少なくとも「グループアイドル」というものを突き詰めていった先にこういう世界が広がっているというのは、みんながみんなできることではないにせよアイドルシーンの希望になる気がする。あとこの企画はここ最近のPerfumeの基本線である「圧倒的に構築されたものを見せる」っていう考え方に揺らぎを与えているというか、その場で表現が生み出されていく即興的な側面を提示しているのも興味深かったです。有機体としてのPerfumeを取り戻すというか。テクノロジーの受け皿的な位置づけが最近は強調されがちだけど、そんな中で改めて「デジタル」と「アナログ」のバランスを取ろうとしてるのかな」

 

司会者「そんな企画もありつつ、後半戦の最初の「STORY」では映像を駆使したスーパーな演出が繰り広げられました」

 

レジー「上空から3人の映像が降りてくるんだけど、最初はほんとにどれが本物の3人なのかわからなかった。あれ見てて思ったんだけど、もう3年くらいしたら「本人たちがいなくてもライブができる」みたいなことがリアルに起こりそうだよね。たとえば今の状態における動きの記録をデータ化してとっておくことで、いつでも2015年時点の3人のダンスを出力できるとか」

 

司会者「画期的ですねそんなことができるようになったら」

 

レジー「もちろんテクノロジーの進展次第だと思うけど、「STORY」はそういう未来を感じさせるようなパフォーマンスだった。アイドルとしての「永遠の命」を手に入れる最初の存在としてのPerfume

 

司会者「「アイドル」と「永遠の命」、現状の定義では矛盾しますよね。終わりがあるからこそ美しい、みたいな価値観もあるような気もしますし」

 

レジー「そうね。で、その価値観って、やっぱり本人たちにものすごく負担がかかるわけですよね。終わるから美しい、だけじゃなくて、終わらないアイドルのあり方というのはやっぱり必要だと思うし、『アイドルの読み方』でお馴染みの香月孝史さんとも以前そういう話をしたことがあるんですけど。おそらくPerfume3人も、結婚とか出産とかでグループとしての活動を止めざるを得ない瞬間ってそのうち出てくると思うんですよ。そういうときに、最先端の技術を駆使して今までには考えられなかったことが起こるかもしれない。この辺はあくまでも単なる妄想ですが」

 

 

最強のブランドとしての「チームPerfume」と“WE ARE Perfume

 

司会者「今回のライブ見た後にこんなツイートをしてましたが」
 



レジー「ほんとあの背中を押される感じはなんなんだろうね。こういうのこそ「ブランド体験」って言うんじゃないのかな。単に好きとかでなくて、精神の深いところに働きかけてくる何か。マーケターが軽々しく言いがちな「ブランドとの絆」なんてものを実現できているケースはかなり少ないと思うんだけど、Perfumeというブランドはそういうものを提供できている稀有な例なんじゃないかなあ。もちろん自分が渦中にいるからってのは差し引いて考えないといけないけど、少なくとも自分が好きな他のミュージシャンとは感じるものが違うというか。あらゆる活動が一貫して同じ方向に揃っているからこそ、ブランドとしての提供価値とファンの期待することがぶれないというか。そんなことを思いつつ、こういうツイートもしたんですけど」



司会者「「WE ARE」感ね」

 

レジー「この「WE ARE」って表現はもちろん「Perfume3人+スタッフ=チームPerfume」のことを指してるんだろうけど、たぶんそれだけに解釈を集約させちゃうとPerfumeという存在のことを正確に読み取れないような気がしていて。Perfume3人が中心にいて、その周りにスタッフがいて、さらにその外側にファンがいて、っていう同心円状の構造で「Perfume」という概念が広がっていく感じにこそこの人たちの強さの秘密があるのかなと」

 

司会者「同心円っていうのがポイントですかね。一定の距離を保ちつつも、確かなつながりが感じられるというか」

 

レジー「「憧れ」感と「同士」感の共存というか。ほんとこういう事例って世の中的に見てもあんまりないんじゃないかな。そろそろちゃんとブランド論の俎上で研究すべきよ。「ブランド論で読み解くPerfumeの強さ」みたいなのがあって然るべき」

 

司会者「学術的にね」

 

レジー「そうそう。ブランド価値を蓄積していくっていう観点でのいろんなヒントとかがある気がするわ。ちょっとそんなこともそのうち考えていきたいなと思います。今回はこんな感じで。このライブについては他にもポイントがあると思うので、形を変えてまた取り上げられればなと思ってます」

 

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

 

レジー「引き続きPerfume話やるか、別のネタを挟むかは一旦未定で」

 

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識22 - 『「アイドル」の読み方』を巡る香月孝史さんとの対話(後編)

司会者「前回に引き続き、『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』の著者である香月孝史さんのインタビューをお届けします」



レジー「今回はこの本で示される考え方の中でとても重要なものである「アイドルは名乗ることでなるもの」という概念を起点に、今アイドルをやっていく人たちが今後どのように大人になっていくのか、年をとっていくのかというような話をしています。で、前編含めたここまでの内容を踏まえたうえで清竜人25についても考えてますのでぜひ最後まで読んでみてください。それではどうぞ」

※前編はこちら
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「名乗ればアイドル時代」の持続可能性

---本の中で述べられている「今の時代、アイドルは名乗ればなれるものなんだ」という話は僕もそうだよね!と思ったんですけど。

「最近の「アイドル」という言葉の使われ方について説明するときに、大きな前提として言わなきゃいけないことだと思っていました」

---ああいう形で明確に指摘している人が今までは意外と少なかったような気がしています。

「あまり意識されないのがなぜかというと、「アイドル」という単語が「生業としての芸能人」という意味をいまだに帯びているからだと思います。テレビ主導の時代ならば「テレビに出る」ということは「芸能界で選ばれた期待のホープ」ということだったわけで、一応今でもそういう意味でのアイドルもいるにはいますよね。ただ、今の時代はいわゆる芸能人という保証がない人でもアイドル活動ができるようになっている。つまり、「アイドル」という言葉は「≒芸能人」という意味を保持しながらも指し示す概念が広がっているんですよね。意味合いとしては「バンド」とかに近いなあと思います。グレイもラルクもサザンもバンドだし、一方で軽音楽部に入ったばかりの中学生も同じ言葉で表象されますよね」

---なるほど。「バンドやってる」って言いますよね。面白い。

「アイドルという言葉も、ニコ生で発信を始めてみただけの人も「アイドル活動してます」って言えるし、その同じ言葉が意味するものの頂上に渡辺麻友さんとか指原莉乃さんとかがいるんですよね」

---しかしみんながみんなまゆゆやさっしーになれるわけではないのに、よくアイドルになろうと思うなあと感じることも正直あります。散々アイドルが好きとか言っておいてなんなんですが。

「装備がなくても始められる、ってのはあるのかなとは思います」

---重要ですよね。大学の時アカペラサークルにいたんですが、当時ハモネプが流行ってサークルの規模が一気に大きくなったんです。で、ブームがひと段落した今はどうかというと、いまだに大勢部員がいるんですよね。あれって何かなと思ったら、お金があまりかからないのが大きいのかなと思うんですよ。だからこそ定着した。

「道具もさほどいらないですし」

---で、楽器は大変そうだけど歌だったらカラオケでうまいって言われたことはある、くらいに入口の敷居がめちゃくちゃ低い。そういう意味ではアイドルもそれに近い感じがするなあ。

「それで一回ステージの上でパフォーマンスすると気持ち良さを覚えてしまってなかなか抜け出せなくなるというか」

---ゆるめるモ!の運営の人の本を読んだときに、早くライブをさせた方がいいみたいなことを言っていて。一度人前に立つと自覚も生まれるし、やり続けるモチベーションもわいてくると。真理だなと思いました。

最初のライブの機会はできるだけ早めにもうけましょう。それは結成したという、彼女たちのモチベーションを下げさせないためでもあります。また、ステージに立つことで、それまでは頭の中でしかイメージしてなかった景色を見ることになります。
すると、アイドルになったという自覚も促すことができるのです。
アイドルごっこから、本当のアイドルになる感覚。これを体験させるのは早ければ早いほど良いです。完成度が高まるのを待っていたら、時間ばかりが過ぎてしまいます。
(『ゼロからでも始められるアイドル運営』大坪ケムタ、田家大知)




「結果的にそこで覚えた気持ち良さが呪いにもなりますけどね」

---(笑)。もちろんある程度の選別はあるものの「なろうと思ったらみんななれる」という構造の中でアイドルの数は増えていますけど、なってしまった人たちは今後どうするんですかね?今ちょうど「一度なったら逃れられない」って話がありましたが。

「うーん・・・ちょっと話逸れるかもですが、「アイドル」という言葉というかジャンルの興味深いところとして、「その後」のことをみんなが過剰に心配するっていうところがあって」

---あー、なるほどなるほど。

「アイドル特有ですよね。演劇だったら「続けたい人は続ける、就活を機に生活のバランスをシフトする人はシフトする」くらいの感じで見ていると思うんですけど、アイドルはすごく心配されやすい。10代の前半~中盤からアイドル人生が始まってしまうからというのが大きいと思いますけど」

---途中で将来の不安を感じてやめていく人たちもたくさんいますよね。

「周りは高校受験だ大学受験だってやっている中で気持ちが揺れちゃうのは仕方ないですよね。僕は「アイドルがやめたりぶれたりってことに関しては寛容に見ようよ」派です。アイドルが学業を理由でやめましたって言うのであればそれはそれとして受け止めて、その後ちょっとして復帰するんだったら優しく受け入れてあげるのがいいんじゃないかなと」

---学業周りで言うと最近では乃木坂46の生田絵梨花さんが学業のために一時的に休んだりしてましたね。

「当然受験が終わるまで休むのかなと思ったらすぐ戻ってきたのでちょっとびっくりしました。推薦とか決まっているならいいんだけど・・・あの才能を乃木坂の組織のためだけに殉じさせるのはもったいないとか思っちゃいますね」

---乃木坂は今年神宮球場でのライブがありましたが、その下の武道館クラスのアイドルが帯状にいるじゃないですか。あの辺がどうなるかでこの先のマーケットの行く末というか、文化として定着するか否かみたいな部分が見えてくると思うんですけど。でも単純な動員の話で言うと、武道館でやってもそこまで一杯にはならなかったり、武道館でやった後のライブがホールクラスに縮小されてたり、なかなか厳しい状況にあるような気がしています。

「武道館の意味もオリコンの意味と同様に変わってきていますよね。「武道館でやる」って言ったら普段来ない人も来てくれるし、関係者もそれなりに来るし。だから1回はできると思うんですよ。「オリコン何位」というのと一緒で「武道館アーティスト」っていう肩書もつくし。ただそれも持続できる何かとは違うというか」

---肩書ですか。今思い出したんですけど、サッカーの日本代表に1試合だけ招集、出場させることを「思いやり召集」って呼んでる人がいて。たかが1試合でも、「元日本代表」と肩書がつくことでその後の人生が大きく変わるはずっていう話なんですが。そう考えると、無理な武道館を一度やるのも彼女たちの将来のためにも見守らないといけないのか・・・(笑)

「(笑)。それが慣例になっている状況に対しては素直な気持ちにはなれないですけどね」

---現状のアイドル市場って、実態はAKB、ももクロ、ハロプロというかモー娘。、あとは現実的には「その他」ですよね。象徴的だなと思ったのが、アンアンのアイドル特集でTパレ祭りの写真に「ニッチな子達」ってキャプションがついてて・・・まあそうだよなと(笑)。そのくらいの、そこそこのライブハウスいっぱい程度のサイズでも持続可能なものになっていくのか、AKBとももクロが勝ってあとの人たちは一応一回武道館やってそのまま静かにいなくなっていくみたいなゼロサムの市場になるのか、そこはどう思いますか?どうやって持続可能なモデルを作るかってのは今後の大きな課題なのかなと思っているんですけど。

「持続可能という話でいうと、動員数とかビジネスの話の手前の部分として「女性アイドルが20代をこえて30代、40代になったときにもそのスタンスと地続きでいられる」というモデルがまだないですよね。松田聖子みたいな例外はあるものの、「どんなアイドルでもこうやって年をとっていける」というフォーマットをいかに作っていくか、ということの方が先決なんじゃないかと思っています」

---Perfumeとかはどうですか。

「もちろん一つのケースとしては素晴らしいですが、みんながフォロワーになれるかというとちょっと難しいですよね。「アイドルかアーティストか」みたいな問いをはらまずに年をとっていけるというか・・・だって別に30歳でも40歳でもかわいいなんていくらでもいるじゃないですか」

---そうですね。それこそYUKIとか。

「aikoでもPUFFYでもいいんですけど、ごく自然に「かわいい」と言われるわけですし。だから「アイドルグループ内で10代の人が20代の人をババアといじる」とか、あの世代特有のやり取りだとはいえほんと不毛なんですよね。僕は一度も面白いと思ったことないんですけど」

---(笑)。

「今の10代の女の子って、たぶん平均寿命が90歳とかになると思うんですよね。そういう中で40代でも「女子」って言葉を使ったりして「かわいさ」が期限付きのものじゃなくなっているのは良いことだと思うし、自然なことでもあるし。そこに現状は年齢で制限されがちな「アイドルとしてのかわいさ」というものをどうアジャストしていくかってことが今後の論点かなと。たとえば柏木由紀さんはいわゆる「アイドルらしさ」みたいなものを自覚的に選び取っていますが、彼女が30代になった時にどういう世界を作れるだろうかっていうところには希望を託したいなとか。あとBABYMETALに関しても「少女がやっている」って部分ありきの面白さにしてはいけないと思うし、彼女たちが10年後15年後にあのステージに立っているという状況をいかに作っていけるかというのがジャンル全体として重要なんじゃないかと思います。これについては受け手の意識の問題もかなり大きいですが」






清竜人25に関する現時点での考察

---最後に、今までの話を踏まえて、という形になるかはわからないんですが、最近のアイドル関連の外せないトピックとして清竜人25についてお話ししたいんですけど・・・







「あれ、語ったら負けみたいな雰囲気もありますよね(笑)。とは言え言語化したいという欲求を刺激する存在ですよね」

---ほんとそうなんですよね、迂闊に触れると触れた側の野暮さが露呈してしまうような。一夫多妻と恋愛禁止の関係とか・・・

「そこにだけ落とし込んでもダサいわけで、どう語るかはいろいろ考えどころですよね(注:このインタビューの実施後に、リアルサウンドにて「清竜人25がアイドルシーンに持ち込む、「虚構」のエンターテインメント」が掲載)。思ったこととして、見ている側は「清竜人の夫人」というのが「設定」であることを当然わかっていますよね。それを音楽を通じて上演しているという構造がすごく演劇的だなと。一方で、今の「アイドル」というのは本人のパーソナリティや自意識がそのままステージに乗っていることに価値が見出されていますよね」

---円堂都司昭さんの『ソーシャル化する音楽』で言うところの「ライブではなくてライフ」という話ですね。AKB48のドキュメンタリー映画とか。

彼女たちは、歌唱以外の発言、表情、しぐさ、他のメンバーとのコミュニケーションのとりかたなどによってライヴ感を生む。いいかえるなら、AKB48という物語のキャラクターとしてどのように生きているかを披露するショーだ。ライヴよりもライフが売りものになっている。
(『ソーシャル化する音楽』円堂都司昭)




「はい。それに対して清竜人25はむき出しのパーソナリティにヲタ ---ヲタという言葉が成立するのかわかりませんが--- が触れているわけではないですよね。実人生と地続きのリアリティに見る側が耽溺するのと、虚構の設定に見る側が耽溺するのでは、同じような盛り上がりに見えても全然違うというのはまず思いました。さらに面白いのは、じゃあ舞台上で完結していて舞台以外の姿は見えないのかというと決してそうではない。接触もあるし、ツイッターもあるし、ブログでも「清竜人の夫人という役柄を降りて実人生を歩んでいる」のが見えるんですよね。第6夫人だったら高校生活を送っているし、第3夫人だったら家のダイニングでお酒を飲んでいる。そういう姿をさらしながらも、楽しむ本体はあくまでも虚構の世界内に収斂している。そういう水準を打ち立てているので、こちらが見るときに何の心配をしないでもいいというか。ステージに乗っている人たちの人格が疲弊する構造になっていないんですよね」

---なるほど。単純に「男の人が真ん中で、その周りを女の人が踊っている」という観点でも語りがいがある気はしています。あれ見て思ったのはFNS歌謡祭とかで郷ひろみの周りをAKBが囲んでいるコラボ。

「郷ひろみっていうのも彼自身がなかなか虚構的な存在ですよね。清竜人も25内では一夫多妻制の夫っていうファンタジーを演じているわけで」

---この「男1人+女6人」っていう構成があまりに自然に成立していて、しかも超楽しいから思わず「アイドルシーンの革命!」とか言いたくなっちゃうんですけど、真ん中に清竜人がいるという時点で従来のアイドルと同じ文脈で語ること自体がどうなんだろうとも思うんですよね。結局のところ、この人たちは「アイドルシーンに対する批評」なんですかね?

「提示する楽しさという点では確実に批評になっているとは思います。ただ、アイドルとして何かを更新した、超えてしまったというのとは厳密には違うのかなと。「疑似恋愛の相対化」という話もあくまでも設定上のものであって、それこそさっしーが今のシーンで体を張って示しているものとはずいぶん位相が異なりますよね」

---確かに。

「グループの出自から考えても、アイドルシーンの盛り上がりに乗っかることもできれば距離をとることもできるわけで。それゆえ、アイドルファンでも人によっては自分ごとになっていないケースもあるのかなとかも思います」

---自分の観測範囲でいうと、あれにぶちあがってるのって「楽曲派的な人」がほとんどです。

「僕のTLでもAKBの専ヲタはあんまり反応してないですね」

---一方で、清竜人サイドから今回のプロジェクトを見ると、『MUSIC』におけるミュージカル的要素とか、ねむきゅんに提供した曲とか、これまでも披露していた音楽的な側面が盛り込まれているとも言えますよね。それゆえ、昔から清竜人を好きな人からすると「必ずしもこの曲だけが良いわけではない」みたいな意見もあるようです。





「なるほど、確かに音楽的にはつながっている部分があるんですよね。ただ、今回の清竜人25で重要なのは、あのグループが「アイドルの文脈で捉えてください」と自ら提示しているところかなと」

---「名乗ればアイドル」の話とつながってきますね。名乗ることでアイドルになれるし、受け取る側もアイドル用のチャンネルを立ち上げて楽しむ。

「いろんなアイドルが出てきたから、こっちも「アイドルです」って言われると「そうか、アイドルか」と受け取る癖がついている。そういう受け手の意識があるからこそ、「アイドル文脈」においてフレッシュなものに見えるというか」

---確かに清竜人の楽曲で女性ボーカル6人フィーチャリングしましたって言われてもここまで反応したかは怪しいですね、個人的には。

「自分のアンテナにすぐに入ったかってのはありますよね。「アイドルを見る目」で清竜人25を見ているからこそ、批評的なものとして気づかされる。もはやBiSでも何でも当たり前にアイドルとして飲み込んでしまった今の時代だからこそ、つまり「アイドルです」と名乗った瞬間から「アイドルだ」として捉えるような視点を内面化してる人が増えている今だからこそ成立している部分はあるのかなと思います」


---

司会者「インタビューは以上になります。最後に何かあれば」

レジー「アイドルと加齢の向き合い方みたいな話はやっぱり一つわかりやすい成功例が出てこないときついよね。そうすると結構スパンの長い取り組みになるし、たとえばゆきりんが10年後に新しい価値観を提示できたとしてもその間に消費されていなくなっていく人たちも当然出てくるし」

司会者「その辺は新しいシーンだから仕方ない部分はありますよね」

レジー「まあそうなんだけどね。「名乗ればアイドル」の時代になってからまだまだ日が浅いし。よくアイドルオタの人たちは「とにかくこの子たちが将来幸せになってくれればそれでいい」みたいなこと言いますよね。あれは間違いなく本心だと思うんだけど、その幸せの射程が「いつかアイドルをやめて、その後の幸せ」ということだけではなくて「いつまでもアイドルでい続けられる幸せ」みたいなものも入ってくるようになる時代がくるといいのかな。ここはアイドルにかかわってる人もアイドルが好きな人もこの先ずっと向き合っていかないといけない問いなのかなと改めて思いました。今回のインタビューは自分としても頭の整理や刺激になってとても面白かったです。香月さんありがとうございました。今回はこの辺で」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「やっとこさ年間ベストに入るかな。間に何かあればまた」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識21 - 『「アイドル」の読み方』を巡る香月孝史さんとの対話(前編)

司会者「というわけで、前回の予告通り『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』の著者である香月孝史さんへのインタビューをお送りします」



レジー「この本はほんとに面白かったよ」

司会者「以前この記事で内容について取り上げました

レジー「このブログを始めた当初から「アイドルの語られ方」についてどうにももやっとした気持ちがあったんだけど、そういうストレスに答えてくれる本だなと。抱えてる問題意識も近いように思っていたので、ちょうど今年を振り返るくらいのタイミングでぜひお話を聞いてみたいということで今回インタビューするに至りました」

司会者「前後編の2回に分けてお届けします」

レジー「前編では僕がいろいろなところでたびたびいじっている「○○はアイドルじゃない」という決まり文句について、その功罪や周辺ジャンルでの似たような例みたいなことを話しています。それではどうぞ」


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「必要悪」としての「○○はアイドルではない」

---お話ししてみたいと思っていました。

「こちらこそ、お声掛けいただいてありがとうございます」

---『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』、とても面白かったです。今日はこの本をベースに今年のアイドル周りの出来事について振り返れればと思っています。本論に入る前に香月さんのバックグラウンドを伺いたいのですが、アイドルに限らず音楽はよく聴く方ですか?

「深掘りして知識がすごくある、というわけではないのですが普通には聴いていますね」

---好きなアーティストとかはいますか。

「10代のころはスピッツがすごく好きで、そのあと大学生のころにちょうどドラゴンアッシュがブレイクして。Kjから日本語ラップを聴くようになって、ライムスターにいったり。スピッツやKjがしょっちゅう載っていたので「ロッキング・オン・ジャパン」なんかも結構読んでいました。ひたちなかも2005年くらいからよく行っていますよ。今年は4日目に行きました」

---アイドルに関してはどうですか?どういったきっかけで好きになっていったのでしょうか。

「最初は「ASAYAN」ですね。そこから興味を持ちました。そのころは現場に行く習慣がなかったので、テレビや雑誌で追う程度でした。まだインターネットもそこまで見ていなかったし、マスメディアの情報が中心です」

---気軽に現場に行くって感じでもなかったですよね。

「そうなんですよ。今はゼロ円の現場も含めて圧倒的に単価が安くなっているし、そこの敷居はすごく下がっているなあと思います」

---実際に現場に行き始めたのは?

「「現場」というものでいうと、実はアイドルよりも歌舞伎の現場に行き始めるのが早かったんですよね」

---そうなんですか。

「歌舞伎は2003年くらいから見ています。歌舞伎ってテレビや雑誌ではそんなに取り上げられないし、もともと舞台だから生で見ないとしょうがないところがあって、現場に行かざるを得ない。で、そんな流れで歌舞伎の研究で大学院に行こうと思ったんですけど。歌舞伎について何か言おうと思ったら隣接分野の演劇も見なきゃいけないということで演劇を見始めて、そういえばアイドルの現場って行ってないなということでそれまでほとんど「在宅」で見ていたアイドルも現場で見ることが多くなりました。最初はハロプロを見て、それからAKBの劇場に行くようになったのが2006年ごろですね。ちょうど大学院と秋葉原が近かったんですが、当時は当日券でも入れるくらいでした」

---なるほど。ハロプロ、AKBと来て、最近だと特にどのあたりのアイドルグループが好きですか?

「ここ数年ですと一番現場に通っているのはリリスクです。それから乃木坂46、東京女子流が多いですね」



---ここから本の内容に入りたいのですが、まずは『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』をなぜ書こうと思ったか、どういうモチベーションで書いていたか、などについて教えていただけますか。

「一番大きいものとして「アイドルに関する言説・説明をちゃんと整理したい」「今後の議論の土壌となるようなものを作りたい」というのがありました。自分はアイドルが好きですが、アイドルというものの魅力って実は伝えづらいですよね。アイドル好きの中でも「アイドルとはこれこれこういうものです」というのが全く整理されていない。一方で、世間においてはアイドルに関するセンセーショナルなネタが取り上げられて、それでアイドルファンも含めていろいろ揶揄されることが多い。ただ、そういう批判も社会通念からするとすごくまっとうなものだったりするわけで(笑)」

---そうなんですよね、言い返したくても言葉に詰まってしまうというか。

「的はずれなものも含めた様々な批判がなされる一方で、一点の曇りもなくそれに反論できるわけでもないというもどかしさもあって。理解してもらおうと思って説明しようにも、そもそもアイドルが好きな人たちの中でも整理できているわけじゃないから、何をどこから伝えていいのかわからない。そういう状況をちょっとでも改善したいというか、少なくともアイドルに興味がない人や否定的な態度をとる人たちともかみ合った議論をするためのツールみたいなものを作れればいいなと思っていました」

---まさにそういう本になったのではないかなと思います。この本の前半には昨今のアイドルについて書かれたいろいろな文章が引用されています。ここでは「○○はアイドルではない、アイドルらしくない」「アイドルとアーティスト」といった、「アイドルらしさ」という概念を基点とする表現がたびたび出てきます。

「引用した文章に込められている「アイドルらしくない」というメッセージの裏側には「現実には存在しないアイドル像」が想定されていますよね。そのほとんど架空の「アイドルらしさ」からどれだけ距離をとるか、という形で論が構成されているというか。よく「アイドルの自主性の有無」が論点になりますが、そこに見られる「アイドルに主体性がない」みたいな前提は80年代あたりまでにできたイメージが強くかかわっているんだろうなとは想像できます」

---この手の表現を見ると個人的には結構もやっとするんですが、香月さん的にはどうですか。

「うーん・・・そういう文章をいくつも引用した1章、2章あたりは今読み返すと結構皮肉っぽいトーンになっているなあと自分でも思うので(笑)、書き始めた当初は溜飲を下げたいという気分は強かったと思います。知らない人が勝手なこと言いやがってという気持ちももちろんあるんですが・・・でも、それに対する揶揄で終わらせてもしょうがないというか、そういう「アイドルらしからぬ」を強調するような表現が誰かにとっての入口になるというのは絶対否定できないとは思うんですよ」

---それは確かにそうですね。僕が最初Perfumeに入り込んだときもそういう説明とセットだったような気もします。

「自分自身の状況と照らし合わせると、僕が歌舞伎を見始めたきっかけが野田秀樹作品だったんですよね。まさに「歌舞伎らしくない歌舞伎」というか」

---あー、なるほど。

「現代劇の一流の作家が書いている実質的には全くの新作といえる演目で、いきなり見に行っても全部セリフがわかるんですよ。今でこそ野田秀樹と歌舞伎という組み合わせは定着していますが、当初はやっぱり「これ歌舞伎なの?」って眉を顰められることはあったわけで。ただ僕はまんまとそこから入って、「野田秀樹の歌舞伎は面白いけど古典は見てもつまらないなあ」なんて思っていたんですよね。で、今は古典こそ面白いしすごく大事だと思うようになっています。こういう経験から考えると、「アイドルらしくないアイドル」みたいな言い方はちょっと鼻にはつくけどそれを全否定する態度もよくないんじゃないかなと」

---野田作品に対するネガティブな反応みたいな話がありましたが、歌舞伎界隈ではファン同士で値踏みするような空気はあるんですか?新参はどうだとか、野田作品ばっかり見てるやつは真の歌舞伎ファンじゃないとか。

「そういう空気がないとは言いませんが、寛容だと思いますよ。歌舞伎座自体が観光名所だし、歌舞伎を見ること自体も一つの観光だったりするので、歌舞伎に対して客席内で知識の差があるのが当たり前というか。あとは歌舞伎って400年以上歴史があるので、今生きている人って全員新参なんですよ」

---(笑)。

「昔の型を守れ!とか言っても、幕末のものを見たことある人すら誰一人いないんですよね(笑)。ただし、もちろんその上で型を継承する意義というのは正当にあるわけですが」


われわれは本当にアイドルを「見くびっていない」のか

---香月さんの歌舞伎との接し方で面白いなと思ったのは、最初は「これ歌舞伎なの?」という作品から入って、どこかのタイミングで「オーセンティックなものも面白い」と思った瞬間があったと。アイドル周りの話で個人的に気になっているのは、「アイドルらしくないアイドル」しか聴かない、関心のない人たちっていうのが一定層いて、そういう人たちが声高に「いやーアイドル面白いよ」なんて言っていたりする。それがいわゆる「サブカルに見つかった」とか「楽曲厨」とかそういう話と結びついていますよね。僕も完全に最初はそっち側だったし本質的には今でもそこから全く離れられてはいないと思うんですけど、いろいろライブとか行っているうちに「なんかそういうことじゃないんだなアイドルって」と自分なりには感じたというか。文化としての多様性に気がついた、とでも言えばいいんでしょうか。だからこそ、その手前で止まっている人たち、2年くらい前の自分と同じ場所から動こうとしない人たちを見るとどうなんだろうとか思うことがあるんですよね。香月さんの中で、「歌舞伎らしくない歌舞伎」と「古典的な歌舞伎」を結びつけたものってなんだったんでしょうか?

「そうですね・・・現代的な演出の作品の周辺情報を見ていくと、歌舞伎が紡いできた本流がなかったら絶対に生まれなかったものだってことがわかってくるんですよね。こういう歴史が積み重なって来たからたまたま派生としてこういうものが生まれたっていう見取り図が見えてくるというか。アイドルに引き付けて言うと、たとえばももクロが現在の位置にいるのはAKBが体制として存在しているからこそでもあるわけで」

---今のももクロ話で言うと、「ももクロはアイドルじゃない」「ももクロすごい、AKBクソ」みたいな人からするとその構造が見えていないのか、それとも見えているのに「体制」だからこそ興味がないのか・・・

「どうなんですかね。ただ、繰り返しになりますがももクロしか興味ない人にこういう俯瞰した見方を強いることはできないわけで。あとは「アイドルらしくない」と言われがちな尖ったアイドルにばかり反応する人もいる一方で、AKBの専ヲタからダイレクトに地下にはまっていっている濱野智史さんみたいな人もいますよね」

---濱野さんも独特のスタンスですよね。

「アイドルを論じる人が語りがちな、楽曲派的な部分を一切通過していないルートですよね。濱野さんを見ていると、ほんとにレスと接触中心にアイドルを考える方なんだなと」



---ただ、こういう人がいっぱいいて、その人たちがお金を落としているからこそアイドル経済圏全体が潤っているという側面もありますよね。絶対額がわからないので何とも言えないですが。

「そうですね。濱野さんが現在とっているスタンスは「アイドルを論じる」という立ち位置と距離があるからそういうファンの視点って声としてはそんなに残らないんですが、濱野さんからすれば彼と同じようなスタイルでアイドルを受容するファンが一定数いるという読みがあったからこそPIPがいけると思って始めたんだろうし。で、そういう人がたくさんいるからこそAKBのあの規模が成立しているんですよね」

---ブログでもたびたび触れていますが、そういう形でアイドルを楽しんでいる人がいることは忘れちゃいけないなあと肝に銘じたいところです。「アイドルらしさ」「アイドルらしくないアイドル」云々に話を戻すと、このトピックを語るうえでのネタとしてあの本以降に香月さんの中で気になっている切り口とかはありますか?

「本の中では「“アイドルらしくないアイドル”なんて言葉を振り回すのは、実在しない勝手なアイドル像に捉われているからだ」なんて指摘をしつつも、自分自身もそういう「カギカッコつきのアイドル像」から逃れられてないのかもしれないと思うことがあって。象徴的なこととして最近よく考えるのが、「アイドルオタクのアイドル」って一つの売りになるじゃないですか。松井玲奈さんとかリリスクの大部彩夏さんとか。アイドル自身がアイドルのオタクである姿を見てこっちも「キモい!」なんて言って楽しんだりするわけですけど、音楽に関わる人が自分の属するジャンルについて詳しいってすごく自然なことなんですよね。冷静に考えると別にキモいことでも何でもない」




------言われてみればそうですね。

「それが特別なこと、注目に値することとして見られるのってアイドルくらいだと思うんですよね」

---ロックミュージシャンがロックオタクだったところで・・・

「それを別にキモいって言われないじゃないですか。ロックバンドの人がロックに詳しいとか、ラッパーやDJがヒップホップの歴史に精通しているのとか、まあ当たり前というか。ただ、アイドルの場合は「アイドルに詳しい」というだけでそれが特異な売りになる」

---こっち側だ!みたいになる感じはありますよね。

「わかってる、みたいになりますよね。わかってるも何もこの人こそ専門家だろうという(笑)」

---(笑)。

「そのまなざしが何に起因するものなんだろうっていうのを最近の問題意識として抱えているんですけど、まだ答えは出ていないです。アイドルを分け隔てなく楽しんでいます、という人の中にも「アイドルを見くびっている気持ち」みたいなものが意識下に存在しているのかもしれないなあと」

---


司会者「前編はここまでです」

レジー「最後の話は個人的には新しい視点だったなあ。なんだろう、アイドルファンの誰の心にも潜んでいるロキノン好き的な何かというか。「○○はアイドルではない」話についてもそうだけど、エンタメに接するうえでの「共通認識」と「先入観・偏見」って紙一重だなと思いました。この辺は後編に出てくる「名乗ればアイドルになれる」とか「アイドルだと思って楽しむからこその面白さ」みたいな話ともつながってくるかなと。というわけで次回の更新をお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」


後編はこちら
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