レジーのブログ LDB

「歌は世につれ、世は歌につれ」でもなくなってきた時代に。
対談形式はリスペクトしているこちらのブログより拝借しております。
  ※15/4/23 世の中の状況を鑑みてfc2からこちらに移しました

ご連絡はレジーのポータルの「contact」よりどうぞ。(ブログ外の活動もまとめてあります)

アイドル話

アイドルと自意識、アイドルの自意識20 - アイドル楽曲大賞への投票から今年をざっくり振り返る

司会者「気がついたら12月です」

レジー「急に寒くなってきたよね。まだ年末って感じしないんだけど」

司会者「去年はこのくらいの時期から年間ベストの発表を始めてます」

レジー「そうね。今年はもうちょっと後ろになると思います。で、今回は年間ベストにさきがけて今年のアイドル周りの個人的総括をしたいなと。去年と同じく「アイドル楽曲大賞」に投票したので、そちらの話を起点にやります。ちょうど投票締め切られた感じですかね」

司会者「楽曲のメジャーとインディーズ、あとアルバムと推し箱、4つの部門がありました」

レジー「順を追ってやっていきます。あ、そういえば去年投票した時もそうだったんだけど、なんとなくPerfumeは除外してます。アイドルとは言えこの中で比較することになんとなく違和感があるので。同様の理由で清竜人25にも入れませんでした。そのあたり踏まえて、まずはメジャー楽曲部門から」


【メジャー楽曲部門】

1. サクラあっぱれーしょん/でんぱ組.inc


2. FRESH!!!/lyrical school


3. ななななのんのん/ななのん


4. ラブラドール・レトリバー/AKB48


5. LADY POWER/Lucky Color’s


司会者「でんぱ組が1位ですか」

レジー「今までこの人たちの曲いいと思ったことあんまりなかったんだけど、これはほんとにかっこいいよね。作者の玉屋2060%のやってるWiennersのアルバムも超よかったです。でんぱの話でいうと、直近の曲でアナログとかカセットとか出してて、なんかこう「狙い撃ち」感がすごいなと思った」

司会者「アナログレコードやカセットを聴く人の層って限られてますよね」

レジー「「アイドル」と「サブカル」の邂逅みたいな話は何年も前からある話だけど、今年はでんぱのこの売り方とかNegiccoが新しいシングルでShiggy Jr.やayUtokiOと絡んだりとか、「インディー」と呼ばれる場所にダイレクトに接近していく感じがあった気がします。来年以降どうなるのかな。2位のリリスクはtofubeats、3位のななのんは小西さんと鉄板の人たちの曲です。ななのんはインパクトあったなー」

司会者「あとはAKBの総選挙シングルが4位ですか」

レジー「選挙用に5枚買いましたけどこれはいい曲だと思いますよ。シルヴィバルタン風味」

司会者「そして5位にラッキーカラーズ」

レジー「最初インディーズ部門で探してたんだけどこっちにあった。これのおかげでキャラメルリボンの“ファーストシークレット”入れられなかったんだけど、今年はラッキーカラーズ外せないです。TIFでの運命の出会い。曲もよっしゃいくぞ系じゃなくてよい。続いてインディーズ部門」


【インディーズ/地方アイドル楽曲部門】

1. じゃじゃ馬と呼ばないで/GALETTe


2. 踊ろよ、フィッシュ/つりビット


3. Prismic Step/クルミクロニクル


4. 生きろ!!/ゆるめるモ!


5. Eye of the Wise/FantaRhyme


司会者「1位は福岡のGALETTeです」

レジー「これは確かガリバーさんのツイートで見たのかな。イントロからもう間違いないって感じで。さっきちょっと触れたキャラメルリボンもそうなんだけど、個人的にはこのあたりの「ディスコテイスト」からはドリカムの匂いを感じます。最近のアイドルソングとドリカムって結構つながってる気がする、と去年くらいから思ってるところです」

司会者「2位のつりビットは山下達郎のカバーです」

レジー「CDジャーナルの対談でも取り上げたけどこの夏感が素晴らしい。これもさっき言った「インディーへの接近」の一つと捉えてもいいのかしら。そのうち“風をあつめて”カバーするアイドルとか出てきそうだな。もういてもおかしくはないけど。クルミクロニクルはちゃんと受験終わらせてバリバリ活動してほしいです」

司会者「4位のゆるめるモ!はどうですか」

レジー「今年1回だけ見たんだけどそのときのあのちゃんのインパクトがすごかった。カリスマ性あるよね彼女。全然やる気なさそうだったけど目が離せなかったです。あとツイッターで流れてくる写真にかわいいのが多い。5位のファンタライムは、4月に表参道で見たNegiccoとの対バンがめちゃくちゃよかった。面白いことやってる人たちだと思うんだけどなかなか火がつかなくてもどかしい。夏場にインストアで見たときも「私たち売れてません」みたいなMCがあっていろいろしんどい部分もあるんだろうけど、あんまりそういうこと言わないでほしいなあとか思った。地方のグループがサステナブルにやっていけるか、みたいな話はこれからのアイドルシーンの論点になっていくよね」

司会者「なるほど。そんな感じで続いてアルバム部門に行きましょうか」

レジー「これ選んでて今年あんまりアイドルのアルバム聴いてないんだなと気づきました」


【アルバム部門】

1. Killing Me Softly/東京女子流
2. ひまつぶし/チームしゃちほこ
3. MAGI9 PLAYLAND/9nine


  

司会者「女子流が1位ですね」

レジー「これは文句なし。大復活って感じですか。そのあたりはこちらのエントリに書いてます」

司会者「結構広がりましたよねこの記事」

レジー「ねえ。あのエントリについて「レジーのブログから端を発した楽曲派論争」みたいなこと書いてあるの見たんだけど、論争になってたとは知らなかった。あそこの試算についてそんなわけないみたいな反応もあったけど結局その後具体的な反証とかあったのかしら。しゃちほこに関しては、スタダに関与のない僕としては思いのほか良かったって感じだったけど、エビ中もアルバム楽しかったしアルバム単位でものを考えてる人たちなんだろうか」

司会者「9nineについてはどうですか」

レジー「うーん、実は一長一短あるアルバムだなあとは思ったんだけど」




司会者「EDMに思い切って寄せてきましたよね」

レジー「リリース前の中野サンプラザのライブがアイドル関係なく今年のベストライブの1つだったってのもあり、合わせ技一本で。武道館も行ったけどそっちはいろいろ内容的に気になる部分たくさんありました。リベンジのチャンスがあるといいのですが。で、最後に推し箱部門」


【推し箱部門】

HKT48

司会者「たくさんいる中からHKTですか。ここまで全く出てきてないのに」

レジー「これはあんまり曲とか関係ないというか、音楽的には48の中でも一番興味ないね今のところ。TIFのライブもはるっぴ筆頭に良かったけど、それよりもタレント的な部分でって感じですね」

司会者「アイドル「楽曲」大賞なのにね」

レジー「いいのいいの。9nineのアルバムが最高だったら9nineにしてたんだけどね。女子流でもよかったんだが、結局キャラで選んでしまった。48グループはテレビいっぱい出てるからやっぱり距離が近くなるよね。なんだかんだでおでかけは毎週見てるし。アイドル楽曲大賞についてはこんな感じです」

司会者「わかりました。他に今年のアイドル関連で何か振り返っておきたいことがあれば」

レジー「んー、とりあえずTIFが今年も最高だったって話でしょ」

司会者「それはただ楽しかったーでしかないと思うので触れないでいいです」

レジー「あとはそうですね、ことさらに「アイドルブーム」とか言われなくなったじゃないですか。AKB自体も失速してるみたいに言われて、ある一面では事実なんだろうし。シーンとしてのバブル的な盛り上がりがなくなったあとにどうなっていくのか、武道館はやったはいいけどその後続いていくのか、みたいな課題はここからどんどん出てくるよね。で、ここから次回の予告なんですけど、ここまでちょこちょこ話してきたような「アイドルというものを取り巻く最近の空気感」について、『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者である香月孝史さんにインタビューしてきました」



司会者「あの本面白いですよね」

レジー「アイドル好きな人は今年必読の1冊ですね。というわけで、次回から2回にわたって香月さんとのアイドル談義、アイドル論のあり方から昨今のアイドルというものの条件や今後のアイドル文化の進むべき方向、さらには清竜人25とは何なのか?みたいな話をお届けします。しばしお待ちください」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識19 - 「代々木」からPefumeが見据える次のステージ

Perfume FES!!への嫉妬話

レジー「Perfumeの全国ツアーに行ってきました。9月18日、代々木競技場第一体育館公演の2日目です。彼女たち見るのは年末の東京ドーム以来」

司会者「Perfume FES!!行けなかったしね」

レジー「東京だけでも行きたかった。スカパラとPerfume、リップとPerfumeとか最高じゃん」

司会者「スカパラとは“美しく燃える森”を生歌でやったそうですよ」

レジー「許せないよね。見た人ちょっとだけ不幸になってほしい」




司会者「おい」

レジー「『Cling Cling』についてたDVDにも入ってなかったし」

司会者「限定盤のやつですね」



レジー「一番見たかった曲は未収録でしたが、あのDVD相当面白いね。あっちだけもうちょっと内容分厚くして別で出してほしいくらい。そしたら絶対買う」

司会者「各地でドラマがあったようで」

レジー「ほんとどの会場に行っても楽しかっただろうなってのが伝わってくる感じだった。話題になってたライムスターとの共演もほんとに最高だったね」

司会者「“ナチュラルに恋して”にオリジナルのラップパートを加えたバージョンで、宇多丸のPerfumeへの思いをつづったリリックが反響を呼びました」

レジー「Perfumeのいろんな曲のタイトルを盛り込んでね。宇多丸のパートばっかり騒がれてますが、“ナチュラルに恋して”の世界を男側から描いたMummy-Dのラップも相当かっこよかったことを付け加えておきます。あと印象的だったのは秦基博」

司会者「4人で“マカロニ”を歌ってました」

レジー「途中でボーカルが秦基博から3人に入れ替わった時に歌唱力に圧倒的な差が出ちゃうのはご愛嬌として、かしゆかが完全に女の顔になってたのが気になった」

司会者「あんな間近であの歌を弾き語りで聴いたらねえ」

レジー「あともちろん9nineとの姉妹共演もよかったよ。あ~ちゃんが“SHINING☆STAR”を軽々と踊ってるのが素晴らしかった。なんか解き放たれた感じ」


9nineとperfume 投稿者 umika4869

司会者「本来ああいうのも得意なんでしょうね」

レジー「“Puppy love”で2グループ一緒なのも素敵だったし。そして川島海荷の色っぽさね。この前の武道館でもよかったなうみにー」

司会者「話がPerfumeから逸れてますが」

レジー「失礼しました。このDVDがついてるシングル『Cling Cling』ですが、これについては先日リアルサウンドにまとまった文章を書きました。あの曲およびPVにおける「オリエンタル」な雰囲気が今回のPerfumeの世界戦略の一つの柱になるのかなという話です。今回のライブでもそのあたりの片鱗は見えたように思えました。それ以外にも「久々の代々木開催」とか「メジャーデビュー10周年」とかトピックのいろいろあるライブでしたね。ここからそういった話を個別にやっていきたいと思います」


今改めて「5年前の代々木」を検証する

司会者「今回の代々木体育館第一競技場でのライブですが、09年5月以来となりました。当時のナタリーのレポートを貼っておきます

レジー「それ以降にやった関東の大会場は09年横浜アリーナ、10年東京ドーム、12年さいたまスーパーアリーナと武道館、13年東京ドームでいいのかな。確かに代々木はやっていない。これって単に規模やスケジュールの問題なのかと思ってたんだけど、Perfumeは明確に代々木でやりたくなかったんだね」

司会者「この辺は今回のツアーパンフレットであ~ちゃんの口から語られています」

最初に「代々木」でやったのは、初武道館を終えて半年経ったくらいの頃でした。武道館は自分たちの夢のステージと思ってきた場所だったので、できたときはすごくうれしくて、達成感も大きかった。でも、その分、ポッカリ穴が空いちゃった感じもあって、次にどこに向かったらいいか、何をすればいいか、一時わからなくなったんです。というときに、初めての「代々木」が何も知らされないままに決まってた。スタッフさんから「決まりました!」って言われたけど、私たちはその場所を知らなかったし、新たなアルバムのリリースがあるわけでもなかったから、なんかすごく戸惑ったんです。
(中略)
そのときのちょっと苦い思いがなんとなく残ってて、「代々木」には寄りつかない、みたいな空気がウチらの中にはあったんです。


レジー「インタビュアーの人も驚いてたし、たぶん公式にこういう話が出たのは初めてだよね。全然知らなかった。ライブのMCでは代々木が決まった経緯については「代々木って・・・どこ?」みたいに笑いに変えてしゃべってたけど、実際にはいろいろ葛藤があったんだね。一方でこの後にこんなやり取りも」

あ~ちゃん だから、あのときのDVDも出していないんです。

かしゆか あのライブは人気なんですけど。

あ~ちゃん そう。出してほしいという声もめっちゃあるんです。でも、今さら出せない、若すぎて(笑)。


司会者「人気ってことは認識しているのか」

レジー「パッケージ化の声が根強いライブだよね。WOWOWで放送されたきりだから。あのときの録画はいまだに保存してあるよ」

司会者「というか行ってましたよねあのライブ」

レジー「行ったね。ネット上でお金を積んでチケット買って行った。いいライブだったと思うんだけど。“SEVENTH HEAVEN”超感激した。WOWOWだと3人が輪になってにこにこしてる絵があってね。Perfumeファンの総意だと思いますがそこが最高なんですよ」

司会者「動画あります」



レジー「そう、これこれ。そして忘れちゃいけない“代々木ディスコMIX”ね。当時の最新アルバムだった『GAME』の曲から“おいしいレシピ”“スウィートドーナッツ”までぶち込んでのノンストップメドレー」



司会者「これはほんとにすごかったですね」

レジー「うん。最初の煽り映像が終わって3人がサングラス掲げて出てきて何が始まるんだろう?って思ったら“Baby cruising Love”、ん?ちょっと様子が違うな?と思ってるうちにどんどん曲が変わっていってね。途中でPerfume得意の会場を3つに分けてのコールアンドレスポンスがあるんだけど、そこを仕切るあ~ちゃんの神々しさ。あれはPerfumeのライブヒストリーの中でも上位を争う名シーンだと思うよ」

司会者「この日のMCでは「私たちは青春を全部賭けてきたから、Perfumeしかないんだ」という悲壮感漂う話がありました」

レジー「ブレイクしていろいろ大変なこともあるのかなくらいに思ってたんだけど、今回のインタビューとか見てもっと壮絶な状況にあったんだなと。ただ、もう今のPefumeは当時のPerfumeとは違うし、今回の4日間できっと悪いイメージも払拭してるはず。なんだかんだ言ってこのライブは面白かったというか、アルバムツアーじゃないからこその自由な部分があったわけで、記録としてちゃんとパッケージ化してほしいなあ」

司会者「先ほどから引用しているパンフレットのインタビューでは、さっきの「若すぎて出せない」というやり取りの後こんな感じで続いています」

のっち あと何年かたったら、逆に若すぎて出してもいいやって思えるかも(笑)。

レジー「ほんと待ちますよ。絶対買うから出してください」


セットリストから見る「アメリカ遠征壮行試合」

司会者「ナタリーにさっそくレポートがアップされていて、セットリストも掲載されていました。『Cling Cling』収録曲もすべて披露されました」

レジー「“いじわるなハロー”が特に良かった。あとアンコールは4日間とも違ったみたいね」

1日目 コンピュータードライビング Puppy love
2日目 Baby cruising Love Perfume
3日目 ポリリズム wonder2
4日目 リニアモーターガール Perfume 願い

司会者「レア曲満載で」

レジー「個人的には初日の組み合わせがうらやましいです。4日目ラストが“願い”ってのも5年前の代々木と同じなわけで感慨深い。僕行った日のMCでも「昔の曲、忘れられてる曲をやります」って繰り返し言ってたね。メジャーデビュー10周年というタイミングで一度キャリアをまんべんなく総括しようってことかなと。「古い曲じゃないけどこの曲覚えてる?」って注釈つきで始まった“恋は前傾姿勢”、良かったなあ。マイクスタンドありの動きがかわいかった」

司会者「“恋は前傾姿勢”は“Sweet Refrain”のカップリングですね」

レジー「“Sweet Refrain”はやらずにカップリングをやったのが面白かった。あの曲はタイアップ向けって割り切ってるのかな。で、1曲目の“Cling Cling”からこの“恋は前傾姿勢”までがライブの前半部分で一区切りという構成でしたが、ここまでの流れは海外戦略のデモンストレーションって感じがしました。具体的には、最初に紹介したリアルサウンドの記事に書いたオリエンタル路線の強調というか。たぶんこのコンセプトから逆算して考えていった結果ああいう曲目になったのかなと」

司会者「“Cling Cling”から“Handy Man”“Clockwork”と続きました」

レジー「ここはナタリーでも「アジア風のセットにピッタリな楽曲」と評されていたけど、それ以降の流れもその雰囲気にのっとってるよね。“レーザービーム”にせよ“I still love U”にせよ、音階の使い方とかで統一感が出てるわけで。新旧の曲を織り交ぜながら最近の彼女たちのタームである「西洋から見た東洋」という世界観を具現化したこのパートが今回のライブのキモだったように思いました」

司会者「確かに『LEVEL3』の中では比較的地味な立ち位置だったと思われる“Handy Man”“Clockwork”をテーマに合わせてうまく読み替えた感じがありますね」

レジー「うん。この前のリアルサウンドの記事にブコメで「そもそも「オリエンタル」は中田ヤスタカの得意技じゃないの」みたいなコメントがあったんだけど、そこにここまで特化するとだいぶ違う景色が見えてくるんだなあと。で、『LEVEL3』の話で言うと、あのアルバムの中心曲のひとつだった“Party Maker”がドーム公演とはだいぶ違った趣で披露されていて。ここもあ~ちゃんのコメントをパンフレットのインタビュー記事から引きたいと思います」

たとえば「Perty Maker」なんかは、ドームでは最新テクノロジーとの融合という部分の象徴的な見せ方をしたんですけど、『ぐるんぐるん』では、もっとみんなと近いところで盛り上がる曲にしていきたい。そうやって一緒に曲を育てていきたいという思いもあるんです。

司会者「ドームでは大掛かりな機材や映像を使った派手な演出との組み合わせでしたが、今回はそっちに寄せずに3人のパフォーマンス重視でした」

レジー「今回のライブってここ最近の大箱のコンサートでやってた「最新テクノロジーを駆使した・・・」みたいなパートがあんまりないなと思って見てたんだけど、終演後にパンフレットでこのあ~ちゃんのコメント読んでなんとなく腑に落ちました。Perfumeって生身の3人の女性であると同時に「いろいろな技術やアイデアを増幅させて発信する“メディア”」として機能する場面が多々あって、たとえば去年のカンヌでやった“Spending all my time”とかはそのわかりやすい例だと思うんだけど」



司会者「あれはあくまでもプロジェクションマッピングをプレゼンテーションするためのパーツとしての役割でしたよね」

レジー「うん。で、今回はそういうことよりも「生身の人間として、お客さんと寄り添う」ことを重視したライブだった。それはメジャーデビュー10周年という節目で感謝を伝えるという意味もあるんだろうし、またこれからアメリカという未知の場所に挑む前に英気を養うという部分もあったのかなと思いました。というわけで、ここまでの話を振り返ってこのライブを自分なりにまとめるとこんな感じ」

・“Cling Cling”を軸にした「オリエンタル」路線の具現化→海外戦略のデモンストレーション
・レア曲をふんだんに織り込んだセットリスト→メジャーデビュー10周年の「お祭り」
・「テクノロジー」よりも「距離感、ふれあい」を重視→新しいステージに向けてのリフレッシュ

司会者「ここまでのディスコグラフィーを振り返って、ここから次のフェーズに進んでいくという決意表明のようなライブだったと」

レジー「そうね。で、まとめにあたって手前味噌で恐縮ですが先日のリアルサウンドに書いた記事を引用したいと思います」

『LEVEL3』が作品としての評価とセールスの双方を獲得し、アルバムコンセプトを具現化したドームライブを成功させたことで、彼女たちは国内のアーティストとして一つの極みに達した。これまでの流れはここでひと段落。ここから始まるのは「日本」も「海外」も関係のない「グローバルスター」としてのPerfumeの軌跡である。

司会者「全米デビュー盤の座組みも気合入ってますからね

レジー「ほんとどうなっていくのか楽しみ。最後に今回の海外ツアーのトレイラーを見てみましょう」



司会者「これ何回見てもあがるな」

レジー「そのうち一度海外でライブするのも見てみたいね。とりあえず今回はこんな感じで」

司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「ちょっといくつかインタビューを仕込んでたりするのですがとりあえず未定で」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識18 - 夏の思い出、TOKYO IDOL FESTIVALについてのよもやま話

やっぱり楽しかったTIF、拡大基調の行方

レジー「もうすでに1週間以上前になりますが、8/2、8/3の土日に開催されたTOKYO IDOL FESTIVALに行ってきました」

司会者「8/9、8/10のロックインジャパンも挟んだのでずいぶん前に感じますね」

レジー「そうね。ひたちなかの話はまた改めて。TIFの日もロックインジャパンと重なってたんだけど、去年の楽しすぎた記憶が残ってたのであまり悩まずTIFのチケットをとりました」

司会者「去年の様子についてはこちらの記事でどうぞ

レジー「ほんと反芻しちゃうくらい楽しかったんだけど、今年もやっぱり同じくらい楽しかった。最高だなあのイベント」

司会者「行った方大体そうなってますよね」

レジー「去年も感じたこととして、あえて客観的な言い方をすると「ライブに接触にとアイドルという文化のいろんな楽しみ方が凝縮されてる」んだよね。で、今のシーンを支えてる演者とファンの近さがイベント全体で実現されてるのが素晴らしい。適度にゆるい感じで」

司会者「相変わらずアイドルがその辺にたくさんいましたね」

レジー「あれほんと良いよなあ。普通に屋台でご飯食べてたり、ライブ前後で客と同じ動線歩いてたり。ビラ配ってる人たちもいっぱい。途中ダイバーシティ行ったとき建物の中で衣装着た美少女とすれ違ったんだけどあれは誰だったんだろうか」

司会者「その距離感の象徴とも言える物販スペースですが、今年は例のAKBの事件があったせいか入口で荷物チェックが行われていました」

レジー「すごい列ができてて最初面食らったけど、思ったほどは待たされなかったかな。中入っちゃえば去年と一緒で超楽しかった。僕行ったとき吉川友が普通に接客してたよ。迫力あった。あと「演者とファンの近さ」だけじゃなくて、ファン同士の交流みたいなのもありますよね。僕も今回初めてガリバーさんと宗像明将さんに挨拶させていただきました。その節はありがとうございました」

司会者「ガリバーさんといえばSKY STAGE、湾岸スタジオの屋上にある名物ステージにいつもいる人として有名です」

レジー「あのステージ、いろんなフェスあるけどそういうの見渡しても上位に来るいいステージなんじゃないかな。お台場のビルの屋上、背景にフジテレビの球体って結構すごい絵だよね。エレベーターがなかなか来なくて渋滞したりエレベーター降りてからも階段がハードだったりと動線がしんどいけど、ほんとあそこに1日いてもいいと思っちゃう。さすがに暑いけど」

司会者「ステージの話で言うと、今年はフジテレビ本社前とダイバーシティ前にもステージが設置され、さらに去年はゼップを使っていたメインステージ扱いのHOT STAGEがフジテレビの夏のイベント「お台場新大陸」内に移りました」

レジー「結局フジ本社前は行かなかったな。ダイバーシティはちらっとだけ見たけど、普通の買い物客とかも見れるという意味では「アイドルカルチャーの日常化」みたいな話で良かったのかもしれない。ただ、HOT STAGEの風情のなさはなんとかならんかったのかね」

司会者「たどり着くまでにフジテレビ関連のイベントブースの近くを歩いていく感じになってました」

レジー「さすがに居酒屋えぐさいるとか見えてくるとちょっと気持ちが萎えた。で、今回メインステージをここに移すにあたって、公式パンフレットにこんなことが書いてありました」

今年はメインステージであるHOT STAGEを、フジテレビの夏のイベント「お台場新大陸2014 新大陸ドキドキランド」内に設置。今までのライブハウスでの開催から、野外ステージへとメインステージが移行したことで、よりフェスらしさを味わえる環境へと進化した。

司会者「やっぱ夏フェスは野外でしょ!ってことですかね」

レジー「野外がフェスにとって必須条件なのか?みたいな話は別途論じる価値があるのかもね。最近の都市型サーキットはライブハウスだけでもそれなりに「フェス感」ってあるし。それに単純に野外ステージが欲しいってことであればSMILE GARDENがあるじゃんとも思う」

司会者「フジテレビとの組み方みたいなことも含めて、今回は規模を広げる方向に行ったってことですよね。ステージ数も増えたし」

レジー「今後のこのへんの舵取りはイベントとして超重要だよね。去年TIFに行ってほんと面白かったのは、フリー入場のスペースがあるのにある種箱庭的というか、アイドルとアイドル好きな人たちだけで作られた楽園!みたいな感じがしたところなんですよ。双方によるDIYというか。去年の繰り返しになるけど感覚的にはインディーファンクラブとかに近いのかもしれない。あとエアジャムとかね。で、アイドルというものがブームから定着に至る過程で規模を大きくする、「一般層」も射程に入れるってのは至極真っ当なプロセスだと思うんだけど、ここのバランス間違えると「デカくなったけどだいぶ違うイベントになっちゃったなあ」ってことになりかねないよね」

司会者「エアジャムだと思ったらロックインジャパンになってた、的な」

レジー「今の良さを残しながら規模をでかくする、そういう方向に行ったらいいなあと思います。ここについては湾岸スタジオ周りの今あるステージを維持さえしていれば十分に実現できるのかもしれないけどね」


今年もすごかったHKT48、そして「あるべきアイドル像」と指原莉乃

司会者「特に見たいグループはあったんですか」

レジー「それはもう、去年に引き続きHKT48ですよ。さっき言ったHOT STAGEに行ったのはこの人たちの時だけだったね」



司会者「混んでましたね」

レジー「去年ゼップで見たときはわりと快適に見れた記憶があるので、場所が違うから一概には比較できないけどだいぶ状況変わったなと思った。だてにあれだけ総選挙にランクインしていないなと。自分も「HKT48のおでかけ!」見てるうちにキャラの理解が進んだので去年より楽しかった」

司会者「継続して深夜に番組やってるの大きいですよね」

レジー「うん。秋吉ちゃん大人になってる!とか」

司会者「去年と同じくAKBの曲も含めて有名曲を投げ込んできました」

レジー「今年も“言い訳Maybe”やってたんだけど、センターポジション、つまりあっちゃんのところにいるはるっぴがすごかったよ。なぜかすごいグッときた。あの人はステージ上でほんと映えるよね」

司会者「どんどん美人になっていってる気が」

レジー「ね。この前の総選挙だとHKTから選抜にはさっしーと咲良ちゃんが入って、僕も咲良ちゃんに投票したけど、来年はるっぴも選抜に入ったらいいなあと思った。」

司会者「HKTの前にはミスiD関連の人たちが出てましたね」

レジー「HKT混みそうだからちょっと早めに行って、後半から遠巻きに見てました。この中で「アイドルは処女じゃないといけない」ということをかなり直接的な表現でステージ上のミスiD候補者が言う展開があったんだけど、これのあとにHKTが出てきて、さらに「嘘をついてたこと」みたいな話の流れからなつみかんが「さっしーも彼氏いたのにいないって嘘ついてたじゃん」って突っ込んだのすごいメッセージ性があるなと思いました」

司会者「処女云々とかそういう議論が無効化されてる人が中心に立って大きくしたグループですからね」

レジー「うん。去年さっしーが選挙で1位になったとき、「「処女である」という建前がない子が1位になったことは本当に大きい、これで多くの女の子が自由になれる」みたいなツイートを見かけたんですけど。もちろんまだまだアイドルをそういう目、処女信仰ばりばりで見てる人たちはいるとは思うんだけど、実際にはもっと総合的なエンターテイメントになってきてるんじゃないかなあという印象があります。前この記事でも書いたけど、いわゆる「偶像的なアイドル」「アイドルらしさを強要されたアイドル」ってものは限りなく「想像上の生き物」になりつつあると思うし、「アイドルらしいアイドル」ですら一周回って選び取ってたりするわけで、そのあたりの状況認識を更新しないままでの「タブーに触れてやった」的スタンスはもう機能しないんじゃないかなと思った。先ほどの記事で触れている『アイドルの読み方』の著者である香月孝史さんのツイート、まさにその通りだなと」





2014年のTIF、堪能の記録

司会者「HKT以外の楽しかったアクトなどあれば」

レジー「その前にいきなり見てない人の話になっちゃうんだけど、夜のSMILE GARDENのライムべりーがすごかったそうで。結局去年も今年も夜は会場出ちゃってるからその時間の雰囲気を体験したことがないんだよね。来年こそは。で、楽しかったアクトね。もう何と言ってもラッキーカラーズですよ。運命の出会い」

司会者「大げさですね」

レジー「今回のTIFって、基本的にはあんまり計画を立てずにその場の流れで見るものを決めようと思ってたんですよ。初日はSMILE GARDENでGALETTeとダンドル見て、その後とりあえずSKY STAGE行ったんですよね。そしたらそこでたまたま見ました、ラッキーカラーズ」



司会者「曲はこんな感じなんですね」

レジー「これはちょっとカリスマドットコムみたいだよね。全体的に勢い重視の曲はなくて、ダンスナンバーって感じの雰囲気が強かった。そしてカノンちゃんの顔がタイプすぎてずっと見てしまった。そしてそのまま物販に行った」




司会者「去年のテイクオフ風花ちゃんと同じ展開ですね。たまたま見たライブで好みの子を見つけて物販に行くという」

レジー「握手は翌日行ったんだけど、CD1枚で2人と3分くらい話しました。濱野さんの地下アイドル論考の理屈でいうと「コスパがよい」ってやつだよね」



司会者「まさかこの本で語られていることの意味を体感するようになるとは」

レジー「去年のTIFの女子流の握手なんて、CD1枚で1人1秒×5って感じだったからねえ。誇張でもなんでもなく」

司会者「ラッキーカラーズですが、今年の夏はもうライブはないみたいです」

レジー「残念です。イベントをガンガンやって、って感じじゃないのかな。仮面ライダー鎧武やらめざましテレビやらにも出てるし、そもそもがティーンズモデルみたいだから歌や踊りがメインじゃないのか」

司会者「それゆえビジュアルレベルは高いですよね。夢アド的な」

レジー「またイベントあったら行きたいな。他にSKY STAGEだと、バーサスキッズっていうローティーンのアイドルの次にG☆Girlsというパンチあるお姉さんたちが出てきてここのギャップがすさまじかった」

司会者「G☆Girls出てきたら後ろの方にいた人みんな前に行きましたね」

レジー「いきなりビキニみたいな恰好で出てきたらそりゃ前行きますよ。パフォーマンスの話で言うと、SKY STAGEで見たアイドルストリートの選抜チームとSMILE GARDENで見たGEMがよかったです。あの界隈初めてちゃんと見た。ああいうしっかり踊れる人たちがダンス&ボーカルグループという看板を掲げつつも「アイドル」売りされてるのになんとなく時代を感じる」



司会者「SMILE GARDENではRev.fromDVLも見ましたね」

レジー「そう、橋本環奈ちゃん。顔そのものがかわいいというより、表情が豊かで遠くから見てもよくわかるって印象でした。あとは5月以来のTPDがやっぱりすごかったのと、リリスク→ライムベリー→クルミクロニクルの並びが当然のように良かった。こういう「何かのイベントで普通に見そうな人」はできるだけ除外してたんだけど、このかたまりはついつい足を運んでしまいました。ただ、改めて思ったけどこの辺のアイドルだけ聴いて「アイドル多様化の時代!楽しい!」とか言ってるのはやっぱり実態とずれてるよね」

司会者「2年くらい前はまさにそういうふうに言ってましたよね自分で」

レジー「ほんとお恥ずかしい話で。この人たちもあくまでも今のアイドルカルチャーの「一部」であって、そういう中で実力と運があって特定層から強烈に支持されている。で、この人たち以外にも魅力的な人たちはもちろんたくさんいて、さらに言うと「魅力的」の定義がその人のアイドルとの接し方によっていろいろ違う。そんな構造は忘れちゃいけないと思いました」

司会者「わかりました。長くなってきたので一旦今年のTIFについてざくっとまとめてもらえると」

レジー「いや、基本的には今年も超面白かったです、以上、ってことでしかないんだけど。シーンの全体観のわかる貴重なイベント、であると同時に頭溶け出してくるような楽しさのあるイベントなのでこの先もぜひ続いていってほしい。ただ、合わせて規模拡大と純度のバランスみたいなところはぜひ模索していってくれたらなあと思います」

司会者「マナー関連の問題も出てきてたみたいですし、運営として規制と自由の距離感って話は今後出てきちゃいますよね」




レジー「そうね。なんかこれは仕方ないというか、ライブカルチャーとユースカルチャーが組み合わさると同じ事が起こるってことなのかなというのが現状での感想です」





(おまけ)「TIF下北沢Queステージ」で示されたJ-POPの未来

司会者「3日は夕方にお台場を出て下北沢のQueへ行きましたね」

レジー「Shiggy Jr.のリリースパーティーに行きました。TIF帰りの人もぱらぱらいたっぽいな」



司会者「環ROYとふぇのたすとの対バンでした」

レジー「どっちも初めて見たんだけど、環ROYいきなり七尾旅人と共演した曲から始まって楽しかった。DJつきじゃなくて自分でトラック流してるの新鮮だった。ふぇのたすはShiggy Jr.と志向してるものが近いような感じがしたなあ。TIFに引きつけて考えると、アイドルブーム以降のJ-POPのあり方というか。客席とのコミュニケーションの仕方とか、あと「生楽器」「生演奏」にこだわらない感じとかも」



司会者「以前この記事でまとめた内容と近いですね。形式にとらわれず、まっすぐにポップであることが許容される時代になってるのではという」

レジー「Shiggy Jr.の“summer time”の2番繰り返しの後のサビでオケが薄くなる感じとか、最近のアイドルマナーに則ってるなとも思うし。個人的な印象として昨今の東京のアンダーグラウンドでうごめいている人たちは音楽の「縦軸」というか、これまでの音楽の流れ、歴史を意識しながら音を鳴らしている人たちが多いと思っているんですが、Shiggy Jr.とかふぇのたすは「縦軸」よりも「横軸」、今の時代の商業フィールドの動きとリンクしながら大きいところを目指そうとしてる感じがあるなあと。2日間アイドルのステージにいろいろ接してからこの2バンドを見たけど、地続きなものを感じて面白かったです。おまけなのでこのくらいで。次回は最初に言った通りロックインジャパンについてやると思います」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識17 - 「楽曲派」はアイドルマーケットに貢献できるのか

東京女子流の「いま」をどう捉えるか

司会者「6月4日に東京女子流のニューアルバム『Killing Me Softly』が発売になりました」



レジー「正直全く期待してなかったんだけどすごい良かった」

司会者「女子流からはちょっと気持ちが離れてますよね最近」

レジー「去年のTIFの記事でも書いたけど何かやってることがピンとこなくてね。最初2枚のアルバムがかなりしっくりきてたので余計に」

司会者「Jが作った曲以降もシングルが結構出てましたが」

レジー「小出さんのやつとかも意外とのれなかったんだよなあ。イントロのキャッチーさがなぜサビまで持続されないのか?とかいろいろ思ってて。アルバムもどうなんだろうなあと思いつつ、でも野音のライブもあるし一応買っとくかくらいの気持ちで半ば義務的に購入したんだけど」

司会者「なんかひどい」

レジー「でもこれがほんとに良かったんだよ。最初聴いたときに地味で食い足りない感じのしたシングル曲も含めてトータルの作品としてすごくまとまってた。特に“ちいさな奇跡”“恋愛エチュード”“ずっと 忘れない。”、この中盤3曲の流れがマジで素晴らしい」

司会者「“ずっと 忘れない。”いい曲ですよね」



レジー「僕の中の女子流ってこういうイメージなんだよなあ。黒っぽいトラックの上に歌いたくなるしっかりしたメロディがあるというか。これで野音のライブ一気に楽しみになってきました」

司会者「ちなみにこのアルバム、オリコンでは初登場23位でした。売上は4,948枚」

レジー「うーん。何か停滞感あるよね」

司会者「これまでのアルバムの発売日と週間チャート最高位をオリコンのサイトから引っ張ってくるとこんな感じです。売上は載っていませんでした」

『鼓動の秘密』 2011年5月4日 25位
『Limited addiction』 2012年3月14日 25位
『約束』 2013年1月30日 13位
『Killing Me Softly』 2014年6月4日 23位


レジー「順位だけで言うと元に戻ってるんだなあ。ここにpittiさんが以前集計した「ネットの音楽オタクが選んだ○○年の日本のアルバムアーカイブ」における順位、つまりネットで自分の好きな音楽を発信するくらい音楽に関与のある人たちの中での順位を重ねてみるとこんな感じ」

『鼓動の秘密』 2011年5月4日 25位⇒2011年 24位
『Limited addiction』 2012年3月14日 25位⇒2012年 35位
『約束』 2013年1月30日 13位⇒2013年 125位
『Killing Me Softly』 2014年6月4日 23位⇒??


司会者「『約束』で大きく低落したんですね」

レジー「正直僕もあのアルバムあんまり聴いてない。同じランキングの今年版があったら『Killing Me Softly』は『約束』よりはだいぶ上に行くと思うけど、初期2作と比べるとどうだろうなあ」

司会者「オリコンチャートのアクションも明確な上昇がない中で「音楽好き」からの支持も集められなくなっていると」

レジー「結構まずいよなあ。女子流が頭打ちになってるってのは各所で言われてることだけど、ここに関して僕が気になってるのはこの人たちのファン層の話で必ず出てくる「楽曲派」というクラスターについてです。要は「楽曲派を中心に支持を集める」みたいなアイドルは実際問題どこまで成立するのかって話。最終的にはその辺のボリュームがどのくらいあるのかみたいなことをやりたいんですが、まずはこの「楽曲派」というものの現状について自分の体感値も交えながらちょっと考えてみたいと思います」


「楽曲派」はアイドルカルチャーを楽しみ切れているのか

司会者「そもそも「楽曲派」の明確な定義ってあるんですかね」

レジー「ちょっとググっただけだと見当たらなかったんだけど紙でまとまってたりするのかしら。自分がこの言葉使う場合はこんなイメージで使ってます」

・アイドルへの関与の仕方は基本DD(贔屓のグループはあってもそれ以外も幅広く聴く)
・アイドル以外の音楽ジャンルにも関心・こだわりがある
・アイドルのCDやライブなどにお金を落とすが、「接触」にそこまで比重を置いていない(なので、CD大量購入は基本しない)


司会者「アイドルというジャンルそのものに関心があるのは前提として、そのジャンルを構成する要素の一つである楽曲に特にフォーカスしてる人たちって感じですかね」

レジー「そうね。だから自分の得意範囲に引っかかった曲をやってるアイドル1つ2つ好きみたいな人は楽曲派ってクラスターには含まれないかなと思ってる。この辺微妙だけど」

司会者「アイドル楽曲が面白いことになってるってのはそれこそ「アイドル戦国時代」以前から言われていたことかと思いますが、「週刊金曜日」のアイドル特集でさやわかさんがそのあたりの背景をまとめてます。今のアイドル文化においてCDは「接触」のために買われるものであって曲の善し悪しは関係ないと言われがち、という流れを受けての文章です」



まず「楽曲なんてどうでもいい」ものになった結果、「どうでもいいなら、いい曲だって構わないだろう」という“楽曲志向”が増えてきた。けだし「接触」を中心に音楽業界が潤って商品にカネを掛けられるようになれば、質のいい楽曲を作れるようになるのは当然かもしれない。

レジー「接触目当ての人がいるからこそ界隈でお金が回る。前にこの記事でも書いたような話ですね。で、女の子が歌って踊ってればそこで鳴らされる音楽ジャンル自体はなんでもよいと。僕自身もそういう興味で最初は入りました」

司会者「それでトマパイにびっくりしたりね」





レジー「そうそう。こういう音楽は今ここにあるんだ!みたいな。ただ、いろんなグループを知って実際にライブとか行ってるうちに「僕はアイドルの楽曲を音楽的な観点からフラットに評価してます」とか言ってる場合じゃないなって気持ちがどんどん強くきていて」

司会者「ライブに行くと違う見え方・聴こえ方になるのはアイドル以外の音楽でも同じですよね。アイドルはそこに「若い女の子」みたいな評価が難しい変数が入ってきちゃうから特殊なものと扱われてるだけって話で」

レジー「僕の場合アイドルに限らず女性アーティストだとこの流れ多いんだよね。曲ではまって、ライブで見た目含めてはまる。チャットモンチーもふくろうずもそうだった。アイドル話に戻すと、最近だと予想外に超かわいくて思わずサイン会の列に並んでしまったファンタライムもこのパターン。TIFが楽しいのも、やっぱりあの物販が集まってていろんなグループが至るところにいるあのエリア抜きには語れないと思うし」



司会者「確かに」

レジー「最近だとNegiccoが新曲でオリジナルラブ起用とか「楽曲派向け」に見える感じがあるけど、彼女たちの魅力を「洗練された楽曲」みたいなところに集約させちゃったときの大事なこと語り落としてます感ってすごいじゃないですか。ライブ行ってそれこそ一緒にラインダンスしたりすると、「この曲を」「この人たちが」歌ってるがゆえの楽しさとか幸せな気持ちってのが絶対あって。てかNegiccoのライブってほんと楽しいよね」



司会者「この前のイベントも盛り上がりすごかったですね」

レジー「tofubeats×仮谷せいらがキラーチューンで盛り上げまくって、さらに小西さんの大ネタ使いまくりの超楽しいDJの後だったのに、一番印象に残ったのはNegiccoだったという。なんか「楽曲派でござい」ってスタンスのままでいたらこういう楽しさは味わえなかったと思う」

司会者「最近の楽曲派周りのトピックでいうとEspeciaのアルバムでしょうか」



レジー「このアルバム最高にかっこよかったんだけど、なぜか自分の中でヘビロテになる気がしないなという直感があって。Especiaに関しては去年TIFで一度見たことあるだけだからもっとがっつり見に行ったら印象変わるのかもしれないけど、現状はそんな感じなんだよね」

司会者「そんなツイートしてましたね」




レジー「うん。で、ちょっと考えてみたけど、たぶん今のEspeciaから透けて見える「昨今のアイドルシーンにはないものを意識的に持ち込む」感じが原因なのかなと。どうも自分ごと化できないというか。ハイハイさんのところに載ってたこのプロジェクトの中心人物、サウンドを手がけるSchtein&Longer横山さんと“No.1 Sweeper”“くるかな”などのMVの制作を務めたホンマカズキさんのお二人のインタビュー読んでなるほどなと思ったんだけど」

――(笑)お二人はEspeciaに関わるまでアイドルにハマったりしたことはあったんですか?

横: 僕はアイドルまったく分かりませんし、今も分かりません!

ホ: 僕はアイドル大好きなんですよ。だって女の子だし。俺、女の子好きだし。

横: だから、その、僕はBiSが始まりでしたけど※、こういうアイドルのお仕事させて頂くまでは何だか全然分からなかったし、関わるようになってから”箱推し”だの”剥がし”だの業界用語を知った感じですね。アイドルらしい音楽については今でも全く分かりません。アイドルのCD全然聞かなくてダメですね。

※S&L横山氏はEspeciaと同事務所のアイドルグループ、BiSの編曲も務めている。

(中略)

ホ: 自分はEspecia以外にもいろいろとアイドルの映像仕事やらせていただいているんで、そういうの(注:「メンバーを可愛く映す」みたいなアイドルとしての“あるべき姿”)をちゃんとやるべきアイドルだっていうのと、そこをはずして面白いことをやったほうがいいぞっていうのを分けて考えてます。

横: アイドルとしての純粋主義を追い求めるならたぶんウチじゃないと思います、うちは雑味だらけなので…。


司会者「これまでのアイドルのコードから自由な人たちが作って、「あるべきアイドル」と違うことをやっていこうという意図があると」

レジー「実際その狙いは成功してると思うしアウトプットも素晴らしいんだけど、僕が思ったのは「主体としてのアイドル」と「そこに外から持ち込まれる“面白い要素”」があったときに、「あ、今の自分は「魅力的な後者の側面がありつつもバランスとして前者が勝ってるもの」の方が好きなんだな」ということで」

司会者「あーなるほど。Perfumeなんかもそのせめぎあいだったりしますしね」

レジー「うん。Perfumeの歴史も、最初は後者が勝ってたのが徐々に前者が後者の要素を飲みこんでいく過程だったりするわけじゃないですか。トマパイは最後まで後者が勝ってたと言っていいのかな。たぶんトマパイ大好きだった2012年の自分のモードでEspecia聴いてたら最高!!って騒いでそうなんだけど、今となっては「ヴェイパーウェイブ的な良さある」って言われても「うん、それはそうなんだけどこの場所においてはそれを求めていないんだよな・・・」って体になってしまったというか」

司会者「野菜をフィーチャーしたPVもそういった文脈で話題になりましたが」



レジー「これが公開になった時の僕のTL上の印象で言うと、ネット上に氾濫する音楽をきっちり拾ってる人たちが「野菜だ!!」ってぶちあがってる一方で、アイドル現場にガツガツ通ってるような人たちはそんなに反応してなかったと思うんだよね。この温度差というか断絶はいろいろ示唆的だなと思った。で、もちろん「いろんな音楽に詳しくて、その中の一つとしてアイドルポップスも聴くよ」って人たち相手に商売をして十分な成果を残せる世の中ならばどんどんそういうプロジェクトが出てきてほしいと思ってるんだけど、なんとなくそれはそれで難しいのが実態なんだろうなと。最後にそのあたりの話を定量的な指標も交えて考えてみます。相当インチキな試算だけど、雰囲気掴むうえでの数遊びだと捉えてもらえれば」


「約1,500人」のパイを取り合う楽曲派市場の未来(かなりインチキ)

司会者「試算ということですが」

レジー「とりあえず手元にある情報で、結局楽曲派、それもちゃんとお金落としてくれる楽曲派って何人いるのよってことを明らかにしたいなと。最初に女子流の話をしたので、そこ起点でやりたいんですけど。まずこういう前提を置きます」

・楽曲派の定義は前述のとおり
・その中でもお金を落とす=アイドルマーケットに経済的に貢献する「アクティブ楽曲派」を試算
・『Killing Me Softly』の初週売上は4,948枚
・アクティブ楽曲派たるもの、ある意味「楽曲派の牙城」とも言える女子流のアルバムは必ず初週に購入している(『Killing Me Softly』を初週に買っていないアクティブ楽曲派は存在しない)


司会者「4つ目はどうなんですかね」

レジー「ちょっとわからん。もちろんこれから買ったりレンタルで聴く人もいると思うけど、経済的な影響力・瞬発力を強く持ってる層のボリュームを出したいので一旦こう仮定します。で、今作『Killing Me Softly』は3タイプでの発売なので「1枚購入者」「2枚購入者」「3枚購入者」の3種類のグループがあると想定。もちろん4枚以上買ってる人もいるだろうけど、接触系のイベントは発売週のリリイベのみのはずなのでそこまでドーピング大爆発って感じでもないはずだから超少数派としてとりあえず無視。ここ違ってたらどなたかご指摘ください」

司会者「枚数別の購入者はどう出しますかね」

レジー「女子流の現場事情に詳しい方から「本社の接触イベントに集まって複数部またいで一日中いるような人は150人くらいではないか」というアドバイスをいただいたので、「3枚購入者」をその150人と仮定。この人たちが3枚×150人=450枚買ってるので4,948枚-450枚=4,498枚を「1枚購入者」「2枚購入者」で買ってると。この二元一次方程式を解くんだけど、ここからは単なる数合わせなのであまり根拠ないです。たとえば「2枚購入者」が「3枚購入者」の4倍、5倍、6倍だとするとそれぞれこんな感じ」

・1枚:3,298人  2枚:600人  3枚:150人  計:4,048人
・1枚:2,998人  2枚:750人  3枚:150人  計:3,898人
・1枚:2,698人  2枚:900人  3枚:150人  計:3,748人


司会者「「2枚購入者」を増やす分だけ「1枚購入者」が減ると」

レジー「なんとなく複数枚買う人は1,000人もいないと思うので上2つのパターンだと納得性あるのでは。つまり、大体『Killing Me Softly』を買った人の頭数は4,000人くらい、「1枚購入者」は3,000人くらい。そして「アクティブ楽曲派」のマックス値はこの「1枚購入者」100%ってパターンなので3,000人」

司会者「あとはこの3,000人から「アクティブ楽曲派」ではない人をどうやって除くかですね。グループとしての女子流が大好きで接触にも行きます、シングルは結構買ってますみたいな人も「1枚購入者」の中に含まれてるでしょうから」

レジー「これ以上は女子流の数字からは考えられないので、楽曲派周りで参考になりそうな下記情報を使って「アクティブ楽曲派」の数を考えてみます。太字はファクト、下線ありは特に適当な設定です」

・トマパイ定期イベント「PS2U」最終回:800人キャパの会場に一度に入り切れず
(ソース:観覧記録 Tomato n' Pine/ライムベリー/Negicco「POP SONG 2 U」最終回@西麻布eleven
→2012年末の実績。トマパイ+この対バンに行った人たちを「アクティブ楽曲派」の基礎票と仮定し、ここに参加できなかった人の存在やその後のアイドル文化の浸透などを考えると800人の倍くらい、1,600人程度は存在するのでは?(もっとたくさんいればトマパイは解散しなくて済んだはず)

・アイドル楽曲大賞:投票人数が2012年1,715人→2013年2,106人
(ソース:各年のサイトより 2012年 2013年
→「アイドル」の「楽曲」に興味がある人のボリューム。①「アクティブ楽曲派」が占める割合が高いはずだが、当然②特定アイドル推しのファンや逆に③「全くお金を落とさないけどアイドル楽曲をチェックしている層」も含まれる。①:②+③=7:3くらいだとして、2013年時点で大体1,500人くらい?

司会者「肝心の係数がインチキなので何とも言えないところはありますが、1,500人くらいなんですかね」

レジー「インチキ感ありありだけど、女子流1枚購入者の半分程度と考えれば意外と納得感あるような気もするけどどうだろ。ブリッツのキャパが1,300人、リキッドルームのキャパが900人くらいと考えてもこのくらいなんじゃないかなー」

司会者「ここはこれ以上検証しようがないですね」

レジー「この辺のロジックはぜひ誰か発展させてほしいんだけど、たぶん桁感としてはこれくらいだと思うんだよね。だから「楽曲の良いアイドル」ってコンセプトで突き抜けようとする場合、メインゾーンはせいぜい1,500人から2,000人、どんなに多く見積もっても3,000人くらいで、当然総取りはできないからその何割かにアプローチする形になるってのが実態なのかなと。で、この人たちはバリバリ接触する人に比べると金払いは悪い」

司会者「これでビジネスになるかという話ですね」

レジー「アイドルだからどんな音楽的トライでもできると言いつつ、やっぱり「アイドル」というところで何かしらの枠がはめられて広がり方が限定される部分はまだまだ否めないと思うんですよ。だから、「アイドル」というフォーマットをとる以上はその市場のマナー、それはルックスの部分であったり接触のあり方だったりっていう生々しい話になってしまうんだけど、そこにある程度は則っていかないと規模拡大は難しいってことなんだろうなあ」

司会者「楽曲派自体はもっと増えないんですかね」

レジー「どうなんだろ。ちょっと前まであった気がする「アイドル“も”聴く音楽ファンはおしゃれ、違いが分かってる」的な風潮ってもうないと思うんだよね。ロックフェスにアイドルが出るのが普通になって、「差別化戦略としてのアイドル楽曲好き」って概念はあっという間に機能しなくなった印象。そういう中で「あえてアイドルの“楽曲のみ”愛でる」人が出てるのかよくわかんないよね。好きになるなら普通に接触とか現場とかビジュアルとかとセットで好きになるはず」

司会者「あー」

レジー「僕も以前楽曲派のススメ的な記事を書いたことあるし音楽にこだわってるアイドルじゃないと好きになれないのは今も変わらないんだけど、「アイドルの音楽的側面」みたいなことばかり強調するのもそれはそれで無責任なんじゃないかと最近思うようになってきてて。この辺結論あまりないけど、「音楽にこだわる」を標榜するあまりその志とともに殉死していくようなグループはこれ以上増えてほしくないって感じでしょうか。そういう意味で武藤彩未が楽曲派も含めてアイドルシーン全方位戦略をとろうとしてるのは素晴らしいし、リリスクやNegiccoが曲の良さを武器にしつつも「アイドルらしい」キャラやライブのエネルギーを備えているのは頼もしいし、女子流にはなんとか次の突破口を見つけてほしい。あとアイドル売りしていくのかよくわかんないけどFaint*Starは大丈夫かな、トマパイの反省をどこまで生かすのか、もはやそういう話ですらないのかってのも注目してます。かなり長くなったので今回はこんな感じで。いろいろあるけどアイドルという文化がこの先も持続可能な形で続いていったらいいなと心から思います」



司会者「わかりました。次回はどうしますか」

レジー「ひたちなかの話をしたいんだけどステージ割りいつ出るのかな。他にあればまた考えます」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」

アイドルと自意識、アイドルの自意識16 - 香月孝史『「アイドル」の読み方』を巡る「アイドルらしさ」と「自己承認」の話

『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』とアイドルの自意識

レジー「香月孝史さんの『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』を読みました」



司会者「ツイッターでは以前からフォローさせていただいていました」

レジー「この本すごく面白いです。「アイドル論」みたいなものがほんとにいろいろ出てきた今こそ必要な本、って感じでした。今年はピロスエさんが仕切った『アイドル楽曲ガイド』も出たし、今後アイドルについて何か言ううえでのベースになりそうなものが続けて出たね。この2冊と去年のさやわかさんの『AKB商法とはなんだったのか』の3冊は外せない気が」

 

司会者「『「アイドル」の読み方』に関しては数多ある「アイドル語り」に関してすごく丁寧に整理してますよね」

レジー「うん。最初の方の「アイドル」の定義問題みたいな話だけも読む価値がある。具体的には3つに分類してるんですけど」

分類1:「偶像」 - 繰り返される“辞書上の定義”
分類2:「魅力」が「実力」に優るものとしてのアイドル
分類3:ジャンルとしての「アイドル」

司会者「いわゆるグループアイドル話は分類3に該当する内容である一方で、こういった分類を自然に行き来する感じで「アイドルとは?」みたいな話が進んでいくということをたとえば『あまちゃん』における水口の発言なんかを例にとりながら説明しています」

レジー「この辺がぐちゃぐちゃした感じで「○○はもはやアイドルではない」とかやり出しちゃうからよくわからなくなるんだよね」

司会者「その「○○はもはやアイドルではない」的表現をサンプルとして立て続けに紹介しているパートもこの本にはあります」

レジー「ここ前半のハイライトだね」

司会者「そうなんですか」

レジー「いや、半分冗談ですが。やりたくなる気持ちはわかります。そしてこの本のサブタイトルにもなってる「混乱する「語り」」というものを示すという意味では必要な内容だったと思います」

司会者「このブログで引いたことのある記事もいくつか」

レジー「まとめて見ると結構胸焼けするよね。あくまでも一部の話でしかないとはいえ、わりと特定方面の人たちがそのパターンを使ってる感じがわかって面白かった」

司会者「この辺の言説における起点となる「アイドルらしさ」っていうのは、ざっくり言うと「お仕着せ」「操り人形」「虚構」みたいな感じですか」

レジー「それが実情を正しく表していないってのはこのブログでもたびたび指摘してますが、これに関する説明で以前取り上げた円堂都司昭さんの『ソーシャル化する音楽』における「ライヴというよりライフが売りものになっている」という話が引用されてます」



司会者「女子流のライブ以外のユースト中継なんかが例に出ています。ステージを降りた姿も含めて訴求していくというような話ですね。そこに関連して、SNSのツールとしての重要性が語られています」

レジー「パーソナリティーも含めてそのアイドルの「価値」が決まるって話なわけで、これだけ見るとロキノンな人たちにとっても好物な世界だと思うんだけどね。「そのパーソナリティーが音楽に反映されてないんだ」みたいなこと言うんでしょうけど。で、僕がこの本ですごく良かったなあと思ったのはこのあたりです」

ネガティブな葛藤も含めて、すべてがコンテンツになってしまうその環境は、アイドルが負の側面まで戦略的に発信できる自由さにも満ちている。それはアイドルに向けられるファンからの反応に対し、アイドル自身が自己承認や感情の受容といった欲求をファンに投げ返すようなしたたかさでもあるだろう。(170ページ)

現在のジャンルとしての「アイドル」は、かってのようにきわめて少数が巨大マスメディアによって選別されるのではなく、自発的な「名乗り」と一定の形式によってこのジャンルに参入し、アイドルに「なる」ことを選び取る契機が多いものである。少なからぬ人が自己表現、自己承認の場を求めるためのフォーマットとして、参入の自由度が高い「アイドル」というジャンルが存在するのであれば、そこに参入するアイドル個々が無条件に人々を説得してしまうような超越的な存在だと考えるのは難しい。(201ページ)


司会者「自己表現、自己承認といった言葉が出てきます」

レジー「意外とこうやって言い切ってる文章見たことなかったんだけどどうなんだろ。すごくすっきりしました。以前「アイドルすかんぴん」ってドキュメンタリーをテレビで見た時にも強く感じたことで。ジャンルとしてのアイドルが、「みんなに自分を見てもらいたい女の子」のプラットフォームになってるわけですよね。「やらされてる」とか「曲が作れない」とかって話をする前に、まずはこの前提を忘れてないかは常に意識する必要があるんじゃないかしら」

司会者「ここで言われている「自発的な「名乗り」と一定の形式によってこのジャンルに参入し」ってところは、以前柴さんにインタビューした際におっしゃられていた「名乗れば音楽ライター」という話と少し似てるかもしれませんね」

僕も何回か「音楽ライターになるにはどうすればいいんでしょうか」という質問を受けたことがあります。そういうときは、たいてい「名刺を作ってtwitterのプロフィール欄に“音楽ライター”と書けばなれる」って答えることにしてます。無責任に思われるかもしれないですが、本当にそういう時代だと思います。もちろん、それで食っていけるかどうかは別問題です。

レジー「ねえ。「アイドルになりたい人」と「音楽ライターになりたい人」の相似というか。「自己表現、自己承認の場を求めるためのフォーマット」「参入の自由度が高い」「それで食っていけるかどうかは別問題」。うん、すごいしっくりくるな。いわゆる「地下アイドル」の運営サイドとライター学校とか、もっといろいろあるのかも」


「承認」「表現」の向き合い方 「ラップアイドル」の立ち位置から

司会者「“「地下アイドル」の運営”という話で言えば、先日こんな記事が出てました」

メンバーの母親が悲痛の叫び……15歳地下アイドルの脱退理由「高額なお金」に波紋

レジー「ライムベリーの話ね。ライムベリーも地下アイドルかあなんて思ったけど世間的にはそんなもんだよね」

司会者「ライムベリーが活動を再開するにあたってメンバーのYUKAが脱退するということになり、彼女のブログに母親が登場して「ライムベリーを続けていくには高額なお金がかかる」「経済的理由によりライムベリーを続けていくことを断念した」と理由を述べたと」

レジー「とりあえず残念だよね。ライムベリーは結局TIFとTパレ祭りの2回しか見れなかったけどどっちも最高に楽しかったから」



司会者「今年に入ってリリースされた『ウィンタージャム』も素敵です。スチャダラの『サマージャム'95』へのオマージュですね」





レジー「スチャダラとアイドルのつながりって面白いよね。最近だとSKEのケースもあるし」



司会者「しかし「高額なお金」って何に使うんですかね」

レジー「今のところは誰のため、何のためのお金なのかよくわかんないけど、とりあえず「アイドルをやるのにはお金がかかる」ってことはわかった。この件でぼんやり思ったのが、このお金って親御さんからすると「投資」なのか「お小遣い」なのかみたいなことで」

司会者「あー」

レジー「香月さんの本でも「自己表現・自己承認」って言葉が出てきてたけど、ライムベリーの人たちも含めて基本的には本人たちは楽しいからやりたい/やってるってだけの話でしかないと思うんですよ。そこにお金が付随してきたときに、出資する側、具体的には家族っていうことになるけど、「いつか回収するもの」として考えるのか「今この瞬間本人たちが楽しむために使ってしまうもの」として考えるかで見える景色がだいぶ変わってくるんじゃないかなと」

司会者「宇野常寛さんの『文化時評アーカイブス2013-2014』の「アイドル」に関する鼎談でも岡田康宏さんからこんな指摘が」



ただ、そこで難しいのが女の子自身の「有名になりたい」っていう気持ちですよね。テレビに出たい、チヤホヤされたいから体力的にも精神的にも厳しい状況でもライブアイドルをやっているんだという現状もあるから、(後略)

レジー「この辺の問題は難しいよねえ。やりがい搾取みたいな構造ともつながってくるし、一方で「アイドル」というものを運営していくことに対して間違いなくお金はかかるだろうし。単にチヤホヤされたいだけならSNSでいくらでもそれを満たす回路もあるだろうし、手軽にニコ生で人気者になればいいんじゃない?って指摘もあてはまるかもしれない。いずれにせよ裾野の広がりに水を差すようなことにならなければいいなと思います」

司会者「ライムベリーの動向次第では他にもヒップホップを前面に押し出したアイドルが出てくるかもしれませんね」

レジー「そうね。それで言うと、この前FantaRhymeのライブを初めて見たんですけどすごい良かったよ」



司会者「随所にラップもあるダンサブルな曲を歌う福岡の2人組のグループです」

レジー「『Blue Sky』って曲が大好きで去年の年間ベストに次点で入れたんだけどね」



司会者「これいい曲ですよね」

レジー「この曲聴けて良かったし、全体的にパフォーマンスしっかりした中にも2人の自然な感じが出ててすごく好感度高かったわ。てかSAYAちゃん可愛すぎた。正直ビジュアル面は特に期待もせずに見に行ったんだけど完全にときめいてしまった。サイン会にも参加したよ」

司会者「この日はNegiccoと一緒でしたが、翌日はリリスクともやっていました」

レジー「そっちも見たかったなあ。で、それを見た方のツイートでこんなのがあって気になりました」







司会者「対決モードだったんですね」

レジー「その感じも見たかったし、あとはこの「ラップが自作かそうでないか」って話ね。アイドルを「自己表現」って切り口で捉えていくと「自分で作らないとダメ」みたいな声が聞こえてきそうだし、実際にその手の話は香月さんの本でも取り上げられてるし、僕もブログでさんざんやってますけど。「自己表現」と「自作自演」がナチュラルにイコールになりがちだけど、別にそんなことはないんだよね」

司会者「Perfumeとかその最たるもんですよね。チームPerfumeのすごさも含めて彼女たちが背負って表現してるわけで」

レジー「そうそう。「総合戦としての自己表現」ってものの可能性を提示しているのがジャンルとしてのアイドルなんだろうなとか思いました」


「アイドルらしさ」との終わりなき戦い 柏木由紀のケース

司会者「香月さんの本では、「アイドルらしさ」というものを意識的に選び取る存在の代表としてAKB48の柏木由紀について取り上げています」

柏木にとって、「アイドルらしいアイドル」は体現したい理想だが、柏木は、それが一般的に「痛い」と感じられるほど不自然な振る舞いだという客観的な判断を持ち合わせている。そしてそのうえで、ステレオタイプなアイドル像をあえて志向しているのだ。柏木のような視点をふまえると、ステレオタイプな「アイドルらしさ」の具現を、主体のない「アイドル」当人に他者が押し付けたものと捉えることの限界が見えてくる。(72ページ)

レジー「これほんとその通りだよね。しょせんアイドルなんて・・・みたいなものすら相対化してしまう強さというか。で、ちょうど香月さんの本読んでるくらいの時に去年やったゆきりんのソロライブのブルーレイを買ったんですけど」



司会者「横浜アリーナをいっぱいにしてのソロライブでした」

レジー「これマジで最高だった。アイドル好きを名乗る人は全員見るべき」



司会者「かなりちゃんとしてますよね」

レジー「グループの時と全然違う。普段手抜きしてるんじゃないの」

司会者「それはないでしょ」

レジー「いずれにせよ空気は読んでるに違いない。なんかフジファブが3人体制になったら山内くんが急に本気出してきたみたいなすごみを感じた」

司会者「彼女の歌自体は前からそれなりに評判は良かったですよね」

レジー「秋元康が「柏木のバラードは良い」みたいなことを言ってた話をどこかで聞いたことがありますけど、このライブ見た印象としては僕はアップテンポの曲の方が好きです。ぐーっと伸びてく感じがはまるよね。『フライングゲット』も『GIVE ME FIVE!』も原曲より全然良いわ」

司会者「フレーズを切るときに語尾が軽く跳ねる感じになるのが特徴的です」

レジー「大人数歌唱になっちゃうと当然そんなクセとか楽しめないからねえ。人によっては好みが分かれるところなのかもしれないけど、少女性みたいなものを感じてすごく良いです。これ行きたかったなー。ライブ全体としても完成度高い」

司会者「生歌生演奏だしね」

レジー「うん。常々言ってる話だけど、48グループの大箱ライブって「たくさん人を集めるお祭り」としてしか捉えてないわけで、それを効率的にどう盛り上げるかっていう視点しかない。だからパフォーマンスそのものより「サプライズ」頼みだったりするし。このあたりは冒頭で紹介した円堂さんの「ライヴとライフ」って話につながってくるけど、「ライヴ」の部分の質を高めようなんて気はないと思うんですよ」

司会者「それに対してゆきりんのはちゃんと「ライヴ」だったわけですよね」

レジー「うん。立派な「ショー」になってた。もっと言うと、「ビジネスモデル」ではなくて「エンターテイメント」だったね。AKBが規模を拡大する中で効率化のために捨てていったいろいろなものが凝縮されていたと思います」

司会者「本体にも還元してほしいですよねこのあたりは」

レジー「そうね。48グループって結構どん詰まりになってる気がするけど、絶対ここに次のフェーズのヒントがあるはずなんだよ。規模拡大とは違う理屈での質の向上。以前Perfumeについての記事で詳しく書いた話ですね。そしてゆきりんの存在意義みたいなものももっと認められたらいいなあと。「アイドルらしさとは?」みたいなテーマにおける一つの参照点になるんじゃないかな。そう考えるともっといい曲作ってあげてほしいなあと心から思いますが」

司会者「わかりました。長くなってきたのでぼちぼちまとめていただきたいのですが。香月さんの『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』を起点に、「アイドルらしさ」「自己表現・自己承認」といった話に関して最近体感したアイドルのパフォーマンスについて触れてきました」

レジー「そうですね、とにかくこの本は刺激になるというか、接してるアイドルの領域によって感じ方も変わるんだろうなあと思います。いろいろ感想を聞いてみたい本ですね。あとはほんとみんなゆきりんのライブ映像見てほしい。そして次回があったら何とかして行きたいですね。今回はこんな感じで」

司会者「次回はどうしますか」

レジー「現状は未定かも。ちょっと告知的なものを挟むかもです」

司会者「できるだけ早めの更新を期待しています」
音楽に関する文章をウェブメディア・雑誌や個人ブログに書きつつ、会社ではそういうのとは関係のない仕事をしています。ツイートは音楽、アイドル、Jリーグ(柏レイソル)、読書など。12月11日に本出ます。https://t.co/Ql6NrdnKb4 お仕事のご依頼などご連絡は下記リンクからお気軽にどうぞ




 

 

 

 

 

 

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