March 25, 2007

Get straight

ギラギラとした歓楽街の大通りから
斜めに抜け出る小さな脇道。
チラシの表裏で言うところのまさに裏面のように
唐突に色彩を失って、
コンクリートを塗り固めただけの小さな商業ビルが狭々と並ぶ。
その一角に、妙子の副業としての勤め先があった。

雨上がりの夕方、薄紫がかった灰色のヴェールが街を覆う。
これも自分の心のモヤモヤを映し出しているんじゃないか
なんて思ったりしながら、妙子はビルの狭い会談を上った。

重たくきしむドアを開けて中に入ると、
ちょうど事務所の中から
ユリが店長と話し合いを終えて出てきた。

妙子と目が合ったユリが思わず目をそらした瞬間、
「辞めるの?」
とすかさず妙子が問いただした。
ユリは黙って目を伏せたままその場に立ち尽くした。
「そうだろうと思ってたけどさ。
 こないだ青山であの話聞いた時から。」

青山で偶然出くわして、ユースケとの結婚を聞いた時。
即座に妙子にはピンときていた。
隠し事を精算して結婚に打ち出したということは
ユリにとって“ここ”での事をユースケに告白し、
そして“ここ”をやめるということだ。
結婚そのものはもちろん祝福したい気持ちはあるけれど、
“ここ“を去るのは私を裏切ること、
という思いのほうが打ち勝って、
妙子はそのことが頭から離れず、サトルと一緒にいても
その動揺を隠せずにいたのだった。

regopark_cafe at 19:57│Comments(0)TrackBack(0)clip!プチコラム小説 

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