柚木怜のアトリエ

エロチックファンタジー小説

主に、昭和50年代を時代背景にした思春期の「少年」が主人公の官能小説です。

タイトル 少年T
 

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  物心ついた頃には気づいていた。自分の家がすごく貧乏で住んでいる家もボロくて、毎日のご飯もあまり美味しくないことに。子供心に、うちにはお父さんがいないからダメなんだと思っていた。そのせいでお母さんもずっと働いていて、ほとんど遊んでくれないのだ、と。
 かといってお父さんが欲しいとか、お母さんにもっと構ってほしいとか、そういったことを考えたことはあまりなかった。
 それはいつも姉が傍にいてくれたからだ。
 笹谷順平は一人、バラック小屋を出ると、玄関から数メートル先の天神川のほうに向かった。過去には大洪水を起こし〝暴れ川〟と呼ばれる天神川が目の前を流れているというのに、この界隈だけは転落防止用の柵も設置されていない。
 家の前の砂利道を歩いていくと、いきなり崖のようになっている。川底まで7~8メートルはあるので、一歩踏み込んで転落したら死を覚悟しなければならない。
 それこそ物心つく前から順平は母親や姉に「川には絶対行ったら、あかん」と強く言いつけられていた。
 もちろん、小学6年生になった今はいちいち言われなくても近づかない。川のほうに向かったところで何もないから、足を運ぶこともなかった。
 天神川はいつも通り、ドブ臭かった。順平は川の前までやってくると、腰を下ろして、体育座りした。二学期が始まって早一か月、10月初旬とあって、日が傾くのも早い。どこか寂しい気持ちにさせる秋の夕空の下、順平は口を真一文字に結んでいた。
 つい一時間ほど前、姉の夫佐子とかつての親友である脇友彦が裸で抱き合っているところを確認した。
 目撃ではなく確認という言い方をしたのは、順平はそれ以前に、姉の喘ぎ声をバラック小屋の外から聞いたことがあったからだ。姉はその時、喘ぎ声交じりに「友彦君」と呼びかけていた。あまりにも衝撃的な出来事に順平はその場で目の前が眩み、吐きそうになった。
 姉に裏切られた気持ちもあったが、それ以上に男同士とはいえSEXもする仲だった親友の友彦が、こっそり自分の姉に手を出していたことが許せなかった。
 だから学校で友彦を苛めるようになった。この前なんてクラスの女子の縦笛を、友彦のケツの穴に突っ込んでやったほどだ。
 それでも順平の怒りは収まらなかった。いや、怒りというより、真実が分からないことにいら立っていた。
あれだけはっきりと姉の声を聞いたというのに、まだ心のどこかで、幻だったのではないかという疑念に似た希望を持っていた。
 なぜなら友彦は自分と同じ年の小6である。高校2年生の姉がそんな子供を相手にするわけがない。ましてや姉は弟の順平でもたまにうっとり見つめてしまうぐらいの美人だ。姉に言い寄る男が多いことも、家にかかってくる電話から知っている。順平が知る限り、姉はそのすべてを断っていた。お姉ちゃんは真面目だから、男の人と付き合ったりしない、と順平は勝手に思い込んでいた。
 だから友彦なんかと……この目でちゃんと確認しないことには、怒りの矛先をどこに向けていいか分からず、自分が苦しいばかりだった。
 友彦のことも本当は信じていたし、「好き」という気持ちも残っていたと思う。
 学校ではいじめられっ子で、「おっさん」とか「チン毛」とかひどいあだ名をつけられている友彦。ひょろひょろの弱そうな体つきなのに、ヒゲや脛毛、さらにチン毛までボーボーで、おちんちんそのものは皮もズル剥けで、気持ち悪いぐらい大きい。むさ苦しい体からは、オシッコっぽい饐えた体臭がして、クラスの女子からも嫌われている。
 だけど順平は「焼却炉からの冒険」をキッカケに友彦と仲良くなり、今年の夏休みは毎日のように一緒に遊んだ。普通の遊びではない。順平は友彦にペニスをしゃぶってもらって、挙句にはお尻の穴に入れられるというSEXの真似事まで楽しんでいた。
 友彦は恐ろしいほど順平の秘密の願望を察して、それをしっかりと叶えてくれる親友でもあった。順平が姉の下着を穿いてオナニーしていることもなぜか知っていた。それどころか、順平の中にある女の子になりたい気持ちを汲み取り、男同士のSEXの時も女の子のように扱ってくれた。
 気づくと順平は友彦の前で、姉のパンツを穿くようになった。
 友彦にだけは、すべてを曝け出せた。
 こうやって思い返せば、友彦は恐ろしい奴だ。学校では泣いてばかりで、順平といる時も遠慮がちだったけど、イヤラしいことをし始めた途端、人が変わったように積極的になる。意地悪な言葉も囁いて、順平の悶える姿を見て、口元を緩めていた。今から思えば不気味な笑い方だけど、気持ちイイことをされている最中はどうしてか、あのニヤついた顔を向けられると、背筋がゾクゾクして快感となってしまうのだ。
 順平はそうやって友彦に開発されたような気がしてならない。
 いつの頃からか、友彦に抱きしめられてあの鼻がもげるような男臭さに包まれると、順平のおちんちんは痛いほど腫れて、お尻の穴が疼くようになった。
 上になった友彦が「順平君、可愛い」と言いながら腰を振ってくれると、ブサイクな老け顔も可愛く思えて、胸が温かくなった。友彦は汗かき体質で、SEXをしている時なんて、滝のように大量の汗を滴らせてくる。それを体で浴びることもたまらなく好きになった。
 小学生最後の夏休みを通して、順平は紛れもなく友彦のことを「彼氏」と思うようにないっていた。それは男として男が好きというよりも、順平は友彦の前では姉の夫佐子になりきっていたので、女として友彦が好きというほうが正しい。
 友彦の恐ろしさはここにあった。友彦は姉になりたい弟を抱き、本物の姉も抱いていたことになる。
 天神川を前にして、天神川を眺めることもなく、順平は小一時間ほど座り込んでいた。
 押し入れの中で順平が覗いていたことなんて知らない姉は、友彦が帰った後、どこかに出かけた。おそらくスーパーまで買い物に行ったのだろう。もうそろそろ戻ってくるはずだ。
 順平は姉と顔を合わせるのが怖かった。
 友彦との関係を完全に確認した今、まともに姉の顔を見られるはずがなかった。ただ、それは怒りの感情ではない。
 姉と友彦が抱き合っている姿をこの目で確認したことによって、順平の中で昨日までと違った感情が生まれたのだ。
 実際、順平は姉と友彦のSEXを覗き見ている最中、激しく勃起していた。二人に対して裏切られたという感情もウソみたいに消えていた。怒りも嫉妬も湧き上がってこなかった。
 姉の色白な裸や甘えるような喘ぎ声、部屋中に漂う男と女の生々しい匂い……それらすべてがイヤラしかった。
 順平は生まれた時から姉の顔を見ているが、友彦の大きなおちんちんで突かれていた時の姉の泣き顔は、今まで見たどんな表情よりも美人だった。
 姉はやっぱり憧れの人だった。
 そして最後に聞こえたあの言葉。あの言葉を聞いてしまったから、姉と顔を合わせるのが怖いのだ。
 姉は精液を中に出されながら、「じゅん、ぺい……」と口にした。
 その意味が分からない。姉は友彦とSEXしていたはずなのに、なぜ、最後の最後に実の弟の名前を漏らしたのだろうか。
 友彦は友彦で、姉のことを「ナナコ」と呼んでいた。それも謎であるが、順平にとっては姉の呟いた言葉のほうが、ずっと心に引っかかっている。
 聞き間違えたのかもしれない。
 姉も狂ったように悶えていたから、呼び間違えたのかもしれない。
 そうだとしても順平はあの瞬間、こう思ったのだ。
 
 お姉ちゃんに入れてみたい……。
 
 そんなことは今まで一度も考えたことがなかった。確かに姉のようになりたい気持ちはあったが、それはいわば女性的な感覚だ。入れたいではなく、入れられたい願望だった。
 だけど、あの瞬間、順平は一人の男として、姉の穴に雄の象徴を突っ込みたいと思った。
 お父さんは生まれた時からいなくて、お母さんは夜中にならないと帰ってこない貧乏な家で、順平はそれこそ姉と手を取り合って生きてきた。
 順平が物心ついた時から、姉は文句ひとつ言わず、母親の代わりをしてくれていた。
 順平はハッとなって顔を上げた。すでに空は暗くなっていた。この界隈は外灯もないので、すぐに闇に包まれる。闇の奥から、天神川のせせらぎが聞こえていた。
「順平……?」
 不意に背後から声をかけられた。振り向くまでもなく、姉だと分かった。
「あんた、そんなところで何やってんの?」
 姉はいつもと変わらない調子だった。
「あ、うん……」
 順平は振り向けないでいた。今しがたまで姉に対して芽生えた自分の欲望がまだ抑えきれないでいた。
「ご飯にするから、はよ中に入り」
 姉は呆れたような言い方をしながら、順平に近づいてきた。背後から迫る足音と気配に順平は震えおののき、発作的に立ち上がった。
「なんや? ビックリさせんといて」
 いきなり勢いよく立ち上がった順平に、姉は驚いたようだ。
「うん……ごめん」
 順平は振り返りつつも姉とは視線を合わさず、バラック小屋に戻ろうとした。
 スーパーの買い物袋を手に持っている姉の横を通り過ぎようとした時、不意に友彦の匂いを感じた。
 うちにはお風呂がない。だから姉の体にはまだ友彦の体臭が残っているし、お腹の中には精液も入ったままなのだ。
 全部、あいつのせいや。
 順平はバラック小屋の玄関の引き戸を開きながら、そう思った。
 自分が女の子みたいにされたことも、姉が女にされたことも、全部、あいつのせい。
「お腹空いたやろ? 今日、お肉買ってきたで」
 たまには喧嘩もするけど、こうやって姉と仲良く暮らしていた生活を壊したのも、友彦と出会ったせいだ。
「ほんま?」
 順平はようやく振り返って、姉を見た。
 天神川の向こうの吸い込まれそうな闇を背に、姉は自慢げに微笑んでいた。
 その笑みを見て、順平はまた思った。
 実の姉を好きになってしまったのも、全部、友彦のせいだ。
 


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「お姉ちゃん、俺……」
 やっぱり無理だった。
 あの後、姉の作った夕食を食べながらアニメを見て、それから一緒に銭湯にも行った。夕食の時なんて姉の体から友彦の匂いが漂っているような気がして、順平はご飯が美味しく感じられなかった。逆に、姉が銭湯で体を洗い流してくれた後は、いつものシャンプーの香りも一層、清冽に感じることができた。
 結局、姉には何も言えないまま順平は銭湯から帰ると自分の部屋に戻り、早々に蛍光灯の明かりを消した。早く寝てしまいたかった。
 実の姉が同じ屋根の下にいるというだけで、気持ちがそわそわして落ち着かない。銭湯の前で姉が出てくるのを待っていた時なんて、本当に最悪だった。夕方に覗き見た姉の裸体が生々しく脳裏によみがえり、友彦と愛し合っていた現実を否応なしに思い出してしまう。そのくせ、股間は痛いほど腫れてきて、その場でシコシコしたいぐらいだった。
 俺もお姉ちゃんとしたい……必死に考えないように努めても、自分の欲望を押し黙らせることは無理で、ただただヤキモキするばかりだ。
 銭湯ではいつも以上に体を綺麗に洗った。嫌いな歯磨きも丹念にやった。今さらながら石鹸で髪の毛を洗っている自分が恥ずかしくなった。こんなに髪の毛がゴワゴワしていたら恰好悪いじゃないか。
 お風呂上りにはドライヤーというものを初めて試した。鏡の前に座ってドライヤーをしながら、前髪を伸ばしたり曲げたりして、少しでも男前な顔になろうとしていた。
 理由は言うまでもなく、姉に恰好いいと思われたいからだ。自慢の弟としてではなく、一人の雄として、実の姉を振り向かせたいと順平は無意識に考えていた。
 つまり順平は、家の中にいながら、好きな女の子の前で緊張してしまう状態が常に続くことになったのだ。
 ましてや姉は銭湯から帰った後はTシャツに短パンという夏用の寝間着姿となる。居間ではだらしなく寝転んで、テレビを見ていた。スラリと伸びた素足や桃のような形のお尻にどうしても視線がいってしまう。
 もっとじっくり見ていたいけど、鑑賞すればするほど「友彦には触らせていたくせに」といった気持ちがこみ上げてきて、やるせない。
 このままでは気がおかしくなりそうで、とうとう順平は後ろ髪を引かれる思いで自分の部屋に戻ってきたのだ。
  かといって、それは何の解決にもならなかった。むしろ、一人になると余計に欲望が燃え盛り、どうしようもないほど悶々としてくる。
「じゅん……ぺい……」
 順平をひとしお苦しめているのが、耳にこびりついているあの言葉でもあった。
「お姉ちゃん、俺……」
 順平は返事をするように独り呟いた。
 やっぱり無理だった。
 明日もまた順平のいない時間帯を狙って、姉と友彦は二人の時間を楽しむかもしれない。それを知らない振りでやり過ごすなんて、耐えられるはずがない。
 決着をつけたい。
 それは順平がまだ12歳の少年であることも大きく影響していた。良くも悪くも、浅はかで思いついたことは、いますぐに実行しようとしてしまう。やってやる! と心に誓ったら、一人でどんどん盛り上がってしまうところもあった。
 そのタイミングで、階段を上がってくる音がした。姉もそろそろ寝るのだろう。隣の部屋の襖の開く音がして、それから蛍光灯の紐を2~3回、引っ張る音もした。
 順平は隣の部屋と繋がる襖の隙間に視線をやった。明かりは漏れていない。どうやら姉も寝ようとしているようだ。
 順平は布団から上体だけを起こして、襖の向こうに声をかけた。
「お姉ちゃん……」
 意識していたわけではないけど、思いつめたような暗い口調になってしまった。
「ん? どうしたん?」
 姉は弟の様子が変と分かったのか、心配そうに返事をした。それから順平の返事を待たず、姉のほうから襖を開けてきた。
 どちらの部屋も蛍光灯が消えているから、家の中は真っ暗だ。
 そのせいで、開かれた襖から現れた姉のTシャツと短パンの白さが、月明りのように見えた。同時にふんわりと姉の甘い香りが順平の部屋にも入ってきた。
 姉の匂いを嗅いだ途端、順平は情けないほど胸がときめいた。
「……もう寝るん?」
 とりあえず何か話をしたかった。
「うーん。まだ寝ないと思うけど……」
 姉は順平の視線の高さに合わせるように、布団の傍にちょこんと座った。
「……わかった」
 自分でも会話になっていないことは分かっていた。
「どうしたん? さっきからずっと変やで。何かあったんか? ちょっと電気つけるで」
 姉は起き上がって蛍光灯の紐を引っ張ろうとした。
「いや、電気はつけんといて」
 順平は慌てて、思わず姉の手首を掴んだ。こんなふうにしっかりと姉の手を握ったのは何年ぶりだろう。細くて柔らかく、スベスベとしていて、「女の子」だと強く意識した。
「そうなん?」
 手首を掴まれていることは全く気にしていない様子で、姉は不思議そうに言う。
「うん……」
「どうしたんや? 学校で嫌なことでもあったん?」
 姉は再び座った。順平も姉から手を離した。
「ううん、そうやないんやけど」
 まだ手に残る姉の感触を気にしつつ、順平は口籠るように言った。
「ほんまに?」
 部屋が暗いせいか、姉は順平の顔を確認するように覗き込んできた。暗闇の中でぬぅ~と迫った姉の唇を前にして、順平は思わず生唾を飲んだ。
「……うん」
「でも、なんか変やで」
 姉は何度も「なんか変」と言ってきた。理由を聞きだすまで、自分の部屋に戻りそうもなかった。姉にも心当たりがあるから、探りを入れているのかもしれない。
 順平も、いつまでも煮え切らない態度を取るのは良くないと思った。
「……俺、聞きたいことがあるねん」
 順平は大きく息を吸ってから、珍しく低い声を出した。
「え? 何? 真面目な話?」
 順平のただならぬ気配を感じ取ったようで、姉は自分の髪をしきりに触り始めた。
「うん……」
 途端に落ち着かない態度を取り始めた姉に対して、順平もまた怖くなった。このまま話を進めてしまうと、もう普通の姉弟に戻れない。その覚悟がなかなか出来ない。
「もしかして、友彦君のこと?」
 姉のほうが先に覚悟を決めたように、その名前を口に出してきた。
「え? う、うん……」
「友彦君と何かあった?」
 姉は順平の目をしっかりと見据えていた。
 姉にすれば順平が何を知っているのか、不安で仕方ないはずだ。
 それでも逃げずに問いかけてくるところに、大人の、女性の強さを感じた。
 順平はそんな姉の迫力に触発された。
「……俺、今日、覗いてた。お姉ちゃんの部屋の押し入れで」
 胸の中でつかえていたものを、一気に吐き出した。
 一瞬、殴られると思った。それほどその時の姉はカッと目を見開いて、信じられないものを見るように、順平を睨み付けていたからだ。
 思わず順平は目を閉じた。
「……」
 数秒経っても、殴られることはなかった。目を開けると、姉は呆然自失といった表情で、暗闇の宙を見つめていた。
 それからしばらくして、ようやく「そっか……」と呟いた。
「なんでなん?」
 一番分からないことから聞きたかった。
「……ごめん」
「謝らんでもええよ……別に。でもなんで友彦なんかと」
 順平は好きな女の子にフラれたようなショックを受けていた。
「ごめん……順平も友彦君のこと、好きなのを分かっていたのに」
 姉のこの言葉に今度は順平が絶句した。
 なぜ、友彦との関係を姉が知っているのか。友彦が告げ口をしたのだろうか。たちまち凄まじい怒りがこみ上げてきた。
「違うで……友彦君から聞いたんやないんで。うちが、見てしもうたんや」
「え?」
「夏休みに、順平と友彦君がしているところ……あんたがお姉ちゃんの下着を穿いて……」
 怒りに震えていた全身がたちまち恥ずかしさで熱くなった。
 なんということだ。一番見られたくない姿を、一番知られたくない人に暴かれたのだ。
「お願い、もうそれ以上は言わんといて……俺、この家にもうおられへん……」
 姉に対して芽生えた気持ちも、まさかこんな形で終わるとは思わなかった。あんな姿まで見られたとなれば、とてもじゃないが、これから一緒に暮らすのは無理だ。
 順平はふらふらと立ち上がった。
「違う! そういうつもりで言ったんやない」
 姉も立ち上がり、順平の肩を抑え込んできた。こんな状況にも関わらず、いつの間にか自分が姉よりも背が高くなっていることに気づいた。
「だって、俺……変態やん……」
 姉の下着を穿いて、同級生の男子とSEXをしている弟なのだ。姉はそのことを知っていたくせに、今日まで黙っていた。そのことが辛くて仕方なかった。
「順平が恥ずかしいのは分かるけど、お姉ちゃんだって、全部見られてしまっているんやから……」
 姉は順平の肩を掴み、なだめるように擦ってくる。
「……」
 あれほどパニックになっていたというのに、順平は少しだけ落ち着きを取り戻した。
 言われてみれば、姉も同じなのだ。
 お互い知られたくない姿を見られてしまっているのだ。
「一緒やろ? ね……座って。ちゃんとお話ししよ」
 姉はすがるような言い方で諭してきた。
「……うん」
 真っ暗な部屋にも目が慣れてきて、姉の表情もぼんやりと見えるようになっていた。こんなに必死な顔の姉に見つめられたのは初めてのことだった。
 お互い布団の上に座ると、姉は一から説明するようにゆっくりとした口調で話し始めた。
 友彦とそういう関係になったのは、順平との男同士のSEXを見た後で、バラック小屋の裏手で洗濯をしている時に迫られたということ。
「最初は嫌やったんやけど……あんたは知ってる? 友彦君のお姉さんのこと」
「友彦にお姉ちゃん? 一人っ子と違うん?」
「ちょうど私と同じ年のお姉ちゃんがいてん……亡くなっているんやけど」
「え? 死んだの? 事故? 病気?」
「ううん……自殺」
 これだけでも十分に信じられない話だったが、姉はさらに話を続けた。
「……順平のことを信じて話すから、誰にも言わないであげてね。友彦君、そのお姉さんと結ばれていたんや」
「……どういうこと?」
 背筋に凄まじい悪寒が走った。
「だから、その、恋人みたいな関係になっていてん」
「うそ? 姉弟でヤッていたってこと?」
 口にするのも憚れる話だったが、順平は胸が妙にざわついた。
「そう……でも、そのことがご両親にバレて、お姉さんだけ田舎に引っ越しさせられたんやって。それからしばらくして、お姉さんは……」
 姉はここまで話すと、順平の様子を伺うように視線を向けてきた。
 次から次へ想像もしていなかった話を聞かされ、順平はただただ愕然としていた。
「友彦……」
 友彦と過ごした今年の夏の思い出が走馬灯のように駆け回っていた。
「言い訳になると思うけど、お姉ちゃん、友彦君が可哀想に思えて……」
 亡くなった姉の代わりになってあげた、ということだろうか。
 順平の姉は、友彦の姉でもあった。
 姉にとっては、順平も友彦も弟だった。
 そして、姉と弟が結ばれることもあるのだと知った。
 



タイトル 少年T


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「この子が菜々子ちゃん?」
 あの時と同じだった。両親のいない日で、家には僕と姉だけだった。ただ、姉といっても、いま傍にいるのは菜々子お姉ちゃんではない。
 8月31日、夏休み最後の夜だ。僕は笹谷順平くんの姉である夫佐子さんを自分の家に招いていた。そして僕はつい先ほど夫佐子さんとSEXをした。なんとなく予想はしていたけど、夫佐子さんはやっぱり処女だった。
 17歳で高校2年生の夫佐子さんの「初めて」を、小学6年生で12歳の僕が貰ったのだ。もっといえば、僕も女の人の中におちんちんを入れたのは初めてだった。
「うん。城崎温泉に行った時の写真やねん。お姉ちゃんはまだその時、小6だった」
 僕はベッドの中で、エッチを終えたばかりでまだ裸の夫佐子さんにくっつきながら言った。当然、僕も裸のままだ。こうやって夫佐子さんのスベスベとした生肌に触れているだけで、夢のようだ。菜々子お姉ちゃんともよくこうやって裸でくっついていたから、懐かしい気持ちにもなった。
「そっかぁ。ねえ、友彦君はこれ、緊張してるん? 仏頂面になっているけど」
 ほんの10分ぐらい前まで夫佐子さんは僕に犯されるみたいにおちんちんで突かれて「痛い」と泣きべそをかいていたけど、済んでしまえば何事もなかったかのように、意外とケロリとしていた。僕に「菜々子お姉ちゃんの写真を見せて」と言ってきたので、勉強机の上に飾ってあった家族写真を持ってきてあげると、興味津々にいろいろと聞いてくる。
「仏頂面?」
「うん。菜々子ちゃんは笑ってピースもしているのに、友彦君は全然笑ってないやん。なんか不機嫌そうにムスッとしているやろ。こういうのを仏頂面って言うんや」
 夫佐子さんはベッドに寝ころんだまま、写真の中の僕を指さす。SEXをする時に蛍光灯を消して、オレンジ色に光る豆電球のみにしていたから、部屋の中は少しだけ明るい。それに目が慣れてきているせいか、夫佐子さんは写真の中の人物の表情がちゃんと見えているようだ。
「緊張してたのかもしれない。だって、家族みんなで写真を撮るなんてこともあまりなかったから。でも、めっちゃ楽しかったんやで」
 僕は夫佐子さんの覗き込む写真を一緒に見ようと、さらに顔を近づけた。すると、夫佐子さんはちらりと僕のほうを見てきた。豆電球のみの明かりだけど、夫佐子さんの綺麗な顔の輪郭や整った目鼻立ちをあらためて確認し、僕は今更ながらドキッとした。
 こんな美人の年上の女の人とエッチなことを最後まで出来たのだ。それはとても感動的なことだけど、まだどこか現実味がなくて、僕はふいにここが自分の部屋であることも忘れてしまいそうだった。
「良かった。楽しかったんやね」
 夫佐子さんは僕の言葉に対して、軽く口元を緩めた。それから再び写真の中の菜々子お姉ちゃんに視線を戻して、「可愛いお姉ちゃんやね」と独り言のように呟いた。


 夫佐子さんには、僕と菜々子お姉ちゃんの関係を打ち明けていた。僕が夫佐子さんの秘密を知り、それをネタに脅し始めて間もない頃だ。
 夫佐子さんの秘密とは、弟の順平君の精液の匂いを嗅いで、オナニーしていたことだ。正確には順平君が夫佐子さんのパンツを盗んでオナニー射精していたことに始まる。夫佐子さんはそのことに気づきながらも知らない振りをしていたけど、そのうち、弟のものとはいえ、精液の匂いに興味を持って、ということだった。
 僕はたまたま夜に順平君の家へ立ち寄った時、バラック小屋の裏手にある洗濯機の前で、オナニーに耽っている夫佐子さんを目撃した。
 僕は以前から順平君がお姉ちゃんの下着に悪戯をしていることも知っていた。だから、この姉弟の間にも、僕と菜々子お姉ちゃんと似たものがあるように感じた。
 そもそも僕は──菜々子お姉ちゃんがこの世からいなくなってから、頭がおかしくなっていた。
 学校でも家でも「汚いもの」を見られるように苛められて、独りぼっちだった。僕には死ぬ勇気などなかったけど、それでも「死にたい」と思ってばかりの毎日だった。
 そんな時、「焼却炉からの冒険」を通して、僕は順平君と仲良くなった。順平君は僕と同じ男子とは思えないぐらい綺麗な顔立ちをした美少年だった。だけど性格は僕と似ていて気弱で大人しくて、いつも周りの視線に怯えていた。
 僕はそんな順平君を好きになった。男が男を好きになるなんて変だと分かっていたけど、放っておけない気持ちになった。その気持ちは菜々子お姉ちゃんの代わりとかでもなかった。どっちかというと、順平君は僕の理想であった。順平君が楽しそうにしていれば、僕も自分のことのように嬉しくなる。
 順平君の家は正直貧乏で、ゲームや漫画もほとんどなかった。だから僕は順平君が欲しそうなものを持っていっては、「ここに置いといてよ」という理由で、プレゼントしていた。
 やがて僕は順平君の一番欲しいものを知った。順平君は小さい頃から母親のように面倒を見てくれる姉の夫佐子さんに対して、憧れのようなものを抱いているようだった。
 順平君が夫佐子さんのパンツを穿いてオナニーしていたのは女の人への好奇心というよりも、夫佐子さんになりたいという願望のように思えた。
 その願いを叶えてあげたくて、僕は順平君を夫佐子さんのように扱って、犯した。
 ドブ臭い天神川が傍を流れるバラック小屋の中で、僕と順平君は汗まみれになって、男同士なのに男と女の真似事をするようになった。
 夫佐子さんの秘密を知ったのもその頃だ。夫佐子さんに対しては、僕はそれこそ菜々子お姉ちゃんの面影を見ていた。僕自身、菜々子お姉ちゃんのパンツに射精した経験があっただけに、弟の精液の匂いを嗅いで興奮している夫佐子さんの姿は衝撃的だった。
 同時に、菜々子お姉ちゃんももしかしたら、僕の精液の匂いを嗅いでいたのかもしれないと、にわかに思いを馳せた。
 僕があの時、あんなにも大胆に夫佐子さんに迫れたのは、菜々子お姉ちゃんを重ねていたからだ。
 いつも優しくて、僕のエッチなお願いを聞いてくれた菜々子お姉ちゃん。去年の夏、お父さんとお母さんが田舎に帰省していた5日間、僕は菜々子お姉ちゃんと何十回もキスをして、裸も見せてもらって、手や口でおちんちんをシゴいてもらった。女の人の穴におちんちんを入れる行為だけは許してもらえなかったけど、代わりに菜々子お姉ちゃんは太ももで挟むという疑似的なことをさせてくれた。
 菜々子お姉ちゃんも嫌ではなかったと思う。僕がオッパイを吸えばナヨナヨとした声で「気持ちいい」と言っていたし、オケケの生えた割れ目を舐める行為も最初こそ恥ずかしがるけど、すぐにヒクヒクとしゃくりあげるような声になって、オシッコとは違うネトネトとしたお汁をいっぱい垂らしていた。
 菜々子お姉ちゃんのように普段は真面目な女の人だってエッチなことは大好きで、ひとたび、敏感な部分を刺激されると、年齢とか姉弟とか関係なく、へなへなと脱力して身を任せてくれることを僕はすでに知っていた。
 だから夫佐子さんにも同じことをした。僕には珍しく自信もあった。菜々子お姉ちゃんはエッチなことをする時、僕にちょっと意地悪なことを言われると喜んでくれることがあった。やっぱり夫佐子さんも同じで、僕が意地悪な言葉を囁くと、急に女っぽい声になった。
 後に、夫佐子さんから「子供のくせに堂々としているからビックリした」と言われたけど、それは菜々子お姉ちゃんのおかげである。
 気づくと僕は夏休みの間に、順平君と夫佐子さんとそういう関係になっていた。ただ、菜々子お姉ちゃんのことを順平君には話せないでいた。
 一方、夫佐子さんには話しやすかった。というよりも、バレてしまったのだ。バラック小屋の裏手で夫佐子さんにエッチな悪戯をしている最中、僕は何度も「お姉ちゃん」と呼びかけていた。夫佐子さんにすれば、何か思いつめたような言い方だったみたいで、ずっと気になっていたそうだ。
 菜々子お姉ちゃんの話を打ち明けてから、夫佐子さんの態度が変わった。多分、同情してくれたのだと思う。姉と弟でそんなイケないことをしていたというのに気持ち悪がることもなく、むしろ、菜々子お姉ちゃんの代わりを務めてくれるようになった。
「見せたいものがあるから、うちに来ない?」
 夏休み最後の夜、僕がそういって夫佐子さんを誘った時もちょっと困った顔はしていたけど、結局は頷いてくれた。
 そして夫佐子さんは僕が菜々子お姉ちゃんと成し遂げられなかった最後の一線を、一緒に越えてくれた。
 かつて菜々子お姉ちゃんと抱き合ったベッドにいま夫佐子さんがいる。僕は泣きたくなるような懐かしさに駆られながらも、ふっと部屋のドアに目をやる。
 あのドアが開いた時の、地獄が脳裏によみがえってくる。
 


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「な、何やってんの……あんたたち」
 まさに絶句という表現がぴったりだった。僕は部屋の鍵をかけていたけど、母親が合鍵を持っているなんて知らなかった。
 鍵穴がガチャリと外れる音がした時はすでにどうしようもなかった。僕と菜々子お姉ちゃんはお互い裸になって、キスをしながらギリギリ入れないエッチの真っ最中だった。
 突然開いたドアの向こうには、懐中電灯を持った母親が立っていた。懐中電灯の光が、畜生道に堕ちた姉弟の裸体を浮かび上がらせていた。
 裸の姉の上にのしかかっている弟、その弟を受け入れるように両脚を巻き付けている姉。最後の禁忌は犯していなかったが、母親の目には姉弟で子作りをしている地獄絵図だったに違いない。
 その割には誰も悲鳴を上げなかった。ヒステリックな母親でさえもその場に呆然と立ち尽くし、菜々子お姉ちゃんも愕然とした表情で一度だけ僕にも聞こえるぐらいゴクリと唾を飲んだ。かくいう僕は情けないことに何一つアクションを起こせず、ただただどうしていいのか、すがるように菜々子お姉ちゃんを見つめていた。
 すべて僕の責任だった。両親が田舎から戻ってきた後も、僕は菜々子お姉ちゃんを毎晩のように、自分の部屋に呼んでいた。菜々子お姉ちゃんは「お父さんとお母さんに見つかるから、あかんよ」と何度も釘を刺していたけど、僕が泣きそうな顔でお願いすると渋々ながら、夜中にこっそり会いにきてくれた。
 今から思えば、菜々子お姉ちゃんは僕が学校で苛められていることを知っていたから、可哀想に思っていたのかもしれない。実際、あの日以来、僕は菜々子お姉ちゃんに完全依存していた。性欲処理といえばそうなのだが、菜々子お姉ちゃんは唯一、僕が近くにいても嫌がらない人だった。それどころか、裸で抱き合って唾液を交換するようにキスもしてくれるのだ。学校では「汚い」「臭い」と罵られている僕にとって、菜々子お姉ちゃんと過ごす夜は、全員から嫌われているわけではない、と実感できる時間でもあった。
「友ちゃん、お姉ちゃん、部屋に戻るよ」
 母親の持つ懐中電灯に照らされていたから、菜々子お姉ちゃんの表情がはっきりと見えた。
 菜々子お姉ちゃんは優しく微笑んでいた。
 これが菜々子お姉ちゃんの笑顔を見た最後だった。
 翌朝、菜々子お姉ちゃんは起きてこなかった。母親は何事もなかったかのように朝食を作っていた。昨晩のことは母親から父親の耳に入っているはずだけど、いつものように新聞を読み漁るばかりで、僕とは目も合わさなかった。僕は菜々子お姉ちゃんのことが気になって仕方なかったけど、異様なほど張りつめた緊張感に耐え切れず、ランドセルを背負うしかなかった。
 学校から帰ってくると、菜々子お姉ちゃんはいなかった。母親から「菜々子は今日からお祖母ちゃん家に行ったからね。これからはお祖母ちゃんのところから学校に通うことになったから」と教えられた。理由は聞くまでもなかった。
 僕が両親から菜々子お姉ちゃんとのことを聞かれることも一切なかった。
 僕は菜々子お姉ちゃんに謝りたかった。お祖母ちゃんの家に何度も電話をしたけど、菜々子お姉ちゃんはいつも不在だった。
 そこで両親に黙って、一人で田舎に行く計画を立てた。電車で片道3時間はかかるけど、お小遣いがあるから、なんとかなる。あとは、どこで逃げ出すかだ。朝学校に行く振りをして出かけるのも一つの手だけど、無断欠席では学校から家に連絡がいってしまう。かといって仮病を使っても、母親が家にいるから抜け出すのは難しい。
 休日が一番の狙い目だったが、菜々子お姉ちゃんがいなくなってから、母親はひたすら僕を監視するようになっていた。
 そうこうするうちに、信じられないことを母親から告げられた。
 朝、僕が学校に行こうと、玄関で靴を履いていると、
「残念だけど、菜々子お姉ちゃんね。昨日の夜、死んだのよ」
 足元で大地震が起こって、その場に到底立っていられないような感覚だった。
「……」
 僕は救いを求めるように母親を見た。その時の母親の顔は一生忘れることはない。普段から感情の起伏が激しく、菜々子お姉ちゃんからは「ヒステリック」と言われていた母親が、口元をいびつに歪めた表情で、目だけは穏やかに笑っているように見えた。
 菜々子お姉ちゃんは自殺だった。お葬式も身内だけで密やかに行われた。僕はあんなに会いたかったのに、棺桶に入った菜々子お姉ちゃんを一度も見ることが出来なかった。だから、いまも最後に菜々子お姉ちゃんを見たのは、懐中電灯に照らされたあの時の笑顔だ。
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「大丈夫?」
 僕がドアのほうを見ていると、夫佐子さんは心配そうに声をかけてきた。
「あ、うん……」
「ほんまに?」
「うん。あの……」
 僕はまだ夫佐子さんに言っていないことがあった。いつか口にしたいと思っていながら、到底叶うはずもない夢だと分かっているから、なかなか言い出せないでいた。
「なに?」
「いや、なんでもないです」
 結局、この時も言えず仕舞いだった。夫佐子さんは一瞬怪訝そうな顔をしたが、それ以上は突っ込まず、「そろそろ帰らなきゃ」と言ってベッドから起き上がった。
「また、家に遊びに行ってもいい?」
 僕も起き上がりながら言った。
 本当に言いたいことはこれではなかったが、また会いたいのも本音だった。
「……ええけど。順平のいない時ね」
 夫佐子さんは少しバツが悪そうな顔で答えた。夫佐子さんにすれば、僕は大事な弟の友達である。しかも、弟の同級生である、年下の男の子とこんな関係になっているなんて知られたら、夫佐子さんこそ、あの家にいられなくなる。
 ましてや僕は順平君ともただならぬ関係だ。そのことは夫佐子さんも知らないはずで、何か一つでも明るみになったら、それこそこの姉弟の人生も壊れてしまう。
「うん……」
 僕はまたしても同じ罪を犯そうとしているのだろうか。分かっているように頷きながらも、ベッドに腰かけて着替える夫佐子さんの白い背中を見ていた。そういう姿を見ていると、やはり菜々子お姉ちゃんを思い出してしまう。
 ふいに夫佐子さんが背中を向けたまま、話を始めた。
「あんな……私、知っている……」
「へ?」
「順平と友彦君のこと……私がいない時、二人でしているところ、見たことがあるねん」
 まったく想像もしていなかった告白に、僕は今ここにいるのが菜々子お姉ちゃんか夫佐子さんなのかも分からなくなった。
「……ほんま?」
「うん」
「知っていて……僕と?」
 もしそうだとしたら、夫佐子さんという人間が得体のしれないものに思えてきた。
「うん。ひどい姉やろ。順平と友彦君が恋人同士やと分かっていたのに……」
 夫佐子さんの背中がわずかに震えていた。
「恋人……でも、僕たちは男同士だから……」
「それは関係ないやろ? 少なくとも順平は友彦君のことを恋人として好きやろ、きっと。友彦君がどう思っているのかは知らないけど」
「僕にとって順平君はたった一人の親友で、僕の憧れでもあるんだ」
「憧れなの?」
「そう。順平君みたいになりたいという気持ちがあって。だけど、順平君は……」
「順平は?」
 夫佐子さんは振り向かない。背中を向けたまま、僕の答えを待っていた。
 僕は大きく息を吸ってから、順平君のために口にした。
「順平君は、夫佐子さんに……夫佐子お姉ちゃんみたいになりたいんだと思う」
「……え? 何それ」
 夫佐子さんは拍子抜けしたように、フッと笑いながら言った。
 その分かっていない態度に僕は若干、苛立ちを覚えた。
「順平君はほんまは、夫佐子お姉ちゃんが好きねん。でも、お姉ちゃんにそんなことは言われへんから、自分が夫佐子お姉ちゃんになって……なんていうか、その、複雑なんやけど、夫佐子さんになることで、自分の好きな気持ちを叶えるというか」
 順平君の気持ちを説明したいのに、僕はうまく伝えられない。もどかしくて、もどかしくて、思わずベッドのシーツを叩いてしまった。
「……よくわからへん。そんなことはまずないと思うけど」
 案の定、夫佐子さんは首をかしげた。それからこの話題から逃れるように、
「ほんまにもう帰らないとあかん。それこそ順平が心配するから」
 ひょいと勢いよく立ち上がると、そそくさと着替えを済ませた。
 僕は今夜ついに菜々子お姉ちゃんと出来なかったことを成し遂げたというのに、まだ満たされていない心地だった。その理由は分かっている。
 順平君と夫佐子お姉ちゃん。
 バラック小屋で慎ましく暮らすこの姉弟に、僕は本当の意味で菜々子お姉ちゃんと成し遂げられなかったことを実現させようと考えていた。
 
 
 

  


 


タイトル 少年T

 
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 目の前にいるのが実の姉であれ、おちんちんを入れる女穴が晒されているのだ。

 心臓の中で鬼が太鼓を打っているように鼓動は脈打ち、体内の血は濁流のように激しく駆け巡っていた。自分でない何かが体の内側から膨れ上がってくるようだ。例えるなら満月を見た狼男──僕の殻をつき破り、毛むくじゃらの獰猛な獣に変貌していく感覚だ。

「お姉ちゃん、入れてみたい」

 僕はベッドに腰かけていた菜々子お姉ちゃんを仰向けに押し倒し、馬乗りになりながら、懇願した。

すでに僕も菜々子お姉ちゃんも下半身は素っ裸で、性器が剥き出しの状態だ。

「それはあかん!」

 菜々子お姉ちゃんは我に返ったように叫んだ。そして、僕の目的が分かるや、女の本能がそうさせたように、素早く両脚を閉じた。

 だが、すでに僕は股間をグイッと押し込もうとしていた。

「アァ……」

 一瞬、入ったと感動した。なぜなら、槍のように固く尖ったペニスは柔らかい感触に包まれたからだ。

「ハ、ハ、ハァ」

 僕は誰かに教わったわけでもないのに夢中で腰を律動させた。スベスベとした心地よい柔肉に肉槍が擦れている。これが女の人の穴なのか。

「友ちゃん、ねえ、落ち着いて」

 菜々子お姉ちゃんは実際、落ち着いていた。弟におちんちんを突っ込まれたというのに冷静に、飢えた獣のように息を荒げる僕を窘めようとしてきた。

「え?」

 僕はようやく自分の勘違いに気づいた。腰の動きを止めて、下腹部に目をやった。僕のペニスは菜々子お姉ちゃんの姉の太ももの間に挟まっているだけだった。

「あかんよ……」

 菜々子お姉ちゃんは僕のバカな勘違いを笑わなかったが、これ以上侵入させないとばかりに、さらに両脚を強く閉じてきた。

「うう……」

 僕は聞き分けの悪い弟だ。それでも構わず腰を律動させた。

「ちょっと! あかんって言っているやろ」

 菜々子お姉ちゃんは真顔で叱ってきたけど、分かっていない。こうやって女の人の太ももでおちんちんを挟まれているだけでも十分、気持ちがいいのだ。

「だって、ああ……これ、気持ちいいんやもん」

 僕は菜々子お姉ちゃんを組み敷いたまま、自分の意思を伝えるように腰を打ち付ける。

「ほんま? こんなんで気持ちええん?」

 相変わらず真顔で、菜々子お姉ちゃんは尋ねてきた。

「うん……すごく……」

 太ももの内側が汗ばんでいるせいか、おちんちんの粘膜が菜々子お姉ちゃんの女肌に張り付く感覚もある。腰を動かせば、菜々子お姉ちゃんの太ももの柔肉におちんちんの皮がズリュリズリュとめくれて、なんだか他人の体を使ってオナニーをしているようだ。

「そうなんや……それなら、かまへんよ」

 アソコに入れなければ構わないという意味なのだろう。菜々子お姉ちゃんはそう言うと、わざとか、たまたまか、おちんちんを圧迫するように、太ももをギュっと内股にした。その姿がたまらなくエロチックで、僕は俄然、鼻息が荒くなった。

「フン、ふん、ふぅ」

 エアコンの轟音と僕のせわしない鼻息が部屋に響く。

 菜々子お姉ちゃんを見ると、いつからか顔を背けるようにして目を閉じていた。呆れているという感じではなく、僕のやることを見て見ぬふりをしているように思えた。それでも唇は半開きになっていて、時折、小さくため息をつくような吐息が漏れていた。

「お姉ちゃん……」

 可愛いと言いかけて、口をつぐんだ。あまり会話をしてはいけない気がしたからだ。両親が田舎に帰省している夜、姉と弟が下半身だけ裸になって、エッチな遊戯をしているのだ。誰にも言ってはいけない、許されない行為であることは小学校5年生の僕でも分かる。ましてや、こんなことをしながら「可愛い」なんて言ってしまうと、それこそ、僕と菜々子お姉ちゃんは姉弟ではなく、好き合っている男女みたいじゃないか。

気持ちを口に出来ないもどかしさをぶつけるように、僕はひたすら腰を振った。

「んんっ……はあぁ」

しばらくすると菜々子お姉ちゃんの吐息がさっきよりも熱っぽくなった。

「お姉ちゃん……」

 この家には僕たち以外誰もいないけど、菜々子お姉ちゃんに聞こえる程度の小声で呼びかけた。

「んっ、んん……はぁン」

 菜々子お姉ちゃんは僕の呼びかけには答えない。顔を背けて目も閉じたままだ。なんだか今自分の上で腰を振っているのが弟ではなく、得体のしれない何かだと思い込もうとしているように見えた。

「あ……めっちゃ、これ気持ちいい」

 太ももの内側がさらに汗ばんできていた。菜々子お姉ちゃんの体温が上昇しているようだ。僕のおちんちんは、女の人の太ももの間で暖を取っているみたいだった。

 僕はもっと奥までおちんちんを潜り込ませようと、体を前に倒して、腰を突き上げた。

「ああん」

 不意に菜々子お姉ちゃんは艶っぽい声を上げた。僕も全身がゾクゾクした。グイッと腰を押し込んだことで、おちんちんの先端が泥濘(ぬかるみ)に到達したのだ。

「あうぅ」

 入ってはいない。だけど、菜々子お姉ちゃんの秘密の粘膜に、おちんちんが直に当たっていた。

「アァ……ちょっと、入れたら、あかん……」

 菜々子お姉ちゃんは僕の腰の動きを止めようとして、内股どころか、両脚をクロス気味にさせてきた。

「はううっ!」

 逆効果だった。一段と太ももの締め付けが強くなるばかりで、ところてんのように、おちんちんからドビュッと精液が押し出されそうな快感だった。

「アッ! 友ちゃん……なんか、そこは」

 菜々子お姉ちゃんが瞳を潤ませて、切なげに囁いた。

「……なに? ああうう」

 僕はおちんちんを泥濘に擦り付ける行為が止められない。菜々子お姉ちゃんは「あかん」と言うけど、オマタの粘膜がヌルヌルになっている。

そこにペニスの先端を擦り付けると、尿道口が火を噴くように熱くなる。それがとてつもなく気持ちよかった。

「あああっ、あかんの、そこ!」

 菜々子お姉ちゃんがついに我慢できないと言った感じで叫んだ。

「ここ……ここ、さっき、舐めたとこ?」

 お姉ちゃんの言わんとしていることがやっとわかった。

 僕はおちんちんの先端に意識を集中させた。そう、菜々子お姉ちゃんのアソコを舐めた時、米粒みたいな突起があった。あの部分におちんちんを当てて欲しいのだ。

「うん……はああ、そこ、あかんの……ああァ!」

 菜々子お姉ちゃんは両足をクロス気味にしたまま、腰をなよなよと蠢かせた。

 その姿は弟の目から見ても浅ましく、ある意味、みっともなかった。だから、この時、僕の中で今までになかった感情も芽生えたのだ。

「お姉ちゃんも、気持ちいいんや?」

 僕は小ばかにするような言い方をしていた。普段、学校で僕を苛めてくる大杉君がするみたいに、菜々子お姉ちゃんの目を覗き込んでいた。

「違う……いやや、そういうこと、言わんといて」

 菜々子お姉ちゃんとは思えない反応だった。弟の僕があんな言い方をしたら絶対に怒るはずなのに、なぜか泣きそうな顔でぶんぶん首を振った。

 背筋がゾクッとした。自分より弱い者を甚振る快感があることを知った。きっと大杉君たちもこの気持ちよさを知っているから、僕を苛めていたのだ。

「だって、お姉ちゃん、めちゃくちゃ濡れてきているもん。これ、何? これって気持ちいいから出るんと違うん?」

 ヌルヌルとした粘膜におちんちんを擦り付けると、いい具合にヤラしい音が出る。僕はわざと音を立てるようにおちんちんを動かしながら、見下すように言った。

「ああああ!」

 菜々子お姉ちゃんは顔を背けたまま、完全に泣き顔となった。この僕が人を苛めて泣かせているのだ。ああ、スッキリする。日頃の嫌なことも霧が晴れた空のように消えていく。

「このまま入りそうや……」

 僕は強引に割り込もうと、おちんちんを打ち付ける。

「やめて!」

 菜々子お姉ちゃんは泣き顔で叫ぶ。それは学校での僕を見ているようだった。

菜々子お姉ちゃんは両脚を本気の力で閉じてきていた。ただ、空いている両腕で僕の体を押しのけようとしない。下半身だけで攻防戦を繰り広げていた。

 僕だって、余裕しゃくしゃくで楽しんでいたわけではない。口では意地悪なことを言ってみたけど、おちんちんはもう射精寸前で、今にも情けない声と一緒に漏れてしまいそうだ。

「ハア、ハア、うう、お姉ちゃん……ほら、おちんちんが擦れてグチュグチュや」

「ああっ……あかん。苛めんといて……そんな苛められたら、私……」

「お姉ちゃん、何? 苛められたら? あうう」

 その答えが聞きたかった。これから僕が生きていくうえで、とても大事なことのように思えた。

「あかんの……わかんない。友ちゃんに苛められたら、なんか……体が熱くなる……」

 菜々子お姉ちゃんはそこまで言うと、我慢していたオシッコを漏らした幼子みたいに、肢体をガクガクと震わせた。同時に、おちんちんに熱い汁がまとわりつく。いましがた菜々子お姉ちゃんの胎内からあふれ出た搾りたてホヤホヤの愛液だった。

「あううう! お姉ちゃん、お姉ちゃんいまイッたやろ?」

 僕も射精しそうだった。全身が高熱に犯されて、脳みそまで蕩けそうだ。それでも、菜々子お姉ちゃんにまだ意地悪なことを言おうとしていた。

「イッてない……アアア、ああ、あかん……!また……はああぁーーー!」

 菜々子お姉ちゃんは体の震えが止まらない。溺れる人みたいに口を大きく開いて、助けを呼ぶように叫んだ。

「お姉ちゃん……!」

 僕はなぜか必死に堪えていた。このまま射精したい気持ちはあるのに、あと少し、ほんの少しでもいいから菜々子お姉ちゃんにこうやって馬乗りになっていたかった。

「はああぁぁ……ハアハア……あぁ」

 ようやく菜々子お姉ちゃんは体の硬直を解いて、脱力した。上半身はTシャツを着たままだけど、ダッシュした後のように息を弾ませているから、胸元が大きく揺れていた。ソフトボールを詰め込んだような胸の膨らみだ。


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僕は考えるより先に、Tシャツを捲り上げた。

「ちょっ……!?」

 突然のことに菜々子お姉ちゃんは抵抗を示したが、グッタリしていたせいか、力が入っていなかった。

 僕の眼前に白い双乳が飛びこむ。お風呂上りとあって、ブラジャーをつけていなかった。

「ああ、すごい」

 おっぱいの全貌が見えるところまでTシャツをまくり上げた。僕は息を飲みながら凝視した。姉の乳房はお椀を逆さに置いたような形で、子供の手では到底包み込めないほど大きかった。それでいて、肩や腕、腰回りは細い。華奢な体なのに、おっぱいだけは成熟している。菜々子お姉ちゃんは子供から大人に変わっている途中なのだと思った。

「あかん……よ」

 菜々子お姉ちゃんは虫の息のようなか細い吐息となっていた。もう諦めたように、Tシャツを元に戻そうともしなかった。

 僕の中で再び、いじめっ子の欲望が高まった。服を脱がされているのに、抵抗もしてこない。僕は一度も喧嘩で勝ったことがない(そもそも喧嘩もできない)だけに、初めて相手をボコボコにして降参させた気分だ。

「女の人の乳首って、こんなに大きいんや?」

 僕は馬乗りの状態で、乳房を見下ろしながら言う。

「え?」

 菜々子お姉ちゃんはちらりと怯えた顔でこちらを見てきた。それは負け犬の仕草だった。

「こんなに大きいと思わんかった……」

 エロ本で見た女の人の乳首はもっと小粒で、色もピンクだった。だけど菜々子お姉ちゃんの乳首はサクランボぐらい大きくて、色もやや黒めの赤で、えんじ色に近かった。

 色白の肌だから、余計に乳首の色が不釣り合いだった。

「変?」

 菜々子お姉ちゃんはここでようやく自分の胸を両手で隠そうとした。すかさず僕はその手を抑えた。

「痛い! 乱暴なのは嫌!」

「いいやん。吸わせてよ」

 人に怒鳴った経験のなかった僕は自分でも驚くほど声を荒げた。そうして菜々子お姉ちゃんの両手を万歳させるように挙げさせると、左側のおっぱいに顔を埋めた。

「アッ!」

 菜々子お姉ちゃんはあっけなく力を緩め、僕の両手に抑え込まれた。

「んちゅ、あむぅ」

 僕は夢中で乳首に吸い付いた。初めて味わう乳首は口の中で心地よく転がり、飢えた獣のように自然と唾液が溢れてくる。

「アッ、アッ、アッ……」

 菜々子お姉ちゃんは両手を万歳に抑え込まれたまま、背伸びするように上体を反らした。もっと吸ってほしいと体で伝えてきているように思えて、僕はそれこそ母乳を飲む赤子のように強く吸った。

「アアア、気持ちいい……はああ、ああん」

 ついに菜々子お姉ちゃんの口から「気持ちいい」という声が漏れた。同時に、乳房から温めたミルクのような女臭が立ち込めてきた。

「あむぅ、んちゅ、ちゅぱ」

 僕はウットリしながら、味のないガムを噛み続けるように、口の中で乳首を転がし続けた。

「ハア、あああ、アッ、ああん!」

 菜々子お姉ちゃんは乳首も弱点みたいで、あられもない声が止まらなくなっていた。

 おちんちんはまだ太ももの間に挟まったままだ。菜々子お姉ちゃんの秘部からは再び、ヌルヌルとした粘液が溢れてきているのが分かった。

 僕は乳首を吸いながら、ピストンを再開した。

 さっきと同じく米粒みたいな突起に、おちんちんを擦り付けていく。

「アアアッ!」

 弟に乳首を吸われて、敏感なお豆さんをおちんちんで刺激されている菜々子お姉ちゃんは、いまどんな気持ちなのだろう。

 冷静に考えられない状態かもしれない。菜々子お姉ちゃんは無意識だと思うけど、両脚で僕のおちんちんを締め付けながら、マッサージするように腰を左右に振っていた。

「お姉ちゃん……!」

 ただでさえ暴発寸前なのに、実の姉が浅ましくヤラしい腰使いでおちんちんを刺激してくるのだ。

 一線を超えていないとはいえ、姉弟の密着した部分からは淫臭がムワッと漂ってきている。

「ハアハア、いいっ、友ちゃん……それ、続けて……」

 弟に意地悪を言われた挙句、こんなオネダリまでしてくるのだ。

「あぐうう」

 いまや菜々子お姉ちゃんの太ももの内側まで、エロ汁が広がってきていた。おかげでおちんちんがスムーズに動くようになり、ねちゅねちゅと納豆をかき回す時のような音も響き渡る。

「アアっ、あぁ、すご……気持ちよすぎる」

 菜々子お姉ちゃんはさらに太ももで強く圧迫してくる。僕を逃さないとばかりに締め付けてきたことが、嬉しかった。

「あううう、お姉ちゃん、もう……」

 いよいよ限界だった。乳首から口を離して、今一度腕立て伏せの体勢となって、ラストスパートに入った。

 もう菜々子お姉ちゃんの感じる突起におちんちんを当てる余裕もなかった。

 ひたすら射精に向かって、腰をめちゃくちゃに打ち付けた。

「あっ! 出そう!? ね、そこで出したらあかんよ!」

 切羽詰まった声が聞こえてきたけど、頭の中が快感で白い靄がかかっていた僕は聞く耳を持てなかった。

「がああーー」

断末魔の声を放つと同時に、一気に射精した。

「熱い! かかってる!」

 勢いよく噴出した精液は、菜々子お姉ちゃんの赤ちゃんを産む穴を直撃していた。菜々子お姉ちゃんは慌てふためいて、両脚の力を抜いた。

そうしたことで股の間から抜けたペニスは対空砲のように、放物線を描いて宙を飛んだ。

「アアぁ……」

 わざとではないけど、我慢に我慢を重ねてきた青臭く濃厚な精液が、菜々子お姉ちゃんの顔に降りかかった。

咄嗟に顔を背けたことで、ツルツルの頬に白濁の残滓がピチャピチャと跳ねながら付着した。

「あ、ごめんなさい!」

 我に返った僕はすかさず菜々子お姉ちゃんの頬に手をやった。自分の指で拭いてあげようと思った。

「……」

 菜々子お姉ちゃんは放心状態で、僕に顔をべたべた触られても何も言わなかった。

姉の頬を手で撫でていると、射精を成し遂げた後の余韻で、変な自信のようなものも沸き起こってきた。

 菜々子お姉ちゃんがグッタリしていることをいいことに、一番してはいけないことをした。

 眠り姫のようになっている菜々子お姉ちゃんの唇に顔を近づける。

「んん!?」

 僕の唇が触れた途端、菜々子お姉ちゃんは目を見開いて驚愕していた。

僕には初めてのキスで、まさか実の姉とするなんて思ってもいなかったけど、「やってやった」という達成感に満たされた。

「んっ……」

 数秒、いや1~2秒だったかもしれない。菜々子お姉ちゃんは驚きのあまり、僕の唇を無防備に受け入れていた。

ホッペに付着した精液の臭いもしたけど、女の人の唇の柔らかさや、そこから漏れるかぐわしい息の素晴らしさに、僕は一生こうしていたいと思った。

「ちょっと!」

 そう思ったのもほんのつかの間で、菜々子お姉ちゃんは急にきつい口調で、僕を突き飛ばした。

「……」

 ショックではあったけど、唇の感触の余韻が僕を慰めてくれた。

「ね……ティッシュ、取ってきて」

 菜々子お姉ちゃんもそれ以上は怒らず、勉強机の上を指さした。家族四人で旅行した城崎温泉の写真立ての前に、ティッシュ箱があった。

「うん」

 僕はいつもの弟に戻っていた。姉からの命令にはてきぱきと動く。

 ティッシュ箱を手に掴むとき、城崎温泉の写真がちらりと目に入った。

家族の中で一人だけ笑顔でピースをしている菜々子お姉ちゃん……ベッドのほうを見ると、菜々子お姉ちゃんはTシャツこそ元の位置に戻していたけど、下半身はまだ丸出しで両脚を投げ出している。

黒々とした陰毛には、僕の精液がべっとりこびりついていた。

 

写真立ての中の菜々子お姉ちゃんを見る目が変わったのもこの時だ。

 

 

 


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