柚木怜のアトリエ

どこか懐かしく、どこか切なく、そしてエロチックに

主に、昭和50年代を時代背景にした思春期の「少年」と「年上女性」の相姦ものを書いています。

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あらすじ


学校ではみんなからバカにされて、家では厳しい父に叱られ続ける僕。
居場所をなくしていた時、転校生の明君と仲良くなった。
だけど、その明君は突然の事故で亡くなった。
悲しみと苦しみのなか、僕は「明君のお母さん」と再会する。
息子を亡くしたばかりの明君のお母さんは、息子の友達だった僕を家にあげてくれて、夏休みの宿題を手伝ってくれるようになる。
明君のお母さんは、僕を息子の明君に重ねていたのかもしれない。
そんななか、僕が明君のお母さんに「異性」を感じて、勃起してしまった。
明君のお母さんは気持ち悪がることもなく、「そのままでは、しんどくないの?」と言ってきた。
そして、僕は明君のお母さんの手で射精に導かれた。
その日から、僕は明君のお母さんと毎日会うようになった。

そんな僕は、以前、日記をつけていた。



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4『日記のつづき』




5月14日 (月)

 学校に行きたくない。しんどい。
 昨日、僕の机に「この人はクラスで一番嫌われています」と鉛筆の字ですごく薄く書かれていた。すぐに消したけど。消している間も書いたヤツが陰で僕を見て笑っているように思えてならなかった。書いたヤツが誰か分からない。でも字の感じから女子だと思う。女子から嫌われていた? これが一番ショックだ。

5月15日 (火)

 今日は無事だった。朝、教室に入るときは足が震えるほど怖かったけど、僕の机には何も書かれていなかった。大丈夫、大丈夫。昨日のアレは気のせい。いや、もしかしたら、僕の机に間違って書いてしまったのかもしれない。きっと、そうだ。僕が苛めの対象者でない可能性も出てきた。だけど油断は禁物だ。実際、TやMたちは僕のほうをチラチラ見てはクスクスと笑っていたような気もする。あいつらは何なんだ、むかつく。

5月16日 (水)

 どうしたんだろう。今日も机に穴が開くほど見て落書きがないか確認したけど、一度、恐怖が心の中に棲みついてしまうと、怖くて仕方ない。また何かされるのではないかという不安がずっと僕の背中に影のようにくっついていて離れない。今日も僕は休み時間、ほとんど机から離れられなかった。

5月17日(木)

 恐れていたことがやはり起きてしまった。いまはしんどすぎるので、明日、書くことにする。

5月20日(日)

 二日ぶりに日記を書く。明日からまた学校だ。嫌だ嫌だ嫌だ。行きたくない。怖い怖い怖い。誰か助けて。また、椅子の背もたれに変な張り紙をされていたら……あんなに目立つところに張られてしまっては、もうクラスの全員に見られてしまったといっていい。そうなると、周りが全員、悪魔に見えてくる。
 どうすればいい? ねえ、どうすれば。正直、僕は死を意識し始めている。バカなことを言うな。情けないぞ。たかが、たかが、誰かのちょっとしたイタズラではないか。

 こうやって日記をつけて、自分の気持ちを吐き出しておかないと、自分が壊れそうだ。




8月3日 (金)

 久しぶりに日記を書こうと思う。新しいページから書こう。
 5月に少しだけ書いた日記を読み返したら呼吸が苦しくなって、体も震えてきて、日記帳を破り捨てたくなったけど、やっぱりできなかった。
 それに僕はあの地獄のような一週間のあと、日記を書かなくても大丈夫にもなった。
明君と仲良くなったからだ。
 あれは学校が終わって、僕が逃げるように家に向かっていた帰り道だった。明君は通学路が僕と同じで、帰る時間も同じだった。明君が後ろから僕を追いかけてきて、声をかけてくれた。なんて言われたんだっけ? 
 何の話をしたのかも覚えていないけど、明君と一緒にいると、心が落ち着いた。僕には周りが全員、悪魔に見えるから、誰と話すときも上手く笑えず、笑顔を作ってもひきつってしまう。だけど、明君と話した時は何度か声を出して笑うことが出来た。
 救われた気持ちになった。
 それから明君は「部活ないときは、一緒に帰らへん?」と誘ってくれた。
 部活といっても僕も明君も文系の帰宅部だったから、部活に行くことも滅多になかった。
その日からほぼ毎日、僕は明君と一緒に帰ったし、いつの間にか朝の通学も一緒になった。お互いの通学路が交差する交差点の角にある散髪屋さんの前で待ち合わせた。
 僕は相変わらず教室で嫌なことをされる時があったけど、それでも登校拒否にならず踏ん張ってこられたのは明君がいてくれたおかげだ。
 明君との思い出もこれから書いていこう。

 さらに僕が今日、日記を書こうと思った理由はそれではない。
 どうしても嬉しいことがあって、この気持ちを残しておきたいと思ったから。
 僕は今日、明君の家に行った。そこで僕は生まれて初めて、女の人と触れ合えた。
 あぁ、思い出すだけで、またオチンチンが痛いほど勃起してくる。
 明君のお母さん……。あぁ、大好きだ。明君のお母さんが僕のおちんちんをそっと握ってくれた。柔らかくてスベスベとした手で、僕を気持ちよくしてくれた。
 あぁ、もっと具体的に書きたいのに、感動が大きすぎて全然まとまらない。とにかく僕にとって、人生で最高の一日で、いまだに本当にあんなことがあったのか、信じられない自分がいる。
「明日も来ていい?」と聞いた時、明君のお母さんは少し疲れたみたいで、ボーッとしていたけど、僕の声に気づくとハッとしたように「いいよ」と言った。
 ちょっと気怠そうな表情もなんだか色っぽかった。
 明日も会えるんだよね? 明日も。
 僕は明日会えたら、どうしてもしたいことがある。だけど「夢は、口にすると消える」と聞いたことがあるから、今日はまだ書かないでおく。

8月6日(土)

 今日の日記は長くなりそう。書きたいことが山ほどある。
 まず、今日は土曜日だったから、お昼に『吉本新喜劇』を見ながらご飯を食べた。具はソーセージだけの焼きそばだった。
 食べた後、僕は「図書館に行ってくる」と母親に嘘を言って出かけた。
 もちろん向かった先は明君のお母さんの住む公営住宅。
 さすがに昨日のこともあるので僕はどんな顔で挨拶しようか悩んでいたけど、結局、玄関先で明君のお母さんの笑顔を見ると、恥ずかしくなって下を向いてしまった。
 今日も「明君の部屋」に通された。
 明君のお母さんは、淡いピンクのブラウスで、下はスーツっぽい黒の膝下スカートを穿いていて、授業参観に来るお母さんみたいだったけど、オトナっぽくて美人だなぁと、あらためて思った。
 そして僕は昨日と同じように明君の使っていた勉強机の前に腰かけて、宿題を始めたんだけど、明君のお母さんは冷たい麦茶(もちろんストロー付き!)を持ってきてくれた後、
「どれどれ?」
 机の上に広げた問題集を覗き込むように、真横に立って顔を近づけてきた。その時、僕の二の腕あたりに柔らかいものが当たっていた。
 服の上からでも、おっぱいが当たっているんだから。僕はもう勉強どころではない。
 頭が回らない。だって、体中の血液が一か所に集中しているんだから。この時点で股間の膨張率は最高値に達していた。股間は見事なまでにテントを張っていた。
 僕は明君のお母さんをチラッと見た。ちょっと確認するみたいに。
 すると明君のお母さんは問題集に目を向けたままだったけど、
「今日は大丈夫なの?」
 普通に聞いてきたから、僕は一瞬、何のことか分からなかったぐらい。
「大丈夫」
「ほんとに? 苦しくないの?」
 明君のお母さんはずっと問題集を見ていたけど、僕はようやく理解した。
 胸が躍った。良かった! 明君のお母さんは今日もしてくれるつもりだ。
「苦しいかも」
「じゃあ、またスッキリしてからにする?」
「うん」
 こんな感じで会話をしたんだ。僕は返事をするなり、昨日と同じように自分でズボンとパンツを脱いだ。それからもう一度椅子に座った。
 おちんちんはお腹にくっつかんばかりに反りかえっていて、我慢汁の量は昨日より多かった。おちんちんの先がヌルヌルだ。
「すごいわね」と今日も明君のお母さんは僕のおちんちんを見て驚いた様子だった。
それから、それから……ああ! 僕はまた一つ大人になった。
 明君のお母さんは何の予告もなく、僕の前にちょこんと座るように跪くと、おちんちんの根元を右手で軽く握りしめたあと、いきなりしゃぶってくれたのだ。
 僕はあまりのことに一瞬、声が全くでなくなった。
 むちゅ、ねちょ、むちゅ、というように、おちんちんが唾液で濡れる音だけ明君の部屋に響いていた。4~5秒ぐらいたって、ようやく僕は何が起こったのか理解できて、「わわわっ」と素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
 だけど明君のお母さんは黙ったまま、僕のおちんちんを頬張り、顔を前後に動かす。
 まるで大きなナメクジがおちんちんを這いまわっているような感覚。もちろん、気持ち悪いわけがない。手でしてもらうよりもずっと柔らかくて温かくて、そしてじれったい!
 フェラチオは想像していた以上に、おちんちんへの刺激が弱かった。だけど、そのくすぐったいような刺激に僕のおちんちんは明君のお母さんの口の中でビクビクと跳ねてしまう。
 おちんちんがビクッとなるたび、明君のお母さんは「ん」と声を漏らして、締め付けてくる。
 それが気持ち良くて、僕は何度かビクビクとさせたら、明君のお母さんはおちんちん全体を口の中で押さえつけるように、奥まで飲み込んできた。
「んぐぐぐっ」と苦しそうに呻いていた。
 あんなに喉の奥まで入れて大丈夫なのかなぁ。
 そう思ったけど、喉の奥におちんちんの先が当たると、腰が浮きそうなぐらい気持ちいい。
 ハウ、ハウ、ハウと僕はチンチンをする犬のように喜んでいた。
 おちんちんが気持ちいいだけではなかった。
 年上の女の人が僕みたいな子供の前に跪いて、おちんちんをしゃぶってくれていることにも興奮もした。
 しっかりとしている大人の女性が僕の奴隷になったみたいだ。 
 恋愛に年の差は関係ない、と聞いたことがあるけど、まさにその通りで、エッチな関係になると僕だっていっぱしの男で、明君のお母さんは健気な女の子みたいになる。
 だから僕はつい両手で明君のお母さんの頭を押さえつけていた。
「んんっ!」
 明君のお母さんは苦しそうに呻いたけど、そのまま僕の好きなようにさせてくれた。
 両手で触れた明君のお母さんの黒髪は、指の間から滑り落ちる砂のようにサラサラしていた。女の人の髪は本当に綺麗で撫でているだけでウットリする。
 僕はどれぐらい我慢できたのだろう。多分、3分ぐらいだったと思う。
 本当はもう少し耐えて明君のお母さんにフェラチオをしてもらいたかったんだけど、だんだん口でおちんちんをしごくスピードを速くされるから、僕はどんどん快感に追い詰められた。ひとたび射精しそうになると、もう出したい欲望は止まらない。
 あぁ、もう出る。と思っていたら、明君のお母さんは意地悪なこともしてきた。
 僕が出そうになると急にフェラチオをゆっくりに戻して、おちんちんの裏側や先っぽを舌でチロチロしてくるのだ。こっちはもう限界ギリギリなのに、なおもまだギリギリ出せないラインでくすぐってくるから、もう「うわうわうわ!」と叫びそうになる。
 明君のお母さんはそんな僕の反応を楽しんでいた。
 僕の奴隷だったのに、いつの間にか、女王様まで出世してしまったみたい。
 明君のお母さんはフェラチオをしている時、「んふぅ」と鼻から甘い声を漏らす。この音色がゾクゾクするほど色っぽい。
「んふ、んふぅ」
 明君のお母さんは鼻からエッチな音を出しながら、再び、口の動きを早くしてきた。
 ここが僕の限界だった。
 出る! となった瞬間、明君のお母さんはおちんちんの先をチューッと吸ってきた。
これが決め技となって、僕は「ぐはあ、ごめんなさい!」と叫んだ。
 なぜ謝ったのかというと、僕は射精するとき、思わず明君のお母さんの頭を強く押さえつけていたからだ。なぜか本能的に押さえつけてしまった。
 明君のお母さんは何一つ抵抗しなかった。
 どぴゅる、どびゅ、どびゅ、どばっ……ずっと我慢していた小便を放出した時のように、なかなか射精が止まらなかった。
 いつまで続くんだと思うぐらい長い射精だった。その間も明君のお母さんはずっとおちんちんを咥えていてくれた。
 僕はすべて出し終えてから、明君のお母さんの頭を抑えていた両手の力を緩めた。
 明君のお母さんは顔をあげると、「スッキリした?」と僕を見上げながら聞いてきた。上目遣いで見られるのは初めてで、ドキッとした。
「うん」
 僕は頷きながら、口の中に出した精液はどこに行ったんだろうと思った。
「よかった」
 明君のお母さんは何事もなかったかのように立ち上がり、それから勉強机の上にあるティッシュを3~4枚取って、濡れ光る僕のおちんちんを拭いてくれた。
「ねえ、僕の精液は?」
 心配だったので聞いたら、
「さあ」
 明君のお母さんはとぼけた顔で答えた。僕は恥ずかしくなったけど、飲んでくれたことが嬉しくて「ありがとう」とお礼を言った。だけど、顔を背けながら言ったのは良くなかった。
 ちゃんとお礼を言う時は、相手の目を見ないといけない。
 今度から気を付けようと思う。

 もう一つ、今日の日記に書いておかないといけないことがある。
 昨日の日記にも書いたけど、僕はどうしてもしたいことがあった。
 その希望も叶った。まさかフェラチオをしてもらえるとは思っていなかったから、うっかり忘れるところだったけど、僕は勇気を振り絞って、明君のお母さんに「キスをしてみたい」と一番のお願いを告げた。
 断られるかもしれないと思っていた。フェラチオはしてくれても、キスはまた違うのかもしれない。実際、女の人は本当に好きな人としかキスはしない、と聞いたこともある。
 明君のお母さんは実際少し困ったような顔をしていたけど、
「今、善三郎君のが……嫌じゃない?」
 僕の精液を飲んだばかりだから、それを気にしているようだった。
「全然嫌じゃない」
 僕はとにかくキスがしたいのだ。
 すると明君のお母さんは何も言わず顔を近づけてきて、僕の唇に自分の唇を重ねてきた。
 僕は目を見開いたまま、感動の時間を過ごした。
 女の人の唇はプニプニとしていてグミのように柔らかかった。
 ファーストキスは少しだけザーメン臭かった。



【本編はこちらから】


表紙

昭和59年の夏。家にも学校に居場所がなかった14歳の「僕」中学2年生。
唯一の親友だった「明君」が交通事故で亡くなった。
僕はその唯一の親友の家で、綺麗で優しい女の人に出会う。
シャボンの石鹸の匂いがして、桜色の唇は濡れていて…。僕のような嫌われ者にも笑顔を向けてくれる明君のお母さん。
僕は西瓜を食べながら、その人のことをもっと知りたいと思った。
言葉にならない喪失感と日々感じる疎外感に苦しんでいた僕は、やがて明君のお母さんと互いの寂しさを埋め合うように、禁断の行為に溺れていく。
思春期の少年と息子を亡くした母親が溺れるイケナイ関係…。
昭和の団地で繰り広げられる擬似的な母子相●ストーリー。


Kindle




紀伊國屋書店(Kinoppy)




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あらすじ

中学2年生で、内向的な性格の「僕」。
周りのクラスメートとも馴染めず、厳しい父親にも怯えていた。
そんな日々のなか、転校生の明君と仲良くなった。夏休みには、一緒に宿題をしようよ、という話になって、明君の住む公営住宅を訪れた。
明君は不在だったが、出迎えてくれたのは、明君のお母さん。とても綺麗で、優しくて、近づくといい匂いがした。やがて帰りの遅い明君の様子を見に、お母さんは外に出かけた。その間、僕は明君のお母さんの下着の匂いを嗅いで、自慰をしてしまった。
まさか、その時間に、明君が交通事故ですでに亡くなっているとも知らず…。



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2『麦わら帽子』


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 僕は麦わら帽子を被っていた。今日は光化学スモッグ注意報も発令されていなかったけど、アスファルトの道がゆらゆらと蜃気楼のように揺らめいていた。
 八月に入って、中学の夏休みも三分の一ほどが過ぎていた。
 外に出たのは一週間ぶりだった。
 一週間前のあの日──僕が明君の家で明君のお母さんと一緒に過ごした日──そして、明君が交通事故に遭って、もうこの世界にはいなくなった日以来、僕は涙が一粒も出ないほど、「苦しい」や「悲しい」なんて安易な感情では済まされないほど、鬱々とした気分にただただ心を蝕まされるまま、空虚な日々を過ごしていた。
 今日だって本当は外に出る気もなかったのだが、昼ごはんのときに母親から励ましとも嫌味ともとれるような心のない言葉をかけられたせいで、僕はカッとなって家を飛び出したのだ。
 行く当てもないまま、近所を徘徊して気づくと、やっぱりここに来てしまっていた。
建物の前に自転車置き場のある公営住宅は、一週間前と同じように、人影がまったくなかった。大勢の家族が住んでいるはずなのに、僕はまだ一度も明君のお母さん以外の住民を見かけたことがない。たまたまの偶然だと思うが、なんだか、ここには僕と明君のお母さんしか存在していないような気持ちになってしまう。
 僕は明君のお通夜にもお葬式にも出なかった。出たくなかったのだ。
 明君のお母さんは……どうしているだろうか。
 公営住宅の前で立ち尽くしていると、汗が頬をつたって一滴、落ちた。汗は止まらず、また一滴、また一滴と、アスファルトの地面に落ちていく。
 今日も僕はハンカチを持ってきていないので、それを拭うことができない。
 喉も渇いていた。喉の渇きを覚えると、あの日、明君の家で飲んだストロー付きの麦茶を思い出してしまう。冷房もよく効いた部屋で、シャワーを浴びたばかりの明君のお母さんの体から漂う清冽な香りにウットリとしてあのひと時が鮮明によみがえる。だけど、それはもういい思い出ではない。
 三〇七号室のベランダを見上げた。カンカン照りだけど洗濯ものは干していなかった。窓のカーテンも閉められたままで、なんだか人の気配もまったく感じられない。
あんなことがあったのだから、明君のお母さんもお父さんもこの町にいるのが辛くなって、もう引っ越しをしてしまったのかもしれない。
 そう思うと僕は激しい焦燥感に駆られた。
 明君のお母さんがまだいるのか、確認したい。
 今日はそんなつもりでここに来たワケではないけど、いますぐ確認をしなければ何かとてつもなく大事なものを失ってしまいそうで、僕は勇気を振り絞って──いや、嫌な予感と不安をかき消すように、三〇七号室を目指して、エレベーターに乗っていた。

★

 僕はどうやらタイムスリップしたようだ。そう、一週間前のあの日に戻ってきたのだ。
明君のお母さんはいま、台所の冷蔵庫から麦茶の入ったピッチャーを取り出して、コップに注いでいる。きっと、ストローもつけてくれるはずだ。
 僕は以前に同じ経験をしているから、次に起こることが予知できてしまうのだ。
「ねえ、ちゃんと夏休みの宿題は進んでいるの?」
 明君のお母さんはあの時と変わらぬ優しい笑顔で、ダイニングキッチン越しに話しかけてくる。さっきからずっとそうだ。僕が明君の家のドアの呼び鈴を押して、玄関のドアが開くと明君のお母さんがいて──明君のお母さんは一瞬、驚いた表情を見せたものの、「うわぁ、来てくれたのね!」と意外にもハシャいで、当たり前のように僕を部屋に招いてくれた。
 明君にお焼香をさせてください、と訪問した理由を考えていた僕はその言葉をまだ口に出せないまま、あの日と同じように、リビングにあるキッチンテーブルの椅子に腰かけている。
「ねえ、麦わら帽子、そろそろ脱いだら?」
 明君のお母さんがやっぱりストロー付きの麦茶を持ってきて、僕に笑いながら言った。
「あ、はい。すみません……」
 そういえばずっと被ったままだった。麦わら帽子を脱ぐと、ペチャンコになった髪が汗で濡れていて、なんだか恥ずかしい。麦わら帽子は自分の膝の上に置いておいた。
「今日も外、暑いもんね。オバサンも買い物に行かなきゃなんだけど、暑いから夕方にしようと思っていたの。そしたら善三郎君が来てくれたから。出かけなくて良かったわ」
 明君のお母さんは僕の前に麦茶を置いたまま、傍から離れない。
 僕の真横に立って、溌剌とした声で話しかけてくる。
 明君のお母さんはやっぱり綺麗だった。ビックリするほど顔が小さくて、目も鼻も口も耳も小造りで、ホッペなんかもツヤツヤだ。それに今日は白くてふんわりとしたワンピースを着ていて、清楚なお嬢様って感じだけど、細い首にはゴールドのネックレスが巻かれていて、僕はそこに明君のお母さんに「大人の女の人」を強く感じた。
 そういえば、僕はさっきからほとんど喋れていない。「はい」「あ、お構いなく」「すいません」とかそんな言葉しか言えていない。この前もそうだった。
「可愛いね、この麦わら帽子」
 ふいに明君のお母さんが僕の膝の上にあった麦わら帽子をそっと奪い取った。
 両手で麦わら帽子を掴み、ツバの部分にあしらわれた緑色のリボンを見ている。
「そうですか? 西友で買った安物ですけど……」
「へえ、そうなんだ。でも可愛いよ。私もこういうの、欲しいなぁ」
 明君のお母さんは僕の麦わら帽子を手に持ったまま、真横の椅子に腰かけてきた。
 こんなに近い距離になるのは初めてのことで、僕は胸がトクンと高鳴った。ふわっと、夏みかんのような香りがした。
 でも、どうしてだろう。明君のお母さんがすぐそばにいて、手を伸ばせば、その体に触れられる距離になった途端、僕の中で止まっていた時間が突如動き始めた。
「ううっ」
 明君……。どうして死んじゃったの。
 僕は叱られること以外で泣いたことがなかった。
 それなのに明君のお母さんと二人だけの空間にいると、僕はこみあげてきてしまった。
 僕はずっと我慢していたのだ、と今更ながら気づいた。
「おおおおおおお……」
 いっぱい溜め込んでいたせいか、泣くというより唸り声になってしまう。
 ぐるるっと頭の中で獣の咆哮のような音が何度も何度も鳴り響く。魔物が現れて、僕の閉じた口を無理やり広げさせるのだ。必死に抵抗しても抗えず、唇が緩み始めると、勝手に嗚咽が漏れてくる。
「おおうっ、おううっ……」
 呻き始めた僕の傍で、明君のお母さんは何も言わなかった。僕なんかより、明君のお母さんのほうがずっと苦しいことは分かっているけど、今は吐き出さないと苦しかった。
 僕はこの一週間を思い出す。
 明君の顔も知らない僕の両親や、明君とはほとんど会話もしたことがない同じクラスの人、担任教師も、あの事故の後の緊急の全校集会で泣いていたけど、僕はまったく泣けなかった。平然としているように見えたのだろうか。担任教師は全校集会の後のクラスの集まりで、僕を名指しして「お前は悲しくないのか? お前は一番、彼と仲が良かったじゃないか」と問い詰めてきた。
 悲しい? 悲しいという言葉なんかで綺麗にまとめられて、たまるものか!
 だから僕は絶対、泣かないと強く誓った。それこそが明君との本当の友情の証だ、と。
「善三郎君……」
 明君のお母さんが自然と僕を抱きしめてくれた。僕の肩を抱くように、全身で優しく包み込んでくれた。僕は夏みかんの香りを胸いっぱいに吸い込む。そしたら、泣けた。
泣けたどころではない。鼻水も涎もダダ漏れで、大泣きが始まってしまった。
ずっと堪えていたものが堰を切ったように、大量の涙が溢れて止まらない。体の震えも止まらない。ヒックヒックとしゃっくりも止まらない。
 明君のお母さんは僕を一段と強く抱きしめる。
 僕は明君のお母さんに導かれるまま、胸の中に顔を埋めていた。明君のお母さんの胸はすごく大きいわけではないけど、羽毛の布団に頬を当てた時のように柔らかくて気持ちがいい。
「ずっと我慢してくれていたんだね」
 よしよし、と子供をあやすように、明君のお母さんは背中をトントンと叩いてくれた。
「うん」
 僕は素直に明君のお母さんの胸の中で頷いた。涙や鼻水でワンピースを汚してしまっていたけど、許されるという安心感があった。
 少しずつ心が落ち着いてくると、明君のお母さんも泣いていることに気づいた。僕の顔にも、明君のお母さんの涙が一滴、また一滴と落ちてきた。
 涙は僕の頬をつたって、僕の口に近づく。僕は明君のお母さんに気づかれないように、それを舐めていた。明君のお母さんと一つになれた気がした。
 そういえば、僕の麦わら帽子はどこに行ったのだろうか。

 
3『昆虫図鑑』

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「いらっしゃい。さあ、入って」
 この光景にも少し慣れてきたけど、やっぱり明君のお母さんが玄関のドアを開けて出迎えてくれると、僕は最初恥ずかしくて、顔を下に向けてしまう。
 それでも僕の足は開かれたドアに吸い込まれるように、前に進む。
「今日も暑いよね。冷たい麦茶、用意してあるからね」
 明君のお母さんは僕が無口で不愛想なところがあっても、いつもと同じ優しい笑顔を崩さない。ただ、違うところもあった。今日の明君のお母さんのお洋服が明るくて可愛らしい。
 ボーダーの入った半そでのシャツで、黄色のスカートは膝あたりまでしか隠れていない。普段よりも素足が見えているから、僕はどうしてもドギマギしてしまう。
 部屋に上がると、これも慣れてきたが、明君の家の匂いがする。石鹸のような清潔な匂いの中にお線香の香りも混じっていて、なんだろう……外ではあぶら蝉がしゃあしゃあ、うるさく鳴いているのに、この空間だけは厳かで神秘的に思えてしまう。
 今日で四日連続になる。僕は四日間、毎日ここに来ていた。
 四日前のあの日、明君のお母さんは泣きじゃくる僕を抱きしめながら、「明日も遊びに来てくれる?」と、ふいに聞いてきた。その声は大人の女の人とは思えないほど気弱で寂しそうで、僕は不思議な感覚になった。だけど、救われた。
 もしも、「いつでも遊びに来てね」と言われていたら、僕はいつなら遊びに行っていいのか悩んでいたと思うけど、明君のお母さんは「明日も」と言ってくれたのだ。
「うん。来ます」
 僕は明君のお母さんの柔らかい体に包まれながら、ちゃんと返事をした。
「ほんと? あ、そうだ。ここで夏休みの宿題でもする?」
 とても良い提案だと思った。
「はい! ここで毎日、宿題します」
「毎日? オバサンは構わないんだけど、お家の人に怒られないかしら?」
「えっと、大丈夫です」
「でも、善三郎君のお母さんが心配しちゃうと思うわ。だって……」
 明君のお母さんの言わんとしていることは分かった。つい先日亡くなった友達の家に、僕が毎日行っていたら、両親は変な心配をするに決まっている。
「僕の親は共働きなので昼間は家にいないし、僕はよく図書館でひとり勉強もしているので、全然大丈夫です」
 これは嘘だった。僕の母親は専業主婦なのでずっと家にいるのだが、こういうことにしておかないと明君のお母さんが納得してくれない。咄嗟に思いついた嘘だったが、明君のお母さんは「そう? それなら……」と頷いていたから、信じてくれたと思う。
 僕は明君の家に行くと、まずやるべきことがある。リビングの奥にある襖を開いて、畳の和室に入る。そこには明君のお仏壇がある。初めて明君のお仏壇を目の当たりにしたときはやはり、泣きそうになった。明君が「死者」であることをあらためて実感したからだ。
 僕は明君のお仏壇の前で手を合わせて、目を閉じる。「今日も遊びに来たよ」と心の中で話しかける。その間、明君のお母さんは僕の後ろに座って、一緒に手を合わせている。
「ありがとう。明も毎日、善三郎君が来てくれるから喜んでいるわ」
 お仏壇に手を合わせた後、明君のお母さんは立ち上がり、リビングに戻った。僕も後を追う。
 リビングで麦茶を飲んで、お菓子も食べる。その後、リビングのテーブルで宿題をするのだけど、
「ねえ、今日は明の部屋でしない?」
 明君のお母さんが提案してきた。僕は少し驚いたし、複雑な気持ちにもなった。明君の部屋は明君のものであって、僕がそこに入るのは失礼なような気がしたからだ。
「あっちのほうが勉強机もあるし、明の使っていた教科書もあるから……」
 明君のお母さんはどうしても明君の部屋に行きたいようだった。その理由は分からなかったけど、明君のお母さんが懸命にお願いしているように思えて、断ることも出来なかった。
 明君の部屋に入るのは初めてだった。思えば、あの日──明君が事故に遭わず、この家に戻ってきていたら、僕もこの部屋に案内されていたはずだ。
 想像していた通り、整理整頓された部屋で、僕の部屋とは大違いだ。勉強机の横に本棚があって、ひとめで分かるほど、明君が昆虫好きであることが分かった。昆虫の図鑑シリーズがきっちりと並んでいた。あまり物色するのは明君に悪い気がして、僕はとりあえず明君の使っていた勉強机の椅子に腰かけた。キィと金属のきしむ音がした。
 ふいに明君のお母さんが静かになっていることに気づいて、後ろを振り返った。明君のお母さんは部屋のドアの前に突っ立って、目を細めて僕を見ている。
 だけど、すぐに笑顔を作って、
「今日は何をするんだっけ?」
 ゆっくりと、恐る恐るといった感じで部屋に入りながら、宿題の内容を聞いてきた。
「数学をしようかな」
 僕は鞄から問題集とノートを出して、机に広げた。
 明君のお母さんは当たり前のように僕の宿題を見てくれた。家庭教師のように、僕の隣に立って、勉強を教えてくれるのだ。教えるどころか、ほとんど答えまで出してくれるのだ。
 正直、僕は頭が悪い。明君のお母さんも初日に僕の宿題の出来具合を見て、そのことに気づいたに違いない。だから、丁寧にアドバイスをしてくれるのだけど、僕がなかなか答えを導き出せないでいると、最終的にはアドバイスが回答になってしまうのだ。
 明君のお母さんがそっと隣に立って、「難しそうね」と問題集を覗き込むように身を少し屈めた。僕は一瞬、体が震えた。明君のお母さんは椅子に座る僕の顔の高さまで、顔を近づけてくるのだ。
 いつもより距離が近かった。明君のお母さんの髪から漂うシャンプーの残り香と思える甘い香りがいつもより濃厚で、鼻腔をくすぐった。
「ふーん。これはね……」
 明君のお母さんが声を出すと、息吹も感じられる距離だ。
 僕は軽いパニック状態に陥り、何も頭に入ってこない。チラリと横眼で、明君のお母さんを見た。ホッペがツヤツヤしていて、耳たぶも小さくて柔らかそうで……美味しそうだ。
 そう、美味しそうという感想がピッタリだ。
「どうしたの?」
 明君のお母さんが笑みを浮かべた表情のまま、僕のほうに顔を向けたので、なおさら動揺した。桜色の小さな唇は少しテカテカと輝いていて、とてつもなく美味しそうだ。
「あ、いや、えっと……えっと」
 僕は普段からこんな調子で問題が解けない時は「えっと」が口癖になるので、明君のお母さんもそう勘違いしたようで、「一緒に考えようね」と優しい声で囁いてくる。
 昨日まで勉強を教えてもらっている時、ドキドキすることはあったけど、ここまで変な気分になることがなかった。明君のお母さんに抱きしめられて泣いた時も、女の人の体の柔らかさに感動したけど、それ以上に明君の死を悼む気持ちをようやく吐き出せた時だったので、性欲的なものはいつの間にか鎮まっていた。
 だけど今、僕は頭の中がイヤラしいことで一杯になっている。
 明君のお母さんに触りたい。感情を素直に行動に移したら、この瞬間にも明君のお母さんにガバッと抱きついて、襲い掛かりそうだ。
 もちろん、僕にそんな勇気などない。だけど、どんなに静まれ、静まれと念じても、ズボンの中にいる「オトナのボク」はムクムクと膨張して、下半身に圧迫感を与えてくる。
「ねえ、善三郎君?」
 明君のお母さんに呼びかけてきた。
「大丈夫? すごく難しそうな顔をしているけど」
「う、うん」
「ほんとに? 具合は悪くない?」
「うん」
 僕は取り繕うような返事も出来なくなっていた。オチ〇チンがウズウズして仕方ない。椅子の上でお尻を少し動かすだけでも気持ち良いけど、余計にじれったい気持ちにもなる。いますぐに手で摩擦してラクになりたい。そう、あの時、この家のトイレでオナニーをしてしまった時のように。だから僕は、またトイレを借りようかと本気で考えた。
「……」
 明君のお母さんが急に何も言わなくなった。さっきまで僕の様子を心配していたのに、いつの間にか黙ってしまっていた。そのことに僕はようやく気づいて、明君のお母さんを見た。
 明君のお母さんは少し首をかしげて、僕の目を見つめ返してきた。そして、「善三郎君、オバサンの勘違いだったら、それでいいんだけど」と前置きするように言ってきた。僕は何を言われるのだろうと、不安になった。
「あのね、ほら……善三郎君ぐらいの年頃の男の子って、あるじゃない。その、なんていうの? 女の子の体に興味が出てくる頃だし、いろいろと、なんかその、溜まるとか……ごめんね、オバサンの勘違いだったら、ホントにごめんね。でも、なんか、ほら……」
 僕は自分の今の状態を言い当てられたことよりも、明君のお母さんがしどろもどろになっていることに何よりも驚いていた。僕の思い過ごしかもしれないけど、その瞬間、明君のお母さんの体からシャンプーの残り香とも違う、甘ったるい匂いがツンと鼻に入ってきた。
 僕は顔が真っ赤になった。ただでさえ赤面症だから、耳たぶまで熱くなって、冷房がしっかりと効いている部屋なのに、顔中の毛穴から大量の汗がぶわっと溢れてきた。 
 僕のあまりにも分かりやすい反応を見て、明君のお母さんは察知したのだろうか。今度は少し落ち着きを取り戻した口調で、
「もし、そうだったら気にしなくていいのよ。それは変なことじゃなくて、当たり前のことなんだし。普通の男の子だったら、当たり前のことだと思うの。だって、明も……」
 明君の名前が出てきて、僕は思わず、「明君も?」と聞き返していた。
「そう……明もね。オバサンも、この部屋のゴミ箱を片付けていたんだけど、その、ティッシュがね。もう、言わなくても、わかっているんでしょ」
 明君のお母さんはようやく少し笑みを思い出したように照れ笑いをして、僕の肩のあたりをポンと軽く叩いた。そのおかげで、僕も若干、気持ちが緩んで、はにかんでいた。
「ね、だから、気にしなくていいの」
 明君のお母さんは自分に言い聞かせるように言った。だけどその後、しばらくまた考え込むように黙り込んでしまった。僕はどうしていいか分からず、とりあえず宿題をすることに戻ればいいと思って、問題集に向き合おうとした。
「……苦しくないの?」
 明君のお母さんも問題集を覗き込むように、僕に顔を近づけてきた。
 苦しくないの? 僕はその言葉を心の中で反芻した。
「苦しくない?」
 今度は僕の顔を見ながら聞いてきた。明君のお母さんと目が合う。真っすぐに僕を見据えていて、綺麗な黒目に、もう一人の僕が映っていた。
「くるしい、です」
 喉が異様に乾いていて、かすれた声で僕は絞り出すように言った。
 明君のお母さんは僕から目を離さない。僕はなぜか試されているような感覚になって、視線をそらしてはいけないようにも思えた。明君のお母さんの桜色の唇が動いた。
「オバサンが……して、あげようか?」
 僕は数秒、固まっていたと思う。思考も停止していた。明君のことも頭によぎったと思うけど、そうした罪悪感は僕の額から溢れだす汗のようにタラタラと流れてしまった。
 明君のお母さんをもう一度見た。さっきとは違って、わずかに口元が微笑んでいる。どうする? と優しく尋ねるように、細めた眼を緩ませていた。
「してもらいたいです」
 僕は言った。渾身の勇気を振り絞ったわけでもない。明君のお母さんに甘えても構わないんだ、と思えたからだ。
 明君のお母さんは僕の返事を聞くと、静かに頷いて、
「じゃあ、脱ぐ?」
 僕のズボンのあたりを見ながら言った。僕は心臓が喉から飛び出そうなほど緊張していたけど、椅子から立ち上がって、ズボンを全部脱いだ。トランクスは見事なまでにテントを張っていた。
「すごい……のね……」
 明君のお母さんは息を飲むように囁いた。目を丸くして、オトナのボクを見つめている。僕は本当にいいのだろうか? と思いながらも、トランクスに手をかける。ペニスがお腹にまでくっつきそうなほど反り返っていたから、何度かひっかかった。その一部始終を、明君のお母さんは黙って見ていたから、とても恥ずかしかった。
 バネで弾かれたようにオチンチンが外に開放されると、自分でも驚くほど、包皮の剥けたピンク色の亀頭がぬらぬらと油でも塗ったかのように我慢汁でテカついていた。
「やだ。本当にすごいのね。オバサン、ビックリしちゃった」
 明君のお母さんが口元を両手で覆って、驚いた時の仕草を見せる。
 僕は今更ながら自分が下半身だけ素っ裸で立たされている状況に気恥ずかしさを覚えた。
「そ、そうね。えっと、じゃ、椅子に座ろうかな」
 明君のお母さんも狼狽している様子で、僕に急かすように言ってきた。
 明君の椅子に、直接お尻をつけるのは悪い気がしたが、いまはそれどころではない。
 椅子に腰かけると、明君のお母さんは立ったまま、前屈みになって、
「じゃあ、始めるよ。痛かったら、ちゃんと言ってよ」
 そっと右手を伸ばして、僕のオチンチンを包み込むように握ってきた。
 全身の筋肉に力が入る。今まで味わったことのない衝撃的な快感に、全身の力を入れていないと、体が飛び跳ねてしまいそうだった。
「あ、あ、あ……」
 平均台の上でバランスを取るときのような声が漏れてしまう。明君のお母さんの手の、なんて柔らかいことか。細い指先がおちんちんの薄い血管に触れるだけで、頭の中が真っ白になりそうだ。明君のお母さんは何も言わず、僕のオチンチンを一心に見つめていた。
 軽く握られているだけなのに、僕はもう限界が近かった。女の人に触ってもらえるだけで、天にも昇る心地なのだ。
「ビクビクしているわ。すごく熱くて……」
 明君のお母さんがうわごとのように囁く。指先に力が入る。僕はそのわずかに加わった刺激に、「あああっ」と声変わりしたばかりの野太い声をあげてしまった。
「大丈夫? 痛くない?」
 明君のお母さんが指の力を緩めて聞いてくる。
「はい……僕、もう……」
 勝手に腰が動いてしまう。もっと擦って欲しいのに、明君のお母さんは握るだけで、ちゃんと動かしてくれないからだ。僕が腰を前後に揺らし始めると、
「あぁ、本当にすごい……」
 明君のお母さんはまた「すごい」と言って、僕の腰の動きに合わせるように、右手を律動させてきた。オチンチンのカリの部分に柔らかい指先がひっかかり、尿道口から溢れた我慢汁と絡みつき、ねちょねちょと納豆をかき回した時のような粘っこい音が鳴る。
 明君のお母さんの綺麗な指が、僕の体液で汚れていく。
「ふはああっ、ダメだ、ダメだ~~!」
 僕はその瞬間、明君のお母さんを懸命に見ていた。強烈な射精感に目を瞑りそうになったけど、どうしても明君のお母さんの姿を目に焼き付けておきたかった。
「うん、いいのよ。ラクになって。出していいよ」
 明君のお母さんも心なしか顔が紅潮していた。悶絶する僕をしっかりと見据えたまま、右手に一段と力を込めて、炭酸ジュースの炭酸を放出させるため、缶を振るときのように激しく扱いてきた。それは後から思うと人妻らしい慣れた手つきで、リズミカルだった。
「イク、イク! あああっ!」
 僕は思わず両手を伸ばして、明君のお母さんの華奢な肩を掴んでいた。指の跡が残るほど、強く掴んでいたと思う。
 おちんちんが膨らみすぎて暴発するんじゃないかと思う感覚の中、僕は溜まりに溜まっていた十四歳の精液を勢いよくまき散らしていた。
「あんっ」
 一発目の射精が噴出すると、明君のお母さんが可愛い声を出した。
 股間を見ると、明君のお母さんは左手で僕のオチンチンの前に翳して、飛び散る体液を受け止めていた。床にまき散らさないようにしてくれたようだが、
「アッ、アッ、まだ出る、まだ出てるわ」
 あまりにも量が多いせいか、明らかに驚いていた。
 ようやくすべてを出し切ると、明君のお母さんの左手にはイカ臭く、卵の白身のようなドロドロの僕の精液が絡みついていて、せっかく受け止めてくれたものの残念ながら、指から床に糸を引いて垂れてしまっていた。
 明君のお母さんも僕もしばらく一歩も動けなかった。
 僕は放心状態のまま、明君のお母さんの肩を掴んでいた両手をやっと離した。
 
 明君のお母さんの肩越しに、本棚の昆虫図鑑シリーズが見えた。



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第一章 西瓜


 光化学スモッグ注意報が発令されていたその日、僕は他人の家のトイレでマスターベーションをした。
 僕が中学二年生で、十四歳の夏だ。
 この手記を書くにあたって、当時の時代背景を調べてみた。
僕が十四歳の頃は昭和59年、西暦では1984年。インターネットで<昭和59年 出来事>を検索すると、「グリコ森永事件」や「ロサンゼルスオリンピック開催」などがあったようだ。カールルイスが懐かしい。
 
 さて、そんな昭和59年の夏である。僕には一人の友人がいた。
 明(あきら)君といって、その年の春に福岡県から転校してきた同級生だ。
 明君は僕と似ていて、目立たない男子だった。面長の顔や一重の目なども僕と似ていた気がする。ただ、僕と違って勉強が出来た。塾にも通っていた。運動神経はそれほど良くなかったと思うが、体育の授業が何よりも苦痛で仕方なかった僕に比べれば、ずっとマシなほうだったと思う。
 明君と僕がどうして仲良しになったのかは忘れてしまった。
 おそらくクラスでも基本的に僕は独りぼっちで過ごしていたから、転校してきたばかりの明君は声をかけやすかったのかもしれない。
 明君とは近所の公園で遊ぶことが多かった。今から思うと僕は十四歳にしては精神年齢が低かったと思う。中学二年生にもなって、公園での虫取りに夢中だった。
 でも、明君も一緒に楽しんでいたのだから、同じぐらいの精神年齢なんだと思う。
 
 明君の家に遊びに行くことになったのは、夏休みに入ってすぐのことだった。一緒に夏休みの宿題をやろうよ、確かそんな理由だった。僕は今まで友達の家に呼ばれたことがなかったので、変に緊張していた気がする。
 明君の家は公営住宅で、僕の家から歩いて数分のところにあった。事前に明君から部屋番号は聞いていたので、僕は直接行くと約束していた。
 エレベーターに乗って、三階の一番奥にある三〇七号室を目指した。夏の強い陽ざしが公営住宅の外廊下を歩く僕の目をチカチカさせた。
 三〇七号室の前に着くと、僕はクリーム色の玄関ドアの横にあるブザーを押した。しゃあしゃあと鳴く蝉の声に紛れて、ピン、ポーンと機械音が響く。
 数秒待ったが、何の反応もなかった。もう一度ブザーを押してみたが、やはり反応がない。
あれ? いない。時間を間違えたのだろうか。ワクワクしていた分、僕は結構、落胆した。
「明君、明く~ん」
 今度はドアに向かって呼び掛けてみた。声変わりしたばかりの自分の声が気持ち悪い。
 やっぱりいないみたい。宿題を詰め込んだ肩掛けの鞄が少しずり落ちてきたので、かけなおしてから、僕はいよいよその場から離れようとした。
 タタタッと足音が近づいてくる。スリッパを穿いて小走りする音だ。
 それからカチッとドアのノブが回る音がした。
「は~い」
 女の人の声だった。
 初夏の風が吹きぬけるような颯爽かつ清冽な女の人の声だ。
 僕は額から汗がドッと噴き出た。
 
★
 
「本当にごめんね~。待たせちゃって。明、文房具屋さんに行っただけだから、もうすぐ帰ってくると思うけど。おばさんも善三郎君が遊びにきてくれるなんて聞いてなかったから、すぐに出られなくて、ごめんね」
 彼女が玄関で出迎えてくれた時は、明君のお姉さんだと思った。でも明くんは一人っ子だったはず。
 若くて溌剌としているその女の人は明君のお母さんだった。
 明君に似て細面だけど小顔で、明君とは似ていない二重の瞳が可愛かった。玄関先で僕を見て、微笑んだ時の垂れた瞳がとても優しかった。
 藍色のワンピースから覗く二の腕やふくらはぎも細かった。
 何よりも僕の心をざわつかせたのは、明君のお母さんの濡れた黒髪だ。
 明君のお母さんは口にしなかったが、さっきまでシャワーを浴びていたようだ。呼んでもすぐに出てこなかった理由もそれで分かった。
 玄関からリビングに通された時、明君のお母さんの体からはお風呂上りの甘い香りがした。
 オスの本能的に襲い掛かりたくなる、女の人のいい匂いだった。
 リビングで、四人掛けのダイニングテーブルの椅子に座らせてもらった。こんなに綺麗な女の人と二人きりになるなんて生まれて初めてのことで、普段から赤面症で汗っかきの僕だから、顔が火照って汗も止まらない。ハンカチなど持ってきていないので、僕は汗が床に落ちないように、自分のTシャツの袖で何度も拭っていた。お行儀の悪い行為だと分かっていたけど、汗で床を汚してしまうより、まだいいと思った。
「いつも明と仲良くしてくれて、ありがとうね。善三郎君のことは、明からよく聞いているよ」
 台所にいた明君のお母さんがコップに注いだ麦茶を持ってきてくれた。コップについた水滴は僕の汗のようにビショビショで、麦茶がキンキンに冷えていることが分かる。
 コップにはストローがついていた。僕の家ではがぶ飲みが当たり前なので、それだけでも明君の家はお上品だなぁと思った。
「ありがとうございます……」
 僕は頭を下げてお礼を言う。喉がカラカラだったので、ストローに口をつけると、麦茶を勢いよく飲んだ。いや、一気に飲み干してしまった。
「ほんと、暑いもんね~。麦茶、もう一杯いれるね。あ、西瓜も冷やしてあるから、食べる?」
 僕の飲みっぷりを見て、明君のお母さんは嬉しそうに微笑んでいた。僕は恥ずかしくて、思わず「はい!」と裏返った声で返事をしていた。実際、西瓜は好きだった。
 だが、この西瓜がいけなかった。マズいわけではない。それどころか、血のように赤く、よく熟していて、齧れば、水気たっぷりの甘い汁が口の中に広がり、喉にもずっと甘さが残る。
「美味しい?」
 テーブルを挟んで、明君のお母さんが口元を動かしながら聞いてくる。明君のお母さんも西瓜を一緒に食べ始めたのだが、麦茶はストローで飲むくせに、西瓜は大口を開いて丸かじりするのが「明君の家流」のようで、明君のお母さんはお世辞にもお上品と言えないほど、西瓜を貪っているのだ。
 明君のお母さんが西瓜を齧るたび、ジュルッと汁が唇から滴る。さらに、長い黒髪が汚れないように、片手で髪をかきわけながら、お皿に顔を近づけると、西瓜の種をプッと吐き出す。
 お上品なお母さんと思っていただけに、その野性的な姿に僕は驚いてしまった。だけど、少年ながらも妙な色気を感じていた。きっと、これがギャップというやつだ。
さらに僕の目を奪うものがあった。明君のお母さんは西瓜の種を吐き出す時、上体を前に倒す。そのたび、ワンピースから覗く胸の谷間が僕の目の前に露わになるのだ。
 葡萄の房のような形をした白い乳房の上部が見えてしまっているのだ。
 今から思うと、あの時、明君のお母さんはノーブラだったのではないだろうか。シャワーを浴びている時に、玄関の呼び鈴が鳴った。最初は無視しようとしたものの、「明君」と呼ぶ声がしたため、息子の友達だと気づいて、慌てて出迎えてくれた。そうに違いない。
「明、遅いわね~」
 明君のお母さんは西瓜を半分ほど食べたところで、独り言のように呟いた。いら立っている様子ではなく、単純に帰りの遅い息子を心配しているような口ぶりだった。
「そうですね。遅いですね」
 他に気の利く言葉が思い浮かばず、僕はそのまんま返したが、正直、明君にまだ帰ってきてほしくなかった。心臓の鼓動が高鳴りっぱなしで苦しくもあったけど、明君のお母さんと過ごすひと時をもう少し味わっていたかった。
 それに少しずつであるが、この状況にも慣れてきていた。先ほどまでは明君のお母さんに視線を向けるだけでも緊張していたのに、彼女の細い首筋の左側に黒子があることや、顔や二の腕は輝いて見えるほど肌が綺麗なのに、手のひらは少し皺っぽく荒れていることにも気づいた。お母さんらしい手だった。
 僕は彼女のことを知れば知るほど、彼女に惹かれていくようだ。
 もちろん、この感情は純粋な恋心などではない。十四歳の男子である。一日に平均三回以上、多い時は十回以上もオナニーをしてしまうほど性欲まみれで、普段から「女子」のことしか頭にない。
 同級生の中に好きな女の子はいるし、その子とセックスが出来ればもう死んでもいいと本気で考えているほどだ。そして今は明君のお母さんに対して、激しい欲望を抱いて、悶々としていた。
 友達のお母さんとはいえ、女の人なのだ。西瓜の種を吐き出すあの唇にキスをしてみたい、柔らかそうなあのオッパイを揉んでみたい……明君のお母さんのアソコにペニスを入れたら……妄想は果てしなく膨らみ、僕のペニスも痛いほど勃起していた。
 あぁ、シゴいて出して、ラクになりたい。
「どうしたの?」
 僕は思いつめたような表情をしていたのだろうか。明君のお母さんがティッシュで口元を拭いながら、不思議そうに声をかけてきた。
「あ、いや……」
「ん?」
 明君のお母さんに真っすぐ見つめられたので、僕は目をそらして、
「あのぉ、明君、遅いですね……」
 これぐらいしか言葉が思いつかなかった。
「そうよねえ。ちょっとオバサン、見てきてもいい?善三郎君、悪いけど五分ほどお留守番にしてもらえる?」
「え? 僕が?」
「うん。すぐに戻ってくるから、部屋で待ってて」
「いや、それなら僕が見てきますよ」
いくらなんでも他人の家に一人で居座るなんて失礼なことだ。僕が泥棒だったらどうするんですか、と言いかけたほどだ。
「いいの、いいの」
 だけど明君のお母さんは全く心配していない様子で、財布も持たずに部屋から出て行ってしまったのだ。
 僕が他人の家でマスターベーションをしたのは、この後だった。
 絶対に誰にも言えない……当然、今も明君のお母さんも知らないことだ。僕は明君のお母さんが部屋から出ていくなり、あまりにもみっともない恥知らずなことを、時間の許す限り、行った。
 明君のお母さんの飲んでいた麦茶のストローを吸った。食べかけの西瓜にべったりと口をつけた。そうやって間接キスを存分に楽しんで後、僕は直感的にバスルームに向かった。  
 洗濯機の置かれた洗面台には洗濯ものが放り込まれた籠があった。
 僕は額から垂れる汗をぬぐう余裕などないまま、籠の中に手を突っ込み、そこからピンク色と薄いブルー色の女性のパンティを見つけた。僕が想像していた以上に、女の人のパンティは面積が狭くて、こんな小さいものが穿けるのか? と思った。
 二枚のパンティの中から可愛いと感じたピンクの下着にまず、鼻先を押し付けた。
 ムッと鼻腔に入り込む今まで嗅いだことのない独特の臭いだったが、脳天がとろけるほど、たまらない心地になった。これが女の人のアソコの匂いなのだと思うと、僕はすでに童貞を卒業したかのような優越感にも浸れた。嗅ぐだけでなく、女性器がじかに触れるパンティの基底部を舐めた。少し黄ばんだ染みがあったので、そこをとにかく舐めた。あまり味は分からなかったが、それでも甘酸っぱいと感じたのは、興奮による脳内麻薬のせいかもしれない。
 早くしなければ、と焦る気持ちも当然あった。いつ明君のお母さんが帰ってくるのか分からないのだ。
 僕は懸命に頭を回転させて、どんな状況であっても言い訳のできる状況を作ろうと考えた。
 そして思いついたのがトイレだ。万が一、明君たちが突然戻ってこようと、トイレを借りていたと言えば、変態行為の現場を目撃されることはない。
 僕はまだ何も汚していないブルーのパンティだけを手に持って、トイレに駆け込んだ。洋式便器の前で、立ったままズボンとパンツを同時に下ろして、もはや暴発寸前のペニスを右手に握る。左手にパンティを持って、それを鼻に押し付けてスーハ―スーハ―と息を吸い込みながら、ペニスをゆっくりとシゴいた。速くシゴいてしまうと、すぐに射精して、この至福のひと時が瞬く間に終わりそうだからだ。
 あぁ、明君のお母さん……僕は明君のお母さんを自分のものにしたかのような錯覚に溺れていた。出来るだけ射精を我慢したかったが、どんなにゆっくりとシゴこうと、もう限界だ。僕は出してしまう前にどうしてもやりたかった行為に及んだ。
 パンティを右手に持ちかえて、鉄のように硬くなった肉棒に巻き付けるように被せて握った。明君のお母さんのアソコに密着していた部分を亀頭にくっつけて、摩擦した。
パンティの柔らかい布地は、まるで明君のお母さんの手で握られているようだった。
「くぅう、はうっ!」
 呻いた自分の口から西瓜の匂いがした。全身がわななくように震えて、肛門と睾丸の間あたりに溜まっていた熱いマグマがまさに噴火するごとく、湧き上がってくる。
「お母さん!」
 つい先ほどまで二人きりで過ごしていた明君のお母さんの顔が脳裏にくっきりと浮かぶ。
 お母さんと口走った瞬間、オシッコの出る穴から重量感たっぷりの白濁液が噴出した。
 どびゅる、どびゅっ、ぶしゅっ、とエゲツない音を立てるように勢いよく精液が飛び散り、開いた便座の裏側に何発も当たる。あとの処理のことなど考えていられなかった。
 やってしまった……。
 僕は数秒、完全に頭が真っ白になって放心していた。あまりにも気持ちの良い射精で、心臓が止まってしまうのではないかと思ったほどだ。
 気持ちいい、気持ちいい、と心の中で何度も叫んでいた。
 だけど僕はいまでもこの一度の射精を後悔している。この1分足らずの短くも最高の快楽を味わったことによって、自分が一生、罪の意識に苛まれるなんて、夢にも思わなかった。

 明君、ごめんね。
 僕は君のお母さんの下着でオナニーをしていたんだ。
 君がちょうど死んでしまった、まさにその時間に──。


【本編はこちらから】


表紙

昭和59年の夏。家にも学校に居場所がなかった14歳の「僕」中学2年生。
唯一の親友だった「明君」が交通事故で亡くなった。
僕はその唯一の親友の家で、綺麗で優しい女の人に出会う。
シャボンの石鹸の匂いがして、桜色の唇は濡れていて…。僕のような嫌われ者にも笑顔を向けてくれる明君のお母さん。
僕は西瓜を食べながら、その人のことをもっと知りたいと思った。
言葉にならない喪失感と日々感じる疎外感に苦しんでいた僕は、やがて明君のお母さんと互いの寂しさを埋め合うように、禁断の行為に溺れていく。
思春期の少年と息子を亡くした母親が溺れるイケナイ関係…。
昭和の団地で繰り広げられる擬似的な母子相●ストーリー。

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あらすじ


2000年初頭。
就職もせず、東京で物書きを目指していた23歳の「僕」。
貧乏な毎日だった。
だけど、原稿を持ち込んだ先の出版社で、「風俗雑誌の編集をやらない?」と誘われて、カネ欲しさに入社することに。
それまでエロとは無関係の世界にいた僕だが、なぜか才能が開花!?
その後、フリーランスとなるや、〝なんでもやります〟をモットーに危険な仕事もやるように。
「未成年ばかりを集めた裏デリヘルに潜入」したり、「裏ビデオを制作している工場に潜入」したりと、仕事がどんどん増えていった。
とはいえ、大事なのは「企画」だった。面白い企画を提案して通さないことには、一円にもならない。そんなヒリヒリとした毎日を送っていた時だった。



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 路地の奥まったところに、僕の住むボロアパートはある。
 風呂とトイレは別だけど五畳もない部屋で、とにかく狭い。寝る時は折り畳み式のパイプベッドを部屋の真ん中に設置するのだが、そうなると、もう座る場所はベッドしかない。
「私、この番組、好きなんだよね」
 ベッドの上にあぐらをかいて松本朱里はまさしくウキウキした様子で、体を揺らしながら言った。
 僕が貸してあげた緑のTシャツを着ているが、下はパンツ一枚なので太ももが剥き出しだ。華奢な体のわりにムッチリとした足だが、色白でスベスベしており、蛍光灯の光を綺麗に反射させて、瑞々しく輝いていた。
 朱里は美容師の専門学校に通う茶髪の二十一歳である。あくまで朱里本人が言っていることだが、あだ名はヒラメちゃん。確かに平べったい顔立ちで、両目の間隔がちょっと広くて、鼻や口は小さい。美人でも可愛くもないけれど、二歳年下のこの女の子のことを僕はなんだか自分にピッタリの妹のように思っていた。本当に妹がいたら、これぐらいのルックスのはずだ。
「ああ。たまにやっているよね、それ」
 僕は妹のような朱里とセックスを終えたばかりの心地よいけだるさの中、ベッドに寝ころびながら答えた。
 黒のカラーボックスの上に十四インチのブラウン管テレビが置いてあり、いまから『逮捕の瞬間! 警察24時』が始まろうとしていた。
「観たことある?」
「あるよ。暴走族の取り締まりとか、麻薬の取引現場に突撃するやつだろ」
「そう。私はね、交番のおまわりさんの一日に密着しているやつが好きなんだ」
「あれはヌルいよ。ホノボノとした話じゃん。酔っ払いの相手とかしているやつだろ」
 実は僕もこの番組が結構好きで、前から観ている。
「いいじゃん。ホノボノ系」
「つまんないよ。俺はヤクザみたいな警察官が、ヤクザと対峙している話のほうが好きだな」
 言いながら僕は足を伸ばして、あぐらをかいている朱里の太ももの上に置く。
 足をどこかに乗せているとラクだからだ。
 朱里は何も言わない。テレビに夢中だ。
 朱里とは行きつけのバーでたまたま一緒に帰った時、酔っぱらった勢いで深夜の駅トイレでヤッた。朱里も泥酔していたから、どうせ一夜限りだろうと思っていたが、結局その後もずるずると関係は続いている。年も近いので普通なら「付き合う」といった話になりそうだが、幸運にも、朱里には遠距離恋愛中の彼氏がいた。彼氏は高校時代からの同級生で、いまも朱里の地元の静岡県に住んでいるそうだ。
 僕も朱里もお互い口には出さないものの、自然とセックスフレンドという関係にすっかり落ち着いていた。
「圭君はこういう取材しないの? 事件とか事故とか」
 朱里はテレビに目をやったまま言う。
「しないよ。興味もない」
「エッチなことばかり取材しているもんね~。でも、こういう密着ものって面白いじゃん。圭君ならできそうな気がするけど」
「警察に密着?」
「違うよ。ほら、圭君がよく取材している人たち。裏ビデオ屋さんとか、風俗店の店長さんとか」
 これはいまも思っていることだが、僕はいつも女性に助けてもらっている。
 落ち込んでいれば優しい言葉をかけてくれるし、疲れていれば「そういうときもあるよね」と言って傍にいてくれる。そして、仕事があまりうまくいっていない時に限って、ハッと目が覚めるようなアドバイスをしてくれたりするのだ。
 世の中には「女なんて……」と女性を悪く言う男もいるが、そういう奴はいっぺんぶん殴ってやろうかと思う。それぐらい僕はことあるごとに、その時その時、近くにいた女性に助けてもらってきた。この時もそうだ。どこの雑誌に企画を提出しても思ったほど通らず、日々の生活に絶えず不安を抱えていた。
「それ、面白いな」
 裏ビデオ屋や風俗店店長だけでない。AV女優や風俗嬢、キャバクラ嬢の一日に密着した記事なら、読者も読みたいと思うのではないだろうか。
「暴走族の取り締まりのやつ、始まったよ」
 朱里はテレビを指さして言っていたが、僕は起き上がって、ちゃぶ台の上に置かれたパソコンの電源をつけた。
「仕事すんの? ベッド、一度片付ける?」
「いや、大丈夫。ちょっとだけ。すぐに終わるからテレビ観てていいよ」
 僕はパソコンを立ち上げると、素っ裸でベッドに腰かけながらキーボードを打つ。
『昼はOL、夜は娼婦に……二足のワラジを履く美女 二十四時間密着ドキュメント』
 仮タイトルをつけて企画書を書いていく。
 二足のワラジにしたのは、一人の人間に一日密着するとなれば、ある程度、二十四時間に変化が欲しいからだ。OLをやりながら夜はデリヘル嬢、昼間はピンサロで働く人妻、高校の体育教師をしながらSM系のAVに出演している女性も知り合いにはいる。
「あ~、それ。私がいま言ったやつじゃん」
 朱里がパソコン画面をのぞき込みながら言う。
「この企画が通ったら、めっちゃお礼をするよ」
「本当? どんなお礼?」
「えっとね……二時間クンニ!」
「それ、いらない。ねえ、なにか美味しいもの食べに連れていってよ。それか温泉」
「じゃあ、温泉行って、美味しい物を食べよう」
 企画書は週刊誌の編集者に送ることにした。
 僕の思惑通り、企画はすぐに通った。それどころか、毎週三ページの連載となった。僕は一ページ二万円で仕事をしていたので、この連載だけで毎週六万円は入る。駆け出しのフリーライターにすれば、こうした安定収入は生活の支えにも、心の支えにもなる。
 そして記念すべき第一回目の連載──エステ系風俗で働く人妻の一日を追った記事で、僕は生まれて初めて読者アンケートで一位を獲得することができたのだ。



「二百本でっせ、二百本。一日で! 電話が鳴りやみませんわ」
 池袋にある人妻専門エステ風俗『A』の店長であるSさんは、バリバリの関西人だった。
 商売上手でマメな人だった。
 僕のような駆け出しのライターにも週に一回は「儲かってまっか? なんかあったら、うちの店を取材してくださいよ」と営業電話をかけてくる人だった。
 僕も京都生まれの関西人だったので、Sさんの調子のいいノリが好きだった。
 二十四時間密着ドキュメントの企画も真っ先にSさんにお願いをした。
「ほんまですか? アキさんだけで?」
 アキさんとは僕が先日、二十四時間密着させてもらった三十二歳の人妻風俗嬢である。Sさんの店に三ヶ月ほど前に入店した溌剌とした奥様で、風俗バイトも始めたばかりとあって、初々しさもあった。
 エステ系風俗は女性の脱ぎもなければ、全身リップやフェラといったサービスもない。男性客にアロマオイルを使ったマッサージを施して、最後は手でヌクだけだ。エロ度は低いが、その分、アキさんのようなごく普通の主婦も働きやすいジャンルであった。
 アキさんを密着した記事が人気を得たのも、きっと彼女の〝素人感〟が出ていたからだ。
「そうでっせ。週刊誌に載った翌日、アキさんの指名が一日で二百本! 前代未聞でっせ。やっぱり週刊誌は反響が凄まじいですわ。いや、ほんま助かりましたわ。おおきに。お礼と言ったらなんですけど、見城さん、一発ヌイていってくださいよ。もちろん、お金なんかいりまへんで。うちで一番可愛い奥さんをつけますさかい」
「いやいや、それは大丈夫です。僕も十分、原稿で儲けさせてもらっているので」
 読者アンケートでトップを取れたとあって、取材協力をしてくれたSさんの店にもお客さんからの電話が殺到したらしい。
「ほな、別のことでお礼させてくださいよ。何か欲しいネタ、ありませんか?」
「出来れば、Sさんと仲の良い風俗店を紹介してほしいです。二十四時間密着ドキュメントは毎週連載でやっていくので、ネタが常に足りない状況なんです」
 自分の知り合いの女性に頼むだけでは、いずれネタの銃弾は尽きる。
「毎週? そりゃあ大変や。そうですなぁ。吉原ソープとかは知り合いいますか?」
「吉原もたまに取材しますけど、一日中女の子に密着させてほしい、と頼めるぐらい仲の良いお店は知らないです」
「じゃあ、吉原の店を一軒紹介しますよ。あと、キャバクラも知り合いがいまっせ」
「助かります。ちなみに、裏の店で、知り合いとかいませんか?」
 僕がどうしても掴めないのが、裏風俗(本番あり)で働く女性だった。
 当然、裏は違法店なので潜入以外で取材などできない。そもそも裏風俗の場合、店名や電話番号を雑誌に掲載するわけにもいかないので、店側は取材に応じても何のメリットもない。
「裏でっか……心当たりが無いことは無いんやけど。二十四時間密着でっしゃろ?」
「はい。しかも、昼間は別の仕事をしている人がいいんです。もっといえば、その女性の自宅の中も撮影させてもらいたいのですが……」
「なかなか厳しい条件ですなぁ。まあ、ちょっと聞いてみますわ。明日、お返事します」
 Sさんはやはり頼りになる人で、翌日には取材を受けてくれるデートクラブを紹介してくれた。



 デートクラブ、通称DCは二〇〇〇年代初頭、最も勢いのある裏風俗だった。
 デートクラブという名称からして、女性を紹介する交際クラブのように思われるが、それは違う。DCとは簡単にいえば、本番OKのデリヘルである。
 料金はまちまちで、熟女系DCは生(コンドーム無し)で一万円という激安店もあったが、AV女優や若くて綺麗な女性が在籍する高級DCになると九十分五万円なんてところもあった。
 全体的には相場九十分三万円といったところだ。
 Sさんから紹介されたのはOL専門のDCで、料金も相場通りだった。
 ここは珍しいことに三十代の女性が店長をやっていた。
「あら? すごく若いのね。風俗の得意なライターさんって聞いていたから、もっとごつい感じのオジサンが来るんだと思っていたわ」
 赤坂の雑居ビルの中にある事務所で女性店長と顔を合わせた。Tシャツにデニムが似合うスレンダー系の爽やかなお姉さんで、この人がDC嬢ならナンバーワンになれそうだと思った。
「はあ……よろしくお願いします」
「そんなに畏まらなくて大丈夫よ。私は昔、Sさんにすごくお世話になっているから。出来る限り、協力しますね」
「ありがとうございます」
「ただ、いくつか難しいことがあって。まず、自宅の中を撮影されるのはやっぱり嫌なんだって。だから、彼女に自宅でいるところを自撮りしてもらうってことでどうかしら?」
「それでかまわないです」
「あと、さすがに職場に来られるのも困るって。取材できる子はミクちゃんといって、二十七歳で、昼間は●●銀行で働いている子なのね」
「銀行員!?」
 大手銀行ではないが、都内にも支店が数多くある地方銀行だった。
「そう。これ、絶対内緒ね。記事の中でも、銀行名は絶対に出さないでほしいのよ」
「もちろん。銀行員ということは書いても大丈夫ですか?」
「それなら問題ないと思うわ。それぐらいかな……あとは、彼女と一緒に行動してもらって大丈夫だから。今日の十八時に新宿駅から〝乗る〟から、そこから密着する?」
「乗る?」
「聞いてない? うちの店はドライバーが女の子を最寄りの駅で拾って、そのままお客さんのところに向かうシステムなの。みんな基本、働いている子ばかりだから、わざわざ事務所には来ないのよ。仕事が終わったら、こっちから迎えに行くようにしているの」
「なるほど」
「とりあえず、見城さんはうちの車に乗って、新宿駅まで行けばいいわ。あと、他の女の子たちに取材の人がいることを知られるとマズいから。ミクだけの時に取材してほしいのよ。よほど忙しくならない限り、他の子は別の車で移動させるようにするから」
「わかりました。ありがとうございます」
 そのあと、僕はドライバーの男性を紹介された。
 四十代ぐらいで、前歯がほとんどなかった。きっと若い頃、シンナーをやり過ぎたのだろう。そんなヤバそうな中年男の運転するワゴン車で、まずは新宿駅に向かった。
 十八時を少し過ぎた頃、ミクちゃんが車に乗り込んできた。
 身長は百五十五センチで中肉中背。ひざ丈の黒いスカートに、上はブラウスで薄地のカーディガンを羽織っていた。体を売る仕事をしているとはいえ、見るからに地味な顔立ちで、色気はほとんど感じられなかった。あまりメイクもしておらず、清楚な黒髪は後ろで一つに束ねていた。だが、こういう素人感のある女性ほど客受けはいいものだ。
「はじめまして! 今日取材させてもらうライターの見城です!」
 僕は務めて明るいノリで挨拶をしたのだが、
「あ、はい……」
 ミクちゃんはほとんど無表情で、こちらの目も見ず、軽く会釈するだけだった。
「あの、移動中にお話を聞きたいんだけど、よろしいですか?」
「はい。答えられる範囲なら」
 ミクちゃんは機械的な口調で言う。取材に来たライターが自分よりも年下のチャラチャラした男だったことに、呆れているようにも見えた。
 まだライターとしての経験も浅かった僕はこの時点でかなり焦っていた。
 なんとかミクちゃんのご機嫌を取ろうと、薄っぺらいお世辞も並べてみたが、やればやるほど空回りで、沈黙の時間も次第に長くなってしまう。
「ミクさん、大塚で一本入ったので行きますね」
 シンナー中毒のドライバーが言う。
「はい」
 誰に対してもミクちゃんは同じように抑揚のない口調で返事をするようだ。
 微妙な空気が流れる車内で、僕は額に嫌な汗をにじませながらも最低限の話を取っていく。いつからこの仕事をしているのか、なぜこのバイトを始めようと思ったのか……。
「二ヶ月ぐらい前から……理由は……さあ、自分でもよくわからないですね」
 この人は本当に銀行員なのかと思ってしまうほど、釈然としない回答を続けられた。
「お金とかじゃなくて?」
「お金ねえ~。そうですね~」
 ついにはハァと深くため息までつかれる始末で、僕は質問をすること自体苦痛になってきていた。
 だから、大塚のラブホテル街に到着した時は少しホッとしたほどだ。
「いってらっしゃい」
 ローションやコンドームの入ったバッグを手にしたミクちゃんを、ドライバーは声をかけたが、何も聞こえていないかのようにワゴン車から出ていってしまった。
「ふう。あの……彼女はいつもあんな感じなのですか?」
 僕はドライバーに尋ねる。
「ああ、あんな感じだよ。それよりアンタ、ちょっとここで降りてくれない? これから一人、鶯谷まで迎えに行かないといけなくてね。店長から他の女の子とアンタを会わせないように言われているんだよ」
「あ、そうなんですね。じゃあ、自分は近くの喫茶店で時間を潰しておきます」
「そうして。戻ってくるときは、他に誰も乗せてないから。ミクと一緒にアンタも拾うから……そうだなぁ。二十時にまたここにいてよ」
 ちょうどミクちゃんがプレイを終える時間だ。
「わかりました。よろしくお願いします」
 追い出されるような形でワゴン車から降りると、ぽつぽつと雨が降り始めていた。
 急いで駅前の喫茶店に入り、最近買ったばかりのノートパソコンを開いて、別の雑誌の原稿を書くことにした。原稿を書いていると時間が経つのは早いもので、あっという間に二十時前となった。外に出ると雨はいよいよ本格的に土砂降りとなっていた。コンビニでビニール傘を自分の分だけ購入した。この頃の僕は、ミクちゃんの分の傘も買っていくという、気が利く男でもなかった。
 先ほどワゴン車が停まった場所まで行った。まだ車は戻ってきておらず、ラブホテル街で傘をさして突っ立っていると、雨夜の中、ミクちゃんがゆっくりと歩いてきた。傘は持っておらず、堂々と雨に打たれていた。
「あ……入りますか?」
 僕は駆け寄り、傘を差しだした。
 ミクちゃんは軽く会釈して、僕の傘の中に入ってきた。
 黒髪も服も濡れていて、なんだか可哀そうだった。
 かといって、無言のミクちゃんの〝話しかけるなオーラ〟が凄まじく、僕は情けないことに傘をさして突っ立ったままだった。
 車はまだ戻ってこない。
 ビニール傘を打つ雨音がやけにうるさい。
 傍から見れば異様な光景だろう。ラブホテル街で若い男女が相合傘をしながらも、お互い一言も発さず、ただただ前方を見据えているだけである。見ようによっては、シャイなカップルがラブホテルに入ろうかどうしようか迷っているようにも思われそうだ。
 車、遅いですね……と言おうとしたときだった。
「どうして?」
「え?」
 それは雨音にかき消されて、消え入りそうな声だった。
「どうして、この仕事をしようと思ったんですか?」
 ミクちゃんは前方を見据えたまま、そう質問してきたのだ。
 記者の自分が逆に取材されるとは思わなかったので、僕は答えに窮してしまった。
「……どうしてって」
 お金が欲しいから? エロいことが好きだから? 
 どうして僕はこの仕事をしようと思ったのだろうか。
「……」
 ミクちゃんはそれ以上追及せず、黙ったままだった。
 雨は横殴りになって、傘を持つ僕の手もビショ濡れになっていく。
 僕はふっと一つ息を吐いた。胸の中からこぼれ落ちるように、やっと言葉が出た。
「……文章を書くのが、好きだから」
 冷たい雨に打たれているのに、口にすると体が熱くなった。
 恥ずかしくなったのだ。
「そっか」
 ミクちゃんは僕の表情を確認するように、初めてこちらに顔を向けてきた。
 ふいに僕は、ミクちゃんが先ほどまで男に抱かれていたことを想像した。とてもエロチックな姿を妄想してしまった。
 ちょうどワゴン車のライトが、僕たちを照らした。



 その後もワゴン車の中で、僕は懸命にミクちゃんを取材した。
 銀行員の給料やDC嬢のアルバイト代などは包み隠さず教えてくれるので、データは揃いつつあった。ただ、客に抱かれている時の気持ちや、好きな客のタイプなど、自分の感情に関わる質問になると、「さあ」「あまり何も」と急に口をつぐんでしまう。
 二人目の客は渋谷のラブホテルにいた。
「いってらっしゃい」
 ワゴン車から出ていくミクちゃんに声をかけると、一瞬であったが、頷いてくれた。それだけでも嬉しく感じたほどだ。
 渋谷の客は六十分コースだったので、ドライバーと一緒に車内で待つことになった。せっかくの機会なので、僕はシンナー中毒のドライバーにも仕事の大変さや裏話などを聞いて、時間を過ごした。
 だが、その間もずっとミクちゃんのことを考えていた。
 いま目と鼻の先にあるラブホテルの一室で、彼女は男とヤッているのだ。
 ベッドではどんな反応をするのだろうか。あんなに大人しい感じだけど、客の前では淫らに振舞うのだろうか。どんな体位で突かれているのだろうか。
 時間は二十二時を過ぎようとしていた。
 フロントガラスを打つ雨粒で、ラブホテル街のネオンが霞んで見える。
 ふいに思う。どうして、僕はこの仕事を始めたのだろう。
 フリーライターを目指していたわけではない。
 そもそも僕は週刊誌やゴシップ誌が好きではない。
 芸能人の下世話な話を面白おかしく書きなぐったり、街の少女たちの乱れた性実態をさも大げさにあおったりして、正しいことをしているとは思えない。
 それなのに僕は毎日、仕事のことばかり考えている。
 誰かのためではなく、ただ自分が面白い記事を書きたい一心で、無我夢中になっている。
「あ、戻ってきたね」
 ドライバーが言う。
 見ると、ミクちゃんがラブホテルから出てきたところで、今度はちゃんと傘をさして、こちらに小走りで向かってきた。
「おかえりなさい」
 僕は言う。
「うん。ハァハァ……」
 少し息を切らして戻ってきたミクちゃんが、なんだか色っぽい。
 心なしか頬もほんのりと紅潮していた。
 本能的に僕は、ミクちゃんが今の客とは仕事を忘れて楽しんでいたのではないかと思った。
「どんなお客さんでした?」
 取材として聞いているはずなのに、個人的に心底知りたいと思った。
「普通でしたよ」
 相変わらず、自分の感情を出そうとしない。
 その態度に僕は若干苛立ちを覚えた。
「何歳ぐらい? 会社員?」
 どういう男に抱かれてきたのか、知りたくて仕方ない。
「え? まあ、30代だと思いますよ。会社員でしたよ」
「どんなことをしたの?」
「だから、普通ですよ」
「普通って……じゃあ、どんな体位でやったの?」
 僕は自制できず、ついイライラした口調で聞いてしまう。
「普通ですって……前からとか」
「正常位? それだけ? バックは?」
「うん」
「バックもやった? どっちが気持ちよかった?」
 僕は半ばやけくそだった。相手に気遣うことなく、質問責めをしていく。
「どっちって……じゃあ、後ろ」
「バックのほうが感じる?」
「まあ、その時によるけど……」
 ミクちゃんは鞄からハンカチを取り出して、雨なのか汗なのかわからないが、軽く額をぬぐった。
「奥まで入ってくるから?」
「うーん……そうじゃないですか」
 ミクちゃんは困惑していたが、答える時、チラチラとこちらを見始めた。
 不安げな視線を向けられたので、僕もようやく反省した。
「ごめんなさい。尋問みたいになってしまって」
 頭を下げて謝ると、
「あと……持ち上げられましたよ」
 急にミクちゃんは自分から話し出した。
「え?」
「なんていうの? こう持ち上げられて……」
「駅弁!?」
「はい。たぶん……それです」
 僕は自分でも分かるほど心臓がバクバクしていた。
 この大人しい彼女が駅弁ファックされている姿を想像して、激しく欲情したのだ。
「運転手さん……私、次で最後にしたいんですけど」
「了解です。えっと、じゃあ、この辺のホテルでいいのかなぁ。ねえ、アンタ。記者さん」
 ドライバーはなぜか僕に聞いてくる。僕に聞かれても困る。
「あ、でも……雨だから。記者さんの家の近くまで行ってあげたほうがいいんじゃないですか?」
 ミクちゃんが、すらすらと話をし始めたことにも驚いていた。
「まあ、そうだね。えっと、記者さん、家はどちらですか?」
 どうやら家まで送ってくれるつもりのようだ。
「いえ。まだ電車もありますし、自分ここで降りて、帰りますよ。あと最後に、ワゴン車の中にいるミクちゃんの写真を撮らせてもらえれば……」
「え?」
 ミクちゃんとドライバーが同時に声をあげた。
 それでようやく僕は何か勘違いしていることに気づいた。
「聞いてないんですか?」
 ミクちゃんは僕の顔を覗き込むように尋ねてきた。
 しっかりと見つめられたのは初めてだったので、ドキッとしてしまう。
「なにを?」
「だから……今日最後のお客さんは、記者さんだって言われていますよ」
 ミクちゃんは真面目な顔で言う。
「はあ?」
 頭の中が一気にこんがらがって、しばらく思考停止に陥ったほどだ。
「店長から聞いていないのですか?」
「そんなこと聞いてないです……ちょっと待って。電話します」
 僕は慌てて女性店長の携帯にかけた。
「雨の中、ご苦労さま。取材は終わったの?」
 すっかりフレンドリーに話しかけてくれるが、それどころではない。
「ええ。ただ、最後のお客さんは僕だって言っているんですけど……」
「あれ? 私言ってなかったっけ? そうよ。Sさんが、見城さんにも気持ちイイコトしてあげてって。代金もSさんから頂いているんだから。場所はホテルでも、見城さんの自宅でもいいよ。一人暮らしなら自宅のほうがいいんじゃない? 雨だし」
「……そうですか。Sさんが……」
 僕は律儀すぎるSさんに対して感謝に似た気持ちと、気恥ずかしさを覚えた。
 女性店長にお礼を言って携帯電話を切ると、
「自宅でいい?」
 ミクちゃんはすかさず聞いてきた。
「でも、うち中板橋だから、ここから結構遠いので悪いです」
「ほんと!? 私、ときわ台」
 初めてミクちゃんの弾んだ声を聞いた。中板橋とときわ台は同じ東武東上線で、ひと駅しか離れていない。
「めっちゃ近所だったんですね」
「電車の中で遭遇しても、全然おかしくないね」
 ミクちゃんはちょっと困った顔を見せたが、口元は緩めていた。
「どのみち、ミクさんの家まで送るから、ちょうどいいですね」
 ドライバーは言いながら、すでにワゴン車を発進させていた。
 それから自宅に到着するまでの時間、僕はとにかく落ち着かなかった。
 二十四時間密着ドキュメントと謳いながらも正味、密着しているのは十八時から二十二時過ぎまでの約四時間である。しかし、その間、無口なDC嬢相手に悪戦苦闘して、時には嫉妬して発情もしていたとあってか、心身共に疲れ果てていた。
 ご褒美と言えるかわからないが、まさか最後にこんな展開を迎えるとは思っていなかっただけに、いまだに考えがまとまらない。
 隣ではミクちゃんが背もたれに身をまかせて、深く目を閉じていた。寝ている感じはないが、もう取材に応じる気もなさそうだった。
 雨は相変わらず、強かった。



 路地の奥まったところに、僕の住むボロアパートはある。
 風呂とトイレは別だけど五畳もない部屋で、とにかく狭い。寝る時は折り畳み式のパイプベッドを部屋の真ん中に設置するのだが、そうなると、もう座る場所はベッドしかない。
「ごめんね。めっちゃ狭くて……」
 自宅に風俗嬢を呼んだ経験はなかったので、僕は今更ながら恥ずかしくなった。
「へえー。すごいところに住んでいるのね」
 ミクちゃんは心底驚いている様子で、余計に僕は申し訳ない気持ちになる。
「シャワーはこっちなんだけど……」
 DCの場合、最初に一緒にシャワーを浴びるのだが、うちは浴室も狭い。
「あ~。大丈夫じゃない? なんとか二人でも入れそう」
 ミクちゃんは部屋に来てからは普通に話をし始めた。普段、お客さんの前でもこれぐらい明るく務めているのだろう。
 いや、もしかしたら、これが本来の彼女なのかもしれない。
「じゃあ、一緒に浴びる」
 取材中は敬語を使っていたのに、僕は片言になってしまう。緊張した時の癖だ。
「うん。電気消してもらってもいい? ちょっと恥ずかしいね」
「うん」
 蛍光灯の紐を引っ張って、豆電球だけにした。
 うっすらと明るい部屋の中で、ミクちゃんは服を脱ぐ。僕も服を脱ぎながら、視線はずっとミクちゃんの露わになる肌に釘付けだった。
 結構肉付きが良くて、胸も大きくておわん型だった。
 いよいよミクちゃんはするりするりとパンツも脱いでいく。
 タワシのような濃い陰毛が見えた。
 風俗嬢であるけど、昼間は銀行の窓口で働いているお姉さんなのだ。
 制服の下に隠されていた魅惑の花園を見て、僕は次第に緊張よりも興奮が高まってくる。
「へえー。胸板厚いね。何かスポーツやってたの?」
 浴室で熱いシャワーを僕の体にかけながら、ミクちゃんは何かと話しかけてくる。
「うん。ずっと野球やってた」
「そうなんだ。さっきチラっと見えたけど、ダンベルも置いてあるもんね」
「たまに鍛えている……。でも、よく見えたね。ダンベル、ちゃぶ台の下にあるのに」
「うん。自宅に行くと、その人の趣味とかも結構分かるから、楽しいんだよね」
 ここにきてミクちゃんは記事で使えそうな告白をするから、僕は頭の中でメモしておく。
 だけど、ミクちゃんの手がペニスに伸びてきて揉むように洗い始めると、もう取材どころではなくなった。
 さすがプロというべきか、優しい手つきで雁首の部分を撫でるように刺激してくる。
「ううっ」
 情けない声を漏らすと、ミクちゃんは上目遣いでじっとこちらを見てきた。
 その目はいかにも好色な感じで、その豹変ぶりに僕はまた驚き、狼狽する。
 ベッドに戻ってからも、ミクちゃんは積極的にサービスをしてきた。
 覆いかぶさり髪をかきあげながら、僕の唇を食べるようにキスをしてくる。
 さらに耳にも顔を近づけて、甘い吐息をはきかけてくる。
 僕はあまり受け身になることがないので、こうやって責められると、どう対応していいかわからない。
「乳首は感じる?」
 耳の穴をくすぐるように囁かれると、魔法にかかったみたいに僕は素直にうんうんと頷く。
「へえー。もう開発されているんだぁ。遊んでばっかいるんでしょ?」
 本当に人はこうも変われるものなのか。ミクちゃんはお姉さんっぽく囁きながら、指の腹で乳首をクニクニと転がしてくる。
「うはっ」
「敏感。やっぱり遊んでいるよね」
 冷やかしながら、今度は乳首を舐めてきた。ちろちろと子猫がミルクを舐めるような舌使いだが、絶妙な快感が続いて、僕は思わずミクちゃんの背中にしがみついてしまう。
「そういや、さっきのお客さんね……」
 ミクちゃんは乳首を舐めるのを一旦やめて、その代わり、僕の暴発しそうなほど膨らんだ男根を右手にそっと掴んできた。
「ん? 駅弁の人?」
 僕は快感に溺れそうになっているのに、ミクちゃんが会話を始めるから、焦らされている気分だ。
「そう。始めはなかなか勃起しなかったんだよ。こうやってシゴいたり、フェラしたりしてあげたら、ようやく硬くなったから、私は〝そら入れろ~〟みたいな感じで、跨ったの」
 ワゴン車の中では一切してくれなかったプレイ内容を笑いながら教えてくれるのだ。
「そうなんですね……うう」
 僕は半分記者の顔を残しつつ、もう半分は快感にとろけきっていた。
 ミクちゃんはペニスを握ったまま、人差し指だけで亀頭を撫でてくるからだ。
「勃起してからは急にスイッチが入ったみたいに、持ち上げてきたけどね」
「な、なるほど。あぁ」
 もうろくに返事もできない。
 そんな僕の様子をミクちゃんはまじまじと見た後、
「舐めてあげる」
 ゆっくりと顔を下半身に近づけて、男根をためらうことなく頬張ってきた。
「あうう……」
 のっけから唾液たっぷりのフェラチオで、ヌルヌルとした生暖かさがたまらない。
「んふぅ、んんっ」
 ミクちゃんは激しめに口を上下に律動させながら、裏筋に舌を当ててくる。
 男のツボを心得た絶品の口技で、いつもこんなフェラチオをお客さんにしているのだと思うと、僕は気持ちいいけど悔しい。
「ねえ、俺も舐めたい」
 取材をしていた時からずっと気になっていたのだ。
 お金さえ払えば誰でも味わえるDC嬢の性器であるが、僕はミクちゃんのアソコがどんな感じなのか知りたかった。
「うん。こうする?」
 ミクちゃんは口にペニスを含んだまま、桃のようなお尻を向けてきた。
 シックスナインの形だ。
 まずは毛深い恥毛に覆われた秘穴を指で左右に押し開いた。
 やや黒ずんだ女貝はシャワーを浴びたばかりとあって、ほぼ無臭だったが、いざ唇を密着させると、ほのかに酸っぱい刺激臭がした。
「んんっ、ぁああ……」
 それほど濡れていたわけではないが、ミクちゃんはもどかしげにお尻をくねらせる。
 秘穴のサイズはやや小さめで、締まりが良さそうだった。
 舌で秘裂をねぶり、さらに淫芽はソフトクリームを舐めるように味わう。
「んっ、ああっ……あン」
 コリコリとしたクリトリスも小粒で可愛らしい。
「お客さんとするとき、イクこともあるの?」
 僕は舐めながら聞く。
「え? あ~。たまにね……アッ、でもめったにないよ……」
「どうしたら一番イキやすいの?」
 これは取材ではなく、僕が単に彼女のことをもっと知りたいからだ。
「ん~。やっぱり、中に入れられてからかな。ああんっ」
 ミクちゃんはペニスから口を離して、僕の顔面にお尻を擦り付けてきた。
 先ほどよりも強めの酸っぱい刺激臭を含んだ愛液で、僕の口の周りはべとべとになる。
「俺ももう入れたい」
「うん……ゴムつけてあげるね」
 ミクちゃんはすでにコンドームを近くに置いていたようで、シックスナインの体勢のまま、ペニスに装着してきた。
「私が上になろうか?」
「ううん。前からしたい」
 僕は正常位が一番興奮する。
「わかった」
 体勢を入れ替えて、ミクちゃんが仰向けとなった。
 上から見下ろすと、今までとはまた違う彼女がいた。
「すごく色っぽいです」
 明るいところで見ると地味な顔立ちなのに、薄暗い部屋で組み敷くと、なんだか夜の女っぽくて妖艶だった。
「ほんと?」
 そう聞き返す目元もどこか濡れているように見えて、吸い込まれそうだった。
「うん」
 両脚を広げさせて、僕は体重をかけるように男根を押し込んでいった。
「あンっ!」
 やっぱり膣口が狭く、ペニスという凶器をメリメリと体内に突きさしていく感覚があった。
 それからはもう、僕は自分の快感のみを追求した。
 年上のDC嬢のお姉さんを懲らしめるように、全力で腰を打ち付けていく。
 ミクちゃんは体が柔らかく、体重を思いっきりかけると、両脚を自分の胸に密着させて奥深くまで受け入れる。
 これはあくまで僕の考えだが、体の柔らかい女性のほうがセックスで快感も得やすいのではないだろうか。
 男もピストンがしやすいうえ、奥まで入れられる。すると、自然と腰を振るスピードも速くなるため、無我夢中で突きまくっていると、女性もだんだん我を忘れたようになる。
「アァ、あああぁ! アアアッ!」
 ミクちゃんは今夜三人目の最後の客を相手に、しっかりと雌の鳴き声をあげる。それは演技っぽくもあったが、中はしとどに濡れていたので、僕も雄の本能のまま腰を振る。
「ああぁ、気持ちイイ」
 僕は息を荒げながら、今にも射精しそうなペニスにグッと力を込めて踏ん張る。
 出来るだけ射精を堪えて、快感を長く味わいたい。
「あん、あぁ! アアッ激しい……あああっ」
 ミクちゃんを押しつぶすように全体重をかけていく。
 しっかりと奥まで肉の杭がはまっているので、もう逃げられないはずだ。
 僕は女性を支配する喜びに震えながら腰を振り、ミクちゃんの唇に吸い付く。
 舌を絡めていくと、ミクちゃんも懸命に応じて舌を出してくる。
 しょせんはDCで遊んでいるに過ぎないのだが、僕はその時ばかりはミクちゃんを死ぬほど愛おしく思っていた。
「ううっ、出そう……!」
 マグマが押し寄せてきた。
「アアぁ……」
 ミクちゃんはその瞬間、両手を使って僕の乳首をキュッと抓んできた。
「あ、やばい。めちゃくちゃ気持ちいい……!」
 乳首の快感とペニスに押し寄せる快感が合わさって、僕は頭の中が真っ白になった。
「イクぅ!」
 叫ぶや、ペニスは最高潮に膨張して、僕は身震いしながら激しく吐精した。
 ミクちゃんは僕の乳首を抓んだまま、しばらく目を閉じていた。



「理由なんだけど……」
 シャワーを浴び終えて、服を着直しながらミクちゃんは思い出したように喋り始めた。
「え? DCを始めた理由のこと?」
 僕はこのまま眠れるので、寝間着のスラックスを穿きながら言った。
「そう。私さ、三年ぐらい付き合っていた人がいたの」
「うん」
「すごく好きな人で、プロポーズもされていたんだよね」
 ミクちゃんは服を着なおした後、ブラシで軽く髪の毛を整え始めた。
「そうなんだ……」
「でも、急にフラれちゃったんだ。理由もちゃんと教えてもらえなくて。それでなんかね、もうどうでもいいやみたいになっちゃったんだよね」
「それが理由?」
「うん……バカだと思っているでしょ?」
 バカとは思わないが、たかが恋人と別れたぐらいで……とは思った。
「よし、帰ります。あれ、台所の窓、開いたままじゃない。声、聞こえちゃったかな」
 ミクちゃんは玄関のところで、しまった、というような顔をした。それから台所の窓の前に飾ってある黄色い花を見て、一言。
「これ、風水?」
「なんで、わかるの?」
「だって、黄色いものを窓辺に置くと幸運になれるって有名だもん」
 幸運というよりも、金運上昇が僕の目的なのだが、そこまで説明する気にもなれなかった。
 ただ、一つだけ言っておきたいことがあった。
「実際、これを置いてから、良い事が続いているんだ……ミクちゃんも置くといいよ」
「ほんとに? じゃあ、私も黄色い花、部屋に置いてみようかな……ありがとう」
 ミクちゃんは力なく笑った。ふいに見せた寂しげな表情に、三年間付き合っていた好きな人を思い出したのかな、と僕は思った。
 だけど、そのあと、
「また良かったら、指名してくださいね」
 ミクちゃんはDC嬢っぽく営業スマイルを見せて、ボロアパートから出て行った。
 本当に黄色い花のおかげかもしれない。
 そのあとも、二足のワラジを履く美女たちの二十四時間密着ドキュメントは、貧乏に押しつぶされて挫折しそうな僕の生活をぎりぎりのところで支えてくれる、好評連載となっていった。




【本編はこちらから】

表紙


「唾ローションはね……こうやるの」
 梨歩は口の中でたっぷり溜めていたのだろう。ドロリと唾液の塊を、肉棒の先端めがけて垂らしてきた。
「で、こうやるの」
 梨歩の細い指が、パンパンに張りつめた亀頭に絡みつく。
 クチュリ、クチュクチュと、女子高生の唾液と僕の我慢汁も混ざり合う。


 家出娘ばかりの未成年デリヘルを盗撮。
 高級ホテルのスイートで開催された輪姦パーティ。
 援交ギャルたちが描いた夏休みの絵日記。
 現役ナースしかいない違法の医療系風俗。
 警察も踏み込めなかった裏ビデオ工場の潜入。
  
 2000年初期のエロ本業界は、なんでもありのカオスと化していた。
 その当時、23歳の貧乏ライターだった僕は、一攫千金を夢見て、淫欲まみれの危なっかしい仕事を夢中でこなしていた。
 アダルトサイトが普及する直前の〝最後のエロ本狂時代〟を綴った実録官能ドキュメント。


FANZAブックス
※10月15日まで30%Off





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第七章



あらすじ

政治家の父親が逮捕された。未成年への買春容疑だった。
世間からは叩かれて、家の前にはマスコミが押し寄せていた。
これまで父親が絶対的権力を持っていたハヤトの家は、もはや完全に崩壊していた。
母親は寝込み、受験生の姉も傷つき、なによりも進学すら危うくなっていた。
一方、ハヤトは家から出られない状況となり、コトコさんに会いにいけなくなっていた。
寂しさに自慰をしていると、階下では母親と姉が喧嘩する声…。
無視してコトコさんを想っていると、突然、部屋のドアが開いた。
姉に自慰を目撃された。怒られる! と焦るハヤト。
しかし、これまで弟を無視していた姉が突然優しい顔となって、近づいてきて……。



IMG_8222






「ハヤトちゃん……寂しくて、自分でさわっていたん?」
 どうしたのだろう。
 姉はかすかに息が上がっていた。
 ハヤトは姉の顔を凝視していた。やっぱり明らかに様子がおかしい。
 だけど、昔と変わらず、唇の右上にあるホクロは可愛かった。
「……お姉ちゃん?」
「すごいね。これ……どうなっているの?」
 姉がおちんちんに顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん……」
 恥ずかしい、というより、おちんちんは臭いから顔を近づけないで、と言いたかった。だけど、匂いなど気にならないのか、「こんなになるんや。ねえ、これって痛くはないん?」と、姉は眼鏡の鼻当てを人差し指で軽く持ち上げながら、真剣な眼差しで聞いてきた。
「痛くはないけど」
「そうなのね。へえー。あ、皮って、これ? これ、めくれているの?」
 おちんちんの前で喋られると、姉の吐息が睾丸にかかった。
 その刺激で、おちんちんがピクピクと跳ねた。その様子を見て、姉は「うわ、うわ」と上ずった声で叫んだ。珍しい生き物を見たかのように、表情も明るくなっていた。
 ハヤトは姉が狂ったと思った。
 父がこんなことになる前から、姉は毎日がしんどそうだった。それがいまはおちんちんを見て、無邪気に笑っている。
 ハヤトは思い出した。以前、自分が元気になったとたん、姉から言われた言葉を。
「お姉ちゃん、大丈夫? えっと、なんやっけ、あれ……そうや! ソウになっていない?」
 落ち込んでいた人が急に元気になることを、姉はそういう名前の病気だと言っていた。
「なっていないわ。お姉ちゃんは大丈夫やで」
「ほんまに?」
「うん。ねえ、ハヤトちゃん、お姉ちゃんにおちんちんを見られていても、イヤやない?」
 姉が上目遣いで見つめてきた。
「うん。イヤやないけど」
「そっか。じゃあ、お姉ちゃんに教えてくれる?」
「なにを?」
「さっきみたいに握ったら、セーエキというのが出てくるの?」
 ハヤトが言葉を失ったのはいうまでもない。
 白痴だ。
 いろんなことがありすぎて、お姉ちゃんは頭がまともでなくなったのだ、と。
「ねえ、どうなの?」
 ゾクッとするほど姉は瞳を輝かせていた。
「え、えっと。握るだけやなくて、擦らないとあかんねん」
 それでもハヤトは答えていた。
 確かに姉はこれまでと違った。
 おかしくなっているのは間違いなかった。
 だけど、ハヤトは妙な懐かしさも覚えた。
 おちんちんを見て笑っている姉は、あの日の夕暮れ、縁側でパンツも穿かず、おちんちんの絵を見せてきた女の人と似ていた。
 そして、ハヤトはこの夏、そのおかしな女の人にずっと優しくしてもらった。
「へえー。面白そう。ちょっとやってみせて」
 姉は童女のように笑った。
 窓の外ではカナカナカナとヒグラシが鳴いていた。
「いま? お姉ちゃんの前で?」
「うん。さっきみたいにして」
 まだやるといっていないのに、姉はベッドに上がってくると、「ちょっと場所空けて。ハヤトちゃん、足、開いて」と言った。
 言われた通りにすると、姉はハヤトの両足のあいだに座った。
 ハヤトは真正面に座られて、さすがに恥ずかしくなった。
「あ、ティッシュはどこ?」
 姉は辺りを見渡した。
 精液をティッシュに出すことはなぜか知っているみたいだった。
「えっと……」
 ティッシュ箱はハヤトの枕元にあった。 
「あ~、あったあった」
 姉もすぐに見つけて、ティッシュ箱に手を伸ばした。
 ハヤトに覆いかぶさる感じとなって、姉のTシャツの胸元が目の前に迫った。琴子さんに比べたら、半分ぐらいの膨らみだけど、ハヤトはやっぱりドキッとした。
 姉はティッシュ箱から三枚か四枚、ささっと抜き取った。
 それからまた正面に座って、ティッシュを左手に掴んだまま「さあ、早く、早く」と弾んだ声で言った。
 やっぱり姉は楽しそうだった。
 お姉ちゃんが笑っている……。
 ハヤトはいまさら恥ずかしいなんて言えなかった。
 それよりもいまは狂っていようと姉のお願いを聞いてあげたかった。
 聞いてあげないと、本当に姉は壊れると思った。
「わかった」
 ハヤトはおちんちんを右手に掴んだ。
 姉は正面でぺたんこ座りしていた。
 正座に近い格好だけど、足の裏を外に向ける、女の子らしい座り方で、両膝が開き気味になっていた。
 わ、パンツ!
 ハヤトの位置からは、ちょうどプリーツスカートの中が見えた。ツヤツヤとした内股の奥には、逆三角形の白い布があった。
 思えば琴子さんはいつもパンツを穿いていないから、その光景はとても新鮮だった。女の子におちんちんがないことも当然知っているけど、パンツを穿いていると、いっそうそのことが感じられた。ぴたっと薄布がオマタに張りついていた。
 ハヤトは姉に異性を感じた。
 おちんちんがビクンとなった。「あっ」と姉は男の子の元気な反応を見て、眼鏡の奥の瞳をますます輝かせた。
「やるね」
 ハヤトは姉のパンツをこっそり覗きながら、親指と人差し指を輪っかにして、カリ首の部分を握りしめた。
「う、うん」
 姉はおちんちんを見ながら、上ずった声でうなずいた。
 ハヤトは右手をゆっくりと上下に動かした。
 なんや、これ、全然違う!
 姉のパンツを見ているからか。それとも姉に見られているせいか。
 軽く擦っただけでも痺れるような快感が突き抜けた。脳ミソもとろけそうだ。実の姉のパンツを見ながらおちんちんをしごくのが、こんなにも気持ちいいなんて。ハヤトはとんでもない発見をしたような感動に包まれた。
 姉は左手にティッシュを持って、おちんちんの先を凝視していた。
 時々、ハヤトの顔をちらっと見て、目が合うと「気持ちいい?」と聞いてきた。
「う、うん」
 ハヤトは優等生の姉が無防備なことにもゾクゾクした。ペタンコ座りでパンツが見えていることにも気づいていない。そんな隙だらけの姉を見ていると、自然と右手の動きも速くなった。精液が出る前のネバネバとしたものが早くも溢れてきた。
「あ、これがセーエキ!?」
 姉が指差してきた。
「それはまだセーエキやないで。セーエキになる前のお汁みたいなやつで、病気でもないで」
 ハヤトは以前、琴子さんに教えられたことを姉に伝えた。
「そうなのね……あ、見て、先っぽがキラキラしている」
 神秘的な光景を見たように、姉が言う。皮が剥けて、露出したピンクの粘膜にヌルヌルの汁がべっとりとついていた。さらに、
「あ、なに、この音は?」
 夢中でシコるハヤトのそばで、姉は不思議そうに質問してきた。
「えっと、これは」
 くちゅっ、くちゃっ、とヌルヌルが指に絡みつく音だった。
「そっか。このネバネバが指にくっついて、そんな音が出るんや。ねえ、そんなに強く擦っても痛くないの?」
 質問しているのか、独り言なのか、姉はお喋りをやめない。最近、姉から話しかけられることもなかったから、ハヤトはおちんちんをしごきながら、
「うん。全然、痛くないんやで」
 と元気に答えていた。
 ダメな弟だったのに、いまは秀才の姉に教えてあげていることも嬉しかった。
「へえー。ハヤトちゃん、すごい……なんか、男の子って感じやわ」
「ほんま? ああーっ、お姉ちゃん、ぼく、気持ちいい」
「うふふ。ハヤトちゃん……」
 口角を上げて、姉は優しく微笑んだ。
 ハヤトはふわっと気が抜けて、同時にまたしてもビュッと汁が飛び散った。
「あっ。また出た。ティッシュで拭く?」
 姉が待ってましたとばかりに、ティッシュをひらひらさせてきた。
「まだ……!」
「そうなの? 出るとき、ティッシュを使うんやろ? お姉ちゃんが拭いてあげるから、ちゃんというんやで」
「え? お姉ちゃんが?」
 ハヤトは思わず指の動きを止めた。そのときハヤトの視線はお姉ちゃんのスカートの中にあった。
「あっ!」
 姉が反射的に両膝をぴたりと閉じた。
 パンツを覗いていることに気づかれてしまった。
「ハヤトちゃん……」
 姉はキッと睨んできた。
「ごめんなさい」
「いままでお姉ちゃんのパンツ見ながら、おちんちん、こすっていたの?」
「うん……」
「悪い子や」
 姉が琴子さんみたいなことを言った。
「でも……」
「だめ。もう、終わり。おちんちんから手を離して」
「え……」
 生殺しにされて、ハヤトは泣き顔になった。かといって逆らうこともできず、右手を離した。
「かわりにお姉ちゃんがさわるから」
 ハヤトがその言葉を理解する前に、女の幽霊のように白い手がスーッと伸びてきた。
「嘘? あ、あ、あっ!」
 ハヤトは手放しで素っ頓狂な声を漏らしていた。
「熱い……でも、思っていたよりも柔らかい」
 姉は独り言をいいながら、まるでヒヨコのような小動物をさわるような手つきで、弟の棒を握りしめていた。触り方も遠慮がちで、琴子さんのように慣れていなかった。
 だが、逆にそのたどたどしさが、ハヤトにじれったい快感を与えた。
「うはあぁ」
 ハヤトは自分から腰を上下に揺すった。
「あ、ちょっと、ハヤトちゃん……こう? こうしてほしいの?」
 姉は驚きながらもハヤトの腰の動きに合わせて、右手を上下に動かしてきた。
「お、ねえ……ちゃん!」
 ハヤトは絶命寸前の兵士みたいに、声が途切れ途切れになっていた。
 姉の指はスベスベしていて、気持ち良かった。指先が華奢で、手のひらはぷにぷにと柔らかくて、なによりも触り方が優しい。
「大丈夫? 痛くない?」
 姉が心配するように聞いてきた。
「う、うん!」
 ハヤトはそれだけで嬉しかった。
「そう、よかった。えっと……こうするんやっけ?」
 姉が親指と人差し指を輪っかにして、カリ首にひっかけてきた。
 ハヤトの自慰を見て学んでいたのだろう。ほんの少し見ただけで覚えてしまうなんて、さすが頭のいいお姉ちゃんだと感心した。
 さらに、
「あん。こんなにネバネバしているんやね」
 ヌルヌルを指先に絡めて、亀頭を擦ってきた。
「こうやろ? こうしたら、滑りが良くなって気持ちええんやろ?」
 姉は確認しながら、ゆっくりとおちんちんを摩擦する。その目はいつの間にかとろんとなっていた。
「うん!」
 ハヤトはハアハアと興奮の息を荒げながら、強く頷いた。
 自分のネバネバで姉の綺麗な指が光っていた。
 やがて姉は難しい問題を解くように真剣な表情となって、先走り汁がとろとろ出てくる尿道口をまじまじと眺めながら、
「ここは?」
 親指の腹でオシッコの出る穴を撫でてきた。
「うわ、うわ、うわ!」
 ハヤトは電流に打たれたように腰を突き上げた。
「あん! ハヤトちゃん、ヤンチャやね」
 楽しげに言いながら、再びカリ首をヌポヌポとしごく。
「ひぃ! うひぃーー」
 ハヤトは変な声ばかり出てしまう。
「しーっ。静かに」
 姉が左手の人差し指を立てて、自分の口に当てる。
「あうう。ごめん!」
「お母さんに聞こえたら危ないからね……うふふ。ハヤトちゃん、お姉ちゃん、おちんちん触るの、好きになってきた」
 姉は新たな動きをしてきた。もぞもぞと両足を動かして、姉は真正面で体育座りとなったのだ。それもただの体育座りではなかった。
 膝小僧をくっつけながら、膝から下はハの字に開いていた。明らかにパンツを見せつけるような格好だった。
 色白な太腿の裏が露わになり、パンツは菱形に食い込んでいた。
 パンツの真ん中にはうっすらと縦線も入っていた。
「どうしたの? ハヤトちゃん」
 右手でおちんちんを握りながら姉は悪戯な笑みを浮かべて、首を傾げた。
 ハヤトは姉のパンツから目が離せない。
 パンツのきわからはヒジキみたいに縮れ毛も出ていた。アソコの毛が生えていることを知り、姉も琴子さんと同じ大人の女性なんだと思った。
 ハヤトは興奮しすぎて、頭の血管まではちきれそうになった。
 姉の指の動きがどんどんリズミカルになってきた。シュッシュッシュッと、カリ首だけでなく、おちんちんのてっぺんから根元まで、指の腹を滑らせるように摩擦する。
「うううっ!」
 ハヤトは全身を硬直させながら、必死に声を堪えた。少しでも力を緩めると、変な声が出そうだし、あっという間に我慢の限界がきて精液もドバドバ噴出しそうだ。
 ハヤトは両脚を大の字にして、つま先をぴんと伸ばしていた。
「あん。元気なんやね。なんか別の生き物みたい」
 姉に言われて気づいた。姉の指のなかでおちんちんはビクビクと跳ね回っていた。
「お姉ちゃん!」
 全身の毛穴がぶわぁと開くような開放感に包まれて、ハヤトはたまらず声を張り上げた。
「あ、あ、すごい。おちんちんが、すごく硬くなってきた!」
 姉がパンパンに膨張したペニスを強く握りしめながら、絞るようにしごいてきた。
「うはああ」
 ハヤトはもう限界だった。
 姉におちんちんを握られたまま、腰をぐわんぐわんと上下にバウンドさせていた。気持ち良すぎて視界がぼやけていた。姉のオマタに張りつく白いパンツしか見えなくなっていた。頭の中まで、パンツの白に支配された感覚だ。
「イク!」
 ハヤトは叫びながら、ブリッジするように腰を浮かせて、硬直した。
「あっ!? うそ!? あ、あ、あああ」
 姉の悲鳴が聞こえるなか、ハヤトは自分の体がバラバラに弾けるほどの衝撃に見舞われていた。
 ドビュビューーーッ! びゅるるっ、びゅっ、びゅっ、びゅっ、ぴっ、ピッ、ピッ!
 ハヤトはブリッジ体勢のまま、精液を立て続けに飛ばしていた。それらはハヤトのはるか頭上を越えて、後ろの白壁に音を立てて直撃していた。
「ええ!? こんなに飛ぶの!?」
 姉は叫んだ。
 それでもおちんちんから手を離さなかった。
 精液はハヤトの顔にも降りかかっていた。
 弟の顔が白濁液まみれになって、姉はやっと我に返ったのか。
「ごめん!」
 慌ててティッシュでおちんちんの先を抑えてきた。
 ハヤトはすさまじい射精快感に頭の中が真っ白になって、もう言葉が出なかった。姉の右手に包まれるおちんちんを激しく脈打たせながら、ティッシュに大量の精液を吐き出していた。
 射精を終えたあとも、信じられない気持ちのまま、ぐったりと目を閉じていた。
「大丈夫!? ごめんね。ビックリして、ティッシュでおさえるのを忘れていたわ」
 うっすらと目を開けると、姉がいまにも泣きそうな顔で見下ろしていた。
 それから枕元のティッシュ箱から新しいティッシュを数枚抜き取って、ハヤトの顔を拭いてきた。
「お姉ちゃん」
 ハヤトはぼんやりとした目で姉を見て、自然とニタニタしていた。
「もう……なんで、笑っているのよ~」
 ハヤトが笑っていると、姉も安心したように冷やかしてきた。
 やっぱり、唇のホクロは可愛かった。
 それから姉はホクロを隠すように、ティッシュを鼻先に当てた。
「あ、ほんまや。イカ臭い……」
 どこで知ったのかわからないけど、納得したように姉は呟いていた。




琴子 表紙


「寂しい人ほど、寂しいところが好きなのよ」
縁側でいつも変な絵を描いていた女の人は、ココロの病気だった。
美人だけど右目と左目の大きさがちょっとだけ違った。
一人ぼっちだった僕と一緒にお昼寝もしてくれた。
起きると、そうめんを作ってくれた。
夕立が来たときは「せーの」と声をかけあって雨戸を閉めた。
ここは寂しいところだったけど、二人でいるから一人じゃなかった。



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あらすじ

ある日、漫画家・成田アキラ氏のもとに、一本の電話がかかってきた。
「実は私、数年前から糖尿病でアッチがダメなんです。女房との夜の営みもすっかりなくなっていまして。しかも、恥ずかしながら私はこれまで一度も女房をイカせたことがないんです。なんだかねー。このままだと女房が不憫で……」
いわゆる〝寝盗られ希望〟だった。
そして、その一度もイッたことのない奥様というのが、今年で69歳の超熟女だという。
成田氏はもちろんOKした。
しかし、69年間、一度もイッたことのない超熟女。絶頂に導くことなどできるのだろうか。



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本文より抜粋


 ご主人一筋で、いまだにイッたことのない六十九歳の超熟女である。そのうえ、ご主人以外の男性と肌を合わせるのも初めてなのだ。そう簡単にうまくコトが進むようには思えない。
 そこで私は事前に、貸切の露天風呂を予約していた。つまり、混浴である。
 温泉で二人きり、心地良い湯に浸かりながら、裸で語り合う時間を持つことで、キヨミさんに少しでもリラックスしてもらおうと考えていた。
 個室の露天風呂を予約できたのは、午後七時から午後八時までの一時間だった。
 私たちは早めの夕食を取って、時間がきたところで、露天風呂へ向かった。
 そこは前方に相模湾が望める露天風呂だった。暗くなっていたため、海は見えなかったが、空には無数の星が散らばっていた。
 照明は岩風呂の近くに設置された豆電球のみで、幻想的な雰囲気だった。
 暗い海では漁船が光っていた。
 私は先に湯船へ入った。背後でキヨミさんが浴衣を脱いでいた。「恥ずかしいから振り向かないでくださいね」とお願いされていたので、私は漁船の光を眺めていた。
 やがて背後でかけ湯の音がして、それからキヨミさんも湯船に足をつけてきた。
 私は視線を向けた。
 もうもうとたちこめる湯けむりのなか、生まれたままの姿のキヨミさんがいままさに湯船に浸かろうとしていた。
 六十九歳とあって、乳房は垂れて、腹の贅肉も弛んでいたが、やはり乳首は綺麗なピンク色で、陰毛は年齢のわりに濃かった。
「この歳になって、主人以外の男性の前で裸を見せるなんて、少し前までは想像もしていなかったわ」
 キヨミさんは裸体を隠すように、肩まで湯船に浸かった。
「とても綺麗ですよ」
「いやだわ、そんなこと言って……」
「いえ、本当です。変な言い方になってしまいますが、キヨミさんぐらいの年齢の方ほど、外で裸になるのが似合うんですね」
 私は思ったことを口にしていた。
「ええ? どういうこと?」
 キヨミさんは驚いて目を丸くした。
「自然な色気と味わいがあるように思うんです」
「やだわ。変なことをいって……でも……」
 湯けむりを見上げるように、キヨミさんは空を仰いだ。
「こうやって外で裸になると、自然の力を得られる感じがしますわ」
 このときのキヨミさんの穏やかな表情も忘れられない。
 私も八十代になって思うのだが、年齢を重ねるほど、自然が好きになった。
 静かな夜の海、草木の香り、白い龍のように舞う湯けむり、虫の声、掛け流しの湯の音……。こうした自然のなかにいると、自分の「生」を感じることができるのだ。
 もちろん、この頃の私はそんなことまで思えなかったものの、それでも夜の露天風呂に浸かって、うっとりと目を閉じているキヨミさんを見ていると、彼女はいま自然と一体化して、心身とも活力がみなぎっているように感じた。
「少しノボせたわ」
 キヨミさんが湯船から立ち上がり、岩風呂の縁に腰掛けた。
 老いた裸体を堂々と見せてきた。
「そうですね」
 私も同じように岩風呂の縁に腰掛けた。
 並んで座る形となったところで、私はキヨミさんの腰に手を回した。
「アァ、成田さん……」
 キヨミさんは体を寄せてきた。
 確かに傍から見れば六十九歳のキヨミさんはおばあちゃんである。しかし、か弱い声で囁いて、ご主人以外の男に身を預けてくる姿は私から見れば、ロマンチックな乙女であり、とても魅力的で可愛らしかった。
 私はムードに流されるまま、キミヨさんの唇を奪った。
 豆電球のみの光のなか、キヨミさんは目を閉じて、それを受け入れた。
 抱き寄せると、湯に濡れた体がしっとりと張りついた。
 掛け流しの湯の音が聞こえるなか、私たちは舌を絡め合った。
 キヨミさんは緊張と興奮が同時に押し寄せたように吐息が荒くなっていた。
 海からの風が私たちの肌を愛撫するように撫でてきた。
 どれくらいキスをしていただろうか。いつの間にか私はペニスがしっかりと勃っていた。私はキスをしながら、キヨミさんの片手を掴んで、屹立へ導いた。
「アッ」
 キスに夢中のキヨミさんは、私が勃起していることに気づいていなかったのだろう。硬い肉を手のひらに包み込んだ瞬間、息を飲むような声を漏らした。
 私はそのまま握らせて、舌を差し込んでいった。
 すると、キヨミさんは体が思い出したように、ペニスをやわやわとしごき始めた。ご主人は勃起不全である。だから、硬くなった男性器を触ること自体、久しぶりだったのだろう。
「アァ……すごいわ」
 キヨミさんはキスをしながら、感動したように呟いた。
 カリ首のくびれや、裏筋の血管を確かめるような優しい手つきだった。
 超熟女の手淫に私はしばし酔いしれた。
 キヨミさんも飽きることなく、キスをしながら、手をゆっくりと動かし続けた。
 潮風にあおられて湯けむりがキヨミさんの全身を包み込む。ほんの一瞬、ペニスをしごくキヨミさんが二十歳ぐらいの若い女性に見えた。夜の露天温泉という幻想的な雰囲気が私にそのような錯覚を起こさせたのか。
 ようやくキヨミさんがペニスから手を離した。そして、私の目を熱っぽく見つめて、「そろそろお部屋に戻りませんか?」と言ってきた。
 超熟女は自然のなかで発情する、ということを知った瞬間でもあった。
 部屋に戻るなり、私たちは裸になって布団のうえで抱き合った。


【本編はこちらから】

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作品紹介

女は熟しているほどエロい。
熟れた肌に、母のような優しさ、柔らかい膣粘膜。
そして肉体は衰えても、男に自信を与えてくれる卓越した性感。
実際、いまAV業界でも60歳以上のセクシー女優たちが大人気だ。
かつては「おばあちゃん」と呼ばれた還暦熟女たちが、息子ほど年下の男性から同世代のシニアまでを虜にしているのだ。
本書は、これまで100人以上の超熟女(60歳以上の女性)とSEXしてきた漫画家・成田アキラの体験談をもとに、郷愁の官能作家・柚木怜が執筆する官能小説である。
ファンタジー小説にはない、実話ならではの生々しいエロスに満ちあふれている。
さらに、超熟女の抱き方作法も伝授。SEXハウツー本としても役に立つだろう。
これを読めば、あなたも「素晴らしき超熟女エロスの世界」がわかるはずだ。
『覗かれ快感』『寝盗られ美学』と大好評の〝おとな哲学〟シリーズ第三弾!

収録作品

「映画館でフェラチオをしてきた63歳の人妻」
「お姫様ベッドで抱かれたがる67歳のママ」
「茶道の先生(61歳)は言葉でなぶられたい」
「69歳の寝盗られ熟女と温泉へ」
「最高年齢76歳 超熟女の抱き方作法」

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あらすじ

体験漫画家・成田アキラ氏のもとに、61歳の女性から連絡があった。
彼女、ユリさんは結婚25年目の人妻で、茶道教室の先生をしているという。
ご主人との性生活に不満を持っており、その理由を尋ねると……。


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 いまから十年ほど前である。
 私もすでに七十代になっていた。
 ユリさんは茶道の先生で、結婚二十五年の人妻であった。スケベ漫画家の私とは無縁の世界で生きているような茶道の先生がなぜ? と思われるだろうが、彼女のほうから、私に電話をかけてきたのだ。
 ご存じのない方のために説明しておくと、私は仕事部屋に読者専用の電話を設置して、番号を公開している。セックスをしたい女性を始め、寝盗られたい男性などを受け付けており、私にとっては重要な出会いのツールで、読者専用の電話で出会った女性との性経験も数多く漫画に描いてきた。
 ユリさんはご主人が持ち帰ってきたスポーツ新聞で私の連載を見つけて、それ以降、隠れファンになったという。
「成田先生の連載で脳感エクスタシーの話を読みまして。私、読みながら『これよ、これがしたいの』と思ったんです。それでどうしてもお電話で相談したくなって」
 聞くと、五歳年下のご主人とはいまもたまに夫婦の営みはあるものの、いままで一度もイケたことがないという。
「うちの主人は肉体の快感だけを与えようとするんです。女性は乳首とクリトリスとアソコを刺激すれば気持ち良くなると思い込んでいるところもあって、いろんなアダルトグッズを買ってきて、責めてくるんですけど、正直、全然気持ち良くないんです。だって、黙々と作業のようにやるんですもん。アレを入れたあとも同じ。無言でひたすらに突いてくるだけだから、ホント、いつも苦痛で仕方ないんです」
 こんな悩みはスケベ漫画家の私にしか打ち明けられないのだろう。ユリさんは電話口で熱心に喋っていた。
「なるほど。ユリさんはもっと脳感を刺激されたいんですね」
「そうなんです。それに最近、私も六十歳を過ぎたせいで、アダルトグッズや男性のアレで強くされると、痛いんです。性交痛というやつです」
「わかりました。ユリさんがよければ、一度お会いしませんか?」
「本当ですか? 成田先生、お忙しいのでは?」
 先にも述べた通り、超熟女は話が早い。
「大丈夫です。全国どこにでも行きますよ。北海道ですか? それとも沖縄の離島? もしかして、海外?」
 私は彼女の緊張をほぐすように冗談を言った。
「アハハ。残念ながら、東京都内です」
 電話口で楽しげに笑うユリさんの声を聞いて、私もいっそう会うのが楽しみになった。
「近所じゃないですか。だったら、明日の午後とかどうですか?」
 あとがないという考えも強いから、超熟女はなるべく早く会ってあげたほうがいい。
「え~? 話が早いですねー。明日、大丈夫です。でも、いきなりすぎて、ちょっといま夢を見ているみたいです。勇気を出して、電話してみて良かったです」
 トントン拍子で話は決まり、翌日、私はユリさんと五反田で待ち合わせした。
 冬めいてきた時期だった。
 茶道の先生だから勝手に和装のイメージをしていたが、ユリさんは黒のコートにカーキ色のロングスカートという洋装で、縁なしの知的な眼鏡をかけていた。還暦を過ぎても年下のご主人から求められるように、お淑やかな和風美女で、艶っぽさもあった。また、歳のわりに毛量が多く、六十代にしては珍しい綺麗なロングヘアを保っていた。
 ユリさんは私と会うなり「すごい。漫画と同じ顔なんですね。嬉しいです」と言った。
「いやあ、俺ももう七十歳なんだけど、スケベな顔のまま! 全然、貫禄がないでしょー」
「ウフフ。漫画で見る顔よりも、エッチな感じがにじみ出ています」
「それは俺にとって褒め言葉だね。どうします? 今日はどれぐらい時間あります?」
「三、四時間ぐらいでしたら」
「では、とりあえず温かいものでも飲みましょうか」
 私たちはひとまず駅前のカフェで小一時間ほどお喋りをした。
 いくら超熟女は話が早いといっても、いきなりラブホテルに向かうのは良くない。これは初対面の女性に限らず、何度会っている女性であっても同じだ。会ってから一時間は手を出さないほうがいい。言い換えれば、一時間で充分だ。この一時間があるだけで、女性の緊張はだいぶほぐれるのだ。
 カフェを出たあと、私はラブホテルへ向かった。ユリさんも覚悟していたとはやはり恥ずかしかったのだろう。ラブホテルに入るまでは、先ほどまでのお喋りが嘘のようになりをひそめて、黙ってついてきた。
 だが、そこは超熟女。部屋で二人きりになったとたん、ユリさんは「緊張しますわ」と言いながらも、ラブホテルに入ること自体、久しぶりだったのだろう。広々としたバスルームに感動して、豊富なアメニティにやたら感心して、乙女のようにはしゃいでいた。
 順番にシャワーを浴びて、照明を落として、ベッドインした。
 ユリさんは細身の超熟女だった。太腿こそムッチリしているものの、お腹にもあまり脂肪がついておらず、お尻も小ぶりだった。乳房もCカップほどなので、綺麗なお椀型を保っていた。
 早速、私はユリさんの脳感を刺激することにした。
「ユリさん、これで目隠しをしていいかい?」
 アイマスクを事前に用意していた。
「え? あ、はい……」
 ユリさんは素直に従った。部屋もすでに暗いうえ、アイマスクをすれば、彼女は完全な闇に包まれたはずだ。私は彼女の耳元で、
「これからユリさんは、近所に住むスケベな爺さんにいやらしいことをされるんだ。こうやって、なにも見えない状況のなかで……」
 低い声で囁くと、ユリさんはたちまち肢体をビクッとさせて、
「アァ……いや……」
 か弱い声を漏らして、一気に私の設定した世界に入り込んでくれた。
 私はユリさんが見えていないことをいいことに、そっと頬を撫でたり、腰周りに手を這わせたり、耳に熱い息を吹きかけたりした。
「ああっ、だめ……いやらしいことしないで」
「だって、ユリさんが可愛いから仕方ないじゃないか。フフ、どうしたの? 体がビクビクしているねえ。こんな七十歳の爺さんにいたずらされて、もしかして感じているのかい?」
 常に言葉責めをしながら、私はユリさんの全身のあらゆるところを舐め回していく。
「ああん! 感じていないもん! アアァ、感じていないわ」
 普段は茶道の先生をしているユリさんとは思えないほど、可愛らしい声で悶える。小ぶりな熟乳とは不釣り合いな大粒でピンク色の乳首も、まだ触っていないのにツンと勃起していた。
「そうだよなぁ。感じるわけがないよな? こんな爺さんに犯されて、気持ちいいわけないよな?」
「当たり前よ。アア、感じないわ。こんなので……アアッ、いや、焦らさないで。意地悪しないで~」
 ユリさんはすっかりブリッコになっていた。
 両脚ももどかしげに擦り合わせていた。
「意地悪? 意地悪ってこういうこと?」
 スケベ爺キャラになりきって、私は乳首に吸いついた。
「アアーーーーッ!」
 なにをされるかわからない状況で、いきなり乳首に刺激が走って、ユリさんは上半身をのけ反らせた。
「なんだ、すごく感じているじゃないか? ご主人もいつも乳首を責めてくれるんだろ?」
 あえて旦那のことを持ち出して、さらに彼女の脳感を高めていく。
「だめぇ~。言わないで」
 媚びるように喚く声は若々しくて張りもあった。
「おーおー、可愛い声だねえ」
 いやらしい言い方で褒めながら、私は乳首責めを続ける。
「ああーーーっ!」
 打てば響く反応で、ユリさんは激しく身もだえする。
 擦り合わせる両脚を見ると、内股が光っていた。
 まだ六十一歳とはいえ、還暦を過ぎた超熟女らしからぬ濡れっぷりだ。
「なんだ、これは……ユリさん。オモラシか?」
 私はいよいよ両脚を掴んで、軽く広げさせた。
「見ないで。見ないで~」
「ほーら、丸見えだ。おーおー、いやらしいねえ」
 髪の毛もふさふさの彼女は陰毛もまだまだ剛毛だった。
 超熟女でありながら、夏草のようにびっしり茂ったアンダーヘアからは逞しい生命力も感じられた。私はその陰毛をかき分けた。そこにはやはり超熟女らしいピンクの秘貝があった。
「ピンク色のオマンコだねえ。いままで何人の男のチンポをここで気持ち良くしてあげたの?」
 色素が薄くなった熟穴に向かって、私は息を吹きかけるように呟いた。
「あ、ああ、あああっ! だめ、あ、あッ」
 ユリさんはあろうことか、それだけで全身を硬直させた。
 卑猥な割れ目がヒクヒクと収縮していることが、暗がりのなかでも見て取れた。
 軽くイッてしまったかのようだった。
「どうしたの? まさかイッたんじゃないだろうね? こんな爺さんにオマンコを見られただけで」
「ち、違う。違います……あぁ、先生、お願い、もう!」
「なんだい?」
「ああ、言わせないで。お願いします」
 ダダをこねるように、ユリさんは腰を振ってきた。
「言わないと、わからないね」
「アアッ、意地悪。舐めて、舐めてください」
「どこを?」
 私は舌を伸ばせば淫裂に当たる距離まで、顔を近づけていた。
「……アァ、おまん……おまんこ、舐めてください!」
 そう口にした瞬間、超熟女の花園からは甘い果実のような発情臭がきつく匂った。私も辛抱たまらず、成熟しきった粘膜にむしゃぶりついた。
「ひいいーーーっ! いくう、イクウーーーーッ」
 クンニされるや、彼女は金切り声を放って絶頂した。一度もイッたことがない、なんて嘘のように、そこからは立て続けに「イク!」という言葉を連呼した。
 私はその乱れっぷりに多少驚きつつ、ユリさんが「もう許して!」と懇願するまで愛撫をしてから、正常位の体勢と入った。
 肉棒をぬめった秘口にあてがいながら、
「ほら、これが今から入るんだぞ。今からこれで犯されるんだぞ」
 性交痛であることも意識しつつ、私はあえて乱暴な言葉を使った。
 超熟女の彼女なら、うまく脳内で転換できると思ったからだ。
「アアッ、だめ。犯さないで……」
「無理矢理、入れてやるからな。痛いかもな」
「ハア、あぁ、犯されちゃう……ああッ、犯されちゃう。私、犯されちゃう」
 そう自分に言い聞かせるユリさんは自然と両脚の力が緩んでいた。
 私は「犯すぞ、犯すぞ」と脳に刻み込むように言いながら、ゆっくりと挿入した。
「アアアアッ! 気持ちいいっ!」
 あろうことか、先端が入っただけで、ユリさんは快感を口にした。
「気持ちいいのか? 犯されているんだぞ」
 心の中でホッとしつつ、私はそのままいやらしいスケベ爺に徹した。
「いいです。気持ちいいです! もっと突いてください!」
 ユリさんはついにオネダリまでしてきた。
「ほら! ほら! ほら!」
 私はかけ声を出しながら、スローピストンしていた。私だって七十歳となれば、若い頃のような激しい動きはきつい。
 だが、こうやって言葉責めを交えて、脳感を刺激しておけば、女性は激しく突き上げられているような錯覚に陥るのだ。
「はああんっ! はあーっ、アアアアッ! 壊れる、壊れますーっ!」
 脳感状態のユリさんのなかでは、自分が壊れるほどの逞しいピストンに変換されていたのだろう。そんな彼女は最後まで痛がることがなかった。
 肉体ではなくて、頭のなかでSEXをしているからだ。
 そして、ついに彼女は脳感エクスタシーに達した。
「はあーーっ、すごっ、すごい! はあーーっ、なにこれ! アアーーーーッ!」
 絶頂の瞬間にはGスポットが膨張して、私のペニスを強く締めつけていた。
 ユリさんのアクメに合わせて、私も限界がきた。
 私も脳感状態だったため、射精時には精液が勢いよく噴出する、若かりし頃のような力強い雄の快感を得ることができたのだ。
 このように肉体は衰えても脳感が卓越していれば、何歳になろうと性を謳歌できるのだ。


【本編はこちらから】


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作品紹介

女は熟しているほどエロい。
熟れた肌に、母のような優しさ、柔らかい膣粘膜。
そして肉体は衰えても、男に自信を与えてくれる卓越した性感。
実際、いまAV業界でも60歳以上のセクシー女優たちが大人気だ。
かつては「おばあちゃん」と呼ばれた還暦熟女たちが、息子ほど年下の男性から同世代のシニアまでを虜にしているのだ。
本書は、これまで100人以上の超熟女(60歳以上の女性)とSEXしてきた漫画家・成田アキラの体験談をもとに、郷愁の官能作家・柚木怜が執筆する官能小説である。
ファンタジー小説にはない、実話ならではの生々しいエロスに満ちあふれている。
さらに、超熟女の抱き方作法も伝授。SEXハウツー本としても役に立つだろう。
これを読めば、あなたも「素晴らしき超熟女エロスの世界」がわかるはずだ。
『覗かれ快感』『寝盗られ美学』と大好評の〝おとな哲学〟シリーズ第三弾!

収録作品

「映画館でフェラチオをしてきた63歳の人妻」
「お姫様ベッドで抱かれたがる67歳のママ」
「茶道の先生(61歳)は言葉でなぶられたい」
「69歳の寝盗られ熟女と温泉へ」
「最高年齢76歳 超熟女の抱き方作法」


Kindle





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 本日より新刊『超熟女エロス』(匠芸社)が発売されます。
 こちらは、漫画家・成田アキラさんとの共著となります。

 成田先生とは、これまで『覗かれ快感』『寝盗られ美学』と2冊の本を出版してきました。毎回、僕が成田先生のアトリエを訪れて、お話を聞かせてもらったうえで、執筆するというスタンスでやっております。

 ご年配の方ならご存じだと思いますが、成田先生は一時代を築いた漫画界の大御所です。若い頃は、手塚治虫さんのアシスタントをされていて、26歳で漫画家デビューされるものの、泣かず飛ばず。当時は、SFものや易しい科学漫画などを描いていらっしゃいました。

 転機が訪れたのは、40歳になってから。当時大流行していた「テレクラ」で知り合った女性たちとの性体験を描くようになって、大ブレイク。

 以前にも少し書きましたが、僕はいまから24年前、成田先生と出会いました。
 僕が26歳で、成田先生は57歳。
 初めて会った場所も、いつも取材に訪れているアトリエでした。
 駆け出しのペーペーライターだった僕と、すでに大成されていた成田先生。
 年齢も親子ほど離れていましたが、会うなり、意気投合しましたね。エロいことに人生を賭けているところが、ソックリだったのです。
 ちなみに、僕が成田先生に呼ばれた理由は、45歳の人妻さんに「ヌカズの三発」をやってほしいというものでした。
 ヌカズの三発とは、一度射精後も膣にペニスを挿入したまま、ムクムクと復活させて、再び射精。これを三回繰り返すという性行為です。
 成田先生が「さすがにこの年で、ヌカズの三発は出来ないから、誰か代わりにやってくれる若い奴はいないか?」と担当編集に相談したところ、その頃、エロライターとしてイケイケだった僕にお鉢が回ってきたわけです。
 もう一つ付け加えると、この時、成田先生の担当だった編集者さんが、その後、僕を『週刊大衆』で官能作家デビューさせて、〝柚木怜〟というペンネームの生みの親になるのだから、人生とは本当に縁だなぁ、とつくづく思います。
 そんな僕と成田先生を出会わせた〝ヌカズの三発〟がどうなったかについては、『寝盗られ美学』という作品でみっちり書いていますので、ご興味がありましたら、読んでくださいませ。

 その後も僕は、成田先生に呼ばれて、人妻さんと3Pしたり、大型犬用の檻で飼われたいという人妻さんを鑑賞しにいったり、いろいろエロいことをしてきました。
 また、日刊スポーツでも成田先生とコンビを組んで、5年以上、毎週連載をしていました。その連載は、いまのこの「おとな哲学」シリーズの原型で、成田先生の体験談を官能作家の柚木怜が執筆するという形でした。

 思えば、本当に長いこと、一緒に仕事をさせてもらっています。
 
 「おとな哲学」シリーズは今年の夏から始めました。

 実はその頃、僕は書き手として、ちょっと行き詰まっていた感もありました。週刊誌の記者をしながら、官能小説も年に3冊ほど出せているものの、それがルーティーンになってしまい、何か刺激が足りない。感動が足りない。書いているときの苦しさや、書き終えたあとの達成感が足りない。

 そんなふうに思いはじめていたとき、元格闘家のジャーナリスト・片岡亮さんと久しぶりに会って、「二人で本を出さないか」という話になりました。これが僕にとっては一つの転機で、めちゃくちゃ楽しかったんですね。片岡さんとは手始めに『性介護島』という本を出しました。(現在、二作目を執筆中です。今回は本格ホラーとなります)

 共著、めっちゃおもろいやん! 
 誰かと組むことで、自分ひとりでは思いつかない表現や展開、構成が出てくるので、感動があることを知りました。
 7月に出版された、熟女フェチモデルの神崎まゆみさんとの共著『オーダーメイドフェチ 完全版』もその一つです。

 僕は30年間、週刊誌の記者をしてきたので、人脈だけは豊富です。セクシー女優さんから女医さん、SMクラブの女王様といった女性陣を始め、男性陣ならAV男優さんや、世界各国の風俗に潜入しているジャーナリストさんん、都市伝説や未解決事件を調べているライターさんなど、面白いネタを持っている人は沢山います。

 もっと共著で本を出していこうと思った時、真っ先に思い浮かんだのが、成田先生でした。
 成田先生は約1500人の女性と性体験をしています。これほどの「生きたSEXデータ」はありません。ましてやエロに関しては、とにかく気が合うので、成田先生の「性哲学」を文章として残していきたいと思ったのです。

 今回のおとな哲学シリーズ第三弾「超熟女エロス」は、60歳以上の女性との性体験を書いたものとなります。
 実を言うと、『超熟女エロス』は、成田先生と共著を出そうと思った時から、ぼくの頭のなかにあったタイトルでした。
 高齢化社会のいまだからこそ、超熟女の素晴らしさを伝えるべきではないかと。
 ただ、そうはいっても、成田先生との共著で一発目から超熟女で攻めるのは、けっこうな博打だな、と思ったのも事実。
 そこで先に一般受けしそうな二作を出してから、いよいよ満を持して、『超熟女エロス』となったのです。

 いま、AV業界でも〝還暦熟女〟や〝六十路妻〟といったタイトルの作品が急増しています。60代のセクシー女優さんも人気です。

 実際、僕も今回、成田先生から話を聞いて、原稿を書いていると、どんどん超熟女はエロくて、そして可愛い、ということがわかってきました。

 なんというか、やはり人生の酸いも甘いもかみ分けてきた女性ならではの、優しさと味わいがあるように思うのです。
 そして、もう一つ。今回、『超熟女エロス』を書くなかで思ったのは、何歳になってもセックスは楽しめるものだということです。

 本書のテーマでもあるのですが、
 肉体は衰えても、精神は歳を取らない、ということが、超熟女のセックスを通して見えてくるのです。

 成田先生も、僕も、セックスは「脳」で楽しむもの、という考えです。
 いつも同じ相手であれ、歳を取っていようと、頭のなかでさまざまな妄想やシチュエーションを高めれば、興奮はできるのです。
 僕もパートナーとのセックスでは、毎回、さまざまな設定で楽しみます。時には学校の先生と生徒、大物作家と若い女性編集者、痴漢のおじさんとOLさん、というようにキャラを決めて、お互いなりきることで、セックスは毎回、刺激的になり、マンネリを感じることもありません。
 もっといえば、僕はいま50歳なのですが、25歳の女性とセックスをしているとき、よく「少年」になりきってきます。すると、実際は25歳年下の女性が、セックスの最中だけは「綺麗なお姉さん」に見えてくるので、また違った興奮が高まるのです。

 話が少し逸れましたが、「肉体は衰えても、精神は歳を取らない」ということは、すなわち、人間とは死ぬまでセックスを楽しめるのです。僕が今回、超熟女エロスを書くなかで、一番伝えたいと思ったことです。

 もちろん、それ以外にも超熟女の魅力は沢山あります。

 本書では、7~8人の超熟女が登場するのですが、どの方もそれぞれ違って、それぞれの人生があって、それぞれのセックスがありました。
 
 いくつか僕がゾクッときたシーンを引用したいと思います。

 まず、当時46歳だった成田先生が、67歳のスナックのママとラブホテルに入った時のシーンです。


シャワーから出てきたリツコさんを見て、私は目を丸くした。彼女は黒のキャミソールをまとっていた。太腿まで隠れるロングのキャミソールであったが、胸元に鮮やかな花の刺繍の入った下着だった。勝負下着でもあるのだろう。

「すごくセクシー」

 実際、六十路のボディと黒のキャミソールは似合っていた。

「そう? いろいろと悩んだんだけど……これが一番、恥ずかしいところを隠せるから」

 リツコさんは照れ笑いしながら、お腹のあたりを手でおさえていた。



勝負下着で熟した体型を隠そうとする、この女心に、男性はソソられるのではないでしょうか。

 

 また、成田先生が70歳になったとき、61歳の茶道の先生を抱いた時のシーンでは、こんなこともありました。

 「だって、ユリさんが可愛いから仕方ないじゃないか。フフ、どうしたの? 体がビクビクしているねえ。こんな七十歳の爺さんにいたずらされて、もしかして感じているのかい?」

 常に言葉責めをしながら、私はユリさんの全身のあらゆるところを舐め回していく。

「ああん! 感じていないもん! アアァ、感じていないわ」

 普段は茶道の先生をしているユリさんとは思えないほど、可愛らしい声で悶える。小ぶりな熟乳とは不釣り合いな大粒でピンク色の乳首も、まだ触っていないのにツンと勃起していた。

「そうだよなぁ。感じるわけがないよな? こんな爺さんに犯されて、気持ちいいわけないよな?」

「当たり前よ。アア、感じないわ。こんなので……アアッ、いや、焦らさないで。意地悪しないで~」

 ユリさんはすっかりブリッコになっていた。


 まさに、脳で感じるセックス。言葉攻めをされて、「感じてないもん」と拗ねたように、甘えた声で悶える超熟女。これもたまらないギャップです。

 

 そして、成田先生は50代半ばの頃、76歳の超熟女とも関係を持っているのですが、ここもまた素晴らしいエロスでした。

  私は唇を奪った。すると、フミさんは「あぁ、いけません」と拒否の言葉を呟きながらも唇を受け入れた。

 しかし、私は目を見張った。

 キスをしただけで、フミさんはガクガクと全身を震わせて、半分白目も剥いていた。

 驚いて私はキスを中断した。

「ハア、ハア、アァ……ハア、ハア」

 フミさんは呼吸がすこぶる荒くなっていた。

「大丈夫ですか?」

「え、ええ……キスなんて一生しないと思っていたから……成田さん、いまので充分です。私、これ以上されたら本当に興奮しすぎて死んでしまいますわ」




 もちろん、本書ではこれら以外にも、様々な超熟女たちの人生模様エロ模様が展開されています。

 

 

 最後に、ちょっと裏話。

 最近、毎月のように僕は成田先生のアトリエへ遊びに行っています。成田先生は今年で81歳なのですが、いつも元気溌剌で、しょっちゅう貴重な蝶を追いかけて、虫取り編みを片手に野山を駆け回っています。本当に少年のように生きていらっしゃるんですね。

 また、成田先生はゲームも大好きです。漫画を書く部屋の奥には、ゲームの部屋があり、以前はよく漫画を書き終えると、そこでプレステのゲームをされていました。僕も何度か一緒に遊ばせてもらいました。

 成田先生と遊んでいると、男って何歳になっても、ガキンチョのままでいられるんだな、と思えて、嬉しくなります。

 もちろん、女性も何歳になっても、乙女です。

 どれぐらい乙女かといえば、『超熟女エロス』を読んでもれえれば、わかると思います。

第一章

 絵 成田アキラ


 

 

『おとな哲学 超熟女エロス』

匠芸社

 

定価 660円



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作品紹介

女は熟しているほどエロい。
熟れた肌に、母のような優しさ、柔らかい膣粘膜。
そして肉体は衰えても、男に自信を与えてくれる卓越した性感。
実際、いまAV業界でも60歳以上のセクシー女優たちが大人気だ。
かつては「おばあちゃん」と呼ばれた還暦熟女たちが、息子ほど年下の男性から同世代のシニアまでを虜にしているのだ。
本書は、これまで100人以上の超熟女(60歳以上の女性)とSEXしてきた漫画家・成田アキラの体験談をもとに、郷愁の官能作家・柚木怜が執筆する官能小説である。
ファンタジー小説にはない、実話ならではの生々しいエロスに満ちあふれている。
さらに、超熟女の抱き方作法も伝授。SEXハウツー本としても役に立つだろう。
これを読めば、あなたも「素晴らしき超熟女エロスの世界」がわかるはずだ。
『覗かれ快感』『寝盗られ美学』と大好評の〝おとな哲学〟シリーズ第三弾!

収録作品

「映画館でフェラチオをしてきた63歳の人妻」
「お姫様ベッドで抱かれたがる67歳のママ」
「茶道の先生(61歳)は言葉でなぶられたい」
「69歳の寝盗られ熟女と温泉へ」
「最高年齢76歳 超熟女の抱き方作法」



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プロフィール


成田アキラ

1945年生まれ。漫画家。日本艶主党党首。
26歳で漫画家デビュー。手塚治虫氏のアシスタントも務め、SFものや易しい科学漫画などを描いていた。1980年代半ばより「テレクラ」で知り合った女性との性体験を漫画で描くようになり、大ブレイク。「テレクラ漫画」というジャンルを確立し、週刊誌を始め、数多くの雑誌で連載。単行本も多数。
現在までの女性経験は1500人以上。漫画のなかでも女性の心と体に寄り添った実践的な多岐にわたる性愛テクニックを盛り込み、「V筋責め」や「処女膜無痛貫通法」などはとくに有名。また、温泉マニアで、全国津々浦々の有名温泉から、知る人ぞ知る秘湯をいまも巡っている。



柚木怜

1976年生まれ。官能作家。ライター。
フリーランスの記者として性風俗を始め、さまざまなエロの現場を取材。20代半ばで『週刊大衆』で漫画を連載していた成田アキラ氏と出会い、エロの師として仰ぐ。成田氏と組んで、イラスト付きの性愛テクニックや体験談を『日刊スポーツ』で長年連載していた。
官能作家としては、30歳の時に『週刊大衆』にて「白衣の濡れ天使」(のちに『惑われ天使』として文庫化)を一年間連載。その後、ライター業に追われ、作家活動はほぼしていなかったが、45歳の頃より再開。以降、どこか懐かしくて切ない郷愁感あふれる独特の官能ワールドを展開。著書に『明君のお母さんと僕』『キウイ基地―ポルノ女優と過ごした夏』などがある。


「おとな哲学」シリーズ

『覗かれ快感』
『寝盗られ美学』
『超熟女エロス』

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あらすじ

ロリコンのオジサンたちと「援助交際」もしているギャルの相川千秋。
また、優等生と呼ばれる女子が嫌いで、真面目なクラスメート女子の〝彼氏〟をわざと誘惑して、嫌がらせをする性悪なところもあった。
ただ、そんな千秋にも心の闇はあった。幼い頃から、母はおらず、父は仕事一筋。ずっと寂しい想いをしてきた。
今年の夏も、海外出張中の父親の指示で、千秋は瀬戸内海の島にある親戚の家に預けられていた。
自然ばかりで、遊ぶ場所もない田舎の島。
可愛いビキニで海水浴にきても、若い男はおらず、ナンパされることもない。
ひとりぼっち…。
そんな寂しさを抱えていた時、千秋はひとりの少年と出会い、これまで味わったことのない快感に酔いしれていた。



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「ああッ! 小僧ちゃん……あ、ああんッ、すご……ハア、アアアッ!」
 蝉時雨のおかげで喘ぎ声はかき消されていた。蝉の音だけではない。ここは、島のビーチの東端にある雑木林で海とも面しているため、たえず波の音も聞こえていた。
 雑木林のなかには、地元の人からも忘れ去られたような古びた神社があった。鳥居が一基と小さな祠があるだけで、社務所どころか参道もない。祠のしめ縄に取り付けられた白い紙(紙垂)もいつのものかわからないほど変色していた。
 夏休みが始まったばかりの七月下旬だ。午後三時過ぎで陽もまだ高かったが、ここはうっそうと茂る木々のせいで薄暗く、若干涼しくもあった。
「へへ、水着のお姉ちゃん」
 ひと一人なら隠れられる祠の裏から、若い女の嬌声に混じって、どこか舌足らずで無邪気な男の声もした。
「小僧ちゃん」「水着のお姉ちゃん」──そう呼び合う二人は背丈もほぼ変わらない。身長百五十センチほどだ。そんな身長差のない二人にとって、一番はまるのが、この立ちバックだった。
「あはァん! ああ、いいっ」
 祠の裏で両手をついて、立ったまま後ろから突かれる相川千秋(あいかわ・ちあき)は、高校二年生の十七歳だ。その見た目は一言で言えばギャルである。
 夏休みに入るなり髪を明るく染めて、ここ数日の島生活で肌も小麦色に焼けていた。いまも海水浴帰りで、白のビキニ水着のまま、パンツだけ太腿まで下ろしていた。誰かが来たとき、すぐ穿けるように太腿のところで留めているのだが、それによって、両脚は内股にならざるを得ない。
「やっぱ、この体勢が一番ええわ。オメコもぎゅうぎゅう締まって、気持ちええわ~」
 小僧ちゃんが中年親父のようなスケベったらしい言い方をする。
「ああっ! あかん。ああっ! アア~っ」
 対して千秋は媚びるような情けない声しか出ない。ぴったりと太腿を閉じているせいで、膣穴も閉じ気味となり、いっそう小僧ちゃんの小僧らしからぬ巨根の異物感が強まっていた。
「このお尻もええわ~。ここだけ色が違うのもおもろい」
 お尻の部分だけ白く、三角形に縁取られた水着跡を「おもろい」と表現したあと、小僧ちゃんは千秋の雌尻を両手で強く鷲づかみにしてきた。
「あ、アン! 拡げないで」
 ぐいっと尻の割れ目を押し広げられて、千秋は喘ぎ声混じりに訴える。
「ウンチの穴も丸見え~。あれ? 水着のお姉ちゃん、ウンチの穴もヒクヒクしているわ」
「いやあああっ」
 千秋は本気で恥じらい、ゴム鞠のような双臀を突き出したまま、ぶんぶんと首を振った。
 いままで付き合ってきた年上の男たちは、こんな変態なことはしてこなかった。
 リスっぽい小動物系の愛らしいルックスで、ロリ系ギャル特有のハスッパさを持つ千秋は、昔から男の子にモテるタイプだ。とくに年上男性をその気にさせるのは得意で、中学二年生のときに教育実習で来ていた大学生を誘惑して初体験を済ませてからは、千秋自身もどんどん年上好きになった。高校生になってからは、街でナンパしてきた三十代、四十代のおじさんとも関係を持つようになった。彼らは皆、優しくて、千秋がおねだりをすれば大抵のものはプレゼントしてくれたし、会うだけでお小遣いをくれる人もいた。セックスでも千秋を大切に扱ってくれて、嫌がることや辱めるようなことはしてこなかった。千秋もそういう危険な匂いのしない、自分の言いなりになってくれるロリコンのおじさんが好きだった。
 それがいまはなんだ。
 明らかに自分より年下のチビで、頭の悪そうなエロガキに好き放題犯されて、ひくつく肛門の穴まで見られているのだ。
 なんで、うちがこんな不細工な奴と……!
 心底そう思っていた。小僧ちゃんは見た目もひどかった。いつも汚い野球帽を被り、よれよれのランニングシャツに半ズボンで、どこかで拾ってきたかのようなサイズの合っていない大人用のビーチサンダルを履いていた。そして、初めてみたときは奇妙な妖怪かと思ったほどの醜悪な容姿。おにぎりのような輪郭で、笑っているのか泣いているのかよくわからない垂れ目で、笑うと前歯が一本欠けているという、間抜けな面構えをしているのだ。体も小さく、手足も細い。そのうえ、異様に臭かった。夏場なのに何日もお風呂に入っていないような饐えた臭いを撒き散らしていた。実際、千秋は最初、小僧ちゃんに向かって「あんた臭いわ、近寄らないで」と野良犬を追い払うようにシッシと手で払ったこともあった。
 そんな生理的にも到底受け付けられなかったガキに、いまでは水着跡の残る白い若尻を突き出して、十七歳のギャル穴を差しだしているのだ。しかも、小僧ちゃんは好き勝手に腰を振りながら、
「あ~、水着のお姉ちゃんのオメコでオナニーするのは、やっぱり最高やわ~」
 と失礼極まりない発言までしてくる。
「クッ……!」千秋は悔しさに唇を噛んだ。大人の男たちをイチコロにできる自分が、あろうことか、こいつにはオナニー道具として扱われているのだ。
「気持ちええ~。自分の右手でするより、やっぱりこっちのほうが気持ちええわ!」
 小僧ちゃんは意気揚々と叫ぶ。立ちバックで、それこそ目の前の肉穴にペニスを突っ込んで、しごくようなオナニーピストン。相手のことなど一切考えない自分勝手な性欲処理だ。
「んはああ、アアッ、ああああっ!」
 千秋も千秋だ。悔しさに唇を噛み、怒りに顔をしかめていたのも一瞬だった。
 パンパンパンと乱暴に打ち込まれると、ふたたびだらしなく唇は半開きとなって、とろけた表情になってしまう。
 すべてはこの秘棒がいけないのだ。
 ペニスにまだ毛も生えていないくせに、成人男性と変わらないどころか、長さは十八センチ超で、亀頭はゴルフボールぐらいある。キノコのようなカリ高で、反り返りも凄まじく、我慢汁がだらだら溢れている先端がおへそにぴったりとくっついているところを見たときは、大人の男性器を知り尽くしている千秋でもごくりと生唾を飲んだほどだ。そして、そんな股間だけが突然変異したような怪物魔羅を胎内に押し込まれてからは、すっかり彼の虜になってしまった。いや、すっかり彼の形に変えられてしまった。
 やだ! ガバガバの女になっちゃう!
 最初のころは亀頭がめりこむだけで「うほっ」とゴリラみたいなみっともない声を張り上げていたが、いまでは膣粘膜をぴきぴきに押し広げられる快感に、中でレモンが搾られているかのようにじゅわ~と愛蜜が溢れてしまう。膣奥までスムーズに出し入れされるようになると、大きいモノで支配される女の悦びも覚えた。そして千秋は膣の形のみならず、男の好みまで変えられてしまった。
「水着のお姉ちゃんって、オメコにちょっとしかオケケが生えてないけど、ほんまに大人なの?」
 自分のことは棚に上げて、千秋が気にしていることを不思議そうに訊ねてきた。もちろん、そのあいだも腰の動きは止まらない。
「アァ、そんな……大人やもん……! それに……」
 むしろ、おじさんたちはこの産毛程度しか生えていない桃色の秘割れを喜んでくれていたのだ。思えば、それは彼らがロリコンであった証拠なのだが……。対して、小僧ちゃんはロリコンと対極的なマザコンだった。
「ほんまかなぁ。ぼくのお母さんみたいに、ボーボーにならないと大人やないんやで」
 生意気な口調で〝お母さん〟と比較されて、千秋はふたたび悔しさに唇を噛む。無意識に、秘穴もギュッと締めていた。
 どう? 私のアソコは若くて締まりがいいでしょ!
 たくさんのロリコンのおじさんからそう褒められてきたのだ。
 だけど、小僧ちゃんにはそんなアピールは一切通用しない。
「そんなにオメコ、キュッキュッして。水着のお姉ちゃん、年上のくせして、ぼくのオチンポ、そんなに離したくないの?」
 あざ笑うような言い方をするのだ。こんなふうに男子からバカにされたのも初めてだった。それが千秋のプライドを傷つけて、いっそうこの男を振り向かせたくなるのだ。逆に、これまで千秋を好きなだけ甘やかしてくれたおじさんたちのことがつまらない存在に思えて、ロリコンで気持ち悪いという嫌悪感まで覚えるようになった。
「ほら、もっとキュッキュッしてよ。水着のお姉ちゃん、オメコ、ユルユルやで~」
「うううっ」
 好きな男の子にイジワルなことを言われて千秋は泣きべそをかくような真似をしてみた。もちろん、小僧ちゃんは同情などしてくれない。
 それどころか、千秋の背中に覆いかぶさってきた。身長差は変わらないのに、いきなりおんぶするように抱きつかれて、千秋は踏ん張った。そのせいで膣穴の締まりがより強くなり、太い肉棹の圧迫感がさらに増した。そんな状態で耐えようとしているのに、小僧ちゃんは甘えるように密着して、さらにぐいっと肉棒を押し込んできた。
「はああーーンっ!」
 狭い膣奥を突破されて、千秋は一瞬意識が飛びそうになった。
「入ったで……! ああ、水着のお姉ちゃんの、お母さんの場所!」
 マザコンのエロガキがとんでもないことを口にする。
「いやあァ、そこ、だめ……千秋、またおかしくなるぅ!」
 小僧ちゃんと出会って今日で五日目、千秋が毎日、神様の領域で不純異性交遊をしているのも、この狂うほどの悦楽が忘れられないからだ。
「おらおらおら~!」
 小僧ちゃんはそれこそお母さんの子宮に戻るように、無我夢中で膣奥めがけて、自分の分身を突き込んでくる。むろん、ちゃんとコンドームは着けさせていた。いや、どういうわけか、小僧ちゃんはいつもコンドームを持参して、こちらから言わなくてもちゃんと避妊するのだ。
「ハアア! アアアッ、ああああっ!」
 ビキニのブラジャーの中にある、ファジーネーブルほどの美乳が弾む。小柄で華奢な千秋は、恥毛も薄くて、乳房も小ぶりだった。といっても、コンプレックスでもなかった。むしろ、ロリコンのおじさんたちはこのいたいけな体に涎を垂らしてくれていたのだ。
 でも、小僧ちゃんは違う。
 尻肉を掴んでいた両手が、するすると千秋の双乳に這い上がってきた。ビキニのブラのなかにぬるりと差し込んで、ツンと勃起した乳頭をキュッと摘まんできた。
「水着のお姉ちゃん、おっぱい小さいくせに、乳首は大きいから変!」
 またイジワルなことを言って、ツンと尖った乳頭をコリコリとこねくり回してきた。
「いやあああっ」
 もし、年上の男性に同じことをいわれたら、その場で行為を中断して、二度と会わないとなっていたはずだ。それなのに本当にどうしてしまったのだろう。
「へへ。乳首弄ったら、オメコの奥もウニョウニョ動いて、めっちゃ気持ちええ~」
「あひぃ、アア、いいっ……! もっとしてぇ~」
 年下のエロガキに苛められることが快感のスパイスとなって、千秋は屈服の〝おねだり腰振り〟までしてしまう。
 近くの、さんさんと太陽光が降り注ぐビーチでは、小学校高学年か中学生ぐらいの男の子たちが波打ち際でビーチバレーをしていた。背丈だけを見れば、小僧ちゃんもあの子たちと年齢が変わらないように思える。
 それなのに、なんで、こんなに!?
 年相応とは思えない大人のペニスで、年上の女をいとも簡単に籠絡する巧みなピストンもできているのだ。
「ダアアーーッ! だああーーっ!」
 〝小僧ちゃん〟が奇っ怪な雄叫びを上げ始めた。それは射精への前兆であることも、千秋はもう知っている。
「はああーーーんっ! 小僧ちゃん! うちも、イキそう!」
 ビーチにいる子どもたちにも聞こえかねないほどの嬌声を千秋は放った。
 中でイクということを教えてくれたのも小僧ちゃんのおちんちんだった。
 あぁ、小僧ちゃん、小僧ちゃん……オナニー小僧ちゃん!
 千秋は彼のあだ名を心のなかで連呼しながら、自分もお尻を前後に律動させる。年齢不詳のエロガキの極太棒と、十七歳の未成年子宮がチュバッ、ジュボッと卑猥な音を出してぶつかりあって、胎内でディープキスをしているみたいだ。
「だあーーっ、だあーーーーっ!」
 次第に小僧ちゃんの雄叫びが、生まれたばかりの赤子の泣き声のように聞こえてくる。すると、千秋のなかに母性的な気持ちが芽生える。ママになった気分が高まると、こねくり回される乳首から、母乳もピュッと出そうな錯覚を覚える。
「ああっ、小僧ちゃん! いいよ、好きなときに、だしてッ!」
 千秋はこんな言葉も自然と口にしていた。
「う、うん!」
 小僧ちゃんは元気よく返事して、ラストスパートに入った。
 千秋はしっかりと受け止めようと、いま一度、内股の両脚を踏ん張る。ガバガバに拡げられた秘膜に激しく出し入れされて、瘤のように膨らんだ亀頭で膣口をめくられるたび、燃えるような愉悦も広がる。
 こんな年下のエロガキにという悔しさも、高まる母性快感によって、愛しいという気持ちに塗り変わっていく。
 中で、もっと膨らんできたッ……!
 子宮口を変形させるほど嵌った秘棒が鉄のように硬くなり、ひとまわり膨張してきた。
 おへその下あたりがキュンキュンと甘く疼いて、小僧ちゃんの分身がまるで赤子の頭のようにも感じてくる。そう、小僧ちゃんを身ごもった母親のような気持ちになる。千秋がそう思った瞬間、小僧ちゃんはあらん限りの声で叫んだ。
「だああーーっ、出るよ、お母さん!」
 初めてこの言葉を耳にしたときは、背筋がぞっとして、この子は母親とセックスをしたことがあるのかと身の毛もよだつ想像もしたものだが、いまは違う。
「きてええ~!」
 千秋自身が母親になった気持ちで受け止める。
 ビュルッルルルーっ!
 千秋の胎内で、少年の滾りがドクドクと脈打つ。その脈動に合わせて、千秋も幸福の極限に達した。
「アアッ! いい、イク……! はああんっ、あァ、イクッ……イク、イク!」
 コンドーム越しとはいえ、怒濤の勢いで噴出する子種汁を感じる。それだけではない。これは女の本能、いや母性本能なのか。しっかりと奥で受け止めてあげようと、千秋の赤ちゃんを産む部屋は少年の分身を吸い込むようにヒクヒクと収縮し始めた。
 ドビュル、ビュッ、ブシュッ、びゅ、ビュ、ビュ……ピュッ、ぴゅ。
 千秋の背中にくっついて、お母さんと叫びながら射精する彼は、嫌なこともつらいことも悲しいことも全部出し切るように長々と射精をする。
 ざわざわと上空で木々が揺れていた。
 ゆらゆらとざわめく緑の葉の合間から、光がちらつく。
 禁愛の性行為が繰り広げられる祠の裏にも夏の木漏れ日が降り注いでいた。
 昭和六十年の夏のことだ。


【本編はこちらから】

小僧 表紙

海とレモン畑が広がる瀬戸内海にある、のどかな島で。
オジサンキラーのビキニギャル、静養にやってきた女教師、島で一番の美人と評判の白衣の天使まで、正体不明の「あいつ」と……。

(あぁ、オナニー小僧くんが私のアソコでオナニーするのね)
めりめりと淫棒が涼子の胎内に侵入してきた。
瞼の裏に火花が飛び散った。
合金のような硬い先端が、26歳の音楽教師の子宮口にまで達する。
そして、始まる。
目の前の肉穴にペニスを突っ込んで、しごくようなオナニーピストン!
相手のことなど一切考えない自分勝手なシコシコ交尾!


『秘戯ノスタルジー 私の少年 京都編』に続く、無邪気なドスケベ男子と、心に孤独を抱える年上女たちの、立場逆転系エロチック小説!


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【はじめに】

 

 皆さんは「オーダーメイドフェチ」をご存じだろうか。

 その名の通り、オーダーメイドで、自分のためだけのフェチ動画を制作してもらう世界のことだ。

 

 世の中には、特殊なフェチを持つ人も少なくない。

 例えば、巨人族の母親に抱かれたい、ゾンビとなった女に犯されたい、女性のオシッコで育った花を愛でたい…。

 こうした願望を叶える作品は、市販のAVやフェチ動画で見ることはできない。

 そこで登場するのが、オーダーメイドフェチ動画だ。

 なかでもこの世界で人気を誇っているのが、熟女フェチモデルの神崎まゆみさんだ。

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神崎まゆみ 写真1


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神崎まゆみ 写真2


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神崎まゆみ 写真3


神崎さんは現在までにオーダーメイドフェチ動画を100本以上、制作している。

 そこで私、柚木怜は神崎さんを取材した。

 彼女がこれまで受けてきた依頼内容から、どのような撮影をしたのか、さらには依頼者にも取材をして、なぜそのようなフェチに目覚めたのか、といったところまで迫った。

 

 それをまとめたのが、『オーダーメイドフェチ 完全版』(匠芸社・シトラス文庫)だ。大きく4つのフェチを取り上げて、一冊にまとめた。【※バラ売りもあり)

 

 今回はそのなかの一つ『溺水フェチの底にあるもの』のワンシーンを紹介しよう。

 溺水フェチ=いわば、溺れる女性にエロスを感じるという性癖だ。聞きようによっては猟奇的なフェチであり、正直、僕も取材の過程でぞっとすることもあった。

 しかし、人間は必ず、何かしらのどす黒い欲望を抱えているものだ。それをオーダーメイドフェチ動画という形で疑似体験して発散できるのなら、何の問題もないはずだ。

 では、溺水フェチの世界を少し覗いてみよう。



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 水中フェチというジャンルがある。その名の通り、水の中の女性にエロスを感じるフェティシズムだ。
「ただ、今の時代はフェチというより、アートの世界となっていますね。水中で泳いだり、浮遊したりする女性を専門に撮影するカメラマンやモデルも世界中にいますし、素人であってもインスタグラムなどで幻想的な水中写真を公開している人もたくさんいます。最近では結婚の記念に、ウエディングドレスで水中撮影することも流行っているんです」
 水中世界(アンダーウォーター)には、女性の美は引き立てる要素が詰まっているという。
「一つは重力から開放された〝浮遊感〟でしょうね。宇宙空間のように、水の中では滑らかに手足を伸ばしたり、体を反らしたりできるため、女性のボディラインがいっそう強調されて、美しい流線型を表現することができます。また、水は空気よりも高い粘性があるため、髪や衣装がゆっくりと時間をかけて動くので、優雅で上品、そしてミステリアスに見えるのです」
 滑らかなポージングに、脱力したようなありのままの美しさ、スローモーションのような動き。こうした地上では見ることのできない女性の美が水中では表現できるのだ。
「二つ目は、水というフィルターを通すことで、水面に屈折した太陽光や水面のゆらめきが生まれ、水と女性の境界線は曖昧になります。すると、女性は光のヴェールをまとったような神秘的な雰囲気が出るのです。さらに、水の膜が光を反射することで、肌のトーンが均一となり、透明感は極限にまで高まります。そのうえ、呼吸によって生まれる気泡や、髪の毛などに付着した小さな泡がキラキラと水晶のような輝きを放つのです」
 このように語り出せばきりがないほどで、水の中の女性を美しく思うのは、もはやフェチとはいえないのだ。
 むろん、水の中の女性に性的エロスを感じる人も少なくない。
「よく聞くのが、公共のプールで水中ゴーグルをして、近くにいる女性の水着姿をこっそり見て楽しむというものです。女性の水着の食い込みや、透明感の増した色白の脚、平泳ぎしているときの後ろ姿……。それらを水中という音のない世界で視姦するんです。地上だったらジロジロ見ることはできなくても、水中で潜水していればバレにくい。ソレ目的で、幼い子どもを連れてプールへ行くというお父さんもいました。彼は子どもと水中ジャンケンという遊びをしつつ、ちらちらと近くにいる水中の水着ギャルを楽しんでいるそうです」
 これはフェチというより覗き見的な楽しみといえるだろう。
「ライトな水中フェチでは、セーラー服やワンピースなどの服を着たままでプールに入る『着衣濡れ』が定番です。濡れて透けるところや、ぴったりと肌に張りつく感じ、水の浮力でスカートがめくれてパンツが見えてしまう。そういう光景に性的興奮を覚える人は多いです。また、『ボビング』フェチもいます。ホビングとは水泳教室に通い始めたばかりの子どもが最初に覚える呼吸法です。口から息を吸って、水中のなかでは、鼻からブクブクと空気を出す。これをひたすら繰り返す練習ですが、この姿に興奮するというのです。女性が水中から顔を出したときの一瞬の表情や髪のビショ濡れ感、ハアハアという息遣い、水中でブクブクとなる気泡──その気泡の音にゾクゾクするという音フェチもいます。また、『バブルリング』といって、潜水しながら女性は仰向けになって、口から気泡を出すんです。すると、気泡がバブルリングとなり、水面で弾ける。その光景を真上や水中から見るんです。気泡フェチの方は、これを美女の〝吐息の形〟と捉えるようです」
 AVで見る水中ファックも水中フェチに向けた作品といえるだろう。浮力を利用して軽々と駅弁したり、平泳ぎの体勢で立ちバックをしたり、水中ならではアクロバティックな体位が繰り広げられる。また、水中フェラの最中の、女性の鼻から漏れる気泡がたまらないというフェチもいるという。
「動画サイトで〝裸泳〟を見ている水中フェチも多いようです。その名の通り、全裸で泳ぐ女性を潜水カメラで撮影。ただでさえ水中では女性の美しさが際立つなか、生まれたままの姿となって、平泳ぎやクロールをしているのです。とくに夜のプールで、潜水カメラのライトを使った裸泳映像は人気が高いです。それこそ真っ暗な水の中で泳ぐ白い裸体だけが照らされているのです。少し怖いぐらい幻想的で、人魚を見ているようなエロティシズムがあるといわれています。とはいえ、これらはすべてネットで検索すればいくらでも見つかるもの。特殊なフェチとも言えないのです」
 では、オーダーメイドでなければできない水中フェチ動画とはどういうものなのか。
「一言でいえば溺水性愛です。海外ではアクアフィリアと呼ばれています。広い意味では、〝水を愛好すること〟になるのですが、フェチの世界では、水中で溺れる人や水没する人を見て興奮する、実に倒錯した性癖ですね。さすがにそうした危ない動画はなかなかネットで見つけることもできません。あっても、『水の中で、何秒間息を止められるか?』といったお遊び的なものがほとんどで、本物の溺水性愛の人には物足りないのです」
 実際、神崎は過去に約十本の溺水性愛のオーダーメイドフェチ動画を制作している。そのうちの三人から掲載許可(性別と年齢も)を貰えたので、発注時のメッセージを紹介しよう。
【神崎まゆみ様。ブーツを履いた状態で溺れてくれますか? できれば、水中カメラで、苦しんでいる顔から、足元までしっかり撮って欲しいです。とくにブーツのまま、水中で両脚をバタつかせているシーンは多めにお願いします。そして、最後は熟女のブーツだけが、水面にぷかぷか浮いている映像があると最高です】(男性・五十六歳)
 溺水性愛とブーツへのこだわりが強く感じられるオーダーメイドで、神崎はこの台本通りに、プールのあるスタジオを借りて撮影している。
 また、溺れ方の要望も人によって違う。
【楕円形の水中ゴーグルを装着して泳いでいる最中、いきなりあなたは足が吊って、溺れてしまうのです。慌ててもがくうちに水中ゴーグルのなかにも水が入ってきます。そのときのゴーグルをつけたまま焦っている表情を撮って欲しいです】(男性・三十四歳)
 これなどは水中ゴーグルに入った水が大きなフェチポイントとなっており、なぜ、そこに性的興奮を覚えるのか、実に気になるところだ。
 この二つは女性が溺れるシチュエーションから発生する溺水性愛だが、三人目のメッセージはいわばまさにオーダーメイドならではの危ない要望であった。
【場所はお風呂場で。まず、浴槽を満水状態にしてください。あなたはシャワーを使わず、浴槽の縁から頭だけを湯船に突っ込んで、水中に深く沈めます。この動作を数回繰り返して、毎回少なくとも十五秒間は息を止めて、髪をしっかり濡らしてください。
 そのあと、あなたは最初のシャンプーをします。そして、髪をすすぐために再び、湯船に頭を突っ込みます。しかし、そこで〝見えない力〟があなたの頭を押さえつけるのです。あなたは必死に抵抗して、激しく頭を振ります。しかし、〝見えない力〟は強くて、あなたは溺れそうになります。だけど、あなたはすんでのところで頭を起こすことができます。顔も湯船もシャンプーの泡まみれです。
 あなたは二回目のシャンプーをします。そして、再びすすごうとすると、またも〝見えない力〟が現れて、先ほどよりも長く水中に留めようとします。あなたはまたも溺れかけるのですが、それでも〝見えない力〟を振り切って、助かるのです。これを数回繰り返してください。そして、最後のシャンプーをします。今回もまた、見えない力があなたを水中に押し込みます。あなたはついに力尽きて、動けなくなります。
 しかし実際には、あなたは〝見えない力〟を騙しているのです。見えない力が去った後、あなたはゆっくりと頭を起こします。そして、コンディショナーを塗り、最後は深い潜水をして洗い流します】(男性・四十五歳)
 これぞオーダーメイドフェチ動画というべきか。なかなか理解し難いシチュエーションで、依頼者の方がいったい何フェチなのかもよくわからない様々な要素が含まれているが、メインはやはり〝見えない力〟で何度も頭を押さえこまれ、湯船の中で窒息死させられそうになる部分だろう。
「溺れ死ぬところを見たいという発注で一番印象に残っているのは、四十代の女性からの依頼でした。この方からも今回、掲載許可を貰ったので、少しお話しますが……」
 と神崎は珍しく言いにくそうに前置きしてから、こう続けた。
「この方はプールの監視台から撮影して欲しいとのことでした。そのため、私は監視台の設置されている某所のプールスタジオを借りました。衣装は水着ならなんでもいいとのことでしたが、大事なのは、監視台の真下で溺れる振りをしてほしいということでした。それもただ溺れるのではなくて、それこそ〝見えない力〟で頭を押さえ込まれて、何度も必死に浮き上がっては、また水中に押し込まれるという内容でした」
 いわば『ボビング』を何度も繰り返すことになるのだが、それだけでは溺れている感が出ない。依頼者からの要望でも水中に潜ったあとは息が続く限り、もがいて欲しいとあったため、神崎は最低でも一分は潜ることにした。
「けっこう苦しかったですけど、要望通りの撮影はできました。ただ、その後、編集するため自分の溺れている動画を見返して、ゾッとしました。監視台の高さは百五十㎝ほどで、カメラの三脚の高さも加わると二メートルほどの位置から、溺れる私を覗き込んでいるアングルなんです。その距離感で、何度も水面から顔を出しては、再び沈む女性を見ていると、まるで橋の上から溺れている人をじーっと眺めている感覚に陥ったのです。自分は真上から溺れる人を見て、にやにやと笑っていたい……だから、あえて監視台の上から撮影してほしかったんだとようやく気づいたんです」
 この話には後日談があり、動画納品後、依頼者の女性から再び発注が入った。
「メッセージには、すごく興奮したという旨と、私が水中でもがいている動画を観て一晩中、オナニーをしたといったことも書いてありました。もちろん、満足して貰えたのは嬉しい限りですが、文章にはまだ続きがあったんです。そこには、【同じ設定で構いませんので、次は鼻栓をして、口だけで呼吸して欲しいです。そのほうがもっと苦しいはずです】といったことが書いてあったんです。この方は本気で私を殺そうとしているのでは? と正直、背筋が凍りました。でも、そのあとすぐに【ごめんなさいね、私、サイコパスなのかも(笑)】と冗談っぽい軽い雰囲気のメッセージが届いたので、私もご依頼通り、鼻栓をした動画も撮影しました。そしたら、彼女から【ありがとうございます。いろいろと無理難題に答えてくれて、本当に感謝です。この動画をオカズにまた一晩中オナニーします!】と本当にスッキリしたような明るいメッセージを貰えたので、やっと安心できましたね」
 依頼者の方の心の奥底で眠っていたドス黒い何かが、神崎の動画で解消されたのかもしれない。とはいえ、やはり溺水フェチにはサイコパス的な要素が強いように思える。
「一概には言えませんが、溺水フェチの方には、首を締められたり、袋を顔に被せられたりして、人を窒息させることに興奮する窒息性愛も多いと言われています。また、SMのAVで緊縛した女性の顔にひたすらバケツの水を浴びせたり、逆さ吊りにした状態で満水の桶に顔を突っ込む水拷問もありますが、あれも一種の溺水フェチですよね。もっといえば最近のAVで多いイラマチオフェラも溺水フェチ。女優さんが喉の奥までペニスを突っ込まれ自分の唾液まれみになっている姿なんて、窒息性愛であり、溺水性愛でもあります。そう考えると、人の苦しむ姿にゾクゾクするというのは、決して珍しい性癖でもない気がしますね」
 美しい水中アートの話から一転して、おぞましい世界に引き込まれた気分だ。

ここまでは本編の一部。この後、神崎のもとに、かつてない「溺水フェチ」の依頼が入る。

 それは「水死体となって、水の底に沈んでください」という、あまりにもおぞましいオーダーメイドフェチだった。


完全版 表紙

【オーダーメイドフェチフェチ 完全版】匠芸社・シトラス文庫


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