タイトル 少年T


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 お盆に入る前だったから、8月10日ぐらい。笹谷順平(ささたに・じゅんぺい)くんと遊ぶようになって、一か月ほど経った頃だった。

 いつものように天神川沿いにあるバラック小屋を訪れた僕は、この日、ゲームウォッチや漫画、ルービックキューブのほかに特別なものをリュックに詰め込んでいた。

「これ、お父さんの部屋で見つけてきたんや」

 取り出したのはエロ本だ。お父さんの部屋で見つけたというのはウソだけど、僕のものでもなかった。

 誰の物かは僕だけの秘密だ。

「すげえ~」

 順平くんはやっぱり男の子だ。いきなりエロ本を見せられて嫌がるかな、と心配だったけど、素直に興奮してくれた。

 その反応が可愛くて、僕は口元が緩んでしまう。

 それでつい普段二人で遊んでいる時は好きな女の子の話もしたことがないのに、僕はエッチなことを聞いてしまった。

「そういう本を見たら、やっぱり興奮する? おちんちん、勃ってくる?」

「まあな」

 照れ笑いしながらも順平くんはエロ本から目を離さない。

 四畳半もない狭い部屋だから、座っている僕と順平くんの膝と膝がくっついている。

 僕はあらためて順平くんの顔をまじまじと見やった。まさに月とスッポン。どうしてこんなに綺麗な顔をしているのだろう。「女の子みたい」と言われることを順平くんは嫌がるけど、「オッサン」とあだ名をつけられている老け顔の僕にすれば、羨ましいどころか、まったく別の世界にいる眩い生き物のように思えてしまう。

 そんな美少年が今こうやってエロ本を夢中で読んでいる。おちんちんが勃起していることも、ちゃんと認めている。

 順平くんという雲の上のような存在が今なら手に届くような気がした。  

「そういう時、どうするか知ってる?」

 僕はニヤニヤ顔が抑えられないまま尋ねた。

「え? どうするって?」

 順平くんはすっとぼける。僕は知っているのだ。順平くんが自分のお姉ちゃん、夫佐子さんのパンツを使って、マスターベーションをしていることを。

「マスターベーションとか、しないの?」

 僕は興奮してきていた。ヌゥと順平くんに体を近づけて、小声で質問した。

「え? 何それ」

 僕が突然距離を縮めたせいか、順平くんは一瞬たじろいだ表情を見せた。

「シコシコのことや」

 マスターベーションという言い方が難しかったのかもしれない。シコシコというのは、学校の男子の間で密かに使われているオナニーの隠語だ。

「シコシコ?」

 さすがに順平くんもこれは理解できたのだろう。半笑いになった。だけど、やっぱり恥ずかしくなったみたいで、すぐに「知らん」とそっけない態度でうそぶいた。

「じゃあ……教えてあげるよ」

 この時の僕はいつもの僕ではなかった。

「はあ?」

 順平くんは慌てて僕から距離を取ろうとしたけど、僕は構わずぐいぐい迫った。

 そう、あの夏のお姉ちゃんのように。

「ちょ、ちょっと待って」

 順平くんの抵抗はか弱かった。そう、それはあの夏の僕のように。

「大丈夫やって。誰にも言わへんから」

 かつてお姉ちゃんに言われたことを、今は僕が口にしていた。

 私と友ちゃんだけの秘密やから……と耳元で囁かれた言葉も思い出し、

「僕と順平くんだけの秘密やから」

 モジモジしている順平くんを諭すように呟いた。

 開放されたままの窓から夏の風が吹き込む。風鈴の音が聞こえたような気もしたけど、それは空耳だ。順平くんの部屋の窓には風鈴などない。

 代わりに天神川のドブの匂いがした。

 風鈴があったのは、僕のお姉ちゃんの部屋だ。





「え? どうして?」

 僕が小5だった一年前の夏休みで、ちょうどお盆前だった。この日朝から両親と一緒に田舎の祖父母の家へ帰省するはずだったのに、出かける直前、それこそいざ車に乗りこもうとしたところで、母親から「あんたは来なくていい」と言われた。

「あんた、そんな暇はないでしょ。勉強しなさい」

 おかしい。昨日までお母さんはそんなことを一言も言っていなかったのに。すかさずお父さんのほうを見ると、面倒臭そうに目を逸らされた。

 再びお母さんに目を向けると、もう僕の存在などないように車の助手席に乗り込もうとしていた。

「……わかった」

 いつものことといえば、いつものことだ。僕のお母さんは気分の浮き沈みが激しい人なのだ。急に優しくなる時もあれば、突然怒り出す時もある。菜々子お姉ちゃんに言わせると、お母さんは「ヒステリック」らしい。あれは病気だよ、とも言っていた。

 お父さんもお母さんのヒステリックを分かっているから、こういう時は何も言わない。結局この時も僕には一言も声をかけず、お父さんは運転席のドアをバタンと締めると、そのままフロントガラスの前方を見つめたまま、車を発進させた。

 家の玄関から出て行った車を見送った後、僕はがっくりと肩を落として家の中に戻った。

「なんや、友ちゃんもお留守番することになったんか?」

 なんともいえない虚しさを感じながら靴を脱いでいると、二階から菜々子お姉ちゃんが降りてきた。

 今年の春から高校生になった菜々子お姉ちゃんは最初から「勉強」を理由に、帰省を断っていた。

「来なくていいって」

「そっか。どうせまたお母さんが急に言い出したんやろ?」

 菜々子お姉ちゃんが呆れたようにため息をつく。

「うん」

「気にせんでええよ。放っておき」

「うん」

 僕は自分がショックを受けていることを菜々子お姉ちゃんに悟られたくなくて、そそくさと二階にある自分の部屋に戻ろうとした。

「あ、お昼どうする? お姉ちゃん、この後パン買いにいくけど、友ちゃんもパンでいい?」

 追いかけるように菜々子お姉ちゃんが声をかけてくる。

「うん」

 僕は振り向きもせず、階段を駆け上がった。

 両親が戻ってくるのはお盆の後だから、これから5日間ぐらい菜々子お姉ちゃんと二人で留守番することになる。その間の生活費は菜々子お姉ちゃんが十分に預かっているから、食べ物がないなんて心配はないけど、先ほどのお母さんの態度を思い出すと、腹立たしさがこみ上げてくる。

 菜々子お姉ちゃんが買い物に出かけた後、僕は気を紛らわせるため部屋で漫画を読むことにした。

 なんだよ、チクショウ。

 田舎の祖父母にそれほど会いたかったわけではない。

 それでも友達ゼロで、夏休みはひたすら家に引きこもっていた僕にとって、田舎に行けるのは唯一のイベントでもあった。

 イライラが急激に押し寄せて、漫画を壁に投げつけた。

 思いっきり投げつけてから、自分自身が嫌になった。

 こんなふうに突如感情が爆発してしまうのは、お母さんの血を引いているからではないか。鬱憤ばかりが溜まっていた。学校ではみんなに苛められて、喧嘩もできない惨めな男子だ。家では毎日、お母さんの顔色を窺って怯えてばかりの臆病者だ。

 そのくせ、成長だけは人よりも早いみたいで、どんどん体は大人になっていく。小4から生え始めたおちんちんの毛もいまはすっかり黒くなってきて、モジャモジャしてきた。おちんちんの皮も剥けてきた。

 これが普通だと信じ込もうとしたけど、この前、クラスの男子たちに無理やりパンツを脱がされた時、悲鳴が上がるほどビックリされた。「気持ち悪っ」「なんだ、これ」「オッサンやん」と口々にバカにされた。やっぱり僕の体は同じ年の男子と違うみたいで、生きていることが恥ずかしくなった。

 体だけじゃない。最近僕は〝悪い遊び〟を覚えてしまった。キッカケはおちんちんの皮を元に戻そうとしたことだった。

 めくれ上がった皮を被せようとした途端、全身にピリピリとした気持ちよさが広がり、オシッコも漏れそうになった。

 なんだ、これ……。

 おちんちんがどんどん大きく膨らんできて、皮は戻るどころか、元に戻らなくなった。

「ひぃ……ひぃ」

 自分の体に起こった異変に驚きながらも、僕はおちんちんから手を離せなくなった。

 めくれた皮から剥き出しになった粘膜の部分を摩擦していた。オシッコの出る穴からオシッコとは違うネトネトとした液体が出てきて、僕の指に絡みついてくる。

 ネトネトのおかげで滑りが良くなって、さらに摩擦することが気持ちよくなってくる。

「うはあ、くうっ!」

 漏れる声を必死に堪え、懸命に目を閉じた。

 気持ちよさに頭の中が支配されると、脳裏に僕が密かに思いを寄せている尾関千沙さんの顔が浮かんできた。

 見たこともないのに、尾関さんがお風呂に入っている姿を想像していた。

 尾関さんと一緒にお風呂に入りたい。裸の体に触れてみたい。イケナイ考えが次から次へと巡り、僕は悪魔的になる。

 日頃の嫌なことも全部忘れて、悪魔の快感に溺れていく。

「アアっ!」

 脳みそが破裂するかと思った。全身の筋肉が強張り、僕はイキむ。イキんでいないと、体がバラバラになりそうだった。

 オシッコの出る穴から白い塊が勢いよく噴出していた。それが精液だとまだ知らなかった僕はたちまち焦り、いますぐ病院に行かないといけないのではないかと思った。

 白い塊は立て続けに何度も迸った。塊のように思えたが実際はドロドロとしたゼリー状の液体で、糊みたいな粘つきもあった。動物の本能なのか分からないけど、僕は指についた白いゼリーの匂いを嗅いだ。

「くっさ!」

 今まで嗅いだことのない悪臭で、吐きそうになった。慌てて傍にあったティッシュでふき取り、手を洗いに行った。

 僕にとって初めての射精でその時は「二度としない」と自分に誓ったものだ。だけど、一度味わった悪魔的な快感はもう僕の体に染み付いていた。

 その日以来、僕は暇さえあれば、この悪い遊びに耽るようになった。

 田舎に帰省できなかった夜も僕は寝る前にシコシコしようと考えていた。

「友ちゃん、お風呂~」

 菜々子お姉ちゃんが部屋の外から呼びかけてきた。

「わかった」

 僕のおちんちんに毛が生えていることは家族の誰も知らない。バレたくないように最近は細心の注意を払って、お風呂にも入っている。

 この時も姉が自分の部屋に戻ったことを確認してから、僕はバスルームに入った。

 全裸となってパンツや靴下をバスルームに置かれた洗濯籠に放り込む。

 思わぬものが目に留まった。女の人のパンツだった。小さな花柄の入った白いパンツだ。今までこんなことはなかった。菜々子お姉ちゃんは中学生ぐらいになった頃から、自分の下着は自分で洗うようになっていた。

 それなのに今日は両親が居ないからか、脱いだものをそのまま洗濯籠に入れたようだ。あとで洗うつもりなのだろうけど、僕に見られるのは別に構わないのかな。

 僕はチン毛の生えてきたおちんちん丸出しのまま、ソレを手に取っていた。お姉ちゃんのものとはいえ、女の子のパンツである。僕みたいなモテない男は一生手に触れることも出来ないかもしれないお宝でもある。

「ああ、すごい」

 何がすごいのか自分でもわからないけど、とにかく激しく感動していた。

 男のパンツと違って、眩いほどの可愛らしさで、触り心地はフワフワしていた。僕は姉のパンツを自分の目の高さまで持ってきて、隅々まで見渡す。何もかもが新鮮でキラキラ輝いて見える。それだけではない。一日穿いていたパンツなのに、花のような匂いがする。花柄だからというわけでなく、本当に甘い香りがするのだ。

 僕はここでも動物の本能で、気づいたら姉のパンツを嗅いでいた。

「すぅう~」

 頭の芯までとろけそうなウットリとする匂いだ。僕はたまらず口と鼻を塞ぐように、パンツを顔に押し込む。

 女の子にはおちんちんがない代わりに〝穴〟があるらしい。

 僕は菜々子お姉ちゃんの穴が当たっているであろう部分を思いっきり吸い込んだ。

「ああ……」

 少し甘酸っぱい匂いがしたけど、足のつま先から脳天までゾワゾワと陶酔感が駆け巡った。間接的とはいえ、女の子の未知なる部分を僕はいま堪能しているのだ。

 おちんちんが痛いほど勃起してくる。とてもじゃないが嗅ぐだけでは我慢できなかった。僕は菜々子お姉ちゃんのパンツを口に押し当ててまま、右手でおちんちんを摩擦し始めた。

「ハア、ハア、ハア……」

 あっという間にあの悪魔的な快感が僕の全身を包んだ。早くもオシッコの出る穴から悪魔が飛び出そうとしている。

 ああ、だめだ!

 次の瞬間、僕は何を思ったのか、菜々子お姉ちゃんのパンツをおちんちんに押し当てていた。本能的に女の人の穴におちんちんを当てたくなったのかもしれない。

 そのせいで、とんでもないことになるなんて、その時は頭が回らなかった。

 どびゅる、どびゅ、どびゅう!

 菜々子お姉ちゃんのパンツに向かって、マグマの溶岩のように、熱い液体が迸った。

「あうううっ」

 僕は目の前がチカチカするほどの快感に全身を震わせる。あまりの気持ちよさに口が開きっぱなしで、涎も出そうだった。

 ようやく収まってから、僕は自分のしでかしたことの重大さに気づいた。

 姉のパンツは白いゼリー状のものでベトベトに汚れていた。咄嗟に「洗わなきゃ」と思ったが、すぐに考え直した。菜々子お姉ちゃんは自分で自分の下着を洗うのだから、勝手に洗って濡らしてしまえば、すぐにおかしいと気づかれる。

 どうしよう……。

 このまま放置しておけば、多分乾くはずだ。菜々子お姉ちゃんが今夜洗濯をしなければ、明日にはきっと乾いて、何事もなかったことになるはずだ。

 その一縷の望みにかけることにした。

 菜々子お姉ちゃんのパンツを洗濯籠に戻して、僕はお風呂に駆け込む。臭い液体が出たおちんちんをごしごし洗いながら、「バレませんように」と泣きそうな顔で祈り続けた。

 



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 心配であまり寝付けないまま翌朝を迎えた。明け方になってから眠りに落ちたせいか、僕が目を覚ましたのはもう10時過ぎだった。

 菜々子お姉ちゃんはリビングのソファでテレビを見ていた。外はかんかん照りだけど、家の中はクーラーが利いているから、だいぶ涼しい。

「おはよう」

 菜々子お姉ちゃんの様子に変わったところはなかった。僕は少しホッとして、「おはよう」と返す。それからトイレに行ったついでに、バスルームを覗いた。

 洗濯籠はもう空になっていた。

 昨晩はあれから洗濯機も回っていない。僕が寝ている間に洗濯をしたのか。姉の下着だけでなく、僕のパンツや靴下もなくなっていた。

 ちゃんと乾いていただろうか。不安に苛まれながらも、もうどうしようもなく、僕はいつものように何もない日中を過ごした。

 その日の夜だった。またも菜々子お姉ちゃんが先にお風呂から出て、僕を呼びにきた。

 今日一日、ずっと一緒にいたけど何も変わったところはなかった。つまり、あのことは菜々子お姉ちゃんにバレなかったようだ。

 バスルームに入り、洗濯籠に目をやる。

 ほとんど空の洗濯籠の底に、昨日とは違う水色のパンツとブラジャーが放り込まれていた。それ以外は入っていない。

 僕は思わず息を飲む。一難は去ったのだ。もう昨日みたいなことをしてはいけない。

 そう自分に言い聞かせているのに、僕の手は勝手に動いていた。

 大丈夫、アレでベトベトにしなければ大丈夫。匂いを嗅ぐだけなら問題ないはずだ。

 バスルームは当然、静まり返っている。菜々子お姉ちゃんはいま二階の自分の部屋にいるから、万が一でも見られることはない。

 僕は昨日と同じように姉のパンツを掴み、鼻に押し当てた。

「はあ……」

 昨日よりも甘酸っぱさが濃厚で、レモンの汁が染みわたっているようだった。僕の中にもある動物の「雄」の本能を目覚めさせるような匂いで、たちまちおちんちんは硬くなってくる。暴発しそうなぐらい膨張したペニスを右手に握り、ゆっくりと律動させる。昨日みたいに一瞬で出してしまうのはもったいない。出来るだけ長く、この陶酔のひと時を楽しみたい。

「ハア、ああ、ハア、すうう」

 両親はいない。姉は自分の部屋にいる。いま僕の周辺には誰もいないから、声を漏らしても大丈夫だ。ハアハアと息を荒げながら、僕は菜々子お姉ちゃんのアソコの匂いにまみれながら、おちんちんを刺激し続けた。

「んすぅ、ハア、すうぅ」

 たっぷりと女の子の穴の当たっている部分の匂いを吸い込み、僕は頭の中で妄想を逞しくする。いつもは尾関さんの裸を想像するけど、この時は実の姉である菜々子お姉ちゃんの裸を思い浮かべていた。

 弟の僕がいうのもなんだけど、菜々子お姉ちゃんは結構、美人なほうだと思う。僕と同じで、年齢よりも大人に見られるタイプだけど、老け顔ではない。近所のおじさんは菜々子お姉ちゃんのことを「聡明な美人やね」と感心したように言っていた。実際、菜々子お姉ちゃんは頭も良くて、勉強もすごく出来る。性格は明るいほうでもないけど、いつも落ち着いていて、あまり感情を表に出さない。お母さんとは正反対だ。

 僕とは歳が5歳離れているからか、小さい頃から一緒に遊んだ経験もほとんどない。僕も菜々子お姉ちゃんも外で友達とわいわい遊ぶタイプでなく、学校から帰っても、家で一人過ごしていることのほうが多い。思えば、菜々子お姉ちゃんが友達を家に連れてきたこともない。そのあたりは僕と似ている。

 そんな菜々子お姉ちゃんのことを僕はいまエッチな目で見ている。お姉ちゃんにもある女の子の穴を想像して、おちんちんを硬くしている。

 洗濯籠にあるブラジャーも手に取ってみた。

 オッパイがおさまる部分のサイズからして、ソフトボールぐらいの大きさだろうか。胸が膨らんでいることはもちろん知っているけど、大きさまで考えたことはなかった。

 見てみたい。

 今さらながら菜々子お姉ちゃんという「女の子」を強く意識し始めていた。思えば最も身近にいて、誰よりも僕に優しい女の人でもあるのだ。

「ああ……お姉ちゃん」

 おちんちんをしごきながら、僕は口にしていた。一度口にしてしまうと、一気に禁断の欲望が押し寄せてきて、僕は「お姉ちゃん……お姉ちゃん」とうわごとのように呟きながら、悪魔的な快感を高めていった。

「うううっ!」

 出そうになって、またしてもパンツで抑えようとした。もちろん同じ過ちは犯せない。僕はすかさずパンツから手を離して、白濁の塊を空気に放出した。

 放物線を描いて飛び散る。そこら中の壁や床に付着した。

「ハアハア、ふぅ」

 スッキリはしたけど、昨日みたいなやり遂げた充実感のようなものは得られなかった。むしろ、変な虚しさだけが残った。

 僕は自分のバスタオルでそれらの残骸をふき取った。それからさっきまで姉が入っていたお風呂に浸かった。そこでもまた興奮して、自分で自分を慰めてしまった。

 両親が帰省して三日目、その日の夜も菜々子お姉ちゃんが先にお風呂に入った。僕は今夜も楽しみで仕方なかった。早く姉のパンツの匂いを嗅ぎたかった。

 ところがなぜか、今日は洗濯籠に何も入っていなかった。

 楽しみにしていたぶん、僕はすっかり消沈した。だから、姉の入った後の湯舟に浸かっても、いまいち気持ちが盛り上がらず、悪魔も顔を出してこなかった。


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 お風呂から上がって、リビングで牛乳を飲んでいた。

「友ちゃん」

 二階の自室にいたはずの菜々子お姉ちゃんがリビングにやってきた。

 黒のTシャツに部屋着でよく使っている長めのスカートで、すでにドライヤーで乾かしてある長い黒髪は艶々と輝いていた。

「どうしたん?」

 僕はそっけない感じで返事をした。姉がパンツを洗濯籠に入れていなかったことに身勝手ながら少し苛ついていた

「ちょっと、私の部屋に来て」

「え?」

「それ、飲んでからでいいから。ちょっと話があるの」

 苛ついていた感情なんてたちまち消え去った。姉の表情は固く、何か思いつめているようだった。「ちょっと話がある」なんて意味深に声をかけてきたことも今まで一度もなかった。こういう言い方をするのは、お母さんだけだ。

 菜々子お姉ちゃんとお母さんは全然違うと思っていたけど、この時ばかりは血のつながりを感じた。

 僕は嫌な予感しかしなかった。

 やっぱりあのことがバレていたのではないか。思い当たる節もそれしかない。

「え? なんで? ここじゃあかんの?」

 僕は元来の苛められっこに戻ったように、泣きそうな顔になってしまった。

「うん。私の部屋で話そ」

 菜々子お姉ちゃんはそれだけ言うと、くるりと踵を返して、二階の階段を上っていった。菜々子お姉ちゃんのシャンプーの残り香がしたけど、僕はもうこの世の終わりのような気分に陥っていた。





(T視点2) おわり