タイトル 少年T

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「ねえ、これが勃起しているってこと?」
 不思議そうに囁きながら、菜々子お姉ちゃんがあぐらをかく僕のズボンの膨らみを人差し指で突っついてくる。軽くツンと触る程度に過ぎないけど、僕は全身の毛穴がブワッと開く感覚に狼狽し、身震いもした。
「ごめん、痛かった?」
 なぜか勘違いして菜々子お姉ちゃんは慌てて指を引っ込めると、今一度僕の表情を伺うように、顔を寄せてきた。
 僕は菜々子お姉ちゃんに渡されたエロ本を目の前に広げたまま、どこを見ていいのか分からない。何が起こったのかもいまだにちゃんと理解できないでいる。
 とりあえず首を横に振って答えるのが精いっぱいで、数秒経ってからようやく「ううん」と声を出せた。
「痛くはないんや!?」
 菜々子お姉ちゃんは安心したというか、小さな発見をした時のように声を弾ませた。
「うん」
 僕はまだ心臓のドキドキが止まらなかったが、菜々子お姉ちゃんのツンツンが終わったことで少しだけ落ち着きを取り戻した。だけど、それは本当につかの間のことだった。
「じゃ、もういっぺん、触ってみてもいい?」
 菜々子お姉ちゃんは再び僕の耳の穴をくすぐるように囁きながら、今度はズボンの膨らみを右手で包み込むようにしてきた。
「あう……」
「痛くはないんやろ?」
 言いながら菜々子お姉ちゃんは手のひら全体でおちんちんの突起を撫でてくる。小動物の頭を撫でるような優しい手つきだった。
 僕はあぐらをかいて座っているだけなのに、全身から汗が噴き出る。初めて他人の手、ましてや姉とはいえ女の人におちんちんを触られているのだ。
 ズボン越しではあるけど、こちらの意識とは関係なく這いまわる他人の手の動きに、僕は完全に虜になっていた。
「すごい……こんなに固くなるんや」
 菜々子お姉ちゃんも興奮しているようだった。聞いた事のない上ずった声で、僕の股間を執拗に触ってくる。僕が弟ということも忘れているように思えたほどだ。
 僕は僕で、菜々子お姉ちゃんの白い手に目を奪われていた。
 生まれた時から同じ屋根の下で暮らしているというのに、菜々子お姉ちゃんの手がこんなに色白で、細くて華奢な指であることにいまさらながら驚いていた。
「友ちゃん、本は?」
 姉に弄られる自分の股間に視線を落としていると、菜々子お姉ちゃんが思い出したように囁いてきた。
「あ、うん」
 エロ本なんてもうどうでもよくなっていたけど、僕は気恥ずかしさを誤魔化すように誌面に目を向けた。
「おっぱい大きいね、この人」
 菜々子お姉ちゃんはおちんちんを撫でる行為を続けたまま、僕の顔の真横からエロ本を覗き込んできた。
 お風呂上がりとあって、菜々子お姉ちゃんの体からは甘いシャンプーの香りと石鹸の匂いが合わさった女臭が、まさに湯気だったように立ち込めていた。それをたっぷり鼻腔に吸い込んだだけで、僕の脳天はクラクラして、目の前もくるくる回るような感覚に陥った。
「あ、いままたビクッとなった」
 ズボンの上から掴んだ股間の反応を、菜々子お姉ちゃんが驚いた口調で呟く。
「……うん」
「なんでこんなにビクッとなるん?」
 菜々子お姉ちゃんは尋ねながら、さらに強く握ってきた。
「あっ」
 ビクッビクッと断続的に肉胴が痙攣してしまった。
「へえー、面白い。なんか、別の生き物みたい」
 菜々子お姉ちゃんはコツを掴んだように、おちんちんをやわやわと揉むようにしてくる。
「ううぅ、ふぅ」
 僕は変な声が漏れそうになるのを必死に堪える。
「ちょっと、じかに見せてよ」
 それは本当にごく自然な感じで、「そのお皿、取って」とでもいうような言い方だった。
「へ? 脱ぐの?」
 だから僕も「これ?」といった感じで、短パンを指さした。同時に僕は菜々子お姉ちゃんのほうを見た。おちんちんを突っつかれてからまともに顔を見られない状態が続いていたから、久しぶりにちゃんと見る菜々子お姉ちゃんの顔だった。
「そう」
 この時の菜々子お姉ちゃんの顔は今も忘れることができない。目の周りが寝不足みたいにとろんとしていて、唇も半開きでポカーンとしたような表情。だけど、それがとてつもなく色っぽくて、僕は目の前にいるのが実の姉だというのに、キスをしてみたいと思った。
「……うん」
 見惚れていたせいか、恥ずかしいという気持ちはあまりなかった。そもそも僕は菜々子お姉ちゃんに触られ始めた時から、本当はズボンもパンツも脱ぎたくなっていた。
 僕は一度その場から立ち上がると、座って見ている姉の前で、下半身丸出しとなった。
「え? すご……」
 菜々子お姉ちゃんは僕の股間を見上げながら、文字通り、目を丸くした。
「これでいい?」
 僕は直立不動のまま尋ねる。おちんちんも僕のお腹にくっつかんばかりに反り返っている。
「うん……友ちゃん、もう生えていたんや……いつから?」
「えっと……最近」
「そうなんや……全然知らんかった」
 僕に脱げと命令しておきながら、菜々子お姉ちゃんは戸惑ったように口籠る。なぜかさっき僕がしていたように、菜々子お姉ちゃんも白いウサギみたいなクッションの毛を毟り始めていた。
「座ってもいい?」
 僕は言う。なんだか裸で突っ立っていることが今さらながら恥ずかしくなってきた。
「あ、待って……もうちょっと、よく見せて」
 菜々子お姉ちゃんは座ることを許してくれなかった。その代わり、僕の股間にそっと顔を近づけてきた。
 おちんちんの臭い匂いまで嗅がれそうで、僕は一層、顔が熱くなった。
「へえ……」
 菜々子お姉ちゃんは僕の足元で正座する形となって、おちんちんの先っぽから側面、たまたまの部分まで細かくチェックするように鑑賞してくる。顔を斜めに傾けたり、アゴをひょいと突き出したりして、いろんな角度から眺めようとしていた。
「ねえ、お姉ちゃん……」
 僕はしびれを切らしたように呻いた。
「ん?」
 菜々子お姉ちゃんは僕を見上げながら、不思議そうな顔をする。
「さっきみたいに、してほしい」
 口にしてから、自分がワガママを言っているような気がした。
「ええよ」
 怒られるかと思ったけど、菜々子お姉ちゃんは驚くほどあっさり答えると、まるでマイクを手に歌うアイドルのように、反り返ったおちんちんの胴の部分を右手に握りしめた。
「あふぅう!」
 ズボンを穿いていた時とは比べ物にならない悦楽が僕の全身を貫いた。柔らかくてスベスベとしたナマの手の感触が、僕のおちんちんの粘膜にぴったりと張り付く。
「大丈夫?」
 上目遣いで聞いてくる菜々子お姉ちゃんに、。
「大丈夫……すごく気持ちいい……」
 僕は今にも泣きそうな顔で、姉を見下ろしながら言った。
「ほんまに?」
 菜々子お姉ちゃんがちょっとイタズラっぽく言って、掴んだおちんちんをギュウギュウと牛の乳しぼりのように圧迫してきた。
 僕はたまらずつま先立ちになる。
「あひ、あふーー!」
 まさにミルクが押し出されるように、おちんちんの先端から勢いよく白い液体がピュッと噴出していた。
 自分で射精する時は「出そう!」となってから出るんだけど、この時はそう思う暇もなく、体が先走ってしまった。
「へ? 出た!」
 菜々子お姉ちゃんは素っ頓狂な声を放つと同時に、すかさずペニスから手を離した。飛び散った精液は菜々子お姉ちゃんの右の前腕から二の腕にかけて、べったりと付着していた。
「んがあっ!」
 僕は瀕死の獣のような声を漏らした。
 なぜならまだ出尽くしていないからだ。おちんちんはまだパンパンに張りつめていて、精液もたっぷりと残っていた。このまま一気に全部出し切ってしまいたいのに、菜々子お姉ちゃんは腕に付着した精液にまだ驚いている。
「何、この臭い……」
 菜々子お姉ちゃんは自分の右腕を顔の前に持っていき、臭いを確認する。
「ごめん」
「これが精子? 私のパンツにつけていたものと同じ? 匂いがちょっと違うんやけど」
 菜々子お姉ちゃんはしきりに腕の匂いを嗅ぐ。出したばかりの匂いと、乾いたあとの匂いがだいぶ違うことを僕は説明しようかと思ったけど、とにかくおちんちんがムズムズして、それどころではない。
「お姉ちゃん、もう一回! お願い、もう一回して」
 もう恥もへったくれもなかった。僕は腰を前後にカクカク振って、菜々子お姉ちゃんの顔の前に濡れた亀頭を突き付けた。
「まだ出るん?」
 やっぱり何も知らないみたいで、菜々子お姉ちゃんは僕に言われるまま再度、おちんちんを掴んできた。
「あああー、あああーー」
 僕は自分でする時のように、ペニスに上下の摩擦を加えようと無我夢中で腰を振った。菜々子お姉ちゃんはちゃんとペニスを握ってくれていたけど、突如、奇妙な腰振りダンスを始めた僕をギョッとした表情で見つめている。
「うおお、出る!」
 射精の衝撃に耐えきれず、僕は前屈みになり、つい菜々子お姉ちゃんの頭頂部に両手をついた。
「え、ちょっと!?」
 菜々子お姉ちゃんは本当に性的なことに関して無知だった。目と鼻の先にペニスがあるというのに、顔を背けることもしなかった。
 僕だって、そんなことまでしたいとは思っていなかった。
「うわああ」
 叫びながら、止まらないオシッコを撒き散らすように男の樹液を放出していた。
「ひぃやぁ!」
 菜々子お姉ちゃんの悲鳴が聞こえた。それなのに僕は両手で菜々子お姉ちゃんの頭頂部を強く掴んで離さなかった。
 びちっ、ぶちゅ、ぴちっ、びたっ……。
 実際にそんな音がしたかどうか記憶は定かでないけど、菜々子お姉ちゃんの顔を自分の精液で汚していくという行為に、僕は激しい罪悪感とともに天にも昇るような恍惚感を得ていたのは確かだ。
「あっ……うそ……?」
 菜々子お姉ちゃんは数秒ほど呆然としていた。精液を撒き散らしてしまったと思っていたが、菜々子お姉ちゃんは最後の瞬間、ペニスを握って固定していたのだろう。顔のど真ん中のライン──額から鼻先、唇、そしてアゴの真下にかけて、ドロドロの粘液が糸を引いていた。
 風鈴の音を聞いたのもこの沈黙のひと時だった。
 それ以来、僕は風鈴の音色を聞くたび、弟の精液を顔に浴びた菜々子お姉ちゃんの顔を思い出す。


(T視点5)につづく。