まぁ、頑張りまっか

自分が気に入ったバンド/ミュージシャンの感想文付きディスコグラフィを作ります。 このブログで掲載しているものは実際に音源を購入した作品に限ります。

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Name: SOEN

Genre: Progressive Metal, Alternative Metal

Nation: 🇸🇪

Years Active: 2010~

Band:

"北欧の暗黒神"Opethの全盛期を独創性溢れるドラミングで彩ったものの、健康面の問題で脱退を余儀なくされた界隈屈指の名手Martin Lopez待望の音楽復活祭として、各方面の精鋭達で結成された芸術派スーパー・グループがこのSoenである。

彼が元来持ち味としてきた民族音楽的リズム感、北欧特有の陰影に富んだメランコリー、孤独感に裏打ちされた抒情性を深みで表現する構築美を、言葉本来の意味でオルタナティブな精神性を以って自在に融合させたSoenの音像は、聴き手の意識を捉えて離さぬ魔力を備えているのだ。




"Cognitive"


Album Type: 1st full

Style: Progressive Metal, Alternative Metal

Legth: 48:13

Released: 2012

Review:

一時期は食事すら満足に出来なくなるほど健康状態が悪化していた名ドラマーMartin Lopezが国内外の手練れ達を率いて完全復活、との触れ込みで海外では結成当初より大きな話題を集めていたSoen。

そんなバンドの最初の一手となった今作は、90年代にオルタナとプログレの融合を成し遂げた米国の至宝="変態奇術師"Toolとの類似点が頻繁に持ち出される、少々意外なものに仕上がりました。

実際、せっかちな聴き手が早々に作品の評価を下しかねない序盤における、うねりながら底に沈殿していくようなギター・フレーズやエスニックな感触はToolからの影響を確かに感じさせますし、Joel Ekelöf(Vo)のボーカルは、奇人Maynard James Keenan(Tool/A Perfect Circle etc)と声質が近いだけでなく、並外れた歌唱力と表現力、しばしば再現困難と評される節回し(音の頭で声のピッチを滑らかに上下させるアレ)の熟し具合、どこかサイコパス風の雰囲気に至るまで、最早本人以上の"それっぽさ"が伺えます。

しかし、ここで重要な鍵となるのは、Martin Lopez(Dr)のゴリゴリと畳み掛けるようなデス・メタル式ツーバス乱打、ジャズ音楽、アフリカ音楽、ラテン音楽を自由に行き来する可動域がやたらと広い靭性に富んだグルーヴ感、北欧フォークが持つ寂寥感と美意識、懐古的ではなく現代的な感性を主眼に据えた上で、プログレとオルタナの融合を実行した点でしょう。

Opethは元より、北欧流のオルタナ方法論を確立した"鬱神"Katatoniaとも比較出来得る高貴な佇まいが備わっている点もまた、Toolとは似て非なるものと映ります。

土着的な孤愁を醸す名バラード#4. Last Light、静動の対比が実にスリリングな#5. Oscillation、北欧産らしい暗黒性を堪えたフレーズがジェント系リフに絡み付く#9. Slitheringなどのメロディ展開はそうした艶やかな佇まいが良く表れた例です。

何より、Toolの特徴である異常に偏執的で屈折した狂気の世界観は今作に存在せず、複雑な曲展開を効果的に交えつつも、むしろ憂いを帯びたメロディにこそ重きを置いた作風はSoenならではの武器であると言えますね。

さて、これ以上の類似点或いは相違点を書き連ねることに意義は見出せませんが、コード進行や音使いといった表層的な部分ではなく、深層部分で根を張る抽象的な精神世界こそがTool最大の魅力だと解釈している方々にとっては、両者が描く音世界の明確な違いを認識出来るのではないでしょうか。

賛否両論は幾らかありますが、純粋な音楽作品としての完成度が優れているので個人的には終始楽しんで聴けました。

Music Video: #10. Savia

Rating: 9/10




"Tellurian"


Album Type: 2nd full 

Style: Progressive Metal, Modern Progressive Rock, Alternative Metal

Legth: 52:20

Released: 2014

Review:

前作はオリジナリティ面で多少の賛否両論こそ生んだものの、寸分の隙もない完成度でシーンに彗星の如く姿を現したSoen。

彼らの次なる手となった今作は、前作から大幅に向上した作曲術と各々のプロフェッショナルなパフォーマンスで、作品全体の質を飛躍的に向上させた傑作となりました。

全体的な作風を述べると、前作で幅を利かせていた直接的なオルタナ要素が減退したことを挙げられるでしょう。

例えば、空間系の無機質なエフェクトを施したギター・フレーズが導く静的ヴァースで聴き手の意識を集中させ、動的サビ・パートで突如スケールを拡大するといったアメリカンな分かりやすさを感じさせる手法は削り取られています。

その代わりに、過去のプログレ史では類を見ないほど細部まで拘り抜かれた極上のグルーヴ感を生み出す名手Martin Lopez(Dr)の民族的ドラミングと、ファンク由来のフレキシブルな躍動感やジャズ由来のセクシーな重低音を披露するStefan Stenberg(Ba)のベースから成る変則的で流動的なリズム・セクション、そして、前作時点でSoenサウンドの核を担っていた北欧フォーク直系の陰鬱さを錬磨させたことで、曲展開の多様性とダイナミズムが格段に高まり、結果として哲学的ですらある知性が息衝く世界観を創り上げることに成功しました。 

荒れ狂う濁流のように揺れながら激しく押し寄せるドラミングの波と、デス・メタル由来の鉛色に濁った暴力性に中近東風のスパイスを少々加えたギターが織り成す攻撃姿勢から、珠玉の北欧式メランコリーが凝縮された幽玄メロディや、サイケデリックな不可思議さが近代的に冴え渡るパートへと俄かに移行する場面は全編を通して大きな聴きどころ。

また、楽器隊の劇的な進化を喰う勢いの異様な輝きを放つJoel Ekelöf(Vo)のボーカル・パフォーマンスは、最早Maynard James Keenan(Tool/A Perfect Circle etc)とは別次元の北欧的崇高さ──言わばJonas Renkse(Katatonia)、Mikael Åkerfeldt(Opeth)、Kristoffer Rygg(Ulver)などに代表される北欧出身の気高きダーク・ヒーロー達にしか醸し出せない神懸かりの抒情美を会得した点は、今作において特筆に値する魅力でしょう。

彼が歌うサビ・パートがしばしば二段構成を採っているのも、この手とジャンルでは新鮮でとても素敵。

何処か退廃的な音色のストリングス・アレンジを交え、Joel Ekelöf(Vo)の凄まじい悲哀と絶望感が込もった絶唱が響き渡る#4. The Wordsは、メタルやプログレ云々を超越したデプレッシブ・ミュージックの金字塔と位置付けられるべき大名曲です。

メンバー達の潜在能力が遺憾無く発揮されているだけでなく、作品全体の統一感、本来のプログレとオルタナに求められる画期性、両ジャンルの魅力が目一杯に詰まった名盤です。

Music Video: #4. The Words

Rating: 9.5/10




"Lykaia"


Album Type: 3rd full 

Style: Progressive Metal, Modern Progressive Rock, Alternative Metal

Legth: 57:53

Released: 2017

Review:

多彩なアプローチを知性的に混ぜ合わせながら、北欧メランコリック・フォーク特有の幽暗たる気品を音の節々から醸し出す傑作2ndで、一躍モダン・プログレ界の最高峰と言うべき領域へと足を踏み入れたSoen。

そんな彼らの3作目となる今作は、過去作においてもユニークな強みであった視野が現代風に広く、しかし精緻な調和が先端まで行き届いた独自の審美眼の下に更なる音楽性の拡張を行い、予てより手探りに励んでいたバンドとしての独自性をここで確立させることに見事成功しました。

とりわけ、同郷のドゥーム・メタルバンドAvatariumで現在活躍中のMarcus Jidell(Gt)と、前作リリース後に正式加入した専任キーボーディストLars Åhlund(Key)ら新メンバー達によるアウトプットが功を奏し、前作でも積極的に使用されてきたアラブ音楽由来の煌びやかに光り輝く黄金旋律の存在感が増しているのは、今作を語る上で避けては通れない美点です。

レトロでアダルティな雰囲気を纏った白玉の鍵盤楽器や、土っぽい音作りを施したギターが発散する中近東音階のメロディは、70年代ジャーマン・プログレに匹敵する夢心地の神秘性を実現しています。

また、前作で異彩を放っていた大名曲The Wordsに手応えを得てか、耽美派ノワール・ジャズに通ずる沈鬱世界をモノクロで描き出す感情表現を、名手Martin Lopez(Dr)の職人的技能が存分に活かされた唯一無二のドラミングを主軸に、随所で熾烈な火花を散らしながら猛々しい生命感を喚起するメタリック・アンサンブルへと一層巧みに溶け込ませた点も大変素晴らしいです。

これら2つの新機軸アプローチが完璧に融合された#5. Jinn、#6. Sister、#9. God's Acreは、究極の幻想感を体現するJoel Ekelöf(Vo)の超絶抒情ボイスが相乗効果として最大限機能しており、思わず息を呑んでしまうほどに美しい。

ありとあらゆる手法が幾重にも折り重なりがらも、奥底には古代から現代に至るまで精神面で何の進歩も見られない人間社会の残酷さを暗示するような黙示録的トーンが横たわっており、その生々しいまでにエモーショナルな部分が忽然と姿を見せた刹那、聴き手に深い感動と思索の念を与えるのです。 

そして、昨今のデジタル主義的な志向性とは正反対のオーガニックな温かみを宿したアナログ式の録音術もまた、Soenが持つ独自性を確かなものに昇華させていますね。

モダンとレトロ、アグレッションとメランコリー、光と陰などといった言わば表裏一体の構成物が極めて自然な形で収斂した今作は、言葉本来の意味合いでプログレッシブ、そしてオルタナティブな音像を自らの手で創造した新世代屈指の傑作と評価されるべき作品でしょう。

Music Video: #3. Lucidity

Rating: 10/10


Nosound/Scintilla (2016)


1. Short Story

2. Last Lunch

3. Little Man

4. In Celebration Of Life

5. Sogno E Incendio

6. Emily

7. The Perfect Wife

8. Love Is Forever

9. Evil Smile

10. Scintilla



イタリア産ポスト・プログレッシブ・ロックバンドです。

通算5作目。

Kscopeからのリリース。



NOSOUND



様々なミュージシャンにインスピレーションを与える孤高の存在Porcupine Treeの活躍で、世界にその英名を轟かせた総帥Steven Wilson登場による変革の風は、イギリス、ドイツ、東欧のみに留まらず、かつてはプログレ・ムーブメントを牽引していたイタリアにも俄かに吹き始めています。

今回の主役Nosoundは、その溢れんばかりの才気でポスト・プログレ/アート・ロック界を代表格に数えられるイタリアの至宝です。

元々は、マルチ・プレイヤーの作曲家Giancarlo Erraが始動させたソロ・プロジェクトだったのですが、作品を重ねる毎にバンド体制を整えていき、正式なロックバンドとして活動するに至りました。

幻想的な空間の広がりを生む電子音をふんだんに駆使したアンビエント/チル・ウェイブを主軸に、郷愁を刺激する柔らかなフォーク要素、中期Pink Floydを思わせるトリップ感を融合させた1st"Sol29"、普遍的な歌とバンド・アンサンブルに力を注いだ結果、ロック由来のカタルシスと元来の優美な悲愴感が混ざり合い唯一無二の音像を確立した飛躍作2nd"Lightdark"、室内楽由来の壮麗なストリングスと銀盤のクラシカルな旋律を孤独感漂う芸術派ロック・サウンドに美しく纏わせ、持ち前の感傷的な世界観をシネマティックな次元にまで進化させた最高傑作3rd"A Sense Of Loss"、抒情性満点の悲哀サウンド・スケープに、キャリア史上最高のアグレッションを叩き出す生々しいドラミング、流麗な泣きメロを発散するソロ・ワークといったロック手法を積極的に持ち込み音楽性の幅を広げた野心作4th"Afterthoughts"と、新世代芸術音楽の一つのシンボルと成り得る芳醇な香りを宿した逸品を順調に発表してきました。


で、今作の話。

ここに来て再びアプローチを変えてきた印象を受けます。

とは言っても、これ見よがしな路線変更を果たした訳では勿論なく、2ndから次第に、しかし確実に強まってきたロック然とした躍動感と、皇帝Porcupine Tree及びSteven Wilsonソロ作の流れを汲む微睡みの酩酊感を帯びた濃淡豊かなバンド・サウンドへ、環境音楽系アンビエント/チル・ウェイブの幻想世界でトリッピーに揺蕩うような空間意識、イタリアン・フォークが備えた郷愁の念と耽美性を抽出し、それらを情緒的なアコギを交えてどこまでも上品に磨き上げる手法を融合させたものが、依然としてNosound音像の絶対的な核に据えられています。

しかしながら、これまでの作品群を語る上で重要な存在感を放っていたシンフォニック手法、つまり、ヨーロピアン特有の格調高さを感じさせる鮮やかな銀盤運びや、室内楽式カルテット・ストリングス隊を用いた金色に輝く重奏などで、バンド・サウンド全体を優雅に包み込んでいく方法論が今作では極力抑えられているのがポイントです。

代わりに新機軸として顔を覗かせるようになったのは、万華鏡さながらに色彩の富んだドリームポップ要素と、2000年代のUK産インディー・ロックバンドを思わせる気怠く湿ったキャッチーさ。

まず、前者に関しては、柔和で温かい感触と何処か退廃的に沈殿していく趣を兼ね備えた夢心地のアンビエンスの結晶を表出するMarco Berni(Key)のキーボード、全編で惜しみなく導入される年季の入った陶酔感と文学的ロマンチシズムを呼び覚ます妖艶な旋律を奏でるMarianne De Chaselaine(Cello)のチェロ、極めてムーディな多幸感を喚起する甘美なアルペジオ、曖昧な輪郭の音色を帯びたレイドバックで音世界に後光を差し込ませる主人公Giancarlo Erra(Vo/Gt/Key)のギターなどに顕著なように、各楽器隊が一体となって音の波を形成していたこれまでとは打って変わり、一音一音を大切に使ったプレイが披露されています。

イタリアの歴史が詰まった荘厳さを節々から発散する重厚なシンフォ手法の減退=音の隙間を活かす方法論への全面シフト、サイケと容易く呼ぶのには些か躊躇いが生じるほど粒揃いに洗練された、緊張感が緩やかでカラフルなパフォーマンスは明らかにドリームポップへの接近を意図しているように感じました。

そうしたプレイと一緒に切々と奏でられるPaolo Vigliarolo(Gt)のアコギも、今作のドリーミーさを味わい深く引き立てていると言えます。

そして、後者に関しては、前作で印象的だったアグレッションを押し出すものから方向性を修正し、ジャズ調の軽快な跳ね感を精密に組み立て直したかのようなリズム・セクションを魅せているのですが、サビ・パートにおいて過去作の比較にならないレベルの積極性で独特の内省的メロディを聴かせるGiancarlo Erra(Vo/Gt/Key)の歌声を中心に、分かりやすく滑らかにスケールを拡大していく楽器隊はキャッチーと呼んでも差し支えないぐらい煽情的で、しかし、そこには穏やかな鬱性が秘められているのです。

このバランス感覚は実にUK的で、特に6曲目Emilyのジメりとした倦怠感はかつてのNosoundにはない類のもので新鮮に映りました。

Vincent Cavanagh(Anathema)のゲスト参加もUK志向の裏付けと成り得ますね。

何だろう、表面的には癒し特化型に思えるんだけど、巷のデプレ・ブラック勢よりよっぽどリアルに人生の暗部を投影する表現力は色んな意味で殺人的ではなかろうか。

まるで閑静な夕暮れの街を独りで彷徨うような心象風景を映像的に描写する曲展開の妙技、露骨なハイライトを設置するのではなく心のナイーブな移り変わりを的確に捉えた流れを聴く限り、Nosoundが今作で試みた新たなエッセンスはひとまず成功を見たと言えるでしょう。

初期とは幾らか表現方法が変わっているものの、人間が持つあらゆる類の精神的な憂鬱感、例えば、失恋や別離によって身も心も切り裂かれたかのような傷心状態から、ノスタルジーに起因する何とも形容し難い空虚さに覆われた状態などを、音楽という名の芸術を通してセンチメンタルに描くという、自らのアイデンティティを維持しながら果敢な進化を遂げたバンドの魅力が一枚に凝縮されている逸品であります。

あと、全作品のアート・フィルムを手掛けているGiancarlo Erraのカメラ・センスの上達具合が素人目に見ても半端ないですw



Rating: 9/10


Crowbar/The Serpent Only Lies (2016)


1. Falling While Rising

2. Plasmic And Pure

3. I Am The Storm

4. Surviving The Abyss

5. The Serpent Only Lies

6. The Enemy Beside You

7. Embrace The Light

8. On Holy Ground

9. Song Of The Dunes

10. As I Heal



アメリカ産スラッジ・メタルバンドです。

通算11作目。

eOne Musicからのリリース。



CROWBAR


脳筋アメリカン・メタルの英雄Phil Anselmo(ex Pantera)、Jamey Jesta(Hatebreed)をして「スローでヘヴィなリフを作らせたら旦那の右に出る者はいない」とまで言わしめる親玉Kirk Windsteinを中心に、アメリカ南部の都市ニューオリンズで結成された今回の主役Crowbarは、ひたすら重鈍で閉鎖的なドゥーム・メタルへ、ハードコア由来の荒々しい凶暴性と、グルーヴ・メタル由来のタメが効いた横揺れ感を盛り込んだ音楽スタイル──スラッジ・メタルの先駆者に位置付けられる界隈の最重要バンドです。

地元の繋がりが深いニューオリンズ産HR/HMミュージックの象徴として押しも押されぬ威厳を備えた存在と評価されていることに加え、アメリカン・スラッジ・シーンを形成したバンド群の中では、Melvins、Neurosis、Eyehategod、-(16)-と並んで世界的に最も強い影響力を保持しており、その勇名を轟かせています。

現在世に溢れている暴力志向のスラッジ/ドゥームコア・サウンドは必然的にCrowbarの影響下にありますし、何ならHatebreed等のメタリック・ハードコア勢による脳筋ビートダウンのお手本は彼らが作ったと言っても過言ではありません。

タフガイ・ドゥームの塊1st、煽情力が飛躍した哀愁メロディとハードコア式の突進を野蛮に融合させた2nd、3rd、初期の集大成+極悪ドゥーム色を強めた4th、メロディに闘う漢の悲哀と苦悩が如実に反映されたキャリア最重量期5th、6th、音像の壮大さと曲展開の多様性を強化した7th、静動/明暗の対比がドラマティックに磨かれた8th、一級正統派メタル顔負けのエピックな高揚感と過去最大のスケール感を封じ込めた9th、陰影に富んだ悲愴感が覆う10thと、作品毎にメロディの質や曲展開など微々たる違いこそあれど、初期から現在に至るまで"漢のドゥーム魂"が徹頭徹尾貫かれた武骨な作品群をコンスタントに発表してきました。


で、今作の話。

1st~6thでベースを担当していたオリジナル・メンバー(親玉Kirk Windsteinを除いてはバンド在籍期間最長)で関取級の巨体の持ち主Todd Strangeが電撃復帰を果たして、リリース前から北米や南米のメタル・コミュニティで話題となっていた彼らですが、肝心の中身としては大方の予想通り、清々しいほどまでの不動っぷりであります。

ここ数作との明らかな違いを挙げるとするならば、Todd Strangeが復帰したことでメンバーの平均体重が増えたこと、初期作に共通していた宗教画風の絵柄に近年前面にフィーチャーされてきたクローバー・マークを添えるという、毎度センスが絶望的に残念なCrowbarとは思えないほど秀逸なアート・ワークが採用されたことぐらいで、とにかく基本的な音像は微塵にもブレていません。

つまり、今回も最高の超重量級スラッジ・メタルが詰まっているということです。

勿論、剛直に固定された軸足の上で細かなタッチの変化を隠し味として加え、過去作の安易な焼き直しに陥らない多様性を与えているのは今作においても見逃せないポイントで、例えば、破天荒な衝動性を放つハードコア色の減退、代わりに2000年代以降の音像で顕著である、まるで巨大な鉄球の足枷を繋がれた闘士達がコロッセオで戦うかのようにヒロイックなドゥーム色の更なる増強及び泥っぽい暗黒性の拡張、サザン・ロック直系の悲哀ハーモニーの練磨、普段以上に歌メロの充実度を重視する姿勢などは作中で明確に機能しています。

長いキャリアを持つバンドの作品を解説する際に度々用いられる"ベテランらしさ"とは、得てしてアイデアの枯渇を暗に意味する場合が多々ある訳だけれど、Crowbarにはネガティヴ・ミーニングが当て嵌まらないと言っておきましょう。

この辺りは、独自のスラッジ・サウンドを長年追求してきた親玉Kirk Windsteinによる匠の技が最大限活きる熟練コンポーズ能力の賜物と言う他ありません。

靭性に富んだ柔軟なタメ感と取っ散らからない程度に器用な小技を駆使しながら、鈍い低速を中心に爆発力マシマシで豪快に叩き込むTommy Buckley(Dr)のドラミングと、Todd Strange(製作段階では未参加)のプレイを明らかに意識した筋肉質で粘り気の強い重低音グルーヴィ・ベースで強靭なサウンドの骨格を鋼鉄精神を以って硬派に形成、太い芯が通った前のめりのパンキッシュな突進から飛び抜けた重厚感を生む鉄槌スロー・パートへと力技で雪崩れ込む脳筋リズム・チェンジといった、デビュー以来お馴染みの方法論も相変わらず冴えています。

そこへKirk Windstein(Vo/Gt/Ba)、Matthew Brunson(Gt)から成る界隈屈指のタフガイ・ギター隊が、足を地に付けドッシリと構えていると言うより重量過多で地面に足がめり込んでいる様相の轟音崇拝系スラッジ・リフ、ヘドロさながらの泥濘に引き摺り込むドゥーム・リフを大変暴力的な感性で次々と振り落とし聴き手を手荒く捩じ伏せていくのですが、あまりにも重々しいリフの応酬が生む説得力は並外れた次元にあり、"スラッジ・メタルはリフの音楽"と言った専門家筋の表現は的を得ていると感じられました。

一方、中期以降じっくりと磨きを掛けてきたメランコリックな叙情性を漂わせる闇メロディや、ボロボロの重戦車に搭乗して敵兵を薙ぎ倒しながら最後の特攻を試みるかのように燃える悲壮感をヒロイック且つエピックに喚起するツイン・リード、スラッシーな殺傷力を鉛色の音に落とし込んだ肉厚な刻み、耽美な鬱性を堪えたアルペジオなどを添え、豊潤なドラマ性を巧みに演出しているのが見事。

こうした正統派メタル勢にも通ずるキャッチーなメロディをさり気なく組み込んでいく手法と、食事をしている時に聴いてもご飯が不味くならないドゥーム加減は、類型的なスラッジ/ドゥームコア勢の追随を許さないCrowbarならではの独自性であると捉えることが出来るでしょう。

そして、親玉Kirk Windstein(Vo/Gt/Ba)による潰れたボーカル・ワークもまた非常に強力な武器であります。

音楽を演るには絶対に不要であろうパンパンに膨れ上がったウエイトリフター系の筋肉を全身に装備し、そこにアメリカンな贅肉を乗せるといったパワー最重視の筋骨逞しい体躯から放たれる声は正に武神の咆哮といったところ。

元々の声質自体は完全なる濁声ながら、抜群に優れた歌心でどこまでもパッショネイトに絶唱する熱血スタイルで、幅広い層の心へ響くであろう魅力を確立している点は特筆に値するファクターでしょう。

吐き捨て気味の豪胆なシャウト、ダイナミックなメロディを積極的に追う悠然とした闘志漲るハーシュ・クリーンの有無を言わさぬ気迫は当然のこと、今作で一際力を入れたブルージーな憂いと厚情を帯びる深い歌声も実に聴き応えがありますね。

今作中でも印象深い存在感を見せる珠玉のダーク・バラード9曲目Song Of The Dunesでの南部らしい空気感と倦怠感が共に宿った歌メロは彼の新境地ではないだろうか。

スラッジ・メタル、グルーヴ・メタルのボーカリストとしては間違いなく最高峰のパフォーマンスだと思います。

また、後続達のようにデジタリックに引き締まった没個性的な音作りではなく、あくまでドゥーミーに澱んだ弦楽器と、抜けの良い打楽器の対比が際立ったミキシングの妙技は何回聴いても面白い。

基本的な音楽性はブラさずとも、自らの理念に沿った深化を遂げていくバンドのあるべき姿="漢のドゥーム魂"が余すところ無く投影された力作に仕上がりました。

苛烈なまでに重く遅い音楽性が故、日本では知名度/人気が未だにサッパリの模様ですが、2nd"Crowbar"、4th"Broken Glass"、9th"Sever The Wicked Hand"辺りは重金属好きの方に是非とも触れて頂きたい雄弁な作品です。



Rating: 9/10

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