まぁ、頑張りまっか

自分が気に入ったバンド/ミュージシャンの感想文付きディスコグラフィを作ります。 このブログで掲載しているものは実際に音源を購入した作品に限ります。

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Band: PARADISE LOST
Genre: Gothic Metal, Electronic Gothic Metal
Nation: 🇬🇧
Thematic Years: 1993~1997




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Album Type: 4th full
Style: Gothic Metal
Legth: 50:32
Released: 1993
Review:
オーケストレーションや女声ソプラノを意図的に抑え、純粋なバンド・サウンドで陰鬱&耽美な世界観の再構築に成功した前作3rd。
本人達が無自覚の内に、Black Sabbathから脈々と連なる英国メタルバンドらしいデカダンな風格すら備わってきたParadise Lostの4枚目となる今作は、ゴシック・メタルをエクストリーム・メタルの監獄から解き放った記念碑として名高い歴史的名作です。
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まず、今作最大の特徴は、Nick Holmes(Vo)が遂にグロウルを捨て去り、内に秘めた憎悪や苦悩を自己犠牲を思わせるほど不器用に、しかし情熱的に歌い上げるスタイルへとシフトした点でしょう。
もっとも、低音~中音の普通声に荒々しいエッジを施したハーシュ・クリーンを主に使用している上、力強さや節回しがスラッシュ系の吐き捨てシャウトと遠からずな質感なので、"メロディ・オリエンテッドなボーカリスト"にまで化けた訳ではありません。
しかし、虚仮威しではない、人間らしい情念の揺れ動きを常に追い求めてきたNick Holmes(Vo)にとって、"積極的に歌うこと"は極めて大きな進歩となりましたし、音楽面のバリエーションは勿論、ゴシック・メタルの多様化にも直接的な影響を及ぼしたことは明記しておくべき事実です。
また、今作に於ける楽器隊のパフォーマンスは、アンサンブルの説得力が増した前作の旨味を引き継いだものですが、エクストリーム色は大分薄まってきており、代わりに、正統派メタル由来の普遍性と壮大なドラマ性をドゥーム・サウンドに組み込んでいます。
エクストリーム色が薄れたことで、前作で排除されていたオーケストレーションや女声ソプラノの再導入に、ゴス・ロックが持ち得る官能美が加味されている点がユニークですし、精神的な重圧感が反比例のように増している点も強く印象に残ります。
これら勇猛果敢な変化により、陰鬱&耽美&情熱の3要素が時に交差し、時に拮抗するという綱渡り的バランス感覚が、Paradise Lostの音像内で成立したことも見逃す訳にはいかないでしょう。
映画音楽風の幕開けから勇壮なスロー・リフと嗄れた歌声が武骨に響き渡る代表曲#1. Embers Fire、終末世界さながらのドゥーム・リフと荘厳なタッピング・メロディの応酬が映える#4. Joys Of The Emptiness、灰色の濃霧を想起させる陰湿なフレーズと躁鬱気味のボーカルが苦々しい#8. Weeping Words、心に穴を開ける漆黒のメランコリーと恐ろしく失意に塗れたバリトン・ボイスが至高の退廃美を織り成した指折りの名曲#10. True Belief、穢れなき女声ソプラノとの艶かしく交わる王道ゴス・チューン#12. Christendomなど、全編を通して聴きどころ満載の素晴らしい仕上がりです。
今作以降のNick Holmes(Vo)は、14th”The Plague Within”まで20年以上に渡ってグロウルを封印することになるので、彼が如何に新しいボーカル・スタイルへ手応えを感じたかが分かりますね。
グランジ、シューゲイズ、ブリットポップ、ヒップホップ、ハウスといった時流に飲み込まれ史上最悪の低迷期に陥っていた英国メタル界に、新たな命を吹き込んだ重要作を挙げるとするなれば、完成度の高さや後続への影響力も含めて自分は今作を推したいです。
2ndが"ゴシック・メタルの旧約聖書"ならば、今作は"ゴシック・メタルの新約聖書"と言い表せることでしょう。
Music Video: #1. Embers Fire
Favorite Track: #10. True Belief
Rating: 10/10


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"Draconian Times"

Album Type: 5th full
Style: Gothic Metal
Legth: 48:59
Released: 1995
Review:
エクストリーム色を一掃し、ゴシック・メタル延いては英国メタル界の未来を切り開いた歴史的名作4thは、Paradise Lostの地位を世界規模にまで押し上げました。
黄金期の真っ只中にいる彼らが2年の年月を費やして創り出した今作は、バンド史上最も大きな商業的成功を収める至った作品にして、今尚"Paradise Lost最高傑作の一つ"と語り継がれる金字塔です。
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まず、全体的な作風については、"脱エクストリーム化"を決定付けた前作の音像を更に発展させたもので、そこに独創的なキャッチーさを会得したことが今作の大きな魅力となっています。
例えば、グラム・ロック風の豪快なドラミングをParadise Lostが元来持ち味としてきた重苦しいアンサンブルへと取り込んだ結果、楽曲ごとのテンポに振れ幅が生まれ、聴き手を惹きつけて離さない鮮烈なコントラストが顕著となりました。
いつになく明るい光を纏ったギターの音色がゴシカルな美旋律と邂逅する#2. Hallowed Land、シンプルな曲構成の上に乗る簡素なサビと縦ノリのリフが死期の脈動を見せる大合唱必至アンセム#3. The Last Time、3rd収録Pity The Sadnessや4th収録Widowで培った疾走+悲哀の流れを汲む王道メタル・チューン#5. Once Solemn、80年代ハード・ロック直系のワウペダル術を活かした古典的フレーズが温かみのある暗黒粒子音へと変換される#9. Shades Of Godなどは、今作のどこか精神的に不安定で鬱屈としたキャッチーさを象徴する好例でしょう。
他バンドとは一線を画すコンポーザー・センスの目立つ場面が増えたことで、真紅色に瞬きながら闇に溶け込む珠玉のメロディや痛みが伴う悲愴なソロの数々を、往年のNWOBHM顔負けの煽情力を以って展開していくGregor Mackintosh(Gt)の存在感は、最早"ゴシック・メタル界のギター・ヒーロー"と賞賛するに相応しいほど抜き出ることになりました。
同時に、相棒Aaron Aedy(Gt)が緩急巧みに弾き出す濁った重金属リフや、夢想的な哀切を帯びたアコギとの絡み合いは、機械的なグルーヴが支配していた90年代の時流とは正反対の質感であり、そこに英国メタルの救世主たるParadise Lostの気高い矜持を感じざるを得ません。
そして、他者とは決して分かち合えぬ絶望をメラメラと燃え滾る生命感で歌い上げるNick Holmes(Vo)は、この時点でハーシュ・クリーンの代表的な使い手にまで成長しています。
前作では多少力んでいた感の否めなかった彼のボーカルですが、しっとりとしたバリトン・ボイスを挟みつつ、以前のグロウルを遥かに上回る危うい気迫と緊迫感を備えた絶唱を繰り広げる姿には胸を打たれること間違いなし。
特に、陰鬱&耽美&情熱──Paradise Lostを構成する三大要素を最良の形で凝縮した超名曲#4. Forever Failureでのパフォーマンスは神懸かりです。
終盤に向かうにつれて徐々に暗くなるアルバム流れは、Joy Division登場以降のゴシック音楽文化を彷彿とさせる一種の伝統芸能ではありますが、それ以上に、罪を背負って闇の中で彷徨うような孤高の芸術性を損なうことなく、ゴシック様式或いはドゥーム様式の典型に陥らない大衆性と多様性を手にした点が、Paradise Lostにとって非常に重要な意味を持ったことは今や明白でしょう。
ゴシック云々を抜きに、全てのメタルヘッズにオススメ出来る奇跡の傑作です。
Music Video: #4. Forever Failure
Favorite Track: #9. Shades Of God
Rating: 10+/10


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"One Second"

Album Type: 6th full 
Style: Electronic Gothic Metal, Gothic Rock
Legth: 54:58
Released: 1997
Review:
NWOBHM全盛時代に勝るとも劣らないキャッチーさを自身の哲学に従って血肉化させたことで、闇と光が激しく鬩ぎ合いながら混じり合うという、HR/HMの新たな金字塔を打ち立てることに成功したParadise Lost。
前2作で"脱エクストリーム・メタル化"を確定し、英国HR/HM界を代表するバンドとしてメジャー・フィールドで戦う宿命を背負った彼らは、今作でいよいよ前人未到の音楽領域へと足を踏み入れました。
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まず、今作最大の特徴は、メタルの範疇から逸脱したエレクトロニック手法を全編で積極導入し、これまでとは全く別の角度から斬新なゴシック・サウンドを作り上げた点にあります。
そう、このアルバムを支配するのは、"耽美派シンセ・ポップの皇帝"Depeche Modeから多大な影響を受けたであろう、モダンに洗練されたメランコリックなキーボードの美旋律、やけに金属的な響きのビート、分厚い重低音の弾幕を張るデジタル・ベースといった電子音楽要素であり、過去作で聴けた煽情力抜群のギター・ソロを始めとする伝統的なHR/HM要素は極力抑えられています。
また、ザクザクとテンポ良く刻んでいく硬派なリフ・ワークこそ残ってはいるものの、どちらかと言えばインダストリアル風の無機質さを強調している為、Paradise Lostの持ち味である静と動のコントラストを巧みに活用したダイナミックな曲展開の感触も、過去作で顕著だったクラシック調のものからエレクトロニック・ダーク・ウェイヴ調のものへと変貌を遂げています。
それに加え、Nick Holmes(Vo)はトレードマークであるハーシュ・クリーンを封じ、予想以上に広くなった音域でSimon Le Bon(Duran Duran)すら彷彿とさせる艶っぽい歌声を披露しているのも目新しいポイントでしょう。
要するに、90年代後期に於けるゴシック・メタルの形式化進行を尻目に、随分と思い切った方向転換を図った訳ですが、これがParadise Lostの更なる飛躍に繋がったことは今作の収録曲を聴けば明らかです。
例えば、憂いを帯びた鍵盤のループに、哀愁と色気を漂わせるNick Holmes(Vo)の美声を乗せた#1. One Second、ゴシック界最強クラスのインパクトを誇るイントロで華麗に扇動しながら、貴族的なバリトン・ボイスと情熱的な高音ボイスで"1人デュエット"を繰り広げる一撃必殺チューン#2. Say Just Words、オーケストレーション風の壮大な電子音と機械的なリズム・パターン、人間らしい情念が宿ったボーカルが未知の化学反応を生む#4. Mercy、哀しみを押し殺すような歌声を聴かせつつ、作中最重量のドゥーム・リフが鳴り響くや否や秘めたる絶望感が吹き出す#10. Disappearなど、モダン・ゴシックとも形容出来る世界観を提示してくれます。
Paradise Lostを構成する三大要素(陰鬱&耽美&情熱)の魅力を充分に残しつつ、エレクトロニック・ミュージックの持つ未来感が加わったことで、人間の脆さをスタイリッシュに描写する表現力をも会得したのです。
なお、今作発表以降、多くの有力ゴシック・メタルバンドがParadise Lostの後を追ってエレクトロニクス方面へと一時的に傾倒するムーブメントが巻き起こったので、その先進性は推して測るべしでしょう。
意図せずとも、結果的にオリジネーター自らの手でゴシックの多様性を押し広げることとなった新境地の傑作であります。
Music Video: #2. Say Just Words
Favorite Track: #10. Disappear
Rating: 10/10

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Band: PARADISE LOST
Genre: Death Doom Metal, Gothic Metal
Nation: 🇬🇧
Thematic Years: 1988~1993





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”Lost Paradise”


Album Type: 1st full
Style: Death Doom Metal, Proto Gothic Metal
Legth: 40:49
Released: 1990 (Remastered 2003)
Review:
ゴシック・メタルというジャンルが未だ世に存在しなかった頃、英国はウェスト・ヨークシャー州出身の若者達を中心に結成されたParadise Lostのデビュー作です。
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まず、全体的な作風としては、禍々しい死臭混じりの土煙を撒き散らしながら非情なブルータリティを叩きつける厭世系デス・ドゥームである為、2nd以降のバンド・イメージとは少々趣きを異にしているのが特徴と言えるでしょう。
さて、デス・ドゥームと言えば、昨今に於いてもアングラ主義HR/HM界の右翼に属するジャンルで有名ですが、実は同じ流派内部でも音像の質感に差異があります。
例えば、デス・メタル目線でドゥーム・メタルの特徴である重鈍さをアクセント的に踏襲したスタイル(同世代ではAsphyx、Autopsy)が元々の主流であった訳ですが、今回の主役Paradise Lostの場合はドゥーム・メタルを核に据えた上でデス・メタル様式(デス声、ディストーションを過剰に施したノイジーなギターなど)を取り入れたスタイルを採用しています。
後者に関しては、Paradise Lost自身や盟友My Dying Brideは勿論、Sempiternal Deathreign、Necro Schizmaらが生み出した所謂”ヨーロピアン・スタイル”と呼称されるもので、そのままゴシック系やフューネラル・ドゥームへと正統発展を遂げた結果、界隈の勢力図がガラリと塗り替えられることになったのですが、それは少し先のお話。
とにかく、ドン底まで力任せに振り下ろされる枯れた重鈍リフ、ミドル~スロー・テンポを基軸に粗暴な展開を魅せるリズム・セクション、化け物染みた負のエネルギーを吐き出すNick Holmes(Vo)の高低グロウルなど、表層的な過激さ=デス・メタルらしさという見方では長年のキャリアでも随一の出来栄えなので、後追いで今作を知った方々にとっては面喰らうこと間違いなしです。
その一方、英国産らしい翳りを持つアルペジオや微量の抒情成分を含んだソロを時折添えたり、クワイア風のアレンジ、ゴス・ホラー調のキーボード旋律、女声ソプラノ、不穏な鐘の音を実験的に導入したりと、”ゴシック・メタルのプロトタイプ”と思しき手法が見受けられる点は要注目。
"ゴスの帝王"The Sisters Of Mercy辺りから着想を得た細工は、80年代後期に勃興したデス・メタル勢との差別化を図る上で大きな役割を果たしました。
音像から想起される情景とは掛け離れた雰囲気のアートワーク(SF映画マニアであるNick Holmesの提案と思われる)や、録音状態の粗さなど作品自体の統一感には課題がありますが、当時の最重量級エクストリーム・サウンドは今聴いても迫力充分。
Live Video: #3. Paradise Lost 
Favorite Track: #5. Rotting Misery
Rating: 7.5/10

 

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”Gothic”


Album Type: 2nd full
Style: Gothic Metal, Death Doom Metal
Legth: 39:24
Released: 1991 (Remastered 2008)
Review:
デビュー作では、ポスト・パンク、ゴス・ロックといった英国人特有の耽美主義的で陰鬱な感性を根底に宿す厭世系デス・ドゥームを提示し、その身に底知れないオーラを纏わせていたParadise Lost。
80年代末期の闇より出でし魔物が短期間で産み落とした今作は、暗黒耽美派HR/HMの完成形の一つ、或いは”ゴシック・メタルの旧約聖書”と語り継がれる正真正銘の歴史的作品であります。
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まず、音像の骨格には、聴く者を圧殺するが如き重鈍リフ、暴虐の獣性を吐き散らすグロウルなど、破壊的な表現を辞さないデス・ドゥーム手法が引き続き採用されています。
しかしながら、今作最大の特徴は、クラシック音楽由来の手法を大々的に増強し取り込んだことで、既存のデス・メタル系譜には本来存在しなかった芸術性と、中世ヨーロッパの暗黒時代を彷彿とさせる世界観を確立した点に尽きるでしょう。
例えば、名刺代わりの代表曲#1. Gothicを始め、#2. Dead Emotion、#9. The Painlessなどの楽曲では、オペラティックな気高さや清廉さを感じさせる女声ソプラノと、生のオーケストラ隊を駆使した荘厳シンフォ・アレンジを導入、Gregor Mackintosh(Gt)による格段と悲愴な音色になったギター・メロディも相まって、まるでゴシック文学のように浮世離れした退廃美を実現しています。
また、Nick Holmes(Vo)は無機質な非人間性を追求するデス・メタル式グロウルの典型に終始することから早くも脱し、感情表現を深めた人間的なグロウルを会得しました。
超現実的な音楽性にありながら、べっとりとした生々しい痛みを伴って聴き手の気分を沈ませるのは、彼の熾烈なパフォーマンスに寄る部分が大きいです。
更に、#8. Silentでは不器用ながらもメロディを追おうとした努力が窺えますし、作中随一の求心力を備えたゴス直系ギター・フレーズが咲く#3. Shatteredでは野太いバリトン・ボイスを披露するなど、今後の躍進を予感させる試みも注目すべきでしょう。
さて、エクストリーム・メタルという過激な音楽形態に、クラシック要素やアートの香りを世界で初めて持ち込んだ異端教祖と言えばCeltic Frostの一択で間違いありませんが、Paradise Lostの場合はスローで重圧感のある音像とクラシカルなエレメンツの融合を図ったことで、悪魔的な閉塞感と神秘的な壮麗さが相互共鳴して生まれる劇場型コントラストを極端に発展させたのです。
彼らが今作で成し遂げた音楽革命さながらの試みは、所謂"ビースト&ザ・ビューティ"などのヨーロッパ的手法の雛型として数え切れないほど多くのバンド(先人、後続を問わず)から模倣され、そのまま作品名を冠したジャンル=ゴシック・メタルを誕生させるに至りました。
HR/HM史に於ける文化的価値の高さは当然ながら、バンドの飛躍と桁違いの独創性を捉えた古典作品をお試しあれ。
Live Video: #1. Gothic
Favorite Track: #2. Dead Emotion
Rating: 8.5/10

 

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”Shades Of God”

Album Type: 3rd full
Style: Gothic Metal, Death Doom Metal
Legth: 52:56
Released: 1992
Review:
歴史的作品2ndにて、暗黒耽美派HR/HMの完成形の一つと目されるゴシック・メタルを創造し、ヨーロッパ全土を18世紀の陰湿な空気で覆い尽くしたParadise Lost。
そんな彼らの次なる一手は、前作”Gothic”で積極的に披露されたクラシック要素──儚くも厳かな気品を発する女性Voやオーケストレーションの導入といった手法を敢えて排し、普遍的なバンド・サウンドを堂々と押し出した燻し銀な作風となりました。
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ただし、今作を語る上で重要なのは、前作からクラシック要素を削ぎ落とした代わりに表層的なブルータリティを優先するデス・メタル色を今更回帰させた訳ではなく、前作の流れを汲む陰鬱&耽美な音世界をギター隊の手腕で表現した点にあります。
とりわけ、これまでの楽曲に於いても、正統派メタルと英国ゴス・ロックを異種配合させたかのような独特のメランコリック・フレーズを編み出してきたGregor Mackintosh(Gt)の潜在能力は、今作で覚醒したと言えるほどの活躍振り。
ゴシック・メタルというジャンル内では希少価値が相当高いソロイストとしての才覚を世に知らしめた事実も見逃せません。
また、前2作でデス・メタリックな力技の転調を好んで用いてきたMatthew Archer(Dr)によるドラミングは、元来の重心の低さを維持しつつ剛直に構えるジャーマン・メタル様式に幾らか接近した印象を受けます。
結果として、Gregor Mackintosh(Gt)が随所で炸裂させる暗いドラマ性を宿したメロディが際立つよう作用しており、クライマックス付近に設置されたブリッジからの悲劇的な曲展開は、Paradise Lostのキャリアを通しても上位に食い込む仕上がりです。
芯の通ったリズム+重いリフの連撃から極自然に絡み付いてくる澱んだメロディや鋭く研ぎ澄まされたソロが実に渋い#1. Mortals Watch The Day、終盤に作中屈指の絶望感を噴出させる#4. Daylight Torn、スピーディに動き回るドラミングと攻撃的な刻みの応酬から俄かに悲惨な心象風景を描き出す#5. Pity The Sadness、引き摺るようなリズムの上に乗る野卑なスラッジ・リフと咽ぶメロディが魔のコントラストを生む#8. The World Made Flesh、破滅的なまでのメランコリーを血が滾るエネルギーに変換した代表曲#9. As I Dieなどは、そうした変化がプラス方向に働いた好例でしょう。
そして、前作で人間的な感情表現を身につけ始めたNick Holmes(Vo)の鬼気迫る咆哮型グロウルは、発声の細かな強弱や抑揚に磨きがかかり、ボーカリストとしてもう一段階成長したことをアピールしています。
HR/HM界に絶大な影響を与えた歴史的作品に挟まれるという過渡期の状況下で発表された作品ということもあり、日本では普段以上に地味な評価を下されがちですが、純粋な完成度では前作より上位にランクインする隠れた名盤です。
Music Video: #9. As I Die
Favorite Track: #4. Daylight Torn
Rating: 9/10

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Name: SOEN

Genre: Progressive Metal, Alternative Metal

Nation: 🇸🇪

Years Active: 2010~

Band:

"北欧の暗黒神"Opethの全盛期を独創性溢れるドラミングで彩ったものの、健康面の問題で脱退を余儀なくされた界隈屈指の名手Martin Lopez待望の音楽復活祭として、各方面の精鋭達で結成された芸術派スーパー・グループがこのSoenである。

彼が元来持ち味としてきた民族音楽的リズム感、北欧特有の陰影に富んだメランコリー、孤独感に裏打ちされた抒情性を深みで表現する構築美を、言葉本来の意味でオルタナティブな精神性を以って自在に融合させたSoenの音像は、聴き手の意識を捉えて離さぬ魔力を備えているのだ。




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Album Type: 1st full

Style: Progressive Metal, Alternative Metal

Legth: 48:13

Released: 2012

Review:

一時期は食事すら満足に出来なくなるほど健康状態が悪化していた名ドラマーMartin Lopezが国内外の手練れ達を率いて完全復活、との触れ込みで海外では結成当初より大きな話題を集めていたSoen。

そんなバンドの最初の一手となった今作は、90年代にオルタナとプログレの融合を成し遂げた米国の至宝="変態奇術師"Toolとの類似点が頻繁に持ち出される、少々意外なものに仕上がりました。

実際、せっかちな聴き手が早々に作品の評価を下しかねない序盤における、うねりながら底に沈殿していくようなギター・フレーズやエスニックな感触はToolからの影響を確かに感じさせますし、Joel Ekelöf(Vo)のボーカルは、奇人Maynard James Keenan(Tool/A Perfect Circle etc)と声質が近いだけでなく、並外れた歌唱力と表現力、しばしば再現困難と評される節回し(音の頭で声のピッチを滑らかに上下させるアレ)の熟し具合、どこかサイコパス風の雰囲気に至るまで、最早本人以上の"それっぽさ"が伺えます。

しかし、ここで重要な鍵となるのは、Martin Lopez(Dr)のゴリゴリと畳み掛けるようなデス・メタル式ツーバス乱打、ジャズ音楽、アフリカ音楽、ラテン音楽を自由に行き来する可動域がやたらと広い靭性に富んだグルーヴ感、北欧フォークが持つ寂寥感と美意識、懐古的ではなく現代的な感性を主眼に据えた上で、プログレとオルタナの融合を実行した点でしょう。

Opethは元より、北欧流のオルタナ方法論を確立した"鬱神"Katatoniaとも比較出来得る高貴な佇まいが備わっている点もまた、Toolとは似て非なるものと映ります。

土着的な孤愁を醸す名バラード#4. Last Light、静動の対比が実にスリリングな#5. Oscillation、北欧産らしい暗黒性を堪えたフレーズがジェント系リフに絡み付く#9. Slitheringなどのメロディ展開はそうした艶やかな佇まいが良く表れた例です。

何より、Toolの特徴である異常に偏執的で屈折した狂気の世界観は今作に存在せず、複雑な曲展開を効果的に交えつつも、むしろ憂いを帯びたメロディにこそ重きを置いた作風はSoenならではの武器であると言えますね。

さて、これ以上の類似点或いは相違点を書き連ねることに意義は見出せませんが、コード進行や音使いといった表層的な部分ではなく、深層部分で根を張る抽象的な精神世界こそがTool最大の魅力だと解釈している方々にとっては、両者が描く音世界の明確な違いを認識出来るのではないでしょうか。

賛否両論は幾らかありますが、純粋な音楽作品としての完成度が優れているので個人的には終始楽しんで聴けました。

Music Video: #10. Savia

Rating: 9/10




"Tellurian"


Album Type: 2nd full 

Style: Progressive Metal, Modern Progressive Rock, Alternative Metal

Legth: 52:20

Released: 2014

Review:

前作はオリジナリティ面で多少の賛否両論こそ生んだものの、寸分の隙もない完成度でシーンに彗星の如く姿を現したSoen。

彼らの次なる手となった今作は、前作から大幅に向上した作曲術と各々のプロフェッショナルなパフォーマンスで、作品全体の質を飛躍的に向上させた傑作となりました。

全体的な作風を述べると、前作で幅を利かせていた直接的なオルタナ要素が減退したことを挙げられるでしょう。

例えば、空間系の無機質なエフェクトを施したギター・フレーズが導く静的ヴァースで聴き手の意識を集中させ、動的サビ・パートで突如スケールを拡大するといったアメリカンな分かりやすさを感じさせる手法は削り取られています。

その代わりに、過去のプログレ史では類を見ないほど細部まで拘り抜かれた極上のグルーヴ感を生み出す名手Martin Lopez(Dr)の民族的ドラミングと、ファンク由来のフレキシブルな躍動感やジャズ由来のセクシーな重低音を披露するStefan Stenberg(Ba)のベースから成る変則的で流動的なリズム・セクション、そして、前作時点でSoenサウンドの核を担っていた北欧フォーク直系の陰鬱さを錬磨させたことで、曲展開の多様性とダイナミズムが格段に高まり、結果として哲学的ですらある知性が息衝く世界観を創り上げることに成功しました。 

荒れ狂う濁流のように揺れながら激しく押し寄せるドラミングの波と、デス・メタル由来の鉛色に濁った暴力性に中近東風のスパイスを少々加えたギターが織り成す攻撃姿勢から、珠玉の北欧式メランコリーが凝縮された幽玄メロディや、サイケデリックな不可思議さが近代的に冴え渡るパートへと俄かに移行する場面は全編を通して大きな聴きどころ。

また、楽器隊の劇的な進化を喰う勢いの異様な輝きを放つJoel Ekelöf(Vo)のボーカル・パフォーマンスは、最早Maynard James Keenan(Tool/A Perfect Circle etc)とは別次元の北欧的崇高さ──言わばJonas Renkse(Katatonia)、Mikael Åkerfeldt(Opeth)、Kristoffer Rygg(Ulver)などに代表される北欧出身の気高きダーク・ヒーロー達にしか醸し出せない神懸かりの抒情美を会得した点は、今作において特筆に値する魅力でしょう。

彼が歌うサビ・パートがしばしば二段構成を採っているのも、この手とジャンルでは新鮮でとても素敵。

何処か退廃的な音色のストリングス・アレンジを交え、Joel Ekelöf(Vo)の凄まじい悲哀と絶望感が込もった絶唱が響き渡る#4. The Wordsは、メタルやプログレ云々を超越したデプレッシブ・ミュージックの金字塔と位置付けられるべき大名曲です。

メンバー達の潜在能力が遺憾無く発揮されているだけでなく、作品全体の統一感、本来のプログレとオルタナに求められる画期性、両ジャンルの魅力が目一杯に詰まった名盤です。

Music Video: #4. The Words

Rating: 9.5/10




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Album Type: 3rd full 

Style: Progressive Metal, Modern Progressive Rock, Alternative Metal

Legth: 57:53

Released: 2017

Review:

多彩なアプローチを知性的に混ぜ合わせながら、北欧メランコリック・フォーク特有の幽暗たる気品を音の節々から醸し出す傑作2ndで、一躍モダン・プログレ界の最高峰と言うべき領域へと足を踏み入れたSoen。

そんな彼らの3作目となる今作は、過去作においてもユニークな強みであった視野が現代風に広く、しかし精緻な調和が先端まで行き届いた独自の審美眼の下に更なる音楽性の拡張を行い、予てより手探りに励んでいたバンドとしての独自性をここで確立させることに見事成功しました。

とりわけ、同郷のドゥーム・メタルバンドAvatariumで現在活躍中のMarcus Jidell(Gt)と、前作リリース後に正式加入した専任キーボーディストLars Åhlund(Key)ら新メンバー達によるアウトプットが功を奏し、前作でも積極的に使用されてきたアラブ音楽由来の煌びやかに光り輝く黄金旋律の存在感が増しているのは、今作を語る上で避けては通れない美点です。

レトロでアダルティな雰囲気を纏った白玉の鍵盤楽器や、土っぽい音作りを施したギターが発散する中近東音階のメロディは、70年代ジャーマン・プログレに匹敵する夢心地の神秘性を実現しています。

また、前作で異彩を放っていた大名曲The Wordsに手応えを得てか、耽美派ノワール・ジャズに通ずる沈鬱世界をモノクロで描き出す感情表現を、名手Martin Lopez(Dr)の職人的技能が存分に活かされた唯一無二のドラミングを主軸に、随所で熾烈な火花を散らしながら猛々しい生命感を喚起するメタリック・アンサンブルへと一層巧みに溶け込ませた点も大変素晴らしいです。

これら2つの新機軸アプローチが完璧に融合された#5. Jinn、#6. Sister、#9. God's Acreは、究極の幻想感を体現するJoel Ekelöf(Vo)の超絶抒情ボイスが相乗効果として最大限機能しており、思わず息を呑んでしまうほどに美しい。

ありとあらゆる手法が幾重にも折り重なりがらも、奥底には古代から現代に至るまで精神面で何の進歩も見られない人間社会の残酷さを暗示するような黙示録的トーンが横たわっており、その生々しいまでにエモーショナルな部分が忽然と姿を見せた刹那、聴き手に深い感動と思索の念を与えるのです。 

そして、昨今のデジタル主義的な志向性とは正反対のオーガニックな温かみを宿したアナログ式の録音術もまた、Soenが持つ独自性を確かなものに昇華させていますね。

モダンとレトロ、アグレッションとメランコリー、光と陰などといった言わば表裏一体の構成物が極めて自然な形で収斂した今作は、言葉本来の意味合いでプログレッシブ、そしてオルタナティブな音像を自らの手で創造した新世代屈指の傑作と評価されるべき作品でしょう。

Music Video: #3. Lucidity

Rating: 10/10

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