April 27, 2007

葉桜

桜を書いたから次は葉桜ね〜、というノリで
書いたものです。素子ばっかり出張ってますが、
カテゴリーはしっかり「バト素」です。
理由は・・・ご覧下さい。

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サンデッキの床には、白茶けた花びらが積もっていた。


つい先日やった様な気のする『春の宴』の後、
久しぶりにこのセーフハウスを訪れた。
あの春のどんちゃん騒ぎ以後、暫く天候不順が続き、
(それ以前に仕事がてんこ盛りだったのだが)
ついぞこの場に戻るチャンスは今日までなかった。


満開の花をつけていた桜の木々はすっかり葉桜へと変わり、
5月の風に吹かれて美しく萌黄色の葉を揺らす。
青空には雲ひとつ無く、遠くに一筋の飛行機雲が浮かんでいた。


サングラス越しに、記憶とは随分変わったその風景を遠めに眺め、
リクライニングチェアに降り積もった桜の花びらを払い落として
どかりと腰掛けると、手許の紙袋から一つの箱を取り出した。
箱には『御酒』という文字がデザインされている。
先日バトーが大学の売店で購入したものと同じものだ。
但し、これはサイズが一回り小さい限定品。
桜のシーズンに合わせたのか、薄紅色の花びらが
ラベルの上にデザインされてある。

ここに来る途中、大学の旧正門直ぐ脇にある売店で目ざとく
この泡盛を見つけ、何の躊躇もなく購入した。
「よかったですね。今年の酒はこれで在庫が終りなんですよ」
「そう?」
どうやら人気があるらしい。
元々限定品とか、そういったものにはあまり執着がない方なのだが、
美味しいと分かっている酒の在庫がないというのは悲しい。
「生産量をあまり増やせないもので・・・次の入荷が来たら
お知らせしますよ。宜しければご連絡先を伺っても宜しいですか?」
「・・・いいわ。近くに住んでるから」
暫し考えあぐねたが、またここに寄れば良いだけのことだ。
ありがとうございましたという店員の声と共に、
素子は見事な銀杏並木が続くキャンパス内へと足を延ばした。
確かにバトーの言う通り、駅からこのセーフハウスに行くには
大学を突っ切って行った方が5分程早く到着したのだった・・・


それが、今から15分ほど前の出来事。


今日は一人で、
あの美酒をゆっくり堪能しようと思った。
彼がこの事を知ったら怒るだろうが、
別に知った事ではない。
女は美味しいものに目がないのだ。
あの日、あれだけ上機嫌な自分を見せたのだから、
この位カワイイもんだと思いつつ、
可憐な白地の陶器の瓶の蓋を開ける。


「・・・・・」


あの時嗅いだ匂いと同じ薫りがした。
目を細めてニンマリしながら、用意してあったロックグラスに
トクトクと注いでいく。


吹き抜ける5月の風を感じながらグラスを傾けた。
あの日の光景を思い浮かべながら、
花のような薫りのする美酒を堪能する。

おいしい。
とてもおいしい。


でも、楽しくない。


風の音が静かすぎて。
遠くで鳴く雲雀の鳴き声が小さすぎて。
咲き誇っていた薄紅色の花弁が全て散ってしまって。



隣に誰も居なくて。





あなたが居なくて。




キュッ!


瓶の蓋を閉めた。
残りは彼がここに来た時に飲もうと思い、
そのまま箱にしまった。






一人で飲む酒がこんなにつまらなくなったのは、
バトー、あんたのせいよ。

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・・・・酒が絡むとバト素SSネタが
すらすら出てくるのは何故なんだろう(笑)
そして自分はやはりバト素スキーなんだと
改めて自覚した次第です(笑)


コメント一覧

1. Posted by 課長   May 11, 2007 00:18
続編の「葉桜」を拝読。

>おいしい。
>とてもおいしい。
>でも、楽しくない。

思わず吹き出してしまうのと同時に、ふむふむと頷いてしまった。

美味い酒も一人ではつまらないものだ。
これはきっとRei殿の言葉でもあるのだろう。

どうだ、ビンテージ物のワインでも一緒に?w
(勿論オプナーはRei殿持参でww)
2. Posted by Rei   May 15, 2007 06:56
課長様>
再度お立ち寄りくださり、ありがとうございます。

『ビンテージ物のワイン?
あら、それムートンね。
課長にしては随分奮発したんじゃない?
勿論オープナーは用意しておいたわ。』

課長様・・・こんな感じでよいでしょうか(滝汗)
ムートンに対して「随分奮発」だなんて、かなり間違いだと
(清水の舞台から飛び降りると言った方がいいかと)
思うんですが、素子の言う事ですから
その位サラッと言ってもらいたいという
私の希望が含まれています(笑)

未完成ラブロマンス個人的にも大好きな話の一つです。課長が超かっこ良過ぎ!
若い頃きっと彼女と何かあったんだろうな〜と
ニヤニヤしながら見てしまいます。

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