10月12日、花街研究家中原さんの呼びかけに呼応して、東京、名古屋、大阪からも集まって、「西陣ぶらり歩き」が実施されました。これまでも「石田民三生誕111周年記念『バッタリ寄席』」(2012年11月16日付け)などユニークな催しがありましたが、今回は西陣と映画館をキーワードに、縁の地を探訪する企画です。偶然この日の朝日新聞別刷りbe連載「NIPPON映画の旅人」は「五番町夕霧楼」(田坂具隆監督、佐久間良子、河原崎長一郎ほか出演、1963年)。原作者の水上勉さんがこの作品を執筆されたのは、「バッタリ寄席」会場の上七軒お茶屋「長谷川」だったこともあり、グッド・タイミング。
DSCN8325DSCN8322DSCN8331待ち合わせ会場の「カフェ・フロッシュ」(上京区七本松通五辻上ル)。町家を改造した素敵な店には、あちこちに愛らしいカエルの置物が。この日は、ドイツから来日中のハンブルク日本映画祭プロデューサーのオリバーさん、スタッフのマークさん夫妻、日本で勉強中のスタッフも参加。彼らにフロッシュはドイツ語で、カエルの意だと教わりました。

午前11時、簡単な自己紹介をして早速、大報恩寺(千本釈迦堂)から「ぶらり歩き」開始。案内は、70歳代後半の井村さん。撮影所でも働いた経験があり、子どもの頃から西陣の移り変わりを見てこられた方です。
DSCN8329DSCN8335DSCN8337応仁の乱で洛中唯一焼け残った大報恩寺本堂は国宝。この寺は「おかめさん」伝説でも有名で、屋根瓦にもおかめさん。

今出川通千本東の嘉楽中学校は元嘉楽小学校で、日本映画の父・牧野省三も通いました(この日探訪は省略)。西陣には今もたくさんの鍾馗さんが活躍中で、ドイツの友人達に「鍾馗さん」が何であるか紹介しました。教え、教えられの小さな文化交流です。右写真の天ぷら屋さんの場所(千本通今出川上ル西側)には、明治中頃に開館した「千本北座」(その後、広沢館に改称)がありました。
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左は江戸末期からカステラを作り続けている「越後屋多齢堂」(今出川千本東入ル)。その東隣に宮内庁管理「後土御門天皇後宮贈皇太后朝子般舟院陵」。10人のお墓と後花園天皇以下3人の分骨塔がこの門の奥にあるようです。右写真はその向かい側にある文永年間創業「アサノ楽器」(千本今出川西入ル)。明治11年の京都の案内書「都の魁」琴三味線商いの部にその名前が載っているのが分かります。今も和楽器の専門店です。
DSCN8343DSCN8353DSCN8355その東に大正8年創業の「大正製パン所」。トレードマークが歴史を感じさせます。中央写真の京都銀行西陣支店の場所には、「国華座」がありました。明治42年市川市十郎一座で開場し、後に活動写真(映画)を上映、「第二八千代館」と改称。
DSCN8358DSCN8360DSCN8363千本商店街各店舗のレトロな雰囲気の看板。案内表示も親切です。昼食は「大江戸」のトンカツ。高い天井に天窓がある建物で、機織り場を連想する設計です。かつて四条大丸近くにあった「大江戸」と同じ店。この店でも暖簾をくぐると大きな鯉が泳ぐ池がありますが、四条のお店では、水洗トイレの床がガラス張りで、その下を鯉が泳いでいてビックリしたことを思い出しました。
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今は無印良品のビルになっていますが、かつてはここに「千本座」(千本通一条上ル東側)がありました。明治34年、尾上松之助一座が開場。最初旅回りの芝居の席でしたが、大正元年に電気映画館を合併して日活映画常設館に。昭和28年に「千本日活」と改称。敷地は今のビルと同じ大きさでした。
DSCN8377DSCN8423DSCN8418この頃になると、参加者も鍾馗さんに関心を示し、左写真鍾馗さんを見て「台風で飛んでしまわないか?」と心配する声も。「しっかり踏ん張って、この家を護り続けるに違いない!」と話しました。ローソンがある場所には、明治44年にできた「長久亭」(千本通一条下ル東側)がありました。敷地は今と同じ大きさで、定員218人の木造3階建て。後に長久座に改称。

レトロな雰囲気の「天Q」(千本中立売上ル)と書いてある店が目に止まりました。「ひょっとしたら…」と思って尋ねてみました。かつて千本丸太町近くに「天久」という大正ロマンを感じさせるカフェがあり、「雨月物語」などのシナリオ作家依田義賢先生ら文化人も馴染みの店でした。結局別の店と分かりましたが、「天久」は岐阜県恵那市の日本大正村に移築されていると教えて貰いました。
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左写真が「天Q」。明治19年の建物で、現在はカフェ&バー。投げ銭のライブが殆ど毎夜行われています。隣の松井食堂は大正時代の建物で、タイル張りなどレトロ感にあふれています。そして、一行は西陣京極内へ歩みを進めます(次回)。