はじめに

 9月もあっという間に三分の一が過ぎてしまいました。早いものです。ところで、大河ドラマでは小野政次(役・高橋一生)が亡くなり、「政次ロス」という言葉が流行っているそうです。タモリの「笑っていいとも」(フジテレビ系列)の放映が終わったあとには、「タモロス」なる言葉をよく耳にしましたが、今や大河ドラマも「ペットロス」のような感じなのですね。

 

 昔からテレビや映画に感情移入し、登場人物が亡くなると、ファンが集まって葬式を挙げることなどもありました。「あしたのジョー」の主人公・ジョーのライバルである力石徹が死んだときは、ファンがその死を悼んで葬式を挙げていましたね。

 

 今回のタイトルは、「井伊家最後の日」でした。実は「~最後の日」という映画や小説は多く、どれが該当するのか困ってしまいました。別にどれでもいいのでしょうね。こうしたダジャレによるタイトルの付け方は、いったいいつまで続くのでしょうか?

 

 さて、今回はどうだったのでしょうか!!!

 

今川と徳川

 いよいよ井伊家復活のめどが立たなくなった、というのが今回の話になりましょう。すっかり没落した今川氏真(役・尾上松也)は、妻の縁を頼って北条家に身を寄せました。すっかり「マスオさん」状態です。これまで氏真は今川家中を保つべく奮闘してきましたが、そうした苦労がなくなったので、いささか陽気な感じがしないでもありません。吹っ切れたのでしょう。

 

 氏真は義父の北条氏康に対して、「さすがは相模の獅子!」と大絶賛いたしますが、そうでもしないと追い出されるのでしょうか。お世辞を言い続けなければならないという、新たな苦労がはじまったようです。氏康も武田信玄(役・松平健)を罵倒し、「天誅を下してやった!」と大喜びです。なんとなくマヌケな連中に見えるのは、私だけなのでしょうか?

 

 一方、徳川家康(役・阿部サダヲ)は、武田が北条と争っており、三河方面への注意が疎かになったので、いささか上機嫌です。ただ、直虎(役・柴咲コウ)と気脈を通じる瀬名(役・菜々緒)は、「井伊を見捨てるのか」といささかご立腹です。家康からすれば、「ほっておいてくれ!」ということになるのでしょうが。

 

 そこへ家康の母・於大(役・栗原小巻)がやってきます。栗原小巻さんの登場には、いささか驚きました。ちょっと調べてみると、大河ドラマは昭和53年(1978)の「黄金の日々」以来の出演のようです。昭和20年(1945)のお生まれで、私の両親とほぼ同世代です。昔は、美人女優の代名詞のような方でしたね。

 

 一方、直虎は近藤康用の治療やリハビリの手助けをしていたようで、康用は養生した甲斐もあって足が治り、ついに立つことができるようになりました。怪我が治ったので、みんなが喜ぶのはわかるのですが、いささか直虎は暢気な気がしますよね。政次(役・高橋一生)を嵌めた張本人なのですから・・・。

 

井伊一族の解体

 とはいえ、直虎もぼーっとしてはいられません。井伊家の解体は確実だったからです。近藤は直虎に対して、井伊の家臣団を召し抱えたいと持ち掛けます。近藤にはかつて騙されたのですが、今回は近藤の所領の拡大に伴うもので、罠ではないと考えました。

 

 その後、松下常慶が直虎のもとへやって来て、井伊家が窮地に陥ったのは、自分が悪かったと謝罪をいたしました。常慶は「しの」(役・貫地谷しほり)の書状を持参し、兄の松下源太郎が虎松(役・寺田心)を養子に迎えたいとの意向を伝えます。

 

 ここで直虎は迷います。というのも、虎松は三河の鳳来寺で僧として修行する傍ら、将来は直虎のあとを継いで、井伊家の当主になる予定でした。ここで松下家と養子縁組をすると、そのプランが狂ってしまいます。直虎はこの件について、龍雲丸(役・柳楽優弥)と相談します。これだけ重要なことを龍雲丸に相談するのですから、これはのちの伏線となるのでしょうね。

 

 最終的に直虎は南溪(役・小林薫)と相談をし、「井伊家を止める!」という最終的な決断をします。これを現代風に言うならば、〝会社の廃業〟ということになりましょう。会社を止める場合は、行くとこまでいって最終的に資金ショートで銀行取引が中止になって倒産するか、多少ゆとりを見て自主廃業・整理倒産という手があります。

 

 井伊家も粘りに粘り、周囲の大名連中と戦い抜いて、家を存続させるという手もあったのですが、それでは滅亡すら考えられます。ですから、自主廃業して、家臣たちも転職させようということになりましょう。直虎は「隠し谷」で自らの決意を表明しますが、中野直之(役・矢本悠馬)などは泣いて抗議をします。まあ、しょうがない・・・。

 

虎松も抗議

 その後、直虎は虎松が修行をしている、三河・鳳来寺へと向かいしました。直虎は虎松と対面すると、井伊家再興を諦めたので、松下家の養子になってほしいと言いました(もしくは鳳来寺で僧として生涯を終えるか)。しかし、虎松は納得しません。かつて直虎が諦めないことの重要性を説いた言葉を引き合いに出して、執拗に食い下がります。

 

 ただ、視聴者はすでにお気付きのとおり、あんな小さな子供が論理的に反論意見を述べることはまず不可能です。「言わされている」のは間違いないのですが、そこはテレビドラマなので致し方ありません。虎松は直虎の言葉は嘘だったのかと詰問しますが、直虎はあっさりと嘘だと言い放ちます。

 

 このように虎松はしつこく食い下がりましたが、南溪の説得により最後は松下家の養子になることを了承しました。松下の殿さまも大喜びです。良かったじゃないですか。ラッキーですよ。路頭に迷わなくて。

 

 ちなみに井伊家の女性陣は、案外さっぱりとしていて、高瀬などは一人ひとりが前向きに生きることが、井伊家の家名を残すことにつながるとまで言います。模範解答です。

 

直虎と龍雲丸

 直虎は当主の座を失い、さあどうしようかというところでしょう。井戸端におりますと、龍雲丸がやって来ました。直虎は龍雲丸に対して、今後の身の振り方について質問をします。すると、龍雲丸は一緒になりたい女性がいると、意味深な発言をします。なぜか直虎がもじもじしだすのですが、勘の良い視聴者は「ははーん」と展開を読んだはずです。

 

 龍雲丸は一緒にいたい女性が直虎であることを告げ、なんと一線を超えてしまったではないですか! 一線といっても何が一線ということになりますが、この場合はチューになります。その後、NHKは教育的な配慮から、そこから先の展開を省略しましたが、男女の関係があったのは疑いないところでしょう。もし仮に、戦国時代に「文春」の記者がいたら、きっと取材が殺到していたに違いありません。

 

 大河ドラマをご覧になっている方は、きっと政次ファンが多いはずです。これまでは、直虎と政次の微妙なラブロマンスに強い関心を持っていたと思います。一方、直虎は非常にキレもので堅苦しい政次とはタイプの異なる、龍雲丸に心惹かれていた場面があったのは事実です。

 

 ある程度の史実に沿っているので、死んだはずの政次を強引に生かして、直虎と結ばせるのはいささか無理があり不可能です。そこで、架空の人物と思しき龍雲丸と直虎を結ばせたのでしょう。もちろん最近では、直虎が女性であったことに疑問を呈する研究者も多く、二人が結ばれたことは、架空の話になるのは疑いないところです。どっちにしても、今回の大河は空想ファンタジーですが。

 

 ただ、いずれにしても政次ファンに対する裏切りであったような気がします。

 

おわりに

 最後の場面では、信玄が氏康の死の一報を聞き、「マツケンサンバ」もどきに踊っていましたね。まあ、いいでしょう。松平健のファンも見ているでしょうから。

 

 今回の視聴率は、12.1%と0.8%上昇しました。前回の裏番組のテレビ東京系特別番組「緊急SOS!超巨大怪物が出た!出た!池の水ぜんぶ抜く大作戦4」(日曜・午後7時54分~)がなかったので、その分の視聴者が戻り、上昇したのでしょうかね。

<了>

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