はじめに

 9月23日(土)に「戦国時代の軍師とは何か」(主催:歴史にふれる会、於:中央区立産業会館)と題して、軍師について話をしてきました。その際、話の冒頭で「大河ドラマをご覧になっていますか?」とうかがったところ、大半の方が「みています」とお答えになっていました。しかしながら、話の内容(特に直虎の生涯)がおおむね架空であるとご存じなので、いささか物足りなさそうな雰囲気でした。「もっと迫力があるものを見たいな」と。

 

 今回のタイトルは、「井伊を共に去りぬ」でした。このタイトルは、1936年に刊行された『風と共に去りぬ』(マーガッレット・ミッチェル著)をもじったものでしょう。南北戦争を舞台にした作品です。1939年にはヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブルを主演に起用して映画化され、1977年に宝塚歌劇でも舞台化されたほどです。大変な名作です。残念なことに、最近ではテレビでも放映されることはほぼなく、ご覧になったことがあるのは、おおむね70代以上の方が大半ではないでしょうか?

 

 さて、今回はおもしろかったのでしょうか!!!

 

難しい選択

 前回の続きです。信玄(役・松平健)は井伊谷に侵攻し、村々を焼き払っていきました。行き場を失った人々は、川名の隠れ里に逃げ込んでいきます。

 

 ただ、結論を言えば、今回は文字どおり直虎(役・柴咲コウ)が井伊谷を「去っていくのか」と思ったら、別に去っていったわけではありません。いささか詐欺のような感じがしましたが、致し方ありません。近藤も危ういところを逃れ、何とか隠れ里に避難しました。「こんな場所があるとは知らなかった」と少し怒っていましたが、助かったので感謝をしていましたね。

 

 この間、南溪(役・小林薫)は、ちゃっかりと信玄に面会をしています。直虎が近藤を守る一方で、南溪は武田に味方したいと申し入れます。南溪としては、何とかして井伊家を再興したかったのでしょう。信玄も喜んでいます。その後、信玄から直虎に宛てた書状が隠れ里に届きました。内容は近藤の首と引き換えにして、井伊家再興を認めるというものでした。

 

 直虎は近藤に書状を見せて、近藤の首を取ることは井伊家の本望ではないと告げます。要は武田、徳川という強大な大名に挟まれているので、状況に応じて武田に与したり、徳川に与したりということになりましょう。昨年の「真田丸」と同じような、狐とタヌキのばかしあいみたいなものです。近藤は疑り深いので、率直な回答は差し控えましたが・・・。

 

高瀬のこと

 相変わらず怪しいのが、高瀬(役・髙橋ひかる)です。前回、高瀬は近藤に毒を盛ろうとしますが、タイミングが合わず失敗に終わってしまいます。龍雲丸(役・柳楽優弥)は直虎に対し、「高瀬は死のうとしていたのでは」と話すと、直虎は政次(役・高橋一生)の「高瀬は武田の間者(スパイ)では?」という言葉を思い出します。

 

 ある晩、高瀬が近藤に薬を持って行こうとすると、突然、直虎があらわれ「自分にも分けてくれ」といいます。高瀬は椀を取った直虎の手をはたいて、薬を飲めないようにします。すると、直虎は高瀬に「武田の間者なのか? 直親(役・三浦春馬)の娘というのは嘘なのか?」と問い質します。

 

 高瀬は武田の間者だったのですが(前回の放映通り)、直親の娘というのは嘘ではないと答えます。武田の間者になったのには、理由があったのです。母が死んだ際、多額の借金が残りました。このままでは、高瀬には身売りの選択肢しかなかったのですが、間者になれば借金はチャラにしてやると、武田から言われたのでした。そこで、高瀬は間者になったわけです。

 

 ただ、考えてみると、高瀬が間者として井伊谷にやって来たのは、随分と昔の話です。そもそも何の目的でやって来たのでしょうか? 前回より以前では、特に高瀬が武田方に何らかの情報を与えたとか、逆に武田方から暗殺指令が来ていたわけではありません。ここに来て、急に近藤の暗殺指令がでたわけです。これではあまりに不自然かつ唐突な気がします。

 

 結局、高瀬は近藤を殺せば、直虎により井伊家が再興できると考えたのですが、直虎は「そんなことは頼んだ覚えがない」と申します。それどころか「こんな物騒なことはするな」と一喝します。これで一件落着なのでしょうか? 前回、商人の姿をした武田方の者が高瀬を脅していましたが、命は大丈夫なのでしょうか? いろいろと疑問が湧いてきて、いささか欲求不満です。

 

井伊谷の人々

 これまでも指摘してきたとおりですが、この作品だけに限らず、大河ドラマの登場人物はみんなお人好しです。井伊谷の人々も同じですね。

 

 井伊谷の人々は、家を焼かれて困っています。そこへ直虎があらわれ謝罪するのですが、井伊谷の人々は「謝らないでくれ」と言うではないですか。こんなことで済んだのでしょうか? 昨今では、学校のイジメの対応が悪かったとか、公務員が不祥事を起こしたとか、国会議員が不倫をしたとかの事例では、記者会見や関係者への説明会で、担当者がかなり厳しいつるし上げに遭います。家まで焼かれて「いいよ、いいよ」というようなお人好しがいるのでしょうかね。

 

 おまけに井伊谷の人々は、「家が焼けて、灰が肥料になった」と大喜びです。ビックリするような感覚ですね。おまけに「みんなが住めるような大きい家を作ろう」という話になります。ご承知のとおり、震災などで体育館などに避難を強いられた人は、大変お困りになっています。もちろん住環境の悪さもありますが、プライバシーの問題もあります。当時の人々も同じはずで、血縁関係にない複数の家族が一緒に住むなどという感覚はなかったのではないでしょうか?

 

 「みんなハッピー!」みたいな感覚ではなく、現実味を帯びた話を見たいものです。

 

堺へ?

 などとごちゃごちゃ言っているうちに、ついに直虎の堺行きの日がやって来ました。堺に行かなかったら「何だったんだ」と思うし、行ったら「この先どうなるんだろうか?」と疑問に思います。いったいどうなってしまうのですかね。

 

 直虎は堺に行きたいのですが、井伊谷が復興の最中ですので、いささか躊躇しています。南溪はそんな直虎の背中を押すのですが、そのあとは面倒くさいことになります。龍雲丸が突如として、直虎に残ったほうがいいと言い出したのです。そのあと、残る、残らないで一悶着あったのですが、結局、直虎は堺に行かず、残るという選択をします。チューをして仲直りです。

 

 いったい堺の話は何だったのでしょうか? 龍雲丸との縁は、ここで切れるのでしょうか?

 

信玄死す

 場面が変わって、徳川方。家康(役・阿部サダヲ)の庇護を受ける今川氏真(役・尾上松也)は、寿桂尼(役・浅丘ルリ子)の命日なので、笙を吹いています。相変わらず「バカ殿様」の設定です。気の毒に。

 

 一方の信玄は軍事行動が首尾よくいって、いささかご満悦です。宴会ではすっかりご機嫌さんで、宴たけなわの頃には「遊び女を」と所望します。直虎と龍雲丸とのチューのシーンもありましたが、最近はこういうシーンも解禁されているのですかね。

 

 信玄が寝所に入ると、遊び女が深々と頭を下げています。そして、遊び女が顔をあげた瞬間、信玄は大いに驚きます。なんと遊び女の顔は寿桂尼ではないですか!? 信玄が遊び女の顔が因縁のある寿桂尼だったから驚いたのか、若い娘かと思っていたら老女だったので驚いたのか、どっちだったのでしょうかね。このあと、信玄は倒れて血を吐きました。

 

おわりに

 最後のシーンでは、虎松(のちの直政。役・菅田将暉)が登場していましたね。これからは、虎松を軸にして物語が展開するのでしょう。

 

 今回の視聴率は、11.7%と1.6%も下降しました。なかなか10%を割らないのがすばらしいところだと思いました。

<了>

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