◆神社の成立に必要な4要素

「お寺の収入源がお葬式とお墓だというのは、見ていてなんとなくわかる。でも、神社はどうやって収入を得て、どれくらいの収入があるの?」

 神社好きの人には、こういうことに興味を示す人はいないだろうか。

 前回は現代の神社制度の大枠を解説したが、今回以降では「個々の神社は、どうやって運営されているのか」という視点で神社を探り、さらには神社の具体的な経済面の問題もみてみたい。

 信仰的な立場からみれば、神社を成立させている主体は、もちろん、そこに鎮座する神となるだろう。

 だが、世俗的な面からみれば、神社が神社として成立し活動するには、

 

 ①社地(境内地)

 ②本殿・拝殿、鳥居などの礼拝施設

 ③神社での祭祀を主催する人、つまり神職

 ④神社に祀られている神を信仰し参拝する人間

 

 という4つの要素が、規模の大小にかかわらず最低限必要になってくる。

 ここで、それぞれについて若干補足して説明しておこう。

 ①社地だが、これは昭和戦前においては、原則として国有財産とされていた。しかし戦後、昭和2253日の日本国憲法施行前日に公布された「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」により、国有地だった神社の境内地は、無償または時価の半額でそれぞれの神社に払い下げられることになった。この法律は、政教分離を定めた新憲法の成立によって神社境内地の無償貸付が不可能になることを知った神社本庁を中心とする神社関係者が、GHQや政府、議会などに対して懸命に働きかけた結果、成立をみたものだった。

 したがって、現代の神社の境内地は、法律上は、宗教法人としての各神社の所有地であるというのが原則で、その場合は固定資産税・都市計画税など、不動産にかかわる税金は非課税となる。

 ②礼拝施設は、現在適用される宗教法人法(昭和26年施行)では神社神道以外の宗教宗派の場合も含めて「境内建物」と呼ばれ、「宗教法人に固有の建物及び工作物」であり、「本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)」(第3条)と定義されている。

 

◆宮司は法律上は神社の代表役員

 つぎに③神職だが、神社に奉仕している宗教者のことを一般に神主とか神官などというが、これは俗称のようなもので、現代では正式には「神職」と総称される。

 神社の神職のトップのことを宮司(ぐうじ)という。宮司の下が禰宜(ねぎ)だが、禰宜の上に権宮司(ごんぐうじ)、禰宜の下に権禰宜という神職が置かれている神社もある。この場合の「権」とは、「仮」という意味だ。

 法律的な面でみると、宗教法人法では各宗教法人は「代表役員」を置いてその代表とするよう定めているが、宮司はその神社の代表役員を兼ねることになっている。つまり、宮司は、その神社の祭祀の長(斎主)であり、かつ神社運営の責任者となる。

 ただし、神職が何人も在籍する神社は規模の大きな神社に限られ、神職が宮司しかいない神社、神職が常駐せず、他の神社の宮司が宮司を兼務している神社も数多くみられ、このような神職の偏在は昨今の神社格差問題を助長しているといわれる。

 そもそも、神社の数に対して神職の人数が絶対的に少ない。神社本庁系の神社は全国に約79000社だが、それに対して神職は21782人(文化庁編『平成28年版・宗教年鑑』)、そのうち宮司と言われる人々はおよそ1万人(神社本庁編『「神社・神職に関する実態調査」報告書』平成28年)。単純計算では1人の宮司がおよそ8社の神社を兼務している、ということになってしまう。

 

◆氏子とは何か

 最後に④参拝者・信仰者だが、これは神社神道においては、大きく氏子(うじこ)、崇敬者、その他の参拝者の3つに分類することができる。

 氏子とは、一義的には、その神社を「氏神(うじがみ)」としている地域に住んでいる人々のことをいう。

「氏神」とは何かといえば、元来は、血縁・地縁で結びついた氏族の祖先とされる神、あるいはその氏族を守護してくれると信じられた神のことを意味した。そしてこの氏神を祀る施設として成立したのが、神社である。つまり神社は、人間社会の血縁・地縁を根幹に置いている。

 しかし時代の移り変わりのなかで、「氏神」は、その氏族が住んでいる土地の守護神、あるいはその土地全体の守護神のことをも指すようになった。そのため、本来、氏神といえば、その氏族に属する人々によってのみ祀られる神であったが、土地全体の守護神となることで、その氏族の人間ではなくても、その土地の住民であれば信奉し、祀ることができる存在となった。

 またもともとは、一定の土地や地域の守護神は氏神と区別されて鎮守神(ちんじゅがみ)と呼ばれ、とくに自分が生まれた土地の守護神を産土神(うぶすながみ)と呼んだが、現在では氏神、鎮守神、産土神いずれもが、土地の守護神という同じような意味で用いられることが多い。

 話を戻すと、平たくいえば、氏子とは、その土地の神様の縄張りに住んでいる人々、その土地の氏神を祀る神社の縄張りに住んでいる人々、ということになる。仏教寺院でいえば檀家にあたり、ただその神社を信奉するだけでなく、金品を拠出して財政的に神社を支える役割をも担う。

 ところで、その神社の「縄張り」はどうやって決められているのだろうか。

 神社本庁憲章では「神社の氏子区域は、神社ごとに慣習的に定められた区域をいふものとする」(第14条)と定められている。「神社ごとに慣習的に定められた区域」というのは恣意的な解釈も可能でなにやら曖昧な表現だが、自分が住んでいる地域の氏神がわからない場合は、各都道府県の神社庁(神社本庁の支部)に問い合わせれば調べて教えてくれることになっている。

 もっとも、「氏子区域」に住んでいるからといって、必ずしもその神社の「氏子」であるとはいえない。なぜなら、そもそも神社や宮司によって「氏子」の定義が一様ではなく、「氏子区域に住んでいる人」を氏子と規定しているケースもあれば、「氏子区域に住んでいて、氏子費を納めている人」あるいは「氏子区域に住んでいて、祭礼に参加している人」を氏子としているケースもあるからだ。

 つまり、氏子の数は神社が恣意的に決めることができるともいえる。したがって、神社側が公称する氏子数の大小は、その神社の実勢をはかるバロメーターには必ずしもならない。

 

◆崇敬者と崇敬会

 一方、こうした氏子に対して、その神社の縄張り外に住んでいて、氏子ではないけれども、その神社を熱心に参拝し、祭礼にも積極的に参加する、という人もいる。こうした、氏神の縄張り外に住む熱心な信仰者は、氏子と区別して崇敬者と呼ばれる。もちろん、縄張り外に熱心なファンをもつには、その神徳や歴史・由緒などの面である程度有名である必要があるので、どんな神社にも崇敬者がいる、というわけにはいかない。言い換えれば、一般的な神社には崇敬者がいない、あるいはいるとしてもごく少数ということになる。

 ただし近年では、人口移動の激化や地域共同体の弱体化といった社会変動の影響で、氏子と崇敬者という区別が曖昧になりつつあるのが現状である。たとえば、生まれ故郷から引っ越しても、故郷の氏神との縁を保とうとする人もあり、そうした人は物理的には崇敬者だが、メンテリティとしては氏子といえなくもない。そのため、「氏子・崇敬者」とひとくくりに表現されることもある。

 また、氏子でも崇敬者でもないけれども、その神社を参拝する人もいる。これが3つ目に挙げた「その他の参拝者」だ。観光名所になっているような有名神社では、こういう浮動層型の参拝者が多いはずだ。しかし、そうした浮動層型の参拝者が多い神社でも、たとえば神田明神や明治神宮のように、「崇敬会」というかたちで氏子に準じた組織がつくられ、熱心な参拝者に入会を募り、会費を集め、彼らを「崇敬者」として組織化をしているケースがよくみられる。

 なお、崇敬会と似た組織として「奉賛会」をもつ神社もあるが、一般に奉賛会とは、神社の記念事業や社殿の大規模修繕など、特定の目的に限定して財政的な支援を行うことを目的に氏子・崇敬者を募って結成されるもので、神社運営を永続的に支援することを目的とする崇敬会とは区別される。

 

◆氏子・崇敬者から選ばれる総代と責任役員

 神社運営においては、氏子・崇敬者は、信仰的にも法律的にも重要な役割を担っている。

 たとえば、氏子・崇敬者の代表は慣習的に「氏子総代」あるいはたんに「氏子」と呼ばれ、宮司に協力して神社に奉仕することが求められている(総代は複数人いるのが一般的)。

 また、総代とは別に、各神社には氏子・崇敬者側を代表する職務として「責任役員」というものも置かれている。これは、宗教法人法で「宗教法人には、3人以上の責任役員を置き、そのうち1人を代表役員とする」(第18条)と定められていて、法律上は、代表役員である宮司以外に、少なくとも2名、氏子・崇敬者の中から責任役員を選任しなければならないからである。そして責任役員は、神社の宗教法人上のさまざま事務(予算の編成、決算の作成を含む)を決定する権限をもつ。神社によってことなるが、24年を任期とするのがごく一般的である。

 整理すると、「総代」は法律とは関係のない慣習的な信仰上の機関であり、「責任役員」は法律にもとづく法人としての神社の運営を担う意思決定機関ということになる。

 しかし、現実には、総代が責任役員を兼ねている場合が多い。また、総代については、神社本庁の規則では「総代は、氏子又は崇敬者で徳望が篤いものから選任する」(神社本庁庁規第101条)となっているが、現実には地域の町内会や自治会の役員が横滑りで兼務している場合がよくみられるという。

 

◆神社の経済基盤とは

 境内地、社殿、神職(宮司/代表役員)、氏子・崇敬者、総代、責任役員。宗教法人としての神社が成立し、活動するには、まず最低限これだけのものが必要なのである。

 では、こうした要素によって成り立つ神社は、経済的にはどうやって運営されているのか。

 まず、神社の支出面をみてみよう。

 原則として神社運営には法人税は掛からず、また総代や責任役員は――神社以外の宗教法人でもそうだが――基本的に無報酬なので、神社運営に最低限必要な費用としては、次のようなものが挙げられよう。

 

 〇社殿・境内地の維持・管理費

 〇お守り・お札・絵馬など(「授与品」と呼ばれる)の作成や仕入れに要する費用

 〇祭礼・行事などを執り行う際の費用

 〇(おもに神職の)人件費

 

 また、神社本庁に所属している神社は、「負担金」を本庁側に納めなければならないことになっているので、これも最低限必要な支出に含まれるだろう。

 これに対して、神社の収入にはどんなものがあるだろうか。

 

 〇参拝者のための祈願・祈禱(お祓いや七五三、初宮詣、神前結婚式など)による報酬

 〇授与品(お札・お守り・絵馬など)の販売による売上

 〇氏子・崇敬者からの寄付金(氏子費、崇敬会費、祭礼時の奉納金など)

 〇お賽銭

 

 こうしたところが基本だろう。つまり、これが神社の経済基盤である。

 ここで付記しておくと、神社の世界では、金銭の授受を伴う行為に関して、慣例として「売る」「買う」という用語を使わない。たとえば、参拝者が神社にお参りして500円を払ってお守りを買ったとしても、神社側は決して「売る」とはいわない。「お守りを授ける」あるいは「お守りを頒布する」と表現する。そのためか、社頭で授けられる、お札やお守り、絵馬などは「授与品」と総称される。

 同様に、参拝者サイドも「買う」ではなく「受ける」となる。さらに、授与品を受けるために参拝者が支払うお金は「初穂料(はつほりょう)」と呼ばれ、「払う」ではなく「納める」という表現が用いられる。お札やお祓いなどの祈願についても同様である(玉串を神前に捧げる行事がある祈願の際に納めるお金は、「玉串料」とも呼ばれる)。

「売る」「買う」「払う」「料金」といった世俗的な言葉は神前にふさわしくないということから、こうした独特な表現が広まったのだろうか。いつごろから使われるようになったのかは不明だが、江戸時代の随筆には、稲の初穂の代わりに神仏に供える金銭という意味で、「初穂代(はつほしろ)」の語がすでにみえている。

 

◆神社の主たる収入源は氏子からの寄付金

 ここで気になってくるのは、このようなものを経済基盤とする神社の、現実の収入であろう。いったい、神社はいくらもうかっているのか。

 その実態をつかむのは難しいが、その手掛かりとなる統計資料はある。

 神社本庁では、平成27年、包括下にある全国の神社の宮司(1310人/宮司代務者を含む)を対象に「神社・神職に関する実態調査」をアンケート形式で実施し(回答率は60.1%)、翌28年、その結果をまとめたものを『「神社・神職に関する実態調査」報告書』としてまとめ、公表している。

 このアンケートには神社や神職の収入に関する項目があり、その回答も記されている。その関連項目の数値をいくつか引用してみよう。

 まず最初に紹介したいのは、「神社の最近の1年間の主たる収入源は、以下のうちどれですか。額の多い順番に3つ挙げて下さい」という設問である。

 この質問に対して、「第1位」として挙げられた答えのなかで最も多いのは「宗教活動」で、全回答数のうちの74.5%。これは圧倒的である。2番目に多いのは「収益事業」で4.3%、3番目は「その他」で3.7%。

「収益事業」とは、宗教活動とはみなされず、課税対象となる事業のことで、神社の場合は結婚式場や葬儀場などの運営や有料駐車場の経営などがこれにあたる。駐車場はさておき、こうした収益事業を行えるのは、もちろん、格式と人気があって集客力をもつごく一部の神社にかぎられる。

 さて、神社の主たる収入源として「宗教活動」を挙げた宮司が多いというのは、考えるまでもなく当然のことだが、では、その「宗教活動」とは具体的には何なのか。

 アンケートでは先の質問の次に「本来の宗教活動による収入のうち、額の多い順番に3つ挙げて下さい」という質問がある。

 そしてその回答はというと、「第1位」として挙げられた項目で最も多いのは、「氏子費」で全体の38.8%。2番目は「祈願に際しての初穂料」で18.9%、3番目が「祭礼に際しての奉納金」で11.6%、4番目が「授与品等の初穂料」で8.3%。「賽銭」は3.8%で、6番目である。また、崇敬会費は0.4%で最下位である。

 また、「第2位」として挙げられた項目をみると、いちばん多いのは「祈願に際しての初穂料」で22.4%、これに「賽銭」17.0%、「祭礼に際しての奉納金」15.4%と続く。さらに「第3位」として挙げられた項目で最も多いのは「賽銭」で22.9%である。

 このような数値からみえる大まかな傾向としては、神社の収入源としては、氏子からの寄付金である氏子費が柱ということになる。また、「祭礼に際しての奉納金」は現実には氏子が納める場合が多いので、氏子からの寄付金という意味で、氏子費に準じたものととらえることができよう。崇敬会費の割合が極端に低いのは、崇敬会を組織できるほどの崇敬者をもつ神社がさして多くはないという現状を考えれば、当然のことであろう。

 そして、祈願料やお札・お守りなどの授与品の売上すなわち初穂料、そしてお賽銭が、神社の収入源のなかで低からぬ地位を占めているということも、このアンケートからは明らかになってくる。

 それでは、こうした収入源を柱とした神社の総収入は、具体的にどれくらいの金額になるのか。

 神社のお守りは1500800円、祈願料・祈禱料は1件につき50001万円というのが現在の相場だろう。だが、神職が宮司ぐらいしかおらず、参拝者が少ない小規模神社の場合は、お札やお守りを求める人の数は少なく、賽銭もとぼしく、当然、神職が祈願・祈禱を行うのもまれ、ということになる。神職が常駐しない神社となれば、なおさらであろう。

 一方、冒頭にも記したように、寺院と比較してみると、通例まとまった金額になる葬式のお布施と墓地の管理料がないというのが、神社収入の特徴として歴然としている。

 こうしたことを鑑みると、全国の神社の大多数を占める小規模神社は、結局、氏子からの寄付金が頼りということになる。しかし、そもそも小規模神社は氏子が少ないというのが通例なわけだから、その頼りもさして頼りとはなりえない。また、とくに近年では、町内会や自治会などで氏子費を集めようとすると、「信教の自由の侵害では」などと問題視されることがあるため、氏子費を集めにくいという現実があるという。

 となれば、大半の神社の財政状態は非常に心もとないものであろうと想像できるわけだが、そんな想像を裏付けるように、前出のアンケートが示す全国の神社の年収は、非常に厳しい現実を示すものとなっている。

 その具体的な金額については、次回に詳述させていただくことにしよう。

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