松崎天神絵巻







上は『松崎天神縁起絵巻』の一部。
上にスキを引く牛の絵が描かれている。

奥書によれば、14世紀初頭に描かれたものらしい。

本日は「牛の歴史」の最後。
一回抜けたのはサボったのではなく、すごく調べて時間を食ったからである。

では、問題いこうか~!
この上の画像のようなスキを、漢字で書くとどちらが正しい?

ア   イ 

ヒント。入試では、弥生時代のスキと牛に引かせるスキは、同じスキでも字が違う。


答えはイ。
アは弥生時代からシャベルのように使われていた鋤である。

鋤鍬















ちなみに上の写真は、催事用レンタル会社の写真。
学校の先生なら、教材用にレンタルして貰うといいかもしれない。
木製農具に一部を使ってるなんて、
こんな生きた教材はない。
鎌・鍬・鋤レンタル


…しっかしまぁ~いろんな商売があるのだなぁ。

閑話休題。

ところで、犂とはどのように連結されていたのか?

意外に現代人にはわからないものである。
かく言う私も都会育ちなので、全然わからなかった。

上の松崎天神絵巻をアップにしてみても、
微妙なところがよくわからない。
松崎天神絵巻白黒











色々調べてみて、やっとわかった。

そこで、連結部分がわかりやすいにイラストを描いてみた。

犂の連結


















よく、民俗資料館とかにあるのは、
の部分だけである。

これだけでは牛に連結できない。

のような横木(分かり易いように紫色にしたが本当は①と同じ色である)に連結するわけだ。
あとは③のような両方から綱をつける。
②がなく、直接牛と①を連結している写真も少しあった。

でも、それは不安定だと思う。
きっとった使い方なのではないか?

ちなみに参考にしたのは『上総守が行く』というブログの写真。
色々探した中で一番分かり易い写真だった。
 →『上総守が行く』「ハリポタ/北条鉄道ポタ」

さて、次に犂の種類について説明しよう。


現存する日本古代の犂は正倉院に所蔵されている
子日手辛鋤(ねのひのてからすき)だそうだ。

子日手辛鋤



















字からしても、犂なのか鋤なのか区別できない感じであるが、
このような犂を「無床(むしょう)犂」と呼ぶ。

下も無床犂である。
無床犂



















犂の「」ってどこか?
それは逆に「長床(ちょうしょう)犂」の図と比べてみるとはっきりする。
長床犂










では、問題である。感覚的に答えてほしい。

問1 上の無床犂と下の長床犂、どちらの方が持つ人間にとって安定していると思うか?

問2 上の無床犂と下の長床犂、どちらの方が牛の負担が小さく深く耕せると思うか?

問題が出ると、よーく見比べる。
ポイントはそこにある。

答えは、

問1 長床犂
問2 無床犂

長床犂は人間には優しいが、牛には重荷
無床犂は牛には優しいが、人間には操作が難しい(不安定)。

まさに一長一短なのである。

ちなみに、犂が中国から本格的に伝来したのは、大化の改新の頃だそうで、
政府は長床犂の普及を進めたが、
朝鮮半島からの渡来人経由では無床犂が入ったそうだ。

無床犂は、不安定ゆえに、
抱えるように持つらしく、
それで「抱持立犂(かかえもったてすき)」と呼ばれたという。
松崎天神縁起絵巻の犂は、
どうみても楽に使っているように見えるので、長床犂なのかもしれない。

私のイラストはどうみても「無床犂」。
それなのにに持っているのは、明らかな誤用(笑)
自分も勉強しながら絵をかいたりしていたからね。

…そんなわけで、上のイラスト、そのまま転載しないでね
転載するなら、長床犂に描き換えてね。

しかし、一長一短の無床犂と長床犂、
そんなわけで日本国内では両方が普及したみたい。

では、どうすればいいのだろう?
その用途で使い分ければいいのだろうか?

その点、やはり明治維新は偉大である。

明治以降は犂は発達していく。
じゃじゃ~ん!

短床犂










間をとった短床(たんしょう)犂

牛の負担もそれほど大きくなく、かつ、人間の操作性も安定している。
これはとっても使い勝手がいいので、

大正から昭和にかけて広がっていったのだと。
ちゃんちゃん。

◆・◆・◆・◆・◆

いや~今回は疲れた。
牛の犂って、こんなに奥深いとは思わなかった。

でも、自分も犂についてちゃんと黒板に絵が描けるようになって有意義だった。
明日からは、
出たてのほやほや
今年の有名大学の入試問題をネタに書いてみようと思う。

受験生には勉強になり、
歴史好きの方には、力試しにもなり、話のネタにもなる…
そんなの書いてみたいと思う。

では、お帰りの際は、ぽちと一つお願い申す。


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