「おとなの恋愛小説」倶楽部

エッセイスト長住哲雄の自作恋愛小説置き場。ブログ内のおすすめ小説も紹介します。

はじめまして。このブログについて5

動く犬ペンネームを変えました。「長住哲雄」改め、
「シランケン・重松シュタイン」。よろしく。


                お知らせ              

男の子アイコン1「BOK☆WAIKER」から新刊を発売しました!
盆が来ると、妙は、あの男の「かか」になる——


盆かか表紙画像 (2)村では、盆になると男たちがクジで、
「かか」を交換し合う風習があった。
この小説は、明治の半ばまで、
一部の地域で、実際に行われていた
風習の中で起こった悲劇を
フィクションとしてまとめた官能作品。
筆者初のR18小説作品。濃艶な物語を
お愉しみください。

 『盆かか
 ~三日間だけの交換妻』

 発行・虹BOOKS 定価・200円


「BOOK☆WALKER」からお読みの方は、
下記タイトルをクリックしてください。

 「盆かか~三日間だけの交換妻」 (R18ラノベ)


        今月のNew Entry      

指矢印ローズマリーの詩 第38章~ふたりの門出に贈る歌
指矢印ローズマリーの詩 第37章~若い旅立ちと老いたる再会


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《短編集》マリアたちへ →目次ページへ →最新記事へ
管理人がこれまで出会った「マリアのような」女性たちに捧げる「ありがとう」の短編集です。

ロマン派 《H》 短編集 →目次ページへ →最新記事へ
管理人が妄想力を働かせて書いた、Hだけどロマン派な、官能短編小説集です。

《中編》ローズマリーの詩→目次ページへ →最新記事へ
破産して家の離れに間借りするおじと、結婚話が破談して出戻ってきた私。それぞれに忘れられない過去を抱えながら、ふたりは静かに心を通わせて――。

《中編》遅すぎた花火→目次ページへ →最新記事へ
「死」を決意した少女と「死」を宣告された老人が、忽然と姿を消した。「連れ去りか?」と報じられたふたりの、240時間に及ぶ彷徨の行き着く先は――?

《長編》鬼子母神→目次ページへ →最新記事へ
大事な者を守るために、男たちの「愛」を食う女と、その「愛」に揺れ動く男たち。デリバリーの世界を舞台に繰り広げられる、男と女の物語です。愛し合うことは、こんなにも苦しく、そして、切ない――。

《長編》 急行「霧島」~あの頃の、ボクたちの愛し方
 ※この小説は改訂版を制作中です。

60年代末から70年代にかけての激動の時代を駆け抜けたふたりの愛。急行「霧島」で出会ったふたりは、京都と横浜でそれぞれの学園生活を送りながら、やがて、時代の嵐に巻き込まれていきます。その愛の行き着く先は……。お読みになりたい方は、⇒こちら からどうぞ。

《長編》ハウ・アバウト・ユー →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

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ダンス同人の小説

《AKIの小説》天使の手袋 →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

借金漬けの同居のカレのために出張エステ嬢としてガンバるアキと、出張先で出会った初老の客・ヒデオ。三者の揺れ動く関係は、波乱の中で、主人公を「真実の愛」に目覚めさせていく――。



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ローズマリーの詩〈終章〉 ふたりの門出に贈る歌5

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   38 
あの歌に送られて
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

聡史と私の門出を祝うパーティ。
祝宴の最後にスピーチに立った
哲司おじが選んだのは、
あの曲、『七つの水仙』だった。
その曲に涙をぬぐった
あの人とおじは――。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、痛んでいるのは、体に負った傷よりも心に負った傷のほうだった。銃弾に脅えて逃げ出したことを後悔し、自分を責める「青銅の騎士」に、私は、おじから聞いた言葉を伝えた。「騎士は、何もプロである必要はないんだって」。その言葉に、少し聡史の顔が和らいだ。そして私は、聡史と砂の味のするキスを交わした。そのキスをおじがからかう。お返しに私は、おじに食べさせたパンを焼いたのが千里さんであることをバラした。その千里さんは「許してくれるなら」と、かつての恋人に再会することを望んでいる。おじはおじで、「許してもらいたいのは自分のほうだ」と言う。そして私はついに、千里さんに自分が「かつてあなたを愛した男の姪っ子」であることを告げた。しかし、そこでわかったことがある。おじと千里さんがたがいに「許してほしい」と願っていることは、まったく違っているようだった。そんなある日、私は千里さんに招かれて、閉店後の店を訪ねた。千里さんはお見せの上階にある部屋に私を招き、ふたりですき焼きを囲んだ。その部屋に、おじの写真はなかった。「なぜ?」と疑問をぶつける私に「別れたから」と言う。その理由は、おじがかつて発した受け入れがたいひと言。おじは、「子どもは嫌いだ」と言ったのだった。千里さんは、その話をおじにするのかと訊く。迷う私の目に、一帯の聖母子像が飛び込んできた。その母子像が、私に「秘密を守れ」と語っているような気がした。その秘密は、おじが発した「子どもは嫌いだ」のひと言にある、と睨んだ私は、おじのひと言を責め、その真意を問い質した。年が明けると、私はおじを散歩に誘った。少し長めの散歩。その行先は、千里さんのいる草野駅だった。40年ぶりに会ったかつての恋人同士は、おたがいに訊きたいことがあるようだった。「あれからどうしてた?」「好きな人はできなかったのか?」たがいのたがいに対する答えに、私はちょっぴり感動した。ふたりはそれからもちょくちょく顔を合わせているようだった。そんな中、私の体に変化が現れた。妊娠だった。海外赴任が決まった聡史の子を宿していたのだった。どうしよう? 迷った私は、「千の丘」を訪ねた。迷っている私の顔を見て、千里さんは「実は……」と打ち明けた。かつて千里さんはおじの子を身ごもったが、それをおじには告げずに下ろしてしまった。「同じ過ちを犯すな」と千里さんに言われて、私はすべてを聡史に打ち明けた。「すぐ結婚しよう」と言う聡史。しかし、母は激高した。その母におじが声を荒げた。「おまえ、それでも母親か?」と。そしておじは、「オレもこの家を出て行く」と言う。出て行く先は、どこか? おじは笑ってごまかすばかりだった。反対する母は放って、私は聡史をおじに会わせ、「千の里」に誘った。意気投合するおじと聡史。聡史は、おじに「七つの水仙」を歌ってほしいとリクエストし、おじに尋ねるのだった。「千里さんにも、七つの水仙をあげたんですか?」。「あげたつもり」というおじと「何度もくれようとはした」という千里さんの答えには、微妙なズレがあった。聡史と結婚して子どもを産むと決意した私に、千里さんは、「私の部屋に住んだら?」と勧めてくれた。私は聡史を誘い、おじも連れて、千里さんの自宅を訪ねた。初めて訪れた彼女の部屋でおじが目を留めたのは、小さな母子像だった。その台座に刻まれた「見知らぬ天使に……」という文字。それは、おじだけが気づくことのできる、千里さんの秘密だった。聡史がエジプトに赴任するまで、もう、時間がなかった。私は、千里さんの2LDKに移り住み、聡史の出発前に結婚式を挙げることになった――。
⇒この話は、連載38回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 おじがギターを抱えて、スツールに腰を下すと、千里さんも手を拭きながら厨房から出てきた。壁に背をもたせ、両腕を胸の前で組み合わせて、「さぁ、聞こうかしらね」という体勢をとっている。
 「きょうは……」と言って、おじは会場内を見渡し、フゥ……と息をついた。
 「鳴尾聡史クンと杉野沙世、若いふたりの門出を祝う席に、出席してくださり、ありがとうございます。わたくし、新婦のおじの牧原哲司と申します」
 そこで、ジャランと弦をかき鳴らした。
 弦の音は、店の石造りの壁に反響して、店内の空気を震わせた。その残響が残る中で、おじが静かに言葉を継いだ。
 「いまから40年近く前、その頃の若者たちは、世の中を動かしている体制に矛盾を感じて、さまざまな抗議行動を起こしていました。みなさんも、TVなどでご覧になったことがあるかもしれない、激動の時代です。しかし、若者たちの抗議行動は、次々につぶされていきました。多くの若者たちは、口をふさぎ、肩を落とし、社会に順応する羊のようなおとなとして、既成の組織の中に取り込まれていきました。若者たちの口から、社会や世界を語る言葉は、どんどん消えていき、代わりに、成功法則を語るいささか露骨な、品性に欠ける言葉が、世の中を飛び回るようになりました。世の中は、いやな方向に進んでいるなぁ――と思っていました。しかし……」
 そこで、おじは言葉を切って、会場内を見渡した。その視線が聡史と私をとらえて、ニコリと微笑んだ。
 「こんな時代になっても、世界の矛盾に、自分たちの力で立ち向かっていこうとする若者たちがいます。きょう、みなさんの前で夫婦となる誓いを立てた鳴尾聡史クンは、アフリカの大地で飢餓に苦しむ子どもたちを救おうと救援活動に従事し、銃弾を受けて負傷しましたが、それでも、今度は通信員として再びアフリカに旅立ち、アフリカの現状を世界に向けて打電する任務に就こうとしています。そして、私の姪・杉野沙世は、そんな聡史クンを支え、その子どもを育てながら、つましくも美しい家族の形を作り上げ、そうすることによって社会とコミットしていく決意を固めました。いまの若者は、自分の利益にしか興味がないのだろうか――などと考えていた自分の不明を、私はいま、心から恥じています。この若者たちになら、これからの社会をまかせていける。いや、もしかしたら、私たちにできなかったことを、この若者たちならやり遂げてくれるかもしれない。私にそう思わせてくれたのは、このふたりでした。ありがとう……」
 会場から、「よっ、ガンバれ!」と声が飛んだ。
 聡史の両親は、何度も何度もうなずいては、そっと目頭にハンカチを当てていた。
 私の両親は、そんな会場の雰囲気に身を小さくしていた。
 おじは――というと、そんな反応を確かめるように見回したあとで、ゆっくりと弦をつまびき始めた。イントロのアルペジオが、場内の空気を一瞬にして静まり返らせた。
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ローズマリーの詩〈37〉 若い旅立ちと老いた再会

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   37 
小さな宴の陰で…
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

エジプトに赴任が決まった
聡史と私は、結婚式を挙げ、
小さな宴を挙げることになった。
聡史が赴任中、私は、
千里さんの部屋で
子育てしながら彼の帰りを待つ。
では、おじは——。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、痛んでいるのは、体に負った傷よりも心に負った傷のほうだった。銃弾に脅えて逃げ出したことを後悔し、自分を責める「青銅の騎士」に、私は、おじから聞いた言葉を伝えた。「騎士は、何もプロである必要はないんだって」。その言葉に、少し聡史の顔が和らいだ。そして私は、聡史と砂の味のするキスを交わした。そのキスをおじがからかう。お返しに私は、おじに食べさせたパンを焼いたのが千里さんであることをバラした。その千里さんは「許してくれるなら」と、かつての恋人に再会することを望んでいる。おじはおじで、「許してもらいたいのは自分のほうだ」と言う。そして私はついに、千里さんに自分が「かつてあなたを愛した男の姪っ子」であることを告げた。しかし、そこでわかったことがある。おじと千里さんがたがいに「許してほしい」と願っていることは、まったく違っているようだった。そんなある日、私は千里さんに招かれて、閉店後の店を訪ねた。千里さんはお見せの上階にある部屋に私を招き、ふたりですき焼きを囲んだ。その部屋に、おじの写真はなかった。「なぜ?」と疑問をぶつける私に「別れたから」と言う。その理由は、おじがかつて発した受け入れがたいひと言。おじは、「子どもは嫌いだ」と言ったのだった。千里さんは、その話をおじにするのかと訊く。迷う私の目に、一帯の聖母子像が飛び込んできた。その母子像が、私に「秘密を守れ」と語っているような気がした。その秘密は、おじが発した「子どもは嫌いだ」のひと言にある、と睨んだ私は、おじのひと言を責め、その真意を問い質した。年が明けると、私はおじを散歩に誘った。少し長めの散歩。その行先は、千里さんのいる草野駅だった。40年ぶりに会ったかつての恋人同士は、おたがいに訊きたいことがあるようだった。「あれからどうしてた?」「好きな人はできなかったのか?」たがいのたがいに対する答えに、私はちょっぴり感動した。ふたりはそれからもちょくちょく顔を合わせているようだった。そんな中、私の体に変化が現れた。妊娠だった。海外赴任が決まった聡史の子を宿していたのだった。どうしよう? 迷った私は、「千の丘」を訪ねた。迷っている私の顔を見て、千里さんは「実は……」と打ち明けた。かつて千里さんはおじの子を身ごもったが、それをおじには告げずに下ろしてしまった。「同じ過ちを犯すな」と千里さんに言われて、私はすべてを聡史に打ち明けた。「すぐ結婚しよう」と言う聡史。しかし、母は激高した。その母におじが声を荒げた。「おまえ、それでも母親か?」と。そしておじは、「オレもこの家を出て行く」と言う。出て行く先は、どこか? おじは笑ってごまかすばかりだった。反対する母は放って、私は聡史をおじに会わせ、「千の里」に誘った。意気投合するおじと聡史。聡史は、おじに「七つの水仙」を歌ってほしいとリクエストし、おじに尋ねるのだった。「千里さんにも、七つの水仙をあげたんですか?」。「あげたつもり」というおじと「何度もくれようとはした」という千里さんの答えには、微妙なズレがあった。聡史と結婚して子どもを産むと決意した私に、千里さんは、「私の部屋に住んだら?」と勧めてくれた。私は聡史を誘い、おじも連れて、千里さんの自宅を訪ねた。初めて訪れた彼女の部屋でおじが目を留めたのは、小さな母子像だった。その台座に刻まれた文字に、おじと千里さんの秘密が刻まれていた――。
⇒この話は、連載37回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 私たちには、時間がなかった。
 聡史は4月に入ると、2週間の研修を受けた後、赴任地であるエジプトへ飛び立ってしまう。
 その前に結婚式を挙げよう――ということになって、3月最後の日曜日、ごく身近な友人と親族だけでささやかな宴を催すことになった。
 母は最後まで、「そんな結婚、認めない」と反対していた。「カレがあいさつに来たいと言ってるから」と言っても、「私は会わない」とはねつけた。
 私は、結婚式の前に家を出て、千里さんの2LDKに間借りすることにした。祝福されない家で新生活のスタートを切る気にはなれなかったから――。
 おじも引っ越しの準備を進めていた。
 引っ越し先を聞いて、思わず頬が緩んだ。なんと、草野駅の近く。千里さんの店へも歩いていける場所に、2DKのアパートを借りることになった、と言う。
 「ヘーッ、毎日、千里さんに会いに行きたいんだ?」
 私がからかうと、おじは「ばぁか、孫の顔を見に行けるからだよ」と言う。
 「孫じゃないじゃん。姪の子だよ」
 「それ、何て言うんだっけ?」
 「おおめいとか、てっそんって言うらしいよ」
 「フーン。ま、いいじゃないか。子どもがいないボクたちには、孫みたいなもんさ」
 あ~あ、「ボクたち」になっちゃったんだ――と、私は思った。
 私と聡史の結婚披露パーティには、もちろん、千里さんも、おじも、出席することになった。そして、おじには、聡史のたっての希望で、『七つの水仙』を歌ってもらうことになった。
 「よぉし、練習しとくか」と言うおじに、聡史が言った。
 「いや、練習なんかしないでください。こないだみたいに、自然に口ずさんだ――って感じのほうが、オレ、好きですから」
 そういうところが、おじと聡史の波長の合うところだった。
 作り込んだ曲なんて、心に響かないから――と言うのだった。

    クローバー

 ところで――と、あれから気になっていることがある。
 自分の「罪」をおじに知られてしまった千里さんは、おじからその罪を許してもらったんだろうか?
 おじは、彼女に罪を犯させてしまうことになった自分の愚かさに、少しは気づいているだろうか?
 それを千里さんにも、おじにも、一度訊いてみようかと思うのだが、そのきっかけは、なかなかつかめそうにない。
 しかし、たぶん、ふたりの間では、もう解決ずみの問題なのだろう。
 おじは、前にも増して、千里さんの店に足を運ぶようになった。
 私が、千里さんと同居するようになったら、何だかんだと理由をつけては、毎日のように顔を出すに違いない。
 そんなおじを見て、一度だけ、千里さんが言ったことがある。
 「肝心なところで、言葉が足りないのよね、あの人……」
 それはたぶん、あのことを言っているのだろう――と、想像できた。
 「子どもは嫌い」と言い放ったあとで付け加えるべきだったひと言。「自分の子どもだったら、メロメロになるかもしれない」というひと言。もっと言うなら、「子どもが嫌い」なのではなくて、「子どもがいちばんというような考え方が嫌い」という説明。
 その言葉が足りなかったばかりに、大事なものを失ったふたりは、たぶん、いま、人生をやり直そうとしているのに違いない。
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管理人
シランケン・重松シュタイン

コーヒー女

編集者&エッセイスト。出版社勤務を経て、独立。フリーランスのエディターとして、雑誌・書籍の企画・編集に携わるとともに、自ら執筆者として、実用エッセイを執筆。
【出身地】 福岡県福岡市


  管理人の著書です  

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