「おとなの恋愛小説」倶楽部

エッセイスト長住哲雄の自作恋愛小説置き場。ブログ内のおすすめ小説も紹介します。

はじめまして。このブログについて

動く犬外に出かけられない、デートもできない。
コロナに負けるな、君の恋。


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 勇気がなくて、自信がなくて、口にできない。
 しかし、「好き」と直接言えなくても、
 他の言葉や、表情や態度で、「好き」を
 伝えることはできる。それが「メタメッセージ」。
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 「好き」を伝える技術: あなたの恋のメタメッセージ・テク (実用エッセイ)


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指矢印ローズマリーの詩 第35章~キミよ、死ぬな!
指矢印ローズマリーの詩 第34章~「七つの水仙」をもう一度


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《長編》 急行「霧島」~あの頃の、ボクたちの愛し方
 ※この小説は改訂版を制作中です。

60年代末から70年代にかけての激動の時代を駆け抜けたふたりの愛。急行「霧島」で出会ったふたりは、京都と横浜でそれぞれの学園生活を送りながら、やがて、時代の嵐に巻き込まれていきます。その愛の行き着く先は……。お読みになりたい方は、⇒こちら からどうぞ。

《長編》ハウ・アバウト・ユー →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

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《AKIの小説》天使の手袋 →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

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ローズマリーの詩〈35〉 キミよ、死ぬな!

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   35 
贈る言葉は「死ぬな!」
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

『七つの水仙』を聞かせてほしい。
一緒に訪ねた「千の里」で、
聡史が突然、口にしたリクエスト。
しかし、そこには、
つま弾くギターはない。
おじは、ゆっくり、グラスの中の
赤いワインを揺らし始めた——。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、痛んでいるのは、体に負った傷よりも心に負った傷のほうだった。銃弾に脅えて逃げ出したことを後悔し、自分を責める「青銅の騎士」に、私は、おじから聞いた言葉を伝えた。「騎士は、何もプロである必要はないんだって」。その言葉に、少し聡史の顔が和らいだ。そして私は、聡史と砂の味のするキスを交わした。そのキスをおじがからかう。お返しに私は、おじに食べさせたパンを焼いたのが千里さんであることをバラした。その千里さんは「許してくれるなら」と、かつての恋人に再会することを望んでいる。おじはおじで、「許してもらいたいのは自分のほうだ」と言う。そして私はついに、千里さんに自分が「かつてあなたを愛した男の姪っ子」であることを告げた。しかし、そこでわかったことがある。おじと千里さんがたがいに「許してほしい」と願っていることは、まったく違っているようだった。そんなある日、私は千里さんに招かれて、閉店後の店を訪ねた。千里さんはお見せの上階にある部屋に私を招き、ふたりですき焼きを囲んだ。その部屋に、おじの写真はなかった。「なぜ?」と疑問をぶつける私に「別れたから」と言う。その理由は、おじがかつて発した受け入れがたいひと言。おじは、「子どもは嫌いだ」と言ったのだった。千里さんは、その話をおじにするのかと訊く。迷う私の目に、一帯の聖母子像が飛び込んできた。その母子像が、私に「秘密を守れ」と語っているような気がした。その秘密は、おじが発した「子どもは嫌いだ」のひと言にある、と睨んだ私は、おじのひと言を責め、その真意を問い質した。年が明けると、私はおじを散歩に誘った。少し長めの散歩。その行先は、千里さんのいる草野駅だった。40年ぶりに会ったかつての恋人同士は、おたがいに訊きたいことがあるようだった。「あれからどうしてた?」「好きな人はできなかったのか?」たがいのたがいに対する答えに、私はちょっぴり感動した。ふたりはそれからもちょくちょく顔を合わせているようだった。そんな中、私の体に変化が現れた。妊娠だった。海外赴任が決まった聡史の子を宿していたのだった。どうしよう? 迷った私は、「千の丘」を訪ねた。迷っている私の顔を見て、千里さんは「実は……」と打ち明けた。かつて千里さんはおじの子を身ごもったが、それをおじには告げずに下ろしてしまった。「同じ過ちを犯すな」と千里さんに言われて、私はすべてを聡史に打ち明けた。「すぐ結婚しよう」と言う聡史。しかし、母は激高した。その母におじが声を荒げた。「おまえ、それでも母親か?」と。そしておじは、「オレもこの家を出て行く」と言う。出て行く先は、どこか? おじは笑ってごまかすばかりだった。反対する母は放って、私は聡史をおじに会わせ、「千の里」に誘った。意気投合するおじと聡史を見て、千里さんがほほ笑んだ――。
⇒この話は、連載35回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 千里さんの「千の丘」には、ギターなんてものはない。
 どうするんだろう――と見ると、おじは、手にしたワイングラスの赤い液体をゆらゆらと揺らして、その色を確かめているように見えた。
 歌う気ないんだ……。
 私も、たぶん千里さんも、そう思っていた。
 でも、違った。
 おじがワイングラスを揺らしていたのは、ワインの色を確かめるためではなかった。赤い液体を揺らしながら、おじはそれをメトロノーム代わりにテンポをとっているのだった。その揺れに、おじの声がシンクロした。
 「アイ・ハヴント・エニィ・マンション(ボクには豪華な家屋敷もない)……」
 土曜日の午後、他に客もいない「千の丘」のカフェに、おじの静かな詠唱が響き渡った。
 歌……というより、詩を吟じているようなアカペラ。
 聡史は、テーブルの上に両肘をつき、組み合わせた手の上にあごを載せて、その詩に耳を傾けた。
 「アイ・ハヴント・エニィ・ランド(ボクには土地もない)……」
 私は、両手を頬に当てて、聡史が向かう広大なアフリカの大地を思った。
 「ノット・イーブン・ア・ペイパー・ダラー・トゥ・クリンクル・イン・マイ・ハンド(手に握り締めてシワシワにする1ドル札さえない)……」
 千里さんは、胸の下で両腕を組み合わせて、静かに目を閉じていた。
 「バット・アイ・キャン・ショウ・ユー・モーニング・オン・ア・サウザンド・ヒルズ(でも、ボクはキミに見せてあげることができる。千の丘にやってくる朝を)……」
 みんなの目が、そこに「千の丘の朝」を探すような、遙かな視線になった。
 「アイ・キス・ユー、アンド・ギブ・ユー・セブン・ダファディル(キミにキスをして、そして七つの水仙をあげよう)……」
 千里さんは、おじのキスと七つの水仙を受け取っただろうか――と思った。
 その目が、わずかに潤んでいるように見えた。
 そのとき、客が店に入って来て、千里さんは、少しあわてて目頭を指先で拭い、席を離れた。
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ローズマリーの詩〈34〉 「七つの水仙」をもう一度

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   34 
おじと聡史と私と彼女
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

聡史との結婚を決意した私と
家を出る決意を固めたおじ。
しかし、結婚に反対する母は、
なかなか聡史と会おうとしない。
私は聡史を連れて、
「千の里」を訪ねてみることにした。
おじも誘って——。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、痛んでいるのは、体に負った傷よりも心に負った傷のほうだった。銃弾に脅えて逃げ出したことを後悔し、自分を責める「青銅の騎士」に、私は、おじから聞いた言葉を伝えた。「騎士は、何もプロである必要はないんだって」。その言葉に、少し聡史の顔が和らいだ。そして私は、聡史と砂の味のするキスを交わした。そのキスをおじがからかう。お返しに私は、おじに食べさせたパンを焼いたのが千里さんであることをバラした。その千里さんは「許してくれるなら」と、かつての恋人に再会することを望んでいる。おじはおじで、「許してもらいたいのは自分のほうだ」と言う。そして私はついに、千里さんに自分が「かつてあなたを愛した男の姪っ子」であることを告げた。しかし、そこでわかったことがある。おじと千里さんがたがいに「許してほしい」と願っていることは、まったく違っているようだった。そんなある日、私は千里さんに招かれて、閉店後の店を訪ねた。千里さんはお見せの上階にある部屋に私を招き、ふたりですき焼きを囲んだ。その部屋に、おじの写真はなかった。「なぜ?」と疑問をぶつける私に「別れたから」と言う。その理由は、おじがかつて発した受け入れがたいひと言。おじは、「子どもは嫌いだ」と言ったのだった。千里さんは、その話をおじにするのかと訊く。迷う私の目に、一帯の聖母子像が飛び込んできた。その母子像が、私に「秘密を守れ」と語っているような気がした。その秘密は、おじが発した「子どもは嫌いだ」のひと言にある、と睨んだ私は、おじのひと言を責め、その真意を問い質した。年が明けると、私はおじを散歩に誘った。少し長めの散歩。その行先は、千里さんのいる草野駅だった。40年ぶりに会ったかつての恋人同士は、おたがいに訊きたいことがあるようだった。「あれからどうしてた?」「好きな人はできなかったのか?」たがいのたがいに対する答えに、私はちょっぴり感動した。ふたりはそれからもちょくちょく顔を合わせているようだった。そんな中、私の体に変化が現れた。妊娠だった。海外赴任が決まった聡史の子を宿していたのだった。どうしよう? 迷った私は、「千の丘」を訪ねた。迷っている私の顔を見て、千里さんは「実は……」と打ち明けた。かつて千里さんはおじの子を身ごもったが、それをおじには告げずに下ろしてしまった。「同じ過ちを犯すな」と千里さんに言われて、私はすべてを聡史に打ち明けた。「すぐ結婚しよう」と言う聡史。しかし、母は激高した。その母におじが声を荒げた。「おまえ、それでも母親か?」と。そしておじは、「オレもこの家を出て行く」と言う。出て行く先は、どこか? おじは笑ってごまかすばかりだった――。
⇒この話は、連載34回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 母は、なかなか聡史と会おうとしない。
 仕方ない――と、私は思った。
 あの人には、自分が「これが正しい」と思ったレールの上を歩く人生しか、想像ができないのに違いない。そのレールを踏み外そうとしている私も、踏み外してきたおじも、自分の予定を狂わせてしまう厄介な存在でしかないのだろう。
 しかし、どんなに厄介だと思われても、もう、私の決心は変わらない。
 そうだ、先に「千の丘」に行こう。おじも連れて――。

 「ねェ、おじさん」と、次の週、おじに声をかけた。
 3月に入ったばかりの、よく晴れた土曜日だった。
 「わたしたち、きょう、『千の丘』に行ってみようかと思ってるんだけど……」
 おじは、キョトンとしていた。「わたしたち……?」と、顔に書いてあった。
 それって、オレとキミかい――と、自分の顔と私の顔を指で指すので、私は笑いながら、「ウウン」と首を振った。
 「エッ!?」という顔をしたおじに、「わたしと聡史」と言うと、おじは、「オーッ!」という形に口を開けた。
 「それでね……できれば、おじさんにも一緒に来てもらおうかと思って……」
 おじは、「伏せ」を解かれた犬のように尻尾を振りながら、「いいね。行く、行く」と顔をほころばせた。

    クローバー

 聡史とは、駅の改札での待ち合わせだった。
 私とおじの姿を見つけると、聡史は「どうも」というふうに頭を下げた。おじは、それを見て「やぁ、やぁ」と手を振ったと思うと、次の瞬間には、私の想像もしなかった行動をとった。
 つかつかと聡史のもとへ歩み寄ったおじは、いきなりその手をとって、それを二度、三度と大きく振り、もう一方の手で肩をポンポンと叩いて言った。
 「やぁ、沙世からいろいろお話を聞いてますよ。キミがうわさの青銅の騎士クンですね。どうですか? 足のほうの痛みは?」
 「まだ、ムリをすると少し痛みますが、もう大丈夫ッす」
 「エジプトだってねェ?」
 「ハイ。カイロ支局です」
 「カイロかぁ……。むずかしい土地だねェ」
 「ハァ……」
 「スエズ動乱の昔から、あそこは、西欧型民主主義を求めるリベラルな勢力と社会主義型による建設を目指す勢力とイスラム原理主義に根差そうとするグループが、3つどもえになって争いを繰り広げてきたからねェ」
 私をほったらかして、おじは聡史と時事放談でも始めかねない勢いだ。
 「ちょっと……おじさん。いきなり、そんなむずかしい話を始めないでよ」
 私が抗議すると、おじは「あ、すまんすまん」と言って、あらためて聡史に向かい合った。
 「あいさつが後になっちまって申し訳ない。この子のおじの牧原哲司です。このたびは、姪の沙世がお世話になります」
 「鳴尾聡史です。こちらこそ、お世話になります」
 やっと、ふつうのあいさつになった――と思ったら、今度は聡史が、口火を切った。
 「きょうお邪魔する『千の丘』というお店、おじさんの昔の彼女のお店なんですってね? おふたりは、学生時代からのおつき合いだったんでしょう?」
 それで今度は、おじの青銅時代の話が始まった。
 電車に乗っている間じゅう、おじと聡史は、思想がどうの、社会がどうの、世界はどう動くべきかだのという話に夢中になって、私は置いてけぼりを食らった。
 しかし、それはどこかうれしくもあった。少なくとも、私の身内の中で、おじと聡史だけは、どこか気脈が通じるところがあるらしい。それを感じたことが、心強くもあった。
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renaishosetsu

 
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管理人 TETSUO長住

コーヒー女

編集者&エッセイスト。出版社勤務を経て、独立。フリーランスのエディターとして、雑誌・書籍の企画・編集に携わるとともに、自ら執筆者として、実用エッセイを執筆。
【出身地】 福岡県福岡市


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