「おとなの恋愛小説」倶楽部

エッセイスト長住哲雄の自作恋愛小説置き場。ブログ内のおすすめ小説も紹介します。

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門松平成最後のお正月を迎えました。
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 3人に1人が結婚できないと言われる
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 明るく前向きな女性の声に導かれて
 築き上げていくシェアハウスでの共同生活。
 やがてそこには、新しい仲間も加わって、
 そこには、新しい「地縁家族」の可能性が
 芽生えていきます。長住哲雄渾身の
 社会派恋愛小説。ぜひ、ご覧ください。

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 妻は、おふたり様にひとりずつ (小説)


                今月のNew Entry             

指矢印ローズマリーの詩 第18章~愛した人のパンの味
指矢印ローズマリーの詩 第17章~キスはアフリカの砂の味
指矢印ローズマリーの詩 第16章~肩を貸す彼の腕の重み


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管理人・長住哲雄の小説

《短編集》マリアたちへ →目次ページへ →最新記事へ
管理人がこれまで出会った「マリアのような」女性たちに捧げる「ありがとう」の短編集です。

ロマン派 《H》 短編集 →目次ページへ →最新記事へ
管理人が妄想力を働かせて書いた、Hだけどロマン派な、官能短編小説集です。

《中編》ローズマリーの詩→目次ページへ →最新記事へ
破産して家の離れに間借りするおじと、結婚話が破談して出戻ってきた私。それぞれに忘れられない過去を抱えながら、ふたりは静かに心を通わせて――。

《中編》遅すぎた花火→目次ページへ →最新記事へ
「死」を決意した少女と「死」を宣告された老人が、忽然と姿を消した。「連れ去りか?」と報じられたふたりの、240時間に及ぶ彷徨の行き着く先は――?

《長編》鬼子母神→目次ページへ →最新記事へ
大事な者を守るために、男たちの「愛」を食う女と、その「愛」に揺れ動く男たち。デリバリーの世界を舞台に繰り広げられる、男と女の物語です。愛し合うことは、こんなにも苦しく、そして、切ない――。

《長編》 急行「霧島」~あの頃の、ボクたちの愛し方
 ※この小説は改訂版を制作中です。

60年代末から70年代にかけての激動の時代を駆け抜けたふたりの愛。急行「霧島」で出会ったふたりは、京都と横浜でそれぞれの学園生活を送りながら、やがて、時代の嵐に巻き込まれていきます。その愛の行き着く先は……。お読みになりたい方は、⇒こちら からどうぞ。

《長編》ハウ・アバウト・ユー →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

ジャズクラブに集まるジャズ好きのオヤジたちと、ジャズ・ボーカリストとして成長していく歌姫たちとの交流を通して、歌とは何? 愛とは何? そして人生とは何? を追求するおとなのラブ・ストーリーです。

ダンス同人の小説

《AKIの小説》天使の手袋 →目次ページへ
 ※この小説は連載完結しました。

借金漬けの同居のカレのために出張エステ嬢としてガンバるアキと、出張先で出会った初老の客・ヒデオ。三者の揺れ動く関係は、波乱の中で、主人公を「真実の愛」に目覚めさせていく――。



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ふくろう不純愛講座 by 長住哲雄
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ローズマリーの詩〈18〉 愛した人のパンの味

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   18 
愛した人が焼いたパンの味
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

聡史と再会したことを
おじにだけは報告した。
「久しぶりのキス」をからかう
おじに、お返しのジャブ。
「どうだった、千里さんの焼いた
パンの味は?」に、おじは
途端に狼狽した――。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、痛んでいるのは、体に負った傷よりも心に負った傷のほうだった。銃弾に脅えて逃げ出したことを後悔し、自分を責める「青銅の騎士」に、私は、おじから聞いた言葉を伝えた。「騎士は、何もプロである必要はないんだって」。その言葉に、少し聡史の顔が和らいだ――。
⇒この話は、連載18回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 聡史と会ったことを、私は、父にも、母にも、話さなかった。
 話して、「あんた、まだ、そんな人と……」と言われるのが、何よりもいやだった。
 しかし、おじには、何となく話しておきたかった。おじでなくてもいい。だれかに話しておきたかったが、私と鳴尾聡史の話をきちんと理解して聞いてくれそうな人は、おじ以外に思いつかなかった。
 あれ……!? と思った。
 おじの部屋から聞こえてくる曲が、また変わった。
 スロー・バラードだ。
 「メモリー……」というフレーズだけが、耳に飛び込んでくる。
 メモリーがビューティフル――とか何とか言ってる。しかし、それ以上の歌詞は聞き取れなかった。

 「いま歌ってたのは?」
 離れから出てきたおじに尋ねると、「追憶」という答えが返ってきた。
 「だれが歌ってたの?」
 「バーブラ・ストライザンドだよ。知らない?」
 「名前を聞いたことはあるけど……」
 「じゃ……『追憶』って映画を観たことは?」
 「ないんですけど……」
 「あ~あ……」

 おじは、ひときわ深いため息をついて、そのまま、部屋に引き込もうとする。
 「あの……」と、その背中に呼びかけた。
 おじは、ひまな駅の駅長みたいな顔で振り向いて、「何か……?」という顔をした。
 「会ってきちゃった……」
 「オゥ!」
 とたんに、顔が崩れた。
 まるで、孫ができた――と知らされたおじいちゃんのような顔だった。
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ローズマリーの詩〈17〉 キスはアフリカの砂の味

コーヒーと女 連載   ローズマリーの詩   17 
キスはアフリカの砂の味
破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。

5年ぶりに会う聡史は目の光が
少し弱くなったように見えた。
銃弾に脅えて逃げ出した自分を
責めているのだった。私は、
おじが口にした言葉を思い出した。
「騎士はプロである必要はない」
その言葉を聡史に伝えると——。



 ここまでのあらすじ  会社を倒産させ、破産したおじがわが家の離れに住むようになって1年になる。私は、進めていた結婚話が破談になって、家に出戻って来た。おじも、私も、母にとっては「厄介者」だった。そのおじが住む離れから、時折、ギターで弾き語りするおじの歌が聞こえてくる。そのもの悲しげなメロディが、なぜか、心に響く。私は、その歌の内容を知りたくなった。その曲は『スカボロー・フェア』という曲。おじはもう40年、その歌を歌い続けているという。私はその理由を知りたくなったが、おじは、笑ってごまかすばかりだった。そのおじが「紗世ちゃん、ほんとは、もっと好きな人がいたんじゃないの?」と言う。よみがえった名前があった。鳴尾聡史。大学のサークルの先輩で、いまは、アフリカでポランティア活動に従事している。その鳴尾に「一緒にアフリカに行かないか?」誘われたことがあったが、決断がつかなかった。日本に残って就職した私は、職場で出会った萩原一郎に「ふつうに幸せになりなよ」と言われて、心が揺らぎ、一度は結婚を決断する。しかし、萩原は街でホームレスを見かけると舌打ちするような男だった。「結婚するとは家に入ることだ」と言われて、「この人、違う」と思った私は、結婚をキャンセルすることを決めた。そんなある日、おじに来客があった。尾崎と名乗る初老の客。ふたりの会話の中に「真坂千里」という名前が出てきた。その千里がハーブ・パンの店をやっていると言う。彼女は、かつて、おじが愛した女だった。しかし、ふたりは別れた。青い理想を語るおじは、「ふつうの幸せ」を求める彼女を理解できなかったのだ。私は内緒でその店をのぞいてみたくなった。「千の丘」という名のハーブ・パンの店。その店名は、「七つの水仙」という曲の歌詞から取ったという。そして、その曲を彼女に教えたのは、かつて、彼女が愛した男だった。「この前のパンがおいしかったから」と、再び店を訪ねた私に、千里はガーリックトーストをブルスケッタにして食べさせてくれた。次の日曜日、私は彼女に教わったブルスケッタを作っておじに食べさせた。「懐かしい味がする」というおじにニンマリする私。そんなとき、一通のエアメールが届いた。アフリカにいる鳴尾聡史からだった。負傷して日本に帰るという。「会いたい」という聡史にどう返事をすべきか、迷う私におじは、「彼はもう、昔の彼ではなくなっているかもしれない。そんな彼を丸ごと受け入れる覚悟があるか?」と問い、そして言った。「あるなら会いなさい。私のような後悔はしてほしくないから」。千里さんも同じ「後悔」という言葉を口にした。千里さんの後悔は何か? それには答えがなかった。5年ぶりに会った聡史は、負傷した脚を引きずっていた。しかし、聡史は、その傷より重い心の傷を負っていた――。
⇒この話は、連載17回目です。この話を最初から読みたい方は、こちらから、
  前回から読みたい方は、こちらからどうぞ。



 「懐かしいなぁ、この味」
 ひげにソースをたらしながらとんかつにパクつく聡史の姿を、私は、ちょっとだけ、異邦人を見るような目で眺めていた。
 5年間の海外生活。飢えに苦しむ子どもたちを救うために、アフリカの大地を駆け回った日々が、聡史の風貌にコスモポリタンな魅力を付け加えているようにも見える。
 しかし、その目の光は、少しだけ弱々しくなったようにも見えた。
 たぶん、それは、聡史の脚を貫通した銃弾のせいだ――。
 目の前のとんかつを、次々に胃袋に放り込み、とん汁を最後の一滴まで飲み干して、「フゥ」と箸を置いた青銅の騎士は、壁に貼られたメニューの文字を虚ろな視線で追って、もう一度、「フゥ……」と、深い息を吐いた。
 「なぁ、沙世クン……」
 右手の甲を口元に当てて、聡史は、力のない声を出した。
 「オレ、もう……アフリカには、戻れないかもしれない」
 どう答えていいのかわからなかった。
 「ウン……」とだけ答えて、私は目を落とした。
 青銅の騎士は、もう騎士を止めようとしているのかもしれない――と思った。しかし、それを私の口からは言い出せなかった。
 「キミを誘っておきながら、情けないんだけどさぁ……」
 聡史は、慎重に言葉を選んでいるように見えた。
 「ちょっと……ビビってんだ、いま……」
 「先輩……」と、私は、思いきって口を開いた。
 「私、情けないなんて、全然、思ってないですよ」
 口ヒゲが、ちょっとだけ、ユルッ……と動いた。
 「なぐさめてくれなくていいんだよ」
 「なぐさめるなんてつもりは、全然、ないです。5年間も、ガンバってきた――というだけで、私にはマネのできないすごいことだって思ってますから……」
 「それでもなぁ……」
 騎士は、両手で頭を抱えるようにして、視線を宙に漂わせた。
 「銃弾が飛び交い始めた途端に、足が震えた。情けないくらい、震えた。そこに留まって、子どもたちを守らなくちゃ――っていう思いも、一瞬でどっかへ吹っ飛んで、無我夢中で駆け出してた。ああ~、これがオレの限界か……ってね。なんか、自分の底を見せられたような気がしてさ……」
 たぶん、自分でも同じ状態になっただろう。
 そもそも、アフリカに行くという決断さえできなかった自分なんだから、もっとひどいパニックに陥っていたかもしれない。
 そのときだった。不意に、おじたちの発した言葉が、頭の隅に浮かんだ。
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管理人 TETSUO長住

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編集者&エッセイスト。出版社勤務を経て、独立。フリーランスのエディターとして、雑誌・書籍の企画・編集に携わるとともに、自ら執筆者として、実用エッセイを執筆。
【出身地】 福岡県福岡市


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