今年はNo.48の神楽岡保育園(橋本尚樹、京大)とNo.311の「私、私の家、教会、または牢獄」(斧澤未知子、阪大)の一騎打ちでした。というよりも、問題作の斧澤案を日本一にするかどうか、の議論に尽きたと言って差し支えないでしょう。
今年のファイナル10案を見て、判断の決め手に欠くという意見は複数の審査員から見られました。たとえば、伊東豊雄氏「身体性を持たない案が多すぎる。ウチかソトかという問題では無い。」、貝島桃代氏「見たことがないものが出てきていない。」五十嵐太郎氏「教育者としては、橋本案、クリティックとしては斧澤案。」など。ただし、五十嵐先生の場合、「怖さ。しかも、心底の怖さ。」を感じるという斧澤案を押しているのは明らか。むしろ、どの案をおすかという態度を保留していた貝島先生が、各順位を決める役回りとなった。
終盤、斧澤さんの主張によって、伊東氏が「建築は社会の中で存在する。その中で、謙虚さも必要だ。」と切れてしまうほどヒートアップし、なんだかあっけらかんと橋本案日本一、斧澤案日本二となったような。
いずれにしても、問題作の斧澤案は語り継がれる作品になるでしょう。その、パネルの濃密さ、周到なタイトル、プレゼンテーションの泣きを含めた語り、実際にコンクリートを打った模型(ただしこれ自体は、デンマークでも見られました。そのスタジオの名は「making real」)、など。

