これだけ長く生きていると過去に何度か手痛い失敗談があったわけで、
今日はあえてそんな僕のしくじり体験を紹介したいと思います。

僕はあまり人と深くおつきあいすることはない人間ですが、
ある時、ひょうな拍子で出会った、Y君とは
本当に仲良く付き合っていた時がありました。
きっかけは仕事がらみの出張会議の席で、なんか僕が偉そうに意見を出した時に、
真向かいに座っていて「うんうん」とうなずいていてくれたのがY君でした。
その後も何度も目が合って、一日つぶしてのくだらない会議が、
彼と見つめ合う二人だけの熱いミーティングと化してしまったことに、
主催者には後ろめたい罪悪感を感じつつ、心を躍らせている僕がいました。
会議がお開きになると、案の定Y君の方から歩み寄って来てくれて、
初対面の挨拶もそこそこに「今日のあなたの発言に感銘を受けました。」と伝えてくれ、
赤面して「いやいやいや…」とうろたえている僕をよそに、
「また機会があれば、いろいろ教えてください。」という嬉しい言葉と
爽やかな笑顔を残して彼は去っていきました。
その数日後、Y君からの「一緒に食事しませんか」の突然のメールに
有頂天になり舞い上がってしまったのは、言うまでもありません。
僕の方が年上なのは歴然としていたので、それっぽくジャケットを羽織って行くと、
今どきの若者のカジュアルなスタイルで彼は待っていてくれました。
いかにも女の子にモテそうなイケメンのY君、彼がノンケであることは承知していながらも
僕たちは前回のスーツ姿同士では分かり合えなかった素の部分を出し合いながら、
交わしたおしゃべりと食事は本当に楽しかった。
「まるではたから見たら、男同士でデートしてるみたいじゃん。なんかゴメンね~。」と言うと
彼は「いえ、かえって光栄です。友だちに自慢したいぐらいです。」と言うんで
僕は目の前で溶けだしたアイスクリームのように、あま~く崩れてしまいそうでした。
その後も何度か彼と食事をしたり、映画を観に行ったり、そしてついには温泉まで一緒に
入ってしまいました。でも僕たちはノンケの男同士の友情のように
どこまで行ってもプラトニックだったのです。そうお互い信じていました。
けれども、そんなにお互いをさらし合っていながら、僕らはまったく気がつかなかったのです。
気づかなくてもよかったことに、僕が気がついてしまったことが
すべてを失うことになろうとは、その時にはまだ見抜けませんでした…
(中編につづく)
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