ボウモア、ラフロイグと並んでアイラモルトの雄と呼べるのがアードベッグです。

ardbeg10アードベッグ蒸留所は1815年、アイラ島の南東部に設立されました。
バランタインのキーモルトとしても使われるなど、世界的に有名な蒸留所ですが、経営は幾度も危機を迎え、何度も閉鎖されてきました。
1997年にハイランド地方にあるグレンモーレンジがオーナーとなって、やっと経営が安定し始め、モルトの品質も向上するようになりました。
ひどく朽ち果てていた蒸留所も同社によって大改修が行われ、今では美しい建物としてよみがえっています。

今回紹介する10年も、1997年に新しい製法を導入したモルトを使っています。
ボトルが深緑の物を採用しているのですが、実際の液色は淡く、1,2年しか熟成していないのではと思わせるほどです。その代わり、アルコール度数は46度と高めです。
また、冷却濾過していないため(ノンチルフィルタード)、原酒の成分が濃く残っている特徴もあります(その代わり、濁りや澱が発生する恐れがあります)。

ロックで飲んでみると、 アルコールの刺激とアイラモルトならではの磯の香りを伴ったピーティさが重なって強烈なインパクトを与えてくれます。
奥の方からは、青リンゴ、洋ナシのさわやかさが後を追ってきます。

味わいはとても辛く、香りに釣られたかのような酸味もやってきます。甘みはほとんど感じられず、ボディもかなり重い方です。

加水されてもその強い個性が消えることはなく、水割りにしてもかなりのインパクトを与えてくれるでしょう。

ボウモアも比較的インパクトが強い印象ですが、アードベッグに比べて甘さ、まろやかさ、華やかさが兼ね備えられていて、上品な印象があります。むしろアードベッグはラフロイグに近い印象です。
ラフロイグが独特のピーティさを猪突猛進のように突きだした感じですが、アードベッグはさわやかさを加えて少し抑えた雰囲気です。
同じアイラであっても、細かな香り、味わいで違いをつけているように思えます。

価格は700mL、46度で5000円ほど。10年物としては高めですが、ほとんど水を加えない高い度数を保っているので、多少はお得感があるでしょう。
ラインナップとして、甘みをプラスしたウーガダールとよりスパイシーなコリーヴレッカンがありますが、どちらも樽出し(カスクストレングス)といえるほどのアルコール度数(55度前後)で、10年以上の衝撃を体験できるでしょう。

<個人的評価> 
・香り B: 「ウォッ!」と叫ぶほどの強烈なピート香とアルコールの刺激。後からナシ、青リンゴのさわやかさ。
・味わい B: ストレート、ロックではアルコールによる辛みが強い。加水すると酸味が目立つ。
・総評 B: アイラモルトが好きな人にはたまらない。それ以外の人には刺激が強すぎる。